暑い夏に熱い戦いが繰り広げられたWINNERS 3rd!

石原將伍のパンチで倒すKOへの執念、免れたアムヌアイデット

計量をウエイトオーバーした選手は2名。一人は再計量でパス。もう一人は2kgオーバーで諦めた様子。これだけ暑いと選手は減量がしやすくも体調管理も大変かなと思う夏です。

この日、注目されたのはNKBとの交流戦は3試合。この日は新日本キックの2勝1分となりました。NJKFと日本キックイノベーションとの交流戦も1試合ずつ行なわれました。

◎WINNERS 2018.3rd / 2018年8月4日(土)後楽園ホール17:00~21:05
主催:治政館ジム / 認定:新日本キックボクシング協会

蹴りから入ってパンチへ繋ぎたい石原將伍
パンチの距離になるとすかさず組み付くアムヌアイデット、首相撲でもなくクリンチとも違う凌ぎ技

◆15. メインイベント 58.5kg契約 5回戦

日本フェザー級チャンピオン.石原將伍(ビクトリー/58.5kg)
VS
アムヌアイデート・ウォー・ワンタウィー(元・BBTVバンタム級4位/タイ/56.5kg)
引分け 三者三様 / 主審:椎名利一
副審:仲48-49. 少白竜48-48. 宮沢49-48

5月に続くメインイベンターとなった石原將伍が、毎度求める強い相手として選ばれたアムヌアイデット。やりづらい相手であることは初回でその実力が垣間見れました。石原のパンチの強さを感じ取ると、その距離を潰し、多彩に変化をつけて蹴ってくる。

石原のバランス崩しておいてハイキック狙うアムヌアイデット

中盤からはパンチを掻い潜り、しつこく組み付いて来るようになり、石原のパンチがヒットし難く攻め難さが増す。アムヌアイデットは素早く蹴り足を掴んで転ばせたり、軸足を払って転ばせたりはさすがのムエタイ戦士、組み付きが多く、逃げの体勢に入ったと見えるアムヌアイデットではあるが、返しの蹴り技はしっかり見せる。

石原のパンチもヒットは少ないが連打で追い詰める印象度は互角の展開。ムエタイ的には蹴り技で凌いだアムヌアイデットの攻勢と見られがち。しかしこんな選手も攻略しないとタイでは通用しないという。続く試練を克服して、まずラジャダムナンスタジアムランキング入りを目指し、新日本キックのエースを確固たるものにしたい石原の挑戦は続く。

石原のパンチを警戒しつつ蹴りの距離を保つアムヌアイデット
内田雅之が懸命に挽回に出たローキックの相打ち

◆14. 61.5kg契約3回戦

日本ライト級1位.内田雅之(藤本/61.25kg)
VS
マーパロン・ソー・ブンヨード(元・ラジャダムナン系バンタム級C/タイ/60.4kg)
勝者:マーパロン / 判定0-3 / 主審:桜井一秀
副審:椎名27-30. 少白竜27-30. 宮沢27-30

第1ラウンドに接近戦でヒジ打ちをまともにアゴに貰ってしまいダウンした内田。マーパロンは体幹がしっかりした蹴りを繰り出す。蹴りが堅そうで終始バランスが良かった。マーパロンの圧力に押されたままの内田もローキック、パンチを返すが流れを変えることは出来ず、終了に至る。

マーパロンの右ミドルキックに苦戦に陥る内田雅之
マーパロンが判定勝利、内田はうつむき気味に下がる
馬渡の接近戦での飛びヒザ蹴り。ニシャオは日本に来て苦しい試合となった

  
 
◆13. 55.0kg契約3回戦

日本バンタム級2位.馬渡亮太(治政館/55.0kg)
VS
ニシャオ・ソー・ジンジャルンカンチャン(タイ/55.0kg)

勝者:馬渡亮太 / TKO 3R 2:24 / カウント中のレフェリーストップ
主審:仲俊光

初回の様子見の中でも徐々に圧力掛けて行く馬渡。スロースターターのニシャオの蹴りを上回っていく馬渡のスピード。接近戦でボデイブローやヒジ打ちを落とす。

馬渡の組み合ってのヒザ蹴りに押されっぱなしになくなっていくニシャオ。その表情にゆとりが無い。

ニシャオは逃げ切ることも出来ず、馬渡の前蹴りをアゴに受けてロープにもたれるところをパンチ連打を浴び、ロープダウンを取られて崩れる。

一旦立ち上がるも、赤コーナーで崩れ落ち、カウント中のレフェリーストップとなる。

先手を打って勢い増した馬渡の蹴りに下がる一方となった苦しいニシャオ

◆12. 73.0契約3回戦

日本ミドル級1位.今野顕彰(市原/72.7kg)
VS
ロンドユー・シンセンデート(タイ/72.6kg)
勝者:今野顕彰 / 判定3-0 / 主審:少白竜
副審:椎名30-28. 桜井30-29. 仲30-28

初回から飛ばしていく今野。ローキックからのパンチのリズムを作り、優勢を維持する。蹴りの強さはロンドユーが優るが、距離をとって調子付かせない。積極的に打って出たに今野が判定勝利。

今野顕彰が先手を打って出たパンチ連打でロンドユーを追う
1年ぶりに雪辱を果たし、応援者に笑顔を見せる今野顕彰
打ち合いに移る中、西村清吾の右ストレートが政斗にヒット

◆11. ミドル級リミット契約3回戦

NKBミドル級チャンピオン.西村清吾(TEAM KOK/72.2kg)
VS
日本ウェルター級1位.政斗(治政館/71.8kg)

引分け 0-1 / 三者三様 / 主審:宮沢誠
副審:少白竜29-30. 桜井29-29. 仲29-29

注目されたNKBとの交流戦。NKBミドル級チャンピオンの西村は、ウェルター級の政斗を捻じ伏せたいところ。

初回は両者の意地か、パンチとローキック、ミドルキックの交錯が続く。

政斗が西村清吾を追って右ミドルキックをヒット

第2ラウンドは同様の展開が続くが、両者の距離が縮まるとヒザ蹴りが加わり、パンチのヒットも増していく。第3ラウンドも力を出し来るように打ち合いに出て行く両者。若い政斗の勢いが増したか、西村がやや下がるもパンチをヒットさせる印象を残す。

各ラウンドの採点がジャッジによって正反対に分かれるほど優勢を見極め難い応戦は5回戦で戦うべき、トップクラスの交流戦でした。

政斗vs西村清吾。結果は引分けとなって健闘を称え合う両者

◆10. フライ級3回戦

日本フライ級2位.幸太(ビクトリー/53.0→52.8kg=2.0kgオーバー、減点2)
VS
JKイノベーション・フライ級6位.多根嘉輝(直心会/50.8kg)
勝者:多根嘉輝 / 判定0-3 / 主審:椎名利一
副審:少白竜27-30. 宮沢27-30. 仲27-30(減点2点含む)

タネ・ヨシホ(多根嘉帆)の兄・多根嘉輝は、素早い動きで積極果敢に幸太を攻めるも、ウェイトオーバーしてきた幸太は重かったか、内容的には僅差判定勝利。

◆9. 58.0kg契約3回戦

日本フェザー級7位.渡辺航己(JMN/57.8kg)
VS
日本フェザー級8位.金子大樹(ビクトリー/58.0kg)
勝者:渡辺航己 / 判定3-0 / 主審:宮沢誠
副審:椎名30-28. 仲30-28. 桜井30-29

◆8. ライト級3回戦

日本ライト級7位.大月慎也(治政館/61.0kg)
VS
サックシット・ラジャサクレック(タイ/60.8kg)
勝者:大月慎也 / 判定3-0 / 主審:少白竜
副審:椎名30-28. 仲30-29. 宮沢30-28

◆7. 55.0kg契約3回戦

日本バンタム級6位.田中亮平(市原/54.8kg)
VS
NKBバンタム級5位.海老原竜二(神武館/54.55kg)
勝者:田中亮平 / 判定2-0 / 主審:桜井一秀
副審:椎名30-29. 少白竜29-29. 宮沢30-29

組み合ってのヒザ蹴りは少なく、キックボクシングらしい、パンチと蹴りの攻防が徐々に増していき、第3ラウンドに田中亮平の右ヒジ打ちが海老原竜二の左目尻辺りにヒットすると瞼が少々腫れ上がる。更に打ち合いが激しさ増す中、田中が押し切り、このラウンドをジャッジ三者が指示した田中亮平が僅差の2-0ながら判定勝利。

◆6. ライト級3回戦

日本ライト級9位.興之介(治政館/61.23kg)
VS
NKBライト級5位.パントリー杉並(杉並/60.35kg)
勝者:興之介 / KO 1R 1:11 / 主審:仲俊光

パントリー杉並が新日本キックのリングでどう戦うかが注目された中、厳しい結末となってしまいましたが、キックの見え難いタイミングを知ったところでしょうか。短い期間でのKO負けが続いた為、しっかり休養を取って再起して貰いたいところです。

◆5. ウェルター級3回戦

日本ライト級8位.和己(伊原/66.68kg)
VS
NJKFスーパーライト級7位.野津良太(ESG/66.55kg)
勝者:野津良太 / KO 3R 2:16 / 10カウント
主審:椎名利一

◆4. バンタム級2回戦

翼(ビクトリー/53.4kg)vs山野英慶(市原/53.52kg)
勝者:翼 / TKO 1R 1:15 / カウント中のレフェリーストップ

◆3. 61.5kg契約2回戦

又吉淳哉(市原/60.9kg)vs羅向(ZERO/61.0kg)
勝者:羅向 / 判定0-3 (18-20. 18-20. 18-20)

◆2. フェザー級2回戦

睦雅(ビクトリー/56.4kg)vsRYUICHI(トーエル/56.9kg)
勝者:睦雅 / 判定3-0 (20-19. 20-19. 20-19)

◆1. 女子50.0kg契約2回戦

祥子(JSK/47.9kg)vsIMARI(LEGEND/49.2kg)
勝者:IMARI / 判定0-3 (19-20. 19-20. 19-20)

本日のMVP(武田幸三賞)は圧勝KOした馬渡亮太

《取材戦記》

後楽園ホールは競技によって、または団体によっても会場の雰囲気がガラッと変わる特徴があります。新日本キックボクシング協会に於いても、興行ごとの微妙な雰囲気の違い、それは出場選手だけでなく、リングアナウンサーやスポンサーの顔触れの違いが微妙に空気を変えているでしょう。

選手が主役のリング上では、武田幸三が現役だった頃は、それだけで治政館ジム主催であることが滲み出ていましたし、その後は蘇我英樹(市原)がメインイベンターとなり、蘇我英樹と時期が重なりますが、志朗(治政館)もメインイベンターとして躍り出て来て活躍。現在は、日本フェザー級チャンピオンとなった石原将伍(ビクトリー)がここ2戦連続メインイベンターを務め、強い相手を求めた戦いぶりに存在感が出て来た風格を感じます。

来月、9月2日(日)はTITANS NEOS.24が後楽園ホールで開催。江幡睦(伊原)、勝次(藤本)、斗吾(伊原)、HIROYUKI(藤本)、リカルド・ブラボー(伊原)、重森陽太(伊原稲城)が出場。伊原プロモーションらしさが現れる出場メンバーの興行となります。リングアナウンサーは誰だろう。今や常連となった生島翔さんかな。

NKBとの交流戦が静かな注目があり、斗吾はNKBミドル級1位.田村聖(拳心館)を迎え撃ちます。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

一水会代表 木村三浩=編著『スゴイぞ!プーチン 一日も早く日露平和条約の締結を!』

MuayThaiOpen 世代交代が進む中にもベテランの意地!

