核武装に執着する者たち〈3〉「核兵器開発」放棄のための「再処理政策」放棄 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)

◆高速炉と軽水炉との違い

高速炉の燃料が1般の原発の燃料とどう違うのか。軽水炉の燃料から取り出すことができるプルトニウムは、核分裂性すなわち核兵器として使えるプルトニウムは239、241だが、核分裂性ではないプルトニウム238、240、242が3割以上含まれる。言い換えるならば、プルトニウムの純度が悪い。核爆発装置を作ることは出来るし、ナガサキ型原爆を作ることも可能だが、現代ではプルトニウムの核分裂を起爆剤に核融合により威力を発揮する核融合爆弾すなわち水爆が主流だ。

この水爆の起爆剤を作る場合、不純物の多いプルトニウムは不純物の発する中性子により早期爆発を引き起こしたり、中性子を吸収して逆に核爆発威力(収量という)を減衰させたり、発散する放射線が強すぎて周囲の回路や材料を劣化させたり、取扱者を被曝させるなど問題が多い。

しかし高速炉ブランケット燃料から取り出せるプルトニウムは不純物がほとんどない98%程度の純度である。これは原爆開発初期から存在する黒鉛炉と高速炉でしか製造できないので、フランスのラプソディ高速実験炉から取り出したプルトニウムがムルロワ環礁の地下核実験(1996年)に使用されたとき、世界中の核兵器関係者が注目したのである。

この核実験には米国エネルギー省も立ち会ったといわれている。米国が所有しない高純度プルトニウムによる核実験であった。フランスは高速炉から得た兵器級プルトニウムで400発の核兵器を製造したという。

日本が最初に導入した英国製の原発は、東海村で現在廃炉・解体中の東海原発だが、これは黒鉛炉だった。そのため英国と日本との取り決めで、使用済燃料は全量英国に返還し、日本には残されなかった。これは黒鉛炉の燃料から高純度のプルトニウムが生産できるからである。英国は黒鉛炉を使って核兵器開発を進めていたが、日本からのプルトニウムも使っていたといわれている。

核兵器生産に使える原子炉はもう1つ、重水炉がある。これは中性子を減速する材料に重水を使い、水で冷却する構造だが、プルトニウム239の純度を高く保つ運転が可能だ。実際にインドが核兵器用プルトニウムを生産したのはカナダから導入した重水炉からだ。

日本には重水炉も存在した。現在廃炉・解体中の「ふげん」がそうである。「ふげん」の使用済燃料は東海再処理工場で再処理されたが、1般の軽水炉のプルトニウムと混ぜて取り出すことになったため、核兵器級の純度を持つことはなかった。重水炉は「ふげん」しか存在しなかったし、黒鉛炉は東海原発しか存在しなかった。いずれも日米原子力協力協定による原子力開発が進められる過程で、以後は全部米国製軽水炉が採用されることになった。これは日本の核武装を阻止するためである。

これらの共通項は「プルトニウム239の高い純度」である。軽水炉でもまったくできないことはないが、そのためには断続的に運転を停止し頻繁に燃料を交換する必要がある。この燃料交換サイクルがわかれば、燃料から取り出されるプルトニウムの純度が推測できる。北朝鮮の原子炉の運転間隔が米国などの重要な衛星情報になっているのはこれが理由だ。

IAEAが日本の原発を常時監視しているが、その目的も核兵器開発を阻止するためである。そのため原子炉内には常に監視カメラが取り付けられており、運転時も停止時も止められることなく監視し続けている。主に使用済燃料プールの燃料体が計画外で取り出されていないか、あるいは運転間隔が不自然ではないかなどを監視しているとされる(「保障措置上の監視」という)。

◆核兵器開発を止めさせよう

日本の現状は、米国による東アジアの覇権を維持するために、日本にも「応分の負担を求める」として、防衛費を倍増させ、米国の兵器を爆買いさせてきた。これがアジアの緊張を高めていることは紛れもない事実である。

これに加え、日本の核武装の隠れもない姿勢は、核拡散も加速する恐れが出てきている。

北朝鮮が核兵器体系を高度化するためのミサイル実験を繰り返す中で、韓国にも危機感が高まり、プルトニウムを抽出する再処理を志向し始めている。韓国には重水炉もあるので、高純度プルトニウムを生産することも十分可能だ。

日本を筆頭に核なき世界に逆行する現状を転換しなければ、いずれ核軍拡競争がアジアで始まる。

日本が核武装を放棄するには、原子力政策、とりわけ再処理政策を放棄するほかはない。電力需要にまったく寄与しないばかりか、巨額の費用が投じられ、その分、電気代に跳ね返る再処理事業には、巨額の税金も投入されている。

環境を汚染し、核のごみを拡散させるだけの再処理工場を廃止させることから始めよう。

本稿は『季節』2024年夏・秋合併号(2014年8月5日発売号)掲載の「核武装に執着する者たち」を本通信用に再編集した全3回の連載記事です。

◎山崎久隆 核武装に執着する者たち(全3回)
〈1〉核武装のために不可欠な「核燃料サイクル政策
〈2〉開き直ったかのような日本政府の「核武装オプション論
〈3〉「核兵器開発」放棄のための「再処理政策」放棄

▼山崎久隆(やまざき・ひさたか)
たんぽぽ舎共同代表。1959年富山県生まれ。脱原発東電株主運動、東電株主代表訴訟に参加。反原発運動のひろば「たんぽぽ舎」設立時からのメンバー。湾岸戦争時、米英軍が使った劣化ウラン弾による健康被害や劣化ウラン廃絶の運動に参加。福島第一原発事故に対し、全原発の停止と廃炉、原子力からの撤退を求める活動に参加。著書に『隠して核武装する日本』(影書房 2007年/増補新版 2013年)、『福島原発多重人災 東電の責任を問う』(日本評論社 2012年)、『原発を再稼働させてはいけない4つの理由』(合同出版 2012年)、『核時代の神話と虚像 ―― 原子力の平和利用と軍事利用をめぐる戦後史』(共著/木村朗、高橋博子編/明石書店 2015年)等多数。

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〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌『季節』2024年夏・秋合併号《創刊10周年記念特集》どうすれば日本は原発を止められるのか


◎『季節』創刊10周年特別企画『脱(反)原発のための季節セレクション』(仮)
出版のためのクラウドファンディングご支援のお願い

https://readyfor.jp/projects/kisetu_nonukes

『季節』2024年夏・秋合併号(NO NUKES voice 改題)
A5判 148ページ(本文144ページ+巻頭カラー4ページ) 定価880円(税込み)
お陰様で10周年を迎えました!
《グラビア》
「幻の珠洲原発」建設予定地 岩盤隆起4メートルの驚愕(写真=北野 進
「さよなら!志賀原発」金沢集会(写真=Kouji Nakazawa

