頼りにならない最高検監察指導部

最高検の「監察指導部」なるものをご存知だろうか。大阪地検特捜部検事による証拠改ざん事件などによって検察不信が高まる中、2011年7月に検察改革の一環として新設された部門だ。全国の検察庁職員の不正行為や違法行為の情報を内外から収集し、必要に応じて監察を行なっているというフレコミで、情報提供は電話や投書、メールで受け付けている。

ただ、これがどれほどアテになるかというと、マユツバものだ。
最高検が昨年4月に公表した統計によると、2011年7月8日から昨年2月22日まで同部に寄せられた通報は598件にのぼるが、監察が行われた件数は116件。そのうち、指導などの措置がとられたのはわずか2件だった。言いがかりのような通報も少なくないだろうが、それを踏まえても、600件近い通報がありながら具体的な措置を講じたのが2件だけでは、「本当にちゃんと監察しているのか」という疑念を抱かれても仕方ないだろう。

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「漫画サンデー」休刊が告げる青年漫画誌の危機

ヒット作「静かなるドン」などを連載した老舗の漫画誌「漫画サンデー」(実業之日本社)が、2月19日発売の3月5日号で休刊するニュースが、業界者ならずとも関心を呼んでいる。
「昨年末に24年も続いた『静かなるドン』の連載が終わり、ほかに目玉となる物語がなかっただけにつらかったのだろう。今、漫画雑誌の読者は40、50代が中心で、青年層を取り込むのは難しいことも拍車をかけていた」(編集者)

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久しぶりに届いた林眞須美さんからの手紙

先日、あの和歌山カレー事件の林眞須美さん(51)から久しぶりに手紙が届いた。この話に「おっ」と反応された方は、何らかの事情で林眞須美さんの現状をよくご存知か、あるいは死刑囚の処遇の実情に詳しい人だろう。
1998年に夏祭りのカレーにヒ素を混入させ、67人を死傷させるなどしたとして殺人罪などに問われ、2009年に死刑判決が確定した林さん。非常に筆まめな人で、彼女が冤罪ではないかと疑い、取材をしてきた筆者も以前はよく大阪拘置所の獄中から手紙をもらっていた。

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弊害もある、メッシの4年連続バロンドール賞

アルゼンチン代表FWメッシ(バルセロナ)が、2012年の年間最優秀選手「FIFAバロンドール」に輝いた。4年連続で、4度目の受賞は史上初だ。
「メッシの場合は、幼少のころからフットサルで鍛えたボールコントロールが有効で、これだけでも数十億を払う値打ちがあるね」(スポーツジャーナリスト)

バロンドールは仏語で「黄金のボール」を意味し、1956年にフランス・フットボール誌が創設。91年に設けられたFIFA年間最優秀選手と2010年に統合され、「FIFAバロンドール賞」となった経緯がある。

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ミャンマーの『民主化』は本当か!? ヤンゴンで生活してみた 6

ミャンマー(ビルマ)を周遊旅行することにした。ミャンマーとの貿易業を行い、ミャンマーのことを執筆をするなら、日本の大手旅行会社が案内するような観光名所を訪れるのも必要だと思ったのだ。
ビジネスパートナーで、私が100万円を貸し付けたNと、その妻Pが、私と娘を案内してくれることになった。ちなみに、Nは、当シリーズ3(デジタル鹿砦社通信 2012年12月17日記事)で触れたプレッシャーに弱いビジネスマンで、Pは私に「夫にこれ以上仕事をさせないで」と主張してきた女性だ。

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社長が夜逃げ! あるIT企業社員の手記 (5)

ある日、セントラル社役員の、土方さんが会社に来る。セントラル社自体は規模が小さいものの、大企業の関連会社となっていて資金力はある。土方さんは元々その大企業の重役で、セントラル社を事実上取り仕切っている。

