◆落ち着いた歴史の町・京都の消失

「秋の観光シーズンのバス混雑を抑えようと、京都市交通局は11月2日~12月1日の土日祝日、『秋のおもてなしキャンペーン』を行う。キャンペーンに先立って京都市交通局がバス運転手に実施した初めてのアンケートでは、激しい車内混雑の課題が改めて浮き彫りになった。……」(2019年11月2日付け京都新聞)


◎[参考動画]【TVCM】2019年 初夏「苔と新緑編」 そうだ 京都、行こう。

京都を訪れる観光客の数が年々増加している。上記記事にもある通り、雰囲気として宣伝で紹介される「落ち着いた歴史の町」の姿が京都にはもうない。春の桜、秋の紅葉と祇園祭のときには昔から人が溢れ、街中には出かけるのを控えていたものだが、最近では1年を通じて国内外からの観光客で、京都駅のバス乗り場には平日でも長蛇の列ができている。

観光客相手のお土産屋さんや宿泊施設は儲かっているのだろうが、観光に関係なく、居住地として京都市内中心部に住んでいるかたがたは、毎日のように繰り広げられる狭い道路の人並に、迷惑をしているのではないだろうか。東京や大阪に出かけると人の多さに「人酔い」してしまうことがあったし、いまもある。京都に限っては街中に出かけても、そうそう無茶な混雑にでくわすことがなく、狭い盆地に都市の機能が集中しているので、地価が高いことを除けば住みやすい街だとの印象があったが、もうその感覚も過去のものだ。

京都市が愚かにも四条通の歩道を広げ、交通量の最も多い道路を実質一車線にしてしまったので、公共交通機関である市バスやタクシーは勿論のこと、一般車両は四条河原町から、四条烏丸を通行することに膨大な時間を費やさなければならないことになってしまった。


◎[参考動画]【TVCM】2019年 盛秋「秋は夕暮れ編」 そうだ 京都、行こう。

◆「隠れた名所」の消失

そして、かつては「隠れた名所」であった、お寺や庭園なども「どこか新しいスポットはないか」とのテレビや雑誌の特集で、京都盆地京都駅以北の隅々にまで行き渡る「隠れた名所」探しの多数の視線により、もう「隠れている」ことが可能な場所は、ほとんどなくなってしまった。そして残念なことは、「隠れた名所探し」で全国に名の知れた、もとはしっとりとしていたお寺や、庭園が「待ってました」とばかりに、金儲けに露骨に変わってっ行く姿だ。

お寺に入るのに「拝観料」を払わなければならないのは、京都の有名寺院では常識化しているが、宗教の本質を考えると、いかにもおかしなシステムだ。金閣寺も銀閣寺も清水寺もいずれも仏教寺院なのに、どうして金を払わないと入ることができないのだろうか。

京都に行けば「観光地」だからお寺に入るのに「拝観料」を払うのは、当たり前と観光客の皆さんは、文句ひとつ言わずにお金を払って、敷地に入る。敷地に入るとさらに「お土産」や「おみくじ」といった趣向で、お金を落とすシステムが準備されている。しかも内部は猛烈な混乱状態で、ゆっくり立ち止まると、日本語か英語かウルドゥー語かわからないけども、後ろから「早く先に行け」と急き立てられる。

混雑はさほどでもないが、その「商売熱心さ」に辟易したのは、大原の三千院だった。「きょうとーおおはら、さんぜんいん」の歌のおかげで、全国区で有名になった三千院は、寺のたたずまいは残してはいるものの、10mもいかない距離に賽銭箱や、土産物売り場が連続して林立していて「商売丸出し」の恥ずかしい姿に落ちぶれている。一度訪れたら二度と行きたくない典型的な「商業寺院」だったが、そのあとをおって、清水寺も破廉恥さを増し、京都盆地の観光地が総体として浮足立った様相を呈している。

◆過度な観光地化が居住者の生活を圧迫

碁盤の目状に縦横で分かりやすく通りが敷かれた、中心部の小さいスペースにも、次々と新しいホテルが開業している。自家用車1台がようやく通ることのできるような狭い通りにも、相当の投資が行われている。まあ、わたしは京都市民でもないし、京都がどう変わろうがとやかくいう筋合いはないが、どう考えてもこれは「過剰な事態」としか考えられない。そして理由はあえて伏すが、このような怒涛の観光客押し寄せが、京都で長く続くとは思えない。

工業や製造業と異なり、観光業はその町の特性を活かせば、初期投資は少なく、維持費もそこそこで、公害を出さない比較的「環境にやさしい」商法とも言われてきた。しかし、過度の観光地化はその前提を覆してしまうことを、京都は示しているのではないだろうか。過日首里城が全焼してしまった沖縄本島にも同様な現象を認めることができる。

過度な観光地化は、観光に関わる生業を潤すが、そこに生活する人々から、落ち着いた日常を奪う。地価が上昇すれば固定資産税もつられて上がってしまう。観光地として何百年もの歴史を持つ欧州の諸都市は、観光客が足を踏み入れるエリアと、地元居住者のエリアを徐々に峻別してきた。そうしなければ、観光と無縁な居住者の生活が不便極まりないものになってしまうことを、知ったからだ。

残念ながら、京都にはまだその経験がない。そしてすでに交通や宿泊など、あらゆる面で「オーバーフロー」している観光客数に満足せず、京都市はさらなる観光客誘致にも予算を割いている。

本当にゆっくりとした時間や空気をお感じになりたいのであれば、京都ではなく、観光宣伝で名前も聞いたことのないような場所を訪れることをお勧めする。この忠告は、わたしなりの「京都への親愛の情」を示したものでもある。


◎[参考動画]JR東海 そうだ 京都、行こう。 1993~2018

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

11月7日発売 月刊『紙の爆弾』2019年12月号!

鹿砦社創業50周年記念出版『一九六九年 混沌と狂騒の時代』好評発売中!

田所敏夫『大暗黒時代の大学──消える大学自治と学問の自由』(鹿砦社LIBRARY 007)

◆人それぞれの道

話は足踏みするが、藤川さんが日本訪問を終えてタイの寺に帰った7月初旬(1995年)、2週間の予定が3週間を過ぎて帰ったものだから、すぐに和尚から大目玉を食らったという。「和尚が怒っても3日もすれば忘れるからいいけれど!」と笑わせる。

比丘が行く場所ではないデパートでも、指示すればどこにでも現れた藤川さん

寺に帰れば新顔が増えていて、この年のパンサー(安居期)を控え、新しい出家者が15名ほど入ったらしい。「昨年の連中(私と同期)と比べるとちょっと小粒で良く言えばおとなしく、悪く言えば覇気が無く、例年に比べ静かなパンサー」だと。
そして寺に残っている私と同期の彼らは7名ほどだが「もう1パンサーを過ごしてみる!」と言う者が多かったらしい。

ところがこの年のパンサーが終わった後、11月初めに皆の兄貴分、ケーオさんがいきなり還俗したようだ。藤川さんにとっては再出家の際、この寺に導いてくれた人の兄に当たるだけに「彼は裕福な家庭に生まれながら捻くれて育って、借金しても返済せず、無理矢理出家させられた経緯があって今後、何して生きていくのか心配や!」と言っていた。藤川さんにも3000バーツ借りたまま去って行ったとか。寺の顔触れも徐々に変化していくようだ。

◆2日間の空腹

翌年(1996年)6月、「今後は知らん!」と言っているにも関わらず、旅の日程を手紙で寄こす藤川さん。そんな連絡は受けていたが、仕事もあるから成田空港まで迎えには行かなかった。するとある日の午前、成田空港らしい館内放送が掛かる場所から電話が掛かってきて「どこに居るん?」と言われた。

「俺、成田空港まで行くとは言っていないでしょ!」と言い返したが、仕事があるからそれでも行かなかった。そうしたら来日後、丸々2日間、食事を摂れなかったようだ。それはあまりにもキツいと思う。しかし人をアテにし過ぎなのである。

藤川さんだって旅の資金を数万円は持っているはず。悪い言い方だが、ここは日本だから、午後でもコンビニで何か買って食べればいいと思う。しかし藤川さんは出家以来この戒律を守ってきたのだ。比丘として、どこの国に行こうとテーラワーダ仏教の戒律を守りながらの旅ということは当然と思う。蚊を殺したり、混んだバスなどで女性に接触したりは偶発的に起こることはあるが、午後食事を摂ってはならない戒律など、守りきれるものはしっかり守ってきたオッサンである。日本でも誰も見ていなくても、午後、飲み物以外は一切食べ物を口にしなかったのは本当だろう。でもこんな事態で律儀に戒律を守るべきかは悩む判断と思う。

と思えば、別の時期に後楽園ホールで春原さんに聞いたところ、「飯食わせてくれ~!」と電話があって、編集部の忙しい日にわざわざ昼飯の“タンブン(=要求に応える為)”に行ったことがあるらしい。

春原さんは「面白い話聴けるからいいんだ!」とは言っていたが、こうして本音で縋る厚かましさには私まで申し訳ない気持ちになってしまった。藤川さんは若い頃からのビジネスでの営業力は比丘になっても発揮され、仏陀の教えを説いたり、いつもの悪い癖の長話しも笑い話が中心だから人気者で支援者はドンドン増え、知人の“タンブン(=自然な寄進)”に任せながら一時帰国が毎年続いていた。

私と春原さんを頼って来た藤川さん、“飯食わせてくれ”と本音でズバズバ言える仲

◆今やワット・タムケーウは有名な寺!?