《創刊10周年記念特集》どうすれば日本は原発を止められるのか

《報告》小出裕章(元京都大学原子炉実験所助教)
 原子力からこの国が撤退できない理由

《報告》樋口英明(元福井地裁裁判長)
 なぜ日本は原発をやめなければならないのか

《報告》井戸謙一(元裁判官/弁護士)
 事実を知り、それを人々に伝える

《報告》山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)
 核武装に執着する者たち

《報告》後藤政志(元東芝・原子力プラント設計技術者)
 課題は放置されたまま

《報告》森松明希子(原発賠償関西訴訟原告団代表)
 原発被害の本質を知る

《インタビュー》北野 進(「志賀原発を廃炉に!訴訟」原告団団長)
 珠洲原発・建設阻止の闘いは、民主主義を勝ち取っていく闘いだった

《対談》鎌田 慧(ルポライター)×柳田 真(たんぽぽ舎共同代表)
 東京圏の反原発 ── これまでとこれから

《報告》今中哲二(京都大学複合原子力科学研究所研究員)
「核融合発電」蜃気楼に足が生え

※          ※          ※

《回想》松岡利康(鹿砦社代表)
 創刊から10周年を迎えるまでの想い出

《墓碑銘》松岡利康(鹿砦社代表)
 お世話になりながら途上で亡くなった方への追悼記

《季節創刊10周年応援メッセージ》

 菅 直人(衆議院議員・元内閣総理大臣)
 守りに入らず攻めの雑誌を

 中村敦夫(作家・俳優)
 混乱とチャンス  

 中嶌哲演(明通寺住職)
「立地地元」と「消費地元」の連帯で〈犠牲のシステム〉を終わらせる

 水戸喜世子(「子ども脱被ばく裁判の会」共同代表)
『季節』丸の漕ぎ手をふやして、一刻も早く脱原発社会を実現しよう

 山崎隆敏(元越前市議)
「核のゴミ」をこれ以上増やさないために

 今野寿美雄(「子ども脱被ばく裁判」原告代表)
 裁判も出版も「継続は力なり」

 あらかぶ(「福島原発被ばく労災損害賠償裁判」原告)
 隠された「被ばく労働」問題を追及し、報じてほしい

※          ※          ※

《報告》なすび(被ばく労働を考えるネットワーク)
《検証》あらかぶさん裁判 原発被ばく労働の本質的問題 

《報告》北村敏泰(ジャーナリスト)
 棄民の呻きを聞け 福島第一原発事故被害地から

《講演》和田央子(放射能ゴミ焼却を考えるふくしま連絡会)
「復興利権」のメガ拠点 「福島イノベーション・コースト構想」の内実〈前編〉

《報告》平宮康広(元技術者)
 水冷コンビナートの提案〈1〉

《報告》原田弘三(翻訳者)
 COP28・原発をめぐる二つの動き
「原発三倍化宣言」と「気候変動対策のための原発推進」合意

《報告》三上 治(「経産省前テントひろば」スタッフ)
 総裁選より、政権交代だ

《報告》板坂 剛(作家/舞踊家)
   タイガー・ジェット・シンに勲章! 問われる悪役の存在意義

《報告》山田悦子(甲山事件冤罪被害者)
   山田悦子の語る世界〈24〉
   甲山事件50年を迎えるにあたり
   誰にでも起こりうる予期せぬ災禍にどう立ち向かうか(下)

《報告》大今 歩(高校講師・農業)
   洋上風力発電を問う 秋本議員収賄事件を受けて

《報告》再稼働阻止全国ネットワーク
 時代遅れの「原発依存社会」から決別を!
 政府と電力各社が画策する再稼働推進の強行をくい止める

《老朽原発》木原壯林(老朽原発うごかすな!実行委員会)
 6・9大阪「とめよう!原発依存社会への暴走大集会」に1400人超が結集

《女川原発》舘脇章宏(みやぎ脱原発・風の会)
 女川原発の再稼働はあり得ない 福島事故を忘れたのか

《福島》黒田節子(請戸川河口テントひろば共同代表)
 浪江町「請戸川河口テントひろば・学ぶ会」で
 北茨城市大津漁協裁判で闘う永山さんと鈴木さんの話を聞く

《柏崎刈羽原発》小木曽茂子(さようなら柏崎刈羽原発プロジェクト)
 7号機再稼働で惨劇が起きる前に、すべての原発を止めよう!

《首都圏》けしば誠一(反原発自治体議員・市民連盟事務局長)
 福島原発事故の責任もとれない東京電力に
 柏崎刈羽原発を動かす資格はない!

《浜岡原発》沖基幸(浜岡原発を考える静岡ネットワーク)
 静岡県知事と御前崎市長が交代して
「一番危険な原発」はどうなるか

《島根原発》芦原康江(さよなら島根原発ネットワーク)
 政治に忖度し、島根原発2号機運転差止請求を却下
 それでも私たちは諦めない!

《玄海原発》石丸初美(玄海原発プルサーマルと全基をみんなで止める裁判の会)
 玄海町「高レベル放射性廃棄物・最終処分場に関する文献調査」受入!

《川内原発》向原祥隆(反原発・かごしまネット代表)
 私たちは歩み続ける

《規制委》木村雅英(再稼働阻止全国ネットワーク)
 原子力規制委員会を責め続けて11年
 原子力規制委員会は、再稼動推進委員会・被曝強要委員会

《反原発川柳》乱鬼龍

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龍一郎揮毫
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秋のNJKF CHALLENGER若い力が試練の主要試合を担う! 堀田春樹

年齢差あるカードが多かった今回のマッチメイクは若さの勢いとベテランの意地が見られました。

初メインイベンター吉田凛汰朗はベテラン宮越慶二郎の老獪なテクニックに苦戦の敗戦。

小林亜維二は認定チャンピオン初戦を辛勝。

◎NJKF CHALLENGER 2024 / 9月15日(日)後楽園ホール17:20~21:18
主催:TAKEDAジム / 認定:NJKF

◆第10試合 64.0㎏契約3回戦

NJKFスーパーライト級チャンピオン.吉田凜汰朗(VERTEX/2000.1.31茨城県出身/63.9kg) 
26戦12勝(3KO)10敗4分
       VS
宮越慶二郎(拳粋会宮越道場/1990.1.28埼玉県出身/63.55kg)
46戦29勝(8KO)14敗2分1NC

勝者:宮越慶二郎 / 判定0-3
主審:中山宏美
副審:少白竜29-30. 宮沢29-30. 多賀谷28-30
宮越慶二郎は興行MVP

初回、パンチと上下の蹴りで様子見の両者。第2ラウンドにはパンチの距離となり、吉田凛汰朗が狙った前進の中、宮越慶二郎は3年ぶりの試合ながら動きは良く、先にクリーンヒット。

