10月31日執行の衆院選。岸田総理の地元である広島市の最終盤の情勢をご報告します。

◆広島1区──爆心地ながら超保守王国の総理の地元に初日から社民・福島党首が殴り込み

広島1区は爆心地を抱える選挙区。わたくし・さとうしゅういちが住んでいます。しかし、過去の選挙では岸田文雄総理が(民主党候補に僅差に迫られた2009年以外は)圧勝してきた超保守王国です。民主党とその推薦候補の亀井静香さんで1-7区まで占めた2009年でさえ岸田さんが勝ったということは、いかに1区が保守王国かというのがよくわかります。

岸田総理に対して共産党新人の大西理さん、社民党新人の有田優子さんらが挑む構図になっています。残念ながらというべきか予想通りというべきか、岸田さんが大幅にリードしています。

広島1区の各候補のポスター

しかし、こんなところに、党首でただひとり、殴り込んだ人がいます。社民党党首の福島みずほさんです。わたしは、そのことにちょっと感動して、その場にうかがいました。福島さんは、平和公園の入口で有田優子候補の応援のマイクを握り、その後、献花しました。

福島さんの口から出た「核兵器禁止・脱原発でぶれない」というフレーズに感動、他の内容を失念するありさまでした。なぜなら、広島では伝統的に野党第一党が、原発製造関連企業の超大手労組などに忖度して脱原発を叫ばない悪しき伝統があるからです。この悪しき伝統とわたしは悪戦苦闘してきたようなものだからです。

わたしは、比例ではもっとも庶民にやさしい経済政策を打ち出すれいわ新選組支持を呼びかける立場です。しかし、24年来の交流がある大学の先輩でもある福島さんの熱意にこたえ、岸田総理の地元で、なおかつ原発推進企業労組も強い1区で立候補しようという有田さんを応援しなければ、少しでも総理を追い上げ、総理をヒヤリとさせなければ、という思いをつよくしました。

有田さんは、地元生まれ地元そだち。岸田さんは東京うまれ東京育ち。地元の庶民の暮らしを岸田さんはどの程度わかっておられるのか? 政権交代がもし今回できなくても、岸田さんに、地元の庶民の声に耳をかたむけざるをえない状況をつくれれば、という想いです。あるいは、いままで日本政府が反対してきた核兵器禁止条約もオブザーバー参加ぐらいはせざるを得ない状況をつくりたい。広島1区の一有権者として有田さんを応援する理由です。

平和公園で出発式の福島みずほ社民党党首と有田優子さん

◆広島2区──原則的左派の大井候補、「立憲民主党」の表示がない選挙カーで野党統一をアピール

大井赤亥候補

広島2区は広島市の西部と廿日市市、大竹市などで構成されます。この2区では40歳の若き政治学者の大井赤亥さんが、自民党の前職の平口洋さんに挑んでいます。広島2区では大井さんが野党統一候補です。

マスコミの情勢調査では平口さんが大きくリードという状況です。実はこの選挙区では2003、2009年と民主党の候補が平口さんを破って当選してきました。民主党候補が改憲派に対して平口さんが、2012年のマスコミアンケートで9条改憲反対と回答するなど、「ねじれ」がありました。

今回の立憲民主党候補の大井さんは、わたしとも生前、懇意にさせていただいた地元では著名なフェミニスト活動家を母親に持ち、ご自身も英国労働党左派に近いと自認される大井さん。大きくすべき政府のサービスは大きくし、小さくすべき個人の生き方への介入は小さくする。左翼のあるべき姿を絵に描いたようなスタンスをビラなどでも公言しています。

ラジカルな市民運動家が多数支援するなど、以前の2区の民主党とは様変わりです。選挙カーも「立憲民主党」の表示がないもので、まさに野党統一を意識しています。

ただ、2003年の初めての立候補以来、2005、2009、2012、2014、2017と6回立候補して4回当選、しかも、穏健なイメージものこっていて中道リベラルくらいにも人気のある平口さん相手に苦戦しています。

小選挙区では大井さんのような原則的左翼は厳しいかもしれない。それでも、これまで政策論議不在だった広島の政治に新風を吹き込む意味でまだまだ若い論客の大井さんに政治家としての活躍を期待をしています。

