横浜第3検察審査会は4月14日、横浜副流煙事件の元被告らによる刑事告発を受けて横浜地検が下した「不起訴」処分を、「不当」とする議決を下した。

◎議決の全文 http://www.kokusyo.jp/wp-content/uploads/2022/04/mdk220420.pdf

この事件は、煙草の副流煙で「受動喫煙症」に罹患したとして、Aさん一家が隣人の藤井将登さんに対して4518万円の損害賠償を求めた裁判に端を発する。請求は棄却された。判決の中で、裁判所はAさんらが提訴の根拠とした診断書のうち1通(娘の診断書)が、無診察の状態で交付されていたことを事実認定した。(医師法20条違反)。診断書を作成した作田医師の医療行為を問題視した。

 

ニューソク通信に出演中の藤井さん(左)と、支援する会・石岡代表(右)

作田氏は、A家の娘と面識もなければ、オンラインで言葉を交わしたこともなかった。高齢の両親から懇願されて、娘の診断書を交付したのである。A家は、この虚偽診断書を高額請求の根拠とした。しかし、提訴の訴因に事実的根拠はなかったのである。

裁判所が4518万円を請求する裁判を棄却すると、藤井さん夫妻は、訴権の濫用に対する「戦後処理」に入った。妻・敦子さんは、作田医師に対する刑事告発を検討するようになった。一部の医療関係者からは、敦子さんの方針を支持する声があがった。

そして2021年春、藤井さん夫妻と数人の支援者が神奈川県警青葉警察署に、作田医師とA家の3人を被告発人とする刑事告発を行ったのである。

容疑は、虚偽診断書行使罪である。青葉警察署の刑事は約半年をかけて、念入りにこの事件を調査した。そして2021年1月に作田医師を横浜地検へ書類送検した。

ところが、この事件を担当した横浜地検の岡田万佑子検事は、3月15日に作田学医師を不起訴とする処分を下した。

◎[参考記事]岡田万祐子検事が作田学・日本禁煙学会理事長を不起訴に ── 横浜副流煙事件、権力構造を維持するための2つのトリック

◆作田医師、アメブロで虚勢を張る

岡田検事が下した不起訴処分に作田医師は、元気づけられたのか、みずからの「アメブロ」にコメントを発表した。藤井さん夫妻に対して、「ファイティング・ポーズ」をとり、反撃の姿勢を宣言したのである。記事のタイトルは、「 当然ながら検察庁の『不起訴』が決定しましたので、ご安心ください(作田 学)」。このタイトルの下に、処分通知書の写真を貼り付けて公表した。(下記の写真)

以下、次のように述べている。全文を紹介しよう。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・【引用】・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 本件では、告発や起訴される理由は全く何も無く、事実無根なので、当然ながら検察庁の「不起訴」が決定いたしました。ご安心ください。
 尋常を外れた虚偽告発、名誉棄損、誹謗中傷、個人攻撃を執拗に繰り返しているようですが、YouTube配信が停止とされたり、メディアも全く相手にしなくなっているようで、当方としてもこのようなフェイク(嘘)には一切係わらないことが賢明と思うところです。
 今国会で「改正侮辱罪」が可決成立し、このような侮辱行為には「1年以下の懲役・禁錮または30万円以下の罰金」が7月までに施行される見通しとのことですので、諸々よろしくお願いいたします。
・・・・・・・・・・・・・・・・【引用おわり】・・・・・・・・・・・・・・・・・

◎【作田氏のアメブロ】https://ameblo.jp/tobaccofree-202105/

作田医師は、暗黙のうちに藤井夫妻に対して「侮辱罪」で刑事告訴することをほのめかしてきたのである。これには藤井敦子さんも、一瞬、たじたじとなったようだった。支援者と話し合って検察審査会に審査を求めることを決めた。とはいえ検察審査会が検察の処分に対して疑義を議決することはめったにない。それに4月16日の時効まで30日ほどしか残っていなかった。それまでに検察が起訴しなければこの刑事事件は終わる。

しかし、藤井さんらにとって、横浜地検の処分に対する自分たちの見解を表明して、記録として残しておくことは重要だった。「禁煙ファシズム」に対する責任追及を今後も続けるからだ。

そこで藤井さんらは、横浜検察審査会に対する審査理由書を作成した。その骨子は、①不起訴が判例違反であることの説明、②診断書の所見における具体的な虚偽記述の指摘、③医師法20条の法解釈に関する私見、④岡田検事が処分を決める際に、厚労省に相談した事実の提示、の4点である。

◎【審査申立理由書】http://www.kokusyo.jp/wp-content/uploads/2022/03/mdk220321-2.pdf

◆損害賠償裁判と医道審議会

横浜第3検察審査会が、時効が成立する前に、不起訴不当の決議を下した意味は大きい。横浜地検が作田医師らを再捜査して起訴する時間は残されていないが、藤井さんたちの「禁煙ファシズム」解体運動に影響を及ぼしそうだ。

たとえば、今後、作田医師を厚労省の医道審議会に告発する際の有力は証拠となる。医道審議会は、医療関係者の不祥事を処分する機関である。形骸化しているとの批判もあるが、診断書の偽造は大変な不祥事なので、まったく関与しないわけにはいかないだろう。

一方、横浜副流煙事件の舞台は、藤井さん夫妻が3月に起こした作田医師らに対する損害賠償裁判に移る。この裁判でも、検察審査会の議決は、作田医師らの方針の不当性を裏付ける有力な証拠になる。

第1回口頭弁論は、5月10日、午前10時半から横浜地裁609号法廷で始まる。

※筆者は分煙に賛成の立場である。煙草も吸わない。しかし、法律による喫煙者の取り締まりには反対の立場である。作田医師らが推進している「喫煙撲滅運動」に違和感を感じる。

▼黒薮哲哉(くろやぶ・てつや)
ジャーナリスト。著書に、『「押し紙」という新聞のタブー』(宝島新書)、『ルポ 最後の公害、電磁波に苦しむ人々 携帯基地局の放射線』(花伝社)、『名医の追放-滋賀医科大病院事件の記録』(緑風出版)、他。
◎メディア黒書:http://www.kokusyo.jp/
◎twitter https://twitter.com/kuroyabu

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黒薮哲哉『禁煙ファシズム-横浜副流煙事件の記録』