《鹿砦社特別取材班座談会》「M君リンチ事件」真相究明取材で見えてきたもの

 
 

  
過日鹿砦社特別取材班の編集会議のあと座談会が行われた。取材に当たって来たスタッフが顔を合わせ、これまでの取材と今後の展望などについて語り合った。

松岡 ご苦労様です。きょうはこれまでの取材成果や課題と今後の展望などについて気楽に話してください。

  正直、骨が折れています。新聞、テレビ関係者の間で「M君リンチ事件」は、もうみんな知っている状態になってるんですが、なぜかうちの後追いがないのが不思議ですね。

  今まで接触したメディアってどこがあったっけ?

  朝日新聞、産経新聞、共同通信、朝日放送……。あと週刊誌なんかからは結構こちらに問い合わせはありますね。

  朴順梨は早い段階で「共同通信の記者から聞いた」って藤井とのメールに書いてたよね。

  ええ、共同通信内では東京の社会部を含めて、ほとんど浸透しています。

  だけど記事にしたのは『週刊実話』だけやったね。

  それも発売当日にネットで謝罪・訂正が出され大騒ぎになった。あの訂正劇はなんだったんだろう?

  当日に西岡研介からクレームが入ったと『週刊実話』の編集部からはリークがありました。編集長判断の前に訂正を出したという説もあります。

  西岡ってそんな力があるんだ。

  みたいですね。でも先鞭をつけた『週刊実話』の記事は一定の評価に値するんじゃないですか。

  いや、あんな折れ方してほしくなかったね。おかげでその後、ネットでの空中戦凄かったじゃない。

  あの頃は夜も眠れんかった(笑)。僕ら参戦してないけど、しばき隊とアンチしばき隊のある意味での天王山やった。しばき隊は「嘘つきども」と勢いづいたけど、「世に倦む日々」高島章弁護士の応戦に結局軍配ですわ。

◆「M君リンチ事件」の現場音声と写真の衝撃、書籍出版の意義

  決定的だったのは高島弁護士が事件を録音した音声の書き起こしと、事件直後の腫れあがった「M君」の写真を発表したことですね。

リンチ事件直後のM君の顔
 
 

  あれは効いたな。あの写真出されたら、さすがに「リンチはなかった」とは言えない。そのあともしばき隊からは散発的に攻撃はあったようだけど、一気にトーンは下がったもんな。

松岡 このかんの展開を振り返ると、初期は主戦場がネット、とくにツイッターだったけれども『ヘイトと暴力の連鎖』を昨年7月14日に出してからはしばき隊がかなりおとなしくなった印象がありますね。

  やっぱり紙媒体でまとめたものが出る意味が大きいことを再確認しましたね。SNSで100回書かれてもやがて忘れられていくし、モノは残らない。その点書籍には書籍の強みがあると。

  それを実感したのは『反差別と暴力の正体』を出した後の反響ですわ。あの取材には(いつもそうやけど)力入ったし、こっちも驚くような事実が山ほど出てきたもんなー。

◆強烈だった沖縄地裁前の顔ぶれ

  龍谷大学に岸政彦の「直撃」に行った時は、ドキドキもんでしたよ。

  なに言ってるんだよ。大学教員なんか「直撃」の対象としては簡単なもんじゃないか。

  すいません……。

岸政彦=龍谷大学教授(当時)

  重要なのは事実を掘り下げることはもちろんだけど、当事者に直接当たるってことだね。

  それはそうなんやけど、『人権と暴力の深層』取材で沖縄地裁前は、すさまじかったですわ。しばき隊幹部勢ぞろいやから。野間なんか僕のすぐ横でビデオ回してた。安田浩一と香山リカのツーショット抑えた時は嬉しくて、松岡社長に電話したら「安田と香山と野間のスリーショットも撮れ!」って……。褒めてもらえると思ったらさらにエゲツない命令が来て冷や汗もんでしたわ。スリーショットはさすがに無理やったけど。

安田浩一と香山リカ
 
 
野間易通

  沖縄地裁前の顔ぶれは強烈でしたね。安田浩一、香山リカ、野間易通、伊藤大介……。あとしばき隊の裏幹部みたいなのも居たんですよね?

  それはまだオフレコやん! 今追ってるところです。

  あっ失礼しました。

◆有田芳生の「鹿砦社ヘイト」と増える編集部への激励

松岡 『人権と暴力の深層』では有田芳生参議院議員と中沢けいの突撃も掲載できました。経費は大幅に予算オーバーでしたが(笑)。

  東京の突撃部隊は今回も大活躍でしたね。

  それにしても有田のあの態度は酷いよね。

  「鹿砦社ヘイト」ですわ。

有田芳生参議院議員

  

 

  

 
 

  言うまでもないことなんだけど、もう一回確認しておきたいのは、われわれは「M君リンチ事件」を追ってるんだけど、決して差別を容認する立場ではないということ。「デジタル鹿砦社通信」の記事なんかは、けっこう右寄りの読者にも読まれてるみたいだけど、それはそれでいい。でもわれわれは原則的に「差別」や「暴力」に反対の立場だということはもう一回再確認しておきたい。

  右、左は関係ないんですよ。取材班の中だって、A君なんか保守じゃない? Bさんはどうかわからないけど、私は原則反自公だし、いろいろな意見の相違はある。でも「差別」と「暴力」を認めないことではしっかり一致できてるんじゃないかな。

  それがあらへんかったら「突撃」なんてでけへんわ。

  あと取材班の外で協力して下さる人が増えているのはありがたいですね。

  いま、ネット監視してくれている人どのくらいいるの?

  詳しくは言えませんが相当な数になりました。ターゲットの発信は全員を24時間監視していますから、何かあれば即座に情報が入手できるようになりました。無償でのボランティアの方には感謝ですね。

  ネットと言えば、最近李信恵がまた暴れてるな。鹿砦社やライターにさんざん噛みついている。まあそれはともかく、事実無根の書き込みはやめてほしいね。

  それは無理な注文だよ。しばき隊は「ないこと」を「あること」にして燃え盛り、気に入らない相手を潰そうとする。常套手段だね。だから李信恵だって記事内容自体には、一切具体的な反論ができていないじゃない。安倍が言った「印象操作」と同じだよな。でも「鹿砦社はクソ」っていくらなんでも下品すぎる。気に入らないのは分かるけど「反差別」の「旗頭」なんだから、もう少しましな表現はないものかとは思うね。

松岡 「鹿砦社はクソ」は酷すぎます。Cさん、「もう少しマシな表現」というレベルではないですよ。鹿砦社には、私以外に7人の正社員がおり、みんな真面目に一所懸命に働いてくれています。また多くの取引先や、ライター、デザイナーらが支えてくれています。いくら温厚な私でも(苦笑)、絶対に許せませんね。そりゃそうでしょう、曲りなりにも「反差別」とか「人権」とかを口にする人が、まともに一所懸命に働いている者らに「クソ」とか、私たちの人権を蔑ろにする汚い言葉を浴びせたり……呆れてものが言えません。私もそろそろ本気で怒らないといけないかもしれません。ところで、名前は出せませんがマスコミ関係者だけでなく、結構な大物からも最近は激励が増えています。私を含めて知らなかったから何とも思わなかったけれども、くだんの「M君リンチ事件」を知ったら常識的な人が驚き、怒るのは当然でしょう。

◆松岡代表による鈴木邦男さん義絶表明の波紋

  社長の怖いところは私たちにも内緒で「隠し玉」を持っているところだね。まだなんかあるんじゃないですか?

松岡 ありませんよ(苦笑)。どこに「隠し玉」があるんですか?

  これが怖いんだよね。鹿砦社。

  何言ってるんですかCさん。Cさんだって鹿砦社一派って散々ネットで書かれてるじゃないですか。

  え! そうなの? 俺あんまりネット見ないし、2ちゃんねるなんか見る方法も知らないから。でもそんなレッテル貼られたら『月刊HANADA』や『諸君』で仕事できなくなっちゃうぜ。

  そんな仕事してへんくせにCさん!

  やかましいわい!

  冗談はともかく、3冊を出したこと影響はさまざま出ているね。今焦点なのは鈴木邦男氏と松岡さんの今後の関係だな。松岡さん本当は、『人権と暴力の深層』の中で書くはずだったんだけど、逡巡して書けなかった。それで僕が背中を押す意味で「デジタル鹿砦社通信」に「鈴木邦男への引退勧告」を先に書いたのが内幕なんだ。

 
 

  自分は鈴木先生の本の出版も手掛けていたので正直複雑ではあります。

  厳しい選択だったと思うよ。横からちょろちょろ香山リカがちょっかい出したりしてきてるけど、30年の濃密な付き合いを真剣に思慮している人に、他人が口出すなと言いたい。

  週刊誌や新聞でごっつい扱いになることは今のところあらへんけど、松岡社長の鈴木邦男さんへの意思表明は、業界では相当な話題になってます。自分のところにも「どうなってんねん」と、問い合わせが結構あります。「松岡社長に直接取材しなはれ」言うてますけど。

 

  いずれにしてもわれわれに夏休みはないようだね。例のミッションみんな進んでるかな?

一同 ……。

  絶対に8月末までにあげること! でしょ社長?

松岡 そうだね。次はこれまでの3冊を超える「爆弾本」になるから、皆さんしっかり頼みます。

  夏休みなしか……。

(鹿砦社特別取材班)

◎[参考記事]私はなぜ「カウンター」-「しばき隊」による大学院生リンチ事件の真相究明に関わり、被害者M君を支援するのか[松岡利康=鹿砦社代表]
 

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鹿砦社に対する李信恵「嘘つき」ツイッター言論への反論

 
 

  
7月27日、本コラムに「リンダの会『#安寧通信』解析〈1〉 0号執筆陣に見る李信恵絶対擁護の人々」を掲載したら、予想通りであったが、さっそく李信恵がツイッターで反応してきた。しかしながら、例によってその内容には明確な虚偽と悪意が込められているので、この際しっかり反論しておく。まず下記を見て頂こう。

李信恵のツイッターより

昨日の「リンダの会『#安寧通信』解析〈1〉 0号執筆陣に見る李信恵絶対擁護の人々」では、李信恵が在特会元会長と保守速報を訴えたことに何の異議も唱えていない。それどころか、

《繰り返すが編集班はいかなる「差別」も「排除」も肯定する立場にない。断じて「差別」も「排除」も「リンチ」も肯定しない》

と立場を明確にしたうえでさらに、

《『#安寧通信』、vol.0は李信恵が、在特会元会長の桜井誠と保守速報を相手に2014年8月18日に損害賠償を求める裁判を起こしたことを紹介する李自身の「反ヘイトスピーチ裁判に向けて」から始まる。この文章に書かれている訴えには虚偽はなく、李自身かなりの被害を受け訴訟に踏み切ったことが窺い知れる。相手は狂気の差別集団「在特会」なのだから。》

と李信恵が起こしている裁判へは基本的に理解を示し、批判などは微塵も展開していない。課題として述べているのは李信恵が、

「日本には差別を裁く法律はありません。名誉棄損や侮辱にしても、刑事事件での告発はハードルが非常に高い」

と述べている部分の「日本には差別を裁く法律はありません」である。詳細は27日の本コラムをご覧いただきたい。取材班はこの裁判自体に一切ケチをつけてはいないのであり、「#安寧通信」に登場する顔ぶれと、そこに書かれている内容が「M君リンチ事件」と極めて深い関連を持つので、それを明らかにしようとしているのだ。

しかし、李信恵にとっては「#安寧通信」が鹿砦社に取り上げられたことだけで、気に入らなかったのだろう。おそらくは、もっと汚い言葉で罵りたいのであろうが、
「偏見や私怨のある人たちは、そういうことは見えないんだと思った」

と決めつけている。「偏見や私怨」? 取材班には李信恵に「偏見や私怨」などない。直接会ったこともない、接触したこともない対象にどうして「偏見や私怨」を抱く必要があるのだ。李信恵がここで述べている「そういうこと」とはその前の書き込みから推測するに、「#安寧通信」の文章にはすべてひらがなでルビがふってあることを指しているのだろう。「そういうことは見えないんだ」ではない。見ればわかるが、この連載の目的は「#安寧通信」の称賛や李信恵が起こしている裁判への批判ではなく、あくまで「M君リンチ事件」を読み解くための側面からの解析である。何をどう評論しようと自由じゃないのか。

さらに、断じて容認できない嘘は、

「まあ、撮影禁止の裁判所内での写真、Facebookで友達までの公開の写真をTwitterでアップしちゃうようなリテラシーのない人たちだし。」

である。鹿砦社は裁判所内での写真撮影は行っていない。「M君」が李信恵を訴えた裁判の前回期日に社長松岡が傍聴に出かけた際の写真を撮影してTwitterに掲載した方はいるが、その人は鹿砦社の人間ではない。そして鹿砦社はその写真をリツイートも「いいね」もしていない。また「Facebookで友達までの公開の写真をTwitterでアップ」など鹿砦社はしていない。この2点は完全な虚偽である。

「というわけで猫田と鹿砦社に関しては週明けぐらいに全部まとめて警察に行ってきます。」
  

 
 

そうだ。どうぞご勝手に。週明けと言わず、それほど気になるのであれば110番通報をしたらどうだ。李信恵は「猫田と鹿砦社」とワンセットにしているが、猫田氏の言動と鹿砦社の言動は全く別のものだ。それくらいは理解できないか? 