◆広島3区──斉藤国交相を再逆転へ食いつくライアン真由美候補

広島3区はいわずと知れた河井夫妻の地元です。事件の震源地です。ここでは、公明党の比例前職の斉藤鉄夫国交相が、防災対策充実を訴え、公明党支持層の9割と自民党支持層の7割を固めややリード。これを立憲野党統一のライアン真由美候補が激しく追い上げる展開です。また、公示の直前に維新が擁立した瀬木寛親さんが、当選圏外ではあるものの、一定の支持を広げているように体感されます。

岸田総理誕生、斉藤国交相就任までは明らかに、ライアン候補が優勢でしたが、同じ広島市出身の岸田さんが総理になり一挙にムードは逆転しました。災害が続く3区で災害担当の国交相に期待する方が出たのはやむを得ないとはおもいます。

一方で、野党共闘という概念が一般市民に浸透していないことを思い知らされることもあります。

「さとうさんはもうライアン真由美さんの応援はやめたんでしょ?」

広島3区でこんなお話をうかがい、びっくりしました。

「だって、さとうさんは、れいわ支持でしょ。だから立憲のライアンさんは支持していないのかとおもった。」

とおっしゃるのです。

「わたしの方針は #小選挙区はライアン真由美 #比例代表はれいわ です。野党共闘ですから、当然、れいわの候補者がいない #広島3区はライアン です。」

と申し上げると「そうなんだ?!」とびっくりしておられました。

まだまだ野党共闘という概念が浸透していないし、比例と小選挙区の使い分けも難しいと痛感しました。

3区のポスター

それでも、この選挙区は参院選広島再選挙では、当選した立憲系の宮口治子議員の57359票と、わたくし・さとうしゅういちの3357票の合計の得票60716票は自民党候補の53627票を大きく上回っています。ライアン真由美候補が再逆転するポテンシャルは十分あります。

もうひとつは、わたしを維新系と誤解されているかたもおられ、そういう方が維新の瀬木候補に流れている面は感じます。わたしについて、「若い男性が勢いよく演説しているのは維新」という思い込みから、わたしが立候補した選挙ではわたしに、わたしが立候補しない選挙では維新に投票されている方もおられるのは把握しています。

また、再選挙では、多くの若手有権者が棄権しました。そういう方が衆院選は、野党に投票するかといえば、こころもとない。正直、「河井事件」よりも給料アップとか、児童手当増額、教育費負担減などを求める声が若手、とくに女性の方からはおおくうかがいました。れいわを比例区で支持されるような方もそういう傾向はみられます。金権腐敗の追及は年配者には食いつきがよくても若手にはそうでもないのも現実だし、若手労働者、とくに女性の皆様がおかれた厳しい環境を考えたらうなずけます。

しかし、他の小選挙区ならいあざしらず、河井克行受刑者(有罪確定)の選挙区で与党が勝てば広島の恥です。また、地元の公明前職が国交大臣に就任されたことを喜ばれる方もおられる。お気持ちはわかるが、東京以外の地域がさびれるような政策をとってきたのも与党です。大臣の地元でなくても、公正に防災対策や、地域が元気になるような施策を受けられるのが法のもとの平等であり、政府の責務ではないでしょうか?

一方、若手の皆様にはライアン候補が金権腐敗追及「だけ」でなく、女性会社役員としての経験から、労働条件の改善に力を入れていることもご存じいただきたいのです。公明党もふくめて与党こそがこの20年かけて労働条件をぶっこわしてきました。労働条件の改善、とくにコロナで厳しさをます女性の労働条件の改善など、ライアン候補には国会で取り組んでいただければとおもいます。

ライアン真由美候補の出発式

◆核兵器禁止条約発効・コロナ後・西日本大水害後・製鉄所閉鎖後、河井事件後最初の衆院選、政策論議不在に終止符を

今回の衆院選は、核兵器禁止条約発効後、最初の衆院選です。かたくなに条約そのものにさえ反対してきた自民党の姿勢が問われます。また、コロナ災害の発生後、さらに西日本大水害2018後最初の衆院選です。現場公務員削減などで危機管理体制も弱体化してきた自公の新自由主義が問われます。そして、災害が頻発するなかで、安心してくらせる広島、日本をどうつくるか、が問われます。気候変動にも広島からどう対応するか。問われます。そして、製鉄所閉鎖などの中、広島が依存してきた重厚長大産業が大きな曲がり角を迎えます。そして、河井事件後最初の衆院選でもあります。

これまでの政策論議不在の広島の政治に終止符を打たないと大変なことになります。候補者も市民も大いに語り合いたいものです。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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