キックボクシングの通常興行で女子がメインイベントを務める興行は過去にもあるが、ニュージャパンキックボクシング連盟に於いては初の女子メインイベント興行。S-1トーナメント日本版、女子バンタム級はSAHOがアグレッシブに決勝戦を制す。

「今後は世界しか狙っていない」と語ったSAHO。その大きな舞台の一つは直結するタイのソンチャイプロモーター主宰のS-1世界トーナメントとなる。

今年3月、高校を卒業したばかりの社会人19歳対決は、昨年2月24日に誓が1ラウンドKO勝利しているが、今回は判定ながら誓が計3度のノックダウンを奪って王座獲得。

前回興行に続き全試合判定となったがアグレッシブな展開が続き、メインイベントも勝つ以上にメインイベントを務める責任を負っているオーラが感じられた。

◎NJKF 2020.4th / 11月15日(日)後楽園ホール18:00~20:58
主催:NJKF / 認定:NJKF、S-1ジャパン

◆第8試合 S-1レディース・バンタム級ジャパントーナメント決勝 5回戦(2分制)

SAHOの左フックでYAYAは押され気味

女子(ミネルヴァ)スーパーバンタム級チャンピオン.SAHO(闘神塾/21歳/53.2kg)
    VS
J-GIRLSスーパーフライ級チャンピオン.YAYAウィラサクレック(WSR幕張/33歳/53.3kg)

勝者:SAHO / 判定3-0 / 主審:宮本和俊
副審:中山50-47. 少白竜49-47. 和田50-47

両者はパンチから接近すると組み合ってヒザ蹴りの攻防に移る。ブレイクが掛かり離れてもパンチを打っては組み合いに移るが動きは止まることなくヒザで蹴り合う。一見地味な展開もSAHOが圧力掛ける攻勢を保ち、YAYAも首相撲へ組まれると次第にキツイ展開となっていく。劣勢のYAYAは闘志衰えないが、終了間際はSAHOのラッシュでヒザ蹴りが強くヒット、更にパンチのラッシュを掛けるも終了のゴングが鳴り、SAHOが決勝戦を制した。

体重を掛けられバランスを崩しに耐えるYAYA、スタミナを奪われる苦しさ

組み合えばヒザ蹴り、離れてパンチのSAHOがアグレッシブに出る

◆第7試合 第12代NJKFフライ級王座決定戦 5回戦

誓が攻勢を保ち、パンチ連打で出る

1位.誓(ZERO/19歳/50.8kg)vs4位.EIJI(えいじ/E.S.G/19歳/50.75kg) 
勝者:誓 / 判定3-0 / 主審:多賀谷敏朗
副審:中山49-45. 少白竜49-43. 宮本49-44

開始からローキックからパンチへ繋いでいく探り合い。サウスポーのEIJIのいきなりの左ストレートは誓にとってやり難いパンチだが、誓は蹴りの攻防からパンチを繋いでリズムを掴み、第2ラウンドにパンチ連打から左フックでノックダウンを奪う。ダメージは小さいが誓は更に前に出て圧力を掛けていく。第4ラウンドにも連打から右ストレートで2度ノックダウンを奪う。EIJIの左ストレートには最後まで油断ならないが後退気味になり、誓が攻勢を維持したまま大差判定勝利を掴み、新チャンピオンとなった。

誓が右ミドルキックでEIJIの前進を止める

◆第6試合 70.0kg契約3回戦

平塚洋二郎が蹴って出るが、しぶといマリモーは耐える

マリモー(キング/35歳/68.6kg)
    VS
J-NETWORKスーパーウェルター級チャンピオン.平塚洋二郎(タイガーホーク/38歳/69.55kg)
勝者:平塚洋二郎 / 判定1-2 / 主審:和田良覚
副審:中山29-30. 多賀谷30-29. 宮本29-30

YETI達朗(キング)が負傷欠場の為、同じジムでスーパーライト級のマリモーが代打となった。体格差で優る長身の平塚が長いリーチで圧力掛け、平塚のパンチ、ヒジ、ヒザが当て易い距離が続く。しぶとさが定評のマリモーもバックハンドブローを出したり、ガードを固めながら打ち返すヒットが評価されたか、判定は2-1に分かれるも平塚洋二郎の判定勝利。