吉田は打ち返そうと狙って出るが、宮越は躱す上手さもあってクリーンヒットしない展開、多少パンチを貰っても逆に打ち返す中、ヒジ打ちもヒットさせ、ディフェンスと凌ぎ切るベテラン宮越の上手さがあった。

焦りもあったか、吉田凛汰朗の右ストレートはヒットせず、宮越慶二郎が読み切った
宮越慶二郎のカウンターパンチヒット、もどかしい吉田凛汰朗

吉田凛汰朗コメント

「宮越選手の技術で呑まれてペース完全に掴まれてしまって打ち合いに応じて行っちゃったというのが本当に一番の反省点です」。

毎度の振り、5回戦制だったらという問いには、「5回戦だったらという作戦もあると思いますが、3回戦が今回の試合なので、3ラウンドでしっかり勝負を付けなければならず、今回は本当に完敗という感じです」

話を振れば、いつも笑顔で応え、落ち込むという表情ではないが、試合からこのインタビューまでキツイ時間だっただろう。また上を目指して頑張る意気込みはしっかり持っていた吉田凛汰朗である。

宮越慶二郎のリング上でのマイクアピールでは、「最高過ぎて言葉に出ません!リング上でのこの景色見れて感無量です」と率直なコメントを残していた。

巧みなテクニックで感無量の勝利。この日のMVP獲得の宮越慶二郎とスポンサーさん

◆第9試合 ウェルター級3回戦

NJKFウェルター級チャンピオン.亜維二(=小林亜維二/新興ムエタイ/2006.2.16神奈川県出身/66.55kg)11戦7勝(3KO)3敗1分 
        VS
シュートボクシング日本ウェルター級チャンピオン.奥山貴大(SPORTS/GSB/1994.3.14愛知県出身/66.5kg)24戦17勝(6KO)7敗 

勝者:亜維二 / 判定3-0
主審:児島真人
副審:少白竜28-27. 宮沢28-27. 中山28-27

初回、蹴りからパンチの様子見ながら次第に距離が近くなる打ち合いに移り、第2ラウンド終盤には打ち合いから奥山貴大の左右フックで亜維二はノックダウン喫してしまう。

第3ラウンド開始早々には奥山の左フックと亜維二の右ヒジ打ちでダブルノックダウンになりかけるも奥山貴大のみのノックダウンとなり、亜維二が巻き返した流れから蹴りを加えた打ち合いの激しい攻防で終了。

亜維二の長身を活かした左ミドルキックヒット
ダブルノックダウン気味も亜維二はすぐ立ち上がり、奥山貴大はダメージあるノックダウンとなった

亜維二コメント

「率直な感想としては、本当にまずは勝てて良かったというのがあって、ダウン取られた時は、やっぱり相手もタフな選手なので、“うわー、取り返すのキツ~!”と思いながら立ち上がったんですけど、最後は取り返せて良かったです。反省点はもっと攻撃纏めたり、ガードもしっかりしないとこれが自分の短所なので、もっと自分の短所削って長所を伸ばして、皆に安心して楽しく観せられるようにしていきたいです。“いい試合だったけど・・・”と後に欠点が付くので“だったけど”が無くなるようにしたいですね。」と反省の言葉だった。

◆第8試合 64.0㎏契約3回戦

WBCムエタイ日本スーパーライト級2位.健太(E.S.G/1987.6.26群馬県出身/ 63.65kg)
121戦68勝(21KO)45敗8分
 
         VS
シュートボクシング日本ライト級2位.基山幹太(BELLWOOD FIGHT TEAM/ 2001.12.24/兵庫県出身/64.0kg)22戦13勝(1KO)8敗1分 
引分け 0-1
主審:多賀谷敏朗
副審:児島29-29. 宮沢29-30. 中山29-29

パンチと蹴りの攻防。スピードはやや基山寛太にあり、ベテラン健太の返し技の上手さが光った。最終第3ラウンド終盤には、健太がアグレッシブに打ち合いに出るインパクトを残すが、第1ラウンドが互角以外、ジャッジ三者の採点が分かれるラウンドが続いて、振り分け難い展開でもあった。

基山寛太の右ストレートが健太の顔面を捉える
引分けとなった基山寛太と健太

◆第7試合 第14代NJKFフライ級王座決定戦 5回戦

1位.谷津晴之(新興ムエタイ/ 2003.5.7神奈川県出身/50.65kg)20戦10勝(4KO)5敗5分
        VS
2位.西田光汰(西田/ 2001.2.13愛知県出身/50.65kg)10戦7勝2敗1分
引分け
三者三様
主審:少白竜
副審:児島49-48. 多賀谷48-49. 中山49-49 (延長戦は三者とも9-10)
西田光汰を王座認定、公式記録は引分け

初回からパンチと蹴りの攻防。首相撲の展開もありスピーディーな互角の攻防が続くが、決定打は無く主導権支配するには至らない両者。

第4ラウンドには西田光汰のヒジ打ちで谷津晴之の左頬がカットされる。第3ラウンド以降はジャッジ三者が揃う採点は無く、三者三様の引分けによりチャンピオンを決める為の延長非公式戦が行われ、微妙ながら西田の勢いが優った。

多彩に打ち合った両者。西田光汰の右ストレートヒット
谷津晴之の右ミドルキックヒット、互角の攻防が続いた
西田ジム会長の父親にチャンピオンベルト巻いて応援団に挨拶する西田光汰

◆第6試合 59.0㎏契約3回戦

NJKFフェザー級4位.新人(E.S.G/35歳/58.7kg)43戦23勝(5KO)18敗2分
        VS
NJKFスーパーフェザー級5位.麻太郎(健心塾/22歳/59.0kg)18戦9勝(1KO)8敗1分
勝者:麻太郎 / 判定0-3
主審:宮沢誠
副審:少白竜28-30. 多賀谷28-30. 中山27-30

打撃の攻防は若い麻太郎のパンチとハイキックの攻勢力が優った。

◆第5試合 フライ級3回戦

永井雷智(VALLELY/17歳/50.8kg)5戦4勝(3KO)1分
      VS
藤原将裕(マイウェイスピリッツ/30歳/50.45kg)6戦3勝3敗 
勝者:永井雷智 / KO 1ラウンド2分17秒 / 3ノックダウン
主審:児島真人

