月刊『紙の爆弾』1月号、本日12月7日発売です! 鹿砦社代表 松岡利康

本日12月7日は通勤途中、昼休み、帰途に書店に立ち寄り『紙の爆弾』を買おう! 
気に入ったら定期購読を!

長引く新型コロナ禍を主要因とする急激な経営悪化により、一時は休刊やむなしか、と思われた『紙の爆弾』ですが、読者の皆様方の圧倒的なご支援により、間を空けず発行を継続しています。ある読者夫妻からの投書を引用させていただきます。──

妻に「紙爆」の鹿砦社がつぶれそうだョ」と言ったら、「私も寄付する!」と言って、3万円を差し出してきました。私が読んでいる雑誌に妻は全く無関心だと思っていましたが、ちゃんと分かっていたのですね。妻は「こういう出版社が世の中から消えてはいけないんだョ」と言っており、私は嬉しさがこみ上げてきて、涙を押さえることができませんでした。貴社もお忙しいとは存じますが、こうした人の心情を理解していただけたら幸いです。

言葉がありません。同種の声があちこちから届きました。創刊直後の弾圧に屈せず17年余り続いてきている『紙爆』も、8年続いている、唯一の反原発雑誌『季節』も、そして50年余りに渡って続けてきた鹿砦社も絶対に潰さず次世代に引き継ぐことを、あらためて決意いたしました。

*例年のように、定期購読者、会員の皆様には、龍一郎揮毫の「鹿砦社カレンダー2023」を同封・贈呈させていただきました。まだ定期購読されていない方は今からでも間に合います!

(松岡利康)

7日発売!タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2023年1月号
月刊『紙の爆弾』2023年1月号 目次

釜ヶ崎で亡くなった医師・さっちゃん先生と共に生きる ── 11月13日(日)大阪で追悼集会『矢島祥子と共に歩む集い』開催 尾崎美代子

11月13日(日曜日)、釜ケ崎で野宿者支援活動なども精力的に関わる医師であった矢島祥子(さちこ)さんの追悼集会があります。祥子さんは、2009年11月13日、勤務先のクリニックから行方不明となり、2日後、木津川で水死遺体で発見されました。当初自殺といわれましたが、医師である両親が祥子さんの遺体に複数の傷があることから殺害されたと警察に訴えました。その後西成警察は自殺と事件の両方で捜査を進めています。祥子さんを知る方の中には自殺と考える人、事件だと考える人がいます。この記事はその両方の方に読んで頂きたいと思います。

事件があった当時、私はあれこれ多忙だったため、釜ヶ崎の夏祭りや越冬闘争などに参加できず、祥子さんも事件のことも知らずにいました。しかし、当時、西成で何が起こっていたかは鮮明に覚えています。

前年2008年のリーマンショックで職を失った人たちが、全国から釜ヶ崎に流れてきました。仕事を探す人、他の地域より比較的受けやすい生活保護を受けようとする人で、店の近くの相談所には、9時前から大勢の人が並んでいました。相談後に、彼らを勧誘しようとする業者で道はごった返していました。その多くは、生活保護者を自社のアパートに住まわせ、保護費の大半をむしりとる「囲い屋」でした。生活保護制度もしらないのか、「今なら、部屋と食事が付いて、おまけに小遣いも貰えるよ」などと書いたチラシを配っている業者もありました。

同じ年、奈良県郡山市にあったの山本病院が、生活保護者や野宿者を入院させ、必要のない手術をしたり、架空請求を行い診療報酬を不正請求していた詐欺容疑で摘発されました。この投稿は、当時、その事件を発端に、何故そんな事件が起きるのか、その背景を精力的に追ったNHK奈良支局取材班の「病院ビジネスの闇 過剰医療、不正請求、生活保護制度の悪用」を参考にしています。

この病院では、心臓カテーテル検査や、血管にステントを入れる手術が極めて多かったそうです。ステントを入れる手術は、ほかの手術に比べて負担は少なく、やりやすい手術と言われるが、病院が受け取る診療報酬は検査と手術で一回約100万円を得ていたそうです。

患者は、医師や看護師に「カテーテル手術をやれ」と執拗に言われ多くの患者が仕方なく手術を受けていました。手術を拒否し、病院を追い出された人もいたそうです。何故こんなことがまかり通るのか?生活保護者、野宿者の多くが単身者のため、相談したり、文句を言ってくれる人がいないからです。餌食になったら、とことんしゃぶり尽くされるのです。山本病院では、ある年1年で延べ437人の生活保護者を入院させていましたが、うち126人がわずか半年で亡くなっていました。

山本病院は、10年前からこのような不正行為を行っていたようで、それまで何度も通報、告発があり、その都度警察も立ち入り調査を行っていましたが、不正はなかなか掴めなかったといいます。

しかし、2009年6月21日、奈良県警は、山本病院に強制捜査に入り、7月1日、患者に心臓カテーテル検査とステント留置術をしたように装って、診療報酬170万円を騙しとった詐欺容疑で、理事長と事務長を逮捕しました。この事務長は金儲けに長けていて、理事長に「これ(手術)一発やってくれたら、今月いけますわ」などと言い、患者に不必要なMRI検査をさせたりしていたそうです。また、ステントを入れていないのに入れたと申請した患者を、病院内では「なんちゃってステント」と呼んでいたという信じられない話もあります。

その後、押収されたカルテなどから、生活保護を受けていたの50代の患者に、不必要な肝臓摘出手術を行い死亡させた容疑で、執刀医の理事長と助手の医師は業務上過失致死で逮捕されました。理事長は、手術中に男性の肝臓を傷つけ大量に出血させましたが、十分な止血や輸血をしないまま(そもそも輸血用の血液を用意していなかった)、「飲みに行く」と出かけてしまいました。残った医師が傷口の縫合手術をするも出血は止まらず、困ってしまい理事長の携帯に電話するも、理事長は出なかったそうです。

理事長には、禁固2年4月の実刑判決が下されましたが、助手の医師は、桜井警察署内で謎の死を遂げています。それについては、遺族が訴えを起こしましたが敗訴し、何があったかは解明されませんでした。

NHK奈良支局取材班が、元ヤクザ関係者にも取材した際、「うしろにいるのはヤクザもんやからな」と言われ、危険な中、身体を張った追求取材で、その背景に、患者を互いにトレード(やりとり)しあう「行路病院ネットワーク」があったことを突き止めました。彼らの中にはNPOを名乗る人もいます。もちろん正式に認可されていない、ただ名乗るだけの、それこそ「なんちゃってNPO」です。肝臓摘出手術で亡くなった男性も、大阪市内の公園で、NPOを名乗る男性に誘われています。

私は当時、こうした連中を釜ケ崎で山ほど見てきました。

そういう囲い屋をやれるのは、ビルなど所有できる経済的に余裕のある人たちです。当時、店の近くに福祉アパート(生活保護者を入居させるアパート)を始めたNPOを名乗る男性は、過去に谷町六丁目で地上げ屋をやっていたそうです。ドヤだった2畳ほどの部屋をぶち抜いて4畳ほどの福祉アパートに改装する工事を、居住する生活保護者にやらせていました。

男は、私の店に食事に来ていました。ある日、みそ汁が辛かったのか、「俺は土方じゃないぞ!」と怒鳴るので「あんた、その元土方の人から金巻き上げてるじゃないか」と大喧嘩になったことがありました。

また、ある時、店の前を3本肢の犬を連れた母親と子供が通りました。聞けば、DV夫から逃れて来たといいます。駅前で途方に暮れていたとき、怪しい業者に「生活保護を世話してやる」と声をかけられ、2人と犬1匹で6畳一間の部屋に囲い込まれました。

炊事場もなく、自炊も出来ないと母親は嘆いていました。私は、知り合いに相談し、親子を別のアパートに引っ越す手配をしました。すぐさま、囲い屋の強面な男が、私の店に乗り込んできました。

「お前か! うちの客を取ったのわ! わしはこういうもんや」と見せられた名刺には、やはりNPOとありました。実はそこのビルでは数年前まで違法な博打場(ノミ屋)をやっていたのでした。「何いってるねん、あんたのビル、前はノミ屋(博打場)だったやん」と私が怒鳴ると、男はすごすごと帰っていきました。

釜ケ崎がそんな時代だった当時、医師の矢島祥子さんは、自身が診療した患者さんの入院した病院などに足しげく通っていたそうです。ある病院では来ないでくれと言われたそうです。私も客の入院先の病院に何度も訪れたことがあります。中には、患者の多くにオムツを充てているためなのか(車いすでトイレに連れていく手間を省くため)、病院全体がむうんと匂う病院もありました。別の病院では、重病患者でも面会はロビーに限定し、病室を見せない病院もありました。多くの病院を回った祥子さんは、そこで何を見て、何を知ったのでしょうか? そこから事件に巻き込まれたのでしょうか? 真相はなかなかわかりません。