パンチの距離では平塚洋二郎は手数圧倒にパンチで攻めるがマリモーは下がらない

◆第5試合 フェザー級3回戦

前田浩喜(CORE/39歳/57.15kg)
    VS
NJKFスーパーバンタム級チャンピオン.久保田雄太(新興ムエタイ/27歳/57.1kg) 
勝者:前田浩喜 / 判定2-0 / 主審:少白竜
副審:和田29-29. 多賀谷29-28. 宮本30-29

NJKFスーパーバンタム級前チャンピオンの前田は2018年6月24日、久保田に引分け防衛。怪我で返上後、久保田が第7代チャンピオンとなっている。新旧対決となったこの日、前田が左ミドルキックで圧力を掛け、ベテランの上手さで主導権奪う展開が続く。終盤に久保田はラッシュを掛けたが前田は凌ぎきって、結果的に僅差ながら判定勝利を掴む。

前田浩喜vs久保田雄太。前田が蹴って出て終始主導権を握る

◆第4試合 61.0㎏契約3回戦

琢磨(東京町田金子/28歳/61.0kg)vs羅向(ZERO/20歳/61.0kg) 
勝者:羅向 / 判定0-3 / 主審:中山宏美
副審:少白竜28-30. 多賀谷27-29. 宮本27-30

◆第3試合 70.0kg契約3回戦

vic.YOSHI(OGUNI/29歳/69.8kg)vsマキ・ドゥアンソンポン(タイ)
勝者:マキ・ドゥアンソンポン / 判定0-3 / 主審:和田良覚
副審:少白竜28-30. 多賀谷28-30. 宮本27-30
雄也(新興ムエタイ)負傷欠場によりマキ・ドゥアンソンポンが代打出場。

◆第2試合 66.0kg契約3回戦

宗方888(キング/27歳/65.8kg)vsちさとkissMe(安曇野/37歳/65.75kg)
勝者:宗方888 / 判定3-0 / 主審:少白竜
副審:和田30-27. 中山30-27. 宮本30-27

◆第1試合 ライト級3回戦

水本伸(矢場町BACE /26歳/60.9kg)vs木村郁翔(BIGMOOSE/19歳/60.0kg)
勝者:水本伸 / 判定3-0 / 主審:中山宏美
副審:和田30-27. 多賀谷30-27. 宮本30-27

《取材戦記》

SAHOはS-1ジャパン4人トーナメントを制したが、コロナの影響もあって、すぐにはS-1世界トーナメントなどの開催は無いでしょう。今後まだ続くであろうミネルヴァ王座防衛戦などの国内戦では負けられない戦いが続く。

闘神塾陣営に祝福されるSAHO

5連敗vs3連敗による王座決定戦は誓(ZERO)が王座獲得。勝ち上がった者同士対決ではないのは団体タイトル範疇では仕方無いところか。ダブルメインイベントと銘打っても実質セミファイナルだった誓は今後、上位王座となるWBCムエタイ日本王座挑戦まで、チャンピオンとして負けてはならない立場である。

新チャンピオンとして認定証を受けた誓

コロナ禍での興行も会場の静けさに慣れが出て来た感がある会場内。収容人数は50%のままは仕方無いところ、拍手での応援と、メインイベントではYAYAの入場時、ペンライトでの応援が目立った。紙テープ、花束贈呈禁止は華やかさが無いが、進行はスムーズにいくので今後も続くといい。

YouTubeによる生配信も実施(前回9月興行から2回目らしい)。凝った演出は無く、選手入場の際のカメラは固定カメラから。後に録画映像を見ると、遠くからズームアップでの録り方は、昔のテレビ放送時代のような映りの記憶が蘇ります。

NJKF関西エリア年内興行は11月22日(日)に大阪市住吉区民センター大ホールで「NJKF 2020 west 4th」が行われます。

年明け本興行(東京)は2021年2月12日(金)珍しい平日開催です。

来年は、コロナの影響で期限が延びている波賀宙也のIBFムエタイ世界ジュニアフェザー級王座初防衛戦が行なわれると思われるが、今ある各タイトルが放りっぱなしにならない様、話題多き興行であることを願いたい。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]

フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」