昨年12月、大阪市立桜宮高校(都島区)の男子バスケットボール部主将だった2年の男子生徒(17)が、顧問の男性教諭(47)から「体罰」を受け自殺した問題から、橋下徹市長が15日、同校体育科などの入試中止を市教委に要請し、「受験を希望していた生徒たちに影響が出る」として波紋を呼んでいる。
桜宮高校バスケ部は伝統的にかなりの強豪で、自殺した男子生徒は負けて教師に平手打ちをされて悩んでいたという。
自殺する前日、練習試合中に両手で顔面を4、5回たたき、さらに頭を4、5回平手で殴ったと、教諭自身が語っている。

文部科学省の義家弘介政務官は15日午前大阪市役所を訪れ、市教委委員長らと面会して「安易に体罰という言葉が使われているが、これは継続的、日常的に行われた身体的、精神的暴力だ」と述べた。「そもそも体罰は法律で禁止されている」とことわったうえで、教育的な目的から、ミスをしたらコートを10周しろというのは「ありうる体罰」ではないかと指摘している。

だが、「コートを10周」には、個人差が生じる。トレーニングでいつもそれくらい走っている生徒には、体罰の意味をなさない。そうではない生徒には逆に、それでも身体的、精神的暴力になるだろう。
だが、例えば廊下に立たせておくという体罰と、今回のような刑法上の罪にも問われうる暴行とは、分けて論議されるべき、というのは確かにそうだ。

日本の教育界では、1度もそれが真剣に議論されたことがない。
体罰と暴行は分けて考えられたことがなく、昔は逆に、なんでもOKだった。
「自分たちが子どもの頃は、平手打ち、ケツバット、蹴りなどは日常的に行われていたような気がする」(40代・計理士)
「腰をバットで打たれて、骨折したことがある」(50代・甲子園出場経験のある会社員)
「中学生の時、近くの大学のグランドで同級生と決闘しようとしてたら、聞きつけた女性担任が飛んできて、『歯を食いしばれ』と言って、平手打ちしてきた。ヒロイックな女性教師の気分が伝わってきて『学園ドラマかよ』と、心の中で失笑した。あの頃の私がワルだったのは確かだけど、生徒が暴力に走っているんだから、言葉で諭すのが本当なんじゃないだろうか」(40代・美容師)
「中学では長髪が禁止されていたので『カツラ抜き』という体罰があった。『うちの生徒がそんなに髪をのばしているはずがない。それはカツラだろう』と言って、肩に足を置いて、力ずくで髪を引っ張る。それまで僕は、坊ちゃん狩りだったけど、それを見て一晩考えて、自分も髪を伸ばすことにした」(40代・デザイナー)

もともと体罰は、学校教育法第11条で禁止されているが、1990年頃からの世論に押されて、何もまともに議論されないまま、教育現場で一律禁止となったようだ。「言葉の暴力」と言われるので、叱責さえもできなくなった。
「生徒を“さん”づけで呼んでいます。男性教師が女生徒に触ろうものなら、PTAにチクられて大問題となりますよ。もう教師は丸裸で教壇に立っているようなものなのです」(埼玉県の中学校教師A氏)

問題の教諭は、部活以外でも体罰を行っていたことが分かっており、問題になった後でも、体罰に効果があると語っている。「確信犯」のようだ。
生徒に叱責さえできない状況に、抗うという気分があったのかもしれないが、あまりにも考えが浅すぎる。

欧米のように、教育現場を監査する機関をもうけるのも一理あるが「教師が社会を知らなすぎる」ことが問題だ。教師が大人になっていない。それが現状だ。
教師は、1年や2年ほど一般の会社で仕事を経験した人を採用していくシステムにしてはどうだろう。大卒でいきなり教師になった人に、人生の機微を教えるのは無理がある。

(鹿砦丸)