ついでに助言しておくと「リテラシーのない人たち」は言葉の使い方が間違いだ。「リテラシー」とは文章、文脈、文意を読み解く力のことであり、ネットに写真を掲載する行為に用いるのは不適切だ。噂によると李信恵は国語の非常勤講師をしている、とのことだが、カタカナ言葉とはいえ教員であるのであれば、正しい言葉遣いを心掛けるべきだ。

「猫田と鹿砦社のライターとか関係者に個人情報をばら撒かれたり、本当に迷惑しているし普段の生活に支障が出てるので。」

繰り返すが猫田氏と鹿砦社は、まったくの別人格である。われわれは偽善者どもの仮面を剥ぐために、時に直撃取材も厭わないが、よほど悪質な公人でない限り、住所や個人情報を公開することはない。例外的に香山リカがツイッターで「どこに送ったのかちょっと書いてみれば……」と書き込みを要求してきた際には送付先を明示したが、あれは本人の要請によるものだ(にもかかわらず、翌日神原元弁護士から「削除要請」のメールが来る不思議な展開だった)。

それ以外にわれわれ(鹿砦社)がどのような「個人情報をばら撒いている」というのだ? はっきりと事例を挙げて指摘していただきたい。もし具体的事例を適示できないのであれば、それこそ李信恵の言う「名誉棄損や侮辱」である。

李信恵のツイッターより

と李信恵は寺澤有に噛みついたあと、

李信恵のツイッターより

上記のように興奮している。が、この中にも嘘がある。「鹿砦社と名乗らずに自宅に電話してきた田所敏夫は」とあるが、田所敏夫は鹿砦社の社員ではない。フリーの物書きだ。「辛淑玉オンニの友人だと最初に云った」は田所に確認したところ事実だ。田所は李信恵に電話取材をするにあたり、自己紹介もかねて辛淑玉の知り合いだと切り出しているがそのどこが問題なのだ。田所は辛淑玉の携帯電話番号を知っていたし、それ故その後に直接辛淑玉本人にも取材をして、辛淑玉が「M君」攻撃に転じたので『辛淑玉さんへの決別状』を本コラムと『反差別と暴力の正体』に著しているではないか。

「おいらに取材するなら、根性入れてやれ。ちゃんとしてたら受けるけど、ちゃんとしてなかったら受けないだけ。」

これも嘘だ。自分に都合が悪ければ李信恵は絶対に取材など受け付けない。「根性を入れてやれ」!? おう、そこまで言うのであれば、われわれもさらに本気で「根性を入れて」やってやろうじゃないか! ちなみにあれこれ鹿砦社に言いがかりをする李信恵は鹿砦社のツイッターアカウントをブロックしている。何かやましいことがあるのか?

李信恵のツイッターより
 
 

「友人のFacebookの写真とか使うなよクソが。」

繰り返すが取材班は李信恵の言う「友人のFacebookの写真」など全く使っていない。

これは明確な虚偽であるだけでなく「クソ」とまで表現している。明白な虚偽を堂々と発信する覚悟はあるのだろうな、李信恵。「鹿砦社はクソ」なのだな。一度書いたものは取り消すことができない。上記に挙げた虚言といい、「クソ」呼ばわりといい、明確な名誉毀損だ。われわれは、名誉毀損だからといって、なにかといえばすぐに公権力、警察力に頼ろうとする輩とは違う。〝違う形〟で反論、反撃する。

鹿砦社社長の松岡は、ここまで言われても、まだニッコリ笑ってはいるが、彼が〝本気〟を出した時の怖さをわれわれは知っている。

松岡が若い頃、好んで使った言葉に、「彼ら反革命がわれわれに鉄を用いるならば、これに対しわれわれは鋼鉄でもって答えるであろう」(トロツキー)というフレーズがあるという。松岡が「鋼鉄」を使う時はいつだろうか。エセリベラル、エセ人権派、エセ反差別主義者の蠢動には「鋼鉄」でもって粉砕しなければならない。

(鹿砦社特別取材班)
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リンダの会『#安寧通信』解析〈1〉 0号執筆陣に見る李信恵絶対擁護の人々

 
 

  
「李信恵さんの裁判を支援する会(リンダの会)」が2014年10月7日に発行した『#安寧通信』vol.0が手元にある。「M君」が集団リンチを受ける2月ほど前に発行された『#安寧通信』。10号までは、誰でも手に取れる場所に置かれていたので入手可能であったが、本来なら街角に置かれていたはずの11号の姿は見つからない。『#安寧通信』自体の発行が休止されたとは考えにくいので、何らかの事情で、一般への公表を控えるようになったのではないか、とも推測される。

「李信恵さんの裁判を支援する会(リンダの会)」が2014年10月7日に発行した『#安寧通信』vol.0の表紙

vol.0はご覧の通り表紙はカラー印刷で、次号以降は白黒の簡易印刷だ。『#安寧通信』は李信恵(リ・シネ)の裁判を支援するために発行されている媒体であるが、同時に詳細にこの冊子を読み解くと「M君リンチ事件」と李信恵、あるいは周辺人物の関連を読み解くことができる。これから数回にわたり『#安寧通信』の解読を試みる。

なお、このような作業を安田浩一などは「運動に分断を持ち込むもの」などと批判するやもしれないが、われわれの目的はあくまでも「M君リンチ事件」の真相や背景解明にある。「結果としてだれが喜ぶか」(安田)などは関係ないことをあらかじめお断りしておく。繰り返すが編集班はいかなる「差別」も「排除」も肯定する立場にない。断じて「差別」も「排除」も「リンチ」も肯定しない。

◆「差別を裁く法律」があれば問題は起きなかったか?

『#安寧通信』、vol.0は李信恵が、在特会元会長の桜井誠と保守速報を相手に2014年8月18日に損害賠償を求める裁判を起こしたことを紹介する李自身の「反ヘイトスピーチ裁判に向けて」から始まる。この文章に書かれている訴えには虚偽はなく、李自身かなりの被害を受け訴訟に踏み切ったことが窺い知れる。相手は狂気の差別集団「在特会」なのだから。

しかしながら、すでにこの文章の中には李信恵自身の問題ではないにしても、この「運動体」が指向する方向性の危険性の萌芽がある。

「日本には差別を裁く法律はありません。名誉棄損や侮辱にしても、刑事事件での告発はハードルが非常に高い」

李が述べていることは事実だろう。しかし「差別を裁く法律」があれば問題は起きなかったであろうか。そもそも差別とはなんだろう。同様な形で人々に共有され言語や行動で表現されることもあるけれども、もとは個々人の心の中に住処を持つ「こころのありよう」ではないだろうか。どんなに卑劣なことを考えていても表現しなければ相手を傷つけることはない。心の中で悪質極まりない大量殺人を夢想していても、それを発言したり、行為に移さない限り、その人が指弾の対象になることはない。「内心の自由」はどんな犯罪や不幸行為、道徳的に非難される行為であろうが、心の中に留め置いておく限り批判の対象とされることはないし、あってはならない。

◆裁くための概念が曖昧すぎる「ヘイトスピーチ対策法」

よって「差別を裁く法律」などという概念は、それ自他が「表現の自由」どころか「内心の自由」にまで踏み込んで個人の思考や思想を制限する性質を有することを必然的に併せ持つ「規制」や「弾圧」に利用される恐れが高い。ある国が犯した罪を永遠に赦免しないとするのであれば、欧州のように「ナチス禁止法」(俗称)を設け、対象を限定して二度と過ちを犯さないような法律を制定することには意味があるだろうが、「差別」一般を裁く法律では概念が曖昧すぎ、恣意的な乱用がなされる危険性が高い。

 
 

その証拠に、制定されてしまった「ヘイトスピーチ対策法」はすでに現行法の定める範囲を超えた作用を及ぼしている。昨年川崎市で差別者が主催したデモの際、取り囲んだ大勢の反対者との衝突を懸念したのか、現場の警察官は「これ以上は無理だ、これが国民の意思だ」と語った。差別に反対する人の中にはこの警察官の発言に大喜びをした人が大勢いた。そこにこそ「ヘイトスピーチ対策法」の最大の危険が在るのだ。あの光景を目にしながら私は背筋が寒くなった。当該警察官の「これが国民の意思だ」という言葉が、「安倍政権反対デモ」、「戦争反対デモ」、なかんずく「東京オリンピック反対デモ」で発せられたらデモ参加者はどう感じるだろうか。法律などなくとも警察はデモ弾圧の際には散々な暴言をこれまでも発してきたが、それに「お墨付き」を与える法律を作ってしまえば、どんな惨禍が引き起こされるかの想像ができないのだろうか。

◆伊藤健一郎(C.R.A.C.WEST)と伊藤大介(C.R.A.C.)

李信恵の2頁にわたる「反ヘイトスピーチ裁判に向けて」に続くのは、ITOKENこと伊藤健一郎(C.R.A.C.WEST)の「差別を扇動する在特会、桜井誠そして保守速報」である。ITOKENこと伊藤健一郎は「M君リンチ事件」後、元鹿砦社社員藤井正美へのメールで「M君リンチ事件」の加害者を擁護し、あたかも「M君」に非があったかの如く「口裏合わせ」を企図する「説明テンプレ」とそれを伝える「声掛けリスト」を作成した人物である。噂によればこの春大学院を修了し学位を修得したとのことだ。伊藤はその文章の中で、

「街頭で繰り広げられているヘイトスピーチは人目を引きやすく一部では報道もされていますが、彼らの活動の中心はインターネットであり、路上の活動は氷山の一角にすぎません。ネットでは『在日』を主なターゲットにした差別的書き込みが多く見られます」

と分析をしている。主語を「M君」に置き換えてみよう。

「街頭で繰り広げられている『カウンター』の活動は人目を引きやすく一部では報道もされていますが、彼らの活動の中心はインターネットであり、路上の活動は氷山の一角にすぎません。ネットでは『M君』を主なターゲットにした攻撃的な書き込みが多く見られます」

ほとんどの部分を直さなくとも文章が合致してしまう。これが何を示すのかは、読者に考えていただこう。ちなみに『#安寧通信』の#(一般的には「いげた」と呼ぶが、ツイッターでは「ハッシュタグ」と呼ばれる)もツイッター上で用いられる符号である。ツイッターを使わない人には意味が分からないだろうし、意味を持たないが、彼らはそれほどにインターネットを重視していることの表れであろう。

次いで登場は、肩書が「旧しばき隊(現在解散)、現反レイシズム行動集団「C.R.A.C.」の伊藤大介による「『#安寧通信』創刊に向けて」である。
内容は取り立てて言及する必要はない、凡庸なものだ。

反レイシズム行動集団「C.R.A.C.」伊藤大介のツイッターより

◆金光敏(コリアNGOセンター)と金明秀(関西学院大学社会学部教授)

そして、金光敏(特定非営利活動法人コリアNGOセンター)の登場だ。『反差別と暴力の正体』で電話取材にあいまいな返答に終始しながら、実は「M君」が李信恵、エル金、凡、伊藤大介、松本英一を訴えた裁判で「被告」側に「M君」との私信を証拠として提供しているのがコリアNGOセンターだ。

金光敏は幾分詩的な文章を寄せている。全文を掲載するのは馬鹿らしいので割愛するが、ナルシシズムにすぎる文章は、金が「M君」に対した暴虐とはずいぶんバランスが悪い。

関西学院大学社会学部教授、金明秀のツイッターより
 
 

さらに金光敏同様、『反差別と暴力の正体』で、在外研究で1年間韓国にいるはずなのに、不思議なことに日本国内にいて電話が繋がった、関西学院大学社会学部教授の金明秀も登場する。「ぼくは、この裁判を最後まで支援します」と金は宣言し文章を結んでいる。ツイッターに「泥酔して」(本人談)上記書き込みを行った金明秀は「M君」を一貫して「支援しない」ようである。(つづく)

