電気自動車(EV)は原発で走る〈1〉EVで本当にCO2は減らせるのか? 大今 歩

◆はじめに

菅義偉前首相は2020年10月の所信表明演説でCO2など温室効果ガスの排出量を2050年までに実質ゼロにすると宣言した。その後、日本政府は自動車産業においては電動化し、2030年代半ばにはガソリン車の新車販売を廃止するという方針を打ち出している。

電気自動車(EV)は確かに走行中はほとんどCO2を発生しない。だから「人為的CO2温暖化説」に基づいて欧米諸国はEVを強力に推進する。EVは2020年には726万台(新車の9.5%)生産され、21年に比べて7割増大した(2023年4月9日付け京都新聞)という。日本の自動車メーカーは出遅れているが、EV化を急ぐ。

しかし、そもそもIPCC(気候変動に関する政府間パネル)などが主張する「人為的CO2温暖化説」は正しいのか。また、電気自動車(EV)はCO2削減に役立つのか、さらにEV化に伴う大幅な電力需要の増大が岸田政権の打ち出す「原発の最大限活用」につながっている問題点について考えたい。

◆「人為的CO2温暖化説」に科学的根拠があるか

前述の「実質ゼロ宣言」を受けて2021年11月、衆参両院も全会一致で「気候非常事態宣言」を採択。「1日も早い脱炭素社会の実現をめざす」とした。「脱炭素」の根拠はIPCCの「人為的CO2温暖化説」(以降CO2説)であるが、これに対して科学者の中には「科学的根拠が薄弱なまま政治的に引き回されている」(小出裕章『隠される原子力・核の真実』)などの意見が根強い。

確かに19世紀後半以降、温暖化の傾向は見られ(150年間で1度程度の上昇)、CO2は増大している。しかし、地球はこれまで温暖化と寒冷化を繰り返してきた。そして気温の高い時、CO2の濃度は高い。その理由は、温暖化により海洋に溶けていたCO2が大気中に放出される結果、CO2が増大するのである。「CO2説」は原因と結果を取り違えている(近藤邦明『温暖化の虚像』電子書籍)。

そして、「気候変動」についても十分な検証が必要である。温暖化による「台風の巨大化」について、池田清彦は「気象庁のデータを全部調べてみたが、日本では台風の数は傾向として徐々に減っているし、大きさも小さくなっているし、被害総額も昔の方がうんと大きかった」(池田清彦『環境問題の嘘 令和版』2020年MdN新書)と述べる。

このように「CO2説」は科学的根拠が薄弱な上、「気候変動」も統計による事実と異なっている。しかし、「脱炭素」を名目にEVに多額の補助金、減税が注がれている。そして、日本政府が「脱炭素」の根拠とするIPCCの提言の最大の問題点は、化石燃料に代わる「クリーンエネルギー」として、再エネ発電と共に原発を推奨していることである。

◆EVでCO2は減らせない

「CO2」説の是非はさておいて、EV化によってCO2は減らせるのか。確かにEVは走行中はCO2を出さないが、充電する電源は、77%が化石燃料を用いた火力発電である。(2018年度資源エネルギー庁)。

ガソリンエンジン車のエネルギー効率(燃料の燃焼熱のうち、自動車駆動に利用できるエネルギー)は20%台である。

一方、EVに火力発電による電力を充電して使用する場合、火力発電のエネルギー効率を35%として送電や車載リチウムイオン電池に対する充電・放電損失を考慮すると、やはり20%となり、ガソリン車と同程度となる。

しかしEVに搭載するリチウムイオン電池の重量は日産のEV「リーフ」では300kg以上もある。EVの重量はガソリン車よりも30%程度重いため、火力発電所で投入される化石燃料は30%程度多くなる。

また、リチウムイオン電池の製造には大量の電力が必要なことなどを総合的に判断すると、ガソリン車よりもEVの方がCO2放出量は多くなる(近藤邦明『工業文明の持続可能性について』2023年)。

このようにEVは「脱炭素」を名目に推進されているにもかかわらず、かえってCO2放出量を増やしてしまう。(つづく)

本稿は『季節』2023年秋号掲載(2023年9月11日発売号)掲載の同名記事を本通信用に再編集した全3回の連載記事です。

▼大今 歩(おおいま・あゆみ)
高校講師・農業。京都府福知山市在住

3月11日発売 〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌『季節』2024年春号 能登大震災と13年後の福島 地震列島に原発は不適切

〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌
『季節』2024年春号(NO NUKES voice 改題)

能登大震災と13年後の福島 地震列島に原発は不適切

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《女川原発》舘脇章宏(みやぎ脱原発・風の会)
《東海第二》久保清隆(とめよう!東海第二原発首都圏連絡会)
《地方自治》けしば誠一(反原発自治体議員・市民連盟事務局長)

《反原発川柳》乱 鬼龍

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