「セックスボランティア」の大ヒットで、けっこう浸透したかと思ったが、結局のところ「障がい者にも性欲がある」という当たり前のことを受け入れるのは、いまだに、ごく一部の知的な人々だけだ。
「被災者にも性欲がある」という当たり前のことも、なかなか受け入れられない。
福島駅から信夫山のトンネルを経た辺りに、1軒のファッションヘルスがあった。
古い店だが、マットプレイが堪能できる、いい店だった。
近くの3カ所に仮設住宅がでり、以前より賑わうようになっていた。

そのヘルスが今はない。摘発を受けたのだ。
風営法の認可を受けていたのだが、テレクラだった2階も改築してプレイルームにした。
その仕様変更を届けていなかったために、風営法違反とされたのだ。
なにか、言いがかり的な、摘発だ。

風営法による取り締まりは、きわめて恣意的に行われる。
人身取引があったり、年少者を使っていたりしたら別だが、たいていの風俗嬢は高い収入と引き替えに、重労働を納得して引き受けている。被害者はいない。

現在の都条例で、性風俗店が営業できるのは、吉原だけ。それ以外は、1985年の風営法改正以前に許可を得ていた店の営業が合法だ。
85年以降も、新宿歌舞伎町には風俗店は増え続けた。違法だが、見逃されてた。
何かあると摘発されたが、「風俗街を潰すつもりはないよ。必要なものだから。だけど、適度な締め付けは必要だ」と、新宿署の生活安全課員は言っていた。
だが、世紀末から次第に締め付けが厳しくなり、許可店以外はなくなった。
オリンピックを呼ぶためだろう。都庁のお膝元が風俗街では、かっこがつかない。

福島のヘルスへの摘発も、恣意的に行われた。
風俗店が被災者で賑わい、店の拡大までしているのがけしからん、ということなのか。
公的にも私的にも、被災者は確かに様々な支援を受けている。
しかしそれでもまだ、十分な生活ができているわけではない。
仮設住宅に住む被災者の男性が、貯めた金で、つらい生活の合間、たまに女性に触れて憩うのが、そんなにも悪いことなのだろうか。
もちろんその場合、女性の性欲はどうするのか? という設問は正当だ。それはそれで、考えるべきだ。
しかし、そこにあるものを潰して保たれる平等は、おかしくないだろうか。

(FY)