(鹿砦社特別取材班)
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「浪花の歌う巨人・パギやん」こと趙博(チョウ バク)の「誇張と嘘」

 
 

  
◆M君が心底信頼していた趙博

取材班が初めてM君に面会したとき、M君は趙博を心底信頼していた。趙博は「パギやん」とも呼ばれているが、会話の中で「そんなことわかってくれるのはパギやんくらいですかね」というM君の言葉を取材班はたびたび聞いた記憶がある。事後の相談のため、松岡と取材班の一部、M君、趙博らで一度顔合わせをしようということになり、大阪駅近くの居酒屋で顔を合わせた。なにせM君の数少ない支援者であるから松岡をはじめ、取材班の一部も打ち解けて趙と話をした。

だが、その時初対面であった趙の眼差しの印象を、複数の人間は同じ感想で見つめていたことがのちに判明する。趙の目の奥には曰く言い難い「暗さ」があった。しかしその「暗さ」がまさか下記のような展開を誘引する、とまで考えたものは参加者にはいなかった。趙は饒舌であり、また舌鋒も鋭かった。李信恵への人格批判もここには書けないほど凄まじかった。

趙は、

「辛淑玉さん、政治感覚全然ダメ! あのひと全然わかってないから」

「カウンターとか何とか言ってる在日の奴らには『チョン公死ね』言われたくらいでゴタゴタぬかすなって言いたい。1世2世の人たちはどんな思いをして生きてきたか全然奴らわかってない」

「今の運動、変ですよね。なんか変。集まってるのアホばっかりやもん」

など、われわれ外部の人間からすれば、はばかられるような、驚くべき発言を多く聞いた。

趙の見解すべてに参加者が同意したわけではないが、少なくともM君が受けている仕打ちがひどい、ひど過ぎるという点では一致していた(はずであった)。

◆5月6日、趙博の豹変

しかしそれから何が起きたのか、趙は5月5日突如李信恵と会談をする。5月6日に、趙は松岡を含む複数の人間に以下の内容のメールを送っている。

《昨日、李信恵とじっくり話しました。先ず、信義の問題として私が謝罪します。次に、被害者Mの誇張と嘘がはっきりしました。今日、彼と会う約束でしたが「精神的にしんどいので日を改めて欲しい」とのことでした。僕は逃げたと判断します(後略)》

また趙は翌日5月7日にはフェイスブックにもほぼ同内容の長文を掲載している。

今になってはっきりわかるのは、5月5日「趙博─李信恵会談」で、趙は相当厳しい「何か」を李側から突き付けられたのではないかということだ。趙にとっては可及的速やかに「転向声明」を出し、状況をこれまでと逆の方向に動かさねばならない役割に置かれるほど「重大な何か」だ。

その証拠は、下記の通話も含み、趙がM君の「誇張や嘘」と表現している内容につき、何ひとつ具体的な指摘を行っていない(行えない)こと、普段はそれほど頻繁に書き込まないツイッターやフェイスブックに間を置かず、「謝罪」を表明し、同時に取材班の田所にまで電話をして「印象操作」を試みた慌てぶりから明らかだ。

趙は李信恵と会った数日後からM君に「直接話したい」と連絡をよこしだした。松岡はじめ、取材班は「絶対に会いに行くべきではない」とM君を説得したが、これまで世話になった恩義を感じていたM君は「どんな話になるかわからないけど、男と男の話をしてきます」などと思い詰める場面もあった。きわめて危険な罠だった。しかし松岡らの強い説得により、M君は趙との面会を回避することができた。そのM君に対して趙が、どのように語ったか。

◆5月16日、趙博からの電話

下記は5月5日の「趙博─李信恵会談」から10日ほど経った5月16日、18時11分趙博から田所へかかってきた電話の内容だ。

  色んなデマを流されたことに関して、殴ったことに関して、もちろん殴ったことは悪いんだけど、そこの背景を全部抜きにして彼は被害者として振舞って、シネの言葉を借りると「ちゃんと和解しようとしたのにしなかった」という事を言ってる。僕は「じゃあ、あんたらきちっとしなかったの?」というところを詰めたんです。そしたらそれは「エル金を庇うためだ」と。「それ以上私たちがやると彼がしんどくなる」と。でも「それは良くないんじゃない」と僕は言ったら「そうだ」と。シネちゃんはきちっと文章にしてね、やろうといったけど、周りのみんなは「それは止めた方がいい、ほっといたほうがいい」ということだったんです。だから今日その辺をM君に聞こうと思ったんだけど、あいつ逃げたね。
田所 逃げた?

 
 

  と俺は判断した。だったらちょっと俺は……。俺の立場からすると乗せられた感じはしてた(笑)。ちょっとこれはもう白紙ですよ。Mを問い詰めなきゃいけないことになった。だから辛淑玉のことについても僕はきのう突っ込んで聞いたら、辛淑玉の「みんなへの手紙」っていうのは、シネちゃんがすぐ、辛淑玉に言って「違う」ということを言って、それで認めさせたと。そういうことを言ってた。「辛淑玉はそれを了解してんのね?」って言ったら「了解してる」って言ってた。田所さんはっきり言って、これ茶番だよ。ガキどもの。
田所 誰の?
  ガキどもの! ネットガキどもの。ネットでギャーギャーワーワー言ってる連中がさ、なんか暴力起こしてさ。俺はM君が本当に困ってる様子だったからね、付き合ってきたけどさ。田所さん、俺らの業界的に言ったらこれガセネタだぜ。
田所 それは事実もなかったということですか?
  うん。もちろん暴力は振るったんだけど、李信恵は殴ったって俺聞いてたから、そのことについて何度も言ったけど「殴ってない」。で警察にも取り調べの時にもそのことはちゃんと言ったし、まあ民団の前でも言ってたけど、俺は何でかと思ってたけどそうでないという印象をきのう持ちましたよ。
田所 確証を得られたわけですね。
  だから、Mさんとシネさんと会う気ありますって聞いたら、「いつでも会います」って。拒否してんのMの方だよ。という気がした。で、今日あいつが来なかったているのは「精神的にしんどいから日を改めてください」っていうのは決定的ですね、僕にとっては。お前そんな根性で喧嘩する気やったんかという。もういっぺんきちっとあいつと会わないといけないと俺思っている。俺こんなバカなことに関わってられないからね。
田所 仲裁しようと関わって来られたのにね。
  仲裁することは全然やぶさかじゃないけど、Mがそんな態度だったら俺あいつ糾弾しなきゃいけない。結局リツイートしてくれっていたのはあいつだからね。俺がリツイートした。それがわーっとなって、結局なんかワーワーギャーギャーなって(笑)。まあこんなもんかと僕は思っていたけど。まあでもね、シネさんもけろっとしてたよ。きのうは。全然傷ついてないわ。あそんなもんだろうという感じで。ちょっとそれは情報入れとこうと思って、ハハハ。
田所 趙さんとMさんのお付き合いは長いようですが私が趙さんにお会いさせて頂いたのは一回きりで、全体像についてもそんなに深く知っている訳ではないので、趙さんのほうがご存知で奔走されていたということしか知りませんからね。
  僕もそれでなんとか、と思ってたけど。シネは嘘をついてる感じじゃなかったな。きのう。「なんでオッパはそんなことしたの?」って。逆にM君のことを心配しててね。そういうことも含めてちょっとこれは仕切り直しですよ。M君が来たら話そうと思ったけど、僕の印象はあいつ逃げたなという感じだな。残念ですけど。また連絡入れます。
田所 わざわざありがとうございました。

◆M君を裏切った趙博

転身ぶりはこの電話の10日ほど前にすでに明らかにはなっていたが、趙が田所に話している内容は「誇張と噓」だらけであるばかりでなく、根拠のない悪意に満ちている。趙は事件の詳細を知っており、関係資料も目にしている。事実関係がどうであったかは知っている。だからM君を支援していたのではないのか。なにが「誇張と噓」なのか。繰り返すが、趙はその具体性を一切言及できない。M君の主張に「誇張も嘘」もないからだ。逆に李信恵が「M君を心配している」とはよくぞ言えたものだ。この時期李信恵はツイッターで「M君リンチ事件」を無きものにしようと、連日書き込みを行っていたではないか。そんな李信恵が「M君を心配している」? これを聞いて、「ああそうですか」という人は、悪徳商法で壺を買わされる人並みに気の毒な人だけだろう。

「M君リンチ事件」には多くの「裏切り者」が登場する。趙はその象徴的な人物といえる。集団リンチを受けただけでも心身のダメージは計り知れない。M君は幸い体が頑丈だったので、生命の危機には至らなかったが、普通体形の人、あるいは体の細い人だったら、生命の危機にかかわる暴行であったことは間違いない。

そして、読者の中にもご経験おありの方があろうが、「人に裏切られる」ほど精神的に辛いことはない。それが信用していた数少ない年長者であれば、どれほどの落胆とダメージを受けることか。

そんなことはお構いなしに「浪花の歌う巨人」こと趙博(パギやん)は活動を続けている。今も多くの人を欺きながら。


◎[参考動画]グーチョキパーの歌(趙博)(hanabi nw 2014年5月7日公開)
(鹿砦社特別取材班)
最新刊『人権と暴力の深層』カウンター内大学院生リンチ事件真相究明、偽善者との闘い(紙の爆弾2017年6月号増刊)
『反差別と暴力の正体――暴力カルト化したカウンター-しばき隊の実態』(紙の爆弾2016年12月号増刊)
『ヘイトと暴力の連鎖 反原連―SEALDs―しばき隊―カウンター 』(紙の爆弾2016年7月号増刊)

M君リンチ事件から李信恵を守るジャーナリスト、安田浩一の矛盾〈後〉

 
 

  
前回に続き、安田浩一へのインタビュー(2016年3月23日の電話)の後編を公開する。

《安田から2度目の電話》

安田 あの田所さん、ごめんなさい、もしかしたら『紙の爆弾』とかに書こうとされていますか?
田所 いえ、別に寄稿の依頼はありません。私はこちらから持ち込んで書いてもらえる(ようなところはありません)。『紙の爆弾』に記事を書いたことはありますけれども、今の段階で別にどこのメディアどうこうって全く予定はありません。
安田 あ、そうですか。どちらに書かれるのもご自由だと思いますし、僕が何も制限させてもらうつもりはないんですけれども、『紙の爆弾』であれば、僕はある種何か意趣返しじゃないかなと感じたものですから。
田所 はい? とおっしゃいますと?
安田 『紙の爆弾』でもある種、運動圏に対して非常に厳しい冷たい視線を向けたりしてることが最近ありましたから、『紙の爆弾』はね。あるいは反原連の関係におきましても。しかも『NO NUKES voice』など見ますと、更に大きいネタを掴んでる、みたいなことをたしか松岡さんが書かれてたような記憶もありますんで、そういう文脈であるのであれば嫌だなと思ったのは正直なところです。
田所 今のところ私はこの件では、李信恵さんに電話取材しまして、今日安田さんに電話させていただきまして、あとは実際にカウンターされている方に二、三、情報は聞いてはいるんですけれども、まだまだとてもではないですけれども全体像が掴めていませんので、それがどんな感じのものなのかということ自体がまだわかっていない段階です。それが果たして記事にできるものなのかということすらまだわからない段階で、むしろそういうことの指針をいただきたくて安田さんにはお電話差し上げたということです。
安田 指針なんて言われるほどのものでもないし、どんな媒体に書いてもそれは僕は自由だと思いますから、そこに何か是非を加えたり加えようと思うことは僕はないんです。ただ『紙の爆弾』であれば、松岡さんが何かそういった大きなネタを掴んでるといったような文脈の延長線上に今回の取材があるのであれば、非常に不愉快だなと思って。
田所 それは全くないです。
安田 そうですか。やっぱりそんなにデカいヤマ(事件)なのかどうかっていうことに関して、僕は甚だ疑問ですし、結果的にどうなるかって考えると、もちろんどうもならなくていいし、目的もない記事を量産してきた僕は言えないんだけれども、結果的に何か運動を縮小させたり、せっかく頑張って傷付いて戦ってる人を更に傷付けるってことが目的であるのならば、嫌だなと思ったわけです。
田所 そういう目的は少なくとも私は持ってないつもりです。
安田 今回のことに関してはデマや誇張された形で持っていって流通してるようにも感じますし、誰が喜ぶのか、誰を喜ばせるのかってことを考えた時に、僕は喜ぶ人の顔が見えてすごく嫌なんです。

安田浩一(『人権と暴力の深層』より)
 
 

