◆やっぱり噴き出した政治スキャンダル

本欄でも第4次安倍改造内閣が、女性の起用をわずか1人であること。そして起用された片山さつき地方創生担当相に「2人、3人分の活躍を」などという言い訳を安倍総理がしていることを批判してきた。その「2人、3人分の活躍を」安倍総理に期待された片山さつき大臣が、古巣である財務省・国税局に口利きをすることで、利得(賄賂)を得ていたというのだ。なるほど、大いに活躍されているようだ。

事件の発端は、製造業を営むXという人物が会社に税務調査が入ったことで、青色申告の承認が取り消されそうになっている状況をなんとかしようと、片山事務所に相談したのだという。片山さつきの私設秘書である南村博二を紹介され、この南村氏から指定された口座に100万円を振り込んだと、X氏は証言しているのだ。

 

2018年10月17日付け文春オンラインより

◆委任契約は成立している

「週刊文春」(10月18日発売号)から、X氏の証言を引用しよう。

「2015年当時、私の会社に税務調査が入り、青色申告の承認が取り消されそうになっていました。何とかならないかと片山先生に相談したのは紛れもない事実です。そして片山事務所の秘書を通じ、私設秘書だった南村博二という男を紹介されました」

「南村氏に『とにかく青色申告取り消しだけは困るんです』と話すと、『大丈夫ですから、安心してください』などと言われ、税務調査の対応をお任せすることにしたのです。そして15年7月、指定された口座に100万円を振り込みました。これで片山先生が働きかけてくれると信じていました」

この時の物証を「週刊文春」は入手している。「書類送付状」と書かれた文書である。そこには差し出し人として、参議院議員片山さつき、秘書・税理士南村博二と記されているのだ。文面にはこうある。

「着手金100万円を、至急下記にお願い申し上げます。ご確認後、国税に手配させて頂きます」

政治家への賄賂を通じた依頼が法的に問題があるとしても、これで委任契約は成立しているのだ。

100万円を振り込んだものの南村氏から報告もなく不安になったX氏は、参議院会館にある片山氏の事務所を訪問したという。執務室で100万円を振り込んだことを片山氏に伝えると「南村にすぐ連絡して!(こっちに)振り込みさせなさい!」などと別の秘書に激昂したのだ。

そして、片山氏は最終的に、X氏にこう話したというのだ。「じゃあやっておきますよ。任せてもらえれば、大した問題じゃないから」「うまくいったら、百万円なんて決して高いものじゃないわよね」このやり取り、まるでひと昔前の政治家(口利き屋)ではないか。

◆契約不履行ではないのか

けっきょく、依頼された青色申告の承認は得られなかった。委任契約は成立しているのだから、片山事務所側の契約不履行(口頭であれ何であれ、頼み頼まれる両者に「委任契約」は成立する)である。にもかかわらず、片山事務所はなかったことのように言うのだ。以下は「週刊文春」の取材に対する片山側の返答である。

「事務所にご質問の会社が税務調査を受けているようだとの連絡があり、当時の秘書が片山に相談し、知り合いの税理士である南村を紹介しました。南村税理士に聞いたところ、税理士報酬をもらった旨を知りました。事務所の認識では、南村氏は15年5月に私設秘書を退職しています」

これに対してX氏は「私は税理士の南村氏に仕事を依頼したのではなく、片山事務所から彼を紹介されただけで、片山先生にお願いしたと認識しております。わざわざ100万円を払って南村氏に頼む理由がありません」と語っている。この報道をうけて、他の報道機関の質問に、X氏があらためて答えている。

「私設秘書から要求された100万円を指定された口座に振り込んだのは事実です」「口利き依頼について、不徳の致すところで反省している」などとするコメントを発表したのだ。X氏の言葉を信じるかぎり、事実関係はもう明らかだろう。

◆本当に裁判をするつもりはあるのか?

X氏の証言が事実であれば、片山事務所の契約不履行(民事)および詐欺罪(刑事)が成立する可能性が高い。なぜならば、国税当局に承認取り消しされた処分を撤回することは、片山大臣側が利得を得ている以上、まったく不可能だからだ。辞任した甘利明元経済再生担当相による、口利き賄賂事件と同様である。いや、この事件は立件されようがされまいが、政治資金規制法や公職選挙法などとは比べものにならない、政治家の収賄疑惑なのである。

それと同時に、急遽おこなわれた記者会見において、片山大臣は何ら具体的な反証もなく「法的措置を講じる」と明言した。つまり公判廷において、事実関係を明らかにすると言っているのだ。われわれはこれには注目せざるをえない。

今回の件で、片山大臣は「口利きもしたことはないし、100万円も受け取ったこともない」などと報道内容を否定している。ここまで事実関係の認識が対立しているのであれば、法廷で決着をつけるしかないだろう。上述したとおり、片山大臣は「法的措置を講じる」と明言していることだし――。

こうした政治スキャンダルに見舞われた政治家や官僚のほとんどが「法的手段に訴える」などと言いながら、そのじつ何も具体的な訴訟行為をしてこなかったのは、多くの国民が知るところだ。

 

片山さつき氏HPより

◆口先だけの「法的手段」

たとえば、本欄でも政治団体の不明朗な献金を指摘した下村博文元文科大臣・現憲法改正推進本部長は、加計学園から200万円の献金を受けている事実を暴露されたとき「都議選が終わったら釈明する」「法的な対応を検討している」などとしながら、何らの弁明も法的措置も講じていない。その時だけ「告訴する」と言うことで、報道の沈静化をはかるのが自民党政治家の常套手段なのだ。

菅官房長官も2015年に日本歯医師連盟からの迂回献金を「週刊ポスト」に報道されたさいに、同じく「法的措置を検討している」と言いなすことで沈静化をはかり、その後は何もしていない。火のない所に煙は立たないの例えではないが、法的手段に訴えることが出来なかったのである。

◆敗訴して傷口をひろげた稲田朋美

いや、みずからと配偶者が弁護士であるがゆえに、実際に訴訟に踏みきった自民党政治家もいる。安倍総理のお気に入りとして、今回の人事で筆頭副幹事長におさまった稲田朋美議員である。「サンデー毎日」在特会との親密な関係を報じられたとき、稲田側は名誉毀損の訴訟を起こすも、一審・二審で敗訴。さらに「週刊新潮」に寄附行為を報じられたときも、訴訟を起して敗訴している。このときは双方のやり取りの中で新潮側が、訴訟を予告されたことを「恫喝」として「弁護士バカ」と表現したことから「名誉毀損」を要件としたものだった。だが今回の片山大臣の場合は、単なる名誉毀損で済まされる問題ではない。収賄をめぐる、政治家としての政治生命を左右する事実関係が争点となるのだ。

この原稿を編集部に送った翌日の10月22日、片山さつき地方創生大臣は、週刊文春を相手取って1100万円の損害賠償訴訟に踏み切った。その覚悟はあっぱれである。ぜひとも注視していきたい。


◎[参考動画]片山さつき大臣が文芸春秋を提訴 口利き疑惑報道で(ANNnewsCH 2018/10/22公開)

▼横山茂彦(よこやま しげひこ)

著述業・雑誌編集者。主な著書に『軍師・黒田官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)、『真田一族のナゾ!』『山口組と戦国大名』(サイゾー)など。医療分野の著作も多く、近著は『ガンになりにくい食生活――食品とガンの相関係数プロファイル』(鹿砦社LIBRARY)

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