副流煙被害を診察する98人の医療関係者に問い合わせ、「受動喫煙症」の病名を付した診断書を交付しない医師が約37% 黒薮哲哉

「受動喫煙症」とは、第三者による煙草の煙によって引き起こさせる化学物質過敏症のことである。副流煙を避けるために、レストランなど公共の場で分煙措置が取られているのは周知の事実である。マンションの掲示板にも、煙草の煙に配慮するように注意書きが貼り出されていることが多い。「受動喫煙症」という言葉が、日常生活の中に入り込んできたのである。

しかし、ほとんど知られていないが、「受動喫煙症」という病名は、実は日本禁煙学会(作田学理事長)が独自に命名した病名で、国際疾病分類(ICD10)に含まれていない。公式には認められている病気ではない。従って、保険請求の対象にはならない。「そんな病気は存在しない」と言う医師も少なくない。

が、それにもかかわらず横浜副流煙裁判にみられるように、2017年に「受動喫煙症」と付された診断書を根拠とした高額訴訟が提起された。副流煙の被害者とされる家族が、隣人に対して「受動喫煙症」を根拠に4518万円の金銭支払いを請求したのである。請求は棄却された。

◎【関連記事】煙草を喫って4500万円、不当訴訟に対して「えん罪」被害者が損害賠償訴訟の提訴を表明、「スラップ訴訟と禁煙ファシズムに歯止めをかけたい」
 

日本禁煙学会の医師らは、この「受動喫煙症」についてどのように考えているのだろうか。患者が、「受動喫煙症」を立証する診断書を交付するように求めてきたとき、どう対処しているかを客観的に調査するために、筆者ら横浜副流煙裁判を取材してきた4人(黒薮哲哉、藤井敦子ら)は、98人の医師(若干看護士も含む)に問い合わせてみた。

98人の医師は、「受動喫煙症の診断可能な医療機関」(日本禁煙学会のウェブサイト)に登録されている。(2021年10月18日現在)

問い合わせは次の3点である。

①受動喫煙症の診断書を交付しているか?

②診断書を裁判に提出する方針はあるか?

③診断にあたっては、検査を実施するか?

ただし口頭でのやり取りなので、②や③の問い合わせに辿り着かなかった場合や、話が大きく逸れてしまった場合もある。

◆受動喫煙症の診断書を交付しているか?

まず、質問1「受動喫煙症の診断書を交付しているか」についての調査結果を公表しよう。

①受動喫煙症の診断書を交付するか?

約37%の医師が、「受動喫煙症」の病名を付した診断書を交付しないと回答した。

「交付しない」と答えた医師のコメントは、「受動喫煙症」の病名を付した診断書は、「裁判に使えない」からという趣旨のものが複数あった。「受動喫煙症」の証明が医学的に困難と答えた医師もいた。他に、「診断書を書いても法的拘束力がない」、「横浜副流煙裁判を機に、もう書かない」というコメントもあった。

◆診断書を裁判に提出する方針はあるか?

質問①で61人の医師が「受動喫煙症」という病名の診断書を交付すると答えた。これらの医師を対象に、診断書を裁判に提出する方針はあるのか否かを問うた。結果は次の通りだった。

②診断書を裁判に提出する方針はあるか?

「提出方針はない」と答えた13人の医師のうち、5人は、企業を被告とする裁判であれば、交付に応じると回答した。

◆診断にあたっては、検査を実施するか?

質問③は、「診断にあたっては、検査を実施するか」である。次のような結果になった。

③診断にあたっては、検査を実施するか?

診断書を作成するにあたって、「検査を実施する」と答えた医師はわずか12人だった。検査内容は、尿コチニン検査・呼気検査、spO2の測定などである。

われわれが③の質問を用意したのは、横浜副流煙裁判の判決が、「客観的証拠がなくとも患者の申告だけで受動喫煙症と診断してかまわない」とする日本禁煙学会の診断基準を批判したからである。実際、日本禁煙学会の作田学理事長や松崎道幸理事らは、横浜副流煙裁判の中で患者の問診のみによって受動喫煙症と診断を下したも問題ないと主張した。

検査をしない理由として、「高額だから」、「受動喫煙直後に検査しなければならないから」、「検査をして値が出ないことも多いから」、「客観的指標がないから」などのコメントがあった。これらは「検査は必要だが難しい」という見解といえるだろう。

◆「客観的証拠が出せないので、検査はしていない」

アンケート開始当初には④「オンライン、或いは委任状での診断書作成は可能か?」という質問事項を設けていた。この質問を設定したのは、横浜副流煙裁判の中で作田医師らが、副流煙による健康被害を診察する際に、オンラインによる診察・診断や委任状による診察・診断も認められるべきだという主張を展開したからである。

この質問について、ほとんどの医療機関は、「とんでもない」、「あり得ない」と強く否定した。そこでわれわれは途中でこの質問項目を外した。

この調査を通じて、医療関係者から多くの興味深い話を聞くことが出来た。そのいくつかを紹介しよう。

「(受動喫煙症の)客観的指標がないのでタバコが(体調不良の)原因とは(診断書に)書けない。症状しか書けない」

「メールで(患者の)状況を確認、メールでやりとりして診断内容を決める」

「受動喫煙症の裁判に必要なシビアな資料を作るのは無理、(裁判をしても)絶対負ける」

「(受動喫煙症の)客観的証拠が出せないので、検査はしていない」

「(副流煙についての)問い合わせが多くなって、本当に受動喫煙かどうか分からないので、書くのが難しい」

「病気には元々の素因もあるので、喫煙者の煙が(体調不良の)原因だと断定にはいかない」

「(患者さんに)精神的に問題がある場合は、そちらを紹介する」

「裁判以前に(副流煙問題を)解決するのが一番いいわけですね、今はそういう事例を積み重ねる段階。診断書を使わずに、内容証明を弁護士の名前で送ったりとか」

「問診だけだったら、そりゃ(診断に)客観性がないわな。コチニン検査は絶対要だけどやってくれる場所が検討つかない」

「近隣の場合は空気が分散するので(副流煙の)立証できない。職場の隣の人なら別」

「大学の先生に頼んで(受動喫煙症の)検査するならよいが、そんな厳密な診断書はクリニックの医師は書けないよ」

「(副流煙による)健康被害の医学的証明は出来ない。現場に行けないから」

問い合わせを通じて医療関係者の熱心な姿勢を感じた。しかし、診断書を喫煙者の個人糾弾に使うことを前提としている印象を与えた医師もいた。

▼黒薮哲哉(くろやぶ・てつや)
ジャーナリスト。著書に、『「押し紙」という新聞のタブー』(宝島新書)、『ルポ 最後の公害、電磁波に苦しむ人々 携帯基地局の放射線』(花伝社)、『名医の追放-滋賀医科大病院事件の記録』(緑風出版)、他。
◎メディア黒書:http://www.kokusyo.jp/
◎twitter https://twitter.com/kuroyabu

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《NO NUKES voice》11月9日大阪地検前緊急抗議行動! 関電旧経営陣を不起訴にした大阪地裁を許さない! 検察審査会に訴え闘い続けよう! 尾崎美代子

関西電力(以下、関電)の旧経営陣の八木誠前会長、森詳介元会長ら9人の金品受領問題、報酬闇補填問題(※)などすべての容疑について、11月9日、大阪地検特捜部は「嫌疑不十分」で不起訴とした。旧経営陣らは事情聴取で「(金品は)預かり保管していた」と主張、一方、渡した側の森山栄治氏(元高浜町助役)が死去していることから、会社法の収賄罪の立証は困難とした。翌日10日正午より、「関電の原発マネー不正還流を告発する会」のよびかけで、地検前での緊急抗議行動が行われた。

※「報酬闇補填問題とは」ー関電は3・11後、電気料金の値上げに伴い、役員報酬を減額していたが、役員の退任後、相談役などに就かせ報酬を補填していた。

大阪地検への緊急抗議行動に集まった人たち

◆このような不起訴決定は許すことは出来ない
 末田一秀さん(告発する会共同世話人/はんげんぱつ新聞編集委員)

冒頭、はんげんぱつ新聞編集委員で「関電の原発マネー不正還流を告発する会」共同世話人の末田一秀さんから経過報告がなされた。 

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昨日、大阪地検の担当検事から、弁護団の大河弁護士に不起訴にした、理由は嫌疑不十分だという連絡がありました。夕方五時からWEBで記者会見を行い、「不当だ!」とマスコミにも訴えました。今日のマスコミ報道を見ると、地検の特捜部長が「これは社会的に注目を集めている事件だから」ということで記者会見し、50分にわたって説明を行ったとのことです。

私たちはいくつかの事件について告発していますが、結局、被告発人である関電旧経営陣の言い分を認めたとなっているみたいです。(旧経営陣の)「金は預かっていただけ」(高浜町元助役サイドに)「便宜供与はしていない」、そして「闇補填ではなく、実態的な仕事があった」と被告発人は、任意の事情聴取で受け答えていて、私たちが起こしている株主代表訴訟でもそのような主張をしているわけですが、それを「突き崩せなかった」という特捜部長の説明であったという記事になっています。

中でも、金品を受け取っていたことよりも、役員の給与の闇補填に関しては、非常に明白な事実なので、それに関しては、産経新聞は「きわめてグレーだ」と警察関係者が述べていると書いているし、京都新聞は「金品授受は厳しいので、そっちは見切りをつけて、闇補填に関して集中的な捜査を続けてきた」と書いてあります。闇補填に関しては、なぜ不起訴になるか理解できないが、業務の実態がなかったと、裁判で証明することは難しいと判断したとあります。大阪国税局は税務調査に入ってきちんと調査して「これは悪質な所得隠しだ」と認めたわけです。それに対して大阪地検は一度も強制捜査をしなかったということですから、地検は嫌疑不十分で立証できなかったということでいうと、彼らは無能なのかと問いたいと思います。

考えてみると、4月28日に毎日新聞が、不起訴の方針を固めたと報道しました。それから何か月か経っていますが、この間、起訴すべきかどうかで、検察のなかでも綱引きがあったということです。ほかにも、この事件を不起訴にすると、市民の信頼を得られないと述べる検察内部関係者もいたという記事もあります。本当に起訴か不起訴かの綱引きがあったなかで、大阪地検は上級検察庁と協議をして、結果的に不起訴になってしまった。そうなったら、検察審議会に訴えるぞと前から私たちは言っていますから、それに耐えられるように、捜査を尽くした形を作りたかったのだと思われます。どちらにしても、このような不起訴決定は許すことは出来ないので、ここで抗議の声を上げていきます。

末田一秀さん(「関電の原発マネー不正還流を告発する会」共同世話人/はんげんぱつ新聞編集委員)

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◆「金品を預かっていただけだ」では許されない
 長澤啓行さん(大阪府立大名誉教授/若狭ネット資料室長)

