テレビが嘘を垂れ流す──AKB48を使って虚偽を流布しても「訂正せず」のNHK

私がテレビを見ない理由はいくつかあるが、その中のひとつは「テレビは嘘をつく」ことだ。

やや古い話になるが、2012年1月28日たまたま友人の家に遊びに行っていたら、テレビでNHKの初心者向けニュース解説番組(同番組ブログによる)「麻里子さまのおりこうさま」という番組が、「デモ」を取り上げていた。この番組は昨年すでに終了しているが、腰を抜かしそうな大誤報に直面したので経緯をご紹介する。

◆AKB48のタレントを使い虚偽を流布したNHK

同番組は、篠田麻里子(恥ずかしながら彼女がAKB48のタレントだとは友人に教えられるまで知らなかった)、が視聴者からの投稿を紹介する形で進める番組らしい。しかし初心者向けニュース解説番組とはいえ、AKB48のタレントを使うか、と半ばあきれながら画面を眺めていた。

視聴者からの投稿が取り上げられたのだがその内容は、

「デモとは、デモンストレーションの略であり、ある特定の意思・主張をもった人々が集まり、集団でそれらの意思や主張を他に示す行為です。デモは誰でも起こすことができますが、公務員の仕事をしている人はデモをしてはいけないと法律で決まっているんですよ」というものだった。

篠田は「そうなんですね、公務員以外の方ならだれでもデモができると、確かにこう主張の自由というところが認められている気がしますよね(後略)」などと言っていたが、その時画面には≪公務員の政治行為は国家公務員法102条で禁止されている≫とのスーパーが表示された。「公務員の政治行為」が禁止されているなら公務員は選挙に投票できないじゃないか。そんなあほな話あるかい!と、AKB48のタレントを使い虚偽を流布するNHKは許しがたい!やっぱりテレビはこれだわと呆れ返った。しかしこれは公務員に対する重大な人権侵害だしNHKによるデモ弾圧だ。座視はできない。

しかもタレントを使ったこの手の番組を見ているのは篠田のファンか若年層だろう。私のようなひねくれ者は少ないはずだから視聴者は「公務員はデモ禁止」と信じきったに違いない。

私は「これ大嘘やで、こんな法律解釈完全に間違ってるわ」と少し声を上げたが、その番組を見た私の周囲の人間(高校生を含む成人5名)は「へー公務員はデモに参加したらいけないのか」と一様に反応していた。テレビ恐ろしやである。

◆NHKから届いた公式見解メール

私はこの放送は完全に法律を誤解している上に公務員の権利を堂々と否定しているので、同日夕刻NHKの窓口に電話をかけ、「公務員がデモに参加してはいけないというのは間違っているのではないか」と担当者に告げた。担当者からは「ここで意見を聞いたが、更に述べたいことがあれば番組ホームページから投稿できるのでそちらを利用してほしい」と言われた。糞生意気な態度だが、取り敢えず担当者の案内に従い番組ホームページから上記の疑問を送った(文字数400字の制限あり)。

30日になってもメールの回答がなかったため、再度電話窓口に問い合わせたところ、電話に出た女性がスーパーバイザーに電話を繋いだ。氏は「番組は見ていない」としながらも「公務員がデモに参加してはいけないということはないと思う。私自身昔自治労の人たちとデモをした経験がある。そもそもデモへの参加は憲法で認められている表現の自由だ。公務員の政治活動禁止というならメーデーなどはできない」と語った。「そうだその通りだ。だが放送で真逆のことを流しているから私は間違いを指摘している」と伝えると、「今番組制作関係者の間で公式見解をまとめている。31日には判明するので再度電話してほしい」と語った。

31日、NHKよりメールが届いた。以下がその内容。

田所 敏夫 様

いつもNHKの番組やニュースをご視聴いただき、ありがとうございます。
(※田所注:うちにはテレビがないからいつもは見ていない。たまたま見ただけだ)

お問い合わせの件についてご連絡いたします。

今回のテーマ『デモ』は昨年相次いだ中東、ニューヨークでのデモや日本国内での反原発デモなど国内外で『デモ』に関する報道が多く伝えられていたことから、番組で取り上げることにしました。この為、「政治活動に該当するデモ行為」という前提で番組を構成しています。ご指摘のあった『公務員によるデモ行為』に関しては、投稿及び番組MCの発言を補足する為に、同時に表示したテロップの表記で、公務員の政治活動が禁止されると法律に基づく正しい情報を表示しています。

番組としては、全体を総合的に見れば、政治活動に該当するようなデモが国家公務員法で禁止されていることを伝えているものと考えます。その意味では放送した番組内容に誤りがあるとまでは考えておりません。ただし、ご指摘のように、内容に誤りがあるという感想を持たれた方がいることは事実であり、今後はより一層誤解の無いような番組制作を心がけていきたいと考えております。

今後とも、NHKをご支援いただきますようお願いいたします。
お便りありがとうございました。

「麻里子さまのおりこうさま!」担当
NHKふれあいセンター

相変わらず完全に間違っている。これがNHKの公式見解だというから恐れ入る。「政治活動に該当するようなデモが国家公務員法で禁止されている」などと平気でのたまっているがこれは完全に国家公務員法の解釈を誤っている。が、いくら私が説明しても埒が明かない。NHKは聞く耳を持たないのだから。

◆人事院審査課に国家公務員法102条の意味の詳細を確認してみると……

仕方なく2月1日に国の解釈を確認すべく人事院審査課に電話をして、国家公務員法102条の意味の詳細を尋ねた。審査課の担当者は「102条には人事院規則14-7があり、そこで細かい政治行為と政治目的を定めている」と解説してくれた上で「公務員が参加者としてデモに参加することは全く問題ないですよ。デモの際に暴力行為を働いたりすれば別の法律で罰せられますけどね」と教えてくれた。

「つまり公務員がデモに参加すること自体を法律で禁止はしていないのですね」との確認の問いに「そうです。私も偶然あの番組を見ていたんですがNHKさんは誤解をしているなと感じました」と正しい解釈を教えてくれた。

◆人事院の見解を基にNHKに再度確認を求めてみると……

さすがに人事院の見解に異を唱えることはできないだろうと、NHKに4度目の電話をかけデスクと話した「人事院に確認したところ、先にお送り頂いた文章の法解釈は完全に間違っている。公務員の人権侵害に該当するから訂正放送をする等しっかりとした措置を取るべきだ。どのような措置を取るか決まったら連絡してほしい」と伝えた。

「麻里子さまのおりこうさま」は当時ホームページ持っていて、過去の放送内容などを掲載していたが、問題の「デモ」を掲載した画面に2月1日午前中には記載のなかったコメントが午後になって付け加えられていた。

その内容は、

☆公務員のデモ行為は法律で制限されていますが、すべてが禁止されている訳ではありません。禁止されているのは、国家公務員法102条等で規定されている「政治的行為」に該当する行為です。番組でお伝えしたのも、そのような趣旨です。

というものだ。また間違っている!