貴センチャイジム vs 岩浪悠弥。岩浪悠弥の左フックが貴にヒット
パンチの交錯、貴を研究した岩浪のパンチが上回る

42回目を迎えたムエタイオープン興行。貴センチャイジムはアゴを打ち抜かれて王座陥落、NOWAYはヒジ打ちで劇的勝利。

ルンピニースタジアム王座へ向けて、下部タイトルでも熾烈な戦いが繰り広げられました。

この日、来賓としてタイ国からWBCムエタイ役員で、アメリカでムエタイスクールを開校しているというノックウィード・スリアムタイ氏が、この日のタイトルマッチの立会人としてレフェリングも担当されました。

◎MuayThaiOpen.42 / 2018年7月22日(日)新宿フェース16:30~20:20
主催:センチャイジム
認定:ルンピニー・ボクシングスタジアム・オブジャパン(LBSJ≒LPNJ)

◆第12試合 MuayThaiOpenバンタム級タイトルマッチ 5回戦

Champ.貴・センチャイジム(センチャイ/53.4kg)v
VS
JKイノベーション同級Champ.岩浪悠弥(橋本/53.45kg)
勝者:岩浪悠弥 / TKO 4R 2:56 / 主審:ノックウィード・スリアムタイ

貴センチャイジムは経歴長く、幾つかの国内タイトルと世界の称号のタイトルも獲得している33歳のベテラン。長身からくる手足の長さが武器となる技と首相撲からの膝蹴りも得意とする。しかし打たれ脆さが目立つこの頃。

若い20歳の岩浪が狙うのはそのアゴかと注目される中、第2ラウンド、ローキックでやや優勢気味の岩浪がパンチの打ち合いに入った一瞬、連打から左フックを合わせ、ダウンを奪う。

岩浪の更なる左フックをヒットさせ貴からダウンを奪う
岩浪の立て続けの左フックに貴は完全に立ち上がれないダメージを負う
二つ目の国内王座を制した岩浪悠弥、センチャイ代表、ノックウィードレフェリー、ラウンドガールに囲まれる

技量・総合力が現れる第3ラウンド以降に入る中、貴は組み合ってのヒザ蹴りで挽回を狙うが、第4ラウンドには接近戦で岩浪の左フックがヒット。組んでの崩しに出る貴だが、岩浪の左フックに2度倒されレフェリーに止められました。

両者は2016年7月17日にルンピニージャパン・スーパーフライ級王座決定戦で対戦、貴が首相撲で優位に進め、僅差の2-1判定で王座奪取していますが、岩浪はその雪辱を果たしました。

貴(たかゆき)センチャイジム:37戦26勝(6KO)9敗2分
岩浪悠弥(いわなみゆうや):24戦16勝(2KO)7敗1分

◆第11試合 MuayThaiOpenフェザー級王座決定戦 5回戦

1位.翔貴(岡山・水島/57.1kg) vs NOWAY(NEXTLEVEL渋谷/57.15kg)
勝者:NOWAY / TKO 3R 2:47 / 主審:少白竜

NOWAY vs 翔貴。若い翔貴に打ち勝った37歳NOWAYの左ミドルキック
裂傷を負った翔貴はダメージ深くすぐには立ち上がれず
翔貴 vs NOWAY。NOWAYの左ヒジ打ちが翔貴の左目上にヒット
諦めなくてよかったと語ったNOWAY。デビューから10年の開花

ローキックを軸にパンチの交錯が始まる。第2ラウンドに入ると主導権争いは、距離感を掴みリズムに乗っていった37歳のNOWAY。第3ラウンドもヒットが目立っていく中、翔貴がパンチで出てロープ際に迫ったところでNOWAYの左ヒジ打ちがカウンターで翔貴の顔面にヒット。翔貴は顔面をカットされるとともにダメージで立ち上がれそうになく、カウント中にレフェリーストップされました。

翔貴(しょうき):27戦10勝(6KO)12敗5分
NOWAY:19戦13勝(1KO)4敗2分

◆第10試合 ルンピニージャパン・スーパーライト級王座決定戦 5回戦

2位.実方拓海(TSKJapan/63.0kg) vs MOD-X・センチャイジム(タイ/63.25kg)
勝者:実方拓海 / 判定3-0 /主審:河原聡一
副審:田中49-47. 少白竜49-47. ノックウィード48-46

ローキックの攻防から、次第にロープ際に下がるMOD-X。パンチで出る実方に対し、ロープやコーナーに下がる展開が多くなりながらも蹴られたら蹴り返すMOD-X。

組み合えばムエタイ技を発揮し崩しもあるが、パンチとローキックの離れた攻防となるとロープ際に下がるMOD-X。第5ラウンドの終盤には、これで時間稼ぎして終わろうとしたような動きの残り時間少ない頃、MOD-Xにパンチのラッシュを掛ける実方。連打を浴びグロッギーになったMOD-Xはスタンディングダウンを取られる。

MOD-X vs 実方拓海。打ち合えば実方が圧勝しそうな勢い
スタンディングダウンを喫したMOD-X、意外な結末だったか
王座奪取に喜ぶ実方拓海のインタビュー姿

こういう出て来ないスタミナ足りないタイ戦士にラッシュしてくれたことには、ファンのストレス発散させてくれた結末。大差にならぬもノックダウンの差は大きく現れ、判定で実方が勝利を掴む。

実方拓海(さねかたたくみ):18戦13勝4敗1分
MOD-Xセンチャイジム:72戦51勝20敗1分(推定)

◆第9試合 MuayThaiOpenバンタム級挑戦者決定戦3回戦

鳩(=あつむ/TSKJapan/53.1kg) vs 飯尾馨一(=いいおけいいち/ストライブル世田谷/53.15kg)
勝者:鳩 / TKO 2R 2:42 / パンチによる連打でダウン、レフェリーストップ
主審:北尻俊介

鳩:20戦12勝(10KO)7敗1分
飯尾馨一:6戦2勝3敗1分

◆第7試合 ライト級3回戦

笠原淳矢(=かさはらじゅんや/フォルティス渋谷/60.85kg)
VS
亜努(=あとむ/新宿スポーツ/61.75kg)520gオーバー、減点1とグローブハンディー有り。
勝者:笠原淳矢 / 判定3-0 / 主審:田中浩明
副審:北尻30-26. 少白竜30-26. 河原29-26

笠原淳矢:43戦16勝(3KO)24敗3分
亜努:14戦6勝8敗

◆第6試合 80.0kg契約3回戦

ナンファーCHU(ANT/78.9kg) vs ルンラウィー・OZGYM(タイ/70.2kg)
勝者:ルンラウィー / 判定0-3 / 主審:ノックウィード
副審:北尻28-29. 田中28-30. 28-29

ナンファー:9戦4勝(2KO)5敗
ルンラウィー:61戦41勝18敗2分(推定)

◆第5試合 LPNJ U-15 -50.0kg3回戦(2分制)

花岡竜(橋本) vs 松田虎之介(ストライフKB)
勝者:花岡竜 / TKO 2R 0:47 / 続行中のタオル投入による棄権
主審:少白竜

◆第4試合 バンタム級3回戦

壱(=いっせい)センチャイジム(センチャイ/53.35kg) vs 渡辺亮(武風庵/52.9kg)
勝者:壱センチャイジム / TKO 1R 1:45 / カウント中のレフェリーストップ
主審:河原聡一

壱センチャイジム:4戦3勝1敗
渡辺亮:9戦3勝(1KO)6敗

◆第3試合 70.0kg契約3回戦

齋藤敬真(=さいとうけいま/インスパイヤードM/69.1kg)
VS
吉田英司(クロスポイント吉祥寺/69.45kg)
勝者:吉田英司 / KO 2R 0:55 / 3ノックダウン
主審:北尻俊介

齋藤敬真:7戦5勝(3KO)2敗
吉田英司:4戦3勝1敗

◆第2試合 スーパーフェザー級3回戦

ウルフ タツロウ(ANT/58.8kg)
VS
角谷祐介(=かくたにゆうすけ/NEXTLEVEL渋谷/58.65kg)
勝者:角谷祐介 / 判定0-3 / 主審:田中浩明
副審:少白竜28-30. 北尻28-30. 河原28-29

ウルフ タツロウ:7戦4勝2敗1分
角谷祐介:9戦6勝1敗2分

◆第1試合 45.0kg契約3回戦(2分制)

Sae_KMG(クラミツ/44.7kg) vs ピーポー梨乃(ストライフ/42.9kg)
勝者:Sae_KMG / 判定2-0 / 主審:田中浩明
副審:少白竜30-29. 北尻29-29. 河原29-28

Sae_KMG:7戦3勝3敗1分
ピーポー梨乃:2戦2敗

《取材戦記》

上位王座も下位王座も関係なく入り乱れる交流戦。世界の称号を持っていても国内王座に挑む現象は、任意団体の似たもの王座であることが浮き彫りとなっています。

NOWAYが勝利者インタビューで「皆さんに言いたいのは、何でもいいので、自分が一生懸命になれるものをずっと続けていると、いつか結果が出るということで、諦めなくてよかったと思います」とアピール。27歳と遅く始めてもそれが実ることを実証されました。他にも30歳越えてデビューした選手も多い大器晩成の時代でしょうか。

センチャイジム主催のMuayThaiOpen興行も2005年から数えて42回目。この継続力も凄いことで、また過去の「タイファイトエクストリームやムエタイTOYOTA CUPのようなビッグ興行やってよ」とセンチャイ会長にお願いにしたいところです(無理難題と知りつつ)。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

8月7日発売『紙の爆弾』9月号!「人命よりダム」が生んだ人災 西日本豪雨露呈した”売国”土建政治ほか
一水会代表 木村三浩=編著『スゴイぞ!プーチン 一日も早く日露平和条約の締結を!』

