昨年春の分裂、藤本ジム閉鎖、今年のコロナ禍で続く苦境の中、新日本キックボクシング協会も興行の在り方が大きく変化。

江幡ツインズがRIZINに出陣した現在、メインイベントを務めるのは勝次(=高橋勝治)。藤本ジムの看板を背負い、責任ある立場となってメインイベントを務めるも、潘隆成に敗れる波乱の幕開けとなった。

8月12日のTITANS NEOS.27に向けた記者会見で、藤本ジムへの想いを語った勝次。

今年1月末に、闘病中の藤本勲会長が病状悪化により藤本ジムが閉鎖に至り、所属選手はそれぞれの道に進んだ。

勝次は今後について、「新日本キックボクシング協会で多くのチャンスを頂き、日本とWKBA世界王座獲得するなどお世話になって来て、この団体を離れる選択肢はありませんでした。」と言う。

更に藤本ジムが引き継いだ目黒ジムの伝統が途切れるという危機感があり、自分が藤本ジムを引き継ごうと、藤本勲会長がジムを閉鎖する前、藤本ジムの名前を使うことを嘆願し、「勝次だったら大丈夫だ、名前だったら幾らでも使ってくれ、何かあったら力になるし、応援しているから!」と承認されていました。

伊原信一代表からは「勝次はそれでやるんだったら、それで頑張るしかないぞ。藤本ジムの名前でやっていけ。この伊原道場を自分のジムだと思って好きなだけ使ってくれ。」と協力的。そして勝次は伊原ジムとのプロモーション、マネージメント契約を締結し活動していくことになっていました。

5月5日に藤本会長が永眠され、コロナ禍で長引いた再開興行の9月27日、ここからの初戦を飾れなかった勝次。今後更なる厳しい境地に立たされる。

潘隆成の右ヒジ打ちが勝次の左瞼にヒットする直前

◎TITANS NEOS 27
9月27日(日)後楽園ホール / 18:00~20:10
主催:TITANS事務局 / 認定:新日本キックボクシング協会  

◆第8試合 63.6kg契約3回戦

WKBA世界スーパーライト級チャンピオン.勝次(藤本/63.5kg)
    vs
潘隆成(元・WPMF日本スーパーライト級C/クロスポイント吉祥寺/63.45kg)

勝者:潘隆成 / 判定0-3 / 主審:少白竜
副審:仲29-30. 宮沢28-30. 桜井28-30

必死にパンチで巻き返しにかかる勝次、潘隆成はまともには食わなかった

やっぱり出た飛びヒザ蹴りの勝次、強引にいくとヒットは難しい

潘隆成の左ミドルキックにリズムを狂わされた勝次

勝次のオープニングヒットとなった右ストレートからの主導権を奪いにいくも、その勝次の突進を阻止する潘隆成。

特に左ミドルキックでリズムを狂わされた感の勝次。

組み合ってからの崩しも潘隆成が優り、第3ラウンドにはヒジ打ちで左瞼をカットされてしまった。

パンチで幾らか軽いヒットさせた勝次だが、潘隆成のディフェンスに阻まれ強いヒットは与えられず押し切られてしまった。

勝利の潘隆成のチーム、T-98(今村卓也)がチーフセコンドを務めた

◆第7試合 70.0kg契約3回戦

日本ウェルター級チャンピオン.リカルド・ブラボ(伊原/69.8kg)
    vs
津崎善郎(LAILAPS東京北星/69.9kg)
引分け1-0 / 主審:椎名利一
副審:仲29-29. 宮沢30-29. 少白竜29-29 

第1ラウンド早々に股間ローブローを受けてから攻め倦み、津崎の前進から組み合う展開は津崎の圧力が優るが、ブラボはパンチとヒザ蹴りを的確に当てる印象も活き、両者の主導権争いは差が出ず。

苦戦の中にもハイキックを見せたリカルド・ブラボ

前進する津崎善郎にパンチのヒットも多かったリカルド・ブラボ

◆第6試合 63.0kg契約3回戦

日本ライト級チャンピオン.高橋亨汰(伊原/62.75kg)vs 野津良太(E.S.G/61.55kg)
勝者:高橋亨汰 / TKO 1R 2:19 / 主審:桜井一秀

