3.11直後から毎日休みなく福島第一原発動向をブログで発信し続けてきた「onodekita」さんこと小野俊一医師。東電、福島、被曝をめぐる諸相からメディア・識者批判にいたるまで、縦横無尽に語ってもらった200分インタビューを8回に分けて随時掲載する。今回はその第4回目。

onodekitaさんこと小野俊一医師

 

◆早野龍五と坪倉正治の共通性

── 世論の誘導でいえば、わかりやすい御用学者はどうでもよくて、むしろ、わかりにくい御用学者の方がたちが悪いと感じます。例えば、早野龍五=東京大学教授などは非常にソフィストケイトされていて、「将来の危険」より「いまの安心」に誘導する「被災者と寄り添う」派の代表のように思えます。

早野龍五さんが測るといつも被曝量はゼロか基準値以下ですよね。県庁の食材もそうだったし、学校の給食も基準値以下。ホールボディーカウンターでも基準値以下でゼロになる。それで彼は放射線量が出ないから安全だというわけです。ただ、逆に言えば、放射能が出たら危険だということですよね? 私が早野さんに一番聞きたいのは、では早野さん、放射能は危険か? 安全か?ということです。測っても10ベクレルしかないというけれど、この10ベクレルはどうなのか? それが100ベクレルだったらどうなのか? 彼の言うことは逆にいえば、放射能の風評を広めているともいえます。

事故直後の彼のツイッターへのフォローワー数の増え方がおかしかったです。あまりに一気に急増していましたから。2011年の3月12日に彼のフォローワー数はその日だけでなんと16万人増えています。フォローワー数の伸びを時系列のグラフで見ると、この日の伸びがあまりに瞬間的に伸びたので、折れ線グラフの線が絶壁のように上がっている。どんなに注目されたとしても2~3日ほど徐々に増えてそれから急激に上がるのが普通です。一日で突然増えるというのは、たとえネットの反応が迅速だとはいえ、不自然です。かなりの数のやらせフォローワーがいたかもしれません。あるいはなんらかの国策が絡んでいるのかもしれません。普段は正しそうにしていながら、どこかで大きなウソをつける、かなりの曲者だと思います。

そもそも早野さんは原発を知らないです。知らないことをさも知っているかのように話せるというのは「できる人間」の能力で役人と似ています。おそらくそういう能力はものすごく高い人なのでしょう。反論に対して、しどろもどろにならずにきちんとある程度のことがいえる。矛盾の隠し方が上手い。事故直後に首都圏で大量の放射能が降った雨の日のツイッターでは、「春雨じゃ、濡れてまいろう」などと書き込んでいます。

早野さんもその一人ですが、1960年代の核実験ですでに日本の土壌には放射能がたくさんある。だから、多少の事故でもさほど変わらないかのようにいう学者が多い。でもこれはとても単純なデマでした。事故直後の放射性降下物の量は過去と三桁違っています。1万倍ぐらい桁違いに多かったわけです。ところが、彼はそれについて一切、反省の弁がない。ある一定の人たちは、早野さんのように東大の偉い先生で、穏やかな物言いのインテリの言葉を鵜呑みにする。偉ぶらないように見える偉い人ですよね。

── 南相馬市立総合病院の非常勤医として「現地発」の医療レポートを大手のニュースネットで書いている坪倉正治=東京大学医科学研究所医師はどう評価されますか?

坪倉さんはまだ大学院生じゃなかったでしたっけ? しかも、南相馬市に常駐している医師ではない。なのに「現地は安全安心ですよ」と言っているような印象が強いです。彼は「現地レポート」といいながら、南相馬ではあくまで非常勤勤務医。いまネットで調べたら、検診担当日も週に一回でしかも午前中だけですよ(笑)。だから、南相馬に常駐しているわけではないでしょう。他の非常勤医でも週2回とか3回なのに、彼は週1回。現地の南相馬にいるのは週に1日程度ではないでしょうか。伝え方はうまいし、ソフトな感じですから、その点で、立場的には早野龍五に近い感じがします。

◆専門家のレベルがまるで違う日本と米国

日本の一番悪いところは、原子力の専門家が必ず大学教授だということです。彼らのほとんどは原発の運転ひとつ、わかっていない。現場を知らない専門家は米国ではありえない。米国の原発専門家といえば、NRC(原子力規制委員会)が必ず出てくる。NRCは軍からも来ていて、原子力空母の管理など実際に現場経験が豊かな人たちです。米軍で実地トレーニングを受けて、原子力に詳しい人がNRCに行く。だから彼らは専門知識のレベルも高い。

対して日本の場合は専門家が大学教授。大学教授は現場の訓練をしていないし、そもそも原子力に関する専門レベルも低い。カビが生えたような古い知識しか持っていない人たちです。原発施設がどのぐらい広いのかさえ知りません。原発建屋に一度も入ったことのない人がいたってぜんぜんおかしくない。つまり米国と日本の原子力専門家というのは同じ「専門家」といってもぜんぜん中身が違う。

日本の専門家はただの学歴馬鹿が多くて、机上の論理の専門家。そんな人たちが日本の原子力政策を担っている。日本の政府機関の中枢で原発の現場にいた人はひとりもいないでしょう。そもそも日本ではトレーニングのしようがない。斑目さんみたいな大学教授に教えられても原子力の現場知識は身につきません。電力会社の人間でもそうです。実際に原発機器を作ったり、直接動かしているわけではない。それはメーカー側の仕事です。しかし、メーカーの現場の人が政府の原子力行政に関わることはほとんどない。[つづく]

[2014年6月26日熊本市 小野・出来田内科医院にて]

(構成=デジタル鹿砦社通信編集部)

ブログ「院長の独り言

▼小野俊一(おの しゅんいち)(小野・出来田内科医院院長)

1964年広島生まれ宮崎育ち。東京大学工学部(精密機械工学科)を卒業後、1988年に東電に入社。福島第二原発(5年間)と本店原子力技術課安全グループ(2年間)で7年間勤務。1995年に退社後、熊本大学医学部に入学し、2002年卒業。NTT病院等の勤務を経て、熊本市の小野・出来田内科医院院長。『フクシマの真実と内部被曝』(2012年11月七桃舎)

◎ブログ「院長の独り言」 http://onodekita.sblo.jp/

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