その後も藤川さんとは会って話したり、当初から手紙を貰って聞いていたが、1996年初頭は、ただ広いだけのワット・タムケーウの様子もかなり変化したようだった。

「寺周辺も建築ラッシュで近代的ビルや商店街が立ち並び、以前の土埃の立つ空地とは大違い。長かった寺の設備増築も終わり、新しい仏塔などの完成を祝う祭りの準備で、寺のあらゆる建物や木から木に植木まで電気装飾だらけ。夜になるとここはパッポン(バンコクの歓楽街)かと勘違いするほど赤色や黄色や緑色の点滅。そんな見習い的な手伝いに日々明け暮れて、もし還俗しても仕事に困らんほど電飾技術が身に付いた。ペッブリー中には宣伝広告の看板が建ち、拡声器付けた車に信者さんが発する声で“ワット・タムケーウ”を連呼して廻る日々。更には近県からバンコクにまで宣伝カーが走り、“ペッブリー県のワット・タムケーウで御祭り開催”と連呼でかなり有名になった。サンガ(仏門界)でも有名で、寺にはリムジンバスを貸し切って全国各地の高僧がやって来る始末。更に信者さんもごった返し、そこで沢山の御布施が置いて行かれる訳で、ワシらは式典の準備や御布施の金額数えにも使わされて睡眠時間4時間でフラフラ。その総額1千万バーツ超え(約5千万円=当時)。ペッブリー県の寺では1位を争うほどの額。それまでお金の工面に困って居った見栄張り和尚も鼻高々で、寺の発展に心にゆとりが出来たのか、旅に出る許しを貰いに行っても煩く言わなくなった!」といった事情を笑いながら話す藤川さん。

読経はしっかりこなしたカメーンくん、すでに体調悪かったのか

◆仲間の死

やがてお祭り騒ぎも落ち着き、寺も元の閑散とした日々に戻った頃までには、予想どおり私と同期だった連中はほとんど還俗し、残ったのはメーオくんだけ。新米以外の残った古い連中も5名になった。

諸行無常の世の中、葬式は絶えることなく続くが、「“カメーン”と言われたちょっと頭の弱い、周りからバカにされとった奴覚えてるか? あいつも還俗してそこからほんの3ヶ月ほどで死んで、ウチの寺で葬式やったんやが、参列者が5~6人しか居らん寂しい葬式やった。こいつの死因、何やと思う? エイズやったで。寺に居った時期には托鉢にも行くことも少なく、土木の手伝いもせんと部屋に居ること多かったが、こんな早う死ぬいうことは、もう発病して思うように動けんかったんかもしれんな。お前もあいつと同じグループで飯食っとったやろ? ちゃんとエイズ検査受けといた方がいいぞ!」

とまあ驚いても仕方無く、世間で言われている“食事で感染することはない”ということが真実ならば心配は無い。問題は剃髪に使うカミソリだが、サンガでもカミソリ注意報は発令されているようだ。我々も使い回しはしなかったが、検査は受けておいた方がいいだろう。

出家一ヶ月前のタイトルマッチに挑む高津くん、小林聡にヒジ打ち炸裂(1997年4月)

◆次の挑戦者

話は繰り返してしまうが、藤川さんも以前から計画していた、残りの人生の目的を果たす為にも、田舎の寺や人里離れた山奥の寺を知人に相談しながら転属先を探していく中、いろいろ候補はあったがまだビザ申請が短期的で、パンサー中は遠出が出来ない事情からバンコクに日帰り出来る地域がいいということで、最終的に受け入れ先となったのが、ペッブリー県よりもバンコクに近い、サムットソンクラーム県にあるワット・ポムケーウとなった。

1997年3月に寺を移られて暫くは慌しい日々を送ったようで手紙は来なかったが、私も関わるのが面倒で連絡はしていなかった。

そんな頃、私の知人がタイで出家することになった。私と藤川さんの縁は全く絡まないが、あの日(私の得度式)から「キミもやったらどうや!」と勧められていたキックボクサー、高津広行くんであった。

あの日から少しずつ興味を持たせてしまったか。相変わらずの貧乏暮らしの私はタイに行けず参列できなかったが、高津くんが日本を発つ朝、藤川さんから授かった「得度式次第」と「タイの僧院にて」の本2冊を持たせてあげた。ムエタイ修行ではないキックボクサーの旅立ちには、今までとは違った結果が楽しみな見送りとなった。

最後はローキックで倒された高津くん、生まれ変わって飛躍成るか

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]

フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

11月7日発売 月刊『紙の爆弾』2019年12月号!

一水会代表 木村三浩 編著『スゴイぞ!プーチン 一日も早く日露平和条約の締結を!』

上條英男『BOSS 一匹狼マネージャー50年の闘い』。「伝説のマネージャー」だけが知る日本の「音楽」と「芸能界」!

やはり、冤罪なのだろうか。今月5日、福岡地裁で始まった福岡県警の元警察官・中田充被告(41)に対する裁判員裁判の報道を見ながら、そんな思いを強くしている。

中田充被告の裁判員裁判が行われている福岡地裁

2017年6月、当時は現職の警察官だった中田被告は、妻と子供2人を殺害した容疑で福岡県警に逮捕された。この時、事件は「県警史上最悪の不祥事」と言われた。

しかし、このほど始まった裁判員裁判では、中田被告は「事実無根です」「間違いなく冤罪です」とかなり強い言い方で無実を主張。これに対し、検察側は「被告による犯行を直接証明する証拠はない」と明言したという。

もちろん、検察は中田被告を起訴した際、有罪を立証するに足る証拠が揃っていると判断してはいるだろう。しかし、報道を見る限り、「冤罪の疑いが濃厚」と言うのが現時点での私の見解だ。

◆無理心中を装った殺人だとみられたが・・・

では、この事件がなぜ、冤罪の疑いが濃厚だと言えるのか。まず、前提となる事実関係を整理しておきたい。

事件発生は2017年6月6日のことだった。この日の朝、中田被告の妻由紀子さん(当時38)の姉であるA子さんは、勤務中の中田被告から電話で「子供が登校していないと学校から連絡があった。様子を見に行って欲しい」と頼まれた。そして午前9時20分頃、中田被告の家の台所で由紀子さん、2階の布団の上で長男涼介くん(同9)、長女実優ちゃん(同6)がそれぞれ亡くなっているのを見つけた。由紀子さんのそばには練炭のようなものがあり、煙が充満していたという。

一見、由紀子さんが子供2人を道連れに無理心中したような状況だ。しかし、司法解剖の結果、涼介くんと実優ちゃんの首にヒモで絞められたような跡があったばかりか、由紀子さんの首にも圧迫されたような内出血の跡があった。そのことから中田被告が疑いの目をむけられる。そして8日、中田被告は由紀子さんに対する殺人の容疑で逮捕されたのだ。

さらに8カ月余りが過ぎた2018年2月、中田被告は子ども2人に対する殺人の容疑でも逮捕される。つまり、中田被告は、妻の由紀子さんが子供2人と無理心中したように装い、妻子3人を殺害した疑いをかけられたのだ。中田被告は当時、由紀子さんと仲が悪く、同僚に「妻に死んでほしい」と話していたという。ただし、容疑については一貫して否認してきた。

◆有罪を裏づける確たる事実は何も無し

では、検察は裁判で、どんな根拠に基づき、中田被告が犯人だと主張しているのか。毎日新聞が11月5日、ホームページ上で配信した記事によると、検察側は有罪の根拠として主に5点の間接事実を挙げているようだ。しかし、そのいずれもが有罪の根拠としては、はなはだ心許ないのだ。以下、順番に指摘しよう。

〈検察が示した有罪の根拠① 被告が事件当日は家にいた〉
事件当時、中田被告は残業と偽り、家に帰らなくなるほど夫婦関係が悪化していたそうなので、「事件当日に家にいたこと自体が怪しい」という趣旨の主張なのだと思われる。しかし、それだけでは単に「犯行は可能だった」という意味しか持たないだろう。

〈検察が示した有罪の根拠② 携帯電話のアプリに死亡推定時刻の6日未明に被告が活動していた記録がある〉
中田被告は「午前6時45分頃に出勤した際、3人はまだ寝ていた」と証言していたが、3人の死亡推定時刻は、午前0時から6時までの間なのだという。そのため、中田被告が死亡推定時刻に活動していた記録は、3人を殺害するために活動していた記録だと検察は言いたいわけだろう。しかし、そもそも、死亡推定時刻というのは、法医学者によって見解が大きく分かれがちで、事実認定の根拠とするには頼りないものである。

〈検察が示した有罪の根拠③ 妻子の周りにライターオイルがまかれており、被告の勤務先のロッカーに使い残しのライターオイルが保管されていた〉
中田家にあった複数の同種のライターオイルについて、妻の由紀子さんと中田被告がそれぞれ所持していたと考えても説明がつく。そもそも、中田被告が本当にライターオイルを犯行に使ったのなら、勤務先のロッカーに入れておかず、さっさと捨ててしまうほうが自然だ。

〈検察が示した有罪の根拠④ 第三者の犯行がうかがえない〉
家に侵入して犯行に及んだ第三者がいないとしても、由紀子さんが子どもたちと無理心中をしたと考えれば、中田被告が犯人でなくとも説明がつく。由紀子さんの首の内出血について、検察側は「首を圧迫された跡だ」という見解の法医学者を証人出廷させ、由紀子さんの自殺を否定しようとするとみられるが、法医学者の見解は分かれがちなので、弁護側も独自に法医学者の証人を用意できていれば、充分に対抗できるだろう。
 