両者の蹴りとパンチの様子見から、サウスポーの高橋が蹴りから左ストレートを打ったところで、グローブの内側が擦れるように野津の顔面をヒットすると、これで右瞼をカット。ドクターの勧告を受入れレフェリーストップとなった。

高橋亨汰の左ストレートはグローブの内側をかすって野津良太の右瞼にヒット(画像は別シーン)

あっけない幕切れながら、TKO勝利の高橋亨汰

◆第5試合 53.0kg契約3回戦

泰史(伊原/52.95kg)vs 心直(REON Fighting Sports/52.8kg)
勝者:心直 / 判定1-2 / 主審:仲俊光
副審:椎名29-30. 桜井30-29. 少白竜28-30

初回から心直がやや勢いがある蹴り。やや遅れ気味の泰史の攻めをいなすも、泰史は態勢を立て直し互角の展開。採点は振り分け難い判定となった。

心直が先手を打って出た。右ハイキックが泰史のアゴに軽くヒット

◆第4試合 57.0kg契約2回戦

中村哲生(伊原/56.95kg)vs 平田尚人(Tri.Studio/56.8kg)
勝者:平田尚人 / TKO 1R 0:55 / 主審:宮沢誠

平田のパンチ連打で中村はスタンディングダウンを奪われ、更に連打を受けてノックダウンし、レフェリーストップ。

◆第3試合 57.5kg契約3回戦

瀬川琉(伊原稲城/57.3kg)vs 新田宗一朗(クロスポイント吉祥寺/57.3kg)
勝者:新田宗一朗 / 判定0-2 / 主審:少白竜
副審:仲29-29. 桜井29-30. 宮沢28-30

◆第2試合 女子51.0kg契約3回戦(2分制)

アリス(伊原/50.25kg)vs ERIKO(ファイティングラボ高田/49.5kg)
勝者:ERIKO / 判定0-3 / 主審:椎名利一
副審:仲27-30. 少白竜27-30. 宮沢27-30

◆第1試合 女子スーパーフライ級3回戦(NJKFミネルヴァ/2分制)

芳美(OGUNI/52.05kg)vs NA☆NA(エス/51.9kg)
勝者:NANA / 判定0-3 / 主審:宮本和俊(NJKF)
副審:椎名28-29. 少白竜28-30. 桜井28-29

《取材戦記》

キックボクシングは何度負けても必要とされている限りは再起の道が用意されている場合が多い。プロボクシングだったら戦力外通告で、ジムのロッカーから名前が消されるのも実際にある話。しかしファンから見れば、負けても応援したくなる再起の道。キックではどれだけ負けが込んでも試合に出続ける選手もいる。燃え尽きるまで戦うことが出来るのもキックボクシングなのかもしれない。

ソーシャルディスタンスを保たれた興行が徐々に再開し、収容最大人数(席)の50パーセント以内という条件で各団体、各プロモーション興行も厳しい条件ながら安定してきた感があります。

この日時点では、プロボクシングはまだリングサイド撮影が認められていない模様。スポーツ新聞各社(記者クラブ所属)が揃ったらソーシャルディスタンスを保てない事情もあるかもしれません。キックボクシングは通常、一般マスコミだけなので少人数に限定することは可能でも、元から少ないので混乱にはなっていません。

新日本キックボクシング協会、今回の興行はクラウドファンディングを利用し、246人のサポーターから194万1,000円が集まった模様です。私も応援購入でSAVE THE KICKマスクを購入し付けて行ったら、このマスクを他に付けている人はスタッフの林武利さんだけ。見た限り他は誰も付けて居ない様子。

次回、10月25日(日)興行MAGNUM.53に於いて、勝次はNJKFスーパーライト級チャンピオンの畠山隼人(ESG)と対戦予定。またも他団体チャンピオンとの対戦となり、今度こそ負けられない一戦となる。

ここで負けたら伊原ジムのロッカールームで「藤本ジム・勝次」の名が無くなる!?……かもしれない。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]

フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

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