ぜひ、集いにお集まり頂き、いろんな情報を共有していけたらと思います。

追悼集会『矢島祥子と共に歩む集い』
日程:11月13日(日)13時半開場、14時スタート
場所:社会福祉法人ピースクラブ(浪速区大国1-11-1)
アクセス 大阪メトロ大国町駅下車5分

◎追悼集会『矢島祥子と共に歩む集い』11月13日(日)13時半開場、14時スタート 場所:社会福祉法人ピースクラブ(浪速区大国1-11-1)
矢島祥子医師の兄、敏さん率いる「夜明けのさっちゃんズ」ライブ。国賠で二審の勝訴が確定したばかりの桜井昌司さんも登場し、熱唱した(2021年9月13日)

◎[関連記事]尾崎美代子「あの時期、釜ヶ崎で何が起きていたか? 書籍『さっちゃんの聴診器 釜ヶ崎に寄り添った医師・矢島祥子』(大山勝男著)発刊! 11月14日(日)大阪で追悼集会「矢島祥子と共に歩む集い」開催へ!」(2021年11月10日)

タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2022年12月号
〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌 『季節』2022年秋号(NO NUKES voice改題 通巻33号)

『情況』第5期終刊と鹿砦社への謝辞 ── 第6期創刊にご期待ください〈後編〉 横山茂彦

終刊のお知らせだった記事の後半ですが、新たな創刊(『情況』第6期)のお知らせとなりました。68年に創刊し、「新左翼の老舗雑誌」と呼ばれてきた『情況』が、来年1月に第6期を創刊することを、謹んでお知らせいたします。これまで同様のご支援、ご愛読をいただければ幸甚です。

 
『情況』2022年夏号

本稿の前半では、中核派と共産同首都圏委員会の「米帝の戦争論」批判を紹介してきた(『情況』7月発売号の拙稿を抄録)。

ウクライナ戦争はロシアの侵略戦争であって、アメリカ・NATOは参戦していない。したがって、共産同首都圏委の「帝国主義間戦争」論は、ゼレンスキー政権が傀儡政権でなければ成り立たないと批判したのだった。

戦争と革命という、一般の読者から見れば浮世離れした議論かもしれないが、新左翼の論争とはこういうものだと。覗き見をしたい方はどうぞお読みください。

◆首都圏委員会の論旨改竄(論文不正)

この「侵略戦争論」と「帝国主義間戦争論」は現在、新左翼・反戦市民運動をおおきく二つにわけている。ところが、相手を名指しで批判(論争)しているのは革マル派(中核派の小ブル平和論の傾向を批判)、革共同再建協議会(いわゆる関西中核派=中核派のウクライナ人民の主体性無視・帝国主義万能論を批判)だけであり、論争らしいものにはなっていない。

『情況』は左派系論壇誌として、この論争・議論のとぼしい路線的分岐という運動状況に、一石を投じるものとして「特集解説 プーチンのウクライナ侵略戦争をどう考えるか? 真っ二つに割れた日本の新左翼・反戦運動」を、15頁にわたって掲載したのだった。

とくに帝国主義間戦争論を前面に掲げた、共産同首都圏委員会(「radical chic」44号)には、前回抄録紹介したとおり、全面的な批判を行なった。

ここまで批判しつくされたら、さすがに反論は出来ないであろうという読者の評判だった。だが腐っても、組織ではなく理論に拠って立つブント系党派である以上、沈黙することはないであろう。と思っていたところ、反論らしきものが出た。わたしの解説に対する正面からの批判ではなかったが、「radical chic」(46号・以下引用は号数で記す)に、「早川礼二」の筆名で「『情況休刊号』のコラムを読む」という文章が公表されたのだった。その意気やよし。

まず笑わせてもらったのは、本文15頁・1万8000字にわたる「特集解説」(二部構成で、目次付き)を、「コラム」と称していることだ。解説の筆者も「文責・編集部横山茂彦、編集協力・岩田吾郎」と明記しているにもかかわらず、早川は「コラム筆者」としているのだ。

つまり、自分たちが全面的な批判にさらされたのを何とか覆い隠し、コラムで扱われた程度のことにしたい、のであろう。その心情には、こころから同情する。

だが、論文作法としては、他者の記事や論文を引用するのであれば、タイトルと筆者を明記しなければならない。これをしないので困るのは、読者が容易に出典を引けないからだ。早川が雑誌情況の「コラム」と一般名称にしてしまっているので、読者は『情況』の30本前後ある記事の中からタイトルをもとには探し出せない。そもそも当該の論攷は「解説」であって、いわば雑誌の論説記事である。コラム(囲み記事)ではないのだ。原稿用紙換算45枚、大仰な目次まで付いたコラムなど、どこの雑誌にあるというのだろうか。まぁでも、これはどうでもいいだろう。

問題なのは、批判する相手の論旨を「改ざん」していることだ。他者の文章を引用する場合は、それが部分的なものであっても、絶対に論旨を改ざんしてはならない。これは論文だけでなく、文章を書く上での大原則である。

論旨の改ざんは論点をずらし、議論を成り立たなくする。それはもはや議論ではなく、論争をスポイルする不正な作為である。

蛇足ながら、他者を批判するときに、論証をともなわない批判は、単なる誹謗中傷となる。素人の文章にありがちな傾向である。

それでは、早川礼二による「特集解説」の論旨改ざん、みずからの文章の改ざんを具体的に見てゆこう。

◆核になるフレーズの削除で、180度逆の結論に

早川礼二は云う。

「コラム筆者は『米軍が直接参戦していない以上、首都圏委の言う「帝間戦争論」は成り立たない』とし、『反帝民族解放闘争の独自性を承認するのは、国際共産主義者の基本的責務である』と批判する」

「第一の疑問は、コラム筆者がウクライナ戦争で米軍が果たしている役割については触れようとしないことだ。米帝・NATOによるロシア封じ込め、米帝と結託したゼレンスキー政権の軍事的挑発に触れることが『プーチンの開戦責任を免罪することになる』という。」

早川の愕くべき論旨改ざんは「米帝が直接参戦していない以上」の前にある、わたしのフレーズ「ゼレンスキー政権が米帝の傀儡でなければ」を意識的に削ったことだ。このことで、わたしの主張の結論は180度ちがってくる。

首都圏委を批判するわたしの問いの冒頭は「それでは問うが、この戦争が帝国主義間戦争であれば、ゼレンスキー政権は米帝の傀儡政権・買弁ブルジョアジーとして、打倒対象になるのではないか?」なのである。

つまりここからは、ゼレンスキー政権が傀儡政権であれば、帝国主義間戦争は成立する、という結論がみちびかれる。それが誤った認識であれ、論としてはいちおう成立する。早川は論旨の改ざんに手を染めることで、みごとに180度違う結論を偽造したのだ。

わたしは帝国主義間戦争論が成り立たないと批判しているのではなく、ゼレンスキー政権の階級的な性格を明らかにせよ、傀儡政権として打倒対象なのか否か、と指摘していたのだ。

早川はこの質問には答えられないまま、「ロシア帝国主義による明らかな侵略戦争」であることを前面に主張しつつも、「かつ米帝・NATOによる帝国主義間戦争」だと、さらに言いつのる。くり返すが、ゼレンスキー政権が米帝・NATOの傀儡でなければ、代理戦争としての帝国主義間戦争論が成立しないのは言うまでもない。

いっぽうで「ロシアの侵略戦争」ならばなぜ、ウクライナ人民の救国戦争(民族解放闘争)を評価できないのか。「この戦争の基本性格はウクライナを舞台とした欧米とロシアによる帝国主義間戦争」(44号)としていた早川は、ウクライナ人民の救国戦争への連帯には、けっして心がおよばないのである。

およそ革命党派のしめすべき指針は、打倒対象と連帯するべき味方を明確にすることだ。ゼレンスキー政権を支持するウクライナ人民、ロシア帝国主義の侵略と戦うウクライナ人民への連帯を承認・支持できないがゆえに、早川の帝間戦争論は砂上の楼閣のごとく崩壊するのだ。

いま、全世界でウクライナ避難民が抗露戦争への支援を訴え、あるいはロシア連邦からの政治難民(ブリヤート人など)が「プーチンストップ!」を訴えている。抽象的な「世界の被抑圧人民・プロレタリアートと連帯」(46号・早川)などという抽象的な空スローガンではなく、具体的な指針を示すべきなのだ。現にロシア帝国主義と戦っているウクライナ人民との連帯、かれら彼女らがもとめる軍事をふくむ支援なのだと。

「あらゆる〈戦争国家〉に反対する」(44号・早川)も市民運動の理念としてはいいだろう。だが、首都圏委は革命党派なのである。そもそも民族解放戦争の大義、社会主義革命戦争の大義を語れなくなった党派に、共産主義者同盟の名を語る資格があるのか。この党史をめぐる議論に乗って来れない首都圏委には、稿をあらためてブント史論争として、議論のステージを準備したいものだ。