この記述では「公務員は限定的にデモへの参加が認められる」としか読めない。人事院の言う「参加は問題ない」と大きくニュアンスが異なるし、テレビを見ていた人間の誤解を解くことは出来ない。再度NHK窓口に電話をかけスーパーバイザーと話をする。

「そういうご意見があったことは上司に伝えておく、こちらからかけ直すことは制度上できない」と言うので、「そもそもこの問題点を指摘したのは私であり、公式見解として受け取ったメールに間違いがあることの指摘をしたのも私の方だ。常に電話代を負担し、NHKの間違いを正すようにアドバイスをしているのであり、自分の意見を述べているのではない。人事院に調査を行ったのも私でそれによってホームページを訂正しているではないか。今から1時間以内に携帯に電話をかけてほしい。そうでなければこの経緯を各メディアに発表する。法律解釈を誤った私へのメールも公表する」と告げた。

後刻番組担当者氏より電話があり、「HPの文章、田所さんに送った文章とも訂正はしない、番組の中その他の訂正もしない」と回答があった。NHKの最終見解である。氏は「(私に)送ったメールは出来れば公開してほしくない」と述べたが、公式見解と言っておきながら公開を望まないのというのは自信のなさの現われだろう。

かように、家にテレビがなく友人宅でたまたま目にした番組が大嘘を垂れ流しているのだ。普通の方のように毎日テレビを見ていれば一体どれほどの誤報に遭遇するだろうか。

個人の好みだから差し出がましいことは言わないが、

「テレビを信用してはいけませんよ」

とだけはお伝えしておく。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ

◎基地も国民も「粛々」と無視して無為な外遊をし続ける安倍の「狂気と末期」
◎廃炉は出来ない──東電廃炉責任者がNHKで語る現実を無視する「自粛」の狂気
◎「テロとの戦い」に出向くほど日本は中東・アフリカ情勢を理解しているのか?
◎就職難の弁護士を貸付金強要で飼い殺すボス弁事務所「悪のからくり」

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見直すべきは選挙制度であって、憲法ではない──横浜「5.3憲法集会」報告

5月3日、横浜の「みなとみらい公園」で3万人を集めて行われた「5・3憲法集会」に行ってきた。公園内にブースが出ており、反原発で知られる活動団体「たんぽぽ舎」の横で、僭越ながら、鹿砦社の反原発マガジン「NO NUKES voice」や月刊「紙の爆弾」などの販売のお手伝いを微力ながらさせていただいた。

したがって、耳に入ってくる大江健三郎や落合恵子、香山リカなどのスピーチは断片的にしか聞こえず、残念だったが、それでもなお、「平和」と「命の尊厳」を基本に、日本国憲法を守り、活かすということ。そして、集団的自衛権の行使に反対し、戦争のためのすべての法制度に反対する、というスタンスは、賛同すべきものだ。

もちろん、ひとりのジャーナリストとして、改憲を含めて憲法について踏み込んだ答えを今、出すのは早計だと考えている。鹿砦社において、憲法について語る有能で知己をもつ先輩はたくさんいるし、ここで僕が叫んでも若さゆえに誰も聞く耳をもたないと思うので、声高に「憲法を守れ」と一席ぶつもりはない。ただ、僕は僕の経験の中で憲法を語ろう。

5月3日、横浜「みなとみらい公園」での「5・3憲法集会」にはおよそ3万人の人々が集まった

◆天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、憲法を尊重し擁護する義務を負ふ(憲法第99条)

まず、小学校3年生のときに、わりとリベラルな担任の教師のS氏は「日本には憲法九条があるから、戦争を絶対にしないのである」と何度も繰り返し言っていたのを強く覚えている。その説明は、もはや叫びに近かった。

もちろん、憲法は国の、政府のものであり、国民は基本的には追従する立場だ。どんな法律の入門書にも、たとえば行政書士の受験参考書にもそう書いてある。

憲法99条の条文はこうだ。

「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ」

つまり99条には、大臣や国会議員や裁判官に対して「憲法を尊重せよ」という義務が定められているのだ。ここで留意すべきは、国民にはこの義務を課していないということになる。つまり99条は国民ではなく、国家権力の担い手に「憲法を尊重し、 擁護せよ」と命令しているのだ。だから憲法の基本原理である「国民主権」「基本的人権の尊重」「平和主義」の3つを遵守すべきは、一次的には国家権力だ。

だから「原発推進」は、たとえば僕に言わせれば「国民主権」に反している。大間原発ひとつとってみても、あれだけ反対者がいるのに建設が始まろうとしている。そう、誰か登壇者がいみじくも語ったが、私たちは実は「憲法」を使いこなしていない。

それなのに現政府は、改憲だと言い出しているから目も当てられない。今、憲法は戦後最大の危機にあると言ってもいいすぎではない。もはやうだるような5月の暑さの中で、たくさんの人がこの集会に集まった背景には、「私たちの憲法が危ない」という危機感が現前としてあるように思う。

多くの人は脱原発社会で、平等な社会をめざし、貧困・格差の是正を求めている。もちろん僕もそうだ。それなのに、私たちの声は、たとえば国会の議場には届かない。

◆見直すべきは「選挙制度」であり、憲法ではないと思う

4月の地方統一地方選挙で、全国規模で考えれば「無投票当選」が300人以上出たという。だれしもが政治家になりたがらないのだ。民主主義が崩壊の危機にある。

このままでは「5人も殺しましたが、悔い改めてこれから政治の世界でがんばります」「ヤクザですが、市民のために頑張ります」という御仁が出てきても、理論的にはおかしくはない。基本的には、禁治産者でない限り、年齢さえクリアしていれば選挙には誰でも出れる。もちろん日本国籍があって供託金を払えればの話だ。

「このままでは、三権が少なくとも崩壊するね。まあ日本を動かしているのは行政府でも司法府、立法府でもなく、官僚なんだけどさ」と、全国紙の記者がつぶやいた。その通りだと思う。

自民党はごらんのとおりのていたらく。野党ももう機能しない。

たとえば民主党は、東京の千代田区の選挙で区議の定数が25もありながら、ひとりしか出せないていたらくだ。 そのひとりの候補者でさえ、連日のように海江田元代表がそこかしこに応援に来ていた。過保護にもほどがあるし、民主党も地に堕ちた。

さて見直すべきは「選挙制度」であり、憲法ではないと思う。政府は完全にはきちがえている。

たとえば私が住むさいたま市北区も無投票で候補者は全員が当選だ。ところが人口は1万4000人を超えている。1万4000人の行政を、たとえば無投票の候補者に全面的にゆだねてしまっていいのだろうか。

話を「5.3憲法集会」に戻せば、実に多くの方が鹿砦社やたんぽぽ舎の書籍を買い上げてくださった。心より御礼したい。

脱原発社会の実現を目指す市民ネットワーク「たんぽぽ舎」のブース

◆安倍政権の人権感覚は「オウム真理教」以下

閑話休題。なぜ「みなとみらい公園」でこの憲法集会は行われたのだろうか。聞けば毎年、いくつかの団体がバラバラに行っていたのが、今年は「政府が憲法改正などと言い出したから」、合同で行ったのだという。

問題の根っこは、みんなつながっている。米軍基地の普天間基地から辺野古への移設に反対している人たちが船上で海保に暴力に遭っている。 これも日本政府の傲慢だ。

僕はオウム真理教が大嫌いだ。歴史から抹殺したくなるような事件をいくつも起こしてきた連中だ。だが麻原という男は、ひとつだけ的を得ることをあるセミナーで言った。

「数が多いほうが正しい。こんなバカな話はない」

そう思う。

麻原でさえ、到達した事実に、安倍某という首相は気がついていない。

現在の政権の人権感覚のなさ、盲目ぶりは、僕に言わせれば「オウム真理教」以下のしろものである。なぜ「憲法集会」は、みなとみらい公園で行われたのだろうか。横浜は世界へと通じる船の玄関口だ。戦争も原発も、貧困も、差別の問題も、もはやグローバルに論じるべきだ。だからこそ、みなとみらい公園で憲法集会が開催されたのではないか。そんな気がするのだが考えすぎであろうか。

(小林俊之)

◎反原発の連帯──来年4月、電力は自由化され、電力会社を選べるようになる

◎731部隊の「ガチンコ人体実験」跡をユネスコが「世界文化遺産」と認める日

◎自粛しない、潰されない──『紙の爆弾』創刊10周年記念の集い報告

自粛しないスキャンダルマガジン『紙の爆弾』話題の6月号発売開始!