大阪府立大名誉教授で若狭ネット資料室長の長澤啓行さんからのアピール。

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長澤啓行さん(大阪府立大名誉教授/若狭ネット資料室長)

 今回、大阪地検の姿勢が変わるではという期待がありました。問題は、関電の原発利権構造が変わったのかどうか。変わってないんです。今朝の朝日新聞で暴露されていましたが、贈収賄の原資を工面した「吉田開発」(福井県高浜町)が、関電の特重施設、いわゆるテロ対策施設の敷地造成などで出た残土を山に捨てにいき、そこでトラブって、受注した金額で賄えないということになったが、その賠償金を誰が払ったか?関電が発注額に上乗せして払っているんですよ。

これはあの、贈収賄の発注額に毒まんじゅうを上乗せして、贈収賄資金に回った、あの構造とまったく一緒じゃありませんか。このような利権構造が、地検が不起訴をしたとたんに暴かれてくる。これは一体どうなっているんだ! 大阪地検はこのような実態を、目の当たりにして、今回の不起訴にして、関電の利権構造が少しでも変わるのか? これを助長するのではないか。それをはっきり自覚して、今回の不起訴を撤回すべきではないかと思います。

しかし、我々が進むべき道は、東電を起訴したあの過程を関電に対してもやるしかないということです。東電は、地震調査研究推進本部の津波評価について、「これは信頼性がない」と御用学者にいわせた。それを地震学会の多数の意見であるかのようにやった。これで東京地検は不起訴にした。ところが、それを市民が許さなかった。2回の検察審査会をやって、起訴にもちこんだ。その結果、東電の幹部は無罪になりましたが、裁判の過程で、彼らが津波の危険性を無視し、津波対策を行わなかったという具体的な証拠が積みあげられた。とてもこの積み上げられた証拠を見直せば、無罪は出せないだろうと思った。ところが悪徳裁判官は無罪にしてしまった。そこで、今、控訴審に入っています。控訴審では、明らかにされた証拠を再度積みあげて、有罪にもっていくのではないかと期待されます。

関電もおなじです。関電は贈収賄をやった、受けた、収賄された金は回ったのでなく「預かっただけ」という。こんなことが許されるなら、贈収賄事件はすべて起訴できない。贈収賄をやった人は「お金を預かっていただけだ」では許されない。このような事態を我々は断固として許すことはできない。市民の力で地検の不当な決定というものを、具体的に裁判に持ち込み追及し、暴いていかなければならにだろうと思います。そうしなければ、関電の利権構造を潰すことはできない。これを潰すことが、私たちの今の使命ではないかとおもいます。今度の不当決定に屈せず、検察審査会を含めて闘い、関電の利権構造を潰すまで闘っていきましょう。

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◆再び末田さんの訴え

最後に再び末田さんがマイクを握り、関電と大阪地検のズブズブの関係を明らかにし、今後、検察審査会に申し立てを行って闘おうと訴えられた。

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「金品は預かっていただけ。そして便利供与はしなかった」という、被告発人の主張を指南したのは、元大阪高検検事長の佐々木茂夫です。2018年に国税局が査察に入ったということを聞いたときに、関電は佐々木を呼んできて、検察対策をやった。そしてそういう主張に整理された。当時事件が発覚したとき、八木会長が記者会見で思わず「便利供与はなかったと整理されています」と答えています。まさに佐々木の指導によって「整理をした」。そして検察庁OB佐々木の忖度によって、大阪地検は不起訴にすることしかできなかった。そういう構造です。佐々木は今、関電の取締役です。大阪地検は関電への天下りを今後も続けていきたい。関電とズブズブの関係の大阪地検と私たちは思っています。告発人の方には、検察審査会への手続きを弁護士にお願いする委任状がメールか郵便で送付されます。署名捺印して告発する会事務局まで郵送してください。よろしくお願いします。

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最後は大阪地検へ向かってシュプレヒコールをあげて抗議行動を終えた。大阪地検とずぶずぶの関係で利権を漁り続ける関電を今後も徹底的に追及していこう!

 

▼尾崎美代子(おざき みよこ)「西成青い空カンパ」
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを「西成青い空カンパ」として主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
◎著者ツイッター(はなままさん)https://twitter.com/hanamama58

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「デジタル化」を口実に情報をアメリカに売り渡し、権力を乱用するのか ── 平壌からの手紙 LOVE LETTER FROM PYONGYANG〈4〉 小林蓮実

秋の深まる平壌から、届くメール。前回の平壌からの手紙では、よど号メンバー・魚本公博さんから届いた「2つの『8・15』」というタイトルで敗戦とタリバンのカブール制圧とを比較した論考と、それに関する筆者からの解説とを投稿した。彼らとの「往復メール書簡」第4回目は、第2回目で取り上げた「デジタル庁発足の背後に潜む巨大な問題」の続編を取り上げる。

◆「地域住民主体の自らのためのスーパーシティ建設を」 魚本公博

魚本公博氏。霧の中、銀杏をバックに

今、デジタル化が叫ばれる中、地方では「スーパーシティ構想」が進められています。

このスーパーシティの最大の問題点は、データ主権を放棄し、GAFAなど米国のプラットフォーマーに全面的に依存するところにあります。こうなれば、地域の様々なデータ、住民のデータは米国に握られ、地域、住民はその隷属物になってしまいます。

「すべては救えない」として地方の中核都市にカネ・ヒトを集中し、それを米系外資に委ね、基礎自治体が運営する水道などの運営権を譲渡するコンセッション方式の導入など地方を米国に売り渡すかのような地方政策。そこには、市町村など地域自治体の切り捨て、自治体の企業的運営による自治、住民主権の剥奪を伴い、全国市長会などが「我々を見捨てるのか」と反発していたもの。こうした声を押しつぶす。とりわけ米中新冷戦の中で何としても日本を米国の一部として組み込むことを一挙に進める。それが政府の「スーパーシティ構想」ではないでしょうか。

肝要なことは「データ主権」。しかし、今のような自民党の対米従属政権ではそれを望むべくもない。では、どうするか。

私は、見捨てられる市町村など地域からスーパーシティを作りながらGAFAに依存しないシステム(プラットフォーム)を作り、その輪を横にも上にも広げ、地方全体の標準「都市OS」に育てる。そうしたことができないものかと思っています。建設機材のコマツやスマート農業などでは独自のプラットフォームを使っているようですし、可能だと思うのですが、どうでしょうか。

ここで大事なことは、地域住民主体です。そのためにネット議会やネット政策会議、ネット提言室みたいなものを作る。そして自治体と地域住民が一体となり自らのスーパーシティを自らの力で自らのために建設していく。

小林さんが以前、紹介されていた地方の区長さんがおっしゃる「顔が見える関係」やボランティアの労力を地域の産物で交換する地域通貨などのアイディアも、自らのスーパーシティ建設の中で高度に実現できるのではないでしょうか。さらに言えば、「スーパーシティ構想」では移動、輸送、行政手続きなど10項目での「サービス向上」をうたっていますが、もっと根本的な「地域振興」を目指すべきであり、地産地消、地域循環型経済、水やエネルギーの自給自足なども高度に実現すべきではないでしょうか。

地方の取り組みは、どうなっていますか。現場の声、とくにデジタル技術に明るい、若い人たちの声を是非聞きたいものです。

◆クラウドサービスの提供元、「サイバー局」、そして「デジタル田園都市国家構想」

「スーパーシティ構想」などに関しては、第2回目で触れているので、ご参照いただきたい。

デジタル庁は2021年10月26日、政府と自治体が利用する情報システム基盤「ガバメントクラウド」に、アメリカのAmazonとGoogleのサービスを利用すると発表。契約期間は22年3月までで、来年度の事業者は改めて募集するという。

いっぽう、警察庁は6月、サイバー犯罪やセキュリティ対策を担当する「サイバー局」を設置する計画を公表した。200人規模で、行政機関や防衛関連企業などへのサイバー攻撃の捜査をおこなう。ところが、三菱電機やNECなどに対し、他国からハッキングが相次ぐ。日本のサイバー事業は世界的な評価が低く、人材も法整備も遅れているとされる。

時事通信(8月25日付)の記事によれば、戦前の国家警察による権力乱用などを背景に、1954年に制定された警察法では犯罪警察は都道府県警察が担い、警察庁は指揮監督にとどまるものとされてきたそうだ。そして、サイバー分野を担当する捜査機関もなかったが、ここにきて問題視され、計画がまとまった。

牧島かれん大臣は『AbemaTV』に出演し、ある意味、国内の企業がクラウドサービスを担当するレベルにないが、今後には期待している旨を語っていた。

おそらく国内では、法的な遅れ以上にアメリカや中国のような予算や判断がなかったり、部品の製造現場も海外だったり、また、いわゆる人材を有効に配する土台がなかったりするのだろう。法的な遅れもまた、他の件をみても一概に否定はできない。法整備によって警察や担当部署の権力乱用を許すようになってしまえば、市民がその被害を被る。人権や自由を侵害されかねない。また、人を配することができないことも、他をながめればいつもの偏った人の配置について思わざるを得ない。他の分野をかんがみても、セキュリティを考慮しても、本来は国内で手がけられる形を整えるべきだが、地方からというのはなかなか難しいだろう。ならば政治主導ということが考えられるが、専門家軽視やお友だち優遇で、これもまた希望を持ちにくい。国内にも人材は存在するので、そのような人にリーダーを任せられるような土台が必要だ。

いっぽうで、個人や国家の情報をつかまれることのリスクについて、少なくとも筆者は十分に理解していない。だが、命を受け渡していることになるのかもしれない。このあたりは引き続き関連情報などもあたりつつ、学んでいきたいと思う。

そして、魚本さんが危惧する「データ主権」に思いをはせれば、それをアメリカに渡すために、また権力を拡大するために、法整備や人の育成が不十分であると主張している可能性も否定はできないだろう。

また、牧島氏は「デジタル田園都市国家構想」なども掲げており、「デジタライゼーションで人間中心のデジタル社会を実現することで、経済/生活/幸福のポジティブサイクルを回す一連の政策を「デジタル田園都市国家」構想とし、2030年頃までの主要な国家戦略とすべきである」と主張している。デジタルでヒト・モノ・カネを回す。それが幸福でポジティブだというのだ。

ただし、魚本さんは「地域住民主体」というが、先に触れたように、デジタル化に関しては難しい。また、デジタルをスムーズに活用するには、国内などで一定のルールのもとに運用されなければ、必ずどこかで二度手間三度手間が発生し、そもそもデジタル化が無意味になる。だが、効率化を手放すことが、これまた難しい側面はいろいろあるだろう。

個人的には、プライバシーや人権、自由を優先してもらいながら、現在の複雑で不自由でリスキーな状況は改善すべきだと考えている。このバランスをどのように取るかが問題だ。

