このブログは、マスコミ志望者が多く見ているようだ。その前提で、旅行記を少し展開しよう。少しでも参考になれば幸いだ。伊豆の熱川にある「熱川バナナワニ園」に行ってきた。おもえばこのテーマパークは、ワニと熱帯林を売り物にしていたが、小学館「マミィ」という母親向け月刊誌を作っていたときに、このテーマパークの売りが、「小学生でも乗れるオオオニバス、つまりでかい蓮だと書いた。このときに、自分は、蓮に乗る少年の写真をここから借りたはずだ。あれから24年がたち、伊豆の現地にて蓮やワニや、熱帯林を見てみると、「時間がたったのだなあ」と感慨にひたることができる。

まったく脈略がないが、いまは東南アジアへの移住がブームだという。年金が月に10万円しかもらえない。ならば、物価が3分の1か4分の1の台湾やタイ、もしくはベトナムやカンボジアなどで老後を暮らそう。そう考える人たちがもはや年間20万人を突破する時代となった。

 

 

ゴールデンウィークに入る直前、4月29日の「熱川バナナワニ園」は、家族連れが多く、ワニや熱帯のバナナを見にくる家族でごった返していた。

伊豆といえば、「伊豆の踊子」という川端康成の小説が有名だが、これは川端が本当に旅一座の女と出会った体験がもとになっている。最近はファンタジーノベルだの、ライトノベルだの頭の中で作ったような小説ばかりが書店にならんでいるが「実体験」に勝るものはない。

つまり、旅は「出かけた者勝ち」であり、伊豆であろうとタイだろうと、イギリスであろうとバングラディシュだろうと「見てきた人」が書いたものに勝るものはないのだ。

『原稿執筆入門』(竹俣一雄著)にはこう書いてある。1976年の本なので、表現がやや古い。

「ルポルタージュとは、報告文のことである。英語でいえば『レポート』または『リポート』、最近では『ルポ』と略されている。おまけに仏英チャンポンの「ルポライター」などという職業名が市民権を得ているようだ。この新しい職業名をもつ人たちの仕事の内容を考えてみると、べつに新しいものは何もない。「記者(新聞や放送などの)が書くものは、すべてルポルタージュである」といってもさしつかえはない。要するに、読者の代表として、かわりに見て(聞いて)くる報告である。ただ、新聞記者の場合、記者は読者の目となり、耳となるのだが、新聞社という機構の一部で、その代理者でもある。それに、新聞という媒体の特性が、制約を加える。ルポライターは、原則としてフリーランスである。新聞に原稿を載せるような場合、規制も若干ゆるい。最近の流行語?個性的?を売りものにすることができる。実際は、媒体側はその体質に合うライターを選択して書かせるので、それほどかけ離れた?個性的?なものを採用するわけでないが…。それでも、個性的であることは、やはり必要とされている。』(11章 ルポルタージュの心得)

話を「マミィ」の時代に戻す。その場合は、どうしても小学生の子供を持つ視座が必要だったので、「オオオニバスに子供がのれる」という事実を全面に出した。だが、実際に目にした『熱川バナナワニ園』の迫力は、寝ているのか死んでいるのかわからないまま集団で固まるワニたちと、生命力に満ち満ちている青いバナナの一連だ。

『原稿執筆入門』の竹俣氏は続ける。以下のポイントがルポをする上で重要だというのだ。

 

〈1〉 まず、虚心に見る。意識しないで見ているつもりでも、先入観が働いていることが多い。つとめて自分を出さないようにする。

〈2〉 自分の行動のすべてが、読者の興味になっていることを忘れてはならない。現場に臨んでからが勝負ではない。書こうと決心したときから勝負は始まっている。

〈3〉 読者の代理人であることを忘れはならない。専門的なことは専門家に聞きだすこと。(取材、文献、史料、資料を調べるなど怠ってはならない)

〈4〉 対象を反対側からも見てみる。一方から見たら、右や左、反対側に回ってみる。そして、書く立場を選択、決定する。通りいっぺんの観察だと見逃す点が多い。

〈5〉 周辺の状況を軽視してはならない。状況を描くことで対象が浮かびあがる。服装だけでも、どんな人間なのかその性格まで描くことができる。

〈6〉 想像力を働かせる。現場にいない(反対の立場)人の心理を推理すること。温かい思いやりを忘れては、けして完全なものはできない。

〈7〉 自分の意見、解釈は、前面に出さない。

僕としては、過去に表現と解説を逃げた「熱川バナナワニ園」の解説がまた巡ってきた。かつてと同じように、僕は熱帯性植物を語るすべをもたないが、ルポルタージュの基本に立ち返り、ふたたび表現をみつけたときにまたおもしろい植物を紹介しよう。

▼ハイセーヤスダ(編集者&ライター/NEWSIDER Tokyo)
テレビ製作会社、編集プロダクション、出版社勤務を経て、現在に至る。週刊誌のデータマン、コンテンツ制作、書籍企画立案&編集&執筆、著述業、漫画原作、官能小説、AV寸評、広告製作(コピーライティング含む)とマルチに活躍。座右の銘は「思いたったが吉日」。

一水会代表 木村三浩=編著『スゴイぞ!プーチン 一日も早く日露平和条約の締結を!』