さとうしゅういち
◆能登半島大震災が示した「震度5弱でも道路が波打つ」現実
能登半島大震災では、震度5弱の内灘町で、道路が波打ち、橋が傾き、下水管が破断しました。これは、沖積層が厚い 地下水位が高い 造成地が多い という“都市地盤の弱さ”が原因でした。

広島市の市街地は、これらの条件が内灘町とほぼ同じか、むしろ悪い。
広島市街地の地盤特性は、①太田川デルタの沖積層で、地下水位が高い。 ②明治以降の埋立地(宇品・出島・マリーナホップ周辺)も多く、造成地(安佐南区・西区)も多く、③さらに、旧河道が多数(紙屋町・八丁堀・比治山下、西区福島町)です。つまり、震度5弱~6弱でも道路が波打つ可能性は高い(図は広島市HPより)。
◆液状化は「道路・橋・鉄道」を一気に破壊する
液状化は建物だけの問題ではない。むしろ、都市インフラの破壊が最大のリスクだ。
●液状化で起こること ①道路が波打つ ②橋脚が沈む ③高架が傾く ④下水管が破断 ⑤地下鉄が浸水 ⑥JR線の路盤が沈む ⑦港湾の護岸が崩壊 特に広島市の場合、広島駅周辺は最も液状化しやすい地盤。
◆その場所に“巨大県病院”を集中させて大丈夫か
広島県は、県立病院・旧JR広島病院・中電病院などを統廃合し、巨大県病院をエキキタに集中させる計画を進めている。しかし、エキキタは以下の理由で「最悪の立地」だ。
●エキキタの弱点 ①沖積層が極めて厚い ②地下水位が高い ③旧河道が走る ④周囲は高層ビル密集 ⑤道路が狭く、液状化で通行不能になりやすい ⑥救急車のアクセスが“一点集中”で脆弱 ⑦ヘリポートは周囲の高層ビルで危険 つまり、地震で道路が波打てば、巨大病院は孤立する。能登半島のように、「病院は無事だが道路が壊れて患者が運べない」という事態が広島駅北口で起こり得る。
◆公的病院は“分散配置”が正しい
本紙(広島瀬戸内新聞)が以前から主張してきたように、広島市は川で分断されやすく、災害時には“島状都市”になる。
だからこそ、公的病院は複数の島(地域)に分散配置するのが合理的です。
●分散配置の候補 ①南区宇品(県病院を耐震基準に満たない部分を改築) ②中区(中電病院) ③東区二葉の里(旧JR広島病院) これらを残し、④安佐北区(安佐市民病院)へのアクセスを芸備線と可部線の直通で改善すれば、災害時の医療アクセスは圧倒的に安定する。巨大病院を一箇所に集中させるのは、昭和的な「大規模=正義」という発想であり、現代の災害リスクには全く合わない。
◆行政のバックアップ拠点は“内陸の強固地盤”に必要
広島市の行政機能は、中区・東区・南区に集中している。しかし、これらはすべて液状化リスクが高い地盤だ。
●行政バックアップ拠点の候補 西風新都(石内・大塚)(①花崗岩の強固地盤 ②高台 ③液状化リスクほぼゼロ ④道路網が広い ⑤広島高速4号線で都心と直結)
このほか沼田・伴地区や安佐北区の高台(口田・落合)が考えられます。これらは、災害時の行政・医療・通信のバックアップ拠点として最適です。
◆呉日鐵跡地に防災省を
瀬戸内海の巨大断層は、しまなみ海道から今治、高縄半島、周防大島、柳井沖、上関へと連続して伸びています。能登半島地震が示したように、断層は地形に沿って連鎖破壊します。
広島市街地は液状化危険度Aランクであり、震度5弱~6弱でも道路が波打ち、橋が沈み、都市機能が麻痺する可能性が高い。その中で、呉日鐵跡地は瀬戸内地震帯の“都市壊滅ゾーン”から外れ、地盤が比較的安定し、津波の直撃も受けにくい場所です。
本紙(広島瀬戸内新聞)が主張してきた「呉日鐵跡地に防災省を軸に、防災・環境テクノロジーの首都を」という構想は、今回の巨大断層発見によってますます正当性を増しました。ただし、津波を想定した2mのかさ上げ、地盤強化、免震構造、高台アクセスの確保など、リスクを踏まえた設計が不可欠です。
「個別断層前提」から「連動型・複合型災害前提」へ 広島と日本の未来を守るために
これまで広島県や広島市の防災対策は、「南海トラフ」「芸予地震」「五日市断層」「己斐断層」など、個別の活断層ごとに被害を想定する方式で作られてきた。しかし、能登半島大震災が示したように、地震は一つずつ起こるのではなく、複数の断層が時間差で連鎖破壊し、M6級の“飛び火”が周辺で多発します。
さらに、国の原発審査基準や自治体の原発避難計画も、連動型・複合型災害を想定していません。上関の核ゴミ貯蔵施設は、しまなみ海道巨大断層帯の延長線上に位置し最悪の立地条件を抱えています。豪雨災害と地震災害が同時に起こる“複合災害”も、能登半島で既に現実となった。防災は、「個別断層前提」から「連動型・複合型災害前提」へ抜本的に転換しなければならない。しまなみ海道巨大断層帯を軸に、連鎖破壊・飛び火・豪雨との複合災害を想定した新しい防災体系を構築することが、広島と日本の未来を守る唯一の道である。
▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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