 

731部隊の「ガチンコ人体実験」跡をユネスコが「世界文化遺産」と認める日

「731部隊展覧会実行委員会/新宿区婦人問題を考える会」が主催する「731部隊を検証する 4.11公開学習会」に行ってきた。講師は、「731部隊」の研究では第一人者である、慶應義塾大学名誉教授の松村高夫氏だ。

たとえば文部科学省は、昨年1月、教科書検定基準を改定し、近現代史では、「政府の統一的な見解、または最高裁判所の判例が存在する場合には、それらにもとづいた記述がされていること」としたが、731部隊について記述した教科書は「政府見解と異なる」として検定意見をつけられる恐れがある。

なぜなら、731部隊は人体実験を行い、細菌兵器を開発、製造し、多くの中国人や朝鮮人、モンゴル人を殺してきた。だが、日本政府の見解は異なるからだ。2012年には、服部議員が国会で質問主意書を出したが、「731部隊は、防疫給水活動をしていたの であり、人体実験や細菌戦を行った資料はなく、事実と認めらない」と答弁した。日本政府は、ずっとこうした見解を崩していない。

だが、中国・黒竜江省で731部隊跡を世界文化遺産に登録する準備が進められているが、もしユネスコで登録の 議論が深まり、登録が実現して世界の注目を浴びるようになったら、果たして日本政府は外圧に負けずに、同じ回答を維持できるのだろうか。

◆731部隊当事者から聞き取りを行った「フェル・レポート」の存在

「731部隊」研究の第一人者、松村高夫=慶應義塾大学名誉教授

そうしたことを踏まえての松村名誉教授の講義は、当時の731部隊の関係者から聞き取りを行った「フェル・ レポート」や「ヒル・レポート」にも言及した。たとえば、「フェル・レポート」にはこう記述がある。「炭疽菌」についての記述だ。

『野外試験の完全な細部の記述と図表がある。ほとんどのばあい人間は杭に縛りつけられ、ヘルメットとよろいで保護されていた。地上で固定で爆発するもの、あるいは飛行機から投下された時限起爆装置のついたものなど、各種の爆弾が実験された。雲状の濃度や粒子のサイズについては測定がなされず、気象のデータについてもかなり雑である。日本は炭疽の野外試験に不満足だった。しかし、ある試験では15人の実験材料のうち、6人が爆発の傷が原因で死亡し、4人が爆弾の破片で感染した(4人のうち3人が死亡した)。より動力の大きい爆弾(「宇治」)を使った別の実験では、10人のうち6人の血液中に菌の存在が確認され、このうち4人は呼吸器からの感染と考えられた。この4人全員が死亡した。だが、これら4人は、 いっせいに爆発した9個の爆弾との至近距離はわずか25メートルであった。』(『<論争>731部隊』(松村高夫著)より。

これだけとってみても、日本政府は嘘つきだ。731部隊はガチンコで人体実験をしているではないか。これは、 「細菌戦に従事してきた日本の重要な医学者」に聞き取りをしたレポートなのである。

松村名誉教授は語る。

「細菌散布による犠牲者は、8地域で死者数合計1万694人が認定されています。いまだに被害者数をはじめ、731部隊と細菌戦の実態が明らかにならないのは、資料の隠匿にも起因しています。公開された関連資料には、ソ連のハバロフスク裁判 (1949年)の「公判書類」、アメリカの戦後1945~47年の4次の報告書、(特にフェルとヒルの報告書が重要)、中国の『細菌戦と毒ガス戦』(1989年)などがあるが、肝心の日本が資料を公開していないのです」

◆731部隊の石井四郎軍医にも尋問している「ヒル・レポート」

「731部隊」を率いた軍医、石井四郎にも尋問した「ヒル・レポート」にはこうある。

『倉沢の病理標本は、ハルビンから石川太刀雄によって1943年に持ってこられた。それは、約5000の人間の事例からの標本から成っている。そのうちの400だけが研究に適した標本である。ハルビンで解剖された人間の事例の総数は、岡本耕造博士によれば、1945年に1000以下であった。この数は石川博士が日本に帰ってきたときのハルビンに現存していた数より約200多い。最初に提出された標本目録の結果からして、多くの標本が提出されていないことが明らかであった。しかしながら、最初提出されたよりも著しく多い標本の追加的コレクションを入手するには、多少催促をするだけでよかった。』

「ヒル・レポート」によれば、様々な疾病毎の事例数と研究に適した標本の事例数は、850の記録事例があったが、401例が適した標本であり、317例は標本がない。これは岡本博士の説明によるものであり、彼は500を越えない事例が石川博士によりハルビンからもってこられたことに疑いをもっている、とのことだ。

「最初に提出された標本目録の結果からして、多くの標本が提出されていないことが明らかであった」の部分に はあきれる。石井四郎軍医は、「アメリカにすべての資料を提出」することで戦犯を逃れ、命ごいをしたにもかかわらず、まだ何かを隠そうとしていたのだ。

「731部隊の戦犯」たちよ! 僕はこの戦犯たちを決して許さない。もしも許したときに、国家がまた戦争に突入したような「暴発」が始まるとも限らないのだから。政府よ!「731部隊」の戦犯が何をしたか明らかにせよ。そのことが最大の「反戦」である。

(小林俊之)


[参考動画]731細菌戦部隊と現在(1)松村高夫=慶應義塾大学名誉教授(2014年3月31日公開)

◎占領期日本の闇──731部隊「殺戮軍医」石井四郎はなぜ裁かれなかったのか?
◎追跡せよ!731部隊の功罪──「731部隊最後の裁判」を傍聴して
◎反原発の連帯──来年4月、電力は自由化され、電力会社を選べるようになる

いま必読のガチンコ対論本!内田樹×鈴木邦男『慨世(がいせい)の遠吠え 強い国になりたい症候群』

 

「KY」が気持ち悪くて堪らない──「同調圧力」は子供のようにぶっ潰せ!

「最近は」や「かつては」といった言葉で文章を書き始めるたびに、「ああ、自分も年をとったんだなぁ」と実感する。事実毎年年齢を重ねてきて無為に生きてきてしまったのだから一般的な「老化現象」の初期症状は甘受しなければいけないのだろう。被害者はそれを受け止めざる得ない人たちだ。つまり本コラムで言えば読者の皆さんが「初期老化現象」の被害者なのだが、我慢して読んでいただくとしよう。

カタカナの造語や流行言葉の意味がわからない時「そんなもんわかるかいな」と開き直ると、この態度自体が「初期老化現象」ともいえるのだろう。その恥ずかしい例をご紹介する。

「KY」(空気を読む)という言葉が2006年頃に流行した。2007年には流行語大賞の候補にもなった。元は若者が「空気が読めない、空気を読まない」意味の頭文字を短縮し使い出したところに語源があるらしい。

若者の造語はどんどん生まれてくる。中には定着して日常会話でも使われるようになるもののあるし、立ち消えるものもある。

そんな中にあって「KY」(空気が読めない、空気を読まない)は単なる略語ではなく、今日的な社会の特徴を捉えた含蓄に富む言葉ではないかと思う。「空気が読めない」の空気は「場の雰囲気」と置き換えても意味は変わらないだろう。若者の間では楽しい会話をしてる時、急に自分勝手な話題を展開する子供などがそれに該当するのだろうが、これを大人の社会に当てはめるとどうなるだろうか。