私の内なるタイとムエタイ〈36〉タイで三日坊主!Part.28 ラオス国境を渡る

ワット・チェンウェー和尚さんとデックワット最年少の男の子と
お世話になったノンカイのワット・ミーチャイ・トゥンの比丘達とはしばらくのお別れ

◆ノンカイとしばしのお別れ

ノンカイの寺、2日目の托鉢を終える頃、最後の“痛~い砂利道”だけはダメだった。昨日は3歩でくじけたが、今日は6歩ほど歩いて、「アッ、イタタタタタッ、痛ッ!」。

また歩を休めながら何とか辿り着く。ホンマに恥ずかしい。修行が足りないことが心に響く。今度来た時は必ず歩ききろうと誓う。ちょっと痛いだけだ、頑張ろう。

今日はラオスに入る日。朝食後は使わせてもらったクティの範囲を掃除しながら出発準備に掛かります。

「早よせい!」とイライラしながら急がせる藤川さんが慌ててコップ割っていやがる。

人に文句言っておいて自分が出来ないこと多い人だ、全く。まだまだあるが今度書こう。

わずかな間だったが、ペッブリーの我が寺より品の良さに癒され楽しかった。リーダー格の兄さんやコーヒー入れてくれた兄さんらと写真撮ってお別れ。と言ってもまたノンカイに戻って来るのだ。次は河沿いの寺に行くかもしれないけれど。

◆タイ・ラオス友好橋で想う

デックワットが用意してくれた籠の膳

拾ったトゥクトゥクは、藤川さんがしっかり行き先を伝えず、タイ・ラオス友好橋まで行くまでの途中で降ろされる不愉快さはあったが、後から来た親娘が乗ったトゥクトゥクに拾われるタンブンとなった。これも徳の積み方なんだなと思う。

タイ出国手続きエリアでは比丘の立場が効力を発揮し、係員が特別早くしてくれて簡単に済み、国境橋通行バスに乗って橋を渡ります。これが近いようで結構離れている河幅で、ゆっくり走ってはいたが、出発から到着まで5分ほど掛かっていました。

このタイ・ラオス友好橋を渡るのは2回目である。ラオスに入る為の出入国審査を受けるのはこの日が初めてである。矛盾したことを言っているが、この2ヶ月前、ノンカイでムエタイの試合がありました。この試合を取材してから出家した私でした。このノンカイでの試合は日本人では伊達秀騎と小林利典、そしてこの小林選手と対戦した、日本でも有名なソムデート・M16も居ました。

この興行御一行はプロモーターとその友人の入国管理局のお偉いさんの計らいで、ラオス・ビエンチャンの半日ほどの旅をノービザ、未入国扱いで観光させて頂いているのである。なので、ビエンチャンへはある程度は街並みと治安が分かり、オドオドするほど不安ではなかった。2ヶ月前の風景が蘇る。楽しかったなあ、前回は自由で。

◆ラオスに入って最初の緊張

ラオス入国審査も難なく通過出来たところ、待ち構えていたのは客引きタクシー運ちゃんの群集だった。これから向かう、プラマート和尚が書いてくれたワット・チェンウェーの住所を藤川さんがあっさり運ちゃんらに見せている。

こんな怪しい奴らに何で簡単に着いて行こうとするのか。

ボロイ車にもう一人若い男性客を助手席に乗せてたタクシーの運ちゃん。

私はこのタクシーはやめようと思った。何年か前のバンコクで起きた日本人新婚夫婦が白タク強盗殺人に巻き込まれた事件を思い出したのだ。

「ヤバイですよ、藤川さん!」と言っても「ほんならどないするんやぁ!」と語気強く返してくる。他のタクシーにしてみても同じかあ。ここで立ち往生はできない。もう行くだけ行って見るしかなかった。

比丘であろうとボッタくってくる運ちゃんとは150バーツで交渉成立。どれだけ高いのかは分からない。それより安全かどうかの問題。サングラス掛けた運ちゃんは怪しい風貌。この助手席の客もグルだったらどうなるのか。だんだん田舎道に入り、どんどん人の気配が少なくなって心細くなる。

藤川さんはこんな旅は慣れたものなのか平然としている。そんなところで助手席の客が降りる。俺らはもっとひどいところに連れて行かれるのか。そんなこと考えるうち、しばらく行ったところで運ちゃんが何やら言って指で示す。門のアルファベットの綴りはちょっと正しくないが、「ワット・チェンウェー」の文字が見えた。ああ助かった。ちゃんと送り届けてくれた普通の運ちゃんだった。去り際、ニコッと笑ってくれる。運ちゃんが天使に見えてしまう。私は警戒し過ぎなのだろうか。150バーツは高くなかった。ちょっとボッタくられただけで済んだのだ。

正面玄関となる講堂
ワット・チェンウェー本堂

◆無事に着いたワット・チェンウェー

門入ってすぐ、黄衣をホム・ロッライに纏い直す。そこに居たデックワットであろう少年に案内して貰い、荷物持ったまま正面の講堂らしき建物へ入る。年輩の和尚さんらしき比丘が仏壇の前に座っている。

すぐ目が合って三拝してノンカイのプラマート和尚からの紹介状を見せると、このチェンウェー寺の小太り和尚さんが「ジンディートーンラップ!」と応えてくれました。

若い比丘達のクティ

藤川さんは私に「何て言うたんや?」
私、「“歓迎します(welcome)”です!」
またすぐ平伏す我々。時間は11時を回っていました。

小太り和尚さんの「ターンカーオ・ル・ヤン?(食事は摂りましたか)」
「ヤン!!」と“頼むでぇ”と言わんばかりの笑顔で応える藤川さん。
すぐ弟子たちに命じて食事の準備をしてくれる小太り和尚さん。

ここの寺も昼食時に入るところだったのだ。若い比丘とネーンたちが和尚さんと皆の分と我々の分が籠の膳に載せられ出されます。こんな突然の訪問者の食事まですぐ出せるというのは、知らない仲なのに不思議な迎え入れだ。まあデックワットの分が我々に回ってくることは想像できたが、ノンカイ同様、食材に貧相な印象は無い。とにかく御飯に有りつけたのは有難い。結構食えたし美味かった。食事後は少々の読経を経て終了。

釘と金槌を貸してくれたおじいさん比丘

◆クティに入る!

小太り和尚さんに、我々がタイのペッブリーから来て、タイ国滞在ビザを取得してタイに戻ることを伝えた後、クティに案内してくれました。先程食事させて頂いた、正面の鉄筋コンクリート造りの綺麗な建物は講堂とも言える広々した読経の場だったが、我々が誘われたのはこの隣の木造高床式小屋の2階の“ワンルーム”。暗いし暑いし蚊は入るし、けど寝られる場が与えられて有難かった。そこには痩せた病気がちに見えるおじいさん比丘が片隅で寝ており、若い比丘一人も居る部屋だった。

藤川さんはすぐ「蚊帳吊れ!」と言う。旅立ち前、貰っていた紐と釘を出して、何をどうするのか迷っていると、「今やらんと夜になってからじゃ暗くて出来んぞ!」と語気強く、外で拾った大きめの石を持って来て壁に釘打ち出した藤川さん。
“ガンガンガン!”と小屋全体が振動するほど響く。おじいさん比丘も何事かと振り返る。

「ちょっとちょっと、突然人の家に来て、いきなり壁に釘打ち出すなんて非常識ですよ!」と言っても、「しょうがないやろが!」と言う藤川さんの後ろに、寝ていたおじいさん比丘が立ち上がって寄って来た。「ヤバッ、怒られる!」と思った途端、おじいさんはニコ~ッと笑って「これ使えや!」と言わんばかりの、釘と金槌貸してくれたのである。この拍子抜けする吉本新喜劇のような展開。

とにかく不器用な私が子供の頃見た、器用な親父が家でやってた日曜大工を思い出し、壁に釘をしっかり打ち込み、紐を傘の先端の輪に通して吊るし、傘に蚊帳を掛け、寝られる準備を終えました。

やれやれこれで今日はゆっくり寝られる準備が終わった。しかし、これからラオスに来た最大の目的を果たしに行かねばならない。書類を持ってビエンチャンのタイ領事館へ向かいます。

我々が泊まったクティは左の方

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

月刊『紙の爆弾』8月号!
一水会代表 木村三浩=編著『スゴイぞ!プーチン 一日も早く日露平和条約の締結を!』

私の内なるタイとムエタイ〈35〉タイで三日坊主!Part.27ノンカイの寺務め

駅側のワット・ミーチャイ・トゥン和尚さんと藤川さん

◆一列縦隊の托鉢!

ノンカイのワット・ミーチャイ。トゥンに泊まった翌朝、5時に起きる。顔洗いにだけ洗面所へ行き、黄衣を私だけホム・マンコンに纏うと6時少し前、外で待つと辺りはまだ暗く、そして寒い。寒気のタイ東北部となると当たり前。裸足で立っていると土の地面がかなり冷たい。

6時過ぎてようやく他の比丘も出て来て、その比丘らに続いてノンカイ駅最先端の行き止まり付近に向かい、和尚さんを待ちます。持つのはバーツだけで頭陀袋は必要無い様子。

そして和尚さんを先頭に縦一列に並び、歩き出しました。手招きされるまま私は藤川さんの後ろで3番目。よそ者の我々が和尚さんの真後ろに並ぶ形。

少し進むと河沿い側のワット・ミーチャイ・ターの比丘たちが合流し、若いプラマート和尚はトゥン寺和尚の後ろ、更に年配比丘が続き、私は5番目となりました。

他にもかなりのベテラン比丘が居るのに、皆若いせいか我々の後ろに回っています。そして先頭を歩くトゥン寺和尚の速いこと。各集落毎に2~3人の信者さんがサイバーツ(お鉢に食物を入れる寄進)を待ち構えています。そこを立ち止まったと思ったら信者さんがすかさず一握りのカオニィアオ(もち米)を入れ、次の信者さんへ回り、終わるとまた前へ進みます。これは速い。新世界紀行で見たような、ゆっくり歩いてワイ(合掌)する信者さんを見届けて歩き出すといったものではない。前との距離が開かないように着いていくのがやっと。

50件ぐらい回ったろうか、突然振り返って帰る方向へ向かいだすトゥン寺和尚さん。バーツ(お鉢)に入るのはカオニィアオがほとんど。たまに果物、お菓子、ジュースが入れられました。帰りは列が乱れ、ゆっくりお喋りしながら歩く者もいる。一列托鉢はそれでも30分ぐらい歩いたような感覚。そして一握りのカオニィアオばかりだったが、更に信者さんがお寺に惣菜を運んだり、托鉢帰りの比丘に食材が入った御重のような重ね容器を渡している姿がありました。何らかの習慣化したシステムがあるのでしょう。

托鉢の朝。ノンカイ駅最先端で和尚さんを待ちます

帰りの近道に入った路地では石が尖って細かく、痛くて歩けない。足ツボ踏みに使う突起ある石の上を歩くみたいな格好。それを藤川さんら集団は平然と歩いて行く。
「どないしたんや、痛いんか?痛いのは誰でも一緒や、はよ歩かんかい!」と以前のような冷たい言い方。それはいいとして、後からやって来たトゥン寺和尚さんに、下手な踊りのように歩く私を見られてしまった。「大丈夫か?」と気を遣われて恥ずかしい。

朝食では、昨日同様に惣菜とカオスワイ(普通の白米)とカオニィアオ(もち米)もあり、托鉢で寄進された以上の食材が並びます。国境の街だから物資が流通し易いにしても、「これは我々が教わって来たことと何か違うぞ」という想いは次第に増していくところでした。

バーツ(お鉢)はこの寺のデックワットが持って行き、中身を出して洗って返してくれる気の利きよう。

托鉢帰り、田舎道って良いものです
托鉢帰りの一面、朝日が眩しそう。朝日を浴びる托鉢

◆癒されるコーヒーと女の子!

