「共同出版」商法を行っていた株式会社日本文学館が、消費者庁から業務停止命令を受けた。
「共同出版」商法が出始めたのは、20年前ほど前である。
「共同出版」とは、著者自身が費用の一部を負担し、出版社が制作や流通に責任を持つとするものだ。つまり出版社は、書店に本が並ぶと約束する。
以前、新風社などが「共同出版」商法で問題になった。「著者自身が費用の一部を負担」どころか、実際にかかる製作費(編集、印刷、製本)の2~3倍を著者に出させ、書店にはほとんど並ばなかったからだ。
藤原新也や有田芳生などがこの商法のあくどさを指摘し、新風社から本を出した元大学教授ら3人が民事訴訟を起こすなどの問題になり、2010年、同社は倒産した。

株式会社日本文学館に、消費者庁から業務停止命令が出たのが、9月19日。以下は、消費者庁ホームページの記載である。

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平成25年9月19日
特定商取引法違反の電話勧誘販売業者に対する
業務停止命令(3か月)について
○ 消費者庁は、自費出版(役務提供)の電話勧誘販売を行っていた株式会社日本文学館(東京都新宿区)に対し、本日、特定商取引に関する法律第23条第1項の規定に基づき、平成25年9月20日から平成25年12月19日までの3か月間、電話勧誘販売に関する業務の一部(新規勧誘、申込受付及び契約締結)を停止するよう命じました。
○ 認定した違反行為は、再勧誘、不実告知及び適合性原則違反です。
○ 処分の詳細は、別紙のとおりです。
1.株式会社日本文学館は、「流通出版」と称する単行本の出版・販売支援の役務提供及び「ノベル倶楽部」と称する文庫本の原稿執筆・出版・販売支援の役務提供を行っていました。
2.同社は、同社のウェブサイト、リスティング広告(※)又は月刊誌に、「自作の小説や詩を募る」とする広告を毎月掲載した上でコンテストを年間30回程度開催し、コンテストに応募した消費者に対して、特別に選ばれたかのような印象を与えるなどして、流通出版又はノベル倶楽部の役務提供について電話勧誘販売を行っていました。
※インターネットで検索したキーワードと連動して表示される広告
3.認定した違反行為は以下のとおりです。
(1)同社は、流通出版又はノベル倶楽部の役務提供契約について電話勧誘をするに際し、消費者が「収入が一銭もない状態でローンを組むこともできない状態で、無理です。」、「お断りすることにしましたので、これから手紙を送ることにしました。」などと、当該役務提供契約を締結しない旨の意思を表示したにもかかわらず、その電話で勧誘を続け、また、複数回にわたり電話をかけて勧誘をしていました。
(再勧誘)
(2)同社は、ノベル倶楽部の役務提供契約について電話勧誘をするに際し、当該役務の内容が添削から出版・販売までのトータルサービスであり費用が63万円するにもかかわらず、「我が社で添削だけをしてあげましょう。そうすれば21万円あればいいです。」などと、添削サービスだけを受けられるかのような不実のことを告げていました。
(役務の種類に関する不実告知)
(3)同社は、ノベル倶楽部の役務提供契約について電話勧誘をするに際し、「印税が入ってくるので、支払いに充てられます。」、「他の方もそうしています。」、「選び抜かれた作品だけがノベル倶楽部の対象作になります。」と告げるなど、当該役務提供を受ける者の判断に影響を及ぼすこととなる重要なものにつき、不実のことを告げていました。
(判断に影響を及ぼすこととなる重要なものに関する不実告知)
(4)同社は、流通出版又はノベル倶楽部の役務提供契約について電話勧誘をするに際し、無職で年金や生活保護に依存して生活をしているような者に対し、財産の状況に照らして不適当と認められる勧誘を行っていました。
(適合性原則違反)

**********  引用終了 ************************

コンテストを行うなど、やり口は新風社などと変わらない。名称が「共同出版」から「流通出版」に変わっているだけだ。「流通」と言って、書店に並ぶことを強く意識させているのだから、より悪質とも言える。

これは、昔から今でもある自費出版とは、似て非なるものだ。
たとえば、還暦のパーティで配る自分史の本を、自費で作る。
また、同人誌でコミックやそれに関係する本なら、コミックマーケットで売るということもあるだろう。
同人誌やミニコミ専門の書店もあるので、そこで売るという方法もある。
これが、自費出版である。
今では、大手出版社でも、自費出版も手がけていることを広告で打ち出している。
あらゆる方法で稼がなければならないという出版不況の実情を感じるが、まともな出版社なら、自費出版の本が一般の書店に並ぶなどということは決して言わない。
読者が対価を払うに価する本だと出版社が認めたならば、著者に金銭的な負担を求めるわけがない。

日本文学館では以下のごとく、ホームページに目立たない告知を出している。

(前略)
今回の消費者庁の措置命令を真摯に受け止め、今後、このようなことが起きないように管理体制の強化を図り、役員以下社員一丸となって再発防止に向けて取り組んで参りますので、何卒ご理解を賜りますよう宜しくお願い申し上げます。

平成25年9月19日 株式会社日本文学館
代表取締役 向 哲矢
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だが、ホームページのトップには、「本を出そう!!!」「出したい原稿を募集中」の文字が躍っている。

「振り込め詐欺」「母さん助けて詐欺」のように被害に遭うのは一般の人々ではなく、本を出したいという希望を持った一部の人々だ。
それゆえあまり認知されず、同様の商法がまかり通っているのだろうが、流通しないものを流通するとウソをついているのだから、明らかな詐欺だ。
新風社のように、倒産してしまうのが、正しい末路だろう。

(鹿砦丸)