◆論旨の改ざんは、論争の回避である

さて、上記の引用中で早川は、もうひとつ大きな改ざんを行なっている。

「(横山の主張は=引用者注)ゼレンスキー政権の軍事的挑発に触れることが『プーチンの開戦責任を免罪することになる』という」(46号・早川)。

「触れる」? そうではなかったはずだ。44号論文から再度引用しよう。

「米帝・NATOの東方拡大によるロシアの軍事的封じ込め政策、多額の軍事支援とテコ入れにより二〇一五年の『ミンスク合意』を無視してウクライナ東部のロシア系居住区域への軍事的圧迫と攻勢を強めたゼレンスキー政権の強硬策がロシアを挑発し、今日の事態を招いた直接的な原因」だと。

ハッキリと、ゼレンスキー政権の強硬策が「直接的な原因」だと述べているではないか。「要因(factor)」などではなく「直接的な原因(direct cause)」だ。

「直接的な原因」とした以上、プーチンのウクライナ侵攻は「結果」にすぎないことになる。これが「プーチンの開戦責任の免罪」でなくて何なのか。

開戦の責任をプーチンにではなく、ゼレンスキーにもとめていた早川は、「直接的な原因」を「触れる」と言い換えることで、自分の論旨を改ざんしたのだ。

まともに論争をしようと思えば、自分の前言撤回も厭うべきではない。そこに相互批判による議論の深化があるからだ。論軸をずらさずに、誠実に議論することで新しい理論的地平も切り拓けるのだ。今回の早川の改ざんは、論争を回避する恥ずべき行為だと指摘しておこう。

◆太平洋戦争の原因は「ABCD包囲網」か?

かつて日本帝国主義は、中国戦争における援蒋ルート(蒋介石政権への欧米の支援=4ルート)を封じるために、フランスが宗主国だったインドシナに進駐した(仏印進駐・1940~1941年)。これに対して、アメリカ・イギリス・オランダが政治経済にわたる包囲網を敷いたのだった。この三国と中国をあわせて、日本に対するABCD包囲陣と呼ばれたものだ。

とりわけアメリカの対日石油禁輸が、日本経済を苦しめた。追いつめられた日本は、真珠湾攻撃をもって開戦に踏み切ったのである。これを歴史修正主義者は「アメリカが日本を戦争に追い込んだ」とする。まさに共産同首都圏委の主張(米帝・ゼレンスキー原因論)は、旧日本帝国主義を弁護するネトウヨなど、歴史修正主義者のものと同じ論理構成だと言えるだろう。

だが、ABCD包囲網をつくり出したのは、ほかならぬ日本帝国主義の中国侵略、傀儡国家(満州国)の建国にある。ウクライナにおいても、ロシアによる2014年のクリミア併合以降、欧米のウクライナ支援ロシア包囲陣が生じたのは、ほとんど日中戦争と同じ政治構造である。

1994年のブタペスト合意でのウクライナの核放棄(世界で三番目の核保有国だった)、ロシア・アメリカ・イギリスをふくむ周辺諸国の安全保障が、もっぱらロシアによって反故にされたこと。すなわち、兵士に肩章をはずさせたロシア軍による、クリミア・ドンバスへの軍事的圧迫が、ウクライナ人民をして、マイダン革命をはじめとする反ロシア運動の爆発となって顕われ、欧米の支援が「東方拡大」のひとつとして顕在化したのである。ロシアによるクリミア併合・東部・南部諸州併合は、日帝の満州国建国と比して認識されるべきものだ。

このような流れの中では、首都圏委が金科玉条のごとく持ち出す「ミンスク合意」(二次にわたる)は、ロシア軍が介入した内戦停止のための休戦協定にすぎないのである。何度ミンスク合意がくり返されても、ロシア帝国主義のウクライナ侵略は終わらない。なぜならば、ロシアはウクライナそのものを併合・併呑しようとしているからだ(プーチン演説)。

◆改ざんだけでなく、誤記満載の「反論」

共産同首都圏委員会は、わたしへの「反論」の中で、いくつかの論点を新たに提示している。ひとつは、わたしが主張した反帝民族解放闘争への疑義である。

中井和夫(ウクライナ史)の『ウクライナ・ナショナリズム』(版元は岩波書店ではなく東京大学出版会)から引用して、民族自決への疑問をこう呈している。

「中井も『国家の急増』が国際社会に与えてきている負荷・コストの大きさ」に触れ「民族自決」を「民族自治」にかえていくことと「他(ママ→多)民族の平和的統合の政治システムとしての連邦制の可能性」を論じている。(46号・早川)

そうではない。この「民族自治」と「連邦制」こそが、ソ連邦時代の「民族の牢獄」を形づくってきたものなのだ。中井和夫がいみじくも「帝国の復活を現代考えることは無理である」とする前提を見落として、早川が「民族自治」に着目することこそ、プーチンの帝国のもとにウクライナ人民をはじめとする諸民族を封じ込める発想。すなわち民族解放闘争の否定にほかならない。

レーニンの「分離の自由をふくむ連邦」を継承しながらも、スターリン憲法およびそれを継承したロシア連邦憲法は、分離の手続きの不備によって、事実上独立をゆるさずに、諸民族の自治に封じ込めてきたのだ。プーチンのクリミア併合以降は、領土割譲禁止条項によって、分離そのものが違法となったではないか。

ソ連邦の崩壊後のなだれ打った旧ソ連邦内国家の独立は、米・NATOの東方拡大だけではなく、東欧人民の反ロシア革命(民族独立革命および人民民主主義革命)だった。首都圏委が暗に主張する帝国主義の陰謀ではなく、これが人民による民族自決の体現にほかならない。

その反ロシア革命の動因は、膨大なエネルギー資源をもとにした軍事大国による圧迫への抵抗であり、世界最大の核兵器保有国による覇権支配への人民の恐怖と大衆的反発である。つまりロシアの帝国主義支配への民族的な抵抗なのである。したがって、21世紀のいまも帝国主義と民族植民地問題として、20世紀型の戦争と革命が継続しているといえよう。いや、プーチンにおいては18世紀型の帝国なのである。

70年代なかばのベトナム・インドシナ三国の反帝民族解放戦争の勝利、社会主義革命戦争とウクライナ戦争を比較して、早川は自信のなさそうな書き方でこう提起する。

「端的に言って、米ソ冷戦体制の下、帝国主義の植民地支配からの独立をめざしたベトナム人民の民族解放闘争と、グローバル資本主義が全世界を蓋い(ママ)、〈戦争機械〉と結託した帝国主義諸国の利害が複雑に絡み合いつつ、国境を越えて介入し他国の支配階級と結びついて暗躍し、権益拡大のために他国を容赦なく戦場化する時代のウクライナ戦争を、同列に論じることはできないのではないか。」(46号・早川)。

長いセンテンスで現代世界の複雑さを強調したからといって、何ら説得力があるというものではない。ベトナム戦争とウクライナ戦争の違いを、早川は上記の文章以上に論証することができないはずだ。

なぜならば、ベトナム・インドシナにおけるフランスの植民地支配、のちにはアメリカの介入を、現在のウクライナ戦争におけるロシアに置き換えれば、まったく同じ政治構造だからだ。ソ連のアフガニスタン侵攻、アメリカのイラク侵攻もまったく同じ、帝国主義の覇権主義的侵略戦争である。

第一次大戦以降、列強の利害は複雑に絡み合い、第二次大戦以降も、そして現在も、米ロをはじめとする帝国主義は「国境を越えて介入し他国の支配階級と結びついて暗躍し、権益拡大のために他国を容赦なく戦場化」(早川)しているのではないのか。

そして帝国主義の侵略が、ほかならぬ人民大衆の闘いと民族自決の奔流に強要された、悪あがきであることに着目できないからこそ、早川は現代世界の複雑さだけを、論証抜きで強調したくなるのだ。そこには大衆叛乱への信頼や共感は、ひとかけらもない。

それにしても、上記の引用における誤記・版元の誤り(別掲文献の版元名も間違えている)をみると、早川の論旨改ざんは意識的なものではなく、文章そのものを正確に判読できていない可能性もある。首都圏委においては、この頼りない主筆に代わり、組織的な討議を経た文章で、改ざんの釈明および誤記・版元間違いを訂正してもらいたものだ。

◆ウクライナ戦争はロシアの敗北でしか決着しない

いま求められている戦争の停止、もしくは終了がどのように展望できるのか。降伏の勧めや無防備都市の提案は、そのままロシアへの隷属・大量処刑を意味する。だが現実的ではないにせよ、すくなくとも具体的である。

もっとも具体的なのは、ゼレンスキー政権とウクライナ人民が、侵略者ロシアを国境の外に追い払うことである。いまそれは、第三次大戦の危機をはらみながらも、実現に向かっている。