永井雷智はアグレッシブにストレートパンチでノックダウンを奪い、藤原将裕も少々蹴り返して頑張ったが永井雷智が3ノックダウンを奪って完勝となった。

◆第4試合 58.0㎏契約3回戦

和斗(大和/26歳/57.95kg)7戦4勝(2KO)3敗
       VS
蹴橙(クローバー/25歳/57.85kg)3戦2勝(2KO)1敗 
勝者:和斗 / 判定3-0 (30-27. 30-27. 30-27)

◆第3試合 スーパーウェルター級3回戦

風成(エス/27歳/69.4kg)4戦2勝(1KO)1敗1NC
      VS
須藤雅人(OGUNI/26歳/69.55kg)1戦1敗
勝者:風成
/ KO 2ラウンド2分3秒 / 3ノックダウン

初回、蹴りからパンチでリズムを掴んだ風成が連打でノックダウンを奪い、第2ラウンドにも右フックで3度ノックダウンを奪って圧勝。

◆第2試合 フライ級3回戦

手塚瑠唯(VERTEX/17歳/50.55kg)3戦1勝(1KO)2敗
      VS
植田琥斗(E.S.G/18歳/48.95kg)1戦1勝 
勝者:植田琥斗 / 判定0-3 (28-30. 28-30. 28-30)

◆プロ第1試合 女子(ミネルヴァ)フライ級3回戦(2分制)

ミネルヴァ・スーパーフライ級9位.芳美(OGUNI/ 50.4kg)41戦11勝(2KO)27敗3分
       VS
堀田優月(闘神塾/15歳/50.3kg)2戦2勝
勝者:堀田優月 / 判定0-3 (28-30. 27-30. 27-30)

◆アマチュア2. OVER40 60kg級2回戦(2分制)

幸島秀之(サンライズ)vsアニマルタケ王(D-BLAZE)
勝者:アニマルタケ王 / RSC 1ラウンド1分53秒

◆アマチュア1. (ジュニア部門)EXPLOSION 2回戦(90秒制)

佐藤陽平(TAKEDA)vs太田善(エス)
勝者:佐藤陽平 / KO 1ラウンド54秒 / 2ノックダウン制

《取材戦記》

今回はCHALLENGER 5という表記でした。5回目でしたっけ?

武田幸三氏はセレモニーで「2月、4月、6月と来て今回が4回目!」と意識してか知らずか、御挨拶の中でそんな言い回しがありました。関西は「NJKF west 1」から予定の「west 5」まで発表されているので混合はしていないでしょう。今回は4回目でした。

盛り上がりはしたが、厳しい立場を残したメインイベントとセミファイナル。
プロモーター武田幸三氏は、
「自分も一切忖度しないでマッチメイクするので、まあそれが上に行く為の手段と思うので、毎回冒険で、今回はいい薬になりましたね。まだまだ本当に努力しなきゃいけないし、やらなきゃいけないことが沢山ありますが、現在地がようやく分かりましたね。」と語った。

プロモーターとしての現在地、選手らの現在地。停滞する場合もありながら、日本のトップ団体にする為の努力がこれからも続きます。

亜維二vs奥山貴大戦は第3ラウンドにダブルノックダウンが起こった。厳密には亜維二は軽いヒットのフラッシュダウン。奥山貴大は効いて倒れたノックダウン。レフェリーによってはダブルノックダウンとした判断もあっただろう。フラッシュダウンはすぐ立てばノックダウン扱いはしない現在の風潮で、これは勝敗の運命決める裁定。試合後に「あれダブルノックダウンじゃなかった?」と聞いてくるジム関係者も居て、物議を醸す問題ではないが、想定しておくべき事案でしょう。

プロボクシングJBCは起こり得る想定は毎度ミーティングしているということです。

「5回戦だったら」という振りを使う場合がありますが、それは3回戦制での試合後の「あと2ラウンド延長されていたら」という意味ではなく、契約時から5回戦という意味で、その想定での練習、スタミナ配分があります。吉田凛汰朗や亜維二の試合も5回戦だったらもっと戦略が幾つも複雑になっていたかもしれません。それがプロ選手の総合力が見られる長丁場の戦いです。

NJKF CHAKKENGER 5回目は11月10日(日)に後楽園ホールに於いて「55kg級JAPAN CUP 1st」8人トーナメント初戦、嵐vs壱世センチャイジム決定済を含む主要4試合を中心に行われます。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
昭和のキックボクシングから業界に潜入。フリーランス・カメラマンとして『スポーツライフ』、『ナイタイ』、『実話ナックルズ』などにキックレポートを寄稿展開。タイではムエタイジム生活も経験し、その縁からタイ仏門にも一時出家。最近のモットーは「悔いの無い完全燃焼の終活」

今こそ、鹿砦社の雑誌!!

◎『紙の爆弾』 amazon https://www.amazon.co.jp/dp/B0DG578D28/
◎『季節』 amazon https://www.amazon.co.jp/dp/B0DB1GZ5CM/

来年6月の「原発推進法(GX束ね法)」完全施行を阻止し、「原発依存社会」へ暴走する自公政権を止める運動を! 木原壯林(老朽原発うごかすな! 実行委員会)

◆老朽原発依存経営の泥沼にのめりこむ関西電力

能登半島地震は、原発は地震に脆く、地震に伴って過酷事故が起これば、避難も屋内退避も困難を極めることを再認識させました。

地震は「いつ、どこで、どの規模で発生するか」予知できません。8月8日の日向灘地震以降、南海トラフ巨大地震発生の可能性が高まったとされています。南海トラフ巨大地震が起これば、連動して、各地の断層が動くとも考えられます。地震多発国に、原発はあってはなりません。

それでも、「原発依存社会」へ暴走する自公政権は、原発推進法(「GX束ね法」)の実態化のために、「原発・再エネの最大限活用」を進めるとする第7次エネルギー基本計画の策定を進めています。既存原発の再稼働、40年超え運転をさらに進め、60年超え運転も拡大し、原発建て替え、新設も俎上に上らせようとしています。

一方、老朽原発依存経営の泥沼にのめりこむ関電は、本年5月、原子力規制委員会から高浜3、4号機の20年間運転延長の認可を得ました。ウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料を使用する原発の40年超え運転は初めてです。これで、来年には、関電の稼働可能な原発7基の内の5基が40年超え運転となります。老朽原発では、交換不可能な圧力容器の脆化が進み、点検や交換が難しい配管、送電ケーブルの損傷も進んでいます。

◆使用済み核燃料の乾式貯蔵が孕む2つの問題

ところで、原発を動かすと使用済み核燃料が発生しますが、発生直後の使用済み核燃料は、膨大な放射線と熱を発しますから、燃料プールで水冷保管しなければなりません。そのプールが今、満杯になろうとしています。満杯になれば原発を運転できなくなるため、電力会社や政府は、放射線量と発熱量が減少した使用済み核燃料を乾式貯蔵に移して、プールに空きを作ることに躍起です。

