これまで、01年に始まり、昨年3月まで続いた「東電のマスコミ接待ツアー」である「愛華中華団」の参加者を随時糾弾してきた(09年のみ政治的事情で開催せず)が、やはり「新潮社」の闇には触れざるを得ないだろう。
「震災直後の夏ごろかな。東電批判はしないようにという通達があったと聞いています」(『週刊新潮』元記者)

東電が元週刊誌編集長やジャーナリストを引き連れて、「原発の実態をきちんと見せる、という名目で原発見学をアゴアシ付きで主催した罪」も、「参加したマスコミ人の厚顔無恥ぶり」もはなはだしく問題だが、今回は震災直後の昨年3月に参加したリストに発見できた、赤塚一氏(評論家。元『週刊新潮』広告部長)と07年に参加していた新潮社、元『フォーカス』の鈴木隆一氏(ワック・マガジンズ社長)に注目したい。赤塚氏は、昨年だけでなく03年、07年、08年にも参加している。
「03年のときは確か、赤塚氏は編集次長でした。編集者でありながら、東電マネーにたぶらかされたのです」(事情通)

『WiLL』編集長の花田氏が「東電マスコミ接待ツアー」に参加していたことは、昨日のブログで指摘した。
『WiLL』を作っているワック・マガジンズの社長は、元『フォーカス』にいた鈴木隆一氏であり、彼は91年に立ち上げた広告代理店「ウイルアライアンス」の社長でもある。ウイルアライアンスのホームページには、クライアントとしてトヨタやソニーなど名だたる企業と並び、「東京電力」が入っている。新潮社時代の東電との関係が、そのまま『WiLL』の膨大な広告量につながっていくのだろうか。どうして東電は執拗なまでに新潮社や新潮社OBに気を遣うのだろう。その謎の解明が待たれるが東電と新潮社は、「WIN-WIN」の関係にあったに違いない。

「要するに、新潮社―ワックー東京電力。このトライアングルに利権の構図を見ることができます。震災から数ヶ月して、『週刊新潮』では、急に東電批判を控えるようになりました。上から通達がくれば、この会社の体質では右倣えですよ。今では、御用学者を呼んで座談会などをやる始末ですから」(元新潮社社員)
なにしろ1年に約30ページほど東電の広告を掲載してきた『週刊新潮』では、02年の東電原発のトラブル隠しで「大仰ではないか東電『原発トラブル』報道」と擁護、07年の柏崎原発事故では「想定外続きだった柏崎原発シンドローム」と東電の責任を逸らし、あろうことか最近では「たばこや肥満の方が放射線より有害」などという記事まで出す体たらくだ。

「東電の2011年度の広告予算は、約240億円だそうです。どこにいくら流れたか、事実関係を原発の被害者に示す必要があるのではないでしょうか」(識者)
鹿砦社の松岡利康社長も怒りを隠せない。
「『週刊新潮』編集部のデスクなどには、一時けっこう協力したこともありましたが、東電とは、そこまで親密だったのですか。この通信では、月刊『創』の東電広告掲載問題を採り上げ、それだけでも驚きましたが、『創』の比ではありません。『週刊新潮』では、09年に赤報隊事件の誤報の検証記事を載せましたが、“安全神話”を喧伝した、膨大な東電広告についても検証記事を載せて欲しいですね。そうじゃないと、原発事故で、この厳しい寒さの中で苦しんでおられるフクシマの被災者の方々は収まりませんよ」

新潮社よ! 『週刊新潮』にかつて掲載した東電の広告をすべてグラビアで出して、すぐに懺悔せよ。いずれにせよ東電マネーがマスコミ、いやマスゴミを毒した影響は深いようだ。東電マネー漬け雑誌はまだまだある。ほかの雑誌や大手新聞社の功罪も、追いかけていこうと思う。

(渋谷三七十)

(参考資料)
「愛華訪中団メンバーリスト」
第10回訪中団<11年3月6~12日>
訪問地=北京、南京、揚州、上海

団長:勝俣恒久(東京電力会長・前「安保と防衛力」懇談会座長)
副団長:鼓紀男(東京電力副社長・原子力・立地本部副本部長)、平野裕(毎日新聞元専務主筆・現顧問、毎友会会長、日本翻訳家協会会長)

団員:江副行昭(陶芸家・工学博士)、大橋博(創志学園グループ理事長・環太平洋大学理事長)、石原圭子(東海大学総合教育センター教授)、弥園豊一(関西電力お客様本部副本部長)、渡邊広志(中部電力経営戦略本部部長)、大林主一(中日新聞社相談役)、加藤順一(評論家・毎日新聞中部本社元編集局長)、元木昌彦(オフィス元木代表・元『週刊現代』編集長)、花田紀凱(『WiLL』編集長・元『週刊文春』編集長)、野口敞也(前連合総研専務理事・前連合副事務局長)、久保田司(株式会社安全輸送社長)、赤塚一(評論家・元『週刊新潮』広告部長)、土山昭則(西日本リビング新聞社社長・前西日本新聞東京支社長)、恒川昌久(長野県立松本文化会館館長・前信濃毎日新聞松本支社長)、有馬克彦(全国栄養士養成施設協会常務理事)、藤井弘(前日本対外文化協会専務理事)、鈴木正人(税理士・日本出版協会監事)、元田宏輝(東京電力秘書部会長秘書)
顧問:石原萠記(社)日本出版協会理事長、情報化社会を考える会代表)、徐迪旻(NPO法人亜州友好協会理事長)
(『週刊金曜日』2011年6月24日号より)