『錯乱の時代を生き抜く思想、未来を切り拓く言葉  鈴木邦男ゼミin西宮報告集 Vol.3』(鹿砦社)を読んだ。あまりの内容の濃さに、どのように紹介したらいいか迷う。
登場するのは、上祐史浩、神田香織、湯浅誠、前田日明、青木理、内田樹。それぞれの世界で、極めて尖った活躍をされている方々ばかりだ。
これを1度に紹介すると、各人のプロフィールをただ並べるということになってしまう。
そこで、一人一人の章を紹介することにしたい。

同書は、2010年9月から鹿砦社ホームグラウンド・西宮で行われている「鈴木邦男ゼミin西宮」の2012年10月~2013年7月までの全6回を完全収録したものだ。
案内役となっているのが、鈴木邦男。新右翼「一水会」最高顧問だが、右翼という枠にとらわれない発言を行っている。
ジャーナリストの青木理と鈴木邦男との出会いは古く、20年ほど前。当時、公安部の担当だった青木は、公安部の一番ホットな監視対象であった鈴木に取材をしているのだ。
青木は公安部担当だった経験を生かして、『日本の公安警察』を著す。その興味深い成り立ちについては、同書を参照して欲しい。

青木理は、テレビ朝日系列『モーニング・バード!』のレギュラーコメンテーターも務め、メディアのど真ん中にいる。
それでも、「権力の監視」を掲げるメディアが、その役割をほとんど果たしていないことを、同書で、青木は鋭く切り込んでいる。

本ブログでも折に触れ書いてきたことだが、リベラルと見られているメディアでも、警察の批判に繋がるようなことはほとんど書かない。
有罪判決を受けた人物に冤罪の可能性が出てきた場合でも、新証拠が出てきたという事実さえ報じない。

そのカラクリを青木は明かす。日本の新聞社には、世界には珍しい「サツ回り」の制度がある。警察に張り付いて情報を取るもので、ほとんどの新人記者に課せられる。
自然と警察にシンパシーを感ずるようになり、また警察と親しくならなければ、特ダネを他社に抜かれることになる。
会社としても、警察批判などをして嫌われたら、ネタをもらえなくなる、というわけだ。

「権力の監視」どころか、警察の下請け機関となっているのが、今のメディアだ。
同書で青木は、実体験から、その実情を鋭く抉っている。

(深笛義也)