男性4人が誤認逮捕されたパソコン遠隔操作事件をめぐり、2月10日、30歳の会社員が逮捕された。
容疑は、名古屋市内の会社のパソコンを遠隔操作し、都内で開催された漫画イベントでの大量殺人を予告したとする、威力業務妨害などである。
調べに「全く身に覚えはありません」と、本人は容疑を否認している。

新たな誤認逮捕=冤罪ではないか、という声が、法律家の間からも上がっている。
なにしろ、犯行と本人を結びつける証拠は、記憶媒体が取り付けられた首輪を猫に取り付けた場面が、防犯カメラに捉えられていた、など間接的なものに過ぎない。
逮捕された会社員は、「猫カフェ」に通う猫好きだった。
例えば、真犯人の仲間が、猫の話題を通してこの会社員と親しくなり、江ノ島に誘い出して「ねえ、あなた猫に好かれるんでしょ。猫に逃げられずに、首輪付けるくらいできるでしょう」と頼んだ、という可能性だってあるではないか。
なにしろ、猫に首輪、である。「○○をやっつけて」「大麻を運んで」などという頼み事のように、引き受けるのに決断がいることではない。少し親しみを感じている程度の相手からの頼みでも、引き受けることはあるだろう。

さらにここに来て、防犯カメラは彼を写してはいたが、報道で言われているような、猫に首輪を付けるという決定的な場面ではなかったのではないか、という声も、本人の弁護人などから挙がっている。

今回の逮捕は、今まで、冤罪が生み出されてきた状況と似ている。
なにしろ警察は、4人誤認逮捕という失態を演じている。
「真犯人」からのメールで4人の無実が明らかになったが、その結果、検察、警察の旧来からの変わらぬ取り調べ方法などが明らかになった。
なにしろ、まったく無実の4人のうち2人が、自白したのだ。1人は「否認すると長くなる」と、検察から脅されたことを明らかにし、1人はやってもいない事件について「楽しそうな小学生を見て、困らせてやろうと思った」と、動機まで喋っている。

4人のうち2人から、ウソの自白を引き出しているのだ。
この世にいったい、どれだけの冤罪があるのか、背筋が寒くなる。
警察のメンツをかけてでも、「真犯人」を挙げなければならない。
そんな、せっぱ詰まった状況が、冤罪を生み出す。

会社員の逮捕を、マスメディアはセンセーショナルに報じた。
逮捕前日に、彼が猫カフェにいた写真まで出ている。
マスメディアは当初、4人逮捕を誤認とは疑わず、成人は実名報道している。
マスメディアも共犯なのだ。
その印象を打ち消すための、センセーショナルな報道なのではないか。

会社員を「真犯人」だとする警察内部でも、今回の逮捕はあまり喜べない、という声がある。
「なにしろ、防犯カメラに映っていた映像がなければ、何もできなかっただろう。偶然が助けてくれた結果だ」(警察関係者)
警視庁にはサイバー犯罪対策課があるが、今回の事件で、課が導き出したのは誤認逮捕。彼等が「真犯人」だとする会社員の逮捕は、防犯カメラによってだったのだから。
警視庁ではネット犯罪者に対して、民間会社の協力を得たり、元ハッカーの人脈を探すなど、今後は本腰をあげてサイバー犯罪の取り締まりに力を入れるという。

「とにかく、捜査陣が振り回された印象はぬぐえない。今後はネットの監視をするNPOなどの協力をあおいで、捜査体制を立て直すことが重要です」(警察関係者)
警察には、誤認逮捕をしたという反省より、いまだに、メンツがつぶされたという被害感情が先立っている。
もちろん、最も悪質なのは真犯人だが、誤認逮捕された中には未成年もいる。
彼等が心に受けた傷に、思いを馳せるほうが先ではないだろうか。

(鹿砦丸)