言ってほしいウソをつくのが、詐欺師のワザ。
「愛している」と、結婚詐欺師は言う。
「これで一財産作りました。あなたもどうですか?」と、マルチ商法詐欺は言う。
「救われます」と、カルト宗教詐欺は言う。
結婚詐欺の被害者は、あまり相手を訴えないとか。「愛している」という相手の言葉が、まるっきりのウソだったと、認めたくないからだ。
プロの結婚詐欺師は、訴えられないギリギリ程度の額をむしり取って、次の相手に移っていく。

福島第一原発事故は「収束」した、という政府のウソも、国民が欲していたものではないか。
そう言われることで、フクシマのことを忘れて、安心して日常に戻れるから。
もちろん、普通に日常を送っていくだけでも、大変なことはたくさんある。
その上に、四六時中、フクシマのことを考えて、心を病んでしまっても困る。
だが、まるっきり、忘れてしまう、というのはどうだろう。

1つウソをつくと、次々とウソをつかなければならなくなる。だからウソはいけません。
子供の頃に、大人から言われたことだ。
詐欺師はプロだから、辻褄が合うようにウソをつく。
多少、矛盾があっても、言ってほしいウソだから、信じてしまう、ということがある。

4日、「手抜き除染」が横行していることが明らかになり、環境省は事実関係を調べる姿勢を示した。
福島第1原発事故周辺の、楢葉町、飯舘村、田村市での除染作業で、請負業者の一部が汚染土壌や草木を川に捨てたり、放射性物質を含む汚染水を回収せずに流したりしていた、という。
これでは、除染ではなく、環境中に放射能を拡散していることになる。

原発事故の「収束」から出てきたのが、「除染」というウソだ。
放射能を取り除くという技術を、人類は持ち合わせていない。
今行われている「除染」という作業は、放射性物質が付着した土壌をはぎ取り、草木を集めて、他の場所に移動させる、ということだ。

政府は、線量が下がってきた地域から順に、帰れるとして、年間積算線量が20ミリシーベルト以下となることが確実であることが確認された地域を、「避難指示解除準備区域」に指定した。
「避難指示解除準備区域」となった、田村市、南相馬市、川内村、飯舘村では、年末年始に限っての自宅への「宿泊」が認められ、家族が集まってくつろぐ姿が、お正月の明るいニュースとして、報じられた。

チェルノブイリ原発事故の5年後に制定された「チェルノブイリ法」では、年間積算線量5ミリシーベルト以上の地域は、退去対象地域である。
1ミリシーベルト以上は、「移住の権利」地域であり、移住を希望する場合はそれまで住んでいたのと同等の住居が与えられ、移住の費用も補償される。本人の意志で住み続ける場合は、他の地域よりは高い年金、医療補償、より長い休暇が得られる。

除染すれば帰れる、などというウソは止めて、日本でも同様の法律を制定すべきだ。
現場で働いている人間は、除染のウソを肌身で知っている。そこから起きたのが、「手抜き除染」ではないのか。
ウソをつき続けて、「手抜き」だけ責めても、なにも解決しない。

(FY)