〈検察が示した有罪の根拠⑤ 妻の首から被告と妻の混合DNAが検出された〉
事件とは何の関係もなく、中田被告のDNAが由紀子さんの首についたと考えても、夫婦なのだから何もおかしくないだろう。

以上、毎日新聞の記事で示されていた検察の主張に基づき、検証してみたが、有罪を裏づける証拠が乏しいのは間違いないと思われる。

◆子供たちまで殺す事情が見当たらない

一般論を言えば、被告人がクロでも有罪の証拠は乏しい場合もある。ただ、中田被告については、無実だと考えたほうがしっくりくる事情もいくつかある。

まず何より、中田被告には、子供を殺さないといけない事情が何も見当たらないことだ。中田被告が由紀子さんと夫婦仲が悪く、離婚も考えていたのは事実のようだが、それは子供たちまで殺す事情にはならないだろう。

第2に、いくら無理心中を装ったとしても、妻の首を圧迫して殺せば、解剖により犯行が露呈する可能性が極めて高い。そのことは、警察官である中田被告がわからないはずがない。こういう言い方は変だが、中田被告が妻子を殺害し、完全犯罪を狙うなら、他のやり方を考えるほうが自然だ。

以上、報道の情報をもとに検証してみたが、筆者は裁判の後半からでもこの事件の取材に動くことを検討中だ。有力な情報が得られたら、当欄で改めて報告させて頂きたい。

▼片岡健(かたおか けん)
全国各地で新旧様々な事件を取材している。近著に『平成監獄面会記 重大殺人犯7人と1人のリアル』(笠倉出版社)。同書のコミカライズ版『マンガ「獄中面会物語」』(笠倉出版社)も発売中。

月刊『紙の爆弾』2019年12月号!

「絶望の牢獄から無実を叫ぶ ―冤罪死刑囚八人の書画集―」(片岡健編/鹿砦社)

IOCの決定により、来年予定されている東京五輪のマラソン・競歩が札幌に競技場を移されることが決定し、競技の日程もマラソン男女が同日の実施と変更になるなど、大混乱をきたしている。


◎[参考動画]【報ステ】札幌で決定 小池知事「合意なき決定」(ANNnewsCH 2019/11/01)

◆オリンピックは本当に「神聖なもの」ですか?

本通信で何度も強調してきたように、わたしは東京五輪開催に再度強く反対の意思を表明する。IOC(国際オリンピック委員会)は決して身ぎれいで、崇高な意思を持った団体ではない。今日オリンピックは完全に「商業イベント化」されていて、その大元締めがIOCだと考えていただいて間違いない。

開催国の決定から、スポンサーによる巨額収入の使途まで、IOCには明かされない部分があることは、多くのひとびとが指摘してきたとおりであり、しかしながらその「暗部」が表面化しないのは、「オリンピックは神聖なもの」である、との幻想と、世界の主要メディアをスポンサーとしてIOCが抑えている構造。主要メディアもニュースソースとして、IOCやオリンピックの情報はぜひ欲しい、という情報提供主と情報産業の「持ちつもたれる」の関係性が災いしている。


◎[参考動画]猪瀬直樹東京都知事のプレゼンテーション IOC総会(ANNnewsCH 2013/09/08)

◆札幌に一部競技を移したら、もうそれは「東京五輪」とは呼べはしない

だいたい、2020年の夏季五輪は開催地として、東京が選ばれたはずであるのに、かつて冬季五輪を開催した札幌に一部競技をうつしたら、もうそれは「東京五輪」とは呼べはしない。海外の人にしてみれば、「同じ日本の中だから、トウキョウもキョウトもフジヤマもサッポロもどうせ小さな島の中にあるんだろう」と思われているのかもしれないが、当事者のわれわれは東京と札幌が距離的、文化的、意識的にどれほど距離のあるかは実感できている。

しかも、IOCはマラソン・競歩の札幌実施について、事前に東京都へはなんの相談・連絡もしていなかった。知事小池百合子が「暑いところが問題であれば北方領土でやれば」などと頓珍漢で軽薄なコメントを口にするようだからか、あるいは東京ともIOCも同様に「腹黒い魂胆」の隠し合いをしているためか知らないが、開催地としてはこれほど馬鹿にされた対応はない、と感じるのは無理もないであろう。


◎[参考動画]滝川クリステルさんのプレゼンテーション IOC総会(ANNnewsCH 2013/09/08)


◎[参考動画]安倍晋三総理大臣のプレゼンテーション IOC総会(ANNnewsCH 2013/09/08)

◆度重なる災害で増加する通常の生活を送ることができない人たち

しかし、そもそも直近の千葉県を中心に膨大な被害をだした台風や大雨による惨状が示す通り、記憶されている範囲だけでも、広島、佐賀などでの水害被害、大阪、熊本、北海道、そして東日本大震災での地震津波被害など、自然災害と人災により、通常の生活を送ることができないひとびとが残念ではあるが年々増加するばかりだ。

それら災害の一つ一つが、数年間の間をおいて発生すれば、全国の注目を浴び、復旧へのまなざしももっと強く注がれ、政府の対策への注文もより強いものになろうが、このように甚大な自然災害が毎年のように発生していると、日々の情報消費速度が一貫して加速する社会にあっては、各被災地や被災者への記憶は、当事者ではないひとびとの日常からは薄れてゆかざるをえない。

大阪で震度7を初めて経験した茨木市や吹田市の古い住宅の屋根には、その数はだいぶ減ったものの、いまだにブルーシートの姿が見える。同じ関西に居住しているが、関西圏でも大阪での大地震(揺れの時間が短かったので東日本大震災のように甚大な被害ではなかったが、死者も出すほどの大きな揺れだった)に対する記憶は、ほとんど語られることがない。


◎[参考動画]東京2020/国際オリンピック委員会の記者会見(Olympic 2013/09/08)

◆日本はもはや経済大国ではない

そして、あまり口にする人はいないが、かつては「経済大国」であったこの島国、日本がもう世界的に経済大国としての地位を、失いかけていることに、日本居住者は鈍感であるがゆえに、バブル経済破綻まで崩れなかった「土地(地価)神話」のように、去りゆく「日本経済大国」幻想から、覚醒することができていないのだろう。

わたしが、指摘するまでもなく日本は20年以上デフレが続いていて、OECDのなかでこの20年間成長率は最下位だ。20年間最下位がつづくと、どういう現象が起きるか。たとえば為替レートが20年前と同じOECD加盟国に出かけたら、日本はデフレで物価が上がっていない(給与所得も上がっていない)が、その他のOECD加盟国は年率で2-4%の成長を続けてるので、20年前に日本より安価だと感じていた外食の価格が逆転し、さほど贅沢でもなさそうな外食に1000円~2000円払わなければならないという現象が起きている(豪州などでこの「逆転現象」は顕著である)。

豪州では30年ほど前に、シドニーを除くメルボルンやブリスベンなど都市近郊の約200坪プール付きの住宅が1500万円ほどで購入できたが、都市周辺部の地価はここ20年で約4倍(6倍の地域もある)に上昇しているという。かつては日本で建売住宅を買うよりも安く買えた、広々としたプール付きの住宅が、いまでは日本の給与所得者には手の届かない値段になっている。

全国各地に100円ショップが展開し、非正規雇用が4割を超える。この現象の進行を日本にいて日々生活をしていると「こんなものか」としか感じられないかもしれないが、確実に日本の経済力は低下していて、国家財政は破綻が目の前だ(山本太郎氏率いる新政党は「MMT理論」で国債発行は問題ない、としているが、私は「MMT理論」には懐疑的である。国債発行で国家財政が賄えるのであれば、苦労して行政は税金を集める必要がなくなるのではないか)。

あなたのお給料や年金は、ちゃんと毎年上がっていますか? 下がってはいませんか? 高度成長期を経験した、あるいはバブル期を経験した世代の方であれば、その後の急激な不景気がご記憶にあるだろう。今後日本は長期間にわたり、あのような不況がつづく。大企業に利益が集中し内部留保ばかりが増え、中小企業や低所得層が消費税で締め上げられる構造が維持される限り、間違いない。

ようするに、もうに日本は過去の日本のように「金持ち」ではないのだ。そして1964年に東京五輪を開催した時代のように、この先高度成長はやってくることはない。2020年東京五輪を開催すれば、巨額の請求書をのちに押し付けられ、それを支払うのは東京都民であり、日本国に納税する私たちであると、再認識しよう。五輪後の「不正経理」問題は長野五輪で経験済みだ。

「企業の祭典」、「灼熱地獄の忍耐競争」、「ボランティアという名のタダ働き」、「綺麗ごとを並べる権力者の利権争い」……。薬物禁止のポスターではないが、「百害あって一利なしの東京五輪はやめましょう」


◎[参考動画]2020年夏季五輪開催都市 東京に決定(ANNnewsCH 2013/09/08)

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

11月7日発売 月刊『紙の爆弾』2019年12月号!

鹿砦社創業50周年記念出版『一九六九年 混沌と狂騒の時代』好評発売中!