ところが、あらゆる〈戦争国家〉に反対し、ゼレンスキー政権と闘うウクライナ人民(どこにいるのか?)に連帯するべきだと、首都圏委は呼び掛けるのだ。

ロシアの侵略に反対し、米帝・NATO・ゼレンスキー政権の戦争政策に反対する、世界プロレタリアートと連帯せよという。このきわめて原則的な反戦運動の呼びかけはしかし、現実に有効な階級闘争ではない。かれらの頭の中に創造された、死んだ抽象にすぎないからだ。

そして、現実のウクライナ戦争をになっている人民を無視するばかりか、ウクライナ人民の戦争支援の要求(兵器の供給)に反対しているのだ。このままでは、プーチンの侵略戦争の代弁者となり、ウクライナ人民の反帝救国戦争の敵対物に転落するしかないと指摘しておこう。

なお、1月創刊の『情況』第6期においても、ウクライナ戦争論争を他の論者を招いて掲載する予定である。われわれの「解説」の評価(賛意)や、早川礼二の民族解放闘争への不理解を指摘する声も上がっている。乞うご期待。(了)

◎『情況』第5期終刊と鹿砦社への謝辞 ── 第6期創刊にご期待ください
〈前編〉http://www.rokusaisha.com/wp/?p=44351
〈後編〉http://www.rokusaisha.com/wp/?p=44456

▼横山茂彦(よこやま・しげひこ)
編集者・著述業・歴史研究家。歴史関連の著書・共著に『合戦場の女たち』(情況新書)『軍師・官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)『闇の後醍醐銭』(叢文社)『真田丸のナゾ』(サイゾー)『日本史の新常識』(文春新書)『天皇125代全史』(スタンダーズ)『世にも奇妙な日本史』(宙出版)など。

『抵抗と絶望の狭間 一九七一年から連合赤軍へ』(紙の爆弾 2021年12月号増刊)
『一九七〇年 端境期の時代』
『紙の爆弾』と『季節』──今こそタブーなき鹿砦社の雑誌を定期購読で!

『情況』第5期終刊と鹿砦社への謝辞 ── 第6期創刊にご期待ください 〈前編〉 横山茂彦

わたしが編集長を務めていた雑誌『情況』が休刊しました。この場をかりて、読者の皆様のご支援に感謝いたします。同時に、広告スポンサー(表3定期広告)として支援いただいた鹿砦社、および松岡利康社長のご厚情に感謝するものです。ありがとうございました。こころざしの一端を等しくする鹿砦社のご支援は、いつも勇気を与えてくれる心の支えでした。

 
『情況』2022年夏号

なお、情況誌第6期が若い編集者を中心に準備されています。時期はまだ未定ですが、近い将来に新しいコンセプトを背負った第6期創刊が達成されるものと熱望しています。そのさいは、変わらぬご支援をお願いいたします。

さて、総合雑誌の冬の時代といわれて久しい、紙媒体構造不況の昨今。しかし専門的雑誌は、いまも書店の棚を飾っています。

ということは、21世紀の読者がもとめているのが総合雑誌ではなく、シングルイッシュー(個別課題的)に細分化されたニーズであるのだと思われます。

その意味では、ロシア革命100年、68年特集、連合赤軍特集といった、社会運動に特化した特集が好評を博し、このかんの情況誌も増刷という栄誉に預ったものです(増刷による在庫過多という経営的な判断は別としても)。

いっぽう、情況誌(というよりも左派系紙媒体)に思いを寄せてくれる研究者や論者、たとえば五木寛之さんなども「少部数でも、クオリティ雑誌をめざすという手があるのではないですか」と、ご助言くださったものです。

クオリティ雑誌といえば、高級商品の広告を背景にしたお金持ち相手の趣味系の雑誌や男性ファッション誌などしか思い浮かべられませんが、フランスの新聞でいえば「リベラシオン」(大衆左派系雑誌)に対する「ルモンド」のイメージでしょうか。人文系では岩波の「思想」や「現代思想」「ユリイカ」(青土社)あたりが情況誌の競合誌となりますが、学術雑誌(紀要)よりもオピニオン誌系をめざしてきた者にとっては、やはり左右の言論を縦断した論壇ステージに固執したくなるものです。

新しい編集部がどんなものを目指すのか、われわれ旧編集部は決定には口を出さず、アドバイスも控え目に、しかし助力は惜しまないという構えです。

さて、結局いろいろと模索してきた中で、新左翼運動の総括や政治革命、戦争への左派の態度など、おのずと情況誌にもとめられるものがあります。ちょうど50年を迎える「早稲田解放闘争」「川口君事件」つまり内ゲバ問題なども、他誌では扱えない困難なテーマで、本来ならこの時期に編集作業に入っていてもおかしくないはずでした。このあたりは、残された宿題として若い人を主体に考えていきたいものです。

もうひとつ、第5期の終刊にあたって心残りなのは、ウクライナ戦争です。いよいよロシアが占領地を併合し、侵略の「目的」を達しようとしている情勢の中で、早期終結を提言するべきだが、ウクライナ人民にとっては、停戦は「緊急避難」(ミンスク合意の焼き直し)にすぎないはずです。その意味ではロシアが併合を「勝利」として、停戦に応じたからからといって、プーチンの戦争犯罪が許されるわけではない。

また、ウクライナ戦争は台湾有事のひな型でもあり、日本にとっても重大なテーマと言えましょう。そこで、情況誌第5期休刊号において、新左翼・反戦市民運動の混乱(大分裂=帝国主義間戦争か侵略戦争か)について、解説記事をまとめて掲載しました。その核心部分を紹介することで、本通信の読者の皆さまにも問題意識を共有いただければ幸甚です。

なお、新左翼特有の激しい批判、難解な左翼用語まじりですが、ご照覧いただければと思います。筆者敬白

◆休刊号掲載のウクライナ論争

まずは記事の抄録です。中核派批判から始まり、筆者も過去に関係のあったブント系の分派(共産同首都圏委員会)の批判につづきます。

『情況』2022年夏号 21p-22p
 
『情況』2022年夏号 23p

【以下、記事の抄録】

中核派はこのように主張する。

「ウクライナ戦争は、『プーチンの戦争』でも『ロシア対ウクライナの戦争』でもなく、本質的にも実態的にも『米帝の戦争』であり、北大西洋条約機構(NATO)諸国や日帝も含む帝国主義の延命をかけた旧スターリン主義・ロシアに対する戦争であることが、ますます明らかになっている」(「前進」第3242号、5月2日「革共同の春季アピール」)と。

アメリカとNATO、そして日本までがウクライナ戦争に参戦し、ロシアに戦争を仕掛けているというのだ。事実はちがう。日本は北方開発と漁業でロシアと協商しているし、アメリカは武器支援にこそ積極的だが、軍隊を送り込んでいるわけではない。中核派は政治的な深読みである「米帝の戦争」を強調するあまり、プーチンの犯罪(開戦責任)を免罪してしまっているのだ。

中核派の「アメリカ帝国主義の戦争」を的確に批判しているのが『未来』(第342号、革共同再建協議会)である。革共同再建協議会はこう断じる。

「彼らは、今回のロシアの侵略戦争を米帝バイデンの世界戦争戦略が根本原因で、『米帝・バイデンとロシア・プーチンの代理戦争』と言い、さらには『米帝主導の戦争だ』とまで言う。そこには米帝の巨大さへの屈服はあっても、ロシア・プーチンの侵略戦争への批判は一切ない」と。

「プーチン・ロシアからの解放を求めて闘うウクライナ人民の主体を全く無視している。彼らの『代理戦争』の論理は、帝国主義とスターリン主義の争闘戦の前に、労働者階級や被抑圧民族は無力だという帝国主義と同じ立場、同じ目線であるということだ。ロシア・ウクライナ関係、ウクライナ内部にも存在する民族抑圧・分断支配に接近し、マルクスのアイルランド問題への肉迫、レーニンの『帝国主義と民族植民地問題』を導きの糸に解決していこうとする姿勢はない」と、厳しく批判する。

まがりなりにも「帝国主義間戦争」と言い切っているのは、共産同首都圏委員会である。だが米帝とゼレンスキー政権の強硬策が直接的な原因だとして、これまたプーチンの開戦責任を免罪するのだ。云うところを聴こう。

「この戦争の基本性格はウクライナを舞台とした欧米とロシアによる帝国主義間戦争であり、米帝・NATOの東方拡大によるロシアの軍事的封じ込め政策、多額の軍事支援とテコ入れにより2015年の『ミンスク合意』を無視してウクライナ東部のロシア系住民居住区域への軍事的圧迫と攻勢を強めたゼレンスキー政権の強硬策がロシアを挑発し、今日の事熊を招いた直接的な原因」(「radical chic」第44号、早川礼二)であると。

それでは問うが、この戦争が帝国主義間戦争であれば、ゼレンスキー政権は米帝の傀儡政権・買弁ブルジョアジーとして、打倒対象になるのではないのか? ベトナム・インドシナ戦争におけるグエン・バン・チュー政権、ロン・ノル政権と同じなのか。旧日本帝国主義の中国侵略戦争における、汪兆銘政権と同じなのだろうか。