ところが、乾式貯蔵には2つの問題があります。一つは、乾式貯蔵に移すことによって出来たプールの空間に、高放射線、高発熱の新しい使用済み核燃料を入れた場合、そのプールが崩壊すれば、大惨事に至ることです。

もう一つは、乾式貯蔵に移した使用済み核燃料の行き場がないことです。関電や政府は、行き場として青森県の核燃料再処理工場の稼働を願望していましたが、8月23日、日本原燃は27回目の目の再処理工場完成延期を発表しました。再処理工場が完成する見通しはありませんから、使用済み核燃料は行き場を失ったことになります。危険極まりなく、行き場もない使用済み核燃料の発生源・原発は全廃しなければなりません。

自公政権が、数を頼んで成立させた「原発推進法(GX束ね法)」は、関連法の整備が必要であるため、60年運転に関わる部分などは未だ施行されていません。完全施行は来年6月といわれています。脱原発を求める市民の行動が拡大すれば、骨抜きに出来、実行不能に追い込むことも出来ます。今が私たちの正念場です。目に見え、耳に聞こえる行動に起ちましょう!

※第118回「老朽原発うごかすな!実行委員会」実務担当者会議案内より抜粋転載

▼木原壯林(きはら・そうりん)
老朽原発うごかすな! 実行委員会。1967年京都大学理学部化学科卒。理学博士。専門は分析化学、電気化学、溶液化学。熊本大学、京都工芸繊維大学名誉教授等を歴任。京都悠悠化学研究所主宰。

〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌『季節』2024年夏・秋合併号《創刊10周年記念特集》どうすれば日本は原発を止められるのか


◎『季節』創刊10周年特別企画『脱(反)原発のための季節セレクション』(仮)
出版のためのクラウドファンディングご支援のお願い

https://readyfor.jp/projects/kisetu_nonukes

『季節』2024年夏・秋合併号(NO NUKES voice 改題)
A5判 148ページ(本文144ページ+巻頭カラー4ページ) 定価880円(税込み)
お陰様で10周年を迎えました!
《グラビア》
「幻の珠洲原発」建設予定地 岩盤隆起4メートルの驚愕(写真=北野 進
「さよなら!志賀原発」金沢集会(写真=Kouji Nakazawa

《創刊10周年記念特集》どうすれば日本は原発を止められるのか

《報告》小出裕章(元京都大学原子炉実験所助教)
 原子力からこの国が撤退できない理由

《報告》樋口英明(元福井地裁裁判長)
 なぜ日本は原発をやめなければならないのか

《報告》井戸謙一(元裁判官/弁護士)
 事実を知り、それを人々に伝える

《報告》山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)
 核武装に執着する者たち

《報告》後藤政志(元東芝・原子力プラント設計技術者)
 課題は放置されたまま

《報告》森松明希子(原発賠償関西訴訟原告団代表)
 原発被害の本質を知る

《インタビュー》北野 進(「志賀原発を廃炉に!訴訟」原告団団長)
 珠洲原発・建設阻止の闘いは、民主主義を勝ち取っていく闘いだった

《対談》鎌田 慧(ルポライター)×柳田 真(たんぽぽ舎共同代表)
 東京圏の反原発 ── これまでとこれから

《報告》今中哲二(京都大学複合原子力科学研究所研究員)
「核融合発電」蜃気楼に足が生え

※          ※          ※

《回想》松岡利康(鹿砦社代表)
 創刊から10周年を迎えるまでの想い出

《墓碑銘》松岡利康(鹿砦社代表)
 お世話になりながら途上で亡くなった方への追悼記

《季節創刊10周年応援メッセージ》

 菅 直人(衆議院議員・元内閣総理大臣)
 守りに入らず攻めの雑誌を

 中村敦夫(作家・俳優)
 混乱とチャンス  

 中嶌哲演(明通寺住職)
「立地地元」と「消費地元」の連帯で〈犠牲のシステム〉を終わらせる

 水戸喜世子(「子ども脱被ばく裁判の会」共同代表)
『季節』丸の漕ぎ手をふやして、一刻も早く脱原発社会を実現しよう

 山崎隆敏(元越前市議)
「核のゴミ」をこれ以上増やさないために

 今野寿美雄(「子ども脱被ばく裁判」原告代表)
 裁判も出版も「継続は力なり」

 あらかぶ(「福島原発被ばく労災損害賠償裁判」原告)
 隠された「被ばく労働」問題を追及し、報じてほしい

※          ※          ※

《報告》なすび(被ばく労働を考えるネットワーク)
《検証》あらかぶさん裁判 原発被ばく労働の本質的問題 

《報告》北村敏泰(ジャーナリスト)
 棄民の呻きを聞け 福島第一原発事故被害地から

《講演》和田央子(放射能ゴミ焼却を考えるふくしま連絡会)
「復興利権」のメガ拠点 「福島イノベーション・コースト構想」の内実〈前編〉

《報告》平宮康広(元技術者)
 水冷コンビナートの提案〈1〉

《報告》原田弘三(翻訳者)
 COP28・原発をめぐる二つの動き
「原発三倍化宣言」と「気候変動対策のための原発推進」合意

《報告》三上 治(「経産省前テントひろば」スタッフ)
 総裁選より、政権交代だ

《報告》板坂 剛(作家/舞踊家)
   タイガー・ジェット・シンに勲章! 問われる悪役の存在意義

《報告》山田悦子(甲山事件冤罪被害者)
   山田悦子の語る世界〈24〉
   甲山事件50年を迎えるにあたり
   誰にでも起こりうる予期せぬ災禍にどう立ち向かうか(下)

《報告》大今 歩(高校講師・農業)
   洋上風力発電を問う 秋本議員収賄事件を受けて

《報告》再稼働阻止全国ネットワーク
 時代遅れの「原発依存社会」から決別を!
 政府と電力各社が画策する再稼働推進の強行をくい止める

《老朽原発》木原壯林(老朽原発うごかすな!実行委員会)
 6・9大阪「とめよう!原発依存社会への暴走大集会」に1400人超が結集

《女川原発》舘脇章宏(みやぎ脱原発・風の会)
 女川原発の再稼働はあり得ない 福島事故を忘れたのか

《福島》黒田節子(請戸川河口テントひろば共同代表)
 浪江町「請戸川河口テントひろば・学ぶ会」で
 北茨城市大津漁協裁判で闘う永山さんと鈴木さんの話を聞く

《柏崎刈羽原発》小木曽茂子(さようなら柏崎刈羽原発プロジェクト)
 7号機再稼働で惨劇が起きる前に、すべての原発を止めよう!

