社長が夜逃げ! あるIT企業社員の手記 (27)

「弁護士さんね、こっちは離職票も出してもらってないんで、8月で解雇って言われても困るんですよ。失業者にもなれないんだから」
「あ、はい。ですからそちらは急ぎ発行しようと思っております。社長の判断を考慮しまして8月末日の日付で」
「いやだから、我々は9月になってもずっと働いていたんですよ。実は8月でクビになってました、なんて納得できるわけ無いでしょ」
「ですけれど、退職日が早い日付になれば、失業給付の認定日も早まるんですよ」
一瞬、考える間を取ってしまった。弁護士というものは、どうものらりくらりと会話をする。確かに、離職日を8月末ですぐ離職票が発行されれば、即日ハローワークで失業申請をして、7日の待機期間後に給付認定が出される。給料の支払いが絶望的な今、生活のためにも一日でも早く失業給付は欲しい。

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住職は慣れた手つきで札を数えた

納骨の前日、住職から電話がある。
「戒名代が30万、納骨の式の費用が10万、計40万円、明日お支払いいただけますね」
支払いの確認だ。
始めから分かっていたことだが、これは宗教的儀式などではなく、ビジネスそのものであることを、住職自ら明らかにした。

当日、寺の近くの地下鉄高田駅に着くと、親戚達と出会う。
父が事業に失敗してから、親戚と会うことはなくなっていた。ほとんど20年ぶりだ。
若い頃革命運動に没頭していた私に、女性とのデートのしかたも分からないだろうからと、食事につきあってくれたことのある、従姉妹もいる。
たわいのないことを話しながら川沿いの道を歩き、浄泉寺に着く。

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電子書籍による個人出版はどうなんだ!? 企業と揉めたライター奮戦記 2

『興味があるので、詳細を送って下さい』と簡潔なメールを送った。すると『物書きを志すつもりであれば、ビジネスメールの改行ぐらい行って下さい。実に読みにくいです』というメールが返ってきた。私には意味がわからなかった。
送信メールを見てみると改行はきちんとしてある。芳川氏に問い合わせてみると『改行なしのメールが送られてきました』との返事。
システム上の問題なのか理由は定かではないが、これまでは普通に送り合っていたメールを突然改行なしで送るわけがない。
確かに改行なしのメールが送られてくれば、読みにくいのはわかる。ただ、それを『読みにくい』ですと片づけてしまうのは、こちらも良い気分ではない。私よりも芳川氏のメールは簡素であった。もしかしたら、自分のパソコン環境に問題があるとは考えないのだろうか?
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『終わらないオウム』【ブックレビュー】

発売以来、早くも各所で話題になっているのも当然だろう。『終わらないオウム』(鹿砦社)では、殺しの標的になった者と、殺人者とが、会って語り合っているのだ。
標的になった者は、上祐史浩。かつてオウム真理教最高幹部として、テレビを始めとして様々なメディアに登場し、スポークスマンを務めた。
殺人者は、徐裕行。18年前に、オウム真理教の「科学技術大臣」であった、村井秀夫を刺殺した。同書で徐は、「本当に殺そうとしたのは、上祐さんだった」と語っている。状況的に刺せるのが村井だったわけだが、上祐にとって村井は、当時の同志であり親友である。
殺されようとした者と、殺した者が、向き合って語り合う。
間を取り持ったのが、鈴木邦男である。この奇跡の対談に至る経緯は、同書に詳しく書かれている。

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日本ハム・大谷翔平は二刀流として大成するか

日本ハム・大谷翔平投手(18)の本格的な二刀流デビューが、6月18日の広島戦(マツダ)に内定した。当日は雨天中止となった5月28日の同戦が組み込まれる見込みで、栗山監督は「5番・投手の可能性はある」と起用を示唆。2度目の先発登板となる6月1日の中日戦(札幌D)は投手に専念し、指名打者制のないセ・リーグ本拠地でついに二刀流を解禁する予定だという。

「大谷のバッティングは、職人気質。手首の返し方などは熟練技だ。たとえば、張本勲のバッティング技術に近いのではないかと思う」(スポーツ・ジャーナリスト)
ピッチングのほうは、球が速いのでそれなりに抑えるのはわかるが、バッティングのほうは、技がないとヒットにならない。
「新人離れしたバッティングは、貫禄すら感じる。はっきりいって、ピッチングよりもバッティングのほうが安心して見ていられます」(プロ野球関係者)