朝食後も自由に居られる雰囲気だが、藤川さんが「掃除しよう」と言い、それは確かに居候の身になっている我々は泊めて貰っているクティの範囲はやるべきだと思う。箒と雑巾を借りて来て部屋から廊下、階段、我々が入れる範囲はすべて拭き終わると、昨日、コーヒーを入れてくれた比丘が今日も招いてくれ寛がせてくれました。

タイ人が淹れるコーヒーは砂糖タップリで、「砂糖は入れないで」と言っても入れてくれる。「こんな苦いもの飲める訳がない」という発想だろう。でも私は砂糖タップリ派なので美味しくて癒される時間でした。

そして、今日は午後から葬儀があるという。これは参加しない訳にはいかないなあと藤川さんと目線を合わせて合意。旅先の葬儀というものも見ておきたいところ。

昼食後に、「リポビタン買うて来て!」と藤川さんに言われて、素直に駅方向へおつかいに出ました。小間使いになっているが、一人になりたかったせいもあります。

ノンカイに着いてから歩いて来た道。お店は駅前にあり、20歳ぐらい可愛いの女の子がお店番している様子で、片言のタイ語を喋る私が日本人であることを知ると、驚いたり喜んだり。ニコニコ笑って対応してくれて惚れそうになる。男世界の仏門と、旅先ずっと藤川さんがそばに居る中、女の子と二人っきりになれた、かなり癒された、わずかな時間でした。ここは商店なので問題ないが、比丘は女性と密室で二人っきりになることは許されません。寺に女性が訪ねて来て部屋に招く際は、部屋の扉は開けておかねばなりません。

寺への近道に入り、このすぐ先の砂利は凄く痛い、それを知らずまだ写真撮ってる私
トゥン寺和尚さんのクティ、この二階に泊めて貰いました

◆お葬式に参列!

午後になって境内が騒がしくなってきました。外では葬儀が始まる様子。
藤川さんが「サンカティ持って行くぞ」と言う。

ここは我々の寺のようなホム・ドーン(儀式用の纏い)は無い様子。普通のホム・ロッライ(肩出し)にサンカティ(重衣・肩掛け帯)を肩に掛けるだけの簡単なもの。

その姿でテント張った椅子があるところで他の比丘達と座っていると、そのままそこで読経が始まる何とも大雑把な葬儀。信者さんと比丘は離れて居たが、個々の比丘が順番に棺桶の方に呼ばれて短い読経して席に戻る時、一人の比丘に呼ばれました。

「どこから来たの? この先どこへ行くの? ラオス行って戻って来るの?」と言った語り。

葬儀も終わりに近づき、どこに座っても問題無い様子。そこから雑談の輪に加わって来たオバちゃんたちにタイ・ラオス国境の橋の渡り方を教えてくれました。

「日本から来たの?橋渡るのに15バーツ、土日は25バーツだよ!」とか気さくに話しかけてくれた地元のオバちゃんたち。どこへ行ってもこの田舎らしい人懐っこさは心地良い。

葬儀が終わると火葬されることは聞いていたが、どこで火葬されるのか、その辺りの比丘に聞くと、「もうやってるよ!」と招かれ、火葬している場所を教えてくれました。

焼却炉のようなものではない、広場で花壇のような中で、焚き火のように大きい炎に包まれた火葬。熱くて近づけたものではない。「やっぱり誰もが最後はこんな姿になるんだ」という想い。

火葬される遺体が中央に、ほぼ見えませんが
比丘達のクティ、こちらは味ある木造建て

◆藤川さんの気まぐれ話と渋井巨匠!

今日のワット・ミーチャイ・ターへの移動は中止。夕暮れとなり、長い葬儀と皆が後片付けしている中、「今日はあっちの寺に行きます」と言う訳にもいかないと改めて思うところ。

そんな慌てることもない夜は、また藤川さんと一緒に居るといろいろなお話になります。

「来年の今頃、カンボジア行こう。お前一ヶ月ほど来い。渋井さんにも会いたいし」

漠然と夢を語りだすこと多い藤川さん。突然話を振られると戸惑うが、安易にも行けるものなら行ってみたいと思う。

渋井さんとは、藤川さんが出家に導かれた最初の切っ掛けとなった比丘。そして私が出家に導かれる一つとなった、新世界紀行のタイからベトナムを旅する番組で、若者がバンコクのワット・パクナムの渋井修さんを尋ね、出家したのが由井太さんと加山至さん。遠い縁で結ばれた我々日本人比丘の巨匠。この頃はカンボジアの寺で社会貢献活動する渋井修さんでした。

◆明日は国境越え!

明日はタイ・ラオス友好橋を渡ってラオスに入国します。やや不安は募るも、そこには藤川さんが伴うのと、もうひとつ理由があって少しは落ち着いて居られました。タイ・ラオス友好橋、実は渡るのは2回目(1往復済)なのでした。

河沿いのワット・ミーチャイ・ター和尚のプラマートさんと藤川さん

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

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私の内なるタイとムエタイ〈34〉タイで三日坊主!Part.26 ノンカイ新たな光景

メコン河に佇む藤川さん

◆旅の関門、宿泊地と飯確保

ノンカイ駅に到着後、新たな展開が待ち受けるワット(寺)・ミーチャイ・トゥンに向かいました。

庭に居た若い比丘に尋ねると和尚さんは留守で、駅前で聞こえていたニーモン(比丘を招く寄進)先に行っている様子でした。

そしてこの若い比丘がクティの御自分の部屋に招いてくれて、コーヒーを入れてくれました。どこから来たか、これからどこへ向かうか旅の目的を話していると、この比丘の部屋はキレイに整理整頓が行き届いており、突然の来客があっても恥ずかしくない部屋で、勉強した後のような雰囲気に気が付きます。昔の私の実家の部屋のような、新品の辞書の上に埃が被っているようなことのない、読んだ本が積んであっても日々活かされている匂いがありました。

着いたばかりの我々に出されたコーヒーに癒される寛ぎ。インスタントコーヒーでも、こんなに落ち着かせてくれるものかと初めて思う味わい。

このノンカイは以前、藤川さんが巡礼の旅で立ち寄った際のこと、「三輪タクシーの運ちゃんに“この辺でいちばん修行が楽な寺はどこや?”って聞いたら連れて来られたのがこの寺やった」と言う。

訪れたワット・ミーチャイ・トゥンの比丘と早速のスナップショット
若い比丘ばかり、デックワットも素直そう

やがてその和尚さんが帰って来た様子。早速、藤川さんと和尚さんの別棟クティに行き、三拝して自己紹介と旅の目的を言い「泊めてください」とお願いをします。我が寺の和尚より年上と見えるこの寺の和尚さんは、良いも悪いも無く、すぐに2階の結構広くキレイな部屋へ入れてくれました。

以前、藤川さんが「タイで一旦出家すれば格式高い修行寺でも基本的には泊まれる。タイの中ならどこへ旅行しても寺で泊まるのと食費はタダ。交通費も飛行機を使わない限りは殆どタダ。女と酒さえ我慢すればこれほど良いものは無い。坊主三日やったら止められへん!」と冗談含めた笑い話を聞いているが、真面目な話、本当に泊まれるのである。

クティ2階から見た庭の風景
大通りから路地に入るところの案内板

この日、朝飯は摂れず、ここで昼飯食えなかったらかなり苦しい。11時回って藤川さんが「飯無いのかな」と外へ様子を見に行くと、「あるみたいやからスプーンとフォーク持って行こ!」と戻って言われて一緒にサーラーに向かうと、テーブル3つほどあり、12~13僧が居る中、その一つに招かれました。

貧困のイサーン(東北)地方と言われる割には、カオニィアオ(もち米)と惣菜も充分にあり、普通の白米もありました。藤川さんが遠慮なく食べるから、私も腹減っていてガツガツ食ってしまう。他の比丘は静かに少しずつ食べているのに、我々が卑しい感じで恥ずかしい。

昼飯後の読経はタムケーウ寺と同じだが、イントネーションが違う。読経にも地方訛りや指導の違いがあるのだろう。

◆早速、ノンカイを歩く

昼飯後、クティに戻り、とりあえず今日は安泰と思ってゆっくり休んでいると、
「今日のこの寺の行事は無さそうやから、外出しよう」と言う藤川さん。旅に出たら何でも見ておこうという探究心旺盛な人らしい言葉。

それで午後2時過ぎになって外出します。藤川さんは「ラオスで泊まる寺を紹介してくれる、寺の和尚に会いに行くんや」と言う。それは藤川さんが「ここも過去に訪れた」と言う、道路を挟んだ向かい側にあるワット・ミーチャイ・ターでした。行ってみると大きなメコン河が見える。この寺のミーチャイター寺の和尚さんは留守で「“ローングリアンプラ”(比丘の学校)に行っている」という若い比丘。

ター・サデット市場を歩く藤川さん

河沿いで1kmほど先の対岸を眺め、やがて向かうラオスを想った後、そのローングリアンプラで講師を務めているらしい和尚さんに会いに、三輪タクシーで中心街となる方向へ向かいます。2ヶ月前、ムエタイが行なわれたサッカー競技場の前を通ると、ここで伊達秀騎が試合したのかと想うと、あの頃が懐かしいやら切ないやら。その後、メコン河沿いのラオスに渡る船着場に着いて周囲を散策。新世界紀行で出家した由井太さんと加山至さんがノンカイで還俗し、ラオスに渡ったのは、このイミグレーションを経て船に乗ったのだろうか。或いは全く別の場所だろうかと想いに耽けます。

この後、結構賑やかなター・サデット市場を覗きました。日用雑貨でも何でも売っている市場に、日本の有名なお菓子も売っていて「どこから仕入れて来るんやろう」という視点の藤川さん。

また更に歩いてローングリアンプラに着くと、校庭を掃き掃除していた学生比丘(高校生ほどの少年僧)はさっきの寺に居た奴だったが、「和尚さんはもう帰りました」と言う返答。寄り道しているから擦れ違いとなったようだ。

街の佇まいをゆっくり歩いて見ようということになって三輪タクシーには乗らず、河沿いのワット・ミーチャイ・ターへ戻ります。その途中、夕陽を浴びながらまた藤川節で、
「人はそれぞれ太陽の上るところ、沈むところを見ながら育ったいろいろな環境あるから皆、そこから人のものの考え方が育って来たんじゃないか。これ調べたら面白いぞ。統計取ったら何か分かることあるはずや」と言う。なるほどなあと思う。次から次と発想力が凄い藤川さん。

船着場のイミグレーション前にて

◆ノンカイで二つ目の寺の和尚さんに会う!