だが、デジタル庁では、平井卓也氏がNTTから高額の接待を受けていた問題、民間からの登用の内、非常勤が98%を占めていたことと兼業先の企業との癒着対策の甘さ、マイナンバーカードとマイナポータルのそもそもの問題など、さまざまな事柄が不安視されている。

また、実際に、「機密情報丸見え」「個人情報明け渡し」などの状況について、危機を伝える記事も増えてきた。たとえば11月5日、『COURRIER JAPON』では、「日本人の個人情報が筒抜けになる可能性も 日本の機密情報が『アマゾンから丸見え状態』をデジタル庁はどう考えているのか」というような記事に「日本の技術力の低いセキュリティで怪しい国のアタックで破られる可能性の高いクラウドか、世界有数の技術者のいるセキュリティのクラウドだが米国政府に見られる蓋然性、のどちらが良いか。」というようなコメントがついたり、アメリカ独占・依存状態から脱却しようとするヨーロッパ企業の記事などもある。危機意識を忘れず、1人ひとりが学ばねばならないだろう。

ところで個人的には、平壌・日本人村のみなさんが、日本の報道や支援者からの情報を得て、朝鮮の実情を目の当たりにすることもあるなかで、フラットに、より広く深く考察することには限界があると感じています。ただし、それが新たな気づきを含むことがあると考えています。たとえば今回のような「テーマでも、俯瞰的な視点や、デジタル全般への理解しにくさなどでしょう。また、地方は地方でその日々の現実の中、1人ひとりの取り組みや生活があることは、国内の都会からすら理解しにくいのではないかと最近、感じています。魚本さんにとって、国内や他国に関する何が特にわかりづらいか、また朝鮮の場合にはデジタルの取り入れ方についてどうかを可能な範囲でお伝えいただけますでしょうか(訪朝の際、中国に留学した若い方がデジタル図書館の館長をしていらっしゃいましたが、つながっているのはイントラネットでインターネットにはつながっていなかったかと存じます。また、みなさんもメールのやりとり以外にネットにつながっていません。でも、市民の多くは携帯電話、スマートフォンを活用していたと記憶しています)。

▼小林 蓮実(こばやし・はすみ)
1972年生まれ。フリーライター、編集者。労働・女性・オルタナティブ・環境 アクティビスト。月刊誌『紙の爆弾』12月号巻頭に、「沖縄高江への県外機動隊派遣愛知で全国初の『逆転勝訴』」、本文に「高江・県外からの機動隊派遣は『違法』 沖縄とヤマトの連帯が勝利をもたらす」寄稿

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安倍派の誕生 ── 息づく「院政」という伝統 横山茂彦

自民党の最大派閥清和会は、細田博之が衆院議長に就任することにともない、安倍晋三元総理が会長に就任することになった。安倍派の誕生である。

清和会(清和政策研究会)は岸信介の派閥を源流に、福田赳夫の派閥として田中角栄派(七日会→木曜会)支配の時代には、保守傍流に甘んじてきた。

のちに竹下派(経世会)の分裂によって、森喜朗・三塚博らが合流することで、党内最大派閥となったものだ。衆参議員89人をかかえる最大派閥であるとともに、政策的には党内最右派でもある。

派閥の原理とは「寄らば大樹の陰」であり、党の公認や大臣への近道、選挙資金の提供など、いわばカネとコネである。そのうえで、政治信条が近い者たちが集まる、群れの原理ともいえよう。

そのいっぽうで、わが国にしかない「院政」という政治システムを体現したものでもあるのだ。その「院政」は国会でもメディアからも直接的な批判を受けない、巧妙な政治システムである。


◎[参考動画]安倍元総理が派閥復帰 “安倍派”誕生へ(TBS 2021年11月08日)

◆わが国にしかない政治システム

その巧妙な政治システムは、平安時代の摂関政治に由来するものだ。政治のイロハもわからないうちに帝に即位させられ、壮年期になって摂関家から「操りにくくなった」と判断されるや、若い皇子に譲位させられる。平安初期の帝は、藤原家の操り人形だったのである。

摂関家が帝を操り人形にしておきたかったのは、荘園という権益をまもるためだった。荘園は「公領」である建前のいっぽうで、貴族たちは国司・郡司の不入(ふにゅう)を決め込み、配下の者たちを荘官に任じることで蓄財をしていたのだ。地方の有力者が、開拓した荘園を貴族に寄進し、その荘官となるなることで正当性を得る。寄進領も平安期に増大した。

この不正蓄財は、友人や配下の者たちに特権をあたえ、政治資金として還流させてきた旧安倍政権の構造によく似ている。

◆政治の矢面に立たない政治

荘園に公正な税を課し、あるいは公地公民制を掘り崩す荘園の拡大を阻止したのが、後三条天皇であった。

34歳と、当時では「高齢」で即位した後三条は、荘園整理令で貴族たちに徴税を課した。藤原氏をはじめとする貴族が「記録が残っていないのでわからない」と抗弁すると、天皇は記録荘園券契所を設けて調査をはじめた。

さらには新たに延久宣旨枡を用いて、私升による徴税のごまかしを禁止する。こうして天皇執政の熱意に満ちていた後三条天皇だが、譲位後に四十歳の若さで亡くなってしまう。

後三条天皇を後継した嫡子貞仁親王が、本格的な院政を始めた白河天皇である。帝が退位して院(上皇)となり、院宣という勅命をもって若い帝をあやつる。この院政のメリットは、仙洞御所という役人が立ち入れない場所に逼塞したまま、その意味では政争を起こさないかたちで政治を行ない、身の安全を確保したことであろう。

◆安倍晋三の院政を占う

冒頭に言ったとおり、院政は巧妙な政治システムである。前総理が国会(答弁)に出ることなく、また記者会見を行なうことなく政局をにぎり議会政治を左右する。日本の院政の原型こそ、平安期の上皇という制度だといえよう。

政治権力の源泉は第一に資金力であり、第二に党組織の掌握(総理と幹事長を頂点とした執行部)、そして第三に官僚組織の人脈である。

かつて田中角栄は党外にありながら、多数派閥をカネで掌握することによってキングメーカーとなった。闇将軍、影の総理と呼ばれたものだ。

中選挙区制の金権選挙から、小選挙区制の党の統制力(公認)が強化されたいま、多数派閥の掌握こそが「院政」の力の源泉である。このことを、みずからの長期政権で知り尽くした安倍晋三は、安倍派を形成することで「院政」を敷こうとしているのだ。

◆田中派と同じ道をたどれば

かつて最大派閥の田中派を率いた田中角栄は、総裁選では自分の派閥から総裁候補を出さず、大平正芳、鈴木善幸、中曽根康弘らを順番に首相に据えることで、院政を敷いた。これによって派内の不満がたまり、最後は子分だった竹下登にクーデターを起こされた。じつは安倍さんも同じ道を辿ろうとしているのではないか、という指摘がある(自民党関係者)

安倍晋三は前回の総裁選で、無派閥の菅義偉・首相を支持している。今回もわざわざ、無派閥の高市氏を担ぎ出した。細田派では安倍側近の下村博文が出馬を希望していたにもかかわらず、安倍は後押ししようとはしなかったのだ。細田派から総裁候補が出馬すれば、派内の世代交代が進んで実権を失うからだ。派閥の後継者をつくらないのは、自民党院政の常套手段でもあるのだ。

そうした手法は細田派内に大きな不満を生み、総裁選前に若手議員の蹶起をまねいた。福田康夫元総理の長男で「細田派のプリンス」と呼ばれる福田達夫が「長老支配打破」を掲げ、派閥横断的な若手グループ「党風一新の会」(約90人)を旗揚げした。細田派からも1~3回生議員16人が参加している。

福田達夫氏は衆院当選3回だが、54歳の中堅政治家である。安倍にとってはキングメーカーの地位を脅かす存在といえよう。細田派は達夫の祖父の福田赳夫元総理がつくった福田派がルーツで、いわば派閥のオーナー家とも言えるのだ。3代目の達夫も、祖父と父に続く「将来の総理・総裁候補」の呼び声が高い。党内では、小泉進次郎環境相の「兄貴分」としても知られる。

◆3代にわたる安倍家と福田家の確執

そして安倍家と福田家には3代にわたる確執がある。派閥の創立者である福田赳夫は、安倍の晋太郎が初めて総裁選に出馬したとき、子飼いの中川一郎氏を出馬させて、わざと晋太郎さんの票を削ったのだ。晋太郎に後継者として力をつけさせないためだった。2代目の康夫も安倍晋三も肌が合わず、小泉政権時代に官房長官と副長官として、北朝鮮政策をめぐって激しく対立した。

因果はめぐる。いまは攻守所を変えて、安倍が派の実権を握っているが、派閥を奪い返されないために福田家の3代目に絶対に力をつけさせたくないはずだ。

福田達夫は安倍が派閥に君臨している限り、自分の出番を邪魔されることが分かっている。この機会に若手を結集して、安倍に世代間闘争を仕掛けたのである。

福田達夫の旗揚げを聞いて、安倍の目の色が変わったという。それまで総裁選は高みの見物だったが、自分の力を見せつけようと、高市早苗を支援して総裁選に深く介入していったのだ。

内容のなさを露呈しているものの、「将来の首相」ともてはやされている小泉進次郎環境相と組み、「小泉進次郎内閣が誕生すれば福田官房長官」と言われている。安倍晋三の「院政」開始が、その基盤である安倍派そのものの分解につながる可能性が高いと、まずは占っておこう。

▼横山茂彦(よこやま・しげひこ)
編集者・著述業・歴史研究家。歴史関連の著書・共著に『合戦場の女たち』(情況新書)『軍師・官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)『闇の後醍醐銭』(叢文社)『真田丸のナゾ』(サイゾー)『日本史の新常識』(文春新書)『天皇125代全史』(スタンダーズ)『世にも奇妙な日本史』(宙出版)など。

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LGBT活動家としばき隊の蜜月はどこまで続くぬかるみぞ〈5〉森 奈津子

前回、述べたように、杉田論文は「生産性」という言葉の選択は不適切だったものの、決して差別的な内容ではなかった。むしろ、あそこから議論を進めてゆけば、有意義な問題提起になるはずだった。

しかし、しばき隊界隈活動家とLGBT活動家とマスコミはガッツリ手を組み、杉田水脈氏を悪魔化し、バッシングを続けた。

なお、マスコミは、デモ「杉田水脈の議員辞職を求める自民党本部前抗議」の背後に俗に「しばき隊」と呼ばれる暴言路線の運動体が存在することには、まったく触れなかった。それどころか、杉田氏叩きを扇動し、激化させた。それは、「保守女性議員の杉田水脈を叩きたい」「自民党を批判したい」「LGBTの味方としていい格好したい」という欲望ゆえに道を外れた報道のように、LGBT当事者である私の目には映った。蔑まれてきた者は、自然と用心深くなり、利用されればそのことに敏感に気づくものだ。長い間、蔑む側だった異性愛者の声を代弁し、しばしば同性愛を「気持ち悪いネタ」として消費してきたマスコミ人は、それを知らないのだろう。

