株式会社 鹿砦社 取締役編集長 中川志大 代表取締役 松岡利康








鹿砦社代表 松岡利康
今年もあと一日となった。本当に一年経つのは速い。このかん倉庫や書庫を整理していく過程で、私たちが本格的に出版の世界に踏み入れる際に、ちょうど縁あって歴史家の小山弘健先生と出会い、「われわれの出版の目的は一、二年で忘れ去られることのない本を作ることである」という、『戦争論』で有名なクラウゼヴィッツの言葉を教えていただいたことを思い出しました。果たして私たちは「一、二年で忘れさられることのない本」をどれほど作って来たであろうか ── 汗顔の極みです。思わぬ“発見”でした。
『紙の爆弾』の定期購読者や会員向けのセット直販のために、これまで出版した本を列挙してみました。その一部が別掲のような本ですが、一冊一冊に想い出があります。自分で言うのも僭越ですが、なかなかいい本もあります。くだんの小山先生の最期の遺作『戦前日本マルクス主義と軍事科学』をあらためて紐解き、今になってこの本の真価を感じました。
いやしくも私たちは本(書籍や雑誌)を出す出版社ですから、本を買ってご支援いただくことが基本です。最近のお薦めは、『3・11の彼方から』、わが国を代表する精神科医・野田正彰先生の2冊の著書『流行精神病の時代』『過ぎし日の映え』(野田先生によれば、先生の「精神医学の総括、辞世の書」ということです)、われわれの世代の絶対的カリスマ・山本義隆さんが寄稿された長大な講演録を収録した『季節2025夏・秋合併号』です。
ともあれ青色吐息ながら2025年を送り新たな2026年を迎えることができることを喜びたい。
鹿砦社代表 松岡利康
師走も押し迫り寒さも厳しくなり、世情は慌ただしくなってまいりました。皆様、ますますご健勝のこととお慶び申し上げます。
さて、このたび小社では、わが国を代表する精神科医・野田正彰先生の『過ぎし日の映え 続 社会と精神のゆらぎから』を刊行いたしました。去る8月に同じく野田先生の『流行精神病の時代』を刊行し各方面から好評を博し、短期間に2冊立て続けての出版となります。
本書は、著者の故郷の地元紙、高知新聞の長期連載「高知が若かったころ」の後半部分にあたり、前半部分は『社会と精神のゆらぎから』というタイトルで講談社から刊行されています。その続編という恰好ですが、前半とは全く異なる構成と内容で独立した書籍となっています。
その多くの文章はペレストロイカ後のロシアやバルト海沿岸諸国などを歩き続けた記録となっており、そこで旅しながら考えた、人間社会への深い考察になっています。
何卒ご一読いただき、ぜひ、紹介、書評などお願い申し上げます。
いよいよ2025年も押し迫ってまいりました。慌ただしいさなかでの出版ですが、著者の深い思索の一端をご理解いただければ幸いに存じます。

『過ぎし日の映え 続 社会と精神のゆらぎから』https://www.amazon.co.jp/dp/4846315959
尾﨑美代子
12月13日から十三の「シアターセブン」で中村明監督の映画「生きし」の連続上映がはじまります。毎日監督とどなたかのアフタートークがありますが、12月15日(月)中村監督とのアフタートークで、私も一緒にお話させて頂きます。映画を見にきてください。

1993年におきた「埼玉愛犬家連続殺人事件」をモチーフに、当時報道番組のデイレクターをしていた中村明さんが作った映画です。
「愛犬家」の周辺で次々と関係者が行方不明になる、しかし殺害の証拠がない。のちに殺人で逮捕されたブリーダーの関根元(元死刑囚、2017年東京拘置所で病死、享年75歳)が「ボディを透明にする」と、徹底的に遺体を損壊し、サイコロステーキ状に切り刻み、燃やしたり、川などに捨てたからだ。
事件が何をきっかけに発覚したか?実は遺体を運んだりして事件を手伝わされた部下の男Aが、別件で逮捕された自身の妻を救出したいがために、警察、検察に告白したことからわかりました。その後Aも逮捕されますが、留置場で、妻や元妻に合わせてもらい、2人きりの密室でなんと性行為を行ったなどと裁判で証言して話題になりました。Aは出所後事件の全貌を書いた本を出版しました。私もすぐに買って読みましたが、その後誰かにあげました。まさか、今その本が10倍ほどの値段がついているとは……。(その時点では凄い内容だと信じていましたが、その後虚偽の部分があることが明らかになっています)
映画「生きし」は、事件そのものを追うのではなく、あくまでもその事件をモチーフとした内容です。関根と一緒に逮捕され、関根同様に死刑囚となった元妻・風間博子さんと、実の母親、そして娘の関係、無実を訴える風間さんと支援者らの交流などを描いています。
私が、風間さんが冤罪を主張し、現在3度目の再審(裁判のやり直し)を請求していることを知ったのは約1年前です。当初「風間も共犯だ」と訴えたAは、裁判で「風間さんは殺害に関わってない」「なぜ死刑囚になるんだ」と証言しています。
また風間さんを支援する田口佐智子さんが、別の記事でこんなコメントを寄せてらっしゃいます。「モデルの風間博子さんの交通許可を得て文通しています。事件の立件に問題があり、何の物的証拠もない死刑判決です。再審請求中。」
死刑囚となったら、親族以外なかなか面会が叶わないなか、田口さんのような支援者がおられ、大変心強いことです。しかし、この事件、私も三度目の再審請求が行われていることを知りませんでした。これをきっかけに、この冤罪事件自体へも関心を持っていただけたら幸いです。
再審法改正問題がいよいよ正念場を迎えようとしている昨今、私は、この事件と様々な点で非常に似ている和歌山カレー事件との類似点、そして再審がどのように難しいかなどについて、お話させてもらいたいと考えております。
アフタートークでは毎日違う方が登場致します。詳細や時間などはホームページでご確認ください。
みなさま、劇場でお会いしましょう!