  
◆「何か運動の中の組織的に行われた暴力ってわけじゃないんでしょ」

田所 誇張したデマなどももうネットには出ているわけですか?
安田 出てますよ。暴力事件がどうのこうのとか。で、結果的に誰が喜ぶのか、誰を利するのかと考えると嫌だなという気はするんですね。結果的にどんな取り繕おうが、どんな美辞麗句を使おうが結果的に運動に分断を持ち込んで、亀裂を深めさせ、対立を煽ることにしかならない。僕個人はそう考えてる。これが社会的大問題であればですよ、例えばかつて新左翼と呼ばれた方々の内ゲバに発展することであったり何かそこで凄惨な粛清が行われたのであれば、それはそれで社会的な問題として提起することが可能であったでしょうけども、そんな問題でもないでしょうしね。
田所 私が伝えられた内容は鼻の骨を折る大怪我をして顔の形が変わっているという表現で伝えられたんですね。
安田 でもそれがね、何か運動の中の組織的に行われた暴力ってわけじゃないんでしょ。なんかよくわからない喧嘩っぽい。
田所 それはわからない。まず私は被害者の方に聞かないことにはわからない。
安田 それはそうですね、それは裏取りする必要がある。
田所 憶測で判断したくはないなと思っているんです。
安田 それをどういう形でもって発表されるかわかりませんし、ただ結果的に僕は疑ってるのは紙の媒体の意図の中で何かうまい具合にネタが作られているような気がしないでもないんですよね。
田所 ネタが作られてる?
安田 ええ。
田所 紙の媒体の中で?
安田 『紙の爆弾』の意思や意図が反映されてるんじゃないかという気がしますし、田所さんがこの取材をされてるということはね。何に興味を持たれてるのかなぁというのが疑問にあります。いったいこの問題のどこに問題があるのか。
田所 かつての新左翼の粛清と言いますか暴力による内ゲバみたいなことがありましたよね。そんなことを私は歴史的には知ってるんだけれども、肉感的には知らないんですね。今のカウンターの人たちがどういう様な形で動いているのかということは、私は現場に行って皆さんと一緒に行動して、安田さんのように現地で取材をするとか、これをメインのテーマとして扱っている人間ではないものですからよく知らないんです。側面から見ていて在特会の問題とかお金の流れとか、そういうことを自分で調べながら記事にすることはあるんですけれども、実際の在特会がものすごい無茶苦茶なヘイトスピーチをしている所へ出て行ってカウンターの方の抑えてる場面とかを取材したことはないんですね、私自身。
安田 そっちの方がよっぽど問題としては大きな問題であって、一方的な暴力によってむしろ傷ついてるのは李信恵をはじめとする在日当事者であって、そしてカウンターと一口におっしゃいますけども、カウンターって組織じゃないですからね。何か組織があるわけではご存知の通り、カウンターって称するって、この間も東住吉に大勢の人が集まりましたけど、誰一人として組織に属してるってわけでもないし、いわば自発的に集まってる人の総称としてカウンターとして呼んでるのであって、論調の違いでもって何かトラブルが起きるとかそういうのはない。まだまだ地雷を抱えながらそれぞれがそれぞれの戦いをしてるのであって。何が問題なのか僕はわからない。
田所 ちなみにちょっと古い話になるんですが、私は20数年前から辛淑玉さんと親しくさせて頂いてまして、石原知事だった頃の「第三国人」発言の際には私も及ばずながら共闘した人間です。ただ私が聞いているのは被害者が顔を殴られて骨が折れて顔の形が変わっているという話です。発表するしないは別に、その真偽を確かめたくなるのは安田さんにもお分かりいただけると思います。もし本当であれば、安田さんがさっきおっしゃったように、そんな軽いことではないという可能性も出てくると思うんですね。
安田 うーん

安田浩一と香山リカ(『人権と暴力の深層』より)
 
 

  
田所 だから安田さんもまだ詳細はご存じないわけであって、私もわからないわけであってそのことに対する評価というものはまだする段階ではないと思うんですね。
安田 わかりました。そういう熱意を持って取材される意味が僕にはよくわからないんだけど。取材されるのは自由ですから、これ以上特に言及することはないんですが、少なくとも、ただここまでお話しましたから万が一、僕の懸念もわかっていだいたと理解した上で取材していただいたと思いますけれども、何度も言いますように一つこう約束してください。僕は取材拒否ということはしたくないので、極力どんなお電話でも取りますし、どんな自分と考え方の違う人の問い合わせであっても極力答えるようにしております。ですから今回もそう思ってあえてこちらからお電話差し上げましたけれども、もしカギ括弧を使うのであれば、僕は運動を貶めるための目的や意図があるのであればご協力したくないということだけ、カギ括弧として使ってください。申し訳ございません、お約束いただけますでしょうか。
田所 もちろん確実にわざわざお電話までいただいて、それを裏切るようなことは決していたしませんので。 (電話の会話は以上)

◆「M君」に対する心遣いの言葉の断片も聞くことはなかった

どうだろうか。太文字と赤い下線の部分を特に注意して再度ご覧いただきたい。安田は最初に「僕もそういう話は聞いたことはありますけれども」と言い、また「僕その場に居たわけじゃありませんし、また聞きですからね」はずなのに、終始事件を「取材」すること自体に疑問を呈し、「訳が分からない」と繰り返している。詳細を知らないはずなのに「だけどもことさら取り上げることの意味がさっぱり分からないし、なんとなくその取材に向かう回路そのものに僕は胡散臭さを感じてるんで、」と極めて神経質に、事件の内容が明らかになることを警戒している。そして明言はしないものの、「取材をしてくれるな」というニュアンスが至る所に見られる。

安田が田所の取材に警戒心を隠さなかったのは、せっかく功を奏しそうだった「M君リンチ事件隠蔽作戦」が社会に広く知られれば「結果的にどんな取り繕おうが、どんな美辞麗句を使おうが結果的に運動に分断を持ち込んで、亀裂を深めさせ、対立を煽ることにしかならない。僕個人はそう考えてる」のと、「僕とすればこれは明らかに李信恵を貶めるための情報だと思うので一切協力はできない」のが本音だろう。

しかしここで安田の言う「運動に分断を持ち込んで、亀裂を深めさせ、対立を煽ることにしかならない」という理由は逆に言えば、「被害者M君の被害回復よりも、運動のほうが大切だ」ということになる。そして事件への言及で安田の口からは、ついぞ「M君」に対する心遣いの言葉の断片も聞くことはなかった。おそるべき加害者擁護、運動第一主義である。

◆「C.R.A.C.」はいまも存在するし、悪名高かった「男組」は明確な組織だった

安田は「カウンターって組織じゃないですからね。何か組織があるわけではご存知の通り」とここでも明白な虚偽を述べている。現在に至るも野間易通が君臨する「C.R.A.C.」は存在するし、解散はしたが悪名高かった「男組」は明確な組織だったじゃないか。そして、何よりITOKENこと伊藤健一郎が鹿砦社元社員藤井正美に宛てたメールにあった「説明テンプレ」と「声かけリスト」はカウンター全員ではなくとも、その中の一部が「組織化」されていた動かぬ証拠だ(詳細は『反差別と暴力の正体』参照)。

「カウンターは組織ではない」、「リンチ被害者などどこにもいない」ように世論形成をしたがっている安田は、「差別反対」であれば「集団リンチ」も黙認し、被害者を無視、いや攻撃さえする。さらには冒頭述べた通り、障害を持つ田所の公開を望まないのに写真を掲載した野間のツイッターを肯定するなど、最近の言葉でいう「アウティング」(身分晒し)を肯定していることになる。

この男、策略と矛盾だらけではないか。

◎M君リンチ事件から李信恵を守るジャーナリスト、安田浩一の矛盾〈前〉(2017年7月17日公開)

(鹿砦社特別取材班)
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M君リンチ事件から李信恵を守るジャーナリスト、安田浩一の矛盾〈前〉

 
 

  
鹿砦社に「M君リンチ事件」の情報がもたらされたのは2016年2-3月。取材班が結成され、その中で田所敏夫がさしあたり、李信恵、安田浩一、辛淑玉に電話取材を行い、取材班は同時期に被害者「M君」から直接話を聞くことになる。

その時は、まさかこれほどの「闇」が背後にあろうとは予想しなかった。私たちがいま目にしているのは、まぎれもなく「闇」だ。加害者や加害者側とされる人びとの取材には骨が折れた。

◆取材班・田所の顔写真を載せた野間のツイッターに「いいね」を押した安田浩一

以下に紹介する安田浩一への電話インタビューは2016年3月23日に行ったが、李信恵にはそれに先立つ3月20日、辛淑玉には3月28日、また少しあとだが被害者「M君」の側に立ちながら突如加害者側に寝返った趙博から電話があったのは5月6日だ。
李信恵を取材したらどういうわけか、野間易通のツイッターに田所の顔写真が大写しで掲載された。あるシンポジウムをIWJが放映した際のアーカイブから取られたものであることは田所の指摘ですぐに判明した。そしてこの映像の情報を野間に知らせた人物もすでに特定できている。

田所は通常写真撮影されることを、よほどの状況でない限り「お断り」している。取材班しか知らないが、田所は複数の障害を抱え、目にも病を抱えており、これまで2度の手術を受けている。それゆえファッションではなく、常時(夜間でも)サングラスをかけている。田所は人前で話す際には、必ずこの理由を説明しサングラスをかけたまま、話す失礼をお詫びしてから話をはじめる。

安田浩一は鹿砦社から「田所の顔写真が野間のツイッターに無断で掲載されたことをどう思うか」、との質問に対して(ちなみに安田は野間ツイッターに掲載された田所の顔晒し投稿に「いいね」をしている)「書くものの覚悟」だと回答してきている。障害があるが故に「不本意な形で」自分の顔写真の撮影、公開を望まないのは「書くものの覚悟」なのか。障害について語るか語らないかは本人の自由ではないのか。それとも「どんな障害か説明しろ」と迫られればならないのか。それが言論界のルールなのか。

◆安田浩一の警戒ぶりと矛盾

さて、そんな安田へのインタビューをご覧になればお分かりいただけようが、安田の警戒ぶりと矛盾は甚だしい。田所の質問に「僕もそういう話は聞いたことがある」と一応事件を知ってはいることを認めながら、田所が「取材をすることの意味が解らない」、「何がしたいんですか」と詰め寄る。

2016年3月20日、田所が安田の携帯に電話をかけたが留守録だったので、電話をかけた趣旨を残したところ、安田からの着信があったという。一度目の会話が終わり、しばらくしてまた安田から電話がかかってきた。まずは田所と安田のやり取り(蛇足の部分は省いてある)をご確認いただこう。

《安田から1度目の電話(コールバック)》

安田 すみません、お電話いただきまして。
田所 申し訳ありません、コールバックいただきまして。わたくし田所と申します。初めて電話をさせていただいて恐縮でございます。実はわたくしのところに、「クラック(C.R.A.C.)関西のイトウ」と名乗る方から非通知で電話がありまして、この電話があったのが一月ほど前なのですが、「2014年12月17日に大阪である方が、いわゆるカウンター界隈の方なんですけれども、何人かの人に大変な暴力を受けた事件があるけれども知ってるか」と言うタレコミの様な電話があったんですね。そのようなことがあったことについて、安田さんは聞きおよびではございませんでしょうか。
安田 僕もそういう話は聞いたことはありますけれども。まずネタ元がまず確かなのかどうかということと、クラック(C.R.A.C.)関西という組織ありませんし、クラック(C.R.A.C.)大阪はありますけどもね。イトウと名乗る人物、多分ITOKENのことなんだろうけども、本人そういうことをどこかに電話するっていうことはありませんし。
田所 私が聞いた感じでは関西弁ではなくて、東京なまりの人でしたので、まあ東京なまりの人も関西に住んでますけれども。
安田 尋ねられればね、僕も書き手の一人としては取材拒否するということはありませんけれども、まずネタとして成立しそうな話なんですかね。暴力事件と言いますけども、具体的にどういう状況でどういう環境の中で行われたかって、僕その場に居たわけじゃありませんし、また聞きですからね。その詳しく状況がわからないなかで。
田所 そうですね。安田さんはそこにいらしたわけではありませんね。
安田 で、何が起きたのかとか何がどうだったのかということはできませんし。それ、どこか媒体か何かに載せられる設定で取材されてるんですか?

