日本の「防衛強化」は机上の空論 防衛費倍増で防衛産業は衰退する

清谷信一(紙の爆弾2026年8月号掲載)

高市早苗政権は年内の閣議決定を目指し、国家安全保障戦略などいわゆる安全保障(防衛)3文書の改定作業を進めている。だが現行の3文書は2022年12月に策定され、10年間を見通した内容となっていた。これを、わずか4年で見直すこと自体が異様だ。「直面する緊迫した国際情勢を踏まえての改定」というが、そのような変化は存在しない。高市首相の手柄づくりに利用されているのではないか。「軍事音痴」の高市首相の意向が強く反映された内容になれば、安全保障上の大きなリスクを抱えることになる。

高市首相に軍事・安全保障の素養はない。中国を相手に台湾有事問題で喧嘩を売り、その際に存在しない「中国の戦艦」に関する発言をして、これを批判されるとむきになって「存在する」と閣議決定。この件に関して筆者は6月2日の齋藤聡海上幕僚長の定例会見で質問したが、「(総理の発言の意図は)よくわかりませんのでこの件については発言を差し控えたいと思います。今、我々はその(戦艦の)定義をしておりません。(中略)今我々はそういったカテゴリーを持っておりませんので、言及することは控えたいと思います」と大変困った様子で回答した。

3月24日の報道官会見では安居院公仁報道官に、高市首相の「大変申し訳ないが、戦闘員には最後まで戦っていただく」との発言を質問した。

無論、戦闘員とはショッカーの戦闘員ではない。ハーグ条約やジュネーブ条約で定める「戦闘員」の資格を満たすのは、基本的に自衛官だけだ。首相の発言は自衛官に降伏を認めず、死ぬまで戦えという意図か。それは旧日本軍同様の人権侵害、国際条約無視ではないか、と尋ねたら、後日返答すると言いつついまだに返答がない。つまりは返答できない話だったのだろう。

これらのように高市氏は内閣総理大臣=自衛隊の最高指揮官にふさわしい軍事の常識や教養を、明らかに持ち合わせていない。その肝いりで防衛3文書を見直すということは、政治的・軍事的・外交的に極めてリスクが大きく、国を誤る可能性が極めて高い。

◆防衛費と円安

防衛費GDP比1%から大きく上げるきっかけを作ったのは安倍晋三である。現在の増大方針はその時からだ。安倍元首相は2022年に、GDP比2%に引き上げる、財源は国債を刷ればいくらでも手当できる、カネの使い道は増やしてから考えればいいと主張した。つまり、具体的な脅威の拡大も国際情勢の変化もなく、景気のいい話をぶち上げただけだ。

これに本来政治に中立であるべき、防衛省のシンクタンクである防衛研究所の幹部たちが「個人」の資格で礼賛する意見をテレビや新聞で表明した。世論誘導である。

当時、我が国周辺の安全保障環境の劇的変化はなかった。おそらくアベノミクスの失敗を悟っていたであろう安倍元首相は健康を理由に辞任して、菅義偉氏に後を譲った。だが再度首相に返り咲くための方便として「強い指導者」を演出するため危機感をあおったのではないか。

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