◆古賀茂明氏を「KY」呼ばわりした江川昭子の言には反吐がでる

「KY」は肯定的な意味として使われるわけではない。「空気が読めない」人は困った人だったり、面倒くさい人という無言の了解がある。たとえば3月末に「報道ステーション」の中で自らの降板についての見解を述べ、司会者の古舘伊知郎と口論になった元経産相役人古賀茂明氏の言動なども江川昭子からは「公共の電波で自分の見解を伝えるという貴重な機会を、個人的な恨みの吐露に使っている人を見ると、なんとももったいないことをするのか…と思う」と批判を受けているから大人として「空気を読まない」行動ということになるのだろう(繰り返しになるが私はテレビを見ないのでネット上でその場面を目にしただけだが)。

私は古舘氏も古賀氏も江川氏も意見や行動に同意しているわけではないのでその点から言えば、3者に対する評価は等価である。そこで江川氏の古賀氏批判なのだが、要するに「KYじゃないか」、「テレビの生中継らしい振る舞いをしろよ」という指摘ではないかと私には思える。この批判には納得しかねる。私がテレビを見ない一番の理由は「一方的な価値観を押し付けてくる」息苦しさが嫌いだからだが、同様に「どんな場合でも『予定調和』を崩してはならないとする気持ち悪いまでの気遣い」も堪らない。江川氏の指摘は正に私がもっとも嫌悪する『予定調和』の押し付けルールを古賀氏が乱したことに向けられている。

いいじゃないかそんなもの壊してしまえば。

◆理不尽に黙っているのは美徳ではない

これはテレビの画面の中に限ったことではなく、日々社会生活の中でかなり浸透している「無意識的」な「同調圧力」と関係がありそうだ。相当大雑把に言えば、井戸端会議や親しい友人との会話以外の場面で日本人は「議論」を忌避する傾向にあると思う。それは「会議」の中だってそうだ。会社に行けば「何でこんな馬鹿げた会議をやらなきゃいけないのか」と辟易する定例会議がないだろうか。

「会議」とは名ばかりで上役が勝手な方針を語り、担当者は黙ってその意向を聞かされるだけ。「こんな一方的な上意下伝なら、会議の意味ないじゃないですか。やめませんか」などとは間違っても発言できない。そんなことは「KY」だからご法度だ。

どうしようもない講師の講演会や勉強会などに無理やり出席させられたりした場合もそうだ。「そんな馬鹿なことあるか」と思っても会場からそれを発言することは「KY」だ。

私はこの「KY」が気持ち悪くて堪らない。だから静まり返った会議の席からも講師に質問を投げかけるし、納得できない話に拍手をすることなどめったにしない。

もう少しいえば「KY」は言葉のやり取りや態度だけに限られるものではないだろう。なぜか横並び。そこそこの好き嫌いはあっても所属している集団から逸脱する懸念のある態度や行為は無意識のうちに抑制が働く。理由を問うても「だって仕方ないだろう」が帰ってくるのが関の山だ。個人主義が発達したように見えて実は窮屈になってはいないだろうか、あなたの生活の中での他者への気遣い。

忙しいし、何かと気疲れする毎日の中でいちいち目くじらを立てろなどというつもりはない。だが「神は細部に宿る」との比喩があるとおり、途方もない不正義と矛盾にあふれた今日のこの社会は我々の慎ましやかな日常の積み重ねの上に成立している。理不尽に満ちた日々ならば、ほんの少しだけ行動を変えたり、一言だけ異議申し立てを口にすることは決して意味が小さくはないと思う。礼を失する行動を推奨しているわけではない。理不尽に黙っているのは美徳ではないといいたいだけだ。

本音を申し上げれば、「KY」(空気が読めない、空気を読めない)人間こそ日本に不足している個性だと思う。同調圧力を土台にした予定調和なんかどんどんぶっ潰せばいい。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ

◎労働者にメリット・ゼロの「残業代ゼロ」法案を強行する「悪の枢軸」企業群
◎「テロとの戦い」に出向くほど日本は中東・アフリカ情勢を理解しているのか?
◎貴様!何様!産経様!──全ておかしい産経【主張】に逐一「喝!」を入れてみた

日本を問え!内田樹×鈴木邦男『慨世(がいせい)の遠吠え─強い国になりたい症候群』

 

国民監視を強め「とことん吸い上げる」ための住基ネットとマイナンバー制度

「住基ネット」(住民基本台帳)という大変便利なシステムが2002年から導入されている。読者の皆さんは既にその「恩恵」を受けているはずだ。「恩恵」を受けているけれども、その実いったい「住基ネット」ってなんだ?とご存知ない方も多いであろう。

◆「無理矢理」個人識別番号が付与される「住基ネット」は気持ち悪い制度

簡単に説明しよう。総務省によると「住基ネット」(住民基本台帳)は 、
「住民基本台帳は、氏名、生年月日、性別、住所などが記載された住民票を編成したもので、住民の方々に関する事務処理の基礎となるものです。住民基本台帳の閲覧や住民票の写しの交付などにより、住民の方々の居住関係を公証するとともに、以下に掲げる事務処理のために利用されています。
・選挙人名簿への登録
・国民健康保険、後期高齢者医療、介護保険、国民年金の被保険者の資格の確認
・児童手当の受給資格の確認
・学齢簿の作成
・生活保護及び予防接種に関する事務
・印鑑登録に関する事務 」だそうだ。

「住基カード」を受け取っている人も受け取っていない人にも、既に個人識別の番号が「無理矢理」付与されている。こんな気持ち悪い制度、私は勿論大嫌いだからカードを受け取ってもいないし、私に「無理矢理」付与された番号も知らない。

◆総務省は「510億円の経費削減」と言うが、国民には「無用の長物」

総務省のHPではあれこれ「住基ネット」のメリットが書かれているけれども、こんなもの多額のシステム導入費をかけてわざわざ導入するほどのメリットがあるのだろうか。

総務省の「住基ネットはどのように役立っているの?」では、「以下に掲げる住民基本台帳法に定められた国の行政機関等や地方公共団体の事務の処理に関し、約5億6,000万件(平成25年度)の本人確認情報の提供が行われています。
・パスポートの発給申請
・厚生年金、国民年金等の支給
・恩給、共済年金の支給
・司法試験
・建設業法による技術検定 など」とされている。

が、私の身近な厚生年金、共済年金受給者の中に「住基ネット」を利用している人はいない。「司法試験」や「建設業法による技術検定」などに関係する人は国民全体から見ればごくごく少数に違いない。パスポートの申請だって通常は10年に1度の手続きだ。「年間130億円のコストがかかり510億円の経費削減」に貢献していると総務省は言うが、国民の側から見ればこんなものは、「無用の長物」以外の何物でもない。

◆住基ネットのさらに上をいく「マイナンバー」導入の権力濫用

ところが「無用の長物」のさらに上をいく「マイナンバー」制度が導入されようとしている。

内閣官房によると、
「マイナンバーは、住民票を有する全ての方に1人1つの番号を付して、社会保障、税、災害対策の分野で効率的に情報を管理し、複数の機関に存在する個人の情報が同一人の情報であることを確認するために活用されるものです。

マイナンバーは、行政を効率化し、国民の利便性を高め、公平かつ公正な社会を実現する社会基盤であり、期待される効果としては、大きく3つあげられます。
1つめは、所得や他の行政サービスの受給状況を把握しやすくなるため、負担を不当に免れることや給付を不正に受けることを防止するとともに、本当に困っている方にきめ細かな支援を行えるようになります。(公平・公正な社会の実現)
2つめは、添付書類の削減など、行政手続が簡素化され、国民の負担が軽減されます。また、行政機関が持っている自分の情報を確認したり、行政機関から様々なサービスのお知らせを受け取ったりできるようになります。(国民の利便性の向上)
3つめは、行政機関や地方公共団体などで、様々な情報の照合、転記、入力などに要している時間や労力が大幅に削減されます。複数の業務の間での連携が進み、作業の重複などの無駄が削減されるようになります。(行政の効率化)」とされている。