先ほど寄ったワット・ミーチャイ・ターに着く頃にはもう薄暗くなっていました。若い比丘やネーン(少年僧)もいっぱい居て、ここの和尚さんの部屋へ案内してくれました。会ってみると結構若い30代の和尚さん。

挨拶した後、藤川さんが、泊めて貰えるラオスの寺への紹介状を書いて貰う為、旅の目的を言い、私が比丘手帳も見せると和尚さんから名刺を頂きました。お名前はプラマート和尚。旅の補助にラオスのお金少々手渡ししてくれる配慮もやはり嬉しい。こちらも居心地良さそうな寺で「明日の昼こっちの寺に来てここに泊まるぞ」という浮気心発揮の藤川さん。

もうすっかり暗くなって夜7時頃、駅側のワット・ミーチャイ・トゥンに戻ると、“トゥン”和尚さんクティには鍵が掛かっている。藤川さんは私に「鍵貰って来い」と言うが、サーラーではスワットモン(読経)が始まっている。仕方なく静かに参加するつもりも、私を見つけた1僧の比丘が気を利かせて和尚さんから鍵貰って来てくれました。我々は参加せず遊んで来たみたいな存在で、読経中のトゥン和尚さんには申し訳ない思い。

部屋で私が旅日記を書いていると、隣に座っていた藤川さんの動きが全く無いことに気付く。一人でいつの間にか瞑想に入って居やがる。こんな旅に出てまでと思うが、どこに行こうと修行の身、当たり前だなと思い直す。

30分ほどの瞑想を終えると藤川さんが「あっちの寺のプラマート和尚、ちょっと変わった人やろ?」と言う。

以前から聞いていたことだが、確かに何やら優しい眼差しで喋るプラマート和尚さんではあった。まあ旅疲れしている我々に対して優しければ好都合である。何か変な近寄り方でもされたらプロレス技でも掛けてやればいい。

ター・サデット市場の一部、奥はもっと密集した店が並ぶ
寺に繋がるケーウ・ウォラワット通りの風景

◆ノンカイでの托鉢は集団で

明日はこのノンカイでの托鉢に向かいます。藤川さんの経験話では、ここは独自に向かうのではなく、皆で一列縦隊で歩き、しかも歩くのが速いらしい。皆のペースに着いて行かねばならない。大丈夫だろうか。と托鉢ぐらいで気にしていられない。

夜8時30分過ぎでかなり早いが、藤川さんと久々の同部屋でに就寝。いびきはもう気にしない。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

タブーなき月刊『紙の爆弾』8月号!
一水会代表 木村三浩=編著『スゴイぞ!プーチン 一日も早く日露平和条約の締結を!』

私の内なるタイとムエタイ〈33〉タイで三日坊主!Part.25 ラオスへ冒険の旅

一般のバックパーカーではない旅。貧乏旅行としては大差無い中、旅先でいろいろな人と出会います。そこで起きたこと、感じたこと。やっぱり懐かしく、人生の良い経験となった旅でした。

◆出発前に

「ラオス行ったらマールボロ買って来てくれ」というヒベ。傘と蚊帳を含む僧衣一式だけでもかなりの量。「荷物が重いから」と断る。更に修行に直接は関係ない一眼レフNikonFM2とフラッシュを持つからより重くなるのである。それで、カメラのモータードライブは置いていくことにしました。でも予備バッテリー(電池)は多めに、ついでにコンパクトカメラ、コニカ“ビッグミニ”も持ちます。

フアランポーン駅(バンコク中央駅)発20時30分の寝台列車に乗る予定で、ペッブリーから「昼2時のバスに乗る」と言ってた藤川さんが昼飯時に「昼1時に出るぞ」と言う。「ちょっと早いだろ」と思うが、早い分にはゆとりがあっていい。

毎日の黄衣の纏いも慣れてくるも、旅立ち前に力んで締め過ぎたか、何かしっくり来ないので、出際にコップくんに手伝って貰って背中を叩かれ「行って来い!」と送り出しを受けて出発。

ドーム型フアランポーン駅の外観(1988年当時)

◆旅の起点、フアランポーン駅でのこと

バンコクのサイタイマイバスターミナルに15時30分頃に着き、P・O.7(エアコン市内バス7番)でフアランポーン駅へ向かいます。ここでも席を譲られたことに内心は感謝。17時10分頃到着。

早く出ておいて「なんや3時間もあるやないか!」と私に文句言う藤川さん。「何で俺に言うんだ?アンタが仕切ってるんだろうが!」と言いたい想い。でもそんなゆとりがあれば、何もしないでいても結構楽しいフアランポーン駅構内の眺め。

フアランポーン駅切符売り場(1988年当時)

過去何度も訪れた駅に、黄衣を纏ってここに来るとは不思議な時間の流れだと思う。

電池買ってきて、懐中電灯に入れようとする藤川さん。点かないので、何で点かないのか、私に寄こしてくる。よく見ると新品の証明、電池の+極と-極を覆うカバー紙を破ってないではないか。日本の電池は2本や4本セット以上でパッケージで覆われているが、タイの電池は+極と-極にカバー紙が付いている。電池の入れ方も知らんのか、このジジイ。剥いて電池入れて点くの確認して、渡してやるとニヤッと笑って受け取る藤川さん。

暇なので藤川さんは一人でまたその辺を散歩に行きます。そして、18時になるとタイの恒例、国歌吹奏が始まりました。行き交う人々は皆立ち止まり、座っている人は全員起立。

“ハッ”と我に返り、さて困った。比丘はどうすればいいのか。座っていた私は一瞬立ち上がろうと前かがみになるが、一か八か座ったままで居ました。そしてすぐ周りの様子を伺うも、誰も私を怪訝な目で見る者は居らず、見て見ぬフリではない、皆ごく自然な立ち姿。終わって2~3分もすると藤川さんが戻って来ました。
「国歌吹奏の時、どうしてました?」と聞くと、
「ワシもわからんで、ウロウロ歩いとったわ、ワッハッハッハ!」

寺から出ると、うっかり比丘の振舞いに困ることが起こるものだ。勉強不足でした(後に分かったこと、比丘は立たなくてもよい)。

列車入線してから小さいパックのミルク4つ、ポラリス(ミネラルウォーター)を小さいの2つ買っておきます。ミルクは腹持ちがいいから空腹を凌げるのです。しかし比丘たる者が、“タイ版キヨスク”で飲み物を買うのは気が引けました。

フアランポーン駅構内は鉄道独特の雰囲気があっていいモンです(1988年当時)
フアランポーン駅構内、何もしなくても居るだけで楽しい旅の前兆(1988年当時)

◆旅先での多くの藤川さんの名言集となる会話のひとつ

フアランポーン駅に入ってから纏いを一般的なホーム・クルム(寺の外に出る纏い方)に変えた藤川さん。これは「巡礼に向いた纏い方」だという。私はホーム・マンコンのまま。こちらは「寺に留まる者の纏い方ではないか」という藤川さん。勝手に変えることは寺の規律違反になりますが、まあ「寺の連中は誰も見ておらんから構わん」らしい。

藤川さんは会社社長のままの一時僧時代に纏ったのが、このホーム・クルムの纏いでした。

ドムアン空港を過ぎた辺りで、寝台準備にやって来た乗務員のオジサン。寝るには早いが、藤川さんと一緒に居るとまた説教話が始まるのは仕方ない。ただ煩い説教話ばかりではない。旅に出ると解放的になり、朗らかになるバンコク行った時のよう。

寝台車の昼の様子(イメージ画像、1988年のマレーシアに向かう列車内)

藤川さんの金持ち時代のこぼれ話。

「ビザ取りにマレーシア行った時、国境越えるから入国カード書くやろ、同じ目的の日本人の女の子居ったら“ワシ英語よう分からんから入国カード書いてくれへんか”て言うて書いて貰うて、“2~3日の滞在費出してやるから一緒に過ごさへんけ?”て言うてビザ受け取るまで一緒に観光でもして楽しい旅にするんや、お前も還俗したらやってみい!」

私も還俗してマレーシアに行く機会があればやってみよう。いや、私にそんなナンパ術出来そうにないな、やっぱり!

一般的には早いが21:00過ぎにベッドに入ります。

列車内、寝る前は暑く、カーテンを開けていたが、夜中から寒くなりだす。コーンケーン過ぎた辺りはかなり寒い。

私は安い上の寝台、窓が無いので外の様子は分かりませんが、車体にビュービュー吹き付ける風の音はまるで吹雪のような強い風。南国でそれは無いが、12月は寒い時期に当たる。北へ向かうと寒くなるのは肌で感じるところ。首元に風が入ると鼻が詰まるので黄色い手拭いを襟巻き代わりに巻いておきました。

朝4時ぐらいから目が冴えてもう眠れない。6時を回るとノンカイ手前までにどんどん下車する客が多い。

「腹減ったなあ、飯食いたいなあ」と思うが、一般乗客は注文した朝食は運ばれるも、我々は注文する訳にいきません。バーツ(お鉢)はバッグに仕舞ってあるし、車内での托鉢は出来ないことはないかもしれないが聞いたことはないし、寄進を受ける雰囲気でもない。

寝台を上るのも降りるのもサボン(下衣)が気になるものだ。スカート穿いているようなものだから、高いところ上る女性は大変だなあと思う。

藤川さんは起きてから黄衣を纏い直すも、私は下手で時間が掛かる。ホーム・マンコンは巻き付けてから裏表引っくり返す手間があり、通路やデッキでは邪魔になるし、纏い直しはしないつもりで、なるべく崩れないように寝ていても、やっぱりかなり乱れてしまう。それを誤魔化す程度の直しで、終着駅のノンカイに7時22分に到着。

◆ここから自分らで歩く本当の巡礼の旅!

さてここからどうなるのか未知の世界。改札を出るとぞろぞろと、三輪タクシーの運ちゃんが寄って来て比丘であろうと遠慮なく客引きします。「鬱陶しいなあ」とは思うし、藤川さんも無視して進む。客引きが着いて来なくなる頃、駅前の屋台がありました。入ろうとしたら「開店前です」と断られるが、まあ仕方ない。そんな時どこからか、比丘数名の読経が聞こえます。朝のニーモンの様子でした。

そのまま歩いて向かった寺は、ワット(寺)・ミーチャイ・トゥン。駅から7~8分歩いたところにありました。藤川さんがかつて訪れたことのあるお寺のようで、少し安心感はあるところ、これから訪問の儀式、「泊めてください」とお願いしなければなりません。プレッシャーから来る旅疲れとお腹も減ってきて、早く落ち着きたい気持ち。難なく受け入れてくれること願ってこれから門を潜ります。

タイ東北、最北端となる路線の行き止まり、ワット・ミーチャイ・トゥンの側道から見た風景(1994年12月現地撮影、旧ノンカイ駅周辺)

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

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キックボクシングの夏祭り MAGNUM.47!