「ゼレンスキー政権の民族排外主義、ブルジョア権威主義独裁に頑強に抵抗しつつ、ロシアの帝国主義的侵略に立ち向かうウクライナの人々に連帯する。ブルジョア国家と労働者人民を峻別することは我々の原則であり、自国も含めたあらゆる〈戦争国家〉に抗う労働者人民の国際連帯こそが求められている。」(前出)と云うのだから、わが首都圏委においては、戦争国家のゼレンスキー政権打倒がスローガンになるようだ。

だが今回の戦争の本質は、ロシア帝国主義の侵略戦争とウクライナの民族解放戦争である。抑圧された民族の解放闘争が民族主義的で、ときとして排外主義的になるのは、あまりにも当為ではないか。中朝人民における日帝支配の歴史的記憶が、いまだに民族排外主義的な抗日意識をもたらすのを、知らないわけではあるまい。ウクライナ人民のロシア(旧ソビエト政権)支配に対する歴史的な憤懣も同じである。

第一次大戦と第二次大戦も、帝国主義間戦争でありながら、植民地従属国(セルビア=ユーゴ・東欧諸国・フィンランド・中国・インド・東南アジア諸国など)の民族解放戦争という側面を持っていた。

それは支援国が帝国主義国(第二次大戦におけるアメリカの中国支援など)であるとかは、まったく関係がない。反帝民族解放闘争の独自性を承認・支持するのは、国際共産主義者の基本的責務である。

侵略戦争に対する民族解放・独立戦争はすなわち、プロレタリアートにとって祖国防衛戦争となる。それは侵略者に隷属することが、プロレタリアにとっては二重の隷属になるからにほかならない。だから民族ブルジョアジーとの共同闘争が、人民戦争戦術として必要とされるのだ。したがって首都圏委のように「ブルジョア国家と労働者人民を峻別する」ことは必要ないのだ。中国における抗日救国戦争(国共合作)がその典型である。

「民族生命の存亡の危機に当たって、我等は祖国の危亡を回復救助するために平和統一・団結禦侮(ぎょぶ=敵国からのあなどりを防ぐ)の基礎の上に、中国国民党と了解を得て共に国難に赴く」(中国共産党「国共合作に関する宣言」)。

わが首都圏委によれば、マイダン革命も米帝の画策ということになる。そこにはウクライナ人民が民族主義者に騙され、米帝の関与によって政変が起きたとする陰謀史観が横たわっている。世界の大衆動乱はすべて、CIAやダーク・ステートの陰謀であると──。

人間が陰謀史観に支配される理由は、自分たちには想像も出来ない事態を前にしたときに、安心できる説明を求めるからだ。自分たちの経験をこえた事態への恐怖にほかならない。シュタージの一員としてベルリンの壁崩壊に直面して以来、プーチンに憑りついた恐怖心は民衆叛乱への怖れなのである。おなじ恐怖心が首都圏委にもあるのだろうか。

オレンジ革命とマイダン革命に、国務省のヌーランドをはじめとするネオコン、NED(全米民主主義協会)などの支援や画策があったのは事実だが、数千・数万人の大衆行動が米帝の画策だけで実現するとは、およそ大衆的実力闘争を体験したことがない人の云うことだ。おそらく実力闘争で負傷したことも、逮捕・投獄された経験もないだろう。

陰謀史観をひもとけば、ジェイコブ・シフらのユダヤ資本がボルシェヴィキに資金提供したからといって、ロシア革命がユダヤ資本に画策されたと見做せないのと同じである。われわれは大衆の行動力こそ、歴史の流れを決めると考えるが、いまの首都圏委はそうではないようだ。

記事の抄録は以上です。ここからさらに、ブント(新左翼)史に引きつけて、革命の現実から出発してきた共産主義運動の軌跡、ロシアと中国を官僚制国家独占資本を経済的基礎とする覇権主義的帝国主義であると理論展開する。

ここまでボコボコに批判すれば、およそ反論は難しいであろう。この記事を読んだ市民運動家や元活動家の感想はそういうものだった。

しかし、他党派の批判など気にしない中核派(大衆運動が頼み)とちがい、ブント系(組織が脆弱なので理論だけが頼り)において、批判への沈黙は党派の死である。どんな反論をしてくるのか楽しみにしていたところ、それはもの凄いものだった。

なんと、首都圏委員会は相互の論旨を「改ざん」してきたのである。わたしの言い分を部分的に引用することで歪曲し、自分たちの主張も核心部(わたしの批判の核心部)を隠すことで、みごとに(いや、臆面もなく)論軸をずらしているのだ。つまり論文不正を行なったのである。あまりの愕きに、おもわず笑い出してしまったものだ。(愕きと爆笑の後編につづく)

▼横山茂彦(よこやま・しげひこ)
編集者・著述業・歴史研究家。歴史関連の著書・共著に『合戦場の女たち』(情況新書)『軍師・官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)『闇の後醍醐銭』(叢文社)『真田丸のナゾ』(サイゾー)『日本史の新常識』(文春新書)『天皇125代全史』(スタンダーズ)『世にも奇妙な日本史』(宙出版)など。

タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2022年11月号
『抵抗と絶望の狭間 一九七一年から連合赤軍へ』(紙の爆弾 2021年12月号増刊)
『一九七〇年 端境期の時代』

『紙の爆弾』最新号に寄せて 『紙の爆弾』編集長 中川志大

9月27日の「安倍国葬」には、当日まで多くの反対の声が響きました。やってしまったら終わりではなく、「反対の中、強行された」という事実を残さなければなりません。そのためには、今回集まった声を、より具体的な安倍・菅・岸田政治の検証につなげていく必要があります。

そのひとつとして、11月号では現在日本の「戦時体制」について特集を組みました。安倍政権の解釈改憲によって、憲法を改定せずとも日本が危険な状況に置かれてしまっていることを、あらためて確認するのが目的です。護憲と同時に、憲法解釈もとり戻すことが必要となっています。そもそも憲法で縛られる側である政府が勝手に解釈を変更すること自体、立憲主義の否定であり、許されないことです。そこにおいて着目すべきは、自衛隊の海外派遣による「戦争のできる国」化だけではありません。「国民監視」の強化こそ、私たちがいま、もっとも危険視すべきことではないかと考えます。

さらに「GDP2%」目標は、実現すれば米国・中国につづく世界第3位の軍事予算。金額ありきなのは、すなわち増加分が、米国の軍産複合体への貢献だからです。その米国は、ウクライナ戦争で儲けつつ、11月の議会中間選挙に向けて「台湾政策法案」など、中国煽動も強めています。中国に対しても「力による現状変更」という言葉を使い始めていますが、仮に台湾有事において米国が出兵することがあれば、米国の立ち位置はロシアのそれであり、米国に協力する日本はベラルーシの役割を演じることになる、という指摘があります。あらためて反戦と日本の安全保障について考えなければなりません。本誌特集は、その一助となるものです。

連日報道が続く旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)の問題については、霊感商法被害、二世信者の問題、政界との癒着など内容は多岐にわたりますが、それらが今に始まった問題ではない以上、現在においてもっとも考えるべきテーマは「なぜ問題が放置されてきたのか」です。今月号では1993年にテレビでの発言で教会から刑事告訴を受け、98年には参院議員として国会で追及した中村敦夫氏に話を聞きました。一方、週刊文春(9月29日号)が小川榮太郎氏について報じた「岸田首相に国葬を決断させた統一教会“弁護人”」をはじめ、“保守派”の正体にも注目が集まっています。これも、注目すべきひとつのテーマといえるのではと思っています。もちろん、旧統一教会は日本進出において、右翼勢力と深い関わりを持ってきました。それと、現在の“保守派”の関係も気になるところです。

さらに今月号では、新型コロナワクチンについて記事を掲載しました。とくに、「国産ワクチン」開発が政府により阻害され、巨大製薬企業に日本の富を流出させてきた事実に焦点を当てています。そこからワクチン広域接種の“目的”が見えてきます。厚生労働省がワクチン効果に関するデータを改ざんしていたことをレポートした8月号記事とあわせてお読みいただければ幸いです。新ワクチンなど接種推進がここにきて加速するなか、ワクチンそのものについての分析も、さらに必要性が増しています。その他にも多様なレポートを盛り込み、「紙の爆弾」は全国書店にて発売中です。ご一読をよろしくお願いいたします。