「住基ネット」でこのようなことは出来ないのか(してほしくはないけども)と疑問が湧くだけでなく、恐るべき本音が浮かび上がる。「負担を不当に免れることや給付を不正に受けることを防止するとともに」という文言だ。

これは要するに「行政がより監視を強める」との宣言に他ならない。「本当に困っている方にきめ細かな支援を行えるようになります」などという客引きまがいの釣り言葉に騙されてはならない。「公平・公正な社会の実現」を目指すなら高額所得者から所得税をしっかり取り、消費税を撤廃すればいいじゃないか。詐欺まがいの口上でまたも国民を騙そうとの意図がありありとうかがわれる。

「マイナンバー」が導入されたところで、これは「住基ネット」の「屋上屋根」のようなものだから、仮にあなたが経済的に窮乏しても行政から「生活保護が受けられますよ」などといった申し出がなされることはない。現在窓口に「生活保護」申請に出向いてもあれこれ難グセをつけられ断られることが社会問題化しているのに、その対策を論じることなく単に国民に「2重」の識別番号を付与してどんな福祉政策が展開されるというのだ。

2つ目に「行政手続きが簡略化される」とあるが、それならば【太字】なぜ今ある「住基ネット」を活用しないのだろうか。「行政機関が持っている自分の情報を確認したり、行政機関から様々なサービスのお知らせを受け取ったりできるようになります」とあるが、そんなもの今でも市役所や区役所に行けば問題なく確認できることばかりだ。

3つ目に「3つめは、行政機関や地方公共団体などで、様々な情報の照合、転記、入力などに要している時間や労力が大幅に削減されます。複数の業務の間での連携が進み、作業の重複などの無駄が削減されるようになります。(行政の効率化)」と言っている。これは「住基ネット」が「全く行政の効率化に役立たなかった」と開き直っているのと同義である。

◆「税金の滞納や未納、不正受給を徹底して洗い出す」ための「マイナンバー」

つまるところ、「マイナンバー」は決して福祉目的ではなく「税金の滞納や未納、不正受給を徹底して洗い出す」のが主目的であることは明らかだ。

「平成27年10月に、皆様にマイナンバーを通知するための通知カードが配布されます。 また、平成28年1月以降には、様々なことに利用出来る個人番号カードが申請により交付されます」らしいが、ここで登場する「通知カード」は「通知カードは全ての方に送られますが、顔写真が入っていませんので、本人確認のときには、別途顔写真が入った証明書などが必要になります」ということで、これは「全く何の役にも立たない行政の無駄」の典型に他ならない。

また「個人番号カードは、券面に氏名、住所、生年月日、性別、マイナンバーなどが記載され、本人の写真が表示されます。平成27年10月に通知カードでマイナンバーが通知された後に、市区町村に申請すると、平成28年1月以降、個人番号カードの交付を受けることができます」というわけで、これもわざわざ役所まで出向いて写真を提出するなどしないと入手できないし、入手したところで役に立つのは「本人確認」の時だけだろう。

健康保険証や免許書があれば本人確認は出来るのに、わざわざこんな面倒くさい手続きを喜んでする人がどのくらいいるだろうか。

「マイナンバー」制度はしきりに「本人確認に使えますよ」と宣伝をしているが、逆に言えば取得してもそれくらいの利用価値しかないということだ。

だが、この悪辣な国家は窮乏している人達を主目標に「とことん吸い上げる」為に「マイナンバー」制度を導入する。こんな制度が導入されて普通の国民には何の利益もないことは明白だ。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ

◎労働者にメリット・ゼロの「残業代ゼロ」法案を強行する「悪の枢軸」企業群
◎基地も国民も「粛々」と無視して無為な外遊をし続ける安倍の「狂気と末期」
◎「テロとの戦い」に出向くほど日本は中東・アフリカ情勢を理解しているのか?
◎自民党の報道弾圧は10日施行の秘密保護法を後ろ盾にした恫喝の始まり

さらば「護憲派」! 「改憲主義者」の憲法条文改正案を公開する!

今や満身創痍の感すらある「日本国憲法」が1947年施行されて今日で68年になる。私の高校時代に政治経済を教えてくれた先生が「私は5月3日が誕生日なので『憲治』と名付けられました。私はこの名前をとても気に入っています」と話していたのを思い出す。師は数年前に定年退職されたはずだが、「日本国憲法」には「退職」してもらうわけにはいかない。

かといって、私はゴリゴリの「護憲」主義者ではない。日本国憲法が保持する精神の大方には賛同しつつも、自主憲法制定を「党是」とする自民党や多くの「改憲主義者」の目指す方向とは全く異なるが、厳密に分類すれば私は「改憲主義者」である。なぜか。それは「日本国憲法」の前文とそれに続く1条から8条の間に横たわる、あまりにも大きい乖離と不和解をどうしても受け入れることができないからだ。

◆私たちは憲法の前文に見合うような「努力」をしてきただろうか?

「日本国憲法」前文は文章として読んでも相当に躍動感がある。今この時代には考えられないような崇高な文章だが、それを生業とする人が「語る」と刺激や味わいは倍化する。「テレビに出ることのできない芸人」松元ヒロ氏の「憲法前文」はその好例だろう。

「革命宣言」と言っても過言ではないようなみずみずしい言葉が並ぶ「憲法前文」は、その思想性と到達目標の高さにおいて、芸術の域に達しているともいえよう。省みて私達はこの憲法前文に見合うような「努力」をしてきただろうか。政治家はこの理念を頭において行動しているだろうか。

さて、前述の通り私は「憲法前文」や9条以降には賛同するけれども。1条から8条までは、どう考えても納得がいかない。この憲法が施行された第二次大戦直後とはそれまで「現人神」だった天皇が「人間宣言」をした直後という事情を鑑みれば、この不徹底さは致し方なかったのかもしれないが、それこそ施行からもうすぐ70年になろうとしているのだ。自民党や「改憲派」が言うように「時代に合わせた」憲法を、彼らとは正反対の立場から、現憲法の精神を保持しながら模索するのは許されないことではあるまい。

◆これが私の改憲案──条文をこう改正すれば、憲法前文の理念を実現できる!

そこで私の改憲案を以下記す。

前文=現行憲法のまま

1条 日本国の主権は国民に存する。外国籍をもつ居住者にも不利益がないように諸法律は配慮されなければならない。

2条 天皇制、貴族制その他出生により身分を定めるあらゆる制度、因習はこれを絶対的に排除する。

3条 日本国に生活する人々は平等に生まれ平等に生活する権利を保持する。

4条 あらゆる差別はこれをしてはならない。差別を温存、助長するいかなる制度も認めない。

5条 日本国は国民に強制するいかなる国旗、国歌も保持しない。

6条 日本国民は本憲法に対立し、国民の恵沢に尽力しない政府が成立した際はその政府を排除する権利を有する。

7条 国会議員及び公務員は国民の福祉実現の為に尽力する公僕であり、その権力を過剰行使することはあってはならない。

8条 国民は主権者たる責務と公正な社会の実現に向け努力する義務を負う。

9条以降=そのまま

2015年5月3日現在、日本国憲法21条により「言論表現の自由」は、まだ認められている。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ

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◎読売「性奴隷表記謝罪」と安倍2002年早大発言が歴史と憲法を愚弄する
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占領期日本の闇──731部隊「殺戮軍医」石井四郎はなぜ裁かれなかったのか?

