中嶌哲演さん

関電本店前にて(2018年3月13日)

子ども脱被ばく裁判の会共同代表の水戸喜世子さんと松岡利康・鹿砦社代表

関西電力は3月14日、大飯原発3号機の運転(再稼働)をはじめた。これに抗議する市民は、大飯原発現地をはじめ、全国各地で抗議行動を行った。なかでも関西電力本店ビル前で3月12日から14日にかけて、若狭地域の脱原発リーダーのひとりである明通寺(福井県小浜市)住職、中嶌哲演さんが「ハンスト(ハンガーストライキ)」に決起したので、激励と取材に13日関電本店を松岡社長とともに訪れた。

関西電力本店前には中嶌さんのハンストを、支援する人びとが30名ほどあつまり、希望する人が順次発言をおこなっていた。水戸喜世子さんの姿もある。ご挨拶をすると「これ読んでください。福島で田中俊一がとんでもないことを言い出しているんです」とご自身が作成されたビラを手渡してくださった。飯館村に移住した元原子力規制委員会委員長田中俊一の「罪」は後日じっくり追及する。

参加による発言に続いて、中嶌さんが次のようにお話された。

中嶌哲演さん

◆若狭をこれ以上いじめないでください

どうも皆さんいろいろな貴重なご意見や励まし、ありがとうございます。
実はきょうお昼の時間、社員が昼食に出掛ける時間帯に、社員の出入りする前のところでお付き合いをしまして、私なりにスローガンというのではないんですけれどもね、こういうことを訴えました。
「若狭をこれ以上もういじめないでください。美しい若狭をもうこれ以上汚さないでください。ぜひ再稼働をやめてください」

それともう一つ、
「もしあなた方が14日に強行突破されれば、そうでなくても関電の顧客が離れていっている中でますます顧客離れが起こりますよ」とこういうことを言ったんです。「もしあなた方がこの再稼働を中止断念し脱原発の方へ方向転換されるならば、多くの市民が共感し、今迷っている人たちが踏みとどまって関西電力をむしろ支持するようになるでしょう」

そういうことをちょっと訴えたんですね。皆さんは「若狭をいじめないでください」というイメージがもう一つピンと来ないかもしれませんが、昨日お配りした断食宣言の添付資料の中にあるんですけれども、若狭には関西電力の原発11基、出力にすると977万キロワット、この若狭の11基は3カ所に集まっています。美浜町、大飯町、高浜町のこの三町ですね。ところが右側を見ていただきますとわかるんですけれども、関西の兵庫、大阪、和歌山県の沿岸部には火力発電所が12カ所37基出力にして1636万キロワット、こういうふうになってるわけです。

現実です。これは何人も否定できない客観的な事実ですね。関西電力は原発は必要で安全だということを言い通してきたわけですけれども、若狭のこの11基の原発は若狭の住民も福井県民も全然使っていません。全部超高圧電線でたくさんの鉄塔を伝わって関西2府4県に送られてるということなんです。これが客観的な事実。とすると、原発が必要で安全ならね、なぜ火力発電所同様関西の沿岸部に造れないんですかというのは、反対してきた若狭の住民や福井県民の本当の気持ちなんですね。だからそのことに照らして私がなぜきょう関電に向かって、「もうこれ以上若狭をいじめないでください、若狭を汚さないでください」と申し上げたかということをご理解いただきたいと思うわけです。申し上げた今回の第一はこのことなんです。

この事態を作り出したのは関西電力だけでしょうか。極悪の関西電力だけでしょうか。こういう事態になるまで若狭の原発の電気を享受してこられた関西の市民の皆さんにも、「いやあれは関電がやったことだから我々には責任なにもないですよ、0%ですよ」と皆さんはみなされるでしょうか。あとで対話をさせていただければと思います。だからこの関電の無謀な暴力的な若狭に対する再稼働を認めない、ストップをかけるためにはですね、若狭の地元の住民は麻薬的なお金をばら撒かれて麻薬患者になってしまっているんです。末期患者になっているんですよ。だからそういう人たちに、止める行動に立ち上がれと言われても、お尻をたたかれても難しいところがあります。それで関西の皆様にこの「断食宣言」で申し上げましたように、三番目をもう一度読ませていただきます。

中嶌哲演さん

◆なぜ私はこの断食に入ってるか?