杉田氏叩きは、まるで魔女狩りだった。それに異をとなえれば、同性愛者であってもネットリンチを受けた。しかも、リベラル気取りの異性愛者たちから、である。

平野太一氏はしばき隊の活動家であったことを明言

「あいつも差別主義者(=魔女)だ」と名指しされるのを恐れ、競うように杉田氏を罵倒する人々の群れ。それはまさに、教養があり理性的な「市民」ではなく、感情に突き動かされる無責任な匿名の 「大衆」であった。

そんな中でも、デモの呼びかけ人となったしばき隊界隈のゲイ活動家・平野太一氏のツイッター上の暴言は、特にひどいものだった。ここにいくつか並べてみよう。

「杉田水脈のアレに関して傷付いたとかは全くないけど自分の人生において邪魔な障害物をどかす感じかな〜」

「てめー最低だな。@miosugita」 ※@miosugitaは杉田氏のツイッターアカウントのIDであり、アカウント運営者である杉田氏側に表示されるメッセージであることを示す。

「クソ飼い主に頭撫でられて尻尾振ってるだけの無能な権力の犬」 ※杉田氏のツイートを引用リツイートする形で。

[左上]「障害物をどかす」……殺害予告ともとれる表現/[左下]他人を犬と呼びつつも「弱い犬ほどよく吠える」を実践するツイート/[右]平野、杉田に「てめー」 最低なのはご自身ではなかろうか?

極めつけが、何者かから殺害予告を受けた杉田氏に対する、次のリプライ。

杉田氏「北海道に旅立つ前に赤坂警察署に来ました。先日、自分はゲイだと名乗る人間から事務所のメールに『お前を殺してやる!絶対に殺してやる!』と殺人予告が届きました。これに対して被害届を出しました。警察と相談の上、一連のLGBTに関連する投稿はすべて削除いたしました。」

平野氏「そのまま一生LGBTについて言い出すな無駄な政治家の中身もねえ雑音うっさいんだわつでに(ママ)政治家も辞めろやダニが」

[左]杉田氏には殺害予告まで……/[右]殺害予告された被害者に「ダニ」とは人としていかがなものか?

そして、しばき隊界隈のオラつきに眉をひそめるLGBT当事者に対しては、彼は小馬鹿にしたツイートをしている。

「『私たちゲイは普通の生活がしたいだけなんです!放っといて!』 えーと、今回の抗議は他者に対して生産性がないと評価するような政治家に怒りを感じる人たちによるものなので、最初からあなたは関係ないんですよ。しゃしゃりお疲れでーす #0727杉田水脈の議員辞職を求める自民党本部前抗議 」

平野、一般ゲイに対しさすがに調子に乗りすぎの傲慢な発言

ずいぶんと下品で威勢のいいチンピラといった印象だが、実は平野氏、この連載が始まったら、ツイッターアカウントを削除してしまった。偶然なのか「逃げた」のかは存じあげないが、アカウントを登録しなおしてないところを見ると、ツイッターでの集団ネットリンチという運動手法を、みずから捨てたのだと思われる。あんなにノリノリだったのに……。

ところで、しばき隊の母体であり、平野氏の主な活動の場であった反原発団体・首都圏反原発連合(反原連)は、すでに2021年3月に解散している。

2020年10月に反原連のHPで発表された「ステートメント【活動休止のご報告】」と題された記事では、その理由を次のように述べている。

休止の理由としては、マンパワーの温存に限界があること、脱原発運動が市民運動の中心から外れてくるに従い寄付金が減少し、これまでの多岐にわたる活動内容に対し、運営資金の捻出が難しくなってきたことがあげられます。

……は? 資金難で活動休止? なんじゃ、そりゃ? 市民運動を手弁当で続けている団体や活動家なら、いくらだっているのに……? 案の定、ネトウヨからも「やっぱり、デモ参加には日当が出ていたのか!」とツッコミを入れられる始末。これは情けない……。

デジタル鹿砦社通信でも、反原連活動休止のニュースを次のようにとりあげている。

◎松岡利康&『NO NUKES VOICE』編集委員会有志 「ふたたび、さらば反原連!秋風に吹かれたゴミは歴史の屑箱へ!── 反原連の『活動休止』について」
【前編】(2020年10月8日)
【後編】(2020年10月9日)

また、2016年配信の「まぐまぐ」のメルマガでは、元パヨクの千葉麗子氏に取材したこんな告発記事もあった。ご参考までに。

◎MAG2 NEWS【書評】元アイドルが暴いた「反原発運動」の恐るべき実態(2016.5.9)
 
しょうもない団体に、しょうもない活動家。そして、彼らとつるむサヨクマスコミという図式。それは、反原発、反差別、LGBT、どれも同じ──というのも、反原連&しばき隊が関わっているから、当然のことだろう。

ところで、この原稿を書いている真っ最中、10月31日の衆議院議員選挙では、再三批判してきた立憲民主党の尾辻かな子氏、共産党の池内さおり氏は落選、自民党の杉田水脈氏は当選した。しぱき隊的なものはもう、メッキがはがれたということか。だとしたら、実にめでたいことである。(つづく)

◎[過去記事リンク]LGBT活動家としばき隊の蜜月はどこまで続くぬかるみぞ
〈1〉http://www.rokusaisha.com/wp/?p=40264
〈2〉http://www.rokusaisha.com/wp/?p=40475
〈3〉http://www.rokusaisha.com/wp/?p=40621
〈4〉http://www.rokusaisha.com/wp/?p=40755
〈5〉http://www.rokusaisha.com/wp/?p=40896
〈6〉http://www.rokusaisha.com/wp/?p=44619
〈7〉http://www.rokusaisha.com/wp/?p=45895
〈8〉http://www.rokusaisha.com/wp/?p=45957
〈9〉 http://www.rokusaisha.com/wp/?p=46210
〈10〉http://www.rokusaisha.com/wp/?p=46259
〈11=最終回〉http://www.rokusaisha.com/wp/?p=46274

 

▼森奈津子(もり・なつこ)

作家。立教大学法学部卒。90年代半ばよりバイセクシュアルであることを公言し、同性愛をテーマにSFや官能小説、ファンタジー、ホラーを執筆。『西城秀樹のおかげです』『からくりアンモラル』で日本SF大賞にノミネート。他に『姫百合たちの放課後』『耽美なわしら』『先輩と私』『スーパー乙女大戦』『夢見るレンタル・ドール』等の著書がある。
◎ツイッターID: @MORI_Natsuko https://twitter.com/MORI_Natsuko

◎LGBTの運動にも深く関わり、今では「日本のANTIFA」とも呼ばれるしばき隊/カウンター界隈について、LGBT当事者の私が語った記事(全6回)です。
今まさに!「しばき隊」から集中攻撃を受けている作家、森奈津子さんインタビュー

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《関連過去記事カテゴリー》
森奈津子「LGBT活動家としばき隊の蜜月はどこまで続くぬかるみぞ」

『暴力・暴言型社会運動の終焉』

あの時期、釜ヶ崎で何が起きていたか? 書籍『さっちゃんの聴診器 釜ヶ崎に寄り添った医師・矢島祥子』(大山勝男著)発刊! 11月14日(日)大阪で追悼集会「矢島祥子と共に歩む集い」開催へ! 尾崎美代子

ノンフィクションライターで、大阪日日新聞記者でもある大山勝男さんが、釜ヶ崎で医師として働き、野宿者支援活動などをしていた女性医師の半生を追った本を上梓した。大山さんは、私の店のお客様でもあるが、様々な分野で執筆活動を続ける尊敬するライターのお一人だ。

著書「さっちゃんの聴診器 釜ヶ崎に寄り添った医師・矢島祥子」の帯に「釜のおっちゃんから、さっちゃん先生と添われた矢島祥子医師の半生記」とある。祥子医師は、2007年4月から勤務していた西成区内のクリニックから、2009年11月14日姿を消し行方が分からなくなり、16日深夜、西成を流れる木津川の渡船場で、釣り人に遺体となって発見された。享年34歳。西成警察署は早々と「自殺」と断定したが、医師である両親や兄弟、関係者らが、遺体の様子、関係者の話や対応などに不審を抱き、「事件に巻き込まれたのではないか」と訴え続け、現在警察は自殺と事件の両面から捜査を行っているという。

大山勝男著『さっちゃんの聴診器 釜ヶ崎に寄り添った医師・矢島祥子』(アメージング出版)
ノンフィクションライターの大山勝男さん。今回出版の本は、大山記者が大阪日日新聞に連載した文章に大幅に加筆された内容

本は、遺族はじめ多くの関係者の証言、事故後に起こった不可解な事実などをあますことなく網羅し、しかも新聞記者らしく客観的な考察を交え、何が起きたかを丁寧に説明している。大山さんは「現実に目を向け取材を重ねると(中略)殺人事件との思いが強い」と序章に記している。祥子医師の死亡から12年経過したが、この間、あの日、祥子医師に何があったのかを知りたいと願う人たちが増え続けている。そんな人たちにぜひ読んで頂きたい一冊だ。

◆あの時期、釜ヶ崎で何がおきていたか?