《首都圏》けしば誠一(反原発自治体議員・市民連盟事務局長)
 福島原発事故の責任もとれない東京電力に
 柏崎刈羽原発を動かす資格はない!

《浜岡原発》沖基幸(浜岡原発を考える静岡ネットワーク)
 静岡県知事と御前崎市長が交代して
「一番危険な原発」はどうなるか

《島根原発》芦原康江(さよなら島根原発ネットワーク)
 政治に忖度し、島根原発2号機運転差止請求を却下
 それでも私たちは諦めない!

《玄海原発》石丸初美(玄海原発プルサーマルと全基をみんなで止める裁判の会)
 玄海町「高レベル放射性廃棄物・最終処分場に関する文献調査」受入!

《川内原発》向原祥隆(反原発・かごしまネット代表)
 私たちは歩み続ける

《規制委》木村雅英(再稼働阻止全国ネットワーク)
 原子力規制委員会を責め続けて11年
 原子力規制委員会は、再稼動推進委員会・被曝強要委員会

《反原発川柳》乱鬼龍

◎amazon https://www.amazon.co.jp/dp/B0DB1GZ5CM/

◎鹿砦社 https://www.rokusaisha.com/kikan.php?bookid=000748

龍一郎揮毫
私たちは唯一の脱原発雑誌『季節』を応援しています!

《新刊案内》『LGBT異論 キャンセル・カルチャー、ジェンダー論争、巨大利権の行方』女性スペースを守る諸団体と有志の連絡会=編著 9月28日発売‼

オウムに殺されかけながらもカルトとの闘いを続ける滝本太郎弁護士、我が国を代表する現代フランス文学研究家・堀茂樹慶應義塾大学名誉教授、フェミニズム研究の第一線で闘う千田有紀武蔵大学教授、ご存知作家森奈津子らを中心として多様な言論・主張をまとめた『LJBT異論』が9月28日に発売の運びとなりました。ぜひご予約を!

※               ※               ※

『LGBT異論 キャンセル・カルチャー、ジェンダー論争、巨大利権の行方』
女性スペースを守る諸団体と有志の連絡会=編著
 

A5判 164ページ(本文160ページ+カラーグラビア4ページ) 
   定価990円(税込み)  
   紙の爆弾10月号増刊 9月28日発売

 

【内容】
1: [対談] 堀茂樹×滝本太郎 世界を席捲する新たなカルト=「性自認」思想の現在
2: 千田有紀 フェミニズムの再生を求めて
3: 井上恵子 東京大学三浦俊彦教授の記事に対する東京大学関係教員有志声明の批判──その問題点
4: 杉島幸生 『トランスジェンダーになりたい少女たち』から考える
5: キャロライン・ノーマ オーストラリアにおけるジェンダーイデオロギーから子供たちを救おうとする私の妹の闘い
6: 滝本太郎 LGBT理解増進法について
7: 滝本太郎 前提として知っておきたいこと
8: 滝本太郎 2つの考え方の図
9: 三浦俊彦 LGBT支援のための前提条件
10: 森奈津子 男性器つき女性を誕生させたい政治家たち
11: 滝本太郎 性自認主義の進展──特例法について司法の状況
12: 玉置祐道 女性スペースの管理と法律の現状と問題点
13: 益田早苗 LGBTQ当事者の子育て:子どもの安定した生活と最善の利益を守る
14: 郡司真子 学校で危ない性教育?
15: 滝本太郎 性自認至上主義は、カルト的な思想運動である
16: 斉藤佳苗 『LGBT問題を考える』を出版して

 

洋上風力発電を問う 秋本議員収賄事件を受けて〈前編〉洋上風力発電そのものへの疑問 大今 歩

◆洋上風力発電をめぐる収賄事件

昨年9月27日、自民党の再生エネルギー普及拡大議員連盟(以下、再エネ議連)の事務局長である秋本真利衆議院議員が、洋上風力発電をめぐる収賄容疑で起訴された(自民党を離党)。

すでに贈賄により起訴された「日本風力開発」の塚脇正幸前社長の便宜を図る国会質問の見返りに、前社長から計7,286万円の賄賂を受け取った。

例えば2022年2月17日、秋本議員は国会で公募基準の見直し(運転開始の時期を評価するなど)を求めた。同年10月27日、秋本議員の質問に沿った「新公募基準」が公開されると、その翌日、前社長から1,000万円を受領したという。

このような収賄をめぐる秋本氏の疑惑には、再エネ議連の顧問で秋本氏が「おやじ」と呼んでいた菅義偉前首相、「兄貴」と呼んでいた河野太郎衆議院議員(現デジタル相)、さらに当時、経産相だった萩生田光1氏の関与も疑われる(「赤旗」日曜版2023年8月27日号)。

まず2021年12月24日、秋田県や千葉県の洋上風力発電の公募(いわゆる第1ラウンド)で、三菱商事を中心とする企業連合がすべて落札して「日本風力開発」などは失注した。

これについて菅前首相は入札の報告に来た経産省のエネルギー庁長官・保坂伸氏を長時間にわたり詰問した(前掲「赤旗」)。

また、萩生田元経産相は2022年1月7日、「他のプロジェクトの人たちにも今後参加しやすいような仕組みを検討しようと思っている」と記者会見で発言した。秋本氏の質問(2月17日)以前に入札の「仕組み」見直しを言及しているのである。そして萩生田氏は3月18日、入札の評価基準を見直すため、第2ラウンドの入札の締め切りを延長すると表明した(前掲「赤旗」)。

さらに河野氏は、「新公募基準」の公表について、同日(10月27日)ツイッター(現X)で「秋本真利代議士や柴山昌彦代議士(再エネ議連会長)のファイン・プレー」と賞賛した(前掲「赤旗」)。

秋本氏が事務局長を務める自民党再エネ議連には100名を超える議員が名を連ねているが、これらの議員の動きにも疑いの目を向けなければならない。GX基本方針に群がる企業・政治家2020年9月、菅前首相は所信表明演説で「2050年までに国内の温室効果ガス排出などを実質ゼロにする」と宣言した。そして、政府は昨年2月、 「GX(脱炭素)に関する基本方針」として、今後10年間に150兆円、そのうち再エネ拡大に20兆円を支出する、とした。このような巨額の資金に企業が群がり、その企業から政治家が甘い汁を吸う。

秋本氏は自民党内で原発の再稼働には反対して、「脱炭素」を推進するため、再エネ発電(特に洋上風力発電)普及を目指すべきだと唱えてきた(秋本真利『自民党発!「原発のない国へ」宣言2050年カーボンニュートラル実現に向けて』東京新聞2020年)。「脱原発派」(共産党なども含む)にも根強い「再エネ100%」という主張が秋本氏に活躍の場を与え、収賄につながった。

