さとうしゅういち
今回は、「住民逆転敗訴」となった三原本郷産廃処分場の裁判の広島高裁の控訴審判決について、私が現場に足を運び、法廷で判決を聞いた者として、その実感をお伝えします。
私は5月14日、広島高裁の法廷で、裁判長がこう読み上げるのを聞きました。
「原判決のうち、以下を変更する」 その瞬間、私は直感しました。
──これは不当判決だ。
なぜか。一審の広島地裁・吉岡裁判長は、県庁の許可手続きについて、こう認定していたからです。
「本来検査すべき井戸を検査していない」
「知事の判断過程に看過しがたい過誤があった」
つまり、許可の根幹に関わる重大なミスが広島県庁にあったと断じたのです。
だからこそ一審は、許可取り消しを命じました。

◆一審判決後も悪化する現場
私は、一審判決後、現場近くの競輪場外車券売り場の取材を兼ねて、何度も現場に足を運びました。そして、一審後の現場をこの目で見ました。
状況はどうなっていたか。良くなっていたのか。改善していたのか。違います。むしろ、悪化していたのです。
汚染水は相変わらず流れ出し、PFASも検出され、放射性物質も検出されている。
そして、これは私自身の体験ですが──2024年7月、現場近くの水をちょっと舐めてみたら、しょっぱい味がした。
山の水が“しょっぱい”はずがない。これは、何かが混じっているということです。

◆アリバイ工作に終始する県庁
さらに問題なのは、県庁の対応そのものです。県庁は2025年春にかけて、何度かこの処分場を「使用停止」にしました。しかし、それは アリバイ的な停止 でした。原因を究明しないまま、数値が少し下がると、すぐに使用を再開させる。
これでは問題解決になりません。火事の原因を調べずに、煙が少し減ったからといって「もう大丈夫」と言っているようなものです。
現地では、米作りを断念した農家が9軒もあります。産廃による汚染の深刻さに失望し、広島に戻って農業をするのを諦めた若者もいます。県庁が人口流出を止めたいと言うなら、こういうところを改めるべきです。
◆産廃フリーパスで広島が「日本のゴミ捨て場」に
そして、ここが広島の構造問題です。島県は、安定型処分場の数が全国3位、残り容量は全国最大。つまり、広島は“日本のゴミ捨て場”のようになっている。安佐南区上安しかり、東広島黒瀬しかり、福山しかり。その各地の産廃処分場の下流で基準値を超えるPFASが検出されています。
なぜか。規制が緩いからです。フリーパスだからです。
そして、こんな裁量を県に許してしまっている廃棄物処理法そのものが、もう時代に合っていない。
◆国と経済界は石油危機だからこそ、資源循環の構造を見直せ
国はどうか。4月末、住民がこの問題を直訴した際、国の担当者はこう言ったそうです。
「規制を強化したら不法投棄が増える」
違うだろう。本当に違うだろう。必要なのは、ゴミの減量、再使用、リサイクルの徹底。 産廃ビジネスに依存しない経済構造への転換です。
石油危機で大変なのは分かる。しかし、石油危機だからこそ、資源循環の構造を見直すのが経済界の責任であり、それを促す仕組みづくりが国の責任ではないか。
◆ガンパイア判決を許さない!
そして今回の控訴審判決。県庁のミスを「大したことない」と扱い、被告の県側ですら主張していない「環境基準は少々オーバーしても違法ではない」という論理を裁判所が勝手に持ち出した。
私は、この瞬間、大昔のプロ野球のある事件を思い出しました。篠塚選手の明らかにファウルな打球を、讀賣寄りの審判がホームランにしてしまった事件。当時、審判は「ジャンパイア」と揶揄されました。今回の判決を聞いた瞬間、私は思いました。
──これは“ガンパイア”だ。
government(行政)寄りの判決だ。
司法は本来、行政の暴走やミスをチェックする“最後の砦”のはずです。それが行政に寄りすぎてしまうなら、市民はどこに救いを求めればいいのか。原告代表は上告すると宣言しました。当然です。広島高裁も私の元職場・広島県庁も、県民を舐めています。
私は、広島県民の一人として、元広島県庁職員として、この不当判決と闘う側に立つことを、ここに宣言します。広島の未来を守るために、共に声を上げていきましょう。
2018年~2019年
三原市と竹原市の水源地のど真ん中に産廃処分場計画
地元で猛烈な反対運動
2020年
4月 湯崎英彦知事が三原本郷産廃処分場を許可
7月 三原市と竹原市の住民が許可取り消しを求め住民訴訟を提起
2022年
秋 三原本郷産廃処分場稼働開始
2023年
6月頃 三原本郷産廃処分場付近で硫黄臭や泡立ちなど異常
7月 訴訟の一審判決。広島地裁は許可取り消しを命じる。湯崎知事が控訴
2024年
1月 控訴審で県が事業者・JAB協同組合と一体となって県民に敵対
6月 三原市議会で住民側から見れば不十分ながらも水源保護条例可決
7月 筆者が産廃処分場からの排出口付近の水のしょっぱさを確認
2025年
前半 三原本郷産廃処分場がアリバイ的に閉鎖されている間、安佐南区上安産廃処分場に廃棄物が集中
2026年
3月 安佐南区上安産廃処分場下流から基準値の28倍のPFAS
4月 福山の産廃処分場下流から基準値の14倍のPFAS
5月14日 三原本郷産廃処分場許可取り消し住民訴訟、広島高裁で不当判決
▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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