祥子医師が釜ヶ崎にやっていた2007年から死亡した2009年11月14日まで、釜ヶ崎やその周辺で何が起きていたかは、彼女の死の真相を知る一つのカギになるだろう。

釜ヶ崎では、日雇い労働者が高齢化し、建設現場で働く店の常連客も次々と生活保護を受けるようになっていた。2008年9月のリーマンショック以降、急増した失業者が比較的生活保護を受けやすい釜ヶ崎に来て生活保護を受給することも増えた。地元での生活保護申請を断り「西成に行けば」と片道切符代を渡した自治体もあった。店の近くにある生活保護相談業務を行う「大阪市立更生相談所」には、業務開始の9時前には長い行列ができた。

相談を済ませた人を、自社のアパートに誘う不動産屋が、「うちのアパートに入居すれば、テレビ、エアコンも付いてるよ」などと誘っていた。鳩山政権が好んで使った「絆」と称する団体が、店の近くで炊き出しを始めた。もちろん「客」をつるためだ。生活保護制度もまともに知らないのだろう、「今なら部屋と食事が付いて、おまけにお小遣いまで貰えるよ」などと書いたチラシをまいていた。生活保護者の通帳、カードを預かる悪質な「囲い屋」の餌食になった、九州から来た知的障害のある息子を持つ母親に相談され、親子を別のアパートに引っ越させたところ、NPOを名乗る強面の男が店に怒鳴り込んできた。1年前まで違法賭博の「ノミ屋」をやっていた男だった。

生活保護者を食い物にするのは不動産屋だけではない。身寄りのない生活保護者を入院させ、病状を偽り、心臓カテーテル手術など不要な手術を受けさせ(中には死亡する患者もいた)、奈良県郡山市の山本病院が、詐欺の疑いで摘発されたのが2009年6月。同病院はそうした手術を数年前から行っており、入院患者の多くは大阪市内から運ばれていたという。

どういうルートがあったのかはわからないが、私自身、当時、店の近くで泥酔して寝ている男性が、医師のような白衣を着た男に、他府県ナンバーの車に乗せられたのを目撃したことがあった。常連客が、酔ってアパート前で寝ていたら、翌日、京橋の福祉病院に寝かされていて、慌てて逃げてきたとも聞いた。

医療費を行政から確実に取れる生活保護者を収容する福祉病院が、患者を次々とたらい回し、互いに稼いでいた事実は、2012年発行の「病院ビジネスの闇~過剰医療、不正請求、生活保護制度の悪用」(宝島社)で詳細が明らかにされた。そこには「ベッドに空きがでた病院が入院患者を集めるために、バスをドヤ街や公園に向かわせ、野宿者やホームレスを集めてくるんや。言葉は悪いが乞食を取ってくる車や」(106p)と「コトリバス」のことが記されている。

「トイチ」10日で1割の利息を取る違法な「ヤミ金」が、生活保護の支給日、役所の出口にずらりと並び、「客」を待ち伏せする光景を、私は実際に見た。そういう時代に祥子医師は、多くの患者さんを診たり、入院先を訪れたりし、疑問を抱くこともあっただろう。

大阪日日新聞に掲載された連載記事

◆「これは逆冤罪だ」と、桜井昌司さん

私は冤罪事件に関心をもち、現在もいくつかの冤罪事件の支援を続けている。8月末、国賠訴訟で勝訴した布川事件の冤罪被害者・桜井昌司さんに初めて会ったのが、2016年8月、東住吉事件の冤罪被害者・青木恵子さんの再審無罪判決が出た大阪地裁前だった。

その後、桜井さん、青木さんの講演会などを行ったりし、2人に釜ヶ崎を知って貰おうと様々なチラシやパンフを渡ししていた。そこに毎月、祥子医師の月命日の14日に、鶴見橋商店街で配布するチラシも入っていたのだろう。桜井さんから「尾﨑さん、あれは何?」と聞かれた。私は、そう聞かれた時いつも「まず自分で調べてみてください」と言う。

というのも、祥子医師の死については、いろいろな説があり、私の情報のみを一方的に伝えることは、冤罪をつくる警察や検察と似た手法になると考えるからだ。その後、ネットなどで調べたのだろう、桜井さんが「尾﨑さん、あれ、逆冤罪だよ」と連絡してきた。「逆冤罪」。確かに、祥子医師の死について、自殺とする証拠などが独り歩きする一方で、事件に巻き込まれたとする証拠などは明らかにされない。当時の彼女を知っていた人、親しくしていた人の「真相を知りたい」という声が少ないのも不思議だ。中には「今、支援に関わる人は、当時の祥子さんを知らない人ばかり」「釜ヶ崎の事情も知らないくせに」などと批判する声もある。

しかし、冤罪支援活動は、支援相手が獄中に囚われたり、亡くなったりして、直接会えなくても支援しなければならない。本人を知っている、知らないではなく、警察、検察が、無実の人を犯人にするために、彼・彼女が犯人でない証拠を隠し、虚偽や捏造した証拠をもって犯人に仕立てることが問題なのだ。

「逆冤罪」と桜井さんが呼ぶように、自殺でない証拠が隠され続けている祥子さんの場合も、警察にちゃんと証拠を出させ、捜査を行うよう求め続けることが必要なのだ。私もだが、大山さんも「事件や遺族に関わらないほうがいいよ」と忠告されたという。人一人、それも釜ヶ崎のおっちゃんのために活動していた女性が亡くなって、どうして黙っていられるだろう。親しかったり、愛していた人ならば余計に。

布川事件の冤罪被害者・桜井昌司さん

◆年々広がる支援の輪

ジャーナリストの寺澤有氏がこの事件を取材し、宝島社「日本の『未解決事件』100の聖域」に書いたのが2018年春、その後、NHKやフジテレビが事件を取り上げ、その番組で自身が作詞した「釜ヶ崎人情」が歌われていたことを知った作詞家・もず唱平氏が、遺族に連絡を取り、関わり始め、祥子医師のために詩を書き、兄でミュージシャンの敏氏が曲をつけ、作られた歌が大山氏の本のタイトルになっている「さっちゃんの聴診器」だ。

「釜ヶ崎人情」等で知られる作詞家のもず唱平さん(右)

私は以前『NO NUKES voice』で、もず先生にインタビューしたことがある。穏やかなお顔から想像出来ない強い口調で話された言葉が忘れられない。「さきほどから言っていますが、私は未組織労働者しか信用できません」。その強い信念は、本の冒頭の「さっちゃんの言葉」に繋がるのではないか。「釜ケ崎に行きたい。そのことが神様の導きで自分の力の限りまでがんばって、そこで力尽きて倒れ込んだとしても、神様の掌(手のひら)の中だから自分はここまでやりたい」。

「もっと生きたかった この町に / もっと生きたかった 誰かのために」。(「さっちゃんの聴診器」より)

11月14日(日)、大阪市内・大国町の社会福祉法人ピースクラブで、午後3時より開催の追悼集会「矢島祥子と共に歩む集い」では、参加者全員で歌いたい。

▼尾崎美代子(おざき みよこ)「西成青い空カンパ」
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを「西成青い空カンパ」として主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
◎著者ツイッター(はなままさん)https://twitter.com/hanamama58

タブーなきラディカルスキャンダルマガジン『紙の爆弾』12月号!
『NO NUKES voice』Vol.29 《総力特集》闘う法曹 原発裁判に勝つ
私たちは唯一の脱原発雑誌『NO NUKES voice』を応援しています!

《書評》『紙の爆弾』12月号 注目すべき論考 野田正彰「旭川『発達障害』殺人事件 雪の少女の哀しみ」 横山茂彦

最新号紹介の続編である。

◆精神医療現場の「子供たちを虐待する」現実 ── 野田正彰「旭川『発達障害』殺人事件 雪の少女の哀しみ」

 
タブーなきラディカルスキャンダルマガジン『紙の爆弾』12月号!

精神科医の野田正彰さんによる「旭川『発達障害』殺人事件 ── 雪の少女の哀しみ」に注目したい。

この論考は『娘の遺体は凍っていた 旭川女子中学生イジメ凍死事件』(文春オンライン特集班、文藝春秋)をもとに、事件の背景にひそむ問題点を考察したものだ。その問題点とは、「発達障害のラベルで苦しめられていたこと」への弁護士と編集部の無知ではないかという。

少女は「発達障害」「自閉症スペクトラム症」とされ、本人の言動の多くが「障害の症状」とみなされてしまう。発達障害という認定で、本人の意志や快不快にかかわらず薬漬けにされるのだ。「ひたむきな子どもが発達障害とラベルされ、向精神薬を飲まされ、周囲の子どもから脳に障害のある子としていじめられ、引きこもりと自殺増となって着実に顕現している」

さらには、「いじめ自殺のたびに、各教育委員会は発達障害の学習と支援学級の充足を主張する負のスパイラルが進行している」と、野田は指摘する。

そしてそれは、子どもたちを「病名でグループ化」する。そこに「個の尊重」がないのは自明であろう。

学校での過酷なイジメのはてに、被害者が精神病院に隔離される。そこもまた、医療とは名ばかりの虐待としか言いようのない場所だった。

現場で苦闘する現役医師ならではの、実感がつたわる文章での問題提起をご一読いただきたい。

◆滋賀県警の「セカンドレイプ」 ── 田所敏夫「日本の冤罪 続・湖東記念病院事件」

シリーズ日本の冤罪「続・湖東記念病院事件」(田所敏夫)は、無罪が確定した冤罪被害者への、滋賀県警の「セカンドレイプ」を取り上げている。

その「セカンドレイプ」とは、冤罪被害者の国賠訴訟に対して、県(県警)は準備書面で「原告は犯人だ」としてきたのだ。無罪判決が下りているのに、警察が「お前は犯人だ」というのだ。冤罪を犯した者たちが居直る、前代未聞の事態というほかない。

県側はいったん謝罪し、県警本部長も警察庁へ転勤という、事実上の更迭となるが、それだけではなかった。書き改められた県側の準備書面は、原告を犯人とみなすに「相当の理由があった」という居直りのくり返しだったのだ。

誤りを認めない捜査当局に、冤罪をなくしていく能力はないと断じるほかないであろう。井戸謙一弁護士のインタビューで、非常に簡潔でわかりやすい記事に仕上がっている。

◆機動隊の県外派遣は違憲と、画期的判決 ── 小林蓮実「沖縄とヤマトの連帯が勝利をもたらす」

名古屋高裁(一審敗訴)で争われていた、機動隊の県外派遣に違憲判決が下りた。この、じつに画期的な住民訴訟での判決を解説した記事「沖縄とヤマトの連帯が勝利をもたらす」(小林蓮実)は、半永久保存版であろう。

原告の具志堅邦子は18歳で沖縄をはなれ、名古屋で結婚して30年になるという。1995年の少女暴行事件に大きな衝撃をうけ、愛知で「命どぅ宝の会」に参加した。そして辺野古にも行くようになった。

県警の県外派遣という問題点を衝き、沖縄の闘いを孤立させない。その意味ではヤマトでも可能な闘いに道をひらいたというべきであろう。

◆教員統制のうごきが顕在化 ── 永野厚男「岸田文雄・文科副大臣(当時)の教員統制・いじめ政策」

精神医療現場の問題点、冤罪を生んだ県警の無反省、そして住民訴訟の勝利と、現場を舐めるような取材と見識の最後は、中教審のうごきである。

タイトルは「岸田文雄・文科副大臣(当時=引用者注)の教員統制・いじめ政策」(永野厚男)だ。

中教審「教師の在り方特別部会」の「審議まとめ案」が提出され、レポーターの永野厚男によれば、国家権力の思い通りの教員づくりに道をひらくものだ。

10月31日までにパブリックコメントを終え、教育免許法の改悪が行なわれようとしているのだ。

今回の審議案の問題点を、いくつかピックアップしておこう。

・小学校一年生から道徳・愛国心を教化、君が代を歌えるように指導する。
・社会科で小学校4年から「自衛隊が役立っている」を教える。
・小学校6年では「天皇への崇敬の念」を教える。