ペットヤソーに左ミドルキックを浴びせる江幡睦
あらゆる技を酷使、飛びヒザ蹴りを見せる江幡睦

「いよいよ江幡睦の牙城が大きく揺らぐ」という見出しが気になる展開へ

◎MAGNUM.47 / 7月8日(日)後楽園ホール 17:00~20:30
主催:伊原プロモーション / 認定:新日本キックボクシング協会

◆第12試合 54.0kg契約 5回戦

WKBA世界バンタム級チャンピオン.江幡睦(伊原/54.0kg)
VS
ペットヤソー・ダープランサーラカム(タイ/53.7kg)
勝者:江幡睦 / 判定3-0 / 主審:仲俊光
副審:椎名50-47. 宮沢50-45. 和田50-46

最もKOに結びつけてきたローキックも仕留めるに至らず

これほどタフな対戦相手は過去にいなかったかもしれない。メインイベント、江幡睦の相手は元・ルンピニー系フライ級9位で、パタヤにあるスタジアムで開催されるMAXムエタイの55kg級チャンピオンという肩書きを持つ。その実力は“厄介な強豪”と称されたが、本当にタフだった。

江幡睦もノックアウトで沈めるテクニックは何パターンも持っている。今回も圧勝かと思われた第1ラウンド、ローキックで鋭く攻め、早くも効いた様子のペットヤソー。仕留めるのはボディーブローか、アゴにフックかストレートか、ハイキックか。ダメージが蓄積しているはずのペットヤソーが怯む様子を見せながら前進してくるタフさ。江幡睦のあとちょっとの追撃で仕留めそうなパワーが、当たっても倒れないもどかしさ。

怯みながらも打ち返してきたペットヤソーのボディブローが江幡睦にヒット

5ラウンド戦えるスタミナ充分な睦も打ち疲れか、終盤の攻めは少なくなる。ペットヤソーの反撃はさほど強い打撃は無いが、油断ならない隙を突いたカウンターのヒジやパンチと組んでのヒザがある。睦は組み合った際のヒザ蹴りが少ないのが勿体無い。大差の判定勝利ながら仕留め切れなかった展開に表情は曇りがちだった。

このままムエタイ二大殿堂のひとつ、ラジャダムナンスタジアム王座奪取まで、課題が残る試合はしていられないだろう。

連打を打つ江幡睦。いくら打っても倒れなかったペットヤソー
大差判定勝利もいつもの笑顔は無かった
勝次vsペットシラー。勝次(左)の右ストレートでノックダウンを奪う

◆第11試合 62.0kg契約3回戦

日本ライト級チャンピオン.勝次(藤本/62.5kg)
VS
ペットシラー・ポー・パタラ(タイ/61.5kg)
勝者:勝次 / 判定3-0 / 主審:桜井一秀
副審:椎名29-27. 宮沢30-28. 仲30-28

「KNOCK OUT」から凱旋し、スピードとパワーが増した勝次。ペットシラーもMAXムエタイ60kg級チャンピオンという肩書き。ペットシラーにヒットする技は何か、探りながらもその距離が掴み難いところ、第2ラウンドにはタイミングを掴んで、勝次の右ストレートでダウンを奪う。仕留めるには至らなかったが、距離を詰めてパンチを打ち込み威圧的に攻めることで主導権を握った展開が見られる。

また更なる上位への挑戦のチャンスを求めたマイクアピール。ムエタイ殿堂王座か、WKBAか、どういう舞台が用意されるだろうか。

ペットシラーvs勝次。攻勢を続けた勝次(右)、自信が増した試合展開だった
Tomo vs 斗吾。残りわずかな時間でノックダウンを奪った斗吾

◆第10試合 73.5kg契約3回戦

日本ミドル級チャンピオン.斗吾(伊原/73.5kg)vsTomo(天下一/72.7kg)
勝者:斗吾 / TKO 1R 3:09 / ドクターの勧告を受入れレフェリーストップ
主審:和田良覚

初回早々にTomoがパンチでラッシュ。斗吾は少々貰ってしまいロープ際に下がるが、打ち合いながらも立て直しは早かった。本来のリズムを取り戻すと、経験値の差を見せ、ヒジとパンチの連打をヒットさせダウンを奪う。

これが第1ラウンド終了5秒前。効いていたTomoだったが、踏ん張ってカウント9で立ち上がるが、斗吾のヒジ打ちで額をカットされておりドクターチェックが要請される。タイムはこの時点で一旦ストップされるはずで、試合はドクターの勧告を受入れ第1ラウンド3分09秒、レフェリーストップによる斗吾のTKO勝利となる。

Tomo vs 斗吾。劣勢から一転ペースを掴み、パンチ連打を叩き込む斗吾

◆第9試合 62.0kg契約3回戦

重森陽太(伊原稲城/61.7kg)vsヨーペットJSK(タイ/61.7kg)
勝者:重森陽太 / KO 3R 1:16 / テンカウント
主審:椎名利一

ヨーペットは梅野源治、森井洋介とも好ファイトを展開している名の知れた強豪。階級アップした重森がどう戦うかが注目される。第1ラウンドから第2ラウンドにかけ、鋭いミドルキックのけん制し合いながらも様子見の静けさが続く。

第3ラウンドにはチャンス到来したか、蹴り合いが激しくなると、重森の左ミドルキックがヨーペットのボディーに炸裂。ヨーペットはうずくまるように倒れ込み10カウントアウトされてしまう。重森の評価が上がった試合だった。

重森陽太vsヨーペット・JSK。激しくなった攻防でヨーペットのボディーへ左ミドルキックがヒット

◆第8試合 70.0kg契約3回戦

喜多村誠(伊原新潟/69.4kg)vsRYU謙(拳狼会/69.4kg)
勝者:喜多村誠 / TKO 1R 2:45 / カウント中のレフェリーストップ
主審:宮沢誠

蹴りのけん制の中、ローキックでダウンを奪い、更にローキックとパンチ連打するとRYUはうずくまるようにダウンし、レフェリーが試合をストップした。

RYU謙vs喜多村誠。ローキックでノックダウンを奪った後、前蹴りから仕留めに掛かる喜多村誠

◆第7試合 55.0kg契約3回戦

日本バンタム級1位.瀧澤博人(前・Champ/ビクトリー/55.0kg)
VS
國本真義(MEIBUKAI/55.0kg)
勝者:瀧澤博人 / 判定3-0 / 主審:椎名利一
副審:桜井30-28. 和田30-29. 宮沢30-27

瀧澤は左ミドルキックを主体に攻め、國本もローキックやパンチを返す攻防は互角の展開に進むが、瀧澤はハイキックを含む蹴りの多彩さが見映え良く判定勝利に繋げる。

瀧澤博人vs國本真義。瀧澤の左ミドルキックが連打され試合を支配していった
ローズ達也の左ヒジ打ちが泰史の右目辺りにヒット

◆第6試合 52.0kg契約3回戦

日本フライ級1位.泰史(前・Champ/伊原/52.0kg)
VS
WPMF日本フライ級チャンピオン.ローズ達也(ワイルドシーサー沖縄/51.6kg)
勝者:ローズ達也 / TKO 2R 1:33 / ドクター勧告を受入れレフェリーストップ
主審:仲俊光

泰史のパンチと蹴りのヒットがやや上回る中、第2ラウンドに、ローズ達也のヒジ狙いが泰史の右目辺りにヒットし、瞼を切った負傷で、ドクターの勧告を受入れたレフェリーストップとなる。瞼のカットより右眼のダメージが無いか気になるところ。

◆第5試合 ライト級3回戦

日本フェザー級1位.髙橋亨汰(伊原/61.23kg)
VS
NKBライト級1位.棚橋賢二郎(拳心館/60.9kg)
勝者:髙橋亨汰 / TKO 1R 2:18 / ドクター勧告を受入れレフェリーストップ
主審:桜井一秀

注目の交流戦。高橋のミドルキック主体の距離の取り方の巧みさに棚橋は強打がヒットし難い。高橋のヒジがカウンターでヒットすると棚橋は眉間から激しく流血。短い時間だったが、棚橋にとっては新たなタイプと戦った貴重な経験となる。

棚橋賢二郎vs高橋亭汰。棚橋のパンチと高橋の蹴りの距離の探り合い

◆第4試合 ライト級3回戦

日本フェザー級2位.瀬戸口勝也(横須賀太賀/60.8kg)
VS
日本ライト級5位.ジョニー・オリベイラ(トーエル/60.4kg)
勝者:瀬戸口勝也 / 判定3-0 / 主審:和田良覚
副審:椎名30-27. 仲30-27. 桜井29-27

◆第3試合 62.0kg契約3回戦

日本ライト級7位.渡邉涼介(伊原新潟/62.0kg)vs林瑞紀(治政館/62.0kg)
引分け 1-0 / 主審:宮沢誠
副審:和田29-29. 仲30-29. 桜井29-29

◆第2試合 フェザー級3回戦

日本フェザー級8位.金子大樹(ビクトリー/57.15kg)
VS
NJKFフェザー級7位.小田武司(拳之会/56.6kg)
勝者:金子大樹 / 判定2-0 / 主審:椎名利一
副審:和田29-29. 宮沢29-28. 桜井29-28

◆第1試合 フェザー級2回戦

平塚一郎(トーエル/56.65kg)vs瀬川琉(伊原稲城/56.8kg)
勝者:瀬川琉 / 判定1-2 (19-20. 20-19. 18-20)

《取材戦記》

江幡睦は打ち負けることなく大差判定勝利となったが、もどかしい展開に観ている側は意地悪にも、“もし江幡睦が、衰えずに出てくるペットヤソーのパンチでノックアウトされることがあったら”という心理が働いてしまう心の内。

昔、沢村忠が連戦連勝したタイトルマッチに於いて、TBS実況の石川顕アナウンサーが、「沢村選手の勝利を信じつつも、不動のものが入れ替わる姿を見てみたくなるのもファン心理でもある」といった話を思い出しました。

タイトルは掛かっていないが、頂点を目指している最中での後退は許されない現在、こんな展開もあるんだなという江幡睦の姿。苦戦の勝利ではなく、圧倒した勝利ながら課題が残る、メインイベンターを務める難しさが滲み出た試合でした。

新日本キックボクシング協会次回興行は、8月4日(土)に後楽園ホールに於いてWINNERS 2018.3rdが開催、メインイベントは日本フェザー級チャンピオン.石原將伍(ビクトリー)が出場の、日本vsタイ国際戦4試合と、日本ウェルター級1位.政斗(治政館)がNKBミドル級チャンピオン.西村清吾(TEAM KOK)と対戦、他、日本バンタム級6位.田中亮平(市原)がNKBバンタム級5位.海老原竜二(神武館)と、日本ライト級9位.興之介(治政館)がNKBライト級5位.パントリー杉並(杉並)と対戦するNKBとの交流戦3試合の、以上を含む、ちょっと長い全15試合が行なわれる予定です。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

月刊『紙の爆弾』8月号!
一水会代表 木村三浩=編著『スゴイぞ!プーチン 一日も早く日露平和条約の締結を!』

NJKFの真の主役は誰か!? ニューウェーブ到来なるか!?

