ベテラン名チャンピオン三名の引退式と、新鋭チャンピオンクラスのバンタム級トーナメントは世代交代を表すイベントとなりました。

森井洋介は激戦から来る顔面の怪我の影響を考慮し、エキシビジョンマッチも行なわないスーツ姿での引退セレモニー。開場後、森井洋介引退記念スペシャルトークショーが開催。

喜入衆と緑川創は公式戦を戦い抜いての引退セレモニーでした。

◎NO KICK NO LIFE / 2月11日(土・祝)大田区総合体育館 / 開場14:30 開始16:00 
主催:(株)RIKIX

◆第9試合 70.0kg契約 5回戦

緑川創(元・日本ウェルター級Champ・防衛4度/RIKIX/1986.12.13東京都出身/69.9kg)
      VS
海人(=大野海人/S-cup世界トーナメント2018覇者/TEAM F.O.D/1997.8.21大阪府出身/69.8kg)
勝者:海人 / TKO 3R 0:57
主審:北尻俊介

初回、お互い様子を見ながら牽制。緑川創はパンチの連打で出るが、海人は被弾を避ける展開。残り30秒を切って、海人のヒジの連打を防いだ緑川だったが、ガードが空いた一瞬にヒジを打ち込まれ、ノックダウンを奪われてしまう。

第2ラウンド、パンチの応酬になるものの、海人のヒジ打ちを警戒したせいか緑川は自分の距離が掴めない様子。ラウンド後半に海人の左ヒジ打ちからの右ミドルキックが決まり、緑川はノックダウン。立ち上がるが海人のヒジ打ちで額をカットされドクターチェック。終了間際に海人の攻勢に緑川は追い詰められるもゴングに救われる。

引退試合は今戦える最強相手に完膚なきまで打たれ続け散った緑川創

第3ラウンド、ダメージが残っている緑川はパンチの連打を仕掛けるも、海人のヒジの連打を貰うとニュートラルコーナー付近に追い詰められ、ボディーへのパンチの連打でノックダウン。立ち上がるも左右のショートパンチを貰うと崩れ落ち、レフェリーがストップをかけて終了。

試合後、緑川の引退セレモニーでは、小野寺力会長や元・WBA世界スーパーフェザー級チャンピンの内山高志氏などが花束や試合記念パネルを贈呈、緑川創の引退挨拶が行われ、テンカウントゴングが打ち鳴らされた後に四方に一礼をしてリングを去った。

完全燃焼した現役生活にピリオドを打つテンカウントゴングを聴く緑川創

◆第8試合 62.5kg契約 5回戦

勝次(=高橋勝治/元・日本ライト級Champ・防衛3度/藤本/1987.3.1兵庫県出身/62.4kg)
      VS
髙橋聖人(前・NKBフェザー級Champ/真門/1997.12.1大阪府出身/62.3kg)
引分け 三者三様
主審:秋谷益朗
副審:北尻48-48. 能見48-49. 大成49-48

初回、勝次は前蹴り、パンチで探りながら仕掛けていく。高橋聖人はブロックをして打って出る隙を狙っている様子。残り30秒で勝次はラッシュを仕掛けるが、聖人のディフェンスで攻めきれず。

第2ラウンド、聖人は時折ローキックで切り崩しにかかるが、勝次も応戦する中。聖人のローキックで勝次がバランスを崩すもすぐに立て直し、聖人にペースを握らせない。

第3ラウンド、聖人のローキックで勝次は足にダメージが蓄積しているが、聖人は攻め切れない。手数で勝る勝次はパンチのラッシュを再度仕掛けて顔面を捉えるも、聖人は上手く距離をとっている為、コーナーに追い詰めるがダウンには繋がらない。

第4ラウンド、勝次はパンチのラッシュでダウンを狙っていくがダメージが残り、更に聖人のブロックに拒まれてしまう。聖人は隙を狙って仕掛けたい様子だが、勝次のラッシュに対応するのが精一杯の様子。

第5ラウンド、勝次のパンチは的確に聖人にヒットするも、ダウンを奪えず焦りが出て来ている様子。聖人はタフさでダメージをカバーしてきたがスタミナが切れつつあり、勝次の右ストレートや右ヒザ蹴りを貰ってしまう。聖人は後半にローキックで勝次のバランスを崩すがノックダウンには至らず終了。