◎「生きし」HP https://ikisi-movie.com/
◎「シアターセブン」HP https://nanageitheater7.sboticket.net/top?type=title
▼尾﨑美代子(おざき みよこ)
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを「西成青い空カンパ」として主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
◎著者X(はなままさん)https://x.com/hanamama58
私たちは『季節』の旗を守りたい!
『季節』を脱(反)原発言論の強固な拠点にしたい!
『季節』編集長 小島卓 鹿砦社代表 松岡利康
『季節』を愛し、また鹿砦社の言論・出版活動を支持される皆様!
『季節』2025冬号をお届けいたします。実際に寄稿や取材にご協力賜った皆様方、熱心な読者の皆様方、本誌『季節』は創刊10年(いわば“親誌”の『紙の爆弾』は20年)を経過し、発行継続困難な情況に直面しています。今号も発行が危ぶまれましたが、何とか発行に漕ぎ着けました。コロナ禍以降は、毎号発行が困難な中で、『紙の爆弾』もそうですが、心ある方々のご支援を仰ぎ資金を工面しつつ一号一号発行してきました。
私たち鹿砦社は、時代の転換点・1969年の創業以来半世紀余り、当初は時代を反映し裏切られたロシア革命史、また知られざる革命運動史(左翼エスエル、クロンシュタット叛乱、マフの運動など)、社会運動史の発掘に努め、80年代後半、松岡が経営を引き継いでからは社会問題全般、ジャニーズ問題(一昨年の英国BBCによるジャニー喜多川告発には、数年前から水面下で秘密裡に協力)などの芸能関係にまでウイングを拡げ(このことで前経営者からは「俺の顔にクソを塗った」と非難されました)、さらには2005年の親誌『紙の爆弾』創刊以来20年間、「名誉毀損」に名を借りた言論・出版弾圧(実際に松岡が逮捕、長期勾留されています)にも屈することなく、〈タブーなき言論〉の旗を掲げ続けてきました。
そうして、『紙の爆弾』が軌道に乗り経営が安定した2014年、本誌前身の『NO NUKES voice』(31号より『季節』に改題)を創刊し、常に一号一号3・11で被災、原発事故で被ばくされた方々に寄り添い発行を続け、この継続を図るために苦闘してきました。この年末がノルかソルかの正念場です!
本誌のみならず『紙の爆弾』も、あるいは当社の出版物全般もそうですが、コロナ禍を大きな契機として出版業界の情況が大きく変わり、これまでのやり方ではやって行けないことを実感させられました。しかし、いくつか新たな試行錯誤をしながらも、私たちがいまだに苦境から抜け出せずにいるのは、その本質と、想像以上の深度に気づくことができず、よって方途を見失い、具体的な出版企画に結びつけることができないからだと認識はしています。この5年間、突破口を探し模索と試行錯誤を続けています。皆様方に妙案があれば、ぜひお寄せください。
本誌『季節』も、『紙の爆弾』も、幾多の苦難(この最たるものは「名誉毀損」に名を借りた言論・出版弾圧)を乗り越え本誌は昨年10周年、『紙の爆弾』は本年4月で20周年に至り、多くの皆様方に祝っていただき、また厳しい叱咤激励も受けました。多くの雑誌が権力のポチと化し、『季節』や『紙爆』のようにタブーを恐れない雑誌がなくなったからでしょう。以後私たちは、次の10年に向けて歩み始めていますが、遺憾ながらなかなか苦境を打開できずにいます。
そうは言っても、師走に入り、ノルかソルかの勝負所、ここを断固突破しなくてはなりません! 先に発行し送付した『紙の爆弾』の定期購読者、会員の皆様方らにも申し上げましたが、断固突破する決意ですので、ぜひ皆様方のご支援をお願い申し上げます。そして、年を越し、東日本大震災から15年の来年3・11には新たな『季節』を発行し共に迎えようではありませんか!
