一定の国民が支持するNHK受信料反対・モザイク放送化以外は、N国党はある意味でどうでもいいかな(勝手にやってくれ)と思っていたが、立花孝志のこのかんの言動に典型的な「内ゲバの構造」を見た。

税理士で江東区議の二瓶文隆と東京都中央区議の文徳氏親子にたいして「25歳の二瓶文徳はこれからもね、徹底的に叩き続けますから。オレ、奥さん、この子のお母さんも彼女も知ってますよ。徹底的にこいつの人生を僕は潰していきますからね。二瓶親子、特に息子、覚悟しとけ。許さんゾ、ボケ」などと発言する動画をYoutubeにアップしていたのだ。この感情のなかに、深刻な内ゲバの論理が潜んでいるのを、やや遠回りしながら解説していきたい。


◎[参考動画]裏切り者【二瓶文徳】(25才)中央区議会議員をぶっ壊す!(NHKから国民を守る党 総合チャンネル2019年7月3日公開)

◆内ゲバの論理はこえられなかった

かつて高橋和己は「無私だからこそ」、革命運動の内部ゲバルトは生じると、政治運動の崇高性を前提にしていた(内ゲバの論理はこえられるか)。

高橋和己が体感してきたのは、日共50年分裂(所感派と国際派の軍事路線をめぐる対立)における学生組織のリンチである。その後、全共闘運動の自由な組織感、たとえばデートがあるからデモを休むことが、気軽に受け容れられるなど、新しい学生運動への期待が彼の中にはあった。

しかしながら、高橋死後の日本の学生運動は、周知のとおり連合赤軍の同志殺し、中核VS革マル、社青同解放派(革労協)の内内ゲバに至るまで、まさに惨憺たるものだった。このあたりのわたしの体験は、11月に発売される『鹿砦社創業50周年記念出版 一九六九年 混沌と狂騒の時代』にも書いたので、ぜひお読みいただきたい。

その新左翼運動の内ゲバに「私利私欲」はあったと、故荒岱介は『新左翼とは何だったのか』(幻冬舎新書)で明らかにしている。それは自治会の利権であり、学生活動家の天下り先としての大学生協の維持をめぐって、他党派を排除する内ゲバの論理があったと。

その意味では「カネと女をめぐる対立」というマスコミの下卑た論評は、半分当たっていたことになる。他党派解体という、世界で類を見ない革命運動の陥穽、あるいは病理というべき政治現象は、他党派を排除することで自派が伸長することを意味する。宗派的で独善的なドグマでありながら、市場原理をそのまま運動に体現した、ある意味ではわかりやすい構造である。

◆内ゲバの動機は「感情」である

しかしながら、内ゲバは人間の感情に根ざしたものでもある。単なる私利私欲ではなく、憎悪に組織された暴力でもあるのだ。仲間を殺された恨みと怒り、等価報復で敵に罪を償わせる報復の論理だ。いや、それだけではない。裏切りという即自的な怒りが、裏切り者を徹底的に叩くことへと向かわせる。この即自的な怒りこそ、内ゲバの血の底流なのだ。最大の敵である政治権力に向かう怒りが、それを掘り崩す「裏切り者」へと向かう。

たとえば李信恵らのM君リンチ事件を思い起こしてほしい。もっとも身近な、したがって裏切りへの応報という論理が通じやすい相手が標的にされた事件だ。そこには内輪のことだから泣き寝入りするだろう、という計算もひそかに働いていたに違いない。身近な、自分たちの言語(掟の了解)が通じる相手にこそ、内ゲバの暴力は向かうのだ。


◎[参考動画]二瓶文徳はこんなに応援してもらってあっさり裏切る政治家です (NHKから国民を守る党 総合チャンネル2019年8月13日公開)

◆勝手にやめたのが気に入らない

9月9日の会見において、N国党の立花孝志代表はこう語ったという。「これが恐喝にあたるんですか。起訴され、罰金刑や執行猶予になれば議員を辞職します。けれども、起訴猶予や不起訴なら戦います。世論で辞めろという声が60%以上なら考えるし、80%なら、辞職を考えます。議員にしがみつくつもりはない」などと。まったくもって、完全に常軌を逸した見解である。記者会見では、こうも語っている。

「脅迫になるかどうかについては警察が動いている。私が今日お願いした弁護士さんは正当防衛みたいなものと言っていた。人が殴ってきたのを殴ったのは正当防衛になる」

そもそも、原因は何だったのだろうか。会見からひろってみた。

―― 党におさめるべきお金を収めなかった?

「はい、彼(文隆氏)は党の仕事をせず、お金で解決しようとしていた。コールセンターのシフトに入らず、金を払って代理にやらせていた。コールセンターの仕事をすることなく、父親は領収書を前に、一生懸命、税理士の仕事をしていた。お父さんの方は政党の監査をする資格をお持ちなんですよ。それに対して現場に行ってやらなきゃいけないのをいかずに、通常15万円かかることを10万円でやる。そういうことをやっている。とにかく、裏側にまわってやりたいと、(文隆氏からの)ツイッターのダイレクトメールによれば、『私は政治資金監査人としては希有な人材と自負しています』と。N国党を辞めたからといって、当選して2カ月後に辞めたからといって、ちょっと怪しい人だなと思っていたところ、お父さんが、最初からN国党にいたくなかったと、のうのうとフェイスブックに書いている。これは国民をばかにしていると思って動画の作成に至った」

事務所番をせずに、勝手に党をやめたことが気に入らないというのだ。党に損害が生じたというのならば、ほかに方法があるではないか。今回の二瓶親子の被害届には、NHKがバックにいるとも立花代表は主張している。

「どうしてNHK職員と二瓶さんと接触しているのか。それが被害届けの提出につながっているのではないか、疑っている。(文隆氏の)事務所に行ったら、机の上にNHKの職員の名刺があった」

この一件で、警視庁は立花代表を書類送検した(10月2日)。「徹底的にこいつの人生を僕は潰していきます」とネットで宣言したのだから、ある意味で当然の措置であろう。

N国党は参院選挙を前に、所属の地方議員から130万円を徴収しようとして、支払わない議員を除名にしている。除名された議員のなかには、とんでもネトウヨ議員(NHKは在日に占められていると主張)もいたことから、立花代表の「英断」ととる向きもないではなかった。しかし、勝手に党をやめたことで腹を立て、恐喝まがいの行動に出る。ここに内ゲバの感情が横溢しているのは明らかだ。いずれにしても、事件の帰趨を見極めたい。


◎[参考動画]【10月4日党首会見】豊田真由子さん、堀江貴文さん、小西ひろゆき議員…すべて話しました。(立花孝志10月4日公開)

▼横山茂彦(よこやま しげひこ)
著述業、雑誌編集者。近著に『ガンになりにくい食生活』(鹿砦社ライブラリー)『男組の時代――番長たちが元気だった季節』(明月堂書店)など。

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