「社長さんな、やりたい仕事をやるんはええけど、ビジネスとして成り立たせないといかんのや。マーケティングもしとらんのやろ? 今まで」
関西弁で社長と長々打ち合わせしているが、土方さんはごく基本的なことから話している。社長は経営を理解していないので、まずはそこから、と考えたのだろう。私のデスクが会議室に程近いこともあり、話す内容がよく聞こえる。まるで親が子供に教育しているみたいだな、と思った。うちの社長は子供みたいなものだ。

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白血病で亡くなった、被曝2世、沢口友美の生と死

7年前の今日。2006年1月10日。沢口友美が、44歳という若さでこの世を去った。
朝早く東京を発った筆者は、彼女が入院する広島の呉の病院に、昼頃に着いた。
見舞いに来たつもりだった。彼女の病室を看護師に訊くと、「今朝亡くなりました」と告げられた。霊安室で、遺体となった彼女と対面した。

沢口友美は「反戦ストリッパー」として、皆に愛されていた。
彼女は高校を卒業して、自衛隊に入隊した。配属されたのは、隊内の通信を扱う「基地通信」という部署。
1979年から呉駐屯地で2年勤務し、埼玉の朝霞駐屯地に配属された。

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『現代語訳 幸徳秋水の基督抹殺論』【ブックレビュー】

神は死んだ、と言われて久しい。イエス・キリストが、実在した人物か、創造された人物か? もはや、そんなことは、どちらでもいい話ではないか。
そう訝りながら、ぐいぐいと引き込まれてしまったのが、『基督(キリスト)抹殺論』(鹿砦社)だ。
102年前の1911年、「大逆事件」で死刑となった幸徳秋水が、執行までの間に東京監獄の一室で綴った、遺作である。これを、『もうひとつの反戦読本』『もうひとつの広告批評』などの著書がある佐藤雅彦氏が現代語に訳した。

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死刑執行後に浮上した、証拠改ざんによる冤罪疑惑

その昔、冤罪を訴える人の再審が開かれるというニュースを聞くと、随分珍しいことが起きたような気がしたものだ。ところが、近年は足利事件に布川事件、東電OL殺害事件・・・・・・と毎年のように再審無罪判決や再審開始決定が出るようになった。2013年もまた、何か新たな再審の動きはあるだろうか。
注目度の高い再審事件は色々あるが、個人的に今年大きな動きがありそうな気配を感じているのが、あの飯塚事件だ。

確定判決によると、福岡県飯塚市で小1の女の子2人を誘拐し、殺害したとされる久間三千年さん(享年70)が2008年10月に死刑執行されたこの事件。有罪の決め手となったDNA鑑定は、あのDNA冤罪の代名詞「足利事件」のそれと同じく90年代前半に警察庁科警研が同じ手法で行なったものだった。その再審請求審は現在、福岡地裁で続いているが、昨年10月には、科警研が鑑定書に貼付した証拠写真を改ざんし、別の真犯人のDNA像が写っていたのを隠蔽していた疑惑も浮上。死刑執行された人が冤罪だったというだけで一大事なのに、そんな重大疑惑も持ち上がり、今後の展開がますます注目される事件となった。

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夕焼けが空襲に見えた父

父は亡くなって、やっと苦しい人生から脱したのだな、と思う。
昭和5年生まれの父は、中学生の時、空襲を体験している。
昭和20(1945)年3月10日の、東京大空襲だ。
家族は全員、すでに埼玉に疎開していて、父は一人、浅草の家にいた。父は学徒動員されていたため、疎開することはできなかったのだ。

午前零時をわずかに過ぎた、深夜。警戒警報に続いて空襲警報が鳴り、父は物干し台に上った。投下された焼夷弾で街が燃え上がる。その光で、夜だというのに、低空で飛行するB29の編隊が見えた、という。焼夷弾が空中で分解して広がり、街に降り注いでいく。きれいだなと思ったが、すぐ近くにも焼夷弾が落ち燃え上がるのを見て、家から飛び出した。

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