季節2025年冬号
『NO NUKES voice』改題 通巻44号
紙の爆弾2026年1月増刊
2025年12月11日発行
定価770円(税込み)
《グラビア》キオクとキロク(鈴木邦弘)
小出裕章(元京都大学原子炉実験所助教)
《報告》生命体の世界と原子核の世界
樋口英明(元福井地裁裁判長)
《報告》未来の人々から裁かれないために
井戸謙一(311子ども甲状腺がん裁判弁護団長)
《報告》311子ども甲状腺がん裁判にご支援を
《特集》福島の汚染土と汚染水の行方
山川剛史(東京新聞編集委員)
《報告》被災地の現実はどれほど報道と違うのか
鈴木邦弘(絵本作家/イラストレーター)
《報告》キオクとキロク
まさのあつこ(ジャーナリスト)
《報告》汚染土政策の変遷 「最終処分」から「復興再生利用」
和田央子(放射能ゴミ焼却を考えるふくしま連絡会)
《報告》放射能汚染土の核心的問題
平井 玄(新宿御苑への放射能汚染土持ち込みに反対する会)
《報告》放射能のない新宿「御苑」をコモンズに
門馬好春(「三〇年中間貯蔵施設地権者会」会長)
《報告》中間貯蔵施設の汚染土の行方
菅野みずえ(「ALPS処理汚染水差止訴訟」原告)
《報告》ALPS処理汚染水を海に流すな
吉澤正巳(「希望の牧場・よしざわ」代表)
《インタビュー》原発事故の暴虐に「いのち」を対峙
被爆した牛たちを飼い続けて闘う
水戸喜世子(「子ども脱被ばく裁判の会」共同代表)
《インタビュー》『3・11の彼方から』を読む
村田三郎(医師)
《インタビュー》弱者の側に立ち、反核・反原発を闘う《後編》
末田一秀(『はんげんぱつ新聞』編集長)
《講演》エネルギー基本計画 暮らしへの影響
山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)
《報告》柏崎刈羽原発の再稼働に異議あり!!
後藤政志(元東芝・原子力プラント設計技術者)
《報告》原発の技術的特性と裁判の論理〔2〕
古居みずえ(映画監督)
《報告》パレスチナと福島に通い続けて
森松明希子(原発賠償関西訴訟原告団代表)
《報告》福島から広島へ 「核被害者の権利宣言2025」が灯した希望と連帯
木村三浩(一水会代表)×板坂 剛(作家/舞踊家)
《対談》民族派と左翼の融合は可能か《前編》
三上 治(「経産省前テントひろば」スタッフ)
《報告》今、我々の置かれた場所から
原田弘三(翻訳者)
《報告》「脱炭素」の不都合な真実
再稼働阻止全国ネットワーク
《報告》危険な東海第二原発を阻止!
「原発依存社会」へと暴走する高市政権を批判する!
瀬尾英幸(北海道泊村在住)
志田文広(とめよう!東海第二原発首都圏連絡会世話人)
けしば誠一(反原発自治体議員・市民連盟事務局長)
藤岡彰弘(廃原発watchers能登・富山)
木原壯林(老朽原発うごかすな!実行委員会)
木村雅英(再稼働阻止全国ネットワーク)
天野恵一(再稼働阻止全国ネットワーク)
《反原発川柳》乱鬼龍 選
中川志大 『紙の爆弾』編集長
1月号では、孫崎享・元外務省国際情報局長が高市早苗首相の「台湾有事発言」を分析。すでに日中関係の悪化による経済への影響が各所で顕在化していますが、それにとどまらない本当の「高市リスク」について解説しています。それは、2021年末の安倍晋三元首相の「台湾有事は日本有事」発言と比較するとわかりやすく、両者の違いは現役の首相であるかだけではありません。高市首相の「右翼的ポピュリスト」思想にもとどまらない、今の高市政権そのものが持つ危険性が、孫崎氏の論考から見えてきます。
そもそも、繰り返し強調される「中国の脅威」とは何か。日本国内では、まるで中国がいきなり暴走を始めたかに受け止められていますが、そのタイミングをみれば、アメリカの対中戦略の変化が発端であることがわかります。だとすれば高市発言は、米中対立が次の段階に移行する予兆ととらえることが可能です。そうした現状にあって、果たして日本政府に対中戦略と呼べるものがあるのか大いに疑問で、ひたすらアメリカに追従することしか考えていないように見えます。その先に見えるのが、「日本のウクライナ化」です。ロシア・ウクライナ情勢について前号では東郷和彦・元外務省欧亜局長が、日本でほとんど報道されない欧州各国首脳の過激発言を紹介、ウクライナ情勢の現在と今後の展開について解説しました。そこで見えてきたのが欧米発のプロパガンダにまる乗りする日本の姿で、こと台湾情勢においてはさらなる危機を招くことが懸念されます。
