国はそれぞれ独自の事情を抱えており、国情に見合った軍備を整えている。たとえば、陸のないスイスに海軍は不要だ。北朝鮮の南下を恐れる韓国は陸軍を重視する。

日本は海から来る敵と、物資流入を確保するため「シーレーン防衛」を最大目的としている。仮想敵がシーレーンを寸断しようとした場合の最も有効な兵器は潜水艦である。艦上自衛隊の装備は潜水艦排除を重視している。

そのため対潜哨戒機は重要だ。水中の潜水艦を発見し、攻撃する事に特化した偵察機で、鉄で作られた潜水艦を探す磁気探査装置や、音響で位置を特定するソノブイを装備している。ソノブイは高性能のソナーを積んだ浮きで空中から海に投下して使い捨てにする。

以前、対潜哨戒機としてアメリカ製「P3C」を使用していたが、同機の旧式化にともない日本は「川崎P1対潜哨戒機」を独自開発した。一方アメリカでも旧式化は免れず、「ボーイングP8ポセイドン」を開発した。ただしポセイドンは従来型と違い複数のトリトンを空中で指揮運用する前提で設計されている。トリトンの武装は明確にされていないが、最低でも爆雷、対潜魚雷、対艦ミサイルのうえに在来型が搭載する程度の武装は装備して、トリトンだけでも一定の対潜攻撃能力を持つと考えられる。

日本はポセイドンを買う予定はない。なにしろ、「P1」の倍以上する高価な機体である。しかし、補助的にトリトンを運用するのは有効だろう。日本も無人機の研究はしているが、十分ではない。アメリカはここに商機を見つけたのだ。

一方、無人武装機と考えた場合、「その次」に目をやる必要がある。いまや、アメリカ空軍の攻撃機は無人化され、メーカーでもプレデターをジェット化した海軍型を提案している。

◆アメリカが阻止する日本の国産戦闘機開発

となると、いよいよ無人戦闘機である。現在、アメリカの最新鋭戦闘機は「F35」であり十数年の内に西側の戦闘機は「F35」が主流となるだろう。一方、「F35」は有人であるためどうしても飛行限界が存在する。地上の十分の一以下の気圧、氷点下50℃の低温から人間を守らなければならない。

アメリカが開発中なのが「無人攻撃機X47ペガサス」である。速力はマッハ1以下と戦闘機としては遅いが、それでもプレデターの三倍以上。ステルス性は優れ、航続時間に至っては10時間を超える。空対空ミサイルをもち戦闘機としても使用できる。陸軍と海軍の共同プロジェクトであるので空母上の運用が前提で、昨年、完全自律での離着艦の実験が成功した。

日本の技術レベルはまだ無人機を買う状態であるが、陸自は無人偵察ヘリを運用している。空自も開発中の「F3戦闘機」の無人化を計画している。F3が完成したらF35は一気に陳腐化してしまう。そうなる前にアメリカは日本の無人機市場の発展を押さえる、あるいはまたも国産戦闘機開発の阻止を狙っているのである。

「無人攻撃機X47ペガサス」写真はOVAL OFFICE(http://ovaloffice.jp/)より

「無人攻撃機X47ペガサス」写真はOVAL OFFICE(http://ovaloffice.jp/)より

▼青山智樹(作家、軍事評論家)1960年生まれ。作家、軍事評論家。著書「原潜伊六〇二浮上せり」「ストライクファイター」等多数。航空機自家用単発免許、銃砲刀剣類所持許可、保有。HP=小説家:青山智樹の仕事部屋

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