広島県知事の湯崎英彦さんは、2024年2月13日開会した広島県議会に2024年度予算案を提出しました。

一般会計の規模は1兆957億円。8日の予算案発表に当たってのキャッチコピーは「広島の元気をブースト」です。

ご承知の通り、広島県は3年連続で人口流出全国ワーストワンです。その汚名を返上したいという思いを込めておられるのでしょう。問題は、中身がそれにふさわしいか、ということです。

◆ゴミ不法投棄を人工衛星で監視は良いが

今回、筆者が注目した項目の一つが、産業廃棄物対策です。2023年6月、県が三原市と竹原市の水源地のど真ん中に許可した三原本郷産廃処分場からついに汚染水が流出してしまいました。そして、広島地裁は7月、湯崎英彦知事による産廃処分場許可は判断過程に瑕疵があったとして許可取り消しを命じる判決を言い渡しています。湯崎知事はこの判決に控訴しました。しかし、そうはいっても、現に汚染水が出ているという事実があるわけです。なんらかの抜本的な対策を新年度予算で示してしかるべきです。

湯崎さんは2024年度予算案において「人工衛星で不法投棄を監視する」としました。確かに、山の中まで不法投棄の産廃を一々県庁職員がチェックにいくのは大変です。人工衛星で監視というのはグッドアイデアではあります。しかし、広島県の産廃行政の根本問題はそれでは解決しません。

◆問題は県「公認」産廃処分場の「ザル」状態

広島県の産廃行政の問題点の根本は「県が許可=公認した」産廃処分場が「ザル」状態だということです。

三原本郷産廃処分場はまさにその典型です。長野や群馬など遠方の産廃が今も白昼堂々と捨てられています。そして、昨夏のように県が検査に来るときは、検査対象の井戸水に水道水などを混ぜて汚染値を引き下げてしまえば、県は「安全」と判断してしまうわけです。

また、裁判所が産廃処分場の設置許可の取り消しを命じても、県はそれを控訴し、業者に処分場稼働=汚染水排出を続けさせています。まさに、県自身が、加害者となっています。

そもそも、この産廃処分場の所有者であるJAB協同組合は、かつて所有していた安佐南区の上安産廃処分場で水の汚染や危険盛り土の上への産廃処分場建設などの問題を起こしています。だが、上安の問題を本格的に明らかにしたのは当初は、県の調査ではありませんでした。三原本郷産廃処分場計画を知って不安に思った原告団共同代表の岡田和樹様ら、三原市民たちでした。県は、本来、自分自身でやるべきことを住民にさせていたのです。

◆東広島市でもまた、大型産廃処分場計画!

こうした中、今度は三原市の西隣の東広島市安芸津町にも大型産廃処分場が計画されています。安芸津町は大相撲・元関脇で横綱千代の富士や同・旭富士などから大量の金星を得たことで有名な安芸乃島関=高田川親方の出身地です。三原本郷産廃処分場を水源地とする竹原市の西隣にもあたります。その安芸津では、住民は産廃業者に対して土地を売らないことで対抗しようとしています。

しかし、業者もさるもの。会食を開くなどして地主の切り崩しに躍起になっています。こうした中で、三原本郷産廃処分場の問題を反省していない広島県の湯崎英彦知事を信用できるのでしょうか?信用しろと言われても信用する方がむしろおかしいでしょう。

◆産廃問題おろそかにしては「県産食材や広島料理のPR」も台無しに

湯崎英彦知事は、2024度予算案の中で、広島の食材や料理のPRにも力を入れる、としています。

それは結構なのですが、産廃行政がザルではそうした施策も台無しではないでしょうか?水が汚染されれば、農産物にも、広島の名産品であるカキを含む海産物にも、そしてお酒にも悪影響が出ます。

◆人口流出も加速する「産廃無策」

広島県内には、2011年の「3.11」以降、実は東京などからUターンしてこられて、農業やお酒やパンの製造などに乗り出すいわゆる30代、40代くらいの方が結構おられました。それにより、一時期、人口流出が下火になっていました。

「大学進学時や就職時には東京の有名大学や有名企業に一度は行ってみたい。だけど子育てはやっぱりのんびりした広島」というライフサイクルの方は結構おられます。だから、筆者は、実を言うと18歳や22歳での人口流出については比較的楽観していました。

しかし、全国から産廃が広島に集まり、汚染水も事実上ダダ漏れ、という状態では、それこそ、広島にUターンしてくる人も減ってしまいます。東京の環境汚染を懸念して広島に戻っても、今度は産廃汚染水ダダ漏れ、では帰ってくる意味がありません。

人口流出を騒ぐのであれば、産廃規制強化は急務です。別に口には出さなくても、産廃規制が緩すぎるということで広島を敬遠してしまう層はそれなりにおられます。広島に活力を取り戻すためにも他都道府県並みの産廃流入規制を求めます。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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