隙を突いた健太のパンチ等は度々ヒット、ベテランの上手さが光る

◎NJKF 2018.2nd / 6月24日(日)17:00~21:15
主催:NJKF / 認定:NJKF

◆第9試合メインイベント 66.5㎏契約 5回戦

WBCムエタイ日本ウェルター級チャンピオン.健太(E.S.G/66.25kg)
VS
DEEP☆KICK65㎏級チャンピオン.憂也(魁塾/66.6→66.45kg)
勝者:健太 / 判定3-0 / 主審:竹村光一
副審:多賀谷49-47. 中山48-47. 和田49-48

健太の右ストレートヒット、ここから連打して右フックでダウンを奪う

初回は様子見でも健太は憂也の高い蹴りと伸びるパンチに警戒。第2ラウンドには距離感掴んだ健太のフェイントからの右ストレートでグラつかせた後、ラッシュをかけ右フックでダウンを奪う。ここから更に憂也を捻じ伏せるかという勢いも、凌いだ憂也を仕留めるには至らず、一進一退の攻防が続く。必死の形相の憂也に、一発のフイ打ちでパンチやヒジ打ちのクリーンヒットが目立ったのは健太。若い憂也を捻じ伏せるつもりも、倒すに至らなかった健太でも表情にはゆとりある判定勝利でした。

反撃貰う危険ある技、バックヒジ打ちを見せる健太
右ヒジ打ちを見せる健太、切るだけでない倒すヒジ打ちも持っている
左フックがヒット後、崩れるクンタップを追撃するYETI達朗

◆第8試合セミファイナル 70.0㎏契約3回戦

WBCムエタイ日本スーパーウェルター級チャンピオン.YETI達朗(キング/69.9kg)
VS
クンタップ・チャロンチャイ(タイ/69.55kg)
勝者:YETI達朗 / TKO 1R 1:36 / 主審:宮本啓介

蹴りとパンチの様子見、その中でも前に出るYETI達朗、ややロープ際に下がり気味のクンタップへ、いきなり視線を下に落としたフェイントの左フック一発でアゴに命中。崩れていくクンタップに連打で仕留めてダウン、レフェリーストップとなる。
「本日の主役は俺です」と言い切ったYETI達朗、そのインパクトある勝利でした。

ロープ際へ下がるクンタップへ攻勢を掛けていくYETI達朗
しぶとい蹴りが続いていった鈴木翔也(右)の前蹴り
2階級制覇した鈴木翔也、更に上があるタイトルへ進まねばならない

◆第7試合 NJKFライト級タイトルマッチ 5回戦

NAOKI(立川KBA/61.35→61.15kg)
VS
挑戦者1位.鈴木翔也(OGUNI/61.23kg)
勝者:鈴木翔也 / 判定0-2 / 主審:多賀谷敏朗
副審:竹村47-49. 宮本48-48. 和田48-49

互いの戦略に基づく積極的な蹴りパンチの攻防はどちらが主導権を取ったかは難しい見極め。

第2ラウンドにNAOKIの肘で鈴木が右眉を少々カット後、第3ラウンドに、偶然のバッティングらしい衝突で鼻を打撲したNAOKI、折れてはいない様子だが、鼻血が大量に出て息が苦しそうになる。

第4ラウンドにも鈴木のヒジによる左目尻の出血も苦しい展開を導いてしまったNAOKI、鈴木のしぶとい攻めが続き、諦めない気持ちでNAOKIを抑えた鈴木の粘り勝ちとなる。

この日のNJKFタイトル戦はWBCムエタイルールが起用されており、試合続行不可能となっても負傷判定は無くTKOとなります。それでレフェリーによる審判員、タイムキーパー、インスペクターに対する有効打かバッティングかのジェスチャーはありませんでした。通達はしてもしなくても問題は無いところ、つい確認しようと癖が出るスタッフや我々。ルールを理解していた多賀谷レフェリーの方が一枚上手でありました。

鼻血が止まらないNAOKI(左)も懸命に劣勢を免れようと攻勢に出る姿勢

◆第6試合 NJKFフライ級王座決定戦 5回戦

3位.松谷桐(VALLELY/50.8kg)vs 1位.大田一航(新興ムエタイ/50.8kg)
勝者:松谷桐 / TKO 2R 0:53 / 主審:和田良覚

初回、スピーディーな展開から素早い松谷の一瞬のヒジが一航を捉えたか、続行するも第2ラウンドに傷が悪化し、ドクターの勧告を受入れレフェリーストップ。ニューウェーブ到来した16歳対決は松谷桐が王座獲得。

16歳ニューウェーブ対決を制したのは松谷桐、今後も両者はどんな成長を見せるか
陣営と撮影に収まる新チャンピオン松谷桐
一進一退の攻防で引分け防衛を果たしたのは前田浩喜(左)

◆第5試合 NJKFスーパーバンタム級タイトルマッチ 5回戦

チャンピオン.前田浩喜(CORE/55.3kg)
VS
挑戦者3位.久保田雄大(新興ムエタイ/55.3kg)
引分け 三者三様 / 主審:竹村光一
副審:多賀谷48-49. 和田49-49. 中山50-48

蹴られても蹴り返し、更に蹴っていく前田だが、蹴り勝つにはインパクトが弱かったか。冷静なベテラン前田の当て勘が上回っていた印象があるが、久保田の負けない手数足数、ラストラウンド終盤の攻勢が目立ったか引分けに落ち着く。この試合の評価は観る人によって分かれる難しい展開。前田浩喜は初防衛となる。

◆引退記念エキシビジョンマッチ(1分30秒制で2人を相手)

エキシビジョンマッチによる兄弟対決を裁く父親の内藤武(=宮越新一会長)

宮越宗一郎(拳粋会)
VS
WBCムエタイ・インターナショナル・フェザー級チャンピオン.MOMOTARO(OGUNI)
WBCムエタイ・インターナショナル・ライト級チャンピオン.宮越慶二郎(拳粋会)

宮越宗一郎は1987年2月12日、埼玉県出身。父は元・新格闘術ライト級1位.内藤武(士道館)で、現・拳粋会ジムの宮越新一会長。2005年12月にデビュー。父親似のスタイルは変則的な動きをするも、重いパンチ、蹴り、ヒジ打ちを武器にWBCムエタイ日本ウェルター級とスーパーウェルターで2階級制覇。2015年11月にはWBCムエタイ・インターナショナル・スーパーウェルター級王座獲得。

「今後は弟の宮越慶二郎を強くする為に自分が相手になってやったり、若い子を育てる為にもっと指導していきたい」と語る。

スポットライトを浴びた定番テンカウントゴング

◆第4試合 NJKFスーパーライト王座決定戦 5回戦

1位.畠山隼人(E.S.G/63.05kg)vs 2位.真吾YAMATO(大和/63.45kg)
勝者:畠山隼人 / TKO 1R 2:11 / 主審:宮本和俊

真吾が畠山から右ストレートでフラッシュダウンを決めるが、バランス崩した感じで瞬時に立ち上がり、これがWBCムエタイルールでノックダウンとはならず、今度は畠山が右フックで真吾を逆転失神KOする衝撃的終了。

畠山隼人が真吾YAMATOを右フックで仕留める。これも主役級KO
新チャンピオン俊YAMATOがポーズをとる

◆第3試合 NJKFバンタム級王座決定戦 5回戦

3位.日下滉大(OGUNI/53.3kg)vs 2位.俊YAMATO(大和/53.45kg)
勝者:俊YAMATO / 判定0-3 / 主審:多賀谷敏朗
副審:宮本48-49. 和田48-49. 竹村48-49

当初出場予定の大田拓真が負傷欠場したことにより、4度目の対戦となったこのカード。手の内の分かる相手で、初回からの主導権争いをするようなスピーディーな蹴りとパンチの攻防。その展開は変わらずも中盤にはその距離が縮まって、倒すかダメージを与えにいく攻防。最後まで踏ん張った俊YAMATOが際どくも判定勝利し、王座獲得。

4度目の対決。俊YAMATO(右)が日下滉大に右ストレートをヒット

※前座ヤングファイト2試合は割愛します。

マスコットガールと並んでポーズをとる健太

《取材戦記》

健太はこの1年間で11試合を消化。「KNOCK OUT」や海外のイベントに出場し、勝ちもあれば負けもあるが、怪我も無く、モチベーションの低下も無く戦えることに、ミスターパーフェクトを目指す健太であることが伺えます。

そして「僕はもう一度NJKFを満員にしたい」と言うように、メインイベント最終試合に進むにつれて空席が目立っていく。かつて満員が続いた2006年開催の真王杯トーナメント2階級決勝のような超満員を戻すべく、スーパーライト級に落として大和哲也(大和)との対戦など、好カード実現に頑張っていく意気込みを語りました。

NJKF興行では1996年の設立以来、超満員だったことは何度もあります。ここ数年を見ると、この団体だけではなく、最終試合のメインイベントへ進むにつれ空席が半分以下に目立っていくことは、よく見られる現象です。それは応援する選手の試合が終わると、支援者や仲間内が帰ってしまうことにあります。それではチケット完売であっても超満員とは言えない状況でしょう。今の時代では動画配信で後でも観られることがあるでしょうが、最後まで会場で生観戦されないことに懸念する関係者の声は多くありますが、これを打ち破ろうと健太のアピールがありました。そしてその他の団体興行でも打開策を考えてイベントを進めている苦労が感じられます。

NJKF 2018.3rdは9月22日(土)に後楽園ホールで開催予定です。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

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伝統の目黒ジムから二人目成るか、緑川創のムエタイ殿堂王座挑戦!