田所敏夫『大暗黒時代の大学──消える大学自治と学問の自由』(鹿砦社LIBRARY 007)

小泉進次郎の環境大臣就任にさいして、本欄でこう指摘してきた。

「安倍政権が、単に小泉人気を取り込んだだけではなく、閣僚人事が熾烈な『政局』であることを見ておく必要があるだろう。」

というのも、菅義衛官房長官の『文藝春秋』での対談をテコにした取り込みが、安倍総理の了解のもとにおこなわれてきたからだ。これも以下に指摘しておいた。

「今回のパフォーマンスには、小泉進次郎がこれまで石破茂を総理候補として支持してきた(地方・農業政策は石破茂と一致している)ことから、安倍総理への宗旨替えを表明させたものと見られている」

◆上級国民たる小泉進次郎と滝川クリステルの「特異性」「選民性」

それはしかし、滝川クリステルとの結婚発表のパフォーマンス(これも菅義衛の仕込み)で描かれていたシナリオでありながら、上級国民たる小泉進次郎と滝川クリステルの「特異性」「選民性」を浮き出させる結果となった。

上級国民としてのパフォーマンスを嫌悪したのは、一般国民のみならず自民党の年輩の議員たちも同様であった。そしてその空気はメディアにおいても、手痛いしっぺ返しが小泉新大臣を襲うことになったのだ。それは伴侶となった滝川クリステルの浪費壁とおもいうべき金銭感覚においても。

「進次郎(資金1位)の足を引っ張る滝クリの『金銭感覚』」
●「おもてなし」でギャラ高騰 今も年収1億円超え
●滝クリ セレクトは月80万円マンション、50万円バッグ、ベンツ
●進次郎“女子アナ密会”ホテルに政治資金で宿泊代67万円
(以上、11月7日発行「週刊文春」)

滝川クリステルとの結婚を首相官邸で行なうという、前代未聞のパフォーマンスをどう見るべきであったか? 本欄の過去記事から、再度指摘しておこう。

「マスコミが国民的な関心をあおり、全国放映するという異様な光景だ。かれは特別な階級に属する、国民が注目するべき貴人なのだろうか? 小泉進次郎は国会議員とはいえ、ふつうの国民ではないのか? いや、かれはふつうの国民ではない。上級国民なのだから――。」資産と生活において、まさにこの夫婦は「上級国民」だったのだ。


◎[参考動画]小泉進次郎議員と滝川クリステルさんが妊娠・結婚へ(テレ東 2019/08/07公開)


◎[参考動画]総資産最多は小泉進次郎氏 全額がクリステルさんの資産(FNN 2019/10/25公開)


◎[参考動画]滝川クリステルさんのプレゼンテーション IOC総会(ANN 2013/09/08公開)

◆基本ポリシーの欠落

一挙手一投足がマスコミに注目され、ある意味では晒しものになりつつあると言って間違いではないだろう。菅官房長官が小泉進次郎を政権に取り込んだ稚拙さ、あるいは安倍晋三総理の「政敵の一部を取り込みつつ、その将来を奪う」という戦略の巧みさは、もはやどうでもいい。これまで、記者の一般的な質問に無責任な立場から政権批判をしていた当の本人が、環境大臣というきわめて難しい立場に置かれて、その不勉強ぶりと定見のなさを暴露されているのだ。

「気候変動問題はセクシーに」という無定見。国連の会見で「火力発電を減らす」と断言した小泉大臣は、その方法を外国メディアから聞かれると、しばらく沈黙して「私は、大臣に先週なったばかりです」などと言うだけだった。そのニューヨークでは、環境破壊の元凶でもある牛肉のステーキを食べたと、自慢げに公言するあり様だ。家畜飼料として、鶏肉1キロを生産する場合に必要なトウモロコシは3キロ、豚肉1キロで7キロ、牛肉1キロでは11キロである。牛肉は飼育期間が長く、飼料の量はそのまま多くなるからだ。畜産も排せつ物などで温室効果ガスを排出している。なかでも牛の排出量は飛びぬけて多いとされている。小泉大臣はおそらく、何も知らずにステーキ発言をしたのであろう。ステーキを食べるなとは言わない。環境問題にかかわる政治家・大臣としては不適切な発言であることを知るべきだ。


◎[参考動画]「気候変動問題はセクシーに」小泉大臣が国連で演説(ANN 2019/09/23公開)

政治評論家の伊藤惇夫氏は、小泉進次郎を評してこう語っている。

「大臣としては新人で、政策などに通暁していないのはある程度仕方がないと思います。小泉さんは如才がなく、受け答えの能力は高いです。確かに、表面的には正論めいたことを言います。しかし、外交や安全保障といったこの国の方向性についての主張で、納得できる発言は記憶にないですね。小泉さんの発言に中身や具体性、方向性がないことが、大臣になって表面化したのではないですか」(9月24日、J-CASTニュース)。

ようするに、基本的なポリシーがないのである。自民党農政部会のときの農協改革を加速させた「手腕」は、日本の農業に寄り添うかたちで、農協関係者の理解を得られることが出来たが、それは人気政治家を農林族に取り込もうとする関係者の利害にすぎなかった。それが政府にとって困難(ネガティブ)なテーマになると、たちまち無内容ぶりを露見せざるを得ない。たとえば水俣病である。

◆水俣での猛反発

10月19日に熊本県水俣市で水俣病関連の慰霊祭に参列しているが、関係者との意見交換会では、特別措置法で定める周辺住民の健康調査を行うかどうか、あやふやな発言を続けて反発を招いている。小泉大臣は慰霊式のあと地元の商工会関係者と懇談し、人口減少をめぐる悩みこう答えたというのだ。

「減るものを嘆くより、減る中で何ができるか考える街作りをやりませんか。一緒になって考えれば、日本らしい発展の道が描けると思う」と、口当たりの良い言葉のほかに、具体的なことは何も語っていないのだ。

水俣病被害者団体の約20人との意見交換会では、激しい反発をくらっている。

「大臣、ねえ、ちゃんと返事してくださいよ」

小泉大臣が締めのあいさつをした後、出席者の1人があきれたように声を張りあげたといいうのだ。周知のとおり、平成21年に施行された水俣病特別措置法に盛り込まれた周辺住民の健康調査は、いまだに行われないままで、被害者団体から健康調査を求める厳しい批判が相次いでいる。

「健康調査は大臣の一言でできる。水俣病の症状がある多数の患者が切り捨てられてきたんです」「小泉氏には行動力がある。大臣が水俣病を公害の原点と思うならば、きちんと片付けて。63年たっても解決しないのは国が被害者の声を聞かないからだ」「解決を目指すために政治が主導権を発揮すべきだ。持ち前の指導力と発信力を発揮してもらいたい」

声を震わせながら批判する出席者に対し、小泉大臣は正面からの答えを避けた。
「要望は精査する。環境省職員は新しい大臣にまず『環境庁は水俣病がきっかけとなって立ち上がった。そのことを決して忘れるな』と言っている。そのことを忘れず、何ができるかを考えていきたい」

「水俣病被害者の会」の中山裕二事務局長も産経新聞などの取材に不満をにじませたという。

「小泉さんは一見歯切れがよさそうだが、よく聞けば何も語っていない。水俣病をもって環境庁ができたというが、むなしく聞こえる」

その後の記者会見でも、地元メディアから、健康調査の実施に後ろ向きな環境省の姿勢を批判する質問が相次いだ。小泉大臣は口をへの字に曲げ、こう繰り返すのみだったという。

「現時点で具体的時期を答えるのは困難だ。メチル水銀の健康影響を客観的に明らかにする手法は慎重かつ確実に開発しなければならない」

語るに落ちる「具体的時期を答えるのは困難だ」としながら、前向きな雰囲気の発言は誰にでもできる。問題はそれを政策として具体化すること、関係省庁を巻き込んだ具体策へと結実させるのが政治家、とりわけ環境大臣としての責任なのである。ひとりの議員として、政治を論評してきた延長上にしか、いまの小泉大臣の言動はないと断じてもいいだろう。それは言うまでもなく、大臣失格という烙印である。


◎[参考動画]水俣病犠牲者へ祈り 公式確認63年、今なお課題(共同通信 2019/10/19公開)

▼横山茂彦(よこやま しげひこ)
著述業、雑誌編集者。近著に『ガンになりにくい食生活』(鹿砦社ライブラリー)『男組の時代――番長たちが元気だった季節』(明月堂書店)など。

[関連記事]
◎奇人変人総集合の第4次安倍改造内閣で国民が払う重いツケ(2019年9月18日)
◎安倍総理が小泉進次郎を環境相に迎えた本当の理由は何か?(2019年9月20日)
◎続々湧き出す第4次改造安倍政権の新閣僚スキャンダル 政治家と暴力団の切っても切れない関係(2019年9月21日)
◎高齢・無能・暴力団だけではない 改造内閣の「不倫閣僚」たち(2019年9月24日)
◎安倍官邸親衛隊の最右翼、木原稔議員が総理補佐官に就任した政治的意味(2019年9月25日)

鹿砦社創業50周年記念出版『一九六九年 混沌と狂騒の時代』好評発売中!

