ブログ『野次馬雑記』より

 

ブログ『野次馬雑記』より

横堀要塞建設は1977年の12月にはじまった。ちょうど三ノ宮さんの畑は野球のグラウンドのような広さの正方形で、その北端の杉林に面した場所に要塞は造られた。地下一階、地上三階の鉄筋コンクリート造りである。だが、明けて78年1月段階では、まだ2階と3階は骨組みのままだった。要塞を建てている「グラウンド」の反対側、要塞をバックスクリーンのあるスコアボード棟に見たてるなら、ベンチの位置にある作業小屋で暖をとりながら、中島みゆきの曲を聴いた記憶がある。荒井由実(ユーミン)の曲も新鮮な時代だった。2月6日、未完成の要塞の最上階部分に20メートルの鉄塔が建てられたのだ。滑走路(未完の横風用)の延長に建てられる鉄塔の高さが航空法49条に違反するとの警告は何度も受けていた。未完成にもかかわらず、大量の火炎瓶が運び込まれたのだ。その意図は何だったのか?

わたしの大学の先輩でもあるYさんのブログ『野次馬雑記』に転載されている、管制塔占拠闘争にかかわったH氏の手記(https://blogs.yahoo.co.jp/meidai1970/)を読んでも、2月要塞戦の明確な意図は書かれていない。鉄塔が滑走路の延長上の妨害物とはいえ、まだ完成はおろか用地の買収すら目途が立っていないのである。航空法49条に本当に抵触するのか否か、あるいは当該である千葉県警と警視庁(警察庁)の判断がどうなるのか、それはおそらく本番の開港阻止決戦の計画にかかわる前哨戦だったはずだ。同時にそれは、戦術の検証にもなるはずだった。

ブログ『野次馬雑記』より

 

「三里塚管制塔占拠闘争40年 今こそ新たな世直しを!3.25集会」は3月25日午前11時より連合会館にて

 

3.25集会で上映される映画『三里塚のイカロス』

事実、東京と千葉をむすぶ京葉道路に配置されたレポ(偵察役)は、警視庁から重機と機動隊のカマボコ(輸送車)が派遣されるのを現認している。ぎゃくにいえば、千葉県警はこの段階での取り締まりをためらったのであろう。いずれにしても、サイは投げられた。

要塞にたてこもった40人ほどの支援は、現闘の責任者クラスが多かった。反対同盟からは内田寛一行動隊長、婦人行動隊長の長谷川タケさん、小川むつさん(副行動隊長)、辺田の石井英祐さん、横堀の熱田一さん(のちに熱田派代表)、木の根の小川源さんの6名の幹部である。緒戦から火炎瓶が降りそそぎ、ガソリンの炎に包まれた毛布が落ちてくる。そんな光景がテレビ画面に報じられて興奮したものだ。わたしは党派の事務所に呼び出されて、そのまま労働者が運転するクルマで現地に運ばれた。空港付近に着いたときには、ヘリコプターのサーチライトに照射された要塞の鉄塔が夜空に、鮮明に浮き上がっていた。黒い針葉樹林のむこう。真冬の暗い夜空に、そこだけが切り取られたような、明るいステージに見えたものだ。

闘争現場はしかし、悲惨をきわめるものだった。凍てつくような極寒の夜空に、放水と催涙弾が飛びかう。鉄塔上では4人の支援活動家が抵抗をつづけていた。要塞を遠くのぞむ「グラウンド」に機動隊と対峙しながら、われわれはジュラルミンの盾と揉み合ういがいに何もできないのだ。まる24時間以上も激闘に耐え、飲まず食わず不眠不休で闘っている要塞戦士たち……。

ビニール袋に入れていたと思われるライターで、火炎瓶に着火して鉄塔下に炎が炸裂したときは驚いたものだ。そのかん、ゲートに火焔瓶が投げられた報が届いて、支援のデモ隊から喝采が上がるなど。夜を徹して対峙戦がつづいた。やがて夜が明けて、反対同盟の要請で鉄塔に登っていた戦士たちは投降した。不眠だったわたしたちも団結小屋からのクルマに収容されて、その行程で幻を見た記憶がある。夜明けの風景にあらわれた立木が、怪獣のように見えたのだった。あの怪獣は、何だったのだろうか。

3月1日の現地集会は、北総台地特有の赤風が吹きすさぶ中で開かれた。そしてこの時に、わたしは要塞戦への参加を示唆されたのだった。学内での運動に行き詰まりを感じていた矢先のことで、しばらく拘置所にでも行って資本論を本気で読んでみるか、などと軽く考えるいっぽう、のっぴきならないことになったなとも思ったものだ。そして反対同盟農民の闘いに呼応する決意を固めては、憶しがちな心を鼓舞するのだった。のちに暴力団取材でヒットマンたちの憶する心境を知って、似たようなものだなと思ったことがある。(つづく)


◎[参考動画]映画『三里塚のイカロス』予告編

▼横山茂彦(よこやま・しげひこ)
著述業、雑誌編集者。3月横堀要塞戦元被告。

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〈3・11〉から7年 私たちはどう生きるか 『NO NUKES voice』15号