そして上からの教員管理、研修の義務化、密室での校長と教職員の「対話」すなわち、自由闊達な議論の封殺、などである。

永野は「教特法」にある自由研修こそが、教育現場に必要だとする。制服や規則問題など、教育現場ががんじがらめである。いまこそ、学校に自由を!である。(文中敬称略)

▼横山茂彦(よこやま・しげひこ)
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河井案里・克行夫妻疑惑糾明のリーダー山根岩男さん、11月14日補選で「ぬるま湯」広島県議会に殴り込み! さとうしゅういち

河井案里さんが当選(2021年2月4日に本人の有罪判決確定で無効)した参院選広島2019における河井夫妻による前代未聞の買収事件。2019年10月31日の「文春砲」で車上運動員買収に怒った県民が「河井疑惑をただす会」を結成。多数の県民の連名で河井案里・克行被疑者を12月に告発しました。そのリーダーが元中国新聞社員の山根岩男さん(70)でした。

県民の怒りを背景に東京地検が動き、2021年6月18日、案里・克行被疑者は逮捕されました。

その後、案里さんの有罪は確定し当選は無効。夫の克行被告人も2021年6月18日、懲役3年の実刑判決を受けました(現金授受は認めつつも控訴中)。「民主主義の根幹である選挙の公正を著しく害した」として、東京地裁も事件を厳しく批判しました。

◆開き直る被買収県議、大甘の同僚議員

中でも案里さんの「元職場」の広島県議会では、被買収の県議会議員は13人おられます。それぞれにお金をもらった事実は認めています。しかしながら、東京地検はこれらの県議も含めた被買収者全員を「受け身だった」として起訴猶予処分としています。ただ、起訴猶予処分といっても被買収の事実は事実。にもかかわらず、2021年10月10日現在、誰も腹を切っておられません。

西洋は罪の文化、日本は恥の文化といわれていますが、いまの広島県議会にはどちらも欠けています。

広島県議会では「政治倫理審査会」も開催されました。13人の被買収議員については、「辞職勧告」でもされるかとおもいきや、「厳重注意」で済まされてしまいました。審査会はいわば「身内」の同僚議員が疑惑を追及するもので、非公開でした。

そして、各議員は弁明にもらった時間を大幅に余らせていました。各議員がいかに同僚議員、なにより県民をなめきっていたか?そして、時間があまったということは、同僚議員も被買収議員に質問などで厳しいツッコミをあまりいれていなかったということです。そして、13人中、6人が委員会の正副委員長という要職につく有様です。

河井議員からお金をもらった議員は論外として、お金をもらっていない議員、アンチ河井議員、自民党、公明党はのみならず、国政では野党に属する立憲民主党系の議員も含めた被買収者に大甘である。そのことが明らかになってしまいました。

◆案里さんの地元の安佐南区で県議に空席

こうした中、克行被告人の離党に伴い、自民党は衆院広島3区の候補者を公募。安佐南区の県議・石橋林太郎さんが合格しました。ただし、広島3区については自民党が与党候補のイスを公明党にゆずる形で斉藤鉄夫国交相に決まっています。そして石橋さんは比例代表に回りました。

石橋さんの衆院立候補で安佐南区(定数5)の県議が1つ空席となるため、安佐南区では11月14日の知事選にあわせて県議補選が行われます。

この安佐南区はまさに河井案里さんが県議を4期つとめた疑惑の震源地です。毎回のように物量をものにいわせた選挙を案里・克行夫妻が展開してきた場所です。

わたくし自身も2011年の県議選で案里さんに挑みました。このときは、わたしが4278票、案里さんが20799票という結果でした。街中が案里さんのビラや看板で溢れかえっていたのを記憶しています。広島の政治・選挙がいかに政策などそっちのけか。そのことを痛感しました。

◆恥知らずの県議会に憤り 山根さん立ち上がる

山根岩男さんを推す政治団体のビラ

あれから10年。状況はちっとも変わっていません。こうした中、「河井事件」追求の先頭に立っていた山根岩男さんが業を煮やして立ち上がったのです。現在、無所属で野党の統一をめざしています。立憲、共産、社民、れいわ、新社会各党に推薦を求め、共産党からはすでに推薦決定が出ました。立憲民主党は10月10日に行われた山根さんの決起集会に3区の衆院選予定候補のライアン真由美さんが檄文を寄せています。

れいわ新選組もわたくし、さとうしゅういちが、10月10日の決起集会に参加し、山根さんから推薦依頼書を受領。れいわ新選組の最寄りの総支部に進達しています。本部の決定にかかわらず、れいわ新選組の地元の支持者としては、山根さんを支持していくことを申し合わせています。

「河井疑惑の徹底追及・解明」「被買収者への辞職勧告」「政治倫理審査会に外部者をいれて公開とする」などを掲げています。また、コロナ対策として医療者への支援や全国でも異常なペースで進められた「分権」で廃止された広島3区内の保健所の復活などを提案しています。

また、土砂災害対策や黒い雨被害者救済、核兵器禁止条約参加を政府に求めることなどを国に強く求めるとしています。

◆圧倒的に自公が強い過去の県議選

今回の補選は衆院選の2週間後に実施されます。山根さんの他には元維新の国政選挙候補者で自民党の3区公募に応募した灰岡香奈さん、克行被告人の元秘書の伊藤守さんが立候補を予定しています。

過去の県議選では得票でみれば、自公系が圧倒的に有利です。たとえば、わたくし、さとうしゅういちが立候補した2011年の県議選では自公が案里さん20799+石橋良三さん(林太郎さんの父)17684+公明党候補16452+自民党元職佐々木弘司さん14234で69169票。非自公が、さとうしゅういち4278+民主党候補9987で14265票。

非自公はわずかに17.1%です。2015年の県議選では非自公系の候補がわたしの参院選広島への転出と民主党候補の市議選転出で入れ替わっていますが、力関係に大きな変化はありませんでした。

衆院選挙ではこの地域ではいつも自公(克行被告人)と非自公(民主、維新、共産)の得票は互角です。

その原因は、案里さん以外の自民党県議や市議が、アンチ河井克行で、克行被告人民主党や維新の国政選挙候補に票を流していたという事情があります。「俺は(克行被告人より)共産党のほうが仲良しだ」と公言する自民党市議もおられた始末でした。克行被告人の評判の悪さが透けてみえます。

しかし、県議選では国政とちがい、与党の各議員の地盤は非常に強いのです。2015年県議選を最後に引退された佐々木さんなどは国政では共産党支持、社民党支持という人にも根強い人気がありました。

県議安佐南区候補者のポスター。右は知事選挙。補選は山根(野党系)vs 灰岡(自民公認・公明推薦)の与野党対決に克行受刑者の元秘書の伊藤候補が割り込む構造に

◆このまま自民党に有権者をなめさせるな

案里さん・克行被告人からお金をもらっている県議のほとんどが自民党所属です。彼らがなぜ腹を切らないのか?その背景には、過去の選挙では、彼らが無投票か楽勝かだったことがあります。

「どうせ、次の選挙は俺は私は無投票か楽勝。」

そのように思ってなめきっているからこそ、とれる行動です。いまは風当たりが強くて恥ずかしくても、国会議員とそう遜色ない給料をもらいながらやりすごせば、どうせ有権者は忘れてくれる。

そういう彼らをあわてさせないといけません。安佐南区という、過去の県議選では与党圧倒的優勢の場所で野党が勝てば彼らも慌てるでしょう。

◆「腐敗」の後の「新自由主義隆盛」を防げ

もうひとつ、今回の補欠選挙で進めるべきは、広島出身の総理・岸田さんでさえ打ち出している「新自由主義からの脱却」です。

今回、自民党県連が推す女性候補は2013,2016と「維新」の参院選挙候補として「アンチ河井の保守層」を中心に一定の得票をしています。「クリーンな新自由主義者」というイメージです。腐敗への批判が高まるなかで、「38歳という若さを売りにして、新自由主義者である女性候補が議席を取る」というシナリオを自民党サイドは思い描いているのでしょう。

ただでさえ、前知事のもとで、保健所は3分の1に減らされ市町村合併で自治体減少率NO2の広島県。腐敗した河井夫妻が失脚したのはよい。しかし、入れ替わりに、新自由主義者が入れ替わりに勢力をのばした、ではなんのために河井事件を追及したのか?訳がわからなくなってしまいます。

大阪でもあったように、新自由主義者は既存勢力の腐敗に便乗して台頭します。今回の広島でもそれは要警戒です。

こうしたなかで、山根さんとわたしも含めた支持する人たちの責任は重大です。山根さんは中国新聞社員時代、労働組合の委員長など役員をつとめました。昔の中国新聞では女性は非正規にしかなれなかったのです。それを組合で追及して女性も正社員になれるようにしたのは山根さんの功績大です。退職後も労働相談員などをされています。

腐敗をゆるさないとともに、労働者の味方でもある山根さん。彼の今回の補欠選挙のとりくみの成否は今後の広島県の流れを左右するといっても過言ではない、と感じています。

◎山根岩男さん Twitter
◎河井疑惑をただす会 Facebook 


◎[参考動画]山根候補の出発式における応援弁士の演説(さとうしゅういち2021年11月05日公開)

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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立憲と共産はなぜ歴史的惨敗を喫したか? 河井事件による野党の楽勝ムードが暗転した岸田総理の地元広島 さとうしゅういち

第49回衆院選は10月31日執行され、自民党が石原伸晃さんら大物を落選させるなど議席を減らしたものの、単独過半数を確保。公明党とあわせて絶対多数となりました。立憲民主党は関東や四国の小選挙区で野党共闘で大物の首を取るも比例がふるわず100議席を切る惨敗。共産党もマスコミ予想を裏切り大敗しました。自民党以上の新自由主義政党の「維新」は41議席と大躍進。「積極財政」を打ち出した国民民主とれいわ新選組が議席を増やし健闘しました。

筆者が住む広島ではどうだったのでしょうか?結論から申し上げると広島市では自民党が圧勝。立憲も共産も衆院議員を出せませんでした。

広島は河井事件の震源地である一方で岸田総理の地元です。「河井事件効果」と「お国の総理効果」どちらが勝るか?も注目されました。わたくし、さとうしゅういちは、河井事件効果は賞味期限切れになっている、と危惧しており、それが的中した形です。