3月22日、ウィズ新宿にて開催された西里扶甬子(にしさと・ふゆこ)さんの講演「証言で辿る731部隊の最後」 に行ってきた。

今現在、「731部隊展実行委員会」では、「731部隊映像コンテスト」の出品作品を集めており、その「事前学習会」という位置づけの学習会だ。731部隊の直接的な関係者がどんどん亡くなっていく中で、直接、部隊の生き残りや被害者遺族の声を聞いた西里さんの取材資料は極めて貴重だ。

西里扶甬子『生物戦部隊731―アメリカが免罪した日本軍の戦争犯罪』(草の根出版会2002年5月)

731部隊とは、正式名称を「関東軍防疫給水本部」という。1932年に陸軍軍医学校に「防疫研究室」を設立。中国・背蔭河に「東郷部隊」を設置し、小規模な人体実験を開始した。38年、ハルビン郊外に細菌の研究・製造・実験のための巨大な秘密施設が建設された。これが満州第731部隊本部だ。日本の憲兵隊は抗日戦士らを捉え、裁判にかけることをせずに、特移級として731部隊に送り込んだ。そして3千人もの中国人・ロシア人、朝鮮人、モンゴル人などを使って細菌・凍傷・毒ガスなどの実験を行い、全員を殺害。これらの実験を担ったのが、石井四郎を中心とする軍医だ。

西里さんは海外メディアの日本取材のコーディネーターで、インタビュアー、ディレクターだ。2001年からドイツテレビ協会(ZDF)東京支局のプロデューサーを務め、現在は契約プロデューサーだ。著書として「生物部隊731」、翻訳本として「七三一部隊の生物兵器とアメリカ」をリリースしている。

西里さんはとりわけ、「医学的、軍事的、歴史的、専門分野に属さないドラマチックな場面を切り取って紹介したい」と、731部隊の基本的な知識を展開した上で、部隊長の石井四郎の娘に取材したときの内容や、石井四郎が脱出・帰国したときの経緯などを解説してくれた。

◆石井四郎は「保身のためにアメリカに実験データを売り渡した」

興味深い点は、石井四郎の長女、石井春海さんの証言で、731部隊の資料をすべてアメリカ側に渡したとされるが、「ずいぶんあとになって父がひとりのこらず戦犯にならないように部下たちを全部助けるのが条件だったって。研究情報も80%しか渡していない」と春海さんが話していた事実だ。

それでは、「なんのために石井は資料を残したのだろうか。残りの20%はどうなっているのだろうか」と私は質問した。

「アメリカに対して交渉のカードを残したのでしょう。今もどこかに残りの資料があるはずですが、これこそもっとも危険なものだと私は考えます」と西里さんは話した。この「20%の残りの資料は何か」で1つ小説が成り立ちそうだ。

今もなお、731部隊の問題が語られるのは、「当時、多くの中国人やモンゴル人などを殺戮した戦犯たちが今も裁かれていない」という点が注目される。ところが、「なぜ戦犯たちが裁かれないのか」という点は、今ひとつ忘れさられようとしている。そう、石井四郎が「部下も含めて自分や家族の保身のためにアメリカに実験データを売り渡した」からだ。

◆「満州の細菌部隊の中で、航空機をもっていたのは、731部隊だけだった」

西里扶甬子(にしさと・ふゆこ) =北海道札幌市生まれ。北海道大学英米文学科卒業後、北海道放送アナウンサー室入社。報道部を経てオーストラリア放送(ABC)へ転職。メルボルンからの日本向け短波放送(ラジオ・オーストラリア)のアナウンサー・翻訳者として3年間勤務。1977年に帰国、海外メディアのコーディネーター、インタビューアー、プロデューサーとして活動し、2001年からはドイツテレビ協会(ZDF)東京支局の契約プロデューサー。主著に『生物戦部隊731―アメリカが免罪した日本軍の戦争犯罪』(2002年5月草の根出版会)など。

春海さんはこう証言している。

「父は関東軍の山田乙三司令官や竹田の宮様と話しあって、特殊部隊なので、一人も残さず引き上げさせたいと粘ったそうです。それで先に帰って態勢を整えろと言われた.私たちが山口県の先崎で船に着いたのが(終戦の年の)8月31日で、その2日前に父は自家用機で羽田か厚木に着陸したはずです。9月は、東京の若松町の自宅にいました。私たちも一緒でした。陸軍省の幹部と打ち合わせをやっていました。復員してくる人たちと本当に密室で会っていました。マッカーサーが厚木に降りたときに『ジェネラル石井はどこだ』と聞いた。それは、マッカーサーは非常に科学的なかたで、石井に聞きたいことがあるということだったのに、側近が誤解して、石井が巣鴨に拘置されるとたいへんだということで、服部参謀など陸軍省が父を隠したわけなの。加茂にも確かいましたね。日本特殊工業の宮本さんの東北沢のお宅にもいたと思います。何カ所か移ったと思います。その間の根回しは服部参謀がやっていました」

ここに出てくる「日本特殊工業」とは731部隊の施設の施行をしていた会社で、戦後、急遽、飛行機で日本に戻ってきた石井を当時、社長だった宮本がかくまったというのが、多くの人が指摘するところだ。

西里さんは、石井専用機が熊谷飛行場に着いたときに、その機体を発見し、飛行機から羅針盤を抜き取っていた松本征一パイロットの証言もとっている。

松本さんによると「満州の細菌部隊の中で、航空機をもっていたのは、731部隊だけだった」とのこと。つまりこの実験部隊は、戦略的にも重要だったのだ。

◆証言多数の731部隊「実験殺戮」が「なかった」ことになっている戦後70年

さらに、未来にわたって責められる事実として、石井四郎は、多くの人を実験で殺戮しつつも、自らはとっとと帰国していたのだ。そして慧眼をもつ石井は、ソ連よりもアメリカが世界の中枢になっていくことを見越して、アメリカに資料を渡す。

この講演の参加者は語る。

「吐き気がするような話だね。政府は今もなお、731部隊が防疫給水のための部隊で、誰も殺戮していないと主張している。まさにヒトラーのユダヤ殺害に匹敵する悪業なのに、石井は誰にも裁かれず、731部隊などもうなかったかのようなムードだ」

戦後70年がたち、「戦争」を証言する人はつぎつぎと亡くなっている。しかし旧日本軍よ、政府よ! 731部隊は「なかった」ではすまない。

従軍慰安婦とはちがって、こちらは山のような証拠があるのだから。

(小林俊之)

《参考動画》 西里扶甬子「731部隊,原爆,ABCC,そして福島~科学者の倫理を問う」
(立命館国際平和交流セミナー=2014年8月4日広島)※2014年8月6日三輪祐児氏公開

《参考資料》 西里扶甬子「731部隊の秘密を追って 奉天捕虜収容所で何があったか?60 年後に判ったこと?(PDF)」 (POW研究会調査レポート)

◎追跡せよ!731部隊の功罪──「731部隊最後の裁判」を傍聴して
◎自粛しない、潰されない──『紙の爆弾』創刊10周年記念の集い報告
◎反原発の連帯──来年4月、電力は自由化され、電力会社を選べるようになる

話題の対論本!内田樹×鈴木邦男『慨世(がいせい)の遠吠え 強い国になりたい症候群』

 

 

もしもいま、日本で韓国の高校生たちが「集団万引き」をしたらどうなるか?