また下品な表現を使わせていただくが「ほらみたことか!」である。萩生田光一文科相が11月1日、2020年度から実施すると計画していたセンター試験英語における民間試験の導入を5年先延ばしすると発表した。センター試験に民間試験を取り入れることには、高校側からの反発意見が根強く、文科省は、それに対してこれまで傲慢な態度をくずしていなかったが、既に試験のID発行を始める最悪のタイミングで延長を発表した。

◆文科省「朝令暮改」の無責任──受験生はたまったものではない

こんなことをされては、準備をしていた受験生はたまったものではない。文科省伝家の宝刀「朝令暮改」の本領発揮である。受験生の立場や大学の都合など、一切お構いなしに、どんどん劣化が進む文教行政の本質が、見事に炸裂した事件といえよう。このような「ドタキャン」ならぬ「ドタエン(延期)」を、行政側ではなく、一般市民が行えば必ずや強権的にペナルティーを課したり、脅しをかけてくる文科省。自らの失態のもたらした受験生、高校、大学への不利益をどう始末するつもりであろうか。

始末などできはなしない。文教行政や学校運営に関わる人が、冒しがちな大いなる勘違いがある。それは方針や政策を一連の流れの中で位置づけようとする意思だ。文科省であれば、「社会の要請や時代の変化」だの、大学は「新しい取り組み」といった理由をつけて、受験生や学生にとって例外を除けば、人生に一度しか経験しない受験や、大学のカリキュラム、学部、学科構成などを文科省を主体、あるいは大学を主体に考えて構築してしまう考えかたである。

◆文科省に隷属する学校・教師の無責任

これは、今回の醜聞に限らず、教育関係者とりわけ私立学校の運営や、個々の教師の児童・生徒・学生への向き合い方にも表出することがある。わたし自身が通った「授業料を払う刑務所」こと愛知県立高蔵寺高校に勤務し、のちに校長まで上り詰めた暴力教師、市来宏はわたしに対して「先生(自分のことを先生と呼ぶな!)も若い時は組合で赤旗を振っていたことがある。でもいまはこれが正しいと思ってやっている」とわたしに暴力を振るう際に開き直ったことがあった。市来が若いころも「いま」(過去である)も、本当の「いま」も生徒への暴力は一貫して犯罪行為であり、教師個人の考えが「法律」を超えることなど許されないことは自明である。

これなのだ。教師にとって新任採用されてから、定年を迎えるまで。経験を重ね教師として(あるいは人間として)成長してゆくことは理解できるが、そのときの私的思想や感情で態度を変えてもらっては、児童・生徒・学生にとっては迷惑以外の何物でもない。学ぶ側は個々の教師の人間性を目指してではなく、義務教育であれば学校へ必然的に、高校以降は「その学校の教育(あるいは課外活動)内容」に的を絞って志望校をきめるのであり、教師・教員の都合で教育態度や内容が変化されたのでは約束違反もいいところだ。

この文科省を筆頭とする教育機関、教師・教員個々が冒しやすい「機関や個人史の中に児童・生徒・学生との向かい合い方をおく」考え方の過ちは案外わかりにくい形でも頻発する。私立大学にとっては少子高齢化で受験生・在学生の確保が厳しい時代だ。

そこで定員割れを起こしている大学の中には、従来の学部や学科を改組することで展望を開こうとするケースが昔から多数見られる。教育内容が充実し学生にとっての魅力が増すのであれば構わない。だが「抱えている教員の顔ぶれで、ちょと目先の変わったことができないか」という実は貧弱な理由で改組が行われることは珍しくない。その際、在学生や卒業生が自分が在籍している、あるいは在籍していた学部なり学科が「なくなる」ことをどう感じるか、といった視点に重きは置かれない。

「わたしはX大学のY学部Z学科卒後です」

と自己紹介しようにも、Z学科がなくなっていたら、卒後生はどう感じるか。あるいはY学部が消滅していたら。そしてX大学自体が閉校してしまっていたら。たとえば、就職試験の際の面接などで卒業生がどう感じるか。それくらいはどなたでも想像が可能だろう。もちろん長期的な視点に立った、学部や学科の改組を否定するものではない。新しい学問領域の誕生は必然的に学びの場の要請を伴うのであるから。しかし、1つの学科や学部を改組を5年ほどで繰り返す癖のある大学もある。文科省同様の「朝令暮改癖」と言わざるを得ないだろう。

このような姿勢に欠如しているのは、学ぶ主体である児童・生徒・学生を中心に据えた考え方である。そして残念ながら文科省を筆頭に、今日そのような考え方はかなり広く伝播しており、教育現場諸問題の根源を成す課題となっているのではないかとわたしは考える。

◆福岡の小学生たちが作り上げた学年の旗「ゲルニカ」の奇跡

凄い2ショット! 男2人、宇崎竜童さんと龍一郎さん(「琉球の風」控室にて。なお「琉球の風」の題字も龍一郎さんが揮毫)

そんな問題を考えるときに、「この人しか話せない」経験を有する絶好の人物が10日同志社大学で講演をする。本通信をはじめ鹿砦社のロゴや出版物の表紙やカレンダーを揮毫していただいている龍一郎さん(本名:井上龍一郎さん)が下記のご案内のように講演会を実施する。

小学校教諭として、学ぶ主体である児童を中心に学級、学年をまとめ上げ偉大な成果を作り上げながら、校長の悪意により作り上げた学年の旗「ゲルニカ」が卒業式に会場正面に飾られることはなく、卒業する児童が抗議の声を挙げた。

「私は校長先生のような人間にはなりたくありません!」

児童の声を支持した龍一郎先生は、のちに処分を受けることになるが、龍一郎さんに対する処分は「児童に対する処分だ」と受け取った龍一郎先生は、『ゲルニカ裁判』を闘うことになる。

文科省から現場の教師にまで、「学ぶ主体」の意識欠如が著しい時代に、龍一郎さんは必ずや珠玉のアドバイスを伝えてくれることだろう。

ピカソの「ゲルニカ」(左)と事件の中間報告『ゲルニカ事件』(絶版)。11・10の講演は、こののちの話になる。現在絶版だが、当日手持ちの10冊ほど販売

鹿砦社出版弾圧10周年の集まりで揮毫する龍一郎さん(2015年7月12日)

その際揮毫した「誠」の字は極真会館中村道場に採用された

11月10日(日)同志社大学学友会倶楽部第7回講演会 書家・龍一郎さん「教育のあり方を問いかけたゲルニカ事件から30年の想い」

11月10日(日)同志社大学学友会倶楽部第7回講演会 書家・龍一郎さん「教育のあり方を問いかけたゲルニカ事件から30年の想い」

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

鹿砦社創業50周年記念出版『一九六九年 混沌と狂騒の時代』好評発売中!

田所敏夫『大暗黒時代の大学──消える大学自治と学問の自由』(鹿砦社LIBRARY 007)

暴対法(暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律)が成立したのは1991年のことだった(施行は翌年)。露天商系のヤクザ(テキヤ)が反対デモをするなど、その違憲性が問われたものだ。その後2回の改正をへて、以下のような禁止事項が整備された。執行については、これらに基づいて公安委員会から「禁止命令」が出される。なお、組事務所の移転訴訟などを、地元の住民に代わって暴力団追放センターなどが代行できる訴訟制度の改正も行われた。

【禁止事項】(だいたいわかると思いますので、読み飛ばしてください)
・口止め料を要求する行為
・寄付金や賛助金等を要求する行為
・下請参入等を要求する行為
・縄張り内の営業者に対して「みかじめ料」を要求する行為
・縄張り内の営業者に対して用心棒代等を要求する行為
・利息制限法に違反する高金利の債権を取り立てる行為
・不当な方法で債権を取り立てる行為
・借金の免除や借金返済の猶予を要求する行為
・貸付け及び手形の割引を不当に要求する行為
・信用取引を不当に要求する行為
・株式の買取り等を不当に要求する行為
・預貯金の受入れを不当に要求する行為
・地上げをする行為
・土地家屋の明渡し料等を不当に要求する行為
・宅建業者に対して不動産取引に関する不当な要求をする行為
・宅建業者以外の者に対して不動産取引に関する不当な要求をする行為
・建設業者に対して建設工事を不当に要求する行為
・集会施設の利用を不当に要求する行為
・交通事故等の示談に介入し、金品等を要求する行為
・商品の欠陥等を口実に損害賠償等を要求する行為
・役所に対して自己に有利な行政処分を要求する行為
・役所に対して他人に不利な行政処分を要求する行為
・国等に対して自己を公共工事等の入札に参加させることを要求する行為
・国等に対して他人を公共工事等の入札に参加させないことを要求する行為
・人に対して公共工事等の入札に参加しないこと又は一定の価格で入札することを要求する行為
・国等に対して自己を公共工事等の契約の相手方とすること又は他人を相手方としないことを要求する行為
・国等に対して公共工事等の契約の相手方に対する指導等を要求する行為

ようするに「不当な方法」で「要求」をしてはいけない。というのが法の趣旨である。構成要件が不当というのだから、従来法で対処できるではないかというのが、当時の任侠団体(ヤクザ組織)の言い分だった。


◎[参考動画]1992年2月テレビ朝日「朝まで生テレビ! 激論! 暴力団はなぜなくならないか!?」 (前半)(2019/4/25公開)

しかしすでに、この頃からヤクザは「不当な強要」や「用心棒代」から「正業」に移行しつつあった。その先鞭が五代目山口組の若頭宅見勝である。宅見は愛人(西城秀樹の姉)に高級焼き肉店をやらせ、みずからは土建会社を経営するなど、経済ヤクザへの道を拓いていた。

ヤクザが組の名刺とともに、企業の名刺を持つようになったのは、暴対法の成立が契機だった。六代目山口組(司忍組長)の弘道会が力を得たのも、中部セントレア空港建設の莫大な利権を独占したからである。一説には地下室のプール一杯に、札束が敷き詰められているなどという情報もあったほどだ。