◆広島1区 現職総理の前に野党は供託金回収にいたらず

一住民として応援した1区の有田優子候補

広島1区
岸田文雄  自民前 133,704
有田ゆうこ 社民新  15,904
大西オサム 共産新  14,508
カミデ圭一 諸派新  1,630

広島1区は爆心地があるが、過去の選挙は岸田総理が一度も負けたことがない超保守王国です。わたしが支援するれいわ新選組のポスター活動も一番苦労するのが1区です。

わたしも一住民として有田さんのマイクを握りました。前回まで共産党候補を支援していましたが後述する理由で今回は「選挙区は有田、比例はれいわ」を支持者のみなさまにも徹底的にお願いしました。わたしが「乗り換えた」効果もあってか、社民の有田さんが共産の大西さんを上回ったものの供託金回収に至らず。ただし、社民党県連幹部からは「今後も広島から候補者を出していきたい」と意欲的な声をうかがいます。社民党はれいわ新選組とも政策は近い一方で支持層が被らない面もあります。わたしとしても今後とも社民党とも連携はしていきたいと考えています。

◆広島2区 野党統一もダブルスコアで大敗

広島2区
平口ひろし 自民前 133,126
大井赤亥  立憲新 70,939

広島2区は広島市西部の住宅街と廿日市市、大竹市、江田島市の一部からなっています。

1996、2000、2003、2009年と当時の野党が勝利しており、統一すれば勝ち目があるとも言われてきました。今回は共産党新人が公示直前に立候補を取りやめました。

しかし、それでも大変厳しい結果になりました。核兵器禁止条約にも前向きなどリベラルな面も強い自民党のベテランの平口さんに対して攻めあぐねた感じはします。ただし、平口さんも次回は引退が濃厚です。大井さんにもチャンスはあると見えます。

◆広島3区 勝利ムード暗転、過去20年で最悪の野党惨敗

広島3区
斉藤鉄夫    公明前 97,844
ライアン真由美 立憲新 53,143
せぎひろちか  維新新 18,088
大山宏     無新   3,559
矢島秀平    N裁新  2,789
玉田のりたか  無新   2,251

言わずと知れた河井案里さん、克行受刑者の地元である広島3区。4月の参院選広島再選挙でも当選した宮口はるこさんとさとうしゅういちの合計で約6万票なのに対して自民候補は5.3万票でした。

さとうしゅういちがライアン真由美候補を支援しているわけですから、負けるはずがない選挙区でした。しかし、マスコミ予想や地元の前評判と全く正反対の結果になりました。

「広島3区は、野党が最終的にはそうはいっても勝てるだろう。最悪でもライアン真由美さんが比例復活はするだろう。相手は国交相とはいえ、河井事件の震源地で有権者が与党の候補をそんなに支持するはずがない。」

こんな前評判を覆すどころか、蓋を開けてみれば2003年以降のすべての選挙結果における立憲(前身の民進党、民主党)系と社民党(2005まで擁立)・共産党(2009は擁立せず)候補の合計を下回る惨敗でした。

しかし、冷静に考えれば、以下のことがいえます。もともと、克行受刑者は非常に評判が悪い方でした。地元で克行受刑者のことをよくいう方はだれひとりいないような有様でした。それでも小選挙区制度の弊害で自民党公認というだけで、議員を続けられていただけでした。従って広島3区は自民党支持者や議員でも河井克行受刑者を嫌って野党に票を流していた人が多くおられました。ところが、そうした方が、克行受刑者の失脚により、与党に回帰したのです。

さらに、菅退陣、岸田総理誕生、斉藤国交相誕生で一挙に形勢が逆転しました。

それに追い打ちをかけたのが、維新の瀬木さんの立候補でした。瀬木さんは、「公明党には投票したくないからライアンにしようかな」と迷っていた保守層の一部を吸収したのです。

いっぽうで、河井案里さんを支持していたような方々はどうされたのか?再選挙の際は棄権された方が多かったのです。しかし、今回は現職の国交相、しかも、災害が続いている3区ではそれはたのもしい、ということで、斉藤候補に回帰したとみられます。

かくて、4.4万票もの大差で野党は敗北してしまいました。

れいわ新選組選挙カー。インパクトがあった

◆超保守王国で一定の地盤、れいわ

わたくし、さとうしゅういちは、れいわ新選組の街宣車に乗り込み、1区では「選挙区は有田、比例はれいわ」2区では「選挙区は大井、比例はれいわ」3区では「選挙区はライアン比例はれいわ」と叫びました。超保守王国広島市14,240人、広島県内で32,955人が「れいわ」と書いてくださりました。

小選挙区候補がいないとほとんど活動らしい活動ができない衆院選で、それも初めての衆院選でこれだけ票を頂いたことに感謝申し上げます。中国地方では残念ながら議席に及びませんでしたが、政党交付金には反映されますし、広島でも一定の地盤を築いたと言えるでしょう。

実はわたくし、自身、広島の立憲さん、共産さんが、「河井批判」に傾きすぎて、庶民の暮らしなどについて言及が薄いことに危機感を覚えていました。野党が庶民を見捨てていないところを見せるためにも、「財政出動で庶民の所得を上げて負担をへらす、暮らしの安心を確保する」という訴えを徹底しました。立憲さん、共産さんに戦術変更をお願いするよりは自分がれいわで言いたいことをガンガン訴えたほうが生産的だと見切りました。


◎選挙運動最終日の10月30日に街頭でれいわのマイクを握り、#比例はれいわ #3区はライアン真由美 と訴える筆者

◆筆者の「れいわ」への「乗り換え」も阻んだ共産の議席奪還

さて、比例中国ブロックでは共産党は前回失った議席を奪還するだろう、というのがマスコミの前評判でした。しかし、それは的中しませんでした。その背景のひとつは、ほかならぬ筆者・さとうしゅういち自身の行動でした。選挙結果に悪影響をあたえぬため、選挙期間中は控えていましたが、終わったので説明責任をこの場をお借りして果たします。

さとうしゅういちは第49回衆院選(衆院選2021)において比例区は「れいわ新選組(略称=れいわ)」を応援し、県内だけでなく全国に呼び掛けました。れいわの選挙葉書を引き受けたほか、広島3区では小選挙区のライアン真由美さんの選挙葉書にも「比例はれいわ、をお願いいたします」と書き添えました。

居住する広島1区では日本共産党と社民党から候補が出られました。さとうしゅういちは、地元一住民として、社民党の有田優子さんを支援。事務を手伝う、短時間だがマイクを握るなどさせていただきました。同区で社民候補の得票が共産候補のそれを上回るのに貢献した形になりました。

さとうしゅういちは、衆院選2014、参院選2016、衆院選2017、参院選2019と日本共産党を比例区で支持し、多いときで1000枚近い選挙葉書を引き受けるなどしてきた。また市議選・県議選2015、市議選2019でも共産党候補を推薦し、共産候補への投票を自身の支持者に呼び掛けたり選挙葉書も多数出したりするなどさせていただきました。

わたくし、さとうしゅういちは2021年4月25日執行の参院広島再選挙で20848票の得票を頂いた。わたしの行動により、支持政党を日本共産党かられいわ新選組にシフトされた方も少なくない。結果としてマスコミ予想を裏切り、共産党は比例中国で議席を奪還できない要因のひとつとなったとみられます。

支援先変更の理由1 政策軸

れいわ新選組が最も庶民の暮らしを重視しているからです。

ここ2年ほど、立憲、共産両党は、全国では支持者でも一部の内容で議論も大きく別れるLGBT法案推進などを重視しすぎました。

それよりはコロナのもとで苦しくなっている庶民生活の再建を重視して頂きたかった。例えば「女性のことだから」と軽視されてきた介護や保育労働者の給料アップ、DV性暴力被害者支援など高いスキルを買い叩かれている非正規公務労働者の処遇改善、生理用品に10%も課税する消費税の廃止などに財政出動する議論をしていただきたかった。

県内では、両党は、河井批判に偏りすぎ、庶民の暮らし軽視に見えた。また、2021年4月参院選再選挙の頃から、当選した宮口議員の最大の支持基盤である大手原発推進労組に遠慮してか、原発なき脱炭素に熱心でないのも頂けませんでした。

参院選広島再選挙は、それで通用したが、もう河井批判だけの戦術は賞味期限切れです。

さとうしゅういちは、こうした中、両党の路線修正を待つより自分で動こう、と考え、「れいわ」のマイクを握り「比例はれいわ、でガツン、と庶民の所得を増やし負担軽減、防災など暮らしの安心。選挙区はライアンで大掃除」と叫びまくった。また、被爆地であり被災地広島からこそ、原発なき脱炭素、海外派兵ではなく災害救助隊で尊敬される日本を提案させていただいたものです。

支援先変更の理由2 党代表との関係性

れいわ代表の山本太郎が2014年初秋、当時の現職国会議員で唯一わたくしの結婚祝いに出席してくださったからというのも、大きいのです。政策は重視しますが、やはり義理人情も考慮しないと言えば嘘になります。

支援先変更の理由3 共産党支持者を自称する方によるさとうへの名誉毀損

複数の日本共産党支持を自称するLGBT法案推進活動家の方から執拗な名誉毀損をさとうしゅういちはネットで受けていました。すでに東京地裁に弁護士を通じて発信者情報開示請求をTwitter社に行い、裁判所は認容。あとはプロバイダーに本人情報を開示していただくことになります。東京地裁は日本共産党支持者を自称する方による名誉毀損を事実認定したのです。こうした状況で、共産党を比例区で推すことは支持者の方の理解は到底得られません。

県議安佐南区補選の山根岩男候補のはがき。日本共産党を支持することはできないが、できるところはご一緒にさせていただく大人の対応をとる

◆今後について

さとうしゅういちは11月5日告示、14日執行の県議安佐南区補選については日本共産党も推薦する山根岩男さんを推薦し、選挙はがきも支持者に出します。県政における新自由主義台頭をふせぐため、大人の対応を取ります。

他方で統一地方選2023の市議選安佐南区では立候補に意欲を示す共産党以外の新人が立候補すれば推薦する意向です。ご本人にも伝達しています。日本共産党におかれては安佐南区におけるさとうしゅういちやれいわの支持票である約2000〜3000票がなくとも勝てる体制をつくられることをお祈り申し上げます。党と個人は違うとは言え日本共産党候補を市議選通常選挙で推すことも支持者の理解は到底得られないからです。

そうはいっても、維新の躍進という新たな危機の中、日本共産党は、れいわや社民党とならび、維新が自民以上に進める新自由主義や自民がこれまで通り進める原発・核燃サイクルの両方にきちんと反対する貴重な勢力です。しっかりしていただきたいと思います。

以上の記述は日本共産党におかれてはなぜ今回、とくに広島県内で大きく票を減らされたのかの参考材料になれば幸いであり、今後の同党の再建・健闘を祈るものです。

わたくしはわたくしでれいわの皆様とともに、庶民の暮らしをガツン、と建て直すと共に、「原発なき脱炭素」や海外派兵ではなく「被災者支援」などで尊敬される日本を目指し奮闘します。