『紙の爆弾』編集長 中川志大

タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2022年11月号

『紙の爆弾』2022年 11月号
目次
中村敦夫が語る50年 旧統一教会「口封じ」の手法
旧統一教会問題が選挙に与えた衝撃 沖縄県知事選で白旗を上げた自公政権
メディアに“逆ギレ”する議員たち 旧統一教会信者たちが語った自民党議員への怒り
特集●すでに進んだ日本の「戦時体制」
「防衛費」を積み上げてつくる「基地の島」
法律からみた安倍・菅・岸田の戦争準備
米国覇権を超克する「真の安全保障」
東京五輪汚職捜査はどこまで進展 自壊する岸田文雄政権
政党交付金の要件を満たしているのか 統一協会より「自民党の解散」こそ急務
巨大製薬企業に国家予算流出 政府に阻害された「日本製ワクチン」
「政治と宗教」問題の防波堤 公明党・山口那津男代表続投の裏側
「政治と宗教」そして民主主義 いまこそ考える「政教分離」の本質
スウェーデンの新聞が報じた米国の「ドイツ・EU弱体化のためのウクライナ戦争」謀略
「女性蔑視」でトヨタにも古傷が 香川照之“性加害”騒動の波紋
シリーズ 日本の冤罪31 飯塚事件
連載
あの人の家
NEWS レスQ
コイツらのゼニ儲け 西田健
「格差」を読む 中川淳一郎
ニュースノワール 岡本萬尋
シアワセのイイ気持ち道講座 東陽片岡
キラメキ★東京漂流記 村田らむ
裏から世界を見てみよう マッド・アマノ
権力者たちのバトルロイヤル 西本頑司
元公安・現イスラム教徒 西道弘はこう考える
まけへんで!! 今月の西宮冷蔵
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本日22日(木)午前11時より大阪高裁第3民事部別館84号法廷にて、対藤井正美(しばき隊中心メンバーにして元鹿砦社社員)控訴審弁論期日! 関西近郊にお住いの皆様の傍聴を望みます! 鹿砦社(控訴人/一審原告)代表 松岡利康

藤井正美はしばき隊/カウンターの中心メンバーとして鹿砦社に入り込み、在籍3年間で勤務時間の大半を私や従業員にわからないように業務とは無関係のツイッターやメールに勤しんでいたことが発覚しました(ツイッターは退社前、メールは退社後)。退社後詳細に分析し、その悪質性から、当然ながら給与返還を求め提訴したわけですが、一審の大阪地裁は私たちの請求にゼロ回答、逆に藤井が反訴した部分で鹿砦社に賠償金11万円を課しました。おかしいと思いませんか? 〈常識〉があれば誰しもおかしいと思うでしょう。

直近に藤井代理人・神原元弁護士に懲戒問題が起こったりしていますが、ちょっと前に起きた本件と類似の問題として兵庫県加古川市の職員が8年間に、やはり勤務時間中にSNSを閲覧したとして給与返還させられています。これについては準備書面にも盛り込みましたが、下記のように少し申し述べておきます。――

顔出しで街頭演説する藤井正美

◇     ◇     ◇     ◇     ◇     ◇

本件と類似した事件として、前回準備書面提出締切直前に、「勤務中に私的なネット閲覧1654時間、市職員が給与475万円を返還」と2022年7月28日付け読売新聞オンラインが報じ、この記事の写しを裁判所に提出しました。

その後、兵庫県加古川市役所にも確認し事実と判明しました。加古川市役所の職員は「8年間、早朝や通常勤務中に846回(計1654時間)、公用パソコンで業務と無関係のインターネットを閲覧」(読売オンライン記事より)しました。

一方、鹿砦社に在職した3年間に藤井はツイッター1万8535回、1235時間(1tw当たり4分換算)、メールは数えきれないほど膨大で費やした時間も計り知れません。更にはツイッターのダイレクトメールも、これは発掘できませんでしたが、かなりの量だと推察されます。加古川市役所の職員は政治的目的はなかったと推察しますが、藤井は政治的目的を持って大学・団体・企業に恫喝さえ行っています。こうした藤井の所業を説明し、更に一審判決で鹿砦社の主張が全く認められず、逆に賠償金を課せられたと申し述べたところ非常に驚いていました。

この加古川市当局の判断こそ〈社会通念〉にも〈一般常識〉にも適うものです。一審裁判所(大阪地裁)は、なぜこうした判断ができなかったのか、大いに疑問です。司法には〈常識〉もなければ「良識の府」としての矜持もないのか、と疑念を禁じ得ず本件控訴に至った次第す。鹿砦社の主張はシンプルであり、司法に〈社会通念〉や〈常識〉に従った判断を求めるということにすぎません。

ここでは賛否はともかく、施行から10年余り経つ「裁判員裁判制度」が導入されたのは、端的に言えば、司法に市民感覚を採り入れるという主旨だったと思料します。仮に本件訴訟を、一般から選ばれた裁判員が審理すれば、おそらく控訴人の主張が100%近く認められると確信します。

本控訴審にあって大阪高裁には加古川市役所と同様〈社会通念〉や〈常識〉に従った判断を下すよう強く求めるものです。われわれは決して無理や無茶を言っているのではありません。再三繰り返しますが、控訴人・鹿砦社は〈社会通念〉や〈常識〉に従った判断を大阪高裁に求めます。大阪高裁は、われわれ、つまり鹿砦社だけではなく、日本の中小企業主の主張に虚心に耳を傾けていただきたいと思います。今後SNSが更に拡がることは想像に難くありませんが、本件一審判決が確定すれば、世の中小企業は立ち行かなくなります。よって、〈社会通念〉や〈常識〉を著しく欠いた一審判決の破棄を強く求めるものです。

勤務時間中に藤井が発信したツイートのほんの一部

◇     ◇     ◇     ◇     ◇     ◇

*参考までに読売新聞オンライン2022年7月28日の記事を引用しておきます。

 勤務中に私的なネット閲覧1654時間、市職員が給与475万円を返還

 兵庫県加古川市は27日、勤務中に私的にインターネットを閲覧してその間の給与や手当を不当に受け取ったとして上下水道局の男性主査(48)を停職6か月、公金10万円を紛失した課の責任者だった都市計画部の男性主幹(55)を戒告にするなど計4人を懲戒処分、7人を口頭厳重注意にした。

 市の発表では、男性主査は、農林水産課や市街地整備課員だった2014年4月~今年3月の8年間、早朝や通常勤務中に846回(計1654時間)、公用パソコンで業務と無関係のインターネットを閲覧。主査は6月、給与475万5957円と利息分の全額を市に返還した。

 さらに当時の上司だった都市計画部主幹(56)を減給10分の1(3か月)、環境部主幹(57)を同(1か月)、当時の都市計画部長2人を口頭厳重注意とした。

 また、男性主幹が課長を務めていた債権管理課では今年3月9日、窓口で8人から納付された139万1817円のうち10万円を紛失。窓口の職員が高額の現金を機器で数えずに受け取り、未施錠の金庫やロッカーに保管するなど管理が不適切だった。主幹は6月、利息分を含めて弁済。当時の税務部長ら3人と、窓口職員2人は口頭厳重注意とした。

《関連過去記事カテゴリー》
しばき隊リンチ事件 http://www.rokusaisha.com/wp/?cat=62

『季節』秋号をお届けするにあたって 季節編集委員会

9月に入りました。酷暑と新型コロナ禍再爆発で大変だった今夏も、まだ暑さは残るとはいえ少しは秋の訪れを感じさせる季節となりました。

岸田政権は、安倍前首相暗殺後の混乱に乗じ原発再稼働、さらには原発新規建設まで口に出し始めました。とんでもない話で、断固粉砕しなければなりません。

さて、本年より『NO NUKES voice』を改題、全面リニューアルし『季節』として再出発いたしました。今号で3号目となりますが、多くの皆様方にご支援いただき、まずまずの船出でした。ありがとうございました。

本誌は(2014年8月の旧『NO NUKES voice』)創刊から8年が経ちました。同時に2011年3・11から11年余りが経ちました。

創刊したのはいいとしても、以後1号たりとも黒字にならず赤字を重ね、鹿砦社の他の分野の書籍の利益を回すことで継続してきました。しかし、昨今の新型コロナ禍による打撃は想定以上に大きく、会社も急激な業績悪化で、昨年末には休刊の危機に追い込まれました。そうした情況下、小出裕章さん、樋口英明さん、井戸謙一さんはじめ多くの先生方、読者の皆様の物心両面にわたるご支援と叱咤激励は、私たちに勇気を与え奮起せざるをえない闘志を惹起させました。また、苦渋の想いで部数を減らしたり工夫に努め今号もお届けすることができました。次号以降も、多くの皆様方に支えられ必ず継続していくことを決意しお約束いたします。
 
改題・リニューアルした『季節』の前途は荒海です。しかし私たちは、被災された方々、故郷を追われた皆様方に寄り添い(皆様のご苦労に比べればなんのことはありません)、なにがなんでも寄稿者や読者の皆様方と共に乗り切ってまいります! あらためて、今後ともよろしくご支援お願い申し上げます。チラシを同封させていただきましたので、知人・友人の方へ本誌の販促、定期購読(新規、前倒し更新、複数年申し込み)、書籍や本誌バックナンバーなどの直販などをお勧めください。