今回も飛んだ勝次、やや優勢な展開を見せたが、高橋聖人のタフさに阻まれた

◆第7試合 NO KICK NO LIFEバンタム級賞金トーナメント 5回戦

HIROYUKI(=茂木宏幸/元・日本フライ級、バンタム級Chmp/RIKIX/1995.10.2神奈川県出身/53.4kg)
      VS
國本真義(MEIBUKAI/1992.3.2愛知県出身/53.5kg)
勝者:HIROYUKI / 判定3-0
主審:大成敦
副審:秋谷50-47. 能見49-48. 北尻50-47

初回、お互いローキックからスタート。HIROYUKIはパンチを混ぜていくが、國本真義はローキックで切り崩しにかかる。HIROYUKIの右ミドルキックが國本の動きを止めるが詰められず。

第2ラウンド、HIROYUKIは國本へのボディーにパンチを叩き込むが、國本はローキックを繰り返していく。HIROYUKIのボディーへのストレートで國本は嫌がるが、依然としてローキックを繰り返すも劣勢を挽回出来ず。

第3ラウンド、HIROYUKIはパンチ主体に攻めるも、國本はローキックを続けていく。

第4ラウンド、HIROYUKIは冷静に國本のローキックをかわし、右ミドルキックの切り崩しも加えながらパンチで攻めていく。國本はローキックをひたすら打ち続けながらHIROYUKIに有利な距離を掴ませない。

第5ラウンド、國本は左脇にダメージを負いながらもローキックに固執。HIROYUKIはパンチの連打、右ミドルキックを決め、更にヒジ打ちで國本の額をカット。國本は鼻からも出血するがタフネスさを発揮して終了。

試合後 HIROYUKIは「相手の選手がローキックだけで来るとは想定外だった。」とコメント。「次の準決勝、決勝では必ず勝ちます。」とトーナメントへの意気込みを語った。

ローキックに苦戦しながらも効果的なミドルキックで攻めたHIROYUKI

◆第6試合 NO KICK NO LIFEバンタム級賞金トーナメント 5回戦

花岡竜(元・JKIフライ級C/橋本/2003.11.30東京都出身/53.5kg)
      VS
サンチャイ・テッペンジム(タイ/1988.5.30ソンクラー県出身/53.3kg)
勝者:花岡竜 / 判定2-1
主審:ノッパデーソン・チューワタナ
副審:秋谷48-49. 能見49-47. 大成49-48

初回、サンチャイはオーソドックなムエタイスタイルでキックを主体に探りを入れるが、花岡は慌てることなく合わせていく展開。

第2ラウンド、サンチャイはヒジ打ちとヒザ蹴りで組み立てていこうとする。花岡はブロックや距離をとってかわしていく。後半から花岡の左ストレートからのボディーへのヒザ攻撃が決まり、少しずつ追い詰めていくがダウンまで奪えず。サンチャイはボディーへのダメージがあり、嫌がっている感じ。
第3ラウンド、花岡は的確なパンチ蹴りを決めていき、サンチャイのペースを落としにかかる。サンチャイの右ヒジが花岡の左目上にヒットしカットするが傷が浅いようでそのまま続行。

第4ラウンド、サンチャイのスタミナは落ちてきているが、花岡のカットされた傷周辺を狙いにいく。花岡は負傷ストップ負けをしない為に、離れながらボディー攻撃していくが、サンチャイのタフさと間合いで攻めきれず。
第5ラウンド、花岡のパンチがヒットしサンチャイの動きが止まる。サンチャイは花岡のカウンターに合わせてヒジ打ちで逆転勝利を狙っていくが、負傷箇所へのダメージを避けながら前に出て反撃を封じて終了。

試合後、観客へのサインや写真撮影に応じていた花岡だったが、カットされた左目上の傷のことで「ヒジのカットでのTKO負けを警戒していたので」とコメント。「次はきれいに勝ちます」とコメントしながら安堵感が出ていた。

