秋篠宮が会見をひらいた。27日からの海外公式訪問(ポーランド・フィンランド)を前に会見されたわけだが、注目されたのは、もちろん小室圭さんと眞子内親王の婚約問題についてである。「結婚の件については、わたしは娘から何も聞いていません」というものだった。昨年の「それ相応の対応をしなければ」「国民に理解されない状態では納采の儀もみとめられない」から比べると、いくぶん穏やかな雰囲気だった。しかし、何も聞いていないというのは、ふつうの家庭では考えられないことだ。皇族の中でも自由な家庭を築こうとしてきた秋篠宮家において、親子の会話がないことが端無くも露呈したかたちだ。


◎[参考動画]秋篠宮ご夫妻が会見 代替わり後初の外国訪問を前に眞子さま結婚見通し語る(テレ東NEWS 2019/6/21公開)

◆天皇家と秋篠宮家を両天秤にかけるメディア

秋篠宮家をめぐる報道は、小室さん婚約問題にかぎらない。悠仁親王が通うお茶の水大学付属中で起きた「刃物事件」が、秋篠宮家の自由主義的な教育方針による結果で、学習院に通わせていれば事件は起きなかった。佳子内親王のダンス好き、あるいは眞子内親王の恋愛が本人の希望通りにと発言したことへの批判などというかたちで、バッシングに近いものとなってきていた。婚約問題、教育問題にかぎらず、秋篠宮家の「公私」の厳格な分け方に、宮内庁の関係者も戸惑うことが多いという。ぎゃくにいえば、ふつうの家庭を築こうとする宮家に、それは許さないという宮内庁関係者の思惑が、メディアを通じて圧力をかけているとも考えられる。

そしてこの秋篠宮家批判は、天皇陛下と雅子皇后を称賛する報道、とくに雅子皇后の外交力(トランプ夫妻歓待での英語での接待など)を称賛し、返す刀で対照的に秋篠宮家を批判するというパターンで繰り返されてきたのだ。これはこれで、即位まではどちらかといえば雅子皇后(当時は皇太子妃)が適応障害で仕事を果たせず、なんとなし天皇(当時は皇太子)に批判的な論評が多かった反動で、こんどは天皇皇后夫妻を評価する半面、何かと自由な発言をする秋篠宮家を叩くという、メディアの話題づくりによるものだ。

◆恋愛の自由、教育の自由が天皇制を崩壊させる

とはいえ、小室さん問題が象徴天皇のアイドル的な側面において、きわめて注目にあたいするテーマであるのは確かで、国民的な興味の的というわけである。本欄では、皇室の民主化・天皇制の民主化(自由恋愛・自由教育)が、それを徹底することで政治権力と天皇家、国事行為と私的行為の矛盾が拡大すること。したがって、天皇家の文化的な性格を政治から分離し、非政治化することが不可能ではない。そしてその過程で天皇家が首都をはなれて本来の御所である京都を住まいとし、あるいは政治(政府と国会)が天皇家を必要としなくなる可能性。つまり天皇制が廃止されることまで展望できると考えてきた。

皇室の民主化とは、たとえば新天皇による剣璽等継承の儀に、女性閣僚(片山さつき地方創生担当相)は参列したのに、皇室の伝統は女性皇族を参列させなかった。つまり国民感覚とはかけな離れた旧皇室典範によって、信じられない光景が現出したのだ。これは眞子内親王の自由恋愛問題と同根である。ふつうに恋愛をしようとしたら、相手の母親に「借金」があるから許されないというのだ。ふつうの自由主義を貫こうとしたら、かならず天皇および天皇制の枠組みに触れてしまう。そこから天皇制が崩壊する可能性がある。口先だけで、天皇制廃絶などとくり返すよりも、天皇および天皇家を徹底的に民主化する、憲法上の矛盾すらも民主化することによって、それは大いに可能なのだ。

◆兄弟の確執が背後に?

さて、今回の会見で秋篠宮は、宮家の当主としてよりも皇位継承権第一位(皇嗣)の立場から、無難にこなしたというのが実際のところだ。それはとりもなおさず、秋篠宮家バッシングとでもいうべきメディアの攻撃を避けつつ、眞子内親王への批判を緩和し、悠仁親王の皇位後継者としての資格に曇りがないように配慮したとみるべきであろう。

秋以降、安倍政権は女性皇族の扱い、とりわけ女性宮家の可否について国民的な議論をしなければならないと提唱している。それは当然のことながら、女性天皇という最大の案件をけん制してのものである。今後、愛子内親王を皇位継承者とするのか、それとも悠仁親王を継承者とするのかについても、国民的な議論をへなければ立ち行かない皇室の事情がある。この議論の背景に、天皇と秋篠宮の隠然たる確執があるからだ。

◎[参考記事]
秋篠宮さまの注目会見、即位に関し意思表示した場合の波紋(2019年6月17日付け女性セブン)

▼横山茂彦(よこやま しげひこ)
著述業・雑誌編集者。主な著書に『軍師・黒田官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)、『真田一族のナゾ!』『山口組と戦国大名』(サイゾー)など。医療分野の著作も多く、近著は『ガンになりにくい食生活――食品とガンの相関係数プロファイル』(鹿砦社LIBRARY)

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