アンモープロモーターや伊原信一代表、鴇稔之トレーナーに囲まれるシップムーン(左から2番目)と緑川創(中央)。計量にて

6月27日(水)タイ現地
ラジャダムナンスタジアム・スーパーウェルター級(154LBS)王座決定戦 5回戦
5位.シップムーン・シット・シェフブーンタム(2代前・チャンピオン/タイ/69.85kg)
VS
6位.緑川創(藤本/69.85kg)

緑川創、ダウン奪われ大差判定負け。

当日朝の計量にて、緑川創は0.2ポンドオーバーで、2回目の計量は154ポンドリミットでパス。 シップムーンが0.1ポンドオーバーで、2回目の計量はこちらも154ポンドリミットでのパス。

第1ラウンドからシップムーンのパンチをカウンターされた緑川はダウンを喫し、その後もシップムーンの蹴りの強さ、足数が主導権支配していき、緑川はその距離を詰めにくく、詰めたところでヒザ蹴りがあるシップムーン。パンチのクリーンヒット多発させることには持ち込めない。

左ミドルキックをタイミングよく蹴ってくるシップムーン
ノックダウンとなればダウン1点とその有効性に1点が付く10-8

最終5ラウンドに、ポイント逃げ切りに出たシップムーンの一瞬の隙を突いてヒジでカットさせるも、残り時間は少なく、負傷箇所が相当危なくない限りはレフェリーは試合を止めることはない。これが4ラウンドまでだったら、逆転のチャンスもあっただろうが、時すでに遅し。

接近すればヒザ蹴り、そのタイミングが上手いシップムーン
追い詰められていく緑川、シップムーンの左前蹴りヒットで疲れが目立ちはじめる
追う一方、ラストに懸ける緑川創
最終ラウンド、ヒジでカットに成功した緑川、ラッシュするが、時すでに遅し

採点は、未確認情報ながら49-46. 50-45. 50-45という情報あり。タイ側関係者から見た印象では、「大差で相手にならなかった。タイトルマッチでなければ、途中で止められていたのではないか」という声があったようです。

王座奪回に成功したシップムーン、更なる日本人の挑戦を受けるか

シップムーン・シット・シェフブーンタムは昨年5月25日に現地で当時のチャンピオン、T-98(=今村卓也/クロスポイント吉祥寺)に挑戦して判定勝利、王座奪取した選手です。今年2月にイントラーチャイ・チョー・ハーパヤックに判定で敗れ陥落。イントラーチャイが返上したことにより、今回の王座決定戦が実現しています。

日本人が獲得したムエタイ殿堂チャンピオンの中で、「同一ジムから2人目誕生成るか」という点も注目されたタイトル戦。石井宏樹が2011年10月にラジャダムナン系スーパーライト級王座獲得して以来、2人目の獲得成れば、伝統の目黒ジムを継承する藤本ジムが初となるところでしたが、脆くも夢破れました。

やはり本場のリングでのムエタイボクサーの本気度は違うものだと実感する。険しくて当然です。そして今後も、この現地で上り詰める挑戦であって欲しいと思うところです。

緑川創は2014年6月に4度防衛した日本ウェルター級タイトルを返上して以来、長く待たされたラジャダムナン王座初挑戦でした。敗戦後、緑川は力の足りなさを反省しつつ「落ち込んではいられない」という、まだ諦めず上を目指す精神力はたいしたもので、7月8日(日)の新日本キックボクシング協会MAGNUM.47興行ではエキシビジョンマッチが予定されており、王座奪取成らずの出場で何を語るか注目されます。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

タブーなき『紙の爆弾』2018年7月号!
一水会代表 木村三浩=編著『スゴイぞ!プーチン 一日も早く日露平和条約の締結を!』

私の内なるタイとムエタイ〈32〉タイで三日坊主!Part.24 ラオスへの旅の前

プミポン国王肖像画が掲げられた門の前

ラオスへ向かう準備も整い、前日までにも変化ある日々がありました。その前日にはまたひとつ仕事が入ってしまいます。

◆和尚さんからの思いやり!

12月3日は2日後に備えたプミポン国王誕生日の為、門の前に肖像画飾り付けがありました。毎年この時期はタイ国内、至るところでこんな光景が見られます。和尚さん指示の下、綺麗に差し障り無く飾り付けるよう働かされる比丘達。キチンと建て付けないと見栄っ張りの和尚さんが煩い。そんな合間を狙って、ようやく仕上がったビザ申請書類と手紙持って和尚さんにお願いし、了承のサインを書いて貰います。するとプリントミスに気付く和尚さん。
「ケーオを呼べ!」とデックワットに呼びに行かせ、更なる修正が必要になりました。特に問題ない些細な箇所でも、和尚さんにとっては許せない表記だった様子。
ラオス行きには藤川さんが伴うことや、外国人にとってのビザの必要性を出来る限り、単純なタイ語で書いた手紙を渡し、その場で読んで貰いました。本当に理解されたとは思えない、がしかし、
「ラオス行くならこれ持って行け、あった方がいいだろ!」と束ねたお札を1000バーツほど与えてくれたのでした。有難い配慮に感謝でした。部屋に戻って数えてみると、100バーツ5枚、他、20バーツ紙幣と10バーツ紙幣がいっぱい。計990バーツ。10バーツ足りないのは、縁起を担いだ“9”という数字に拘ったものと推測できました。タイでは9がラッキーナンバーです。もしかして、この前の撮影代のつもりなのかなとも思う。

これで出発7日前に書類を完成。こういう期限ある書類を揃えるにはタイ人を挟むと思いっきり遅くなるのが過去の体験談。「明日でいいものは今日やらなくてもいいだろ!」という気質の国民である。後はのんびり出発を待つだけ。予想より早く進んだこと、皆に感謝でした。

相変わらずの真面目なコップくん、カメラは未知の世界でも興味を示す

◆ケーオさんの人柄

そんなノンビリした平和な中にも、日々変わった出来事が起きています。私がタイで出家することを知っている友達のひとりから届いた郵便物をコップくんが持って来てくれました。中身は「月刊カメラマン」が2冊(2ヶ月分)。私が注文した訳ではなく、印刷関係の運送業をやっている人で、日本でも余りもので手に入る本を持って来てくれる人でした。

そのカメラ雑誌に興味を示すケーオさんとコップくん。幾つかの特集されたカメラに目を付け、「幾らするんだ?」と言われ、「3万バーツ!」と彼ら世代の4ヶ月分以上の給料に相当する値段を言うと、お手上げの表情。そして撮影モデルの雛形あきこが載っているものだから日本の女性にも興味を示します。ムエタイジムに居る時などはひどいものだった。日本の週刊誌のグラビアに、水着の女性タレントが載っていると「幾らだ?」と言い出すボクサーがほとんど。ここでの“幾らだ”というのは「幾ら払えばヤレるんだ!」という意味。

タイの雑誌は女優・タレントが載る場合はキチンとした身なりで、肌を露出した若い女性が載っていれば風俗嬢と思うらしい。勿論一概には言えない話だが。

ケーオさんらはカメラ雑誌と理解した上で「これは誰だ? 日本の女の子はこんなに綺麗なのか?」と笑う程度。

寺で生まれた犬

◆犬も歩けば車に撥ねられる!

そんなケーオさんはまた違った一面を見せる日がありました。寺には野良犬が入って来ることが多い場です。この寺で生まれた犬もいます。どこからか行き着いた犬は片足が折れたままだったり、片目が潰れていたり、やせ細った気の弱い犬もいました。なぜ寺に住み着くのか。それは車が入ってくることは少ない安全地帯。怪我をしている犬はほとんどが車に撥ねられた犬。尚且つ、托鉢から出た残飯にあり付けるからでしょう。しかし、人間の都合で出来た社会など分からない犬は時折、人に殴られるような痛い目に遭うこともしばしば。寺には鶏も放し飼いされており、犬が襲うことも有り得ます。

そんなある日、前片足が無い犬を、棒で可愛そうなほど殴りつけるケーオさん。犬は逃げ、クティの裏側まで来ると、身を隠すように溝に隠れました。ケーオさんは角材を肩に担ぎ、ゆっくり歩いて犬を探し追って来ました。犬はケーオさんに見つかると怯え吠えだす。そこへ角材を振りかざすと、犬は精一杯の威嚇から声が擦れた吠え方に変わる。それは「勘弁してくれ!」と言うような吠え方。犬にも感情があって、人に訴えかけることが出来ると改めて感じ取れる様子でした。

殴ると見せかけて止めると、犬は覚悟を決めたように「キャー!」と言うように喚き、フェイントかけて殴りつけると“ギャイーン”と吠え、溝から逃げ出すところを背中へ更に角材で殴りつける正にイジメ。2階の藤川さんと目があったケーオさんは苦笑いする。この犬は“ここはヤバイ”と寺から逃げ出したか、その後、見かけなくなりました。

過去にもこの犬へのイジメを見たことあるらしい藤川さんは「あの犬はやめといてやれ」と言ったらしいが、ケーオさんは容赦しなかった。ケーオさんは過去に何があったのだろう。頭も良いし優しさもある。しかし捕虜収容所にでも入れられるように家族から出家させられた背景にはやっぱり捻くれた人生があったのだろうか。

どこの寺もこんな怖い感じの犬がたむろする(イメージ画像、この犬は飼われている。撮影は2017年)

◆ラオス行き前日のお仕事!

旅立ちの前日の朝、洗濯中、ある女性信者さんと息子さんらしい中学生ぐらいの男の子が寄って来ました。旦那さんは警察官らしく、息子2人に娘さんも1人いる優しそうな女性でした。

「日本で何やってるの? どうして比丘になったの?」といつものよくある問いかけに、
「日本でカメラマンやっています!」とまたハッタリ込めた話が進むと、私が葬儀を撮影した話をどこかで聞いて来たらしく、そしてこの日行なわれる夜の葬式撮影頼まれてしまいました。読経の出来ない分を撮影で補おうと快く受けると、読経に匹敵する光栄なことだからか、えらい喜びよう。

その夜は約束どおり葬儀を撮りに葬儀場に入り、撮っていたら和尚さんに「椅子に座れ」と促されてしまいました。ちょっと比丘らしからぬ振舞いだったかもしれないと思うも、私は構わず撮り続けたら、和尚さんが挨拶でマイクを持った際、私のことを「日本人だから許してやってくれ!」と言ってるみたいで、親族から少々笑いが起きるお葬式。
「そうそう許してくれ、俺は生臭坊主だから頼まれた仕事は務めさせてくれ」と呟く私。

明日からラオスに向かうので、ここまで撮影した2本のフィルムは、朝会った依頼された女性の旦那さんに渡しました。そして撮影料ではなく、お布施として300バーツを“さりげなく”受取りました。

比丘の旅の必需品、就寝用の傘と蚊帳

◆仏陀のことば!

この日の昼には銀行に行って来た藤川さんに、ラオスの旅に備えて5万円分12500バーツを両替して貰い、「ラオス行ったらどんなところで寝かされるか分からんぞ!」と蚊帳吊るす紐も一緒に渡されました。

旅先では野宿があるかもしれない。戒律厳格な修行寺に泊まるかもしれない。食事出来ない日もあるかもしれない。全く違う方向へ進路転換する事態も起こるかもしれない不安が過ぎると、出家前のように怖気付きます。まだ何も起きてもいない先のことに何をネガティブに嘆いているのか。

これはお釈迦様が説いた愚か者の考え方なのです。未熟者にはそういう不安が過ぎる旅の前日でした。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

一水会代表 木村三浩=編著『スゴイぞ!プーチン 一日も早く日露平和条約の締結を!』