ヒジを警戒しながら貰って切られるも徹底した攻めでサンチャイのスタミナを削る花岡竜

◆第5試合 NO KICK NO LIFEバンタム級賞金トーナメント 5回戦

麗也(=高松麗也/元・日本フライ級Champ/治政館/1995.10.2埼玉県出身/53.5kg)
      VS
神助(=岸慎介/JKIバンタム級Champ/エムトーン/2001.10.7神奈川県出身/53.5kg)
引分け 三者三様 (勝者扱いで麗也が準決勝進出)
主審:北尻俊介
副審:秋谷49-48. ノッパデーソン48-48. 大成48-49 (延長戦は三者とも麗也の10-9)

初回、神助はパンチで探りを入れながら、自分の距離を取りにいく。麗也は1分過ぎに神助の右ストレートを貰ってグラつくが冷静に対処。

第2ラウンド、初回と同じような展開に神助のセコンドからは「付き合うとKOできないよ」と声が飛ぶが、神助は攻めきれず、麗也は神助の攻撃に合わせていく。

第3ラウンド、麗也はローキックとパンチで仕掛け始める。神助はパンチ蹴りで返し、麗也がテーピングしている右膝周辺にローキックと、パンチコンビネーションで切り崩しを図るが、麗也にダメージを与えきれず。

第4ラウンド、神助はパンチ中心に攻撃を変えていき、麗也も劣勢と感じたか、パンチ主体に攻勢を仕掛ける。残り1分で打ち合いになるが、お互いに決め手を欠いてダウンまで奪えず。

第5ラウンド、神助の勢いが落ちてきているのを感じた麗也は距離をとりながらパンチを当てていく。ラスト1分頃から神助もラッシュを仕掛けるが、麗也は冷静にスウェーとブロックでダメージを貰わない。残り時間少ない中、打ち合いになるがダウンを奪えず終了。三者三様の引分け。

延長戦 神助は前へ前へとプレッシャーをかけていき、麗也は隙を狙っていく展開。後半に麗也の左右のフックが神助の顔面をとらえ、一瞬、神助の動きが止まる。神助も終盤にパンチのラッシュを仕掛けるが、麗也も合わせていき、麗也の優勢を支持され、準決勝進出が決まる。

試合後のインタビュールームではリラックスした表情で談笑していた麗也。次戦の相手になるHIROYUKIと一緒に「次の準決勝、決勝も観に来てください」とコメント。

麗也も多彩に攻める中でのミドルキックで神助を追い詰める

◆第4試合 NO KICK NO LIFEバンタム級賞金トーナメント 5回戦

山田航暉(元・WMC日本スーパーフライ級Champ/キングムエ/1998.7.17愛知県出身/53.5kg)
      VS
平松弥(元・JKIフライ級Champ/岡山/2004.10.13岡山県出身/53.2kg)
勝者:山田航暉 / TKO 3R 2:28 /
主審:能見浩明

両者ローキックでの牽制からスタート。平松弥は蹴りを上下に分けて蹴っていくが、山田航暉はブロックで凌いでいく。やや膠着状態に移ってラウンドは終了。

第2ラウンド、攻めが少ない展開にレフェリーから何度も「ファイト」の声が掛かる。平松のパンチに合わせ、山田はカウンターでパンチを返していく。そして、平松のパンチに合わせ、山田の右ストレートがカウンターで決まり、ノックダウンを奪う。平松は巻き返そうとローキックとパンチのコンビネーションで攻めていくが、山田のブロックに阻止される。

第3ラウンド、山田は平松にプレッシャーをかけていき、平松は手数を増やして山田にダメージを与えようと試みていく。2分過ぎにガードが空いた平松の顔面を山田の右ヒジ打ちがアゴにヒット。平松は立ち上がろうとするが、意識朦朧として立ち上がることができず、カウント中のレフェリーストップとなった。

蹴りも多かった山田航暉のミドルキックと平松弥との攻防

 
◆第3試合 ウェルター級3回戦

健太(=山田健太/E.S.G/1987.6.26群馬県出身/66.0kg)
      VS
喜入衆(元・LBSJウェルター級Chmp・NEXT LEVEL渋谷/1979.5.24神奈川県出身/66.5kg)
勝者:健太 / 判定2-0
主審:秋谷益朗
副審:能見29-29. ノッパデーソン29-28. 大成30-28