もちろん、日本共産党など他の野党の皆様とも核兵器禁止条約推進、ヒバクシャ救済などで大いにご一緒したいという考えも変わりはありません。

◎[参考]過去の衆院選 日本共産党比例票 広島県
衆院選2009  81875
衆院選2012  59892
衆院選2014 107749
衆院選2017  73440
衆院選2021  58682

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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LGBT活動家としばき隊の蜜月はどこまで続くぬかるみぞ〈4〉森 奈津子

繰り返しになるが、再度、引用させていただく。雑誌「新潮45」2018年8月号に掲載された、俗に「杉田論文」と呼ばれる論考「『LGBT』支援の度が過ぎる」を、立憲民主党のレズビアン国会議員・尾辻かな子氏は次のように要約し、ツイートした。

杉田水脈自民党衆議院議員の雑誌「新潮45」への記事。LGBTのカップルは生産性がないので税金を投入することの是非があると。LGBTも納税者であることは指摘しておきたい。当たり前のことだが、すべての人は生きていること、その事自体に価値がある。

しかし、杉田論文は、本当にそんな内容だったのだろうか? 一応、尾辻氏は杉田論文の該当部分「生産性がない」発言の誌面の画像をツイートしているが、ここで、その文面を抜粋してみよう。

例えば、子育て支援や子供ができないカップルへの不妊治療に税金を使うというのであれば、少子化対策のためにお金を使うという大義名分があります。しかし、LGBTのカップルのために税金を使うことに賛同が得られるものでしょうか。彼ら彼女らは子供を作らない、つまり「生産性」がないのです。そこに税金を投入することが果たしていいのかどうか。にもかかわらず、行政がLGBTに関する条例や要綱を発表するたびにもてはやすマスコミがいるから、政治家が人気とり政策になると勘違いしてしまうのです。

……おわかりいただけただろうか? ここで言う「生産性」とは、同性愛者は子供を作らないということだったのである。

その言葉の選択自体は、私も適切であるとは思わない。「生産性」だなんて、まるで物のようではないか。かつて批判を浴びた男性政治家による「女性は産む機械」発言とどう違うのか? この点だけは、杉田氏も早いうちに「生産性という表現は不適切でした」と謝罪するべきではなかったか。

しかしながら、ゲイカップルは代理母を「利用」し(私は代理母ビジネスには批判的な立場ゆえ、あえてこのような表現を使わせていただく)、レズビアンカップルは男性から精子提供を受けないかぎりは、子供を作れない。異性である第三者の協力がないと自分たちの血を引く子を持つことができないカップルであるという点は、事実なのである。

尾辻氏のツイートに乗せられた著名人の一人、芥川賞作家・平野啓一郎氏も、杉田論文全文を読んでみたらどうか

そのような同性カップルに税金を投入すべきか? 投入すべきなら、一体どのような形で? また、その根拠は? ――という問題提起をしているのが、杉田論文だ。ならば、杉田氏に批判的な尾辻氏は、正々堂々とそれに答えるべきではないのか?

実際、杉田論文騒動をきっかけに、多くのLGBT当事者から「我々よりも子育て支援に税金を使うべき」との意見が出るようになった。しかし、その声を拾いあげた政治家やマスコミ人は、これまでにいただろうか?

そして、ここが最も注目すべき部分だが、尾辻氏が言うような、「すべての人は生きていること、その事自体に価値がある」か否かという点には、杉田論文はまったく触れてはいないのだ。つまり、尾辻氏のツイートの後半は藁人形論法であり、政敵に対する印象操作なのだ。はっきり申せば、尾辻氏のツイートは杉田論文の要約としてふさわしくない。

谷崎賞作家・星野智幸氏の性的少数派の友人知人の皆様は、杉田論文ではなく尾辻氏のツイートにより、死に追い込まれそうになったのでは?

あの要約ツイートが意図的であるのなら、汚いやり方であるし、本気でそう読み取ったのなら、失礼ながら、「読解力に問題あり」とのそしりを逃れられないのではないか。いずれにしろ、レズビアンを名乗って政治家を続けるのはご勘弁いただきたいところだが、いかがであろう?

いや、もしかしたら、尾辻氏はあまり深く考えずに、単に個人的な主張(にしては、いささか青くさいが)をツイートの後半にくっつけてしまったのかもしれない。好意的に解釈すれば、そのような可能性にも思い当たるだろう。

しかし、だ。実は、その直後に、杉田氏が尾辻氏のツイートを引用する形で問いかけをしたのに、尾辻氏はそれをスルーしたのである。なお、尾辻氏のツイートがきっかけでいやがらせや脅迫が殺到し、身の危険を感じた杉田氏は、後に自身のツイートを削除してしまっているため、2018年7月19日に記録されたウェブ魚拓(https://archive.ph/Oheeh)より、その文面を以下に引用する。

尾辻先生、税金を投入する=福祉を活用する人=社会的弱者です。LGBTの方々は社会的弱者ですか?LGBTの方々でも、障害者の方は障害者福祉を低所得者の方は低所得者福祉を高齢者の方は高齢者福祉を受けられます。年金も生活保護も受けられます。当たり前のことです(続く)

(続き)その点に於いて日本の中で何ら差別されていないし、また差別すべきではないと思います。納税者として当然の権利は行使できます。その上で、何かLGBTの方々だけに特別に税金を注ぎ込むような施策は必要ですか?

健全な議論のためにも、この問題提起は知られるべきでは?

ご覧のとおり、杉田論文要約ツイートに対するツッコミとも言える重要な問いかけであるのだが、尾辻氏はガン無視した。いや、重要な問いかけであるからこそ、無視したのかもしれない。

いやいや、政治家なのだから普段から引用リツイートやリプライの通知も多く、見逃してしまったのでは?――という擁護の声も出てくるかもしれないが、尾辻氏の「ガン無視」は、多くの人が指摘している。それでも尾辻氏は気づいてないというのか? 仮に本人が気づいてないのなら、秘書から尾辻氏に伝えるのが、秘書たる者の仕事ではないのか? なにしろ、あれだけの騒ぎを起こしたツイートなのである。

そして、今に至るまで、少なからぬ数のLGBT当事者が尾辻氏のツイートのおかしさを指摘してきたが、いまだに尾辻氏は彼らをも「ガン無視」なのである。

尾辻氏のツイートから、本当に杉田論文の内容が「すべての人は生きていること、その事自体に価値がある」と反論すべき内容だと信じたLGBT当事者は怒り、あるいは傷つき、中にはショックで泣いたと告白した者もいた。

杉田論文を読まないまま、しばきデモに参加してしまった母と中学生の娘。かえって教育に悪いのでは?

だが、杉田論文はLGBTの「生」や「存在」を否定するようなものでは決してなかった。ということは、その方々は、尾辻氏の言葉に怒り、傷つき、泣いたのである。

厳しいことを言えば、原典に当たらず140文字以下のツイートなんぞに脊髄反射するのが悪いのだが、過去に差別を受けて怒り、傷つき、泣いてきた方々に「アホ」のレッテルを貼るのは、あまりにも酷だろう。

なにはともあれ、尾辻氏がおのれの要約の恣意性を認め、杉田氏のリプライにきちんと対応しておけば簡単な話だったのである。まったくもって、無責任な話だ。

しかし、無責任なのは尾辻氏だけではなく、マスコミもそうだった。杉田氏に対し、一貫して「叩き報道」を続けたのである。

◎毎日新聞(2018.7.21)「『生産性なし』自民・杉田議員の寄稿が炎上」

◎朝日新聞(2018.7.23)「同性カップルは『生産性なし』 杉田水脈氏の寄稿に批判」

◎日本経済新聞(2018.7.31)「自民・杉田氏寄稿に批判相次ぐ LGBT『生産性ない』」

杉田論文を読まないまま、しばきデモに参加してしまった母と中学生の娘。かえって教育に悪いのでは?

まさか、報道に携わる者がそろいもそろって、「杉田論文」を読まずに批判していたのか? あるいは、全文を読んだにもかかわらず、「生産性」のひとことに拘泥しつづけ、主旨を読み取れなかったのか? それとも、各社の記者全員がブードゥーの呪術師にゾンビパウダー入りの茶でも飲まされて、思考停止に陥ったのか? だとしたら、大変お気の毒なことであり、同情を禁じえない。

なお、私は杉田氏を擁護してはいるが、支持者ではない。支持政党なしの私にとって、杉田氏は数多く存在する「いいところもあるけど、悪いところもある政治家」の一人でしかない。

その点は、読者諸氏にもしっかり心にお留めおきいただきたい。特に、杉田氏のお取り巻きと化して、氏を「水脈姐」と呼んでキャッキャウフフしながら馴れ合っている保守派女性の一人とみなされてしまったら、鳥肌が立つというものである。私の望む百合の園は、あのような形ではない。断じて、だ。

最後に、フェアな姿勢で杉田論文全体を論じたトランスジェンダー当事者・神名龍子女史によるブログ記事をご紹介し、今回は筆を擱きたい。

◎神名龍子「杉田論文についての考察」 https://www4.hp-ez.com/hp/eon/page55/8

(つづく)
◎[過去記事リンク]LGBT活動家としばき隊の蜜月はどこまで続くぬかるみぞ
〈1〉http://www.rokusaisha.com/wp/?p=40264
〈2〉http://www.rokusaisha.com/wp/?p=40475
〈3〉http://www.rokusaisha.com/wp/?p=40621
〈4〉http://www.rokusaisha.com/wp/?p=40755
〈5〉http://www.rokusaisha.com/wp/?p=40896
〈6〉http://www.rokusaisha.com/wp/?p=44619
〈7〉http://www.rokusaisha.com/wp/?p=45895
〈8〉http://www.rokusaisha.com/wp/?p=45957
〈9〉 http://www.rokusaisha.com/wp/?p=46210
〈10〉http://www.rokusaisha.com/wp/?p=46259
〈11=最終回〉http://www.rokusaisha.com/wp/?p=46274

 

▼森奈津子(もり・なつこ)

作家。立教大学法学部卒。90年代半ばよりバイセクシュアルであることを公言し、同性愛をテーマにSFや官能小説、ファンタジー、ホラーを執筆。『西城秀樹のおかげです』『からくりアンモラル』で日本SF大賞にノミネート。他に『姫百合たちの放課後』『耽美なわしら』『先輩と私』『スーパー乙女大戦』『夢見るレンタル・ドール』等の著書がある。
◎ツイッターID: @MORI_Natsuko https://twitter.com/MORI_Natsuko

◎LGBTの運動にも深く関わり、今では「日本のANTIFA」とも呼ばれるしばき隊/カウンター界隈について、LGBT当事者の私が語った記事(全6回)です。
今まさに!「しばき隊」から集中攻撃を受けている作家、森奈津子さんインタビュー

7日発売!タブーなきラディカルスキャンダルマガジン『紙の爆弾』12月号!
『暴力・暴言型社会運動の終焉』