孫崎氏は「目先の一手」に終始する高市政権の対外姿勢を指摘していますが、それは、事実に基づかない発言で“犬笛”を吹きジャーナリスト・西谷文和氏を攻撃しながら、西谷氏の質問状に答えない藤田文武・維新共同代表の言動にも通じます。橋下徹元代表ならば、もう少し考えて話していたのでは。自維まるごと、代を重ねるごとに劣化する、というのは、現代日本の政治に根本的な要因があるように思います。
N党・立花孝志代表の名誉毀損逮捕。パチスロメーカー告発書籍等の出版を理由とした2005年の鹿砦社代表逮捕・長期勾留事件は、名誉毀損の判断は権力・体制側のさじ加減であるとしても、出版物の記載内容(表現)を理由にしながら「証拠隠滅のおそれ」「逃亡のおそれ」を認定した異常なものでした。松岡代表が否認を貫き、それゆえに約200日に及ぶ長期勾留に至ったのに対し、立花氏が早々に罪を認めたなど両事件の展開には違いがあるものの、本誌記事が指摘する内容は、日本の刑事司法を考えるうえで間違いなく重要なテーマです。
ほか今月号では、現地取材・本人取材を通して田久保眞紀・前伊東市長への「メディア総たたき」の真相に迫りました。また“極右の台頭”ばかりが報道される裏で躍進を見せる「欧州左派」と、失速する「日本の左派」の違いを解説。さらに、このところ死亡事故が相次いでいるにもかかわらず、大きく取り上げられない日本ボクシング界の闇にメスを入れました。『紙の爆弾』は全国の書店で発売中です。ぜひご一読ください。
『紙の爆弾』編集長 中川志大

『紙の爆弾』2026年1月号
A5判 130頁 定価700円(税込み)
2025年12月7日発売
「台湾有事発言」は序章にすぎない 日本を襲う高市リスク 孫崎享
高市首相に食い込んだ米巨大投資ファンド 浜田和幸
日本だけ“真逆”の「令状主義」立花孝志逮捕事件が明かす刑事司法の異常 たかさん
藤田文武維新共同代表「犬笛吹いて逃亡」の責任を追及する 西谷文和
欧州左翼“復活”の時代に 日本の左派が見失った「果たすべき役割」広岡裕児
デマゴーグが闊歩する風土(上)日本的「和」の真相 中尾茂夫
国民を監視し情報を遮断する統制強化装置「スパイ防止法」の正体 足立昌勝
犯罪を裁く司法の犯罪 警察、検察、そして「裁判所の裏ガネ」青山みつお
動物実験を代替する? ヒト臓器チップとは何か 早見慶子
「日露相互理解協力章」受章 日露民間外交がもたらす「国益」 木村三浩
「JBC」トップに高まる退陣要求 ボクシング連続死亡事故の報道されない闇 片岡亮
メガソーラー計画は本当に止まったのか? 田久保眞紀前伊東市長総たたきの真意 高橋清隆
保護者を“カスハラ”扱いする都教委ガイドライン 永野厚男
原発亡国論 佐藤雅彦
食・農と生活を再生する「海洋深層水」の可能性 平宮康広
連載
例の現場【新連載】
NEWS レスQ
コイツらのゼニ儲け:西田健
「格差」を読む:中川淳一郎
シアワセのイイ気持ち道講座:東陽片岡
The NEWer WORLD ORDER:Kダブシャイン
ニッポン崩壊の近未来史:西本頑司
芸能界 深層解剖【新連載】
◎鹿砦社 https://www.kaminobakudan.com/
◎amazon https://www.amazon.co.jp/dp/B0G4CFFVG9/
足立昌勝(紙の爆弾2025年11月号掲載)
タブーなき月刊誌『紙の爆弾』の最新号記事がnoteで一部公開・購読可能となりました。独自視点のレポートや人気連載の詰まった「紙の爆弾」は全国書店で発売中です(毎月7日発売。定価700円)。書店でもぜひチェックしてください。

◆相次ぐ警察不祥事と謝罪
9月5日、警察庁の楠芳伸長官は、都道府県警の本部長を集め臨時の全国会議を開いた。被害者の訴えを黙殺した「川崎ストーカー殺人事件」における神奈川県警の不適切対応や、立件ありきの「大川原化工機事件」における警視庁公安部の捜査が違法と認定された不祥事を受けてのものである。
川崎事件では、9月4日に神奈川県警本部が「神奈川県川崎市内におけるストーカー事案等に関する警察の対応についての検証結果」を公表した。そこでは、署や本部における対処体制の形骸化や機能不全を取り上げ、今後、人身安全関連事案における被害者やその親族等の安全確保を最優先とした対処を徹底するという。ここで指摘されている内容は、現状の体制内における教育等に終始している。問題の本質が異なっているのではないか。今まで言ってきた言葉を繰り返しただけで、再発防止になるはずがない。根本的解決を図るならば、警察に批判的な人物を含め、第三者で構成する委員会に諮問すべきだ。