なぜ私はこの断食に入ってるか、もともと宗教的な断食は第一の欲望の食欲を、自らの心身の浄化を内密に図ることを見せびらかしたり、対外的にそのことを知らせる必要はないんです。宗教的な場合はね。そういうことを顧みます時に、対外的な抗議や要求を掲げて断食することは慙愧の念に堪えません。宗教的に言えばむしろ邪道かもしれない。でも私は現代的な宗教者の断食としていま行ってるわけですが、しかし私個人だけでなく多くの市民の皆さんが、たとえ一食、一日断食でも試み、原発ゼロ社会を目指す運動の共通口座を作り、その食費をそれに振り込むというような、いつでもどこでも誰でもできるアイディアが実現できないものでしょうか、という訴えをしているわけです。

ここにもこれまで私はさんざん訴えてきたんですけれども、なかなか具体化しませんでしたが、さいわい福井から原発を止める裁判の際の皆さんが私のアピール受け止めてくれて、「反原発断食一食分募金」というのを裁判の費用とは別枠で取り扱ってくれるようになりました。断片的に言い出しっぺの福井県からこの運動を広めていこうということなんですが、私はもっと全国版の運動が展開できればいいなと。反対運動のマイナーな勢力だけでやっているのではなしに、広汎多数の市民、なにもここに来てもらう必要はありません。自分の家庭であるいは職場で一食抜いてみようかと、その一食抜いた食費を反原発、脱原発の運動にカンパしようと。これは我々の反対運動体の枠を乗り超えるものすごく大きなの不特定多数の市民に対しての呼びかけになるわけです。

中嶌哲演さん

◆命を革める〈革命〉 これまでの生活や価値観に問い直してもらう

そしてその中で、皆さんが少しでも断食をし、カンパをしてもらえば、そのことをさっき坂本さんは「革命」という言葉を従来のイメージで革命はどうだろうということであったんですけれども、私の考えている革命というのは宗教的な面からいうと「命を革める」という文字なんです。

何もラディカルな軍事的なこと暴力革命を起こすというようなそういうイメージではなくて一人一人のまず命を革めていくという、これまでの生活や価値観に問い直してもらうそういう意味合いの、例えば一例として一食断食、その食費を反原発運動にカンパするというようなこと、これがどんどん集まってくれば不特定多数の皆さんと共に関電にブレーキをかけることができるという、そういう非暴力・不服従の静かな革命を、いつでもどこでも誰でもできることを私は訴えたいと思っています。

宗教者が非暴力ということをいうと、「とにかくおとなしくしていて何もしない、抵抗しない、権力、力のあるものがどんどん事を進めてもそれを傍観してる」というふうに、非暴力という言葉がややもすると受け止められて来たんですが、ところが非暴力、これはガンディーの言葉です。この精神でもって「権力なんかのやることに絶対服従はしないけれどもそれに対して抗議するのは暴力的なことはやらない」、非暴力平和的な手段を講じていく、ガンディーはインドの大英帝国の植民地からの解放を最終的に勝ち取ったわけですね。そういうことを私としては革命の中に意義を含ませたつもり。

今回の再稼働3号に対して、私たちは確かに興趣傍観しています。関電はこういう理不尽な暴力的なことをやってもスイスイ通っていくんだということをやっぱりそれは反省してほしいという願いを込めて私来ています。先程言いましたように、顧客は毎月毎月6万人離れていってるんですけれども、今回この3号の再稼働に抗議の声、力が強まれば強まるほど、この顧客離れが強行突破すれば増えると思ってます。それが4号機を食い止めていく上での、滅多に4号機を安易に動かせないというそういう空気を作っていくことにも繋がっていると思いますので、今日明日最大限なんとかここで皆様と共に声を上げたいと思っております。ありがとうございました。

関電本店前にて(2018年3月13日)

◆非暴力・不服従の静かな革命を

この日は中日新聞が取材に訪れ、中嶌さんに詳しい話を取材していた。翌日には共同通信の取材も予定されているとのことであった。しかしどうして中嶌さんが「ハンスト」に立ち上がられたのか。その詳細までを報じることは出来ないであろう。大飯原発3号機は3月14日に再稼働されてしまったけれども、「大飯原発3・4号機の再稼働中止を求める断食宣言―非暴力・不服従の静かな革命を―」の全文を以下掲載する。

中嶌哲演さんの断食宣言「大飯原発3・4号機の再稼働中止を求める断食宣言―非暴力・不服従の静かな革命を―」(1/2)

中嶌哲演さんの断食宣言「大飯原発3・4号機の再稼働中止を求める断食宣言―非暴力・不服従の静かな革命を―」(1/2)

この日は松岡と私が関電本店前を訪れ、ご挨拶と激励、さらに松岡が脱原発への決意と『NO NUKES voice』のご紹介をした。無料で差し上げようと4冊を持参したが、皆さんから「せっかくですから買わせてください」と貴重なお申し出を頂き、4冊が読者の手元にわたることとなった。

何度でもひるむことなく声をあげ、行動しよう。私たちは決して劣勢ではない。彼らは再稼働するのに全力を傾注するだけで精一杯だ。大飯原発3号機は再稼働されてしまったが、反(脱)原発に向けた市民の意思に揺らぎはない。

中嶌哲演さんと松岡利康・鹿砦社代表

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

『NO NUKES voice』15号 〈3・11〉から7年 私たちはどう生きるか

多くの人たちと共に〈原発なき社会〉を求めて『NO NUKES voice』