 
 

  
田所 場合によったらそういうこともあるかもわかりませんけれども、まず全体像がわからないものですから。ただですね、わたくしに伝えてきた人は暴力をふるった人の一人に李信恵さんがいらっしゃると明言されていたんですね。実は数日前に李さんに失礼ではありましたがお電話さしあげまして、そういったことがあったのでしょうかとお尋ねをしようとしたのですが、お話はいただけませんでした。「松井やより賞」受賞された彼女が本当にかかわっているのであれば事件だという認識を私は持っています。そういうことがあったということは耳にしていらっしゃるのかどうかというあたりを、まずそれだけをご存知かどうかということをお尋ねしたくてお電話差し上げた次第です。
安田 わかりました。やっぱり取材者の立ち位置と、どこの媒体に掲載するのかということが明確にわからなければ、僕、何もお話はできませんし、李信恵は体張って先頭立って戦ってる女性でして、賞を受けたかどうかは関係なく知名度も関係なく、彼女のある種運動をけん引するような立ち位置にあることは事実なわけで、僕は彼女を貶めるようなことに関しては正直言って協力したくないんですね、結果的に。

◆「何が目的なんでしょうか? 暴力事件なるものを明らかにされるというのが目的なんですか?」

田所 今も裁判なさってますもんね。
安田 関わってるし、最も激しく傷つきながらこの問題に対峙している人間の一人です、彼女は。そうした中で、特に例えばこれが対外的な暴力事件みたいなことでスキャンダル的に取り上げるような価値があるのであればまた別ですけれど、僕からすればそういう価値は全くないと判断してますし、なおかついわば結果的におそらく、田所さんがどういうお立場なのか僕は存じませんが、李信恵を貶めるためであるならば僕はやっぱり全く協力、このことに関して言及したくないし。
田所 私の立場を申し上げますと、差別については明確に反対の立場です。
安田 まず暴力を振るったとされる方と振るわれたとされる方、双方にお話をあてたんですか? まずそちらに当てるのが先なんじゃないですか? 事実関係を。
田所 ええ、ですから李信恵さんは加害者ということで情報があったものですから、李さんにはお電話を差し上げました。ただこの事件について聞くのは難しかったです。そもそもそういう事件があったのだろうという傍証は取れましたが、安田さんはこういう界隈のこと俯瞰的に非常に高いところからご覧になってらっしゃる方だと思いますので。
安田 買い被り過ぎです。高い所から俯瞰して見るという慣習は僕の中にはなくて、僕は常に取材者であると同時に当事者でありたいと思ってますから。僕はそれはだから特に僕としては何か問題があったという認識では僕はないですし、それでいったい何を目的にそれを取材されて、どこにどんな記事を書くのかということは当然気になりますし。何が目的なんでしょうか? 暴力事件なるものを明らかにされるというのが目的なんですか?
田所 クラック(C.R.A.C.)関西のイトウと名乗る方が私に伝えてきた内容というのは相当衝撃的ではあるんですね。
安田 ほおほお。
田所 被害者の方が負ったケガの程度も軽度ではないですし、いまだに治療されているということでした。顔の形が変わるほど殴られたという話です。仮にそれが事実であれば「顔の形が変わって骨折する」というのはそれほど軽いことではないのかなと考えます。
安田 でもそれちゃんと裏取りした方がいいですよね。事実なのかどうかとか。
田所 もちろんそうですね。だからこれから。被害者の方に、まだちょっと被害者の方の電話番号などもわからないんですけれども、被害者の方に直接お会いして。
安田 そこまでは知りませんし。
田所 ええ、それは私の方でこれから。
安田 それからきちんと裏取りすべきだと思うし、そこでどんな問題が生じたのか、単に一方的に殴っただけなのかどうかとかそういったことを含めて、それこそ田所さんのお立場から聞くのであれば俯瞰的に見る必要は当然でてきますよね。それによってどんな影響が出るかということも考えてますのでね、単に貶めるだけであるんだったら、僕はやっぱり信頼して協力はしたくないな。
田所 そうですね、私も差別者を利するような取り上げ方をしたくないとおもっているのですね。

安田浩一(『人権と暴力の深層』より)
 
 

  
◆「男の子としての喧嘩なんていくらでもやったことありますし」

安田 ネットとかでも最近出てるじゃないですか、そういう話が。なんか暴力事件があったとか何とか、僕もネット見ましたけども、結果的にその時点でもって差別者を喜ばせてますし、それを材料として喜んでる人がいっぱいいるわけですよ。僕自身は暴力を丸々肯定するわけではありませんけれども、僕ももともと男の子としての喧嘩なんていくらでもやったことありますし、差別者の胸ぐら掴んで殴り倒したい気持ちになったことはいっぱいありますし、それをいちいち僕は小さな否定はしてないんですよね。暴力を大声でもって肯定することはしてませんけれど、そういう小さな衝動なんていうものは僕もいくらでも抱えているものであって、ましてやそれを問題視し記事化するってことが社会的な影響力ってことも当然僕も考えますから、丸乗りすることは僕はできないですね。心情的にはとても無理です。田所さんが一生懸命取材されてることはわかりますけれども、もちろんそれによって差別者の立場からそれを肯定するうえで記事を書こうとしてるんじゃないということは十分理解します。だけどもことさら取り上げることの意味がさっぱり分からないし、なんとなくその取材に向かう回路そのものに僕は胡散臭さを感じてるんで、田所さんではないですよ、その取材に向かわせようとする動きそのもの、その回路そのものに僕は胡散臭さいものをとっても強く感じてますので、これまでの文脈から、今までに僕に聞いてきた人物も含めて、だから僕は回路そのものを疑っているので、疑っているというか胡散臭さを感じてますので、僕とすればこれに関して何か言及することはできないし、そもそも事実関係を正確に知ってるわけでも何でもありませんから、推測だけでものを言いたくもないし。

◆「李信恵をはじめとする一生懸命活動している人間を貶めるための情報に僕は協力はすることはできない」

田所 そもそも安田さんは何かあったということは聞いていらっしゃるけれども細かいことはご存じないので、当然のことですけれども知らないことは細かいことについて論評のしようもないし、それプラス伝わり方というかそれに対して関わって来てる人間が別の意図を持って関わって来てるんじゃないかという心象を持ったこともあると。
安田 だからその片言を取られると困るんですけれども、僕とすればこれは明らかに李信恵を貶めるための情報だと思うので一切協力はできない。カギ括弧にするんだったらそうしていただきたいです。それは僕からのお願いです。僕のカギ括弧をもし使うとするならば、「李信恵をはじめとする一生懸命活動している人間を貶めるための情報に僕は協力はすることはできない」 そういうカギ括弧を使っていただきたいと思います。
田所 わかりました。
安田 是非そうしてくださいとしか言いようがありません。
田所 形になるかどうか自体もまだわかりませんし、これから被害者の方に当たったりというような段階ですので、一応今のカウンターの中では権威でいらっしゃる安田さんがひょっとしてご存知だったらどういうご見解かなということでお伺いしたんですが、ご丁寧にもコールバック頂いて大変恐縮で、ありがとうございました。
安田 見解というのは今私が言ったことだけですね。申し訳ありません、それ、紙として、田所さん信頼していますけど、分けて書いて下さい。僕とすれば李信恵をはじめとするそういった人々を貶める、運動そのものを貶めるものであれば協力はできないと。そのカギ括弧以外は使わないでください。
田所 わかりました。

(後編につづく)

(鹿砦社特別取材班)
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【公開書簡】 鈴木邦男さんへの手紙 [鹿砦社代表 松岡利康]

先の「デジタル鹿砦社通信」6月20日号で、ここ1年余り「カウンター」-「しばき隊」による大学院生M君リンチ事件の真相究明と被害者M君支援(裁判、権利回復など)で共に動いている「鹿砦社特別取材班」の一人「A生」(社外メンバー)が、鈴木邦男さんに対して直截的で激しい意見を述べています。会社としての見解ではなく「A生」の個人的意見ですが、身近で私の「逡巡と苦悶」を見て、やむにやまれぬ気持ちで書いたのでしょう。

あくまでも社外取材班「A生」の個人的意見にもかかわらず、それをそのまま即鹿砦社の見解と早とちりし誤認して香山リカ氏がツイッターで絡んでこられましたが、鹿砦社のHP「デジタル鹿砦社通信」に意見をアップしたからといって、即鹿砦社の見解ではありません。「A生」の意見に基本的に同意しつつも私の気持ちや会社の方針と違う箇所も散見されますし、小なりと雖も会社経営を担い、社員の生活に責任を持つ私や会社は、「A生」ほど過激ではなく、一定のバランスはとっているつもりです。

【注】鹿砦社特別取材班 李信恵氏ら「カウンター」5人による大学院生集団リンチ事件の真相究明と被害者M君支援のために鹿砦社社内と社外のメンバーが集まった有志のグループ。メンバー個々の思想・信条は右から左まで幅広い。リンチ加害者らの代理人・神原元弁護士が詰るように、間違っても「極左」ではない。神原弁護士らによる「極左」認定は、ためにする批判だ。

さて、そこでも述べられているように、鈴木さんとは1980年代前半以来30数年の付き合いになります。月日の経つのは速いものですね。出会ったのは、まだ「統一戦線義勇軍」のリンチ・殺人事件の前だったと記憶しますが、鈴木さんは「新右翼の若き理論家」として売り出したばかりの頃です。いろいろなことが走馬灯のように思い出されます。今闘病中の装丁家で私に出版・編集の手ほどきを実践的にやってくれたFさんの紹介でした。鈴木さんとFさんとも組んで何冊も本を出しました。

まだこの頃はサラリーマンをしながら『季節』という思想・運動系の小冊誌を不定期に出していて、鈴木さんの伝手で、その「現代ファシズム論」の特集に、前記のリンチ・殺人事件の首謀者で、後に見澤知廉を名乗る清水浩司氏(故人)に獄中から寄稿していただき、主に新左翼周辺の読者から顰蹙を買った記憶があります。

1984年暮れに10年間のサラリーマン生活を辞め独立、しばらくして同じ西宮市内で朝日新聞阪神支局襲撃事件があり、鈴木さんとの関係で、私も疑われました。

そうこうしている中で、朝日襲撃3部作『テロリズムとメディアの危機』『謀略としての朝日新聞襲撃事件』『赤報隊の秘密』を出し、そして鈴木さんにとっても私にとってもターニング・ポイントになった『がんばれ!! 新左翼』(全3巻)を刊行しました。

『テロリズムとメディアの危機 朝日新聞阪神支局襲撃事件の真実』(1987年)、『謀略としての朝日新聞襲撃事件 赤報隊の幻とマスメディアの現在』(1988年)、『赤報隊の秘密 朝日新聞連続襲撃事件の真相』(1990年)
『がんばれ!! 新左翼 「わが敵わが友」過激派再起へのエール』(〈初版〉1989年、〈復刻新版〉1999年)、『がんばれ!! 新左翼 Part2 激闘篇』(1999年)、『がんばれ!! 新左翼 Part3 望郷篇』(2000年)

この本を出したことで、私は新左翼界隈から大変な非難を浴び顰蹙を買いました。この頃から、プロレス・格闘技関係も含め数多くの書籍を刊行させていただきました。共著を含めると何点になるでしょうか、すぐには数え切れないほどです。鈴木さんが創設された新右翼団体「一水会」の機関紙『レコンキスタ縮刷版』(2巻。1~200号)も刊行しました。

【注】統一戦線義勇軍 1980年代はじめ、一水会を中心に結成された新右翼、行動右翼の連合組織。初代議長は木村三浩氏(現一水会代表)、書記長は清水浩司氏。結成後すぐに清水浩司氏らによるリンチ・殺人事件が起き「新右翼版連合赤軍事件」と揶揄された。現在でも活動を継続している。

さらには、12年前の「名誉毀損」に名を借りた出版弾圧事件で会社が壊滅的打撃を蒙り、その後、多くの方々のご支援により復活、鈴木さんへの長年のお付き合いのお礼も兼ね、私たちの思想的総括を懸けて、いわゆる「西宮ゼミ」といわれる、市民向けのゼミナール「鈴木邦男ゼミ」を2010年9月から隔月ペースで3期3年にわたり開催しました。多くの著名な方々が当地(兵庫県西宮市)までお越しになりました。18回開催し(「西宮ゼミ」はその後「浅野健一ゼミ」「前田日明ゼミ」と続き計30回で一応終了しました)、一度たりとも採算に合ったことはありませんが、それでも私は清々しい気分でした。これは記録に残っていて、今これを紐解きながら、鈴木さんとの長い付き合いを想起しため息をついています。なぜ、ため息をついているのか、鈴木さんにはもうお分かりのことと察します。

『生きた思想を求めて 鈴木邦男ゼミ in 西宮報告集〈Vol.1〉』(2012年)、『思想の混迷、混迷の時代に 鈴木邦男ゼミ in 西宮 報告集〈Vol.2〉』(2013年)、『錯乱の時代を生き抜く思想、未来を切り拓く言葉 鈴木邦男ゼミ in 西宮報告集〈Vol.3〉』(2014年)