また、大川原化工機事件について、警視庁は8月7日、「国家賠償請求訴訟判決を受けた警察捜査の問題点と再発防止策について」を公表した。そこでは、訴訟指揮に関連して次の5つの問題点を指摘している。これらは組織内部の問題であり、公安部が抱える問題の大きさを物語っている。
①捜査機関解釈に対し経産省が疑問点を示していたにもかかわらずその合理性を再考することなく捜査を進めたこと
②温度測定実験に関する消極要素の精査の不徹底
③取調べ官に対する指導の不徹底
④捜査班運営の問題
⑤公安部長ら幹部への報告の形骸化と実質的な捜査指揮の不存在
これらを踏まえ、「公安部の捜査指揮系統の機能不全によって、公安部において組織として捜査の基本に欠けるところがあり、本件において関係者を逮捕したことが国賠法上違法であるとされる結果となったと考えられる」と結論付けた。今後は「業務の性質上現場の捜査員が声を上げにくいと言われる公安部の組織風土を十分認識した上でそれによる弊害を減らし、上司、部下が立場にとらわれず必要な意見を交わすことができる環境づくりを進めるとともに、公安部全体の捜査指揮能力の向上につなげていかなければならない」という。
大川原加工機事件で問われるべきは、公安警察の在り方そのものである。主権者である国民に見えないところで秘密の捜査を行ない、国民を監視してきたのが公安警察だ。この組織そのものにメスを入れない限り、根本的解決にはならない。
◆公安警察とは何か
1945年10月6日、GHQ(連合国総司令部)が発した人権指令「政治的、公民的及び宗教的自由に対する制限の除去の件」に基づき、国民を弾圧し続けた悪名高き特別高等警察(特高警察)は廃止された。
しかし、戦後の社会情勢に不安を感じていた内務官僚は、これに代わる組織の必要性を考えた。そして同年12月19日、内務省警保局に「公安課」を置き、各都道府県警察に「警備課」を設けた。その後、内務省は解体され、警察の在り方も根本的に改正されたが、そのどさくさ紛れに忍び込ませたのが公安警察で、その後も解体されることなく、大きな組織へと発展していった。
さらに特徴的なことは、公職追放されていた旧特高警察の警察官の多くが公安警察に復帰し、特高警察での経験・ノウハウを活かしているといわれていることだ。
昨年5月21日、警視庁150年を記念した特集で産経新聞は、「過激派、外国による工作…国内唯一の『公安部』誕生」を掲載した。同紙は公安警察の役割について次のように書いている(一部要約。以下同)。
〈「国事犯を隠密中に探索警防する事」。警視庁は明治7(1874)年の発足直後から、国家の秩序を乱す活動を事前に察知して防止することを、主要任務の1つとして掲げてきた。戦前では主に「特別高等警察(特高)」が対応に当たったが、GHQから「秘密警察」とされ廃止に。戦後、デモや大衆運動が活発化し、過激派による襲撃事件も発生する中、警視庁は警備課や捜査2課に置かれた係で対処する状態だった。「このような分散された弱い体制では(中略)国内の治安情勢に対処することはできない」(『警視庁史昭和中編上』)として昭和27(1952)年、公安1~3課を擁する警備2部が発足。1932年には「公安部」に改称され、日本で唯一公安部を持つ警察本部となる。東大紛争やあさま山荘事件、オウム真理教事件など、極左や右翼、カルト宗教を受け持つ「国内公安」に加え、外国機関の情報収集、対日有害活動に対応する「外事」も担う。外事は現在、主にロシアを担当する外事1課、中国の外事2課、北朝鮮の外事3課、国際テロの外事4課という態勢に。また、テロの疑いがある事案の初動捜査などに対応する公安機動捜査隊やサイバー攻撃対策センターも擁する。〉
この記事には、同紙の極右的特徴がそのまま出ている。まず、特高警察について触れながら、その悪行への批判はない。戦後のどさくさ紛れに設置された公安警察を無批判に受け入れ、旧内務省警保局への反省もない。このような治安重視の姿勢が、どれだけの善良な国民を監視し、投獄してきたのか。その事実を抜きにして、警察史を語ることはできない。
※記事全文はhttps://note.com/famous_ruff900/n/n208373083019へ

鹿砦社代表 松岡利康

「鹿砦社カレンダー2026」が出来上がりました!
