不用意な発言、自分の言葉で答弁ができない桜田義孝大臣(五輪担当相・サイバーセキュリティ戦略担当相)が批判の矢面に立たされている。これほど無能な大臣が辞任(更迭)できずに、しどろもどろになりながら居座る不思議は、あまりにも情けない日本の政治文化を映しているというほかない。まずは、その桜田大臣の惨憺たる「政治手腕」を確認しておこう。いまだに辞任しないというのであれば、水に落ちた犬は叩けのことわざどおり、追撃の狼煙を上げるしかない。

発言を確認しておこう。池江璃花子選手が白血病と診断されたことについて、桜田大臣は記者団に「金メダル候補で、日本が本当に期待している選手なので、がっかりしている」「早く治療に専念して頑張ってもらいたい。また、元気な姿を見たい。1人リードする選手がいると、みんなつられて全体が盛り上がるので、その盛り上がりが若干、下火にならないか心配している」と語ったのだ。


◎[参考動画]桜田五輪大臣 がっかり発言を謝罪・撤回(ANNnewsCH 2019/02/13)

ようするに、オリンピックで金メダルが減しかねないことに落胆し、リードするはずだった池江選手の出場が危ぶまれるので、盛り上がりが下火になると心配しているのだ。すなわち、選手はメダルを獲得するためのコマ、手段にすぎず病気になってしまったことを「がっかり」だと言うのだ。そこには選手の病状を気づかう気持ちは微塵も感じられない。ただひたすら、国威発揚の場としてのオリンピックの盛り上がりを心配する、常識はずれの政治屋の姿があるばかりだ。

そしてそれは、端なくもオリンピック選手が国に奉仕する存在、盛り上げる存在だと位置づけられていること。さらにいえば、オリンピックは国家意識の盛り上がりというナショナリズムを本質にしていることを露呈したのである。そうでないというのなら、オリンピックから国旗を排除すべきであろう。桜田大臣を批判する人々も、そのことには無自覚である。アスリートファーストを云うならば、国威に従属したオリンピックそのものの改革が必要なのである。さて、桜田大臣である。なぜ、このような人物が大臣席に座っているのだろうか。ふたたび、これまでの惨憺たる行状を確認したい。


◎[参考動画]櫻田義孝東京オリンピック・パラリンピック担当大臣 就任記者会見(2018/10/03)

◆ほとんど無能としか思えない言動

桜田大臣は2016年に二階派に入会し、2018年の第4次安倍改造内閣において初入閣した。記憶に新しい大臣就任会見で「東京オリンピック・パラリンピック競技大会担当大臣の桜田義孝です」と自己紹介するところを「東京ぱらんぴっく、ぱらぴっく、パラピック競技大会、東京パラリンピック競技大会担当大臣の桜田義孝でございます」と3回も間違えた上に「オリンピック」を飛ばして自己紹介したのだった。

2018年11月14日の衆議院内閣委員会において、無所属の今井雅人議員から「自分でパソコンは使っているのか?」という質問に「秘書とか従業員に指示してる。自分でパソコンを打つことはありません」と答弁。国民民主党の斉木武志議員からは、イランの軍事施設がUSBメモリーにより悪質なコンピューターウイルスに感染した事例について「日本の原発もサイバー攻撃を受ける可能性がある」とした上で、「日本の原発にもUSBメモリーはありますか?」と質問され「使う場合は穴を入れるらしいが、細かいことは、私はよくわからないので、もしあれだったら私より詳しい専門家に答えさせるが、いかがでしょう」などと答弁している。

パソコンを使えない大臣がサイバーセキュリティ担当であるという笑えない事態は世界に拡散され、大いに笑われた。英ガーディアンは「もしハッカーが桜田大臣を標的にしても、何も情報を盗むことができない。彼は最強のセキュリティーかもしれない!」などと皮肉を報じたものだ。


◎[参考動画]パソコンしないけど「事務所は対策万全」(ANNnewsCH 2018/11/16)


◎[参考動画]「英語できず首相無理」 桜田五輪相(KyodoNews 2018/12/20)

さかのぼる2013年10月には、福島第一原子力発電所事故で発生した指定廃棄物の処理について「原発事故で人の住めなくなった福島(東京電力の施設)に置けばいい」と発言してもいる。2016年1月14日には、従軍慰安婦に言及し「職業としての売春婦だった。それを犠牲者だったかのようにしている宣伝工作に惑わされすぎだ」との発言をし、その日のうちに撤回している。まさに、修正不可能な政治的失言者。

2018年11月5日の参議院予算委員会では、立憲民主党の蓮舫議員から東京大会の基本コンセプトなどを訊かれて即答できず、事務方の助けを借りながら答弁している。そのさいに大会予算の国の負担分「1500億円」を「1500円」と言い間違えた。同じ答弁は最近もくり返された。

蓮舫議員との質疑については、閣議後の記者会見で自身がちぐはぐな答弁をしたのは蓮舫側から事前に質問通告がなかったためと主張したが、通告済みだったことが明らかになった。しかし「事実上と若干違う」として撤回したものの、けっきょく謝罪はしなかった。そのさいに、蓮舫(れんほう)の名前を「れんぽう」と言い間違えている。オリンピック憲章を「読んでいない」と答弁したのも記憶に新しい。


◎[参考動画]桜田大臣ちぐはぐ答弁 聞いた蓮舫議員はあきれ顔(ANNnewsCH 2018/11/27)


◎[参考動画]ちぐはぐ答弁の桜田大臣 “事前通告なし発言”撤回(ANNnewsCH 2018/11/08)

◆キングメーカーとしての二階派

それにしても、ここまでお粗末な政治家が大臣で、安倍総理はいまなお「職務をまっとうして欲しい」という国会答弁をくり返している。クビに出来ない理由があるのだ。その理由とは、自民党のキングメーカーとして君臨する二階俊博の存在にほかならない。二階派(志帥会)は河村健夫、平沢勝栄、中曽根弘文といった実力者も擁している。

派閥そのものは中曽根派も合流した経緯もありタカ派体質とされているが、亀井派いらいの寛容な体質を持ち合わせている。そのあらわれが、細野豪志(元民主党)の加入である。そのいっぽうで、二階氏の政治力は安倍政権をコントロールするほど、キングメーカーとしての存在感をしめしているのだ。本欄で何度も批判してきた片山さつきが辞めさせられないのも、この二階派だからである。二階俊博が「田中派最後の政治家」と言われるゆえんである。

さきに本欄では安倍総理(総裁)による石破派イジメの実態を暴露したが、派閥の均衡のうえにしか存在しない自民党政権において、桜田大臣のような恥ずかしい存在を辞めさせられない。このような事態は、今後も枚挙にいとまなく出てくるであろう。


◎[参考動画]ザ・櫻田 衆議院議員・桜田義孝ものがたり(櫻田よしたか 2012/10/25)


◎[参考動画]第84回勝兵塾月例会 衆議院議員 櫻田義孝様(shoheijuku 2018/05/18)

▼横山茂彦(よこやま しげひこ)
著述業・雑誌編集者。主な著書に『軍師・黒田官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)、『真田一族のナゾ!』『山口組と戦国大名』(サイゾー)など。医療分野の著作も多く、近著は『ガンになりにくい食生活――食品とガンの相関係数プロファイル』(鹿砦社LIBRARY)

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