2009年に死刑判決が確定した今も無実を訴え、再審請求をしている和歌山カレー事件の林眞須美さんのことを、あの「話題の事件」の影響で思い出す人が世の中にけっこういるようだ。「話題の事件」とは、マスコミで連日、派手に報じられている尼崎の連続不審死事件のことである。

筆者が2つの事件の関係に気づいたのは、先月末のことだった。筆者は6年ほど前から和歌山カレー事件に冤罪の疑いを抱いて取材を続けており、その縁で一昨年から「林眞須美さんを支援する会」(鈴木邦男代表)のホームページ(http://masumi-shien.com/)の運営も手がけているのだが、通常は一日平均50~70件程度のホームページのアクセス数が10月後半以降、連日コンスタントに100件を超えるようになっていたのだ。

このようにホームページのアクセス数が急に増えることはこれまでもよくあった。たとえば、裁判で死刑判決が出るとか、死刑が執行されるなどの話題があった時には、このホームページのアクセス数は増加する傾向がある。また、先日、さいたま地裁で死刑判決を言い渡された首都圏連続不審死事件の木嶋佳苗さんや、現在公判中の鳥取連続不審死事件の上田美由紀さんなど、女性が凶悪殺人の嫌疑をかけられて社会的な注目を集めた時もそうである。こういう話題から林さんのことを連想する人が世間には少なからず存在するわけだ。
という感じなので、今回のアクセス数の急増はやはり、あの事件の影響か・・・・・・と、ネット検索してみると、案の定の形跡が見受けられた。ネット上のあちらこちらで、尼崎の事件で疑惑をマスコミに書き立てられている角田美代子さんと共に林さんが話のネタにされているのだ。

たとえば、2ちゃんねる。尼崎事件の角田さんの関連スレッドを見ると、
「林真須美より残虐じゃね、このババア」
「林真須美と最強タッグ出てくれ」
「林と角田のシングルマッチなら、林が終始押されつつも丸め込み(ヒ素)で逆転勝ちしそう」
「角田は、やっぱ林真須美のような顔かな?  とにかく早く見たいわ」
などと、林真須美さんとの比較で角田さんを語った書き込みが散見された。

また、Yahoo!知恵袋を見ても、
「角田美代子と林真須美が殺し合いをしたら どっちが勝ちますか?」
「林真須美 木嶋香苗 角田美代子が三人で刑務所の一室をシェアーする事になったら誰が支配権を持つのでしょうか?」
「林真須美 木嶋香苗 角田美代子 この中で最強の悪女はどいつですか?」
などと、角田さんと林さん、木嶋さんを関連づけ、悪ふざけした脱力系の質問が相次いでいた。

筆者は角田さんや木嶋さんのことは報道の情報以外に何も知らないが、林さんについては冤罪と確信しているので、林さんがネット上でこんな形で話のネタにされていることをひどい話だと思わなくもない。一方で、こんなふうに何かあるたびに話題にのぼるからこそ、1998年7月の事件発生から14年以上経った今も和歌山カレー事件と林さんは人々の記憶に残り続け、その冤罪の訴えがじわじわと世間に広まってきた面もある。

事件発生当初、日本全国から「平成の毒婦」扱いされた林さんだが、いまはネット上に冤罪を疑う声があふれている。尼崎事件の話題から和歌山カレー事件と林さんの名を思い出し、今回初めて林さんに冤罪説があることを知った人もおそらく少なくないはずだ。そういう人が1人でも多く存在して欲しいものである。

(片岡健)
※林さんの名前は「眞須美」が正式だが、2ちゃんねるとYahoo!知恵袋からの転載部分については、「真須美」と書かれていたのをそのまま転載した。