2012年版(東日本大震災の年2011年制作)から始まった「鹿砦社カレンダー」も恒例となり、毎年首を長くしてお待ちいただいている方もおられます。
これは、松岡の大学の後輩で書家の龍一郎が、魂を込めて揮毫したものです。
本年もまた多くの自然災害、事件などがあり、目を海外に向ければ、ウクライナ、パレスチナの戦火はまだ続いています。本当の平和はいつ訪れるのでしょうか。
こういう時勢だからこそ、私たちは強い想いを持って、このカレンダーの制作にあたり、ここにお届けすることができました。ぜひ、お部屋の片隅にでもお飾りいただければ幸いです。
この制作の過程で、龍一郎に肺ガンが発見され左肺の半分を取る手術をし、現在抗がん剤治療を行っています。彼は重度の糖尿病、大動脈解離などを経験し、不屈の精神で病を乗り越えてまいりました。今回もおそらく乗り越えることでしょう。心ある皆様方のご支援(闘病資金)をお願いする次第です。
振込先:郵便振替 01760-0-130407
口座名:井上龍一郎
空欄に激励のメッセージなどお書きください。
来年3月11日で東日本大震災-原発爆発から15年となります。このカレンダーも、龍一郎の体力を鑑み、ひとつの区切りとして今回でいったん最後にさせていただくことになりました。龍一郎も私たちも頑張りました。今は清々しい気分です。機会あれば、なんらかの形で再び登場いたしたく思っています。
【お断り】このカレンダーは基本的に『紙の爆弾』『季節』の定期購読者、会員、いつもカンパをいただいたり継続的にご支援をくださる方、執筆者などに限り送らせていただいております。龍一郎や私たちの想いの籠もったこのカレンダーは毎年好評で、数を限って制作しており、毎年ほとんどなくなります。カレンダーだけを送れという方はお断りさせていただいております。





尾﨑美代子
追悼集会「矢島祥子と時間を共有する集い」
11月16日(日)14時開演
社会福祉法人「ピースクラブ」4階ホール
(大阪メトロ「大国町駅)5番出口南へ6分)
参加費 無料
冤罪「和歌山カレー事件」を題材にしたドキュメンタリー映画
「マミー」の二村真弘監督にお話して頂きます。
以下、釜ヶ崎のこの事件について、あまり知らない方に、当時何が起こったかを知って頂くために、事件前後に起こったことを時系列でまとめてみました。ご遺族、関係者に確認しつつやっております。訂正があった場合には速やかに訂正致します。ご一読を!! そして是非ご参集を!!
◆あの日、矢島祥子さんに何がおこったのか?
2009年11月16日(月)午前1時20分、大阪市西成区木津川河口の千本松渡船場で釣りをしていた男性2人が、女性の遺体を発見した。女性は14日早朝から同区内のK診療所から行方不明になっていた女医の矢島祥子さん(当時34歳)だった。遺体から発見されたカードケース付の財布に診察券、カード類、運転免許証などが入っており、祥子さんと判明した。
11月13日(金)祥子さんが最後の患者を診終えたのは19時45分頃、20時過ぎにはB看護師が、22時頃にk所長と職員Cさんが診療所を退出。Cさんによれば、祥子さんは奥の部屋でパソコンで作業をしていたという。
23時18分~37分の間、祥子さんが退出・入室していることが、祥子さん名義の警備会社ALSOKのセキュリティカードの履歴から判明している。
11月14日(土)4時15分頃、電子カルテがバックアップされ、同48分に退出が記録。しかし、最後にカードを使用した際、誤作動が生じ、警備会社が祥子さんに電話を架けていた。それまでも祥子さんは誤作動が生じると、自ら警備会社に「間違いでした」と連絡したり、警備会社からの電話にでていた。しかし、その日、祥子さんが電話にでることはなかった。そこで警備会社が緊急出動したが、すでに30分も経過していたため、診療所に問題なしと報告されている(天候は強い雨、しかし、鶴見橋商店街の監視カメラに祥子さんの姿は映っていなかった)。
同じ頃、祥子さんの携帯電話から翌日15日(日)会う約束だった友人Ⅹさんに予定をキャンセルするメールが送られていた。のちに、Xさんが遺族と診療所へ報告した祥子さんからのメールの着信時刻が違っていたため、遺族が正確な時刻を確認したいとⅩさんに申し出た。しかし、携帯が壊れたとの理由で確認は出来なかった。
14日10時過ぎ、出勤しない祥子さんを心配して、看護師Dさんが徒歩10分ほどの祥子さんの部屋を訪ねた。祥子さんは不在で、施錠されていなかったため中を覗くと、室内は整然としていた。なお、アパートに祥子さんの自転車もなかった。その後も職員らが何度か祥子さんの携帯に連絡をいれたものの繋がらず、午後13時10分過ぎには、K所長とD看護師が再び祥子さんの部屋を訪ねたが変わりはなかった。
翌15日(日)祥子さんと連絡が取れないままだったため、彼女の身に何かあったのではと危惧し、K所長らが西成署に相談。警察からは捜索願は親族から提出する必要があるといわれた。それを受けて、10時26分、K所長は初めて群馬の祥子さんの実家に電話をかけた。電話でK所長は、父・祥吉さんに「祥子さんが行方不明になりました。高崎警察署に行って捜索願を出してください」といった。電話の直後、これまでの経緯が書かれたメモがFAXで送られてきた。