公共事業や民間事業の建設利権とは、正規の予算外に設けられている「地元対策費」をヤクザが業者を取りまとめることで、そこから予算を吸収する方法。そして同じく正規の予算内で配分した業者への仕事の割り当てを差配し、業者からリベートを受け取る方法がある。さらにヤクザ自身が業者となり、共同事業体の仕事を請け負う。その場合はゼネコンの配下にフロント企業、あるいは企業舎弟を持っていることになる。あとでみる暴排条例は、建設利権などからのヤクザ排除を狙ったものである。

実際に取材したわたしが知るかぎり、飲食系の風俗店を直接経営するのは基本中の基本で、コンパニオンの派遣業、フィリピンでの胡蝶蘭の生産・輸入・販売、不動産業、建設業、移動パン屋、和菓子屋、タクシー会社、ジムの経営、風俗店への仕出し弁当(服役中の組員の奥さんが従事)、個人では彫り師や接骨師など、じつに多彩なものだった。Vシネマの製作、芸能プロダクションの経営などもシノギとしては大きい。このうち、コンパニオン派遣業は当時の労働大臣の認可事業なので、不認可を突かれた若手の組長が逮捕されたのを知っている。ようするに、90年代のヤクザは警察の取り締まりに、業態を変えることで対応していたのである。


◎[参考動画]「暴力団対策法」に反対する共同声明

◆暴排条例の無理押し

ところが、2010年代になると警察不祥事が連続し、とくにヤクザと警察の癒着が顕在化した。博多の中州カジノバー事件(捜査情報を漏洩)では、ヤクザ(工藤會系)から月額100万円を受け取っていた警察官が10人以上も芋づる式に逮捕・事情聴取される事態となった。このときの公判資料には「小指のない刑事」という記載がある。つまり警察官でありながら、断指するような稼業人(ヤクザ)がいたことになる。

警察刷新会議の発足と並行して、自治体レベルでの暴力団排除条例が画策された。この暴排条例は、市民に「ヤクザと付き合うな」という法律であって、市民を取締りの対象にしている。自治体レベルでの決議・施行となったのは、国会では違憲論争に発展すると読んでのことである。このあたりの警察官僚の姑息さは、ある意味で見事だ。

ヤクザと「密接交際した」市民への処罰はじっさいには「企業名の公表」「注意」だけだが、たとえば出版社が現役の組長の本を出版した場合には、印税や原稿料が利益供与ということになる。利益供与の疑いがある出版社には、銀行協会を介して「融資の見直し」という圧力が加えられるのだ。竹書房が「実話ドキュメント」(恵文社発行・2018年5月に紙媒体は廃刊)の販売から撤退したのは、これが大きな理由である。わたしも「血別」(太田守正・神戸山口組太田興業)という本をつくったが、著者の太田さんが現役復帰してしまったので、同書の文庫化はできなかった。引退した親分しか本を出せない時代になったのである。

暴排条例は日常生活にもおよんでいる。組員が喫茶店に入ってコーヒーをオーダーして、店がそれに応じたら「利益供与」なのである。ヤクザが「反社会勢力です」と断らないでゴルフ場の会員になっても「詐欺罪」、身分(ヤクザであること)を隠して銀行口座を開いたり、クルマを購入しても「詐欺罪」となるのだ。銀行口座が使えないのだから、ヤクザは水光熱費の口座引き落としもできない。ヤクザの子供は、カードも使えないことになる。前回の記事で「実話時代」が廃刊に追い込まれたのも、暴排条例を盾にした暴排運動の「成果」にほかならない。

そのいっぽうで、最終的にヤクザ組織を解体できないのは、政治家が選挙運動の裏側で大きく「反社会勢力」に関わっているからだ。


◎[参考動画]指定暴力団 再指定に向けた意見聴取 山口組側は欠席 聴取行われず(サンテレビ2019/4/4公開)

◆政治家のホンネ「いい人とばかり付き合っていたのでは、選挙に落ちるんです」

たとえば2016年に、甘利明経済再生担当相の秘書が千葉県の建設会社と都市再生機構(UR)の補償交渉を巡り、口利きを依頼され現金を受け取った騒動を思い起こしてほしい。甘利氏は記者会見で、この建設会社側から2013年11月に大臣室で50万円、2014年2月に神奈川県大和市の地元事務所で50万円の計100万円を受け取ったことを認めている。秘書も建設会社側から受け取った500万円のうち、200万円しか政治資金収支報告書に記載せず、残り300万円を私的に使っていたという。その責任をとって辞任するときの弁が「いい人とばかり付き合っていたのでは、選挙に落ちるんです」これこそが、小選挙区を生きる政治家のホンネなのである。


◎[参考動画]甘利明経済再生担当相が会見「閣僚の職を辞する」(THE PAGE 2016/1/29公開)

今回は暴対法・暴排条例のおさらいから入り、ややおとなしいレポートになってしまった。次回からは、いよいよディープなヤクザ情報をお伝えしよう。※このテーマは随時掲載します。

◎[カテゴリーリンク]横山茂彦「反社会勢力」という虚構 https://www.rokusaisha.com/wp/?cat=76

▼横山茂彦(よこやま しげひこ)
著述業、雑誌編集者。近著に『ガンになりにくい食生活』(鹿砦社ライブラリー)『男組の時代――番長たちが元気だった季節』(明月堂書店)など。

鹿砦社創業50周年記念出版『一九六九年 混沌と狂騒の時代』好評発売中!

ゲノム(genome)とは、遺伝子 (gene)と染色体(chromosome)から合成された、ドイツ語由来の言葉です。言葉の成り立ち通り、染色体から遺伝子にいたる一つのシステムをセットにした生命を形作るために重要な全ての遺伝子情報のことを指します。間違えてはいけないのは、ゲノムという物質があるのではなく、あくまでも概念だということです。

具体的にイメージしてみましょう。生物の構成単位である細胞の中の核というところに、染色体と呼ばれる遺伝子をのせた集合体が存在しています。一つ一つの染色体は、DNA鎖が、タンパク質(主にヒストンと呼ばれるタンパク質)に会合する形でコイル状にぐるぐると巻きついて収まっています。このDNA二重らせんの中に、生物が持つすべての機能や活動をコントロールするための指示が、DNAの化学的構成要素である塩基の配列情報の中に格納されています。この配列の一つの機能単位が遺伝子と呼ばれています。DNA二重らせんの内の10%弱が遺伝子部分に相当するといわれています。残りの90%は遺伝子を「繋い」でいる配列です。おもに、繰り返し配列で構成されていますが、その機能は明確には判っていません。2003年に、ヒトの全塩基配列が解読され、現在に至っています。

ヒトは46本の染色体の中に、30億個の塩基対があり、30億個の塩基対の中に約2万2千個の遺伝子があります。

本に例えてイメージしてみましょう。生物が図書館だとします。図書館に並んだ本棚が核です。本棚の中の本が染色体であり、そこにDNAというインクで文字が書かれ、書かれた内容自体がゲノムです。その中にタンパク質のレシピが書かれた遺伝子というページがあるという感じです。

最近は、ゲノム編集という言葉をよく耳にするようになりましたが、ゲノム編集と遺伝子組み換えというのは、それぞれどういうものなのか、何が違うのか、現在どのような状況なのか、を調べてみました。

遺伝子組み換えは、生物の進化の過程で、絶えず起こっています。組み換えは、その名の通り、これまでは、連続して繋がっていなかった配列が、細胞の環境で、繋がったり、付加された、脱落したりすることを意味します。この組み換えは、突然変異と等価で使われることがあります。

自然界で、こうした組み換えによって誕生した、新たな生物種が自然環境になじんだ場合、その新しい種が繁栄することになります。もし、なじまなかったら、新種は絶えてしまうことになります。癌細胞が生まれるのも、この組み換えで起こっていると考えられています。癌細胞は、その組み換えによって、ある意味、身体の中で繁栄(増殖)するのですが、その増殖に必要な母体を滅ばしてしまうのです。

さて、この組み換えを人為的に起こせないか、という研究は昔から行われて来ました。細胞内に外来DNAを導入して、そのDNAを宿主である細胞の染色体に込み込んでしまうという研究です。これにより、細胞に新たに、機能を付与しようとするものです。

よく知られているのが、組み換え大豆とか、組み換えトウモロコシです。これらは、病害虫抵抗遺伝子が組み込まれています。具体的には、害虫がトウモロコシを食べると、その消化を阻害する物質です。結果的には、害虫はそのトウモロコシを食べることが出来ず、害虫によるトウモロコシの収穫の目減りを抑えることができます。組み換え推進派は、組み換え穀物の栽培により、殺虫剤をまかなくて済む、つまり環境負荷が少ないと言っています。しかし、組み換え穀物に含まれる、害虫の消化の阻害タンパク質がヒトにどのように影響するのか、また、環境に影響するのかなど、直ぐには判断出来ないところがあります。

この組み換えは、これまでは、細胞任せというか、研究者が制御できるものではありませんでした。従って、何が起こるかは出たとこ勝負でした。つまり、どの染色体のどの部分で組み換えが起こるかは、判りませんでした、そこが、ある意味、怖いところで、全く予想が出来なかったのです。

 

一方、ゲノム編集は、狙った領域だけに、人為的に、想定した組み換えを起こす技術です。少なくとも、そう言う技術として、報告されました。現在、本当に、狙ったところだけを編集できているのか、想定外の領域も編集されてしまうのではないかととう議論がなされています。

