福島第1原発から、放射能汚染された地下水が海に流出し続けている。それはもはや、目視できる量にまで達していることが、FNNでも報道された(写真)。
だが、ことここに至っても、放射能の人体へ与える影響は少ない、などと臆面もなく語る専門家がいる。
「ガンの原因の半分くらいは生活習慣で、100ミリシーベルトの被曝ではガンの発症率は5パーセントしか増えない」と雑誌で語っていたのは、東京大学医学部附属病院の放射線科準教授である。
専門家であるから、数値は間違っていないのだろう。だが問題は、その数値をどう見るか、だ。

なぜ皆、狂牛病のことを思い出さないのだろう。
イギリスでBSE(牛海綿状脳症)になった牛は当時、確実に分かっているだけでも約18万頭いた。人間にも感染することが分かったが、発症した患者は137人だ。
感染した牛の肉を食べたイギリス人は、4000万人と推定される。
確率にすると、0.00002パーセントということになる。

人間が狂牛病になるのはこれほど稀であるにもかかわらず、日本では一時期、牛丼が姿を消すほどに警戒した。
だがそれも当然だろう。
確率としてはどんなに低くても、自分の身に降りかかったり、愛する子どもが発症するという可能性は、ゼロではないのだ。

0.00002パーセントから見れば、5パーセントはかなり大きな数字だ。
これを、たいしたことがない、と言える人は、要するに為政者の立場に立っているのだろう。5パーセントのガン発症の増加なら、社会にさほどの影響はない、と考えるわけだ。
だが子を持つ親が、その5パーセントの中に我が子が入ったら、と恐れを抱くのは当然だ。

同じデータを目にしても、それをどういう立場で見るかで結論は変わってしまう。
本来なら、国政を司る政治家たちも、親や子どもの立場に立ってほしいものだが、そんなことは安倍政権には望むべくもない。
7日の国際オリンピック委員会総会前に、汚染水漏れの問題で国会が紛糾すれば招致に影響しかねないとの判断で、事態の報告すらしていないのだ。

今後行いうる対策としては、地下水をせき止める壁を造るとのことだ。
だが、原子力の専門家の立場から原発の危険性を指摘し続けてきた、京都大学原子炉実験所の小出裕章助教は、事故直後から、炉心が格納容器の底を解かしてメルトスルーしている可能性があるから、地下水を伝っての汚染を防ぐために四方を壁で囲うべきだ、と主張していた。
東京電力は、何の根拠もなく、メルトスルーはしていない、と言い続けてきた。

大飯原発3号機は2日深夜、定期検査のため運転を停止した。15日には4号機も定期検査のため停止予定。再び、国内の稼働原発はゼロになる。
これを機に、脱原発の方向に進むのがまともな考えだろう。

(FY)