ここ1年3カ月余り、私(たち)は、「カウンター」とか「しばき隊」と自称他称される「反差別」運動内で、「カウンター」-「しばき隊」のメンバーによって惹き起こされた大学院生集団リンチ事件の真相究明と、裁判闘争を含めた被害者M君支援を行ってきました。私たちなりに事実関係を整理し精査していく過程で多くのことを知ることができました。幸か不幸か……。

その成果は、このかんに出した3冊の本に編纂し出版いたしました。「カウンター」-「しばき隊」界隈の人たちからは「デマ本」とか非難されていますが、その内部にいた人たち複数にチェックしてもらったらほぼ事実だということでした。事実関係には、全く白紙の状態から取材や調査をし、裁判も絡んでいますから特に厳しく留意しています。

驚いたことは幾つかありますが、その一つが、鈴木さんも「共同代表」に名を連ねる「のりこえねっと」、及びこれに群がる人たちがリンチの加害者を擁護し、この唾棄すべきリンチ事件の隠蔽工作、さらには被害者M君へのセカンド・リンチを積極的に行っていることでした。私(たち)に言わせたら「のりこえねっと」は「コリアNGOセンター」と同じく、リンチ事件隠蔽工作の〝特A級戦犯〟です。

「共同代表」の中で、事実上のトップといえる辛淑玉氏は、当初は被害者側に立ち、「これはまごうことなきリンチです」としてリンチ事件の真相究明と被害者M君への慰謝、問題の根本的解決を進めるかと思いきや、すぐに沈黙、昨年9月には逆に掌を返し、挙句には被害者M君が「裁判所の和解勧告を拒否」しているとまでウソの記述をして、あれだけ証拠が揃っていながら、深刻な事情があるのか、「リンチはなかった」という加害者側に寝返ってしまいました。

その3冊の本で集団リンチが確かにあったことが公にされ、佐高信氏ら他の「共同代表」の方々は、ひたすら沈黙です。普段歯切れの良い物言いで人気があり私もファンだった佐高氏でさえ黙殺されています。これも意外でした。中沢けい氏に至っては、電話でガチャ切りされ、ようやく直撃することができましたが、取材担当の若者を前にして、したたかにずるく交わしています(『人権と暴力の深層』参照)。人間として醜いです。

さらには、「共同代表」ではありませんが、「のりこえねっと」に巣食い「のりこえ」の名を冠したネット放送を頻繁に行う実質的中心メンバー、野間易通、安田浩一氏らは、被害者へのセカンド・リンチを執拗に行い続けています。

鈴木さんのサイト『鈴木邦男をぶっとばせ!』では、彼らと和気あいあいと写っている画像が頻繁にアップされています。今週号(6月26日更新)でも3枚の画像がアップされ、うち1枚は鈴木さんが発言されている場面、さらに1枚は辛淑玉氏とのツーショット──「共同代表」、普通考えれば、この会にそれ相当の立場があるわけですから、それも当然と言えば当然かもしれません。

とはいえ、一般にはさほど知名度がなくセカンド・リンチの旗振り役・金明秀(関西学院大学教授)氏の写真をアップされた(『鈴木邦男をぶっとばせ!!』6月12日号)のには驚きました。「松岡さんへの当てつけでしょう」と言う方もいますが、どうなのでしょうか? 金明秀氏がどういう言動を行っているかは、辛淑玉氏や「のりこえねっと」がリンチ事件隠蔽工作について、どう動き、どのような役割を果たしているかは、お送りしている3冊の本をご覧になれば分かるはずです。読み飛ばされましたか? 

しかし、鈴木さんには、佐高氏らのような対応をしてほしくはありませんし、そうした「のりこえねっと」の「共同代表」を務め、辛淑玉氏ら中心メンバーと昵懇であれば、M君リンチ事件や、この隠蔽工作について立場や意見などを明確にされるべきではないでしょうか。そう思いませんか?

鈴木さんは、かの野村秋介氏(故人)をして「人間のやることではない」と言わしめた、見澤知廉氏らが惹き起こしたリンチ・殺人事件を境に、言論に主たる活動の場を求め舵を転換されました。このリンチ・殺人事件は、鈴木さんにとって大きな衝撃だったことが、長い付き合いの私には判ります。僭越ながら、鈴木さんとの付き合いで、現一水会代表の木村三浩氏ら一部を除いて、30数年の長きにわたる人はさほど多くはないものと察します。特に出版関係者では……。こういう意味でも、鈴木さんとは全く付き合いのない、社外取材班メンバー「A生」とは、立場も思うところも異なります。

昨年来、私は鈴木さんに、リンチの加害者を擁護しこのリンチ事件隠蔽工作を行う辛淑玉氏ら「のりこえねっと」を採るか、被害者側に立ちリンチ事件の真相究明と被害者支援を行っている私や鹿砦社を採るか、選択を迫っています。回答がございません。鈴木さんほどのひとかどの方が、八方美人的に振る舞われることはやめたほうがいいいのではないでしょうか。思想界でも、社会的にも大きな存在となった鈴木さんは、その泰斗として、いいことはいい、悪いことは悪いとはっきり物言うべきです。それができなければ、厳しい言い方になりますが、「A生」が言うように「言論界からの引退」も考えられたほうがいいでしょう。

鈴木さんの日和見主義的態度に、ある読者は「手持ちの安田浩一氏、鈴木邦男氏の著作は全て処分することに決定しました」と言ってきました。リンチ加害者を擁護してやまない安田氏は当然として、鈴木さん、恥ずかしくありませんか?

鈴木さんは見澤知廉氏ら統一戦線義勇軍によるリンチ・殺人事件に直面し、運動内における暴力の問題に苦慮され、その結果として言論による活動にシフトされたと私は思ってきました。では、ふたたびリンチ事件に接し、この国屈指の思想家であり知識人であり社会運動家である鈴木さんは、どう振る舞われるのでしょうか?

先の「デジタル鹿砦社通信」で、このかん私と共に活動してきた「A生」は、私がいまだに「逡巡と苦悶」をしていることを感じ取り、ダイレクトな表現でネット上に明らかにしました。同じ取材班の田所敏夫は、私と鈴木さんほど長くはありませんが、辛淑玉氏との長い関係を清算し「決別状」を、この「デジタル鹿砦社通信」で明らかにしました(『反差別と暴力の正体』に再録)。

リンチ事件追及第三弾『人権と暴力の深層』で、私は、「鈴木邦男さんへの手紙」を書くつもりでしたが、「逡巡と苦悶」を繰り返し書けませんでした。いろんな意味で、やはりこのままではいけないと思い、気持ちを整理しつつ、こうして「鈴木さんへの手紙」を書き始めた次第です。私と鈴木さんとの関係を知る人はおそらく大なり小なり驚かれるでしょう。

人は、ここぞという時に、どう振る舞うかで、その人の人格なり人間性が現われるのではないでしょうか。とりわけ、知識人のレゾンデートル(存在理由)はそこにあると私は考えています。ふだん立派なことを言っていても、ここぞという時に日和見主義的態度をとったり、逃げたりするような人は、「知識人」としてのみならず人間としても失格です。私と知り合い、言論活動に舵を切られて以降、生来頭脳明晰な鈴木さんは、この国の言論界でも存在感を示すようになられました。知り合った頃の、言論界から異物、異端としか思われていなかった鈴木さんを知る私としては喜びにたえません。今、鈴木さんの発言は、この国の言論界でも受け入れられ、その優等生的な発言に面と向かって非難や罵倒をする人はいないでしょう。いまや一介の右翼活動家、右派系知識人ではなくなりました。

鈴木さん、リンチ直後の被害者M君の写真を見て、どう思われますか? 失礼な言い方になりますが、被害者M君は幸いにも死に至らなかったから、間違っても、見澤氏によるリンチ殺人よりはマシだなどとは思ってはおられないでしょうね? くだんのリンチ事件に接して、日頃「非暴力」とか「暴力はいけない」と言っている人たち(この代表は、「のりこえねっと」が支援している、「しばき隊」内の最過激派「男組」組長で暴力行為や傷害で前科3犯、そして昨年も沖縄で逮捕され公判中の高橋直輝こと添田充啓氏です)、とりわけ「カウンター」運動や「のりこえねっと」に関わる人たちがこぞって隠蔽に走ったり沈黙しています。著名な方々も少なくありません。なんのために知識を培ってきたのか、情けないことです。事実に真摯に向き合い自らのスタンスをはっきりさせるべきでしょう。

本来ならば、こういう時こそ鈴木さんの出番ではないでしょうか。私と知り合った直後に統一戦線義勇軍のリンチ・殺人事件に直面し、のた打ち回られたのではないですか。こういう経験を今こそ活かし、大学院生リンチ事件の内容を当初から知り隠蔽工作に走る辛淑玉氏ら「のりこえねっと」の「共同代表」の方々に厳しく進言し、逃げないで問題の本質的解決に汗を流すべきではないでしょうか。鈴木さん本当にこれでいいんですか!? 私の言っていることは間違っていますか?

長年、私には常に鈴木さんの<影>がありました。80年代からの私と鈴木さんとの付き合いの経緯を知らない香山リカ氏などちゃらちゃらした人たちが言う以上に、口では表現できないような、あまりにも濃密な関係があり、もし決別することになれば、大仰な言い方ですが、出版人としての私の30数年そのものを全否定することにもなりかねません。

しかし、人付き合いに不器用で、あちらにも良い顔、こちらにも良い顔ができない私は八方美人にはなれません。要領よく振る舞えず、どこにも良い顔はできません。

私ももうすぐ66歳、決して若くはありません。鈴木さんは70歳を越えられました。自らの心を押し殺し、なあなあで行くほうが簡単ですし、正直、この歳になって義絶したくはありませんが、頑固な鈴木さんは、「のりこえねっと」共同代表をお辞めになる気はなさそうですし、お考えを変えられそうもありませんので、義絶するのも致し方ないかもしれません。一方、私は、辛淑玉氏ら「のりこえねっと」界隈の人たちによるリンチ事件隠蔽に反対しこれを突き崩し、被害者M君へのセカンド・リンチから彼を守ることに尽力していく決意です。

「老兵は去るのみ」── 実は私は、昨年65歳になったところで、会社も再建し黒字体質になったことだし第一線から引退し、いわば「相談役」的な立場に退くつもりでした。これは周囲に公言していましたので覚えておられる方もいらっしゃるかと思います。しかし、その少し前にリンチ被害者のM君に出会い、この理不尽な事件の真相究明とM君支援に汗を流すことにし、引退を先延ばししました。

鈴木さん、厳しい言い方になりますが、いいことはいい、悪いことは悪いと言えなくなった鈴木さんは、「A生」が言うように「言論界からの引退」も考えられたほうがいいのではないでしょうか。私にしろ鈴木さんにしろ、けっして若くはありませんから、どこかの時点で、「老兵」は去らないといけません。「老兵」松岡は、早晩M君問題が解決したら、当初の予定通り第一線から退き、近い将来出版の世界から去るつもりです。鈴木さんはどうですか?

ここに至り私は、このM君リンチ事件の真相究明と被害者M君支援に、私自身の出版人生の総括を懸けて、この最後の仕事とするというぐらいの覚悟で臨んでいます。それはそうでしょう、目の前にリンチの被害者が現われ、誰にも相手にされず助けを求めてきたら、人間ならば手助けしようとするでしょう。そして、そのリンチ事件、及び以降の隠蔽工作やセカンド・リンチが理不尽なものであったら、歳とってフットワークが鈍くなったとはいえ、真相究明をしたくなるでしょう。そうではありませんか?