末筆ながら、コロナ禍長期化と、急激な物価高など社会情勢の悪化の中、皆様方のご健勝とご活躍を心よりお祈り申し上げます。

2022年9月
季節編集委員会代表兼編集長 小島 卓
株式会社鹿砦社 代表取締役 松岡利康

〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌 『季節』2022年秋号(NO NUKES voice改題 通巻33号)

〈原発なき社会〉を求めて集う不屈の〈脱原発〉季刊誌
『季節』2022年秋号
NO NUKES voice 改題 通巻33号
紙の爆弾 2022年10月号増刊
2022年9月11日発行 
A5判/132ページ(巻頭グラビア4ページ+本文128ページ)
定価:770円(本体700円)

主要目次
[コラム]樋口英明(元裁判官)
株主代表訴訟東京地裁判決と国家賠償訴訟最高裁判決
小出裕章(元京都大学原子炉実験所助教)
[報告]原発が原爆になる
[コラム]戦争に落ちていこうとするこの国
[講演]3・11福島原発事故から11年
脱炭素・原発再稼働・小型原発を問う
[講演]広瀬隆(作家)
二酸化炭素地球温暖化説は根拠のまったくないデマである〈中編〉
[講演]小山美砂(毎日新聞大阪社会部記者)
疑わしきは救済する──「黒い雨」訴訟と核被害への視座
[インタビュー]井戸謙一(311子ども甲状腺がん裁判弁護団長)
福島第一原発事故と甲状腺がんの因果関係を証明する
[報告]漆原牧久(「脱被ばく実現ネット」ボランティア)
311子ども甲状腺がん裁判を傍聴して
山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表、東電株主代表訴訟原告)
[報告①]東京地裁で東電元経営陣に一三兆円余の賠償金を命じる判決
原発を動かし続ける電力会社経営陣への警告
[報告②]電力逼迫を利用した原発推進政策の問題点
[報告]鈴木博喜(『民の声新聞』発行人)
そこに民主主義はない
福島第一原発「汚染水」海洋放出強行
[報告]森松明希子(東日本大震災避難者の会 Thanks & Dream(サンドリ)代表)
原発事故避難者に国連「指導原則」に則った人権保護を!
[報告]伊達信夫(原発事故広域避難者団体役員)
「原発事故避難者」はどこにいるのか?
[映画評]細谷修平(メディア研究者)
シュウくんの反核・反戦映画日誌〈2〉
原子爆弾と夢想の力──『太陽を盗んだ男』を観る
[報告]板坂 剛(作家/舞踊家)
何故、今さら重信房子なのか?
[報告]山田悦子(甲山事件冤罪被害者)
山田悦子の語る世界〈17〉今日における日本人の原罪
[報告]三上 治(「経産省前テントひろば」スタッフ)
とめどなく出てくる統一教会汚染と国葬
[報告]佐藤雅彦(ジャーナリスト/翻訳家)
原爆・原発・統一教会~天網恢々、疎にして漏らさず!~
[書評]大今 歩(高校講師・農業)
福島の小児甲状腺がん検査は本当に「過剰診断」なのか
『福島の甲状腺検査と過剰診断』(あけび書房)
[報告]再稼働阻止全国ネットワーク
虚構の「電力逼迫」発表にまどわされない!
本命の原発再稼働に反対し、言論と大衆行動で闘う
《全国》柳田 真(たんぽぽ舎共同代表)
「原発の過酷事故は我が国の存立を危うくする」=東電株主代表訴訟判決文
《六ヶ所村》山田清彦(核燃サイクル阻止一万人訴訟原告団事務局長)
高レベル放射性廃液の冷却不能トラブル
《福島》けしば誠一(杉並区議会議員/反原発自治体議員・市民連盟事務局長)
福島の実態を全国に配信し 原発を止める闘いを強めます
《東京電力》佐々木敏彦(東京電力本店前合同抗議実行委員会)
電力危機を煽る岸田政権・原発推進派に抗して、原発再稼働の動きを阻止しよう
《東海第二》志田文広(東海第二原発いらない!首都圏ネットワーク)
東海第二原発いらない!-茨城県知事へ要望書、日本原電へ申入書を提出
《関西電力》木原壯林(老朽原発うごかすな!実行委員会)
老朽原発・美浜3号機を廃炉に! 過酷事故が起こる前に 電気は足りている
《伊方原発》秦 左子(伊方から原発をなくす会)
私たちは「原発いらん!」と叫び続ける
伊方原発3号機再稼働絶対反対!
《規制委》木村雅英(再稼働阻止全国ネットワーク)
一二〇〇件のパブコメ反対意見を無視して海洋投棄認可、規制委緊急抗議行動
《読書案内》天野恵一(再稼働阻止全国ネットワーク事務局)
日野行介『調査報道記者 ── 国策の闇を暴く仕事』
[反原発川柳]乱鬼龍

私たちは唯一の脱原発情報誌『季節』を応援しています!

『紙の爆弾』最新号に寄せて 『紙の爆弾』編集長 中川志大

9月号の鈴木エイト氏、横田一氏らのレポートに続き、10月号でも「政治と宗教」の問題にスポットを当てました。旧統一教会(世界平和統一家庭連合)の問題、とくにカルト規制については、識者といわれる人々の一部から「信教の自由」との兼ね合いで消極的な意見が聞かれます。別にそうした人々が旧統一教会におもねっているとは思いませんが、その種の心配は杞憂に過ぎず、そもそも「カルト規制」と「宗教規制」は違うということを、今月号では解説しています。

安倍晋三元首相の「国葬儀」に反対する声は高まる一方、抗議運動が各地で繰り広げられています。「国葬儀」は、国民の大多数から反対を受けているからこそ法的根拠を示さなければならないわけですが、根拠がない以上出せません。それでもゴリ押しする理由は何か。歴代最長政権を築きながら、路上で、しかも誰かの代わりに狙われて死亡した。その“最期”のイメージを上書きするのが狙いのひとつかもしれません。暗殺シーンはそのまま旧統一教会との関係を想起させ、それ以外にも“負の遺産”は山ほどあります。いずれにせよ「隠蔽」が目的とみて間違いないようです。

一方で、安倍首相暗殺事件そのものへもスポットを当てました。事件については一定の“公式見解”が出されましたが、致命傷に至ったとされる銃弾一発が発見されず、容疑者は4カ月間の鑑定留置。報道された「供述」において、あれほど明確に意図を語った容疑者を、なぜ精神鑑定する必要があるのか。事態を有耶無耶にするための時間稼ぎ目的としか思えず、これで真相が解明されるかは大いに疑問です。そこで今月号では、事件に関係する可能性のあるいくつかの事実についてレポートしています。一方で、8月25日には中村格警察庁長官が“引責辞任”。周知のとおり、ジャーナリストの伊藤詩織氏が性被害を受けた事件で、安倍氏べったりだった元TBS記者・山口敬之氏の逮捕中止を命じた人物です。

ともあれ、事件によって「政治と宗教」に注目が集まっています。多くの議員が選挙に勝つために旧統一教会から支援を受け、実際に当選してきたことは、過去に本誌でも指摘してきたとおり。この機会に、この国に本当に民主主義があったのかを見直さなければなりません。さらに、旧統一教会の影響もみられる自民党改憲案も見直させるべきでしょう。山口那津男・公明党代表は「宗教団体が価値観を政治過程に反映していくのは民主主義の望ましい姿」と述べました。選挙のたび、票を的確に自公の候補者に配分する創価学会の手腕に毎回感心してきましたが、それを「民主主義の望ましい姿」と呼ぶのはあまりに無理があります。

ついに原発新設まで言い出した岸田文雄首相。今のエネルギー問題(も本当か疑わしい)を理由に原発を新造する、という論理自体が理解できるものではありません。実行したとして、完成を首相として見届けることはないでしょうから、“負の遺産”となることは確実です。再稼働阻止に加え、新たなテーマが浮上したことになります。そもそも「脱炭素」とは何かから、問い直す必要があります。今月も独自の視点から、問題を深掘りするレポートをお届けします。全国書店にて発売中ですので、ご一読をよろしくお願いいたします。

タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2022年10月号

『紙の爆弾』2022年10月号
目次
維新、参政党にも直撃取材 自民党と旧統一教会 現在に続く“関係”
目的は“旧統一教会隠し”だけではない 岸田内閣改造人事の真相
「自由」「民主主義」の党綱領を自ら否定 自民党・公明党は即時解散せよ
日本が「カルト天国」である理由「政治と宗教」癒着の裏に2つの事件
既成宗教・宗教学者の“反発”は的外れ「反セクト法」とは何か
安倍国葬に法的根拠は絶対にない「国葬令」はなぜ廃止されたか
日米の「宗教右派」を分析する旧統一教会はいかにして政治力を持ったのか
防衛省が極秘調査していた「安倍暗殺」に残された謎を追う
事務所ぐるみの蜜月疑惑も 旧統一教会と芸能界
それは「安倍ゴルフ」から始まった 米下院議長「横田入国」の国辱を是正せよ!
平壌「よど号」メンバーから見たニッポン ウクライナ戦争と「第三次世界大戦」
アクリルに 跳ね返された 投げキッス 刑務所川柳の世界にようこそ
厚労省「使用罪」新設の裏側 大麻をめぐる「あるべき議論」
統一教会は《世界極右テロ組織連合》の中核機関である!
シリーズ 日本の冤罪30 東金女児殺害事件

連載
あの人の家
NEWS レスQ
コイツらのゼニ儲け 西田健
「格差」を読む 中川淳一郎
ニュースノワール 岡本萬尋
シアワセのイイ気持ち道講座 東陽片岡
キラメキ★東京漂流記 村田らむ
裏から世界を見てみよう マッド・アマノ
権力者たちのバトルロイヤル 西本頑司
広島拘置所より… 上田美由紀
元公安・現イスラム教徒 西道弘はこう考える
まけへんで!! 今月の西宮冷蔵
amazon https://www.amazon.co.jp/dp/B0BCVQJCCJ/

月刊『紙の爆弾』8月号は本日7日発売です! 鹿砦社代表 松岡利康

創刊200号を越えた月刊『紙の爆弾』、今月も7日発売です!

