◆裁判長遅刻の挙句の不当判決

「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。」

5月16日(火)13時12分頃、吉岡茂之裁判長による不当判決の代読をした男性裁判長の声が広島地裁201号法廷に響き渡り、傍聴に来ていた筆者らは茫然としました。

判決は本来13時10分から言い渡しの予定でしたが、所定の時間になっても裁判長は現れず、筆者らがじらされていると、書記官が慌てて、裁判長席の後ろのドアを開けて裁判長らを呼びに行きました。そして、遅れて現れた挙句に不当判決。余計にがっくりきました。

 

◆軽く扱われた非正規労働者の命

広島の私立の高校・広島国際学院高校の英語科非常勤教師だった後河内麻季先生は、精神疾患を発症して自死に至りました。

採用されてからは任期3年間という有期雇用契約でした。しかし、いつまでも非正規というわけではなく、それ以上契約を延長する場合は、いわゆる正規雇用(期間の定めのない雇用)にすることが期待される状況でした。そして、3年の期限がくる前年の秋には「来年もよろしく」と声がかかっていました。しかし、期限が来ても非正規のままで、しかも自分よりも後輩が先に正規になるという有様でした。仕事ぶりもご両親から見ても大変熱心でした。

しかし、正規教員になかなかなれない、また、周囲の先生方からのパワハラなどもあって、自死に追い込まれました。

また、後河内先生が亡くなられた翌日、同僚の先生が花束を後河内先生の机に手向けたら、校長がすごい剣幕で激怒したそうです。

「次に来る人が困るじゃないか」

というのです。亡くなってすぐに、次の人が来るはずもありませんから、周囲の先生方も「校長はおかしくなったか?!」と思ったそうです。

非正規労働者を弔うのがご法度。そういう異常な雰囲気だったのです。

もちろん、ご両親などの遺族が、労働災害の認定を求めました。しかし、国は、学校経営者側の主張を丸呑みする形で精神疾患と業務との関連性を認めず、認定を却下。ご両親がその却下処分の取り消し=労災認定を求めて国を提訴していました。

◆原告の訴えに正面から答えず、国の主張なぞるだけの薄っぺらな判決文

この日の判決の判決文は、弁護人の佐藤真奈美先生によると20ページと、この手の裁判では異例の薄さだったそうです。要は、原告の主張には正面から応答せず、国の主張をなぞるだけ、というものだったのです。

この日、ご両親は勝つつもりで麻季先生の遺影を持ち込まれていました。ご両親は今後ともご支援をお願いしたいと頭を下げられました。

裁判後の交流会でも、筆者も含めて、今後ともご両親を支援していくことを申し合わせました。

筆者からは、筆者がかつて大阪府内で非正規の行政関係の労働者の雇止め裁判を支援した経験をご紹介・地裁では不当判決だったが、2007年ごろから人格権侵害が認められるようになる流れが勃興し、人格権侵害の主張により、2010年の高裁では逆転勝訴、2011年最高裁で勝訴確定しており、あきらめずに支えていきたいという思いを申し上げました。

◆原発、産廃……「権力忖度」の常習犯 吉岡茂之裁判長

今回の裁判を担当した吉岡茂之裁判長は、実は、「行政に忖度した」判決や決定が目立つ裁判官です。

2017年3月31日、筆者ら「伊方原発広島裁判」の原告が四国電力伊方原発3号機の運転差し止めを求めた仮処分申請を吉岡茂之裁判長は却下しました。原告が高裁に抗告すると、高裁は、阿曾山大噴火により伊方原発に危険が及ぶ可能性があるなどとして、運転差し止めをいったんは認めたのです。

その後、被告・四国電力側から異議が申し立てられてしまいました。そうした中で、原告側も再度仮処分申請を申し立てました。しかし、2021年11月4日、またまた、吉岡茂之裁判長により、阻まれてしまいました。この決定は、被告の四国電力に十分な安全性の立証を求めずに、住民側に、伊方原発の地盤特性などを比較するよう求めるものでした。戦後最悪ともいえる不当決定でした。(http://www.rokusaisha.com/wp/?p=41158

そして、三原の産廃処分場問題でも吉岡茂之裁判長が登場します。2022年6月30日に広島地裁は、いったん認められていた産廃処分場差止の仮処分への業者による異議申し立てを認めてしまったのです。この時の裁判長が吉岡茂之さんです。「住民が利用する井戸まで有害物質が含まれる水が到達する可能性があると認めるに足りる資料がない」という理屈でした。環境問題におけるいわゆる予防原則を無視する暴論でした。

◆重要な論点含む訴訟、引き続き支援したい

ただ、逆に言えば、吉岡裁判長の決定は、高裁によって覆った例もあります。あきらめてはいけません。

この裁判が問うている精神疾患の労災認定はあまりにも労働者に厳しい運用のままです。かつては、心臓脳血管疾患についても厳しい運用でしたが、労働者側の運動で改善させています。引き続き、取り組んでいきたい。

また、日本・広島の学校現場が公立・私立問わず、あまりにも労働者、ことに非正規労働者である先生方を使い捨てる状態が続いています。最近では文科省もようやく重い腰を挙げつつありますが、実効性は上がっていません。人を育てる学校こそ人を大事にしてほしい。そうした声も粘り強く上げ続けたいものです。

この判決があった5月16日は、この判決の直後、河井案里さんの腹心だった県議・渡辺典子被告人の公選法違反(被買収)事件の裁判の初公判もありました。

金権腐敗政治を糺す市民団体(写真)の皆様も裁判所にお見えになっていました。筆者からも、後河内先生の裁判があることをお知らせし、市民団体の皆様にも一緒に連帯して傍聴いただきました。

広島県民の皆様にもぜひともこの裁判にご注目いただき、ともに声を上げていただきたく伏してお願い申し上げる次第です。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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