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ミャンマーの『民主化』は本当か!? ヤンゴンで生活してみた 27

ミャンマー(ビルマ)の最大都市ヤンゴンに、西洋風のバーができた。最近、海外から進出してきた欧米人によって作られたという。
街中では、20~30代の人々が、Gパンをはく姿が多く見られる。伝統的な腰巻を身につける人がほとんどだったミャンマー人の服装が、今、変わりつつある。
経済発展とは,多くの部分で西洋化と同義であるから、ミャンマーの西洋化も、ある程度、避けられないことかもしれない。もっとも、以前このシリーズで書いた通り、ミャンマー人は韓国ドラマの影響を強く受けているので、服装の洋装化を「韓国に似てきた」と表現したりするが(当シリーズ4を参照)。

だが、変化の波のただ中にあるヤンゴンで、変化しないこともある。その中でも特筆すべきは、交通マナーではないか、と思った。そこで今回は、ヤンゴンの交通事情を紹介する。

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職員と一般者との価格差は何なんだ!? さいたま地裁食堂

「ちょっと、写真はダメですよ!」
今年3月14日、さいたま地裁の庁舎内にある食堂の前でのこと。筆者が食券の自販機をスマホで撮影していたら、後ろから怒鳴りつけてくる男性の声がした。
「所内は撮影禁止ですよ。書いてあるでしょう」と言う彼は、この食堂の関係者。
「ああ、すみません」と筆者は謝ったが、実際は悪いことをしたと微塵も思っていなかった。彼に言われるまでもなく、筆者も裁判所が敷地内で撮影禁止なのは知っている。しかし、今回はそのルールを踏み越えて撮影せざるをえない正当な事由があったからだ。それは、この食堂で裁判所職員が他の利用者より特別に優遇されている証拠を確保する必要があったという事由である。

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社長が夜逃げ! あるIT企業社員の手記 (26)

以来、ぱったりと電話は来なくなった。イーダ社員は、社長が夜逃げしたとわかった日から早々に出社しなくなった者、淡々と後始末を続ける者、電話だけしてきて、弁護士の連絡先だけ聞いて後は個人でやりますという者など、様々だ。

会社に来る顔ぶれももう少ない。来る人も週に2、3日だけで、身の回り品の整理ぐらいだ。社内に居るのはセントラル社の人ばかり。ビルのオーナーをどう言いくるめたのか、来月までは居座れるよう交渉したらしい。
「社長も社長やけどあの弁護士も弁護士やで。まったく、ボケ、カス。しばいたろか」
関西弁での悪口は強烈に聞こえるが、向こうの人は軽く口にするらしい。聞きなれていないせいか、こっちはどうも気分が悪くなってくる。その怒りの原因がウチの社長だから、口に出すことは出来ないが。

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坊主の卒塔婆セールスを巡る攻防

「メアド間違ってた。正解はこちら」と書いてきた、妹のメールはしばらく放っておくことにした。「メール届いている?」という確認も来たが、無視した。
石屋へ代金を振り込むと、すぐに社長からお礼の電話がかかってきた。こちらはとても気持ちのいい人物だ。
数日後に、寺の住職から電話がかかってくる。
「卒塔婆はどうされますか? 1本3000円なんですけど」
セールスである。
「あのね、こちらは、そもそも戒名なんかいらないって言ってるんですよ。戒名がないと墓に入れられないっていうから、付けてもらったんであってね。卒塔婆なんか、いらないよ」
「卒塔婆は、だいたい親戚の方が立ててくれるんですけどね」
あなたがたには費用の負担は生じない、という意味だろう。
「そうですか。それでは親戚に聞いてみます」
言い争いを続けているわけにもいかないので、そのように引き取って電話を切る。

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電子書籍による個人出版はどうなんだ!? 企業と揉めたライター奮戦記 1

kindleが日本上陸を果たしたのは2012年10月末のことだ。
私はkindle上陸から約7カ月の間に2社と揉めた。実際に言うと、kindle出版の話を持ちかけられたのが1月なので5カ月で2社だ。5カ月で2社というと、私に問題があるのでは? と思われる方もいるかと思う。だが、スピード重視である個人出版業界では決して珍しいことではない。
Kindleという言葉は聞いたことはあるけれどよくわからない。と思っている方もまだ多いのではないだろうか?
私も始めはそう思っている一人だった……。

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