【注】敏さん「父から送られてきたFAXを見たとき激昂しました。”なんでこんなもん作ってんだよ”そのFAXには祥子が行方不明になってから、その行方を知るために、誰とどういう行動をとったかが時系列と共に事細かに書いてあり、極めつけは祥子に最悪のことが起こった場合の対処まで書いてあったのです。これを制作する前、もしくは途中でも、何故家族に1本の電話もくれなかったのか?」と。
【注】父・祥吉さんが2010年1月11日、診療所でK所長と面談した。そのなかで、k所長から「2009年11月14日釜ヶ崎の一部に人たちに集まってもらい、対策を行った」ことが明かされた。しかし、翌日15日、K所長から届いたFAXに、その対策会議については書かれていなかった。
両親は地元の警察署に捜索願を提出。病院の事務局長を務めていた次男・洋(ひろし)さんを大阪へ向かわせた。
洋さんは西成に到着後、診療所でK所長と面談、その後ホテルで警察の連絡を待っていた。日が変わった16日深夜、洋さんは茅ケ崎に住む長男の敏さんに電話で報告を行った。
敏さんの携帯に再び洋さんからの連絡が入ったのは、それから1時間ほど経った時。その時の心境を敏さんはこう振り返る。「洋との電話を切り、少し横になっていたら電話が鳴った。いつでもとれるように着信音を最大にしていたんです。もう嫌な予感しかありませんでした」。
洋さんの電話は、祥子さんらしい遺体が見つかったことを知らせるものだった。群馬の両親には直接知らせる必要があるということで、敏さんが車で群馬へ向かう。知らせを聞いた両親は泣き崩れた。そのまま両親、敏さんは始発の新幹線で大阪に向かう。
警察からの知らせを受けた洋さんは西成署に向かい霊安室で祥子さんの遺体と対面。昼前には両親と敏さんが西成署に到着、霊安室で祥子さんと対面。その際、祥子さんの両首に赤黒い傷(頸部圧迫痕)があるのを見つけ、医師である母・晶子さんに告げた。祥子さんの遺体を司法解剖の結果をうけて西成署は、死因を「溺死」とし「過労による自殺の可能性が高い」と遺族に説明した。

【注】祥子さんが亡くなる直前、祥子さんからハガキを受け取った男性Mさんが、絵ハガキを西成警察に届けた。ハガキには「出会えたことを心から感謝しています。釜のおじさんたちのために元気で長生きしてください」とあった。男性(当時60歳)は当時釜ヶ崎の労働組合の組合員であり、K診療所の患者でもあった。なお群馬で執り行われた葬儀の席で、釜ヶ崎のNPO団体の女性(当時)から、「祥子さんには交際していた男性がいた」と告げられた。それがMさんだった。

【注】2018年ジャーナリスト寺澤有氏が「尾崎さん、矢島祥子さんの事件を取材しますよ」と来阪、2日目にMさんをアポなし取材し、難波屋横の喫茶店「ミチ」で2時間ほど話を聞いていた。その際、Mさんは、ハガキについて「警察に見せたが、それが遺書で自殺の根拠だと主張したわけではない。こういうハガキが届いていたと見せておかないと、あとで警察が知ったとき、『どうして隠していたんだ』と追及されるからだ」、自殺、他殺どちらだと思うかとの質問に「自殺だと確信しているが、とくに根拠はない」と述べていた。
遺体がみつかった16日の夜、釜ヶ崎「社会福祉法人聖フランシスコ会ふるさとの家」で「お別れの会」が開催された。「ふるさとの家」は敬虔なクリスチャンだった祥子さんがミサに通っていた場所で、彼女を知る多くの人が集まったが、祥子さんの死を「自死」という人が多く、それを遺族に告げる人までいた。
遺族は、祥子さんの自死説には到底納得いかなかった。クリスチャンの祥子さんは「死にたい」という患者らに常々「死んではだめ」と強く諭していたこともあるが、遺族がその目で祥子さんの首の傷を確認しているからだった。そのため遺族は祥子さんの母校・群馬大学医学部付属病院に再度司法解剖を依頼した。
祥子さんの死からひと月後の2009年12月11日、遺族は西成署の捜査担当者と面談。捜査員は、祥子さんの遺体には「頭血腫」(ずけっしゅ)と「頸部圧迫痕」(けいぶあっぱくこん)があり、2つの傷は、第一発見者の釣り人が遺体を引き上げる際、誤って遺体を落とし、できたものと説明した。「鑑定書」に納得いかない遺族は、解剖医に説明を聞きたいと申し出、捜査員と医師、遺族の3者での面談。医師からは「頭血腫は平らな鈍体よって出来たこと、生活反応があったこと(生きていた時にしかできない)、それによって脳震盪(のうしんとう)を起こしたと説明をうけた。警察が説明した、釣り人が遺体を引き上げるとき誤って落として出来たものは噓だったことがわかった。


【注】遺族によれば、現時点においても、誰が遺体を引き上げたかはわかっていないという。