喜入衆の引退試合。開始から両者ともに小刻みに攻撃をしていく。健太が徐々に圧力を掛けるが、喜入衆はハイキックを繰り出してペースを握らせない。

第2ラウンド、喜入衆は健太に追い詰められるがブロック。しかし、健太の的確なボディーへのパンチで劣勢になるが凌ぎきった。

第3ラウンド、健太は左ストレートとローキックのコンビネーションで切り崩しを図るが、喜入衆は手数で挽回していく。しかし健太はペースを崩すことなく、巧みなディフェンスで優って終了。喜入衆は判定負けながら密度の濃い展開でラストファイトを終えた。

敗れたが見せ場は多かった喜入衆

愛娘から花束を贈られた喜入衆

◆第2試合 女子バンタム級3回戦(2分制)

高橋アリス(チーム・プラスアルファ/2003.11.21生/53.0kg)
      VS
Melty輝(=河野莉奈/team AKATSUKI/1992.1.12生/53.5kg)
勝者:Melty輝 / 判定0-3
主審:北尻俊介
副審:能見28-30. ノッパデーソン27-30. 秋谷28-29

◆第1試合 ミドル級3回戦

小原俊之(キングムエ/1985.6.3愛知県出身/72.0kg)
      VS
髙木覚清(RIKIX/2001.10.11岡山県出身/72.5kg)
勝者:小原俊之 / 判定2-0
主審:大成敦
副審:北尻29-29. ノッパデーソン30-29. 秋谷30-29

◆オープニングファイト ライト級3回戦

大河内佑飛(RIKIX/ 61.0kg)vs須貝孔喜(VALLELY/ 61.1kg)
勝者:大河内佑飛 / TKO 3R 1:59 / ノーカウントのレフェリーストップ

《取材戦記》

2016年以降では「KNOCK OUT」というイベントの時期を挟んでいましたが、久々に訪れたRIKIX興行でした。

確立した競技化を目指す「NO KICK NO LIFE」は5回戦が6試合組まれ、昭和に戻ったような本来の姿に近かった。

また「バンタム級トーナメントは引分けの場合、1ラウンドの延長で準決勝進出を決定。公式記録は引分け」としっかりアナウンスされたことは、この競技の在り方を正しく貫いた様子。

更には、各試合両選手は同一色のグローブを使用。赤と青のテーピングで色分けは仕方無いが、極力不均等さが無い工夫がされていました。

時代の流れに逆らえない点もありますが、小野寺力氏が語る「新しいものを取り入れつつ、守るべきものは守っていかねばならない」という使命感が現れていた興行でした。(堀田春樹)

準決勝進出を決めた左からHIROYUKIvs麗也、花岡竜vs山田航暉の並び

《岩上哲明記者レポート》

緑川選手を初めとするRIKIXジムの選手は基本に忠実な戦いをして、「目黒ジムイズム」は伝わってきたかと思います。更に「NO KICK NO LIFE」が今のキックボクシング界に必要な存在の一つと思わせるものでした。

試合前に元・WPMF世界スーパーフェザー級チャンピオンの岩城悠介(RIKIX)と話す機会があり、「メインイベントとバンタム級のトーナメントが見所です!」と語り、「今年はたくさん試合に出て活躍したいですね!」と抱負も語っていました。

興行終了後には、過去に新日本キックボクシング協会で2階級制覇した菊地剛介さんからは「いい興行だったと思います!」とコメントを貰い、プロレス実況を中心に活躍をされている村田春郎アナウンサーからは「昼にプロレスの実況をして来たのですが、この興行も実況したかったです!」とコメントが聞けました。

喜入衆選手、森井選手、緑川選手の引退セレモニーもそれぞれ「お疲れ様でした」と声を掛けたくなるようないいセレモニーでした。同時にバンタム級トーナメントでの若手選手の活躍を観て、世代交代も感じられた興行と言えるでしょう。

◎バンタム級トーナメント準決勝・決勝は5月21日(日)に豊洲PITでの岡山ジム主催興行で開催される模様です。次回「NO KICK NO LIFE」は7月9日(日)に豊洲PITで開催予定です。

激闘を続けて来た顔つきとは違うリラックスした表情でトークショーに臨んだ森井洋介

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

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