このリンチ事件は、人間としてのありようを問うものです。鈴木さん、これでいいんですか!? これを蔑ろにして、鈴木さんのみならず「人権」だとか「反差別」だとか口にする人を今後私は信じません。

鈴木さんとは生きる方向性が真逆になってしまいました。このまま鈴木さんが「のりこえねっと」や「しばき隊」、この界隈の人たちと関係を続けられるのであれば、残念ながら、私は静かに去るしかありません。ほとんど私のほうがご面倒をおかけしお世話になったと思います。長年のご交誼に感謝いたします。

この手紙も、そろそろお終いにしますが、鈴木さん、大学院生M君集団リンチを肯定し事件の存在を隠蔽しようとしている「のりこえねっと」や「しばき隊」と手を切ってください。そうでないと、鈴木さんもリンチ隠蔽やセカンド・リンチの<加害者>となり、せっかく日本を代表する思想家として名を成したのに晩節を汚すことになりますよ。鈴木さんには<偽善者>になってほしくありません。これが最後の忠告です。

蛇足ながら、「のりこえねっと」や「しばき隊」と特段に密接な関係のある香山リカ氏は、「デジタル鹿砦社通信」6月20日号の「鹿砦社特別取材班 A生」の個人的意見を即鹿砦社の見解と誤認し「A生」が「言論界からの『引退』を勧告する」のは「鈴木氏に御社(引用者注 鹿砦社)からのすべての出版物の版権引き上げをおすすめし、新たな版元の紹介や手続きなどすべて御社で行ったのち、が出版界の常識でしょう」と、ネットで話題になった「どこに(本を)送付したか、ちょっと書いてみては?」(そう言うから書いたら神原弁護士から内容証明が届きました)という挑発に続き、またまた〝挑発〟されていますが、出版界に30数年いる私にも、はたして香山氏の言うようなことが「出版界の常識」かどうかは判りません。ここは香山氏の〝挑発〟に乗って申し上げますが、鈴木さん、どうされますか? 鈴木さんが「版権引き上げ」や絶版を希望されるのなら、それもよし、私に異存はございません(もし鈴木さんが版権引き上げや絶版を希望される場合、香山氏が言うように「新たな版元の紹介や手続きなどすべて」をやるのが前か後かは別として事務処理はきちんと行わせていただく所存です)。

長い手紙になりました。これでも自分では整理して書き連ねたつもりですが、感情が入り乱れている箇所や、内容が繰り返されている箇所もあるやもしれません。30数年の重みは、思った以上に肩にのしかかり堪えるものです。

いろんなことが過りました。時に感傷的にもなりました。鈴木さんとリンチ事件に対する構え方や目指す方向性が決定的に違ってしまいました。私はあくまでもリンチ事件の真相究明と被害者M君支援を継続しますが、鈴木さんは、そうした私(たち)と対立する「のりこえねっと」共同代表を継続されるようですから、やむをえません、喧嘩別れではありませんが、ここは袂を分かち、各々信じる道を進みましょう。

鹿砦社代表 松岡利康

『人権と暴力の深層』カウンター内大学院生リンチ事件真相究明、偽善者との闘い(紙の爆弾2017年6月号増刊)694円+税 ※本広告クリックでamazonへ繋がります。
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「のりこえねっと」共同代表の鈴木邦男に言論界からの「引退」を勧告する

 
 

  

 

この人は「聞き手」として、相当に秀逸な能力を発揮する。右であろうが、左であろうが、少々脱輪している人が対象であろうが、必ずその人の見るべき点や、他者にはない個性を見つけ出し、それを展開してゆきながら話を盛り上げる。「すごいなーと思ったんですよ」、この人のインタビューを読んで(聞いて)いると必ずこのセリフが何度かは発せられる。現在の彼を言い現すのであれば「稀代の名インタビュアー」となろうか。『紙の爆弾』に連載されている「ニッポン越境問答」でも毎号「インタビュー力」が発揮され、登場する人物の個性を際立たせる、「聞き手」の妙を毎号披露してくれている。

◆「何かの間違いじゃないか」……

鈴木邦男と松岡の付き合いは30年以上になるという。しかし「M君リンチ」事件をめぐり、加害者側に立ちリンチ事件隠蔽のリーリングリーダー「のりこえねっと」の共同代表である鈴木と「M君」支援を続ける松岡の間には亀裂が生じる。

ことの発端は『ヘイトと暴力の連鎖』に次ぎ出版された『反差別と暴力の正体』で著名人や関係者40名に「質問状」を送ったのであるが、その40名に「のりこえねっと」共同代表の鈴木が含まれていたことに起因する。松岡を筆頭とする取材班は、長年の付き合いもあり、松岡はじめ多くの取材班がその生きざまに敬意を払っていた鈴木からは、当然回答がもらえるもと考えていた。ところが締め切り期限を過ぎても鈴木からは何の連絡もない。

「何かの間違いじゃないか」……そう考えた鹿砦社の社員は、鈴木に最も親しい人物を通じて、回答の督促を試みようやく回答を得るが、松岡は「私は鈴木の著作を多数、原稿整理から最終校正までやってきたので、経験的にも、力を入れて書いているか、いやいやながら書いているかぐらいわかる」(『反差別と暴力の正体』)と表現する通り、惨憺たる内容であった。私も直接目にしたが、ミミズが情けなく這っているような文字に、強い意志はかけらも感じられなかった。

◆あなたたちの主張は安倍政権により現実化されているではないか

話はやや脱線するが松岡と鈴木の親交が始まったのは1980年代前半、まだ鈴木が「行動右翼」、「新右翼の若き理論家」として活動していた頃だ。多くの出版社からどんどん著作(共著も含め)を出せる今と違い、当時は鹿砦社(あるいは関係会社のエスエル出版会)以外に鈴木の著作を出す出版社はほとんどなかった。今でも鈴木の著作は累計で鹿砦社が最も多いという。機関紙『レコンキスタ』の縮刷版2巻(1号~200号)も出しているという。学生時代はバリバリの新左翼活動家だった松岡が、新右翼、行動右翼の著作を数多く出すほど松岡の思想的柔軟さ(松岡本人は「いい加減」だからだと言うが)だからだろうが、この松岡の気持ちを鈴木は思い知るべきだろう。

私は当時「一水会」を知ってはいたが、彼らの主張に惹かれる部分はほとんどなかった。後年米国がイラクに侵略を行う直前に「イラク戦争反対」を表明した時には「右翼にもなかなか腹の座った連中が居るものだ」と感心した記憶はあるけれど、元から右翼には散々な物理的、精神的被害を受けていた私としては「一水会」や鈴木邦男に関心を抱くことはなかった。

いや、正直に言えばむしろ逆だ。松岡と鈴木が出会った1980年代前半は、バブルの走りの時期であったと同時に、当時の首相中曽根が「臨調」を立ち上げ、国鉄解体、総評・社会党解体に本腰で乗り出した時期でもあった。あの時代にその行く末(つまり解釈改憲から秘密保護法、共謀罪が整うファシズム国家の再来、2017年の現実)を明確に予見できた人間は多くはなかっただろう。

 
 

だが、少なくとも当時私の目には日の丸を掲げ、天皇を過剰に崇拝し、靖国神社に参拝する「右翼」はそれが大日本愛国党であれ、一水会であれ「敵」以外の何物でもなかった。見よ! 彼らの主張は予想以上の成果で安倍により結実させられているではないか。戦後の民間右翼の主張をほぼ包含する形で、安倍政権はどんどん治安立法を成立させ、解釈改憲により集団的自衛権までを認めさせ、日本国憲法は実質的に「なきもの」にされた。残るは明文改憲だけだ。

鈴木はその後一水会の代表から離れ、テレビにも登場し、「頭と物わかりの良い」元右翼の論客として活動の幅を広げるが、私が問いたいのは鈴木が80年代に主張していた目標の大筋(対米従属以外)がほぼ言い値で実現された今日、鈴木は当時の主張をどう総括するのか、ということである。今では「リベラル」と称されることもある鈴木だが、あなたたちが80年代に主張していたことが現実化したのだ。そのことに対して鈴木はどう考えるのだろう。

この回答は鈴木本人の見解として聞きたくもあり、また「のりこえねっと」の共同代表としての立場からも是非開陳してもらいたいものだ。そもそも天皇制を崇め奉っていて「君が代は5千回くらい歌ったことがありますよ」という鈴木(今でも天皇制に対する鈴木の敬愛は基本的に変わらないだろう)のような人間が「差別」を扱う団体の呼びかけ人になることから、筋違いなのであり、そんな人間を共同代表に頂く「のりこえねっと」も発足から「勘違い」をしていたのだ。

◆「黒百人組」に乗っ取られた「のりこえねっと」

「のりこえねっと」発足当初の理念や目的に私は異論を感じない。しかし、刺青を入れた暴力集団「男組」を歓迎してしまったあたりから、「のりこえねっと」は反原連から脈々と続く「権力別動隊」(松岡言うところの「黒百人組」)に完全に乗っ取られてしまい、今では野間易通や安田浩一、香山リカらがもっぱら「幹部」ズラをしている。野間、安田の悪質さについてはこれ以上言及する必要もなかろうが、事実をご存知ない方のために敢えて彼らの行状の一部をご紹介しよう。

野間易通は長年ネット掲示板荒らしをしていたらしいが、3・11後どういうわけか、反原連の幹部として登場する。根が「ネット荒らし」で、これといった思想を持っているわけでもない野間だが、ネット上で集団を組織し、意にそぐわぬ人に対しては徹底攻撃を掛けることで悪評が高まる。悪評だけではなく、あまたの誹謗中傷でこれまでにツイッターを何度も凍結されており、それにとどまらず民事裁判でも2回敗訴している。

野間のツイッターを見れば人格を理解するのに5分とかからない。非常に高慢であり、傲慢であり、卑劣かつ下品な人間だ。その野間と鈴木は懇意なのだ。先の「質問状」に鈴木は「野間氏と『ヘイトと暴力』について対談して僕の疑問をみつけたいと思います。『紙の爆弾』でやれたらと思います。野間氏も承知しています」と書いて寄越している。松岡がこの「回答」を見てどれほど憤慨し、あるいは落胆したかは想像に難くないし、鈴木との長年の付き合いからして松岡の心中は察するにあまりある。いや、松岡だけではない。私も鈴木の「トボケぶり」に「とうとうここまで来たか」と末期症状を実感した。

◆鈴木邦男さん、あなたの言説は完全に正当性を失っている

再度昔の話に戻るが、私は松岡と違い右翼(新右翼)に関心を持った経験がない。彼らは常に目前の敵であり、私は何度か身体的に暴力も振るわれ、「M君」ほどではないにしても集団暴行を受けたこともある。一水会はそうではないかもしれないが、広く見れば右翼団体を出自とする鈴木が野間と仲良くなり「野間氏と『ヘイトと暴力』について対談して僕の疑問をみつけたいと思います」という。

鈴木よ、あなたには『ヘイトと暴力の連鎖』を献本しているだろう。読書家の鈴木のことだから、あんな薄い本くらい数十分で読めたはずだ。それでも「僕の疑問を見つけたい」? 疑問はこれから見つけるのか?そのために「M君リンチ事件二次加害者代表」の野間と『紙の爆弾』で対談させろだと?

私はあなたに尊敬の念や崇拝の気持ちを持ったことがないので、それらの気持ちを持ち苦しんでいる人になりかわり、進言する。鈴木邦男さん、あなたの言説は完全に正当性を失っている。加害者に加担している事実にすら気が付かない。「のりこえねっと」はもはや「反差別」を標榜していても「リンチ事件」隠ぺいにかなりの力を注いでいる許しがたい団体だと私は断じる。そしてあなたはこの問題に関しては完全に「ボケている!」。

「のりこえねっと」の共同代表の辛淑玉は自身のフェースブックに民事訴訟が始まる前で裁判所が介在していないのに「裁判所が勧めた和解を被害者(M君)が拒否」したと、全く現実にあり得ないことを平然と書き込みリンチ被害者「M君」に筆舌に尽くしがたい攻撃を加えている。あなたはあなたで野間との対談を『紙の爆弾』でさせろという。
  
  

 
 

  
◆鈴木邦男という「幻想」──「物わかりがよいこと」と「無節操」は同義ではない

6月12日の鈴木のブログでは、あろうことか、被害者M君へのセカンドリンチを主導的に行っている金明秀の写真を、これみよがしに掲載している。これには松岡も被害者M君も驚きショックを受けた。金明秀がどのようなことをやってきたのかは、鈴木にも送ってある3冊の本を見れば判るだろうに何の配慮もないのか!? 自分たちが何を発言し、何をやっているのかわかっているのか。

鈴木邦男「幻想」など昔から「幻想」だったのであり、その「幻想」がいま、目の前でみすぼらしい醜態をさらしている。そんな加害者の肩を持つ人物に紙面を割いたり、付き合ったりする時間や恩義がどこにある。取材班の田所敏夫は昨年、この「デジタル鹿砦社通信」で「辛淑玉さんへの決別状」(『反差別と暴力の正体』に再録)を書いた。その後の辛の言動を見るにつけ、その判断は間違ってはいなかったと取材班一同感じている。

松岡は今でも逡巡している。それは鈴木との長く濃密な30年以上の付き合いがあるからだ。私に松岡の苦悶がすべて理解できるとは言わないが、この苦悶の理由を作り出した鈴木の変節(あるいは本質の発露)を満身の怒りで糾弾する。「物わかりがよく誰とでも話ができること」と「無節操」は同義ではない。現在の鈴木はことの正邪の基本もわからない「無節操」に成り下がっている。

