2012年もひと月が終わろうとしているが、経済の潤滑油である原油市場は波乱含みだ。ナイジェリアの内乱やイランという生産国の不安を抱え、去年国際市場からなくなったリビアの分もまだ回復できていない。いつ供給が減ってもおかしくない状況で、しかもその穴を埋める余剰生産能力はきわめてタイトだ。

この状況を反映し、国際通貨基金(IMF)は25日、経済制裁でイラン産の原油が市場に出回らなくなり、それをほかの産油国が穴埋めできなければ原油価格が2割から3割上がるかも知れないと報じた。価格の上昇はあり得るが、必ずしもそうなるとは限らず、ヨーロッパの債務問題がますます深刻になれば、むしろ価格が暴落する怖れもある。

ヨーロッパ経済はドイツとともに牽引車であるはずのフランス国債が格下げされ泥沼化の様相だ。これがますます悪化すれば、原油の需要が激減し供給がだぶつくこともある。しかも、ヨーロッパの危機が、減速気味の中国を含め世界経済に波及すれば、原油価格は2008年後半のように乱降下することもある。

米エネルギー省EIAが今月初めに発表した報告によれば、2008年や70年代の石油危機のように大騒ぎはされなかったが、2011年の原油価格はこれまでの最高を記録した。メディアがなぜ大騒ぎしないのか、世間の大半はなぜ無関心でいられるのか、わからない。

2008年は7月に原油が1バレルあたり150ドルに迫るまでに上昇したが、その後は需要の激減に伴い、年の終わりには44ドルまで急落した。2011年は年の初めから原油価格が高止まりし、ウエストテキサス(WTI)よりも現状を反映するブレント価格は年平均111ドルで、前年比で4割増、2008年に比べてもバレルあたり14ドル高いままだった。昨年第4四半期の世界の石油消費量は2009年以来はじめて減少した。すでに世界経済が冷え始めた兆候と見ることもできる。

原油価格の上昇の影響も深刻だが、安くなればいいというものでもない。

需要の激減,そして価格の崩壊は産油国を直撃する。サウジアラビアは補助金で国内のガソリン価格を抑え、クゥエートは現金や食料をばらまき、アルジェリアは政府が食料価格に介入し、「アラブの春」の波及を防いだ。原油の売り上げを国民にばらまくことで国民の不満をそらすことができたが、価格が崩壊し、需要が減れば、これらの国でもそれができなくなる。産油国のなかでも「アラブの春」にさらされ、政情不安が広がるところがでてくるだろう。中東をはじめとする産油国の政情不安を原油の消費国はなんとしても回避したいところだが、いかんせん、できることはほとんどない。

消費国にとっても価格の低下は、直近はともかく、深刻な問題を先送りにすることになるので歓迎できない。たとえ、2008年の後半のようなレベルまで下がらなくても、80ドル台に下がるだけでも、現在の高値でかろうじて採算の取れる油田は生産を停止せざるをえない。原油の生産は水道の栓をあけたり締めたりするようにはできず、採算が取れないからといって生産を停止した油田を再稼働させるためには時間も更なる投資も必要になる。需要と供給のさらなる逼迫を数年後に先送りすることになる。

JODI(Joint Organization Data Initiative)が1月後半に発表した最新の報告によれば、サウジは2011年第4四半期、日産1千万バレルを越す生産をあげた。これはこれまでの30年間で最大の生産量だ。消費国にとって生産の増加自体もありがたいが、それ以上にありがたいのは10月には毎日2百万バレルを越し、2002年以来最高レベルに達した国内原油消費が11月には184万バレルと9.2%減ったことだ。

問題はサウジがこのレベルの生産をいつまで続けられるのか。また、イランやナイジェリアの危機が深刻化した時に、どのくらい早く、そして、どこまで生産をあげることができるのか。そして、サウジは国内の消費はこのまま抑えておくことができるのか。予断を許さない。

(RT)