日本の高校のサッカー部員らがこの3月、韓国で「集団万引き」をした事件で、被害に遭ったソウル・東大門のショッピングモールの商店主たちが、処罰を望まないという意思を警察に伝えていたことが分かった。4月14日の朝鮮日報日本語版によれば、商店主たちは、高校生らが韓国で重い処罰を受けた場合、東大門商圏の主な顧客である日本人観光客たちの客足が途絶える可能性があると懸念したという。

ソウル中部警察署が4月13日に発表したところによると、被害に遭った9店舗のうち一部の店主たちは「日本の高校生たちに寛大な措置を講じてほしい」との意向を警察に伝えたという。店主たちはその理由として「高校生たちは未熟で、彼らが処罰を受けた場合、周辺の商圏に否定的な影響を与えかねない」と述べたという。

埼玉県の私立高校がソウルへ練習試合に出かけた帰路、集団(22人)で万引きを行ったことが発覚した事件だ。東大門のショッピングモールと表現されているが実際は小さな商店が軒をならべる「市場」と言った方が似つかわしい雰囲気の場所だ。

この悪戯が過ぎる高校生たちは、親や学校からこっぴどく叱ってもらわねばならない。高校生(中学生)の集団万引きは今日に始まったことではなく、「あれが欲しい」という動機ではなくても「あいつがやっても大丈夫だから」と付和雷同的に引きずられ、ついつい気楽に悪さをしてしまう。そんな心理が生徒たちには働いたのだろう。

◆「ブルー・ライト・ヨコハマ」を歌えた80年代韓国の不良たち

同様の「悪さ」は昔、韓国でも問題になったと留学生から聞いたことがある。韓国社会は急変しつつあるとはいえ、いまだ日本に比べれば封建的な側面が残っており、特に「教師」への尊敬の念は幼少の頃から叩き込まれる。だから日本同様に生徒同士の喧嘩や、万引きなどは同じように昔からあったけれども、「正面切って教師に刃向う」不良生徒は皆無だったそうだ。

そして韓国では80年代まで多くの高校で日本の詰襟同様の制服が残っていて、不良生徒は丈の長い上着に、ズボンをダブダブに太くするのが「不良文化」だったそうだ。誰が伝えたのか(自然発生なのか)知らないけれども、似なくてもいいところが似るものだ。もっとも詰襟の制服は日本支配時代の遺物であり、彼らは「ラジオ体操」まで学校で習っていたというから笑えない歴史でもある。

そんな韓国の不良たちはラジカセを抱えてタバコを吹かしながらある日本の歌謡曲を繰り返し聞いていたという。それはいしだあゆみの「ブルーライト横浜」だ。なぜに「ブルー・ライト・ヨコハマ」なのか、複数の元不良に調査したが誰も理由は分からないと言っていた。日本語が分からなくても「ブルー・ライト・ヨコハマ」を歌える不良が結構いたらしい。

◆もしもいま、韓国の高校生たちが日本で「集団万引き」をしたら……

さて、今回の集団万引き事件だが、もし逆の事が日本で起こっていたら、どんな報道がされて、インターネットではどんな言説が飛び交っていただろうか。こんな「仮定」自体が韓国には失礼だけれども、想像するだけで気分が悪くなるようなヒステリックな差別が飛び交っていたのではないか。

問答無用の「嫌韓人」には何も伝わらないだろうけれども、「東大門のショッピングモールの商店主たちが、処罰を望まないという意思を警察に伝えていたこと」ことは謙虚に受け止めるべきではないだろうか。

日本だけにいると、あたかも韓国は世界中から嫌われているかのような雑誌の特集や書籍を多く見かけるが、毎年BBCが実施している国別好感度調査によると2014年度日本の好感度は第5位で韓国は11位だ。逆に嫌悪度では日本が11位で韓国が9位だ。因みに好感度1位はドイツで最下位はイスラエルとパキスタンである。参考までに米国の好感度は8位で嫌悪度は7位となっている。

世界は多様な価値観で構成されている。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ

◎大阪発の映画『60万回のトライ』で知ったラグビー界の自由と公平
◎不良と愛国──中曽根康弘さえ否定する三原じゅん子の「八紘一宇」
◎就職難の弁護士を貸付金強要で飼い殺すボス弁事務所「悪のからくり」
◎関西大で小出裕章、浅野健一、松岡利康らによる特別講義が今春開講!

内田樹×鈴木邦男『慨世(がいせい)の遠吠え─強い国になりたい症候群』

 

《誤報ハンター03》「テロの危機」煽れば増える「警備利権」と警察天下り

裏がようやくとれたので「アサヒ芸能」の誤報について書く。その記事は2月26日号の「戦慄スクープ イスラム国『東京マラソン2.22襲撃』は防げない!」についてだ。

「東京マラソン」については、マラソンコースを走りながら警備する警官、「ランニングポリス」が話題になった。たとえば、毎日新聞の2月22日にはこう出ている。

日本最大規模のマラソン大会「東京マラソン2015」が22日開催され、3万5797人が都心部を快走した。テロ対策を強化した警視庁は約4500人の警察官を投入。国内のマラソンでは初となる「ランニングポリス」も初めて導入した。警備部所属の男女計64人が2人1組で、それぞれ割り当てられた10キロほどの区間をリレー形式で市民ランナーに伴走。頭に着けた小型カメラで沿道の様子を撮影、ライブ映像を警視庁本部に送信した。

都庁(新宿区)から日比谷公園(千代田区)までを担当した中澤浩警部(43)は「沿道の様子がかなり把握できた。小型カメラも気にはならずマラソンには有効な警備になる」と話し、「観客やランナーから『警備頑張って』と声援をいただき励みになった」と振り返った。【岸達也】(毎日新聞

◆「東京マラソン」一日で数百万円を売上げる警察天下り先の警備会社

確か、「東京スポーツ」(2月14日)でも東京マラソンのテロの可能性は指摘された。

実は、この「東京マラソン」には警備員が6000人ほど配置された。例年よりも1000人増やしているのにはからくりがある。

「警備会社としては、1日で数百万円を売り上げるおいしいイベントです。実は、この『イスラム国が東京マラソンを狙っている』という情報は、警察庁が、天下り先の警備会社を儲けさすために流した情報だということです。実際、この情報が流されたのは、1月の末のこと。警察から警備会社に流れたOBたちが、警察幹部と赤坂で会合をもってからすぐの出来事ですから、これはもう、出来レースだと見ていいでしょう」(全国紙社会部記者)

そして、配置された警備員も、短時間で稼げるおいしいバイトとなった。
「なんせ、コースから応援する人がはみ出ないように『人の盾』となるだけ。かかしになっていれば4時間で8000円ですからおいしいバイトですよね。警察から流れてきた仕事なんですか? どうりで支社でも幹部たちがやたら警察の幹部に挨拶に行くわけですね」(警備員)

◆「元警官」を日当2万円で1000人弱雇った「警視庁雇用」枠

実は「元警官」も「警視庁雇用」枠で1000人近くが呼ばれており、「日当2万円なり」をゲットしたとされる。

「70歳とか73歳とかの年寄りが通行止めのポイントに立っていました。彼らがうまく車を裁けるのかどうかヒヤヒヤして見ていましたが、うまく裁いていましたね。でもこういうイベントのたびに『小遣いを稼げる』から、役所のOBっていいですね」(同)

筆者も短い時間、警備会社で短時間にアルバイトをしていたが、実は警察OBが偉そうにしているのを間近で見た。彼らは、警察から仕事をもってくるための「大切な人質」だったのだ。

かくして、各マスコミには、「東京マラソンが危ない」という情報があふれ出る。アサヒ芸能は、東京マラソンが危ないという話を、大学教授を使って展開している。

「イスラム国が最も憎む相手、それはいまだにキリスト教側の白人です。しかし、安倍政権が〝積極的平和主義〟を打ち出して以降、反日感情が高まってきているのは事実でしょう。そして基本的に彼らのテロの成功は、その脅威を世界的に見せつけること。もし日本国内でテロの標的になるとしたら、場所としてはやはり首都・東京が最も危険。中でも世界的スポーツイベントの東京マラソンは、格好のターゲットです」こう指摘するのは、国際テロが専門の青森中央学院大学の大泉光一教授だ。(「アサヒ芸能」より)