◆洋上風力発電そのものへの疑問

しかし、洋上風力発電そのものへの疑問をマスコミは取り上げない。また、「脱原発」を唱える人々の反応にも鈍い。例えば大島堅一・龍谷大学教授は次のように述べる。

「洋上風力発電は脱炭素社会を目指す上で主力電源となる可能性を秘めている。(中略)この事件だけをもって普及がストップするのも問題だ。事件と洋上風力発電推進は別物と考えるべきだろう」(2023年9月8日付け京都新聞)

しかし、本当に「事件と洋上風力発電推進は別物」なのか。脱炭素政策の根拠とされるIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の評価報告書については、これまで世界各国の科学者から様々な批判や異論が提起されてきたが、特に注目されるのが2019年に発表された「世界気候宣言──気候危機は存在しない」(以下「宣言」 )である。

シンクタンクのクリンテル(CLINTEL= Climate Intelligence)が集約し、今年1月現在60以上の国・地域の1800名以上の科学者が署名している。

日本でも田中博・元筑波大教授(気象学・大気科学専攻)ら6名が加わっている。

「自然は人為的要因と同様に温暖化を引き起こす」 「地球温暖化は自然災害を増大させてはいない」などというものである(近藤邦明HP「World Climate Declaration『世界気候宣言』をどう読むか」)。

昨年8月にはノーベル物理学賞(2022年)を受賞したジョン・F・クラウザー博士もこの宣言に署名したことがインターネット上では話題になった。

しかし「気候危機」を煽る日本のマスメディアはこの「宣言」を全く取り上げない。

「人為的CO2温暖化説」 「気候変動」が疑わしいとすれば、 「脱炭素」政策自体が無意味である。また仮に「脱炭素」が必要だとしても、洋上風力発電については巨大な風車製作、設置工事、バックアップの火力発電の建設(出力変動が激しいため)などを含めれば、CO2(化石燃料)削減になるかも疑わしい。

しかも、洋上という常に潮風に吹かれ、台風という短期的に極めて厳しい負荷のかかる環境下では、劣化が激しく発電コストは著しく上昇することになる(近藤邦明HP「エネルギー問題・脱炭素社会について考える③」)。事実、「福島復興事業」として東京大学や新日鉄などが参加して鳴り物入りで建設した福島県の浮体式洋上風力発電のうち、世界最大級の直径167㍍の風車は2018年十月に撤去が決まった。設備利用率が3%止まりで不具合が頻発したためだという(2019年3月15日付け日本経済新聞)。(つづく)

本稿は『季節』2024年夏・秋号(2024年8月5日発売号)掲載の同名記事を本通信用に再編集した全2回の連載記事です。

▼大今 歩(おおいま・あゆみ)
高校講師・農業。京都府福知山市在住

〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌『季節』2024年夏・秋合併号《創刊10周年記念特集》どうすれば日本は原発を止められるのか


◎『季節』創刊10周年特別企画『脱(反)原発のための季節セレクション』(仮)
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『季節』2024年夏・秋合併号(NO NUKES voice 改題)
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《報告》小出裕章(元京都大学原子炉実験所助教)
 原子力からこの国が撤退できない理由

《報告》樋口英明(元福井地裁裁判長)
 なぜ日本は原発をやめなければならないのか

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 事実を知り、それを人々に伝える

《報告》山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)
 核武装に執着する者たち

《報告》後藤政志(元東芝・原子力プラント設計技術者)
 課題は放置されたまま

《報告》森松明希子(原発賠償関西訴訟原告団代表)
 原発被害の本質を知る

《インタビュー》北野 進(「志賀原発を廃炉に!訴訟」原告団団長)
 珠洲原発・建設阻止の闘いは、民主主義を勝ち取っていく闘いだった

《対談》鎌田 慧(ルポライター)×柳田 真(たんぽぽ舎共同代表)
 東京圏の反原発 ── これまでとこれから

《報告》今中哲二(京都大学複合原子力科学研究所研究員)
「核融合発電」蜃気楼に足が生え

※          ※          ※

《回想》松岡利康(鹿砦社代表)
 創刊から10周年を迎えるまでの想い出

《墓碑銘》松岡利康(鹿砦社代表)
 お世話になりながら途上で亡くなった方への追悼記

《季節創刊10周年応援メッセージ》

 菅 直人(衆議院議員・元内閣総理大臣)
 守りに入らず攻めの雑誌を

 中村敦夫(作家・俳優)
 混乱とチャンス  

 中嶌哲演(明通寺住職)
「立地地元」と「消費地元」の連帯で〈犠牲のシステム〉を終わらせる

 水戸喜世子(「子ども脱被ばく裁判の会」共同代表)
『季節』丸の漕ぎ手をふやして、一刻も早く脱原発社会を実現しよう

 山崎隆敏(元越前市議)
「核のゴミ」をこれ以上増やさないために

 今野寿美雄(「子ども脱被ばく裁判」原告代表)
 裁判も出版も「継続は力なり」

 あらかぶ(「福島原発被ばく労災損害賠償裁判」原告)
 隠された「被ばく労働」問題を追及し、報じてほしい

※          ※          ※

《報告》なすび(被ばく労働を考えるネットワーク)
《検証》あらかぶさん裁判 原発被ばく労働の本質的問題 

《報告》北村敏泰(ジャーナリスト)
 棄民の呻きを聞け 福島第一原発事故被害地から

《講演》和田央子(放射能ゴミ焼却を考えるふくしま連絡会)
「復興利権」のメガ拠点 「福島イノベーション・コースト構想」の内実〈前編〉

《報告》平宮康広(元技術者)
 水冷コンビナートの提案〈1〉

《報告》原田弘三(翻訳者)
 COP28・原発をめぐる二つの動き
「原発三倍化宣言」と「気候変動対策のための原発推進」合意

《報告》三上 治(「経産省前テントひろば」スタッフ)
 総裁選より、政権交代だ

《報告》板坂 剛(作家/舞踊家)
   タイガー・ジェット・シンに勲章! 問われる悪役の存在意義

《報告》山田悦子(甲山事件冤罪被害者)
   山田悦子の語る世界〈24〉
   甲山事件50年を迎えるにあたり
   誰にでも起こりうる予期せぬ災禍にどう立ち向かうか(下)

《報告》大今 歩(高校講師・農業)
   洋上風力発電を問う 秋本議員収賄事件を受けて

《報告》再稼働阻止全国ネットワーク
 時代遅れの「原発依存社会」から決別を!
 政府と電力各社が画策する再稼働推進の強行をくい止める

《老朽原発》木原壯林(老朽原発うごかすな!実行委員会)
 6・9大阪「とめよう!原発依存社会への暴走大集会」に1400人超が結集

《女川原発》舘脇章宏(みやぎ脱原発・風の会)
 女川原発の再稼働はあり得ない 福島事故を忘れたのか

《福島》黒田節子(請戸川河口テントひろば共同代表)
 浪江町「請戸川河口テントひろば・学ぶ会」で
 北茨城市大津漁協裁判で闘う永山さんと鈴木さんの話を聞く

《柏崎刈羽原発》小木曽茂子(さようなら柏崎刈羽原発プロジェクト)
 7号機再稼働で惨劇が起きる前に、すべての原発を止めよう!