遺族は、自分たちで不審点を調査し、「被疑者不詳」のまま、殺人と死体遺棄での疑いで西成署に告訴状を提出。祥子さんの死から3年目の2012年8月22日、告発状は受理され、再捜査が行われることとなった。
その後も闘いは続いております。ご支援をよろしくお願いいたします。
▼尾﨑美代子(おざき みよこ)
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを「西成青い空カンパ」として主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
◎著者X(はなままさん)https://x.com/hanamama58
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◆日本カルチャー終末論
「2025年7月に、日本で大災害が起きる」との、漫画家・たつき諒の『私が見た未来 完全版』(飛鳥新社)に端を発した終末論が話題になっていた頃、SNSではまた別の終末論が騒動を巻き起こしていた。マンガやアニメのみならず、大江健三郎から上野千鶴子までもが“禁書”になるという、「日本カルチャー終末論」である。
『私が見た未来 完全版』は作者の見た夢に基づいていたが、こちらは昨年12月、国連総会で採択された国際条約「ハノイ条約(国連新サイバー犯罪条約)」が根拠。この条約に日本が参加すれば「あらゆるマンガ・アニメが規制される」「日本の創作文化が壊滅する」といった言説が、X(旧ツイッター)で繰り返されたのだ。
不正アクセスや児童ポルノ流布を取り締まるために国際間協力を促す枠組に関しては、すでに欧米が中心となり2004年に締結されたブダペスト条約があるが、これに対してロシアが新たに提案しているのがハノイ条約である。ハノイ条約で重要なのは、各国が自国の憲法や法制度に合わせて適用範囲を調整できる「留保規定」が盛り込まれていることである。表現の自由を重視する国からは、創作物を犯罪化の対象から除外することが可能な仕組みになっているというのだ。本当にそうだろうか?
その第14条で情報通信技術(ICT)を通じた「児童への性的虐待または性的搾取の資料」の作成や提供、販売などを禁じ、各国の国内法で法的措置をとるよう定めていることが、終末論の発端だ。「資料」の基準や対象が曖昧で、日本の漫画はもちろん小説までもが規制対象になりかねないという主張がネットには溢れた。
冷静に考えれば、条約なのだから曖昧なのは当たり前、詳細は各国が国内法で整備するもののはずなのだが、そんな意見はほぼ無視された。東京新聞は25年7月8日付の特報面で「『国連サイバー犯罪条約』発効すれば…未成年者の性描写ハルキ禁書?!」としてこの問題を報道し、村上春樹の『1Q84』や『海辺のカフカ』、大江健三郎の『セヴンティーン』も規制されるのではないかと報じ、大いに危機を煽った。
この記事で「漫画やアニメだけではなく、小説も犯罪として禁止される危機が迫っている」と主張する弁護士の堀新は、ニュースサイト「弁護士・jp」で、手塚治虫・竹宮恵子から大江健三郎・川端康成・村上春樹まで、日本文学の巨匠たちの作品を次々と「禁止対象」リストに列挙してみせた。さらには上野千鶴子の学術書『発情装置』まで俎上に載せ、「外国の未成年の少年の全裸写真を掲載して性的欲求の観点から論じているので、条約の定義を免れるとは言えない」と断じたのである。
◆根拠なき〝文化危機〞演出
この問題を大いに利用したのが、自民党所属の参議院議員・山田太郎(比例区)。マンガやアニメの「表現の自由」を擁護し、オタクやSNSユーザーから圧倒的な支持を集める人物だ。折しも7月の参院選で改選対象だった山田は、この終末論の火付け役として巧妙に立ち回った。
山田の主張は、こういうものだ。2019年12月に「表現規制派のロシア・中国の主導により」新サイバー犯罪条約の策定が国連総会で可決され、当初提案された条約案には留保規定がなかった。2023年1月の第4回アドホック委員会で「中国等は、条約交渉の中で、マンガ・アニメを犯罪化することや、表現の自由を守るために不可欠な留保規定を削除すること等を提案してきた」とし、「日本以外留保規定を残す事を強調する国なく、厳しい状況」に陥ったという。山田は外務省と連携して留保規定の維持を働きかけ、2024年8月には「NY国連本部を訪問して条約責任者に直接行った要請等により、マンガ・アニメ規制を阻止し、留保規定も死守した」と、自らがロシアや中国という悪の帝国による表現規制に対抗するヒーローであると、喧伝したのである。
そして選挙中も「舞台は、国連での条約交渉から、日本国内での締結手続に移りますが、留保規定を使わずに新サイバー犯罪条約を締結すべきという圧力が日に日に高まっています」として危機感を煽り支持者を動員。38万1185票を獲得し、3度目の議席を確保することに成功した。
しかし、これらの主張はいずれもまがいものだったと断じてよい。
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