そしてイスラム国を支持するフィリピンの過激派組織「アブ・サヤフ」やナイジェリアの武装組織「ボコ・ハラム」の動きを警察が警戒していると「アサヒ芸能」は言及している。

記事はこうして終わる。「『世界一安全』と言われてきた日本。その称号を、はたして東京マラソン後も維持できているのか。もはや運を天に任せるほかないと思えてしまうのである。」(「アサヒ芸能」より)

◆『危険』を食い物にして稼ぐ警察の天下り警備会社と御用マスコミの共犯関係

警備に呼ばれた「シンテイ警備」関係者が語る。

「3.11の大地震が起きたときも、警察をあげての避難訓練でたくさんの警備員が出て、かなり稼いだ。『危険』を食い物にして、稼ぐ警察の天下り警備会社は、その考えからして腐っている。情報にのるマスコミも同罪でしょう」

「アサヒ芸能」よ! 警察情報を垂れ流す記事を出す思考停止の誌面はもうやめたまえ。ただでさえ「まったく芸能の記者会見にも来ないのに芸能ネタをやたら書く」と芸能プロダクションに嘲笑されるあなたたちに未来はない! 地道に裏をとる「週刊ポスト」や「週刊現代」の記者のほうがまだ好感がもてる。

「ここはもう、取材のやりかたから根本的に変えないと週刊 文春や週刊新潮にはたち打ちできないでしょう。なにしろ取材しないで平気で書くのですから」(藤堂香貴・ジャーナリスト)

さて次は何の誤報を取り上げようか。手元にはたくさん資料があるが、裏がとれたものから報告しよう。うししししし。(鈴木雅久)

◎《誤報ハンター02》誤報の横綱『週刊大衆』よ、白鵬はまだまだ引退しない!
◎《誤報ハンター01》芸能リポーターらが外しまくる「福山雅治」の結婚報道
◎アギーレ解任前から密かに後任候補を探していた日本サッカー協会の本末転倒

自粛しない、潰されない──『紙の爆弾』創刊10周年号絶賛発売中! 警察が必死に隠蔽「取調室で容疑者死亡」の裏側に隠された“真実”


マクドナルド最終局面──外食産業が強いる「貧困搾取」ビジネスモデル

日本マクドナルドが一部社員の基本給を下げるという。本コラムで既に報告したが、マクドナルドは最終局面を迎えているのかもしれない

◆儲かろうが儲かるまいが、現場労働からの「搾取が儲けの元」に変わりなし

「日本マクドナルドが、基本給に手を付けるのは初めて。関係者によると、4月以降、評価に応じて分けられた4つの等級のうち、上から3、4番目の社員を対象に、昨年の基本給から1~4%カットする。現在、会社側が社員への説明を始めている。これまで、業績いかんに関わらず基本給を引き下げることはなかったが、業績の悪化は底なしの様相を呈しており、手を付けざるを得なくなった。好業績を背景に、今春は多くの企業がベースアップを打ち出しているが、こうした流れに逆行した動きだ」とダイヤモンド記事は報じている。

一方で、「今年3月25日に退任した原田泳幸前会長には、役員報酬と退職慰労金合わせて3億3900万円、サラ・カサノバ社長には2014年度の報酬として1億0700万円が支払われている。また役員5人にも報酬3億9300万円の役員報酬が支払われており、1人当たり7800万円に上る計算だ」だそうだ。

業績は毎月悪化の一途で2月からで3月も28%売り上げが落ちている。なのに経営陣は責任を取るどころか原田泳幸前会長は4億円近い金を持ち逃げし、現社長にも1億円の給与が払われている。

でも、このような「不条理」は驚くには値しない。最初からマクドナルド社の商法は現場アルバイトや従業員には「えげつなく」、儲かろうが儲かるまいが「経営陣」は高給を頂く姿勢は一貫していた。さらに言えばマクドナルドだけでなく、全国に多数のチェーン店を持つ飲食業者のほとんどは同様の「現場にえげつなく、経営陣はいつでも儲かる」経営システムを採用している。だからあのように安価に商品提供が可能となるのだが、その間で削り取られているのは、「労働者」の賃金である。つまり「搾取が儲けの元」なのだ。

と、ここまで書いたところで15年度見通しの発表が日本マクドナルドからあった。営業損益が250億円の赤字(前期は67億円の赤字)と、前期の上場来初の営業赤字から赤字幅が拡大する。期中に131店を閉鎖するそうだ。

役員報酬もさすがに手つかずとはいかず、役員報酬は6カ月間減額で、サラ・カサノバ社長の削減幅は20%になるという。マクドナルドの斜陽は加速しているとみて間違いないだろう。

◆「ワンオペ」という「一人労働」で「過労死ライン」超え

安価ファミリーレストランとして知られる某有名チェーン店にアルバイトとして勤務した人によると、店舗によっては厨房内の調理(といっても大方は工場で調理された「加工物」を電子レンジなどで元に戻すだけだが)を1人で担っていたという。繁忙時間には厨房内で体の動きを止めることは勿論、トイレに行くことすら出来なかったそうだ。

「ワンオペ」という横文字を使い「一人労働」を強いていたファーストフードチェーンの「すき屋」も同様だが、実際に収益を上げる現場の労働環境を限界近く(時には限界以上)に切りつめることにより収益を上げているのが外食チェーン店だ。「すき屋」を経営するゼンショーホールディングスの小川賢太郎会長兼社長は『週刊東洋経済』(2014年12月6日号)で次のように語っていた。

「創業の頃は私も年間4700時間働いた。それから4000時間、3500時間と減らしてここ数年は3000時間以内だ。(中略)われわれの父親の世代は戦後復興で皆長い時間一生懸命頑張ってこの国の礎を作ってきた。働くことは尊いという価値観を日本人が失ってはいけない」

これは小川氏の本音だろう。だが個人事業主が自己責任でがむしゃらに働くのはかまわないけれども、多くの従業員を抱えた企業に成長し、多数のアルバイトなどの低賃金労働者を雇用するようになれば、このような考え方は社会的に許容されるものではない。戦後の焼け跡時代と、経済指標では世界でも上位に位置する現在の日本を同一視するのは時代錯誤であるし、このような考えの経営者の下で働く労働者はたまったものではない。4700時間の労働は年間の法定労働時間(2000時間余り)の倍以上であり「過労死ライン」とされる月間80時間以上の残業を大きく上回る。

経営者が好きで働くのは勝手だが、労働者にそれを押し付けるのは論外だ。

◆「普通」の生活すらできない給与体系

本音を語らせば、大手外食チェーンの経営者は似たり寄ったりの考え方で労働者をこき使っている。だから全国に同じ看板の店舗があれよあれよという間に乱立できたのだ。今幼少の子供の中には、これらチェーン店の名前を知ってはいても、個人が経営する「食堂」の存在自体を知らない子がいる。

学生が小遣い稼ぎのために週に数時間働くのであれば、人生に大きな影響はないだろうけれども、そこを主たる生計の稼ぎの場といている人にとっては、労働の割にどれだけ働いても決して楽な(否「普通」の)生活すらできない給与体系になっている。

ファーストフードとは「簡単に食べることのできる」食を指すが、「簡単な食」によって「豊かな生活」が遠ざかって行っているのが今日の日本社会だ。

「定食屋」や「一膳飯屋」果ては「食堂」という単語が聞こえなくなるのに共鳴するように、私たちの生活は貧しくなってゆく。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ

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