一時期は激しくバッシングされていた、塩谷瞬の二股騒動だが、最近ではバラエティ番組のいじられネタになるくらい。日本は、こういったことには寛容だ。
二股で忘れてはならないのは、パナソニックの創業者、松下幸之助だ。
パナソニックの前身、松下電気器具製作所の創業当初のヒット製品が、二股ソケットだった。昔は一家にコンセントがひとつしかない、なんてこともあったから、2つの電化製品を同時に使うには必需品。この製品のヒットで、松下はナショナルブランドとなったのだ。

「不況は贅肉を取るための注射である」というのは、松下幸之助のありがたいお言葉だ。力のない者は淘汰されて、よい者が残る、という意味である。
だが、「それはそうだろうが、淘汰された者の面倒を見なきゃいけない周りの者は大変だ」と、友人の斉藤は嘆く。
斉藤の父親が経営していた零細企業は、10年前に倒産した。
「最初からね、経営能力なんか無かったの。建築会社で働いていた時に、取引先の社長に、うちの仕事を下請けする会社作らないかって言われてノッたわけ。高度成長期は、黙ってても上から仕事が流れてきたから、成り立ってたんだけど、営業の能力がないから、不況になったらアウトだよね」

破産した父親は、年金で慎ましい生活をしているという。
「社会の贅肉がそぎ落とされたってことだよね。でも、なんで、まじめに働いているオレにとばっちりが来るのかな。病気になって入院したら、息子のオレが払うしかない。10万円かかるっていうから出したら、後期高齢者だから1万5千円しかかからないんだって、後から分かった。余った金はガメてんの。お母さんが生活保護受けてったっていうタレント、尊敬するよ。親父も、息子をだますんじゃなくて、行政をだましゃあいいんだよ。まさに、人間としての贅肉だね」

ライター仲間の山本は、まさに今、贅肉の上に乗っている。
「オレが教えているライタースクール、生徒が集まらなくて廃校になりそうなんだけど、不況のせいにはできないような気がするよ。入校希望者に対する説明会でさ、『ライナーノーツの書き方とかも学べるんですか?』っていう質問が出たんだ。室長はライナーノーツを知らなくて『それは、グラビアのキャプションみたいなものですか? 広告のコピーみたいなもんですか?』って逆に聞いてんの。室長は確かに高齢だけど、ライナーノーツって言葉はレコードの時代からだから、4~50年前からあったはずだよ。他にも知らないことばかりなんだから、説明会なんかオレたちに任せればいいだけど、なんか自分が前に出たがるんだよな。ライナーノーツも知らない講師のいる学校で、誰が勉強しようと思うんだよ」
そのライタースクールでは、本科で様々な講義を受けた後、上級科に進む。
山本の持っている上級科クラスには、13人の生徒がいるが、本科が成立しなければ、新たに入ってくる生徒がいなくなり、先細っていくのは目に見えている。

松下幸之助には、こんな言葉もある。
「不景気になると商品が吟味され、経営が吟味され、経営者が吟味されて、そして事が決せられる。従って非常にいい経営者のもとに人が育っている会社は好況のときは勿論、不況のときにはさらに伸びる」
私自身は、そんな環境の中で仕事ができていて、とても幸せだ。

(FY)