こうした事に対する、報告も数多くだされ、狙った所だけが編集されているという報告とそれ以外の所、つまり、想定外の所も編集されてしまっているとする報告もあり、まだ、定説にはなっていません。その理由は、ヒトを含めほ乳動物では、約30億個の塩基の並び方を正確に調べる必要があるからです。このことは、現在のゲノム科学のホットな領域の一つです。

ゲノム編集の大きな話題として、中国で2018年11月にヒトのゲノム編集を行い、HIV(エイズウイルス)に感染しないよう遺伝情報を書き換えた双子の女の子が産まれたと発表したことです。この事に対して、全世界がこうした研究の中止を求めました。しかし、ゲノム編集した農作物については、届け出だけで、食品表示の義務がありません。今後、どのようになっていくのか、注視していきたいと思います。

◎連載過去記事(カテゴリー・リンク)
赤木夏 遺伝子から万能細胞の世界へ ── 誰にでもわかる「ゲノム」の世界 
http://www.rokusaisha.com/wp/?cat=73

▼赤木 夏(あかぎ・なつ)[文とイラスト]
地方在住の50代主婦。

タブーなき言論を!絶賛発売中『紙の爆弾』11月号! 旧統一教会・幸福の科学・霊友会・ニセ科学──問題集団との関係にまみれた「安倍カルト内閣」他

大学関係者必読の書!田所敏夫『大暗黒時代の大学──消える大学自治と学問の自由』(鹿砦社LIBRARY 007)

攻撃力は上回るも、引分けというあと一歩が越えられないムエタイの壁。日本人のローキックで殿堂チャンピオンが倒れるなんて在り得なかった過去。でも江幡睦ならやるかもしれない。淡い期待もありながら、ムエタイ関係者は「その可能性は極めて低く、中盤以降にヒジで切られる可能性が高い」と言い切った。それほどサオトーの上り調子は素晴らしく、試合運びの上手さの前評判だった。

試合を終え、江幡睦の顔面はヒジ打ちを貰った3箇所の傷と腫れ、サオトーは足を引き摺りながら歩くダメージを残した。

判定結果を聞く江幡睦の表情、何を想うか

江幡睦のローキックが序盤からヒットさせサオトーにダメージを与えた

江幡睦の左ボディーブロー、これで何人も倒してきた

◎MAGNUM.51 / 2019年10月20日(日)後楽園ホール 17:00~20:15
主催:伊原プロモーション / 認定:ラジャダムナンスタジアム、WKBA

◆第9試合 タイ国ラジャダムナンスタジアム・バンタム級タイトルマッチ 5回戦

チャンピオン.サオトー・シットシェフブンタム(タイ/53.45kg)
    VS
同級7位.江幡睦(伊原/53.35kg)

要所要所でサオトーは江幡の弱点を狙っていた左ハイキックをヒット

引分け 0-0 / スーパーバイザー:ジット・チオサクン(ラジャダムナンスタジアム支配人)
主審:ジラシン・シララッタナサクン 48-48
副審:ウォーラサック・パックディーカム 48-48 
副審:ナリン・ポンヒラン 48-48

序盤は想定どおりサオトーはムエタイ特有の手数少ない様子見ではあるが、江幡睦の強いローキックをやや貰うと効いた様子が伺え、更に睦みの左ボディーブローも貰ってしまう。場内に“もしかしたら・・・!”という期待が沸く。

しかしさすがの殿堂チャンピオン。そんな脆く崩れることはなかった。しぶとさを見せていくサオトーは想定どおり第3ラウンドから本調子を上げて来た。ヒジ打ちは、けん制を含めて第1ラウンドから出していたが、パンチとローキック主体にガンガン前に出て連打していく江幡睦に対し、応戦しながら要所要所で鋭いヒジを打ち込んでいくサオトーは、江幡睦の右目尻を切り、単発ながらヒザ蹴りも効果的にヒットさせた。

しかし江幡睦は組み合ってもサオトーの有利な体勢にさせない対策も活かしていた。更なるサオトーのヒジ打ちで、目下も切られた江幡睦は、紫色の内出血を残して第5ラウンドも必死に出て行き、江幡睦の右ストレートで仰け反ってしまうサオトーだが、ヒジとヒザを随所に当てていたポイントがどう流れるか分からない展開が続いた試合となった。

判定を聞く睦の表情は曇りがち。引分けでまたも逃がしてしまったムエタイ激戦区の最高峰のチャンピオンベルトだが、全力を尽くした結果にインタビューに応える表情は清々しかった。

打たれたら打ち返すサオトーのパンチもヒット

江幡睦の左ミドルキック、この蹴りをもっとヒットさせたかった

サオトーの得意のヒジ打ちはどこからくるか分かり難い

江幡睦は「倒しきれなかった、それに尽きると思います。ひとつのダウンでも取れなければ、ラジャのベルトは取れないということです」と率直な感想。

前回、2015年3月の当時のチャンピオン、フォンペットに挑戦した時は、ラウンドを増す毎のインターバルでだんだん返事をしなくなるほど疲労困憊していたが、今回は最後まで冷静にセコンドや伊原会長の言うことに返事し、次どう行くか確認する様子が伺えた。

試合中は激しく檄を飛ばす伊原会長だったが、試合後のインタビューが終わった後、頭を“ポン”と撫でるように触れ「お前はよく頑張ったよ!」と褒め称えていた。

相打ち覚悟のパンチの応酬

最終ラウンドも必死に攻める江幡睦

サオトー陣営のアンモープロモーターに、「もう一回やりたいと言ったら対戦可能ですか?」と問うと、すかさず「ダーイ(OK)!、またここ(後楽園)でやってもいい!」とデッカイ声で喋る。「次はヒジ打ちの勝負になる!」とも語った。

足を引き摺りながら歩くサオトーにも同じ質問をしてみた。こちらもすかさず笑顔で「チョックダーイ(OK)!」と元気を見せ、ここはハッタリでも “同じ失敗は繰り返さない”という意欲をみせるのがムエタイ戦士なのだろう。

実際、対策は練ってくるだろうし、ローキックはまともには貰わないかもしれない。それは江幡睦にも対策はあることだろう。再戦が行なわれるかは分からないが、このカードはラジャダムナンスタジアムで再戦して欲しいものだ。

とにかくノックダウンを奪いたかった江幡睦、バックステップして打たれても倒れないサオトー

健闘称え合い役者が揃う、右はジット・チオサクン氏(スタジアム支配人)

◆第8試合 WKBA世界スーパーライト級王座決定戦 5回戦

アニーバルをロープに追い詰めパンチ連打する勝次

2位.勝次(藤本/63.0kg)
    VS
4位.アニーバル・シアンシアルーソ(アルゼンチン/63.1kg)
勝者:勝次 / KO 2R 2:59 / 3ノックダウン / 主審:椎名利一

序盤はパンチと蹴りのけん制から始まり、アニーバルのパンチ、蹴りの強さとタイミングを見極めた勝次がパンチでアニーバルを後退させると一気に連打した勝次。その勢いで第2ラウンドに進み、パンチ連打でロープ際に追い込みヒザ蹴りを加えスタンディングダウンを奪い、更なるパンチの攻勢でロープ際から逃げられない状態を作ると2度目のスタンディングダウン。

勝次は更に攻勢を続け、防戦一方となったアニーバルは最後まで倒れ込むことは無かったが、レフェリーに止められ(3ダウン相当)、勝次のKO勝利となった。

勝次がパンチから今日も出た飛びヒザ蹴り

しぶといアニーバルを徹底して攻めた勝次

キックボクシング世界で最初のWKBAタイトルを獲得した勝次、試練はこれから

◆第7試合 73.0kg契約 5回戦

日本ミドル級チャンピオン.斗吾(伊原/72.8kg)vsイ・ジェウォン(韓国/69.5kg)
勝者:斗吾 / KO 2R 2:49 / テンカウント / 主審:桜井一秀

序盤は距離をとって蹴りで様子見。斗吾の圧力が徐々にジェウォンを下がり気味に追い込む第2ラウンドに入ると、距離が縮まりパンチの交錯が始まる。バランス崩して横を向いてしまうジェウォンは気を抜き過ぎで、斗吾の右フックを貰ってノックダウンしてしまう。そこから斗吾のパンチのラッシュが始まり、ロープ際で滅多打ちからヒザ蹴り、更に追い詰めてボディーブローの連打でジェウォンは2度目のノックダウンし、そのままテンカウントアウトされた。

◆第6試合 62.0kg契約3回戦

日本ライト級チャンピオン.髙橋亨汰(伊原/61.95kg)
    VS
ペットワット・ヤバチョーベース(タイ/61.45kg)
勝者;髙橋亨汰 / TKO 2R終了 / 主審:少白竜

髙橋の左ミドルキックを腕に受け続けたペットワットが負傷を示し、第2ラウンド終了後のインターバル中、棄権を申し出た陣営をレフェリーが受入れ試合を終了させた。

腫れた太腿を氷で冷やすサオトー、足は相当効いていた

◆第5試合 バンタム級3回戦

泰史(前・日本フライ級C/伊原/53.5kg)vs.Mrハガ(ONE’S GOAL/53.5kg)
勝者:泰史 / 判定3-0 / 主審:仲俊光
副審:椎名30-28. 少白竜30-27. 桜井30-27