鈴木邦男よ、言論界から引退せよ。あなたには多くの「信者」がいる。かつての吉本隆明がそうであったように、老醜の戯言は「信者」を落胆させるだけでなく、社会的にも害悪でしかない。野間の如き人間の本質を見抜けぬようでは、鈴木はすでにその域に達している。松岡の逡巡と苦悶はいつまで続くのか。松岡が〝重大な決断〟を下す時が来るのか……。

 
(鹿砦社特別取材班A生)
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ちょっと待て! 李信恵

  
きょう6月19日は李信恵が在特会と元会長を訴えた裁判の控訴審判決が大阪高裁で言い渡される。訴訟の内容には詳しくないが、在特会は表現するのも憚られる滅茶苦茶な差別をやりたい放題行っていたのだから、おそらく高裁でも一審に引き続き李信恵の勝訴が予想される。それは結構なことなので、われわれもそのような判決に異存はない。

さらに22日には「保守速報」を訴えた裁判の弁論(本人尋問)が大阪地裁で開かれる。

◆李信恵は「M君リンチ事件」裁判の「被告」である

しかし、あらためて強調しておかなければならない。◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
[※上記◇箇所の文字は、裁判所の命で削除しました。(鹿砦社)]
この集団リンチの凄惨さはリンチ直後のM君の顔写真が象徴している。

2014年12月に起きたリンチ事件直後のM君の顔)

しかし鹿砦社以外のメディアはこの事実を報じない。メディアのみなさん、この写真を見て何も感じないのか!? そうであれば「ジャーナリスト」をやめたほうがいいだろう。われわれは陰謀論者では全くないが、先日このコラムでお伝えしたように「天下の朝日新聞」が社説で李信恵と、「M君リンチ事件」隠蔽の主犯格で、「M君」が5名を訴えた裁判では被告側に証拠を提出している「コリアNGOセンター」を同時に取り上げた現象には、偶然以外の何かを感じずにはいられない。

◆李信恵は「差別と闘う」ヒロインなのか?

そればかりではない。『反差別と暴力の正体』に電話取材で登場した「コリアNGOセンター」事務局長の金光敏が最近頻繁に新聞紙上に登場している。

金光敏「コリアNGOセンター」事務局長のコメント(2017年6月15日付朝日新聞)
 
 

  
6月15日には朝日新聞に、6月17日には毎日新聞地方版にコラムを寄せている。

当の李信恵は東京新聞に共謀罪のコメントを寄せたと自満たっぷりにツイッターに書き込んでいる。

李信恵の6月16日付ツイッターより

李信恵の『鶴橋安寧』を出版した影書房はツイッターで同書をしきりに宣伝している。これは明らかなプロパガンダであり判決日への注目を喚起するための情報戦略なのだろう。

きょうの判決後の記者会見には多くの報道陣が集まることだろう。常識的に言えば勝訴だろうから李をはじめとして、弁護士の上瀧浩子や金光敏も記者会見に同席し、コメントを発するのだろう。李信恵は「差別と闘う」ヒロインとしてのみ賞賛を受け、記者から「ところでこの裁判ではありませんが、李さんは民事訴訟の被告になっています。その件はどうお考えになりますか?」などという質問は発せられることはないだろう。

◆産経や読売も報じないM君リンチ事件

もうここまで来たので、書かざるを得まい。李信恵を取り巻く周囲には密議があるのか、あるいは指示系統があるのか明確ではないが、あからさまな「同意」が成立している。それは新聞、テレビ、週刊誌からミニコミ新聞メディアまで含めてである。この奇異な現象はある種「民間の言論統制」といっても過言ではないほどの力を持っている。

相当な実力者が背後にいるのか、そうでなければマスコミ各社暗黙の「忖度」によるものか。李に対する批判は一切行わない、さらには彼女を「差別と闘うヒロイン」として持ち上げるとの同意スクラムが出来上がっている。

右左は関係ない。読売は言うに及ばず、普段腰をぬかすような差別原稿を載せる産経新聞ですらがリンチ事件を報じない。極めて異常な言論統制が幅を利かせている。その周辺にうろつく「工作員」の面々については取材班もほぼ概要を掴んだ。業界大物からの内々の情報提供もある。

◆「事実を変える」ことは絶対に不可能だ

しかしである。ここまでのっぴきならない「民間の言論統制」を目にすることはそうそうあることではない。芸能人のスキャンダルであれば、われ先に!と飛びつくマスコミが、「被害者M君」への情報探りには接近してくるものの、一切の報道を行わない。

きょうの夕刻のテレビニュースや明日の朝刊各紙では判決についてのニュースが山ほど流されるだろう。その濁流を目にして「M君リンチ事件」自体を無かったものにしよう、と企図する李をはじめとする、エセ「反差別者」や「しばき隊」は狂喜乱舞することだろう。

たぶんそのようにことは進んでいく。しかし、われわれは「歴史修正主義者」を断じて許さない。それは国と国との間であっても、民族間であっても、個人間であっても同様だ。些細な諍いなら目くじらを立てることはないけれども、鼻骨骨折をするほど殴る蹴るをされた「被害者M君」に対してのネット上の誹謗中傷と、マスコミにおける李の持ち上げられ方の不平等が目に余る。

「情報操作」や「印象操作」はいくらか可能かもしれないが、「事実を変える」ことは絶対に不可能なのだ。ネットについては取材班もかなりの情報収集メンバーを獲得している。一瞬の書き込みでそれを消去しても、ターゲットのツイッターやフェイスブックは24時間監視している。
  
  
  
  

 
 

  
◆「安寧通信」0号に登場した人物の名前を列挙してみてわかること

李信恵が在特会を訴えたことに反論はない。われわれは1ミリも在特会の差別言辞を支持しない。しかし同時に「M君リンチ事件」の取材を始めるやいなや、「どうしてこの事件に興味を持つのかわからない。運動に分断を持ち込むだけ」と電話口で語った安田浩一の意図がだんだんわかってきた。

取材班の手元には李信恵の裁判を支援する会が発行した「安寧通信」の0号から10号までがある。0号に登場する人物の名前を列挙すると実に興味深い事実が浮き上がる。「M君リンチ事件」で隠蔽のための「説明テンプレ」を作成したITOKENこと伊藤健一郎、「M君リンチ事件」の被告(反訴原告)であり、大阪地裁でM君に「お前メンチ切ってんじゃねーよ」とチンピラ口調で絡んできた伊藤大介、前述の金光敏。

金明秀関西学院大学教授の2016年5月19日付ツイッターより

こういう書き込みをして、いまだにM君に謝罪すらしない金明秀、野間易通、「M君リンチ事件」で罰金刑を受けた凡、上瀧浩子、岸政彦、安田浩一、西岡研介、辛淑玉、高橋直輝こと添田充啓らだ。このほか数人が寄稿しているが、上記の寄稿者に「リンチ事件」の直接加害者と、二次加害に積極的に加担した者、また隠蔽に奔走した中心人物が見事に揃っている。脇役だが写真は秋山理央でイラストは岸政彦の配偶者、齋藤直子だ。

「安寧通信」0号は2014年10月7日発行だが、その時点で後に人の道を外れた行動に奔走する連中が見事に名前を連ねていることが証明される。その後8号には香山リカが「利己的な私の自分勝手な闘い」、9号には参議院議員有田芳生が「高貴な激情」を寄せている。いずれも彼ら彼女らの行動を知る者からすると読むに堪えないが、この件については後日あらためてコメントする

◆李信恵は嘘つきだ

李信恵は嘘つきだ。再度その証拠を提示する。本来あなたは公的な場所に立ってはならない人だと自分で宣言している。もう一度自分の書いた文章を見直してみることだ。屁理屈は通らない。事実を事実のまま見る。そのことを放棄するものは報道の世界にいる資格のない者だ。

M君リンチ事件に対する李信恵の謝罪文
 
 
M君リンチ事件に対する李信恵の謝罪文
M君リンチ事件に対する李信恵の謝罪文
M君リンチ事件に対する李信恵の謝罪文
 
 
M君リンチ事件に対する李信恵の謝罪文
M君リンチ事件に対する李信恵の謝罪文
M君リンチ事件に対する李信恵の謝罪文
(鹿砦社特別取材班)
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デジタル鹿砦社通信のツイッターが一時凍結されていた!

 
 

  
毎日のように本コラム、並びにデジタル鹿砦社通信のツイッターアカウントをご覧頂いただいている読者の皆さんは数日前に、このアカウントが不思議な挙動をしていることにお気づきになっただろうか。

実はこのアカウントは一時的にツイッター社から凍結されていたのだ。

 

◆一時凍結された理由は明らかだ

何が原因で一時的とはいえ、凍結されるはめになったのか。理由は明らかだろう。6月8日に本コラムで掲載した「鹿砦社特別取材班は孤軍奮闘する香山リカに敬意を払う!」に対して香山が「私の自宅ってどこ? 本宅とか別宅とか海外拠点とか色々あるのでねー。どこに送付したか、ちょっと書いてみては?」と送付先を書き込むことを求めてきたので、それに応じて書籍の送付先を書き込んだまでである。

ここは再度強調しておくが、香山は著名な精神科医であり、立教大学教授。そして昨今はネットのみならず各種メディアに頻繁に登場する「言論人」である。つまり香山は公人とまでは言えずとも準公人であることは間違いない。その香山から「どこに送付したのか、ちょっと書いてみては?」と依頼を受け、それに誠実に答えたことが、「Twitterルール違反」だったというのだ。

常々われわれ取材班は「SNSを主戦場にしない」、「Twitterは私企業に過ぎないからその判断を過剰に信じることは危険である」ことを認識して発信を行ってきた。よって今回の一時凍結劇にも、さほどの驚きはない。

◆「おとり捜査」かのような展開

しかし、である。「書いてみては?」と求められて「書いたら」それが凍結の原因とされるのは「おとり捜査」か「罠(わな)」のような展開だ。軽挙妄動の過ぎる香山であるので、最低限の「対応」をしたまでである。しかし、その後メールをよこした香山の代理人である神原元弁護士の対応は見事に素早かった。ここに再度、神原と松岡のやり取りをご覧いただこう。

 
 
 

神原は「氏名、住所、電話番号及び(中略)これが開示されると、当該個人に心理的な負担や不安を覚えさせるなどのため、みだりに開示されることを欲しないであろう情報」(東京高裁平成14年1月16日判決)の判例に依拠し「当該ツイートを直ちに削除されるようお願いします」と依頼しているが、この判例では「みだりに開示されることを欲しない」との前提が明示されている。

香山はどうであろうか。「どこに送付したのか、ちょっと書いてみては?」この表現は、むしろ「開示を求める意思の表明」と解釈されるのが通常の言語感覚ではないだろうか。われわれの日本語感覚はおかしいだろうか?

鹿砦社は過去幾多の訴訟を経験している。原告、被告双方の立場から民事事件は数えきれないほどの裁判を闘ってきた。名誉毀損で松岡は被告人にされ192日も勾留されたこともある。それらの経験から、われわれには、みすみす敗訴するような名誉毀損などは避ける本能が身についている(しかし、許すことのできない社会的大罪者の場合はこの限りではない)。当該の香山には申し訳ないが、香山リカは鹿砦社がそこまでのリスクを冒すほどの「大物」ではない。

コラムを書けば「ああだの、こうだの」とツイッターで揶揄してくるので、それに応じた対処をしただけのことだ。重ねて断言するが香山が求めなければ、献本の送付先を公開する予定など全くなかった。1日ツイッターが凍結されたことはいい迷惑ではあったが、上記画像にある「無量光」という人物をはじめ、多くのしばき隊コマンドが、ツイッター社に一方的な通報を行ったのであろう。

◆予期せぬ副産物──神原元弁護士には感謝する

おかげで、予期せぬ副産物をわれわれは入手することができた。それは神原弁護士が松岡に寄せたメール文章の中に鍵がある。この判例を援用すれば「氏名」も「みだりに開示されることを欲しない情報」だという。これはツイッター社のルールではなく法律の解釈だ。ならばリンチ被害者「M君」が猛烈な個人情報さらしにあった件にも同様にこの判例は適用されるだろう。詳細は法廷闘争の方針上述べないが、神原元弁護士には貴重な情報を提供してくれたことを感謝する。

最後に。鹿砦社並びに、取材班はツールとしてツイッターを利用しているが、それに寄りかかっているわけではない。ツイッターが生まれるはるか昔から鹿砦社は出版活動を行っていたのであって、1日中スマートフォンやパソコンに向かっていないと「不安」を感じる精神状態とわれわれは無縁だ。

議論は正々堂々と交そうではないか。われわれは引き続き原則的に闘うことを再度宣言する。

(鹿砦社特別取材班)
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