今月号の特にお薦め記事は精神科医の野田正彰先生の記事「大阪診療内科放火事件に思う」です。

これは、みなさん記憶に残る昨年末、大阪北新地の心療内科放火事件について、精神科医・野田正彰先生の記事ですが、元々は朝日新聞のウェブサイト「論座」に掲載予定のところドタキャンになったものです。こういう記事を忖度なく載せるところに『紙の爆弾』のレゾン・デートル(存在理由)があります。ここではさわりだけ掲載しておきますが、ぜひ全7ページをお読みください。

『紙の爆弾』2022年8月号より

また、この事件についていうと、浅野健一さんが『創』で掲載をドタキャンされ、せっかく関係が修復したと思っていたところ、また関係がこじれています。『創』の篠田編集長は、私と同じ歳ですが、なんとも度量の狭い男です。その浅野さんが野田記事掲載ドタキャンの経緯を書かれています。

事件直後、映画監督の村西とおるさんが、非常に刺激的なツイートをし、物議をかもしましたが、実は村西さんも心療内科で薬漬けになり、回復するのに数年かかったことをカミングアウトするや、しだいに鎮火しました。

その他にも力の入った記事が満載です。ぜひ通退勤途中、書店に立ち寄りご購読お願いいたします! 気に入ったら定期購読をお願いするしだいです。

さて、来る〈7月12日〉は何の日かご存知でしょうか? 『紙の爆弾』創刊直後の2005年の7月12日、「名誉毀損」に名を借りて私が逮捕された日です。もう17年になります。7月12日には、このことについて書き記します。

(松岡利康)

7日発売!タブーなきラディカルスキャンダルマガジン『紙の爆弾』2022年8月号

季節2022年夏号刊行にあたって 季節編集委員会

6月に入りました。もうじき暑い季節がやって来ます。

被災された方々、意に反し故郷を離れざるを得なかった方々、また脱(反)原発運動に関わる皆様には大変な季節です。

さて、前号より『NO NUKES voice』を改題、全面リニューアルし『季節』として再出発いたしました。多くの皆様方にご支援いただき、まずまずの船出でした。ありがとうございました。

本誌は(2014年8月の旧『NO NUKES voice』)創刊から8年近くが経ちました。同時に2011年3・11から11年余りが経ちました。

前号でも触れ繰り返しになりますが、2014年の創刊のころ鹿砦社はイケイケの時で、本誌の前身『NO NUKES voice』も、僭越な言い方ですが、いわば勢いで創刊いたしました。

しかし、創刊したのはいいとしても、以後1号たりとも黒字にならず赤字を重ね、加えて昨今の新型コロナ禍による打撃は想定以上に大きく昨年末には廃刊の危機に追い込まれました。そうした情況下、小出裕章さん、樋口英明さん、井戸謙一さんらの物心両面にわたるご支援と叱咤激励は、私たちに勇気を与え奮起せざるをえない闘志を惹起させました。
 
改題・リニューアルした『季節』の前途は荒海です。しかし私たちは、被災された方々、故郷を追われた皆様方に寄り添い(皆様のご苦労に比べればなんのことはありません)、なにがなんでも寄稿者や読者の皆様方と共に乗り切ってまいります! あらためて、今後ともよろしくお願い申し上げます。定期購読(前倒し更新、複数年)、書籍や本誌バックナンバーなどの直販、取材活動を支える賛助会員などでご支援ください。

一時は弱気になっていましたが、あらためて本誌を継続させる決意を表明させていただきます。

末筆ながら、コロナ禍長期化と、予想される猛暑、皆様方のご健勝とご活躍を心よりお祈り申し上げます。

2022年6月
季節編集委員会代表兼編集長 小島 卓
株式会社鹿砦社 代表取締役 松岡利康

〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌 『季節』2022年夏号(NO NUKES voice改題 通巻32号)

〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌
季節 2022年夏号
紙の爆弾2022年7月増刊(NO NUKES voice改題 通巻32号)

2022年6月13日発売開始
A5判 132頁(巻頭カラー4頁+本文128頁)
定価 770円(本体700円+税)

[表紙とグラビア](写真・文=おしどりマコ&ケン
《福島第一原発・現場の真実 第2弾》事故後11年、構内劣化が止まらない

樋口英明(元裁判官)
ロシアのウクライナ侵攻と原発問題

今中哲二(京都大学複合原子力科学研究所研究員)
放射能汚染の環境基準とハザードマップの作成を
《講演①》戦争と原発 ── ウクライナから考える
《講演②》「四〇年で廃炉」のデタラメと無責任 福島の放射能汚染と原発の後始末

「脱原発をめざす首長会議」発足10周年記国際シンポジウム
ドイツ脱原発への歩みと日本の十一年
《講演》菅 直人(衆議院議員、元内閣総理大臣)
〈核の共有〉でなく〈農と太陽の共有〉を!
《開会の辞》桜井勝延(元南相馬市長)
事故から十一年経った現実
《講演》ユルゲン・トリッティン
(ドイツ連邦議会議員、「同盟90・緑の党」会派所属、元環境・自然保護・原子力安全大臣)
ドイツ脱原発への歩み
《講演》飯田哲也(環境エネルギー政策研究所所長)
この十一年間で起きた三つの世界史的な出来事
《質疑・討論》先崎千尋(元瓜連町長)×桜井勝延(元南相馬市長)
×田中全(元四万十市長)×村上達也(元東海村長)
太陽光発電は自然破壊の原因になっているのではないか?

《対談》鎌田 慧×鴨下全生
未来に向けて真実を!
《講演》鴨下全生(大学生)
福島から東京へ 十九歳が問う原発事故 
《講演》鎌田 慧(ルポライター)
僕が原発に反対する理由

おしどりマコ(漫才師/記者)
私は広瀬隆氏の「地球温暖化説はデマである」を支持しません

尾崎美代子(西成「集い処はな」店主)
《関係者証言録公開》もんじゅ職員不審死事件
元動燃職員・西村成生さんは「自殺」していなかった!

森松明希子(東日本大震災避難者の会 Thanks & Dream(サンドリ)代表)
逃げずに火を消せ お国のために
「避難」は「権利」だと考えたことはありますか?

伊達信夫(原発事故広域避難者団体役員)
「汚染水海洋排出」は可能なのか

山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)
福島第一原発からの「汚染水海洋放出」に反対する

三上 治(「経産省前テントひろば」スタッフ)
ロシアのウクライナ侵略と原発

板坂 剛(作家/舞踊家)
何故、今さら昭和のプロレスなのか?

山田悦子(甲山事件冤罪被害者)
山田悦子の語る世界〈16〉
核による人類滅亡を目の前にしながら子孫を残すことができるのか

再稼働阻止全国ネットワーク
《北海道》瀬尾英幸(北海道泊村在住)
《新潟》山田和秋(なの花会)
《トリチウム》木村雅英(再稼働阻止全国ネットワーク)
《東海第二》相沢一正(脱原発とうかい塾)
《東海第二》志田文宏(東海第二原発いらない首都圏ネットワーク)
《首都圏》柳田 真(とめよう!東海第二原発首都圏連絡会、たんぽぽ舎)
《東京電力》佐々木敏彦(東京電力本店合同抗議実行委員会)
《浜岡原発》沖 基幸(浜岡原発を考える静岡ネットワーク)
《関西電力》木原壯林(老朽原発うごかすな!実行委員会)
《鹿児島》江田忠雄(蓬莱塾)
《読書案内》天野恵一(再稼働阻止全国ネットワーク)

[反原発川柳]乱鬼龍

私たちは唯一の脱原発情報誌『季節』を応援しています!