「松竹のみならず日本の映画のけん引者だった。その映像からかなりのことを学ぶましたし、監督がもう何も撮らないかと思うと、本当に残念です」(助監督)
あまりにも偉大な映画監督が逝去した。
大島渚は96年2月に渡航先のロンドン・ヒースロー空港で脳出血に見舞われ、一時右半身まひに。リハビリを続け、99年公開の「御法度」で監督復帰したが、01年にも十二指腸潰瘍穿孔(せんこう)で倒れ、11年10月初旬に嚥下(えんげ)性肺炎で一時意識がなくなり入院。その後、療養していたが、昨年12月に肺炎と診断された。1月15日に容体が急変し、眠るように息を引き取ったという。

映画『戦場のメリークリスマス』で、デビッド・ボウイ演じる将校が坂本龍一演じる日本将校に首を斬られそうになり、歩んでいってキスをするシーンがある。
「あのシーンこそ、大島渚ならではの演出です。異なる世界観の衝突が、ふわりと転換する瞬間の描き方がひじょうにうまかった」(映画ライター)

海外での評価も高かった。、ベルナルド・ベルトルッチ、アレクサンドル・ソクーロフ、テオ・アンゲロプロス、マーティン・スコセッシ、ペドロ・アルモドバル、チェン・カイコーなど大島を敬愛する著名な映画監督・評論家は多い。ジャン=リュック・ゴダールが『映画史』において取り上げた日本人監督は溝口健二、小津安二郎、勅使河原宏と大島渚の4人だった。

「なにしろ、ビートたけしを映画に目覚めさせた功績は大きい。いまや北野武の映画は世界的に評価が高く、もはや『世界のKITANO』ですからね」(前出・映画ライター)
テレビ『朝まで生テレビ』で議論して「バカヤロー」と怒鳴っていたことから「怖い人」というイメージが強いが、実は懐が深い、思いやりのある人となりは多くの人に愛された。
至極、残念である。大島監督に続く才能ある監督よ、出でよ!

(鹿砦丸)