泰史の蹴りとパンチで攻勢を続ける展開。下がりながらも応戦して危機を乗り越えるMr.ハガ。泰史はノックアウトに結び付けられない課題を残す。

◆第4試合 63.0kg契約3回戦

日本ライト級3位.渡邉涼介(伊原新潟/62.9kg)vs風来坊(フリー/62.85kg)
勝者:風来坊 / 判定0-3 / 主審:宮沢誠
副審:椎名29-30. 少白竜29-30. 仲29-30 

◆第3試合 57.5kg契約3回戦

瀬川琉(伊原稲城/57.45kg)vs新田宗一郎(クロスポイント吉祥寺/57.25kg)
引分け 0-1 / 主審:桜井一秀
副審:椎名28-29. 宮沢29-29. 仲29-29

◆第2試合 60.0kg契約3回戦

井桶大介(クロスポイント吉祥寺/59.65kg)vs宇野高広(パラエストラ栃木/59.95kg)
勝者:井桶大介 / TKO 1R 0:44 / ノーカウントのレフェリーストップ / 主審:少白竜

◆第1試合 女子48.0kg契約3回戦(2分制)

栞夏(トーエル/47.55kg)vs erika(SHINE沖縄/47.25kg)
勝者:erika / KO 2R 1:53 / 3ノックダウン / 主審:椎名利一

ファンに詫びる江幡睦

《取材戦記》

最高峰の王座や名誉が懸かるとムエタイ選手は強いものだ。譲れないものだけに互いが必死の戦いになった。これがランカー以下のノンタイトル戦だったら江幡のローキックで、過去のタイ選手のようにヘナヘナと倒れ込んでいただろう。

そのサオトーの前評判は「ちょっと映像で見ただけだが、サオトーはあまり強さを感じない攻めで、日本人とやれば面白い展開になりそう。江幡が勝つかもしれない!」という知人も居たが、先に応えた関係者談が「江幡睦のローキックはかわされ、サオトーのヒジで切られる!」と言った予想もあり、私の予想も「もしかしたらサオトーは江幡のローキックでヘナヘナと倒れ込むのではないか!」と思ったが、試合展開から言うと、大雑把ながら皆、何らかの指摘が“近いところにいった”という経過となった。

最高峰への通過点ながら、ひとつの目標だった老舗のWKBA世界タイトルを獲った勝次はまず防衛しなければならない。前回のライト級でドローの末、延長戦で王座を持っていかれたノラシン・シットムアンシー(タイ)や国内にも敗れている難敵は居るが、WKBAを懸けて戦えばその因縁が面白くなる(ライト級は7月に王座決定戦で重森陽太が獲得)。本人は以前、「3回ぐらい防衛してその上に行きたい」と言っていたが、5回ぐらい極力短期で連続防衛してWKBAの活性化と権威向上に貢献して貰いたい。

新日本キックボクシング協会次回興行は、12月8日(日)後楽園ホールに於いて藤本ジム主催興行「SOUL IN THE RING CLIMAX」が開催されます。今年4月14日にWKBA世界スーパーウェルター級王座獲得した緑川創(藤本)の初防衛戦と、勝次と江幡ツインズ兄・塁も出場予定です。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]

フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

一水会代表 木村三浩=編著『スゴイぞ!プーチン 一日も早く日露平和条約の締結を!』

上條英男『BOSS 一匹狼マネージャー50年の闘い』。「伝説のマネージャー」だけが知る日本の「音楽」と「芸能界」!

『昭和16年夏の敗戦』(猪瀬直樹、中公文庫収録)という本をご存知だろうか。猪瀬直樹という人は、ほとほと政治家(東京都知事)などになって恥をかくべきではなかった。と思わせる氏の名作ノンフィクションのひとつだ。

タイトルのとおり、昭和16年の夏までに、大日本帝国の指導部は対米英戦のシミュレーションを行ない、軍事・経済・資源を算定した総力戦の結果、敗北するというものだ。この試算を行なわせたひとりが東条英機であり、かれの「やはり負け戦か」という言葉も収録されている。

◆戦争は平和目的として発動される 

東条英機が対英米戦争に反対だったのは有名な話で、この試算はドイツのバーデンバーデンでおこなわれた陸軍将校(陸士16期の永田鉄山・小畑敏四郎ら)の長州閥打倒の密議グループに、東条英機らを加えた総力戦研究の勉強会の流れを汲むともいっていいだろう。当時の戦争へという「新体制」(近衛文麿政権)の流れ、戦争前夜の空気感にたいして現実的な試算をした結果、予想したとおり「敗戦」は間違いないと結論が出ていたわけだ。

にもかかわらず、日本人は戦争を選んだのである。負けるとわかっていた戦争を、回避する策はなかったのだろうか。そのための努力はあったが、裏目に出たというべきであろう。

元宮内庁長官・田島道治「天皇拝謁記」で明らかになったとおり、昭和天皇は東条英機の首相登用を、「陸軍を統制して戦争を回避できる人物」と期待していた(失敗だったと田島に語る)。戦時中は専制体制と呼ばれる東条政権も、じつは本人は対英米戦反対論者で、戦争回避のキーパーソンと見られていたのだ。統帥権をもって政権を揺すぶる、陸軍の統制こそが戦争回避の道と考えられていたのだ。

戦争が平和目的として発動されるのは、あらためて言うまでもないことだが、具体的には政治的な実権をもった「人物」の「決断」によるものだ。その意味で「政治は誰がやっても同じ」ではけっしてない。いやむしろ、誰がやっても同じだから政治には関心がない、というアパシーこそが戦争を招くと断言しておこう。あるいは国民的な議論の喚起、必要な論評を避けること自体が思想の頽廃であり、批評精神の衰退である。批評精神の衰退は一億総与党化、戦前で言えば体制翼賛政治への道をひらくものなのだ。

◆危険な選択肢

そこで安倍一強といわれる、与党に批判勢力のない現在の政治状況の中で、よりましな選択肢があるのかどうか。そしてそれが現実的なものなのかどうかを考えてみる必要があるだろう。3年前のことになるが、わたしはポスト安倍が岸田文雄(現政調会長・当時は外相)で、その後は安倍のオキニである稲田朋美ではないかという観測に、大いに危機感を抱いたことがある。

当時、稲田は防衛大臣である。周知のとおり、スーダン派遣自衛隊の日報問題(戦闘地域である傍証)を把握できず、シビリアンコントロールが不能状態となっていた。つまり、派遣先の自衛隊が勝手に「戦闘地域」と判断して戦闘状態に入る可能性があったのだ。これは大げさに言えば、戦前の大陸での関東軍(日本陸軍)の事変拡大政策と、まったく変わらない構造なのである。稲田総理が何も知らないうちに、戦争が始まっていた? 

もしかしたら、歴史はそのように進むのかも知れない。ナチスが国会議事堂を共産党員の仕業にみせかけて焼き払い、国防軍と結びついて突撃隊(レーム)を粛清するまで、ヒトラーが独裁政権(全面委任法)になるとは、誰も思っていなかったのだから――。

◆よりましな選択肢はあるか?

そこで、危機感を抱く何人かの編集者とともに、安倍晋三の反対勢力である石破茂の総裁選を支援しようとした。経済に関する本を出して、アベノミクスに代わるイシバノミクスを打ち出したかったのだ。地域経済の再生という観点から、石破の経済センスは悪くない。

この欄でも何度か触れたが、石破のウィークポイントは「経済オンチ」である。感情とある意味での「天才的な感性」で政治をもてあそぶ安倍が、感じがいいからと「同一労働同一賃金」を政策スローガンに入れるのに対して、石破は「誰か教えていただけないか」とブログで発信していた。わからないことは、わからない。それでいいのではないか。

いうまでもなく、同一労働同一賃金はILOなど労働運動の最大限綱領スローガンであって、これが本当に実現できれば、正規の大学教授(年収1000万円以上)と非常勤講師(年収200万円前後)が同じ賃金を得ることになる。同じ工場で同じ工程を管理している社長と主任も、同じ賃金になる。弁当屋の主人とアルバイトも同じ賃金、つまり社会主義経済の賃金分配なのである。こんなこともわからない安倍に比べて、たしかに石破は実際にはタカ派かもしれないが、物事に慎重なのである。

たとえば安倍の感情的な政策(輸出制限)によって、最悪の状態になった日韓関係の基底にあるもの。すなわち歴史問題について、石破は「なぜ韓国は『反日』か。もしも日本が他国に占領され、(創氏改名政策によって)『今日から君はスミスさんだ』と言われたらどう思うか」と発言して、歴史問題に向かい合うことを訴える(徳島市内での講演)。

「いかに努力をして(関係を)改善するか。好き嫌いを乗り越えなきゃいけないことが政治にはある」「相手の立場を十分理解する必要がある。日韓関係が悪くなって良いことは一つもない」(前出)と語っている。現在の安倍一極も、国民の「よりましな選択」によってよるものである。それはしかし、アベノミクスという仮象の経済によって担保されているにすぎない。貧富の格差、お友だち上級国民と下層国民の分岐。そこにこそジャーナリズムの視点と批評精神が据えられなければならない。

▼横山茂彦(よこやま しげひこ)
著述業、雑誌編集者。近著に『ガンになりにくい食生活』(鹿砦社ライブラリー)『男組の時代――番長たちが元気だった季節』(明月堂書店)など。

鹿砦社創業50周年記念出版 『一九六九年 混沌と狂騒の時代』

タブーなき言論を!『紙の爆弾』11月号

« 次の記事を読む