《首都圏》けしば誠一(反原発自治体議員・市民連盟事務局長)
 福島原発事故の責任もとれない東京電力に
 柏崎刈羽原発を動かす資格はない!

《浜岡原発》沖基幸(浜岡原発を考える静岡ネットワーク)
 静岡県知事と御前崎市長が交代して
「一番危険な原発」はどうなるか

《島根原発》芦原康江(さよなら島根原発ネットワーク)
 政治に忖度し、島根原発2号機運転差止請求を却下
 それでも私たちは諦めない!

《玄海原発》石丸初美(玄海原発プルサーマルと全基をみんなで止める裁判の会)
 玄海町「高レベル放射性廃棄物・最終処分場に関する文献調査」受入!

《川内原発》向原祥隆(反原発・かごしまネット代表)
 私たちは歩み続ける

《規制委》木村雅英(再稼働阻止全国ネットワーク)
 原子力規制委員会を責め続けて11年
 原子力規制委員会は、再稼動推進委員会・被曝強要委員会

《反原発川柳》乱鬼龍

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核武装に執着する者たち〈2〉開き直ったかのような日本政府の「核武装オプション論」 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)

◆何の利点もない「核燃料サイクル政策」

使用済燃料再処理・廃炉推進機構によると、日本原燃が建設中の再処理工場の建設費について、約4,000億円増額の約15.1兆円に達した。変動した要因は、新規制基準対応に係る検討、円安やインフレなどの経済指標などの反映、規制への対応や安定操業について追加対策を行ったこと、核燃料税などの税負担の反映などとしている。

また、敷地内に建設中のMOX燃料加工工場についても約200億円増の約2・43兆円となった。6月21日に発表した。

再処理事業は、膨大な放射性廃棄物を生み出す。これがどれほどのものかを知る方法がある。福島第一原発の現状を直視することだ。

現在、福島第一原発では、デブリと呼ばれる放射性廃棄物の取り扱いをめぐり極めて困難な状況が生じている。これをわずか1グラム取り出す計画すら、何年も停滞し続けている。デブリとは溶けた核燃料が制御棒や構造物やコンクリート材と混じり合って生じた高放射性物質の塊で、使用済燃料を再処理して生成される高レベル放射性廃棄物とプルトニウムとウランを混ぜたような存在だ。

デブリの取り扱いができないのだから、再処理工場で事故が起きた際に流出する可能性がある高レベル放射性廃棄物も手に負えないことは自明である。

東海再処理工場では、こうした高レベル放射性廃棄物が液体で372立方メートルも存在し、そのほかガラス固化体も354本貯蔵している。地震や津波などの災害、航空機落下などの事故や軍事攻撃を受けた場合のリスクは巨大だ。毎年数百億円もの規模で維持管理、廃止措置費用がかかっている。

これらは税金でまかなわれている。このような再処理事業を、一体何のために行ってきたのか、そしてさらに巨大な六ヶ所村再処理工場も建設中で、いずれ稼働することになっている。そのために「再処理拠出金(以前は引当金)」が徴収されている。事実上の税金であり、もちろん電気料金に付加されて徴収されている。概ね核燃料1グラム当たり700円程度である。100万キロワット級原発で1基あたり30トンほどの燃料が装荷されているから、単純計算で210億円である。

しかしこの程度の費用で済むとは考えられない。実際には遙かに大きな費用がかかる。再処理工場の稼働率が極めて低いことも考慮するならば、足りない分は税金を使って補填するしかない。

現状では残される廃棄物、高レベル放射性廃棄物ガラス固化体やそれ以外の高レベル放射性廃棄物である燃料パーツ類などの金属残渣、そのほかにも除染により生じた廃棄物など、高い放射線を出す廃棄物類は、どのように処理・処分するのかも決まっていない。

◆今や隠さなくなった「核武装」のための原子力

原子力開発を巡っては、震災以前までは「平和利用」の名の下で「日本は核武装するとの謂れなき中傷」や「謂れのない国際的な疑惑」といった反論が席巻していた。震災後、原子力開発に急ブレーキがかかったところから、まるで開き直ったかのように政治家などから次々に「原子力をやめてしまったら国防上大きな問題を引き起こす」「潜在的核兵器開発能力が失われる」などと主張するものが現れる。つまり 「疑惑」でも「中傷」でもなく、明確に核武装を志向して実施されてきた核開発が厳然と存在したことを意味する。

開き直ったかのような「核武装オプション論」は、アジア諸国を強烈に刺激する。2013年、韓国では以前からくすぶっていた米国のダブルスタンダードへの反発が顕著になる。日米原子力協定において核武装国以外で唯1認めた「核燃料サイクル政策」についての懸念である。

再処理工場はプルトニウムを取り出すためには欠かせない施設だ。世界中で核兵器国以外で保有している国はない。日本が東海村に東海再処理工場を建設し始めた頃に、ジミー・カーター大統領(当時)が待ったをかけた。日米原子力協定においては核燃料はもとより、軽水炉についても米国から導入し、米国の技術で造られたものである。米国はこれに制限をつけており、平和利用以外の目的で利用しようとしたら差し止める権利を留保している。

事実上、米国の許可がなければ原発の建設も運転も、再処理工場の建設もできない。カーターは東海再処理工場の運転を差し止めようとした。これに猛烈に抵抗したのが日本政府である。様々な条件を受け入れながらも、再処理事業を実現することだけに固執し続けた。結果、1977年から1999年まで運転を続け、合計1140トンの使用済燃料の再処理を行い、その後の六ヶ所再処理工場計画も米国に認めさせている。

韓国は2014年に改訂された米韓原子力協力協定でオバマ大統領に対してウラン濃縮と再処理を認めさせようとした。結果は失敗に終わるが、これは日本の原子力政策に強く影響を受けたものであることは確かだろう。

中核施設は高速炉の再処理工場ここまでは軽水炉、日本で1般的な原発である沸騰水型軽水炉と加圧水型軽水炉(合わせて軽水炉という)の燃料再処理について触れてきたが、過去に、そして今も日本が重要視しているのは高速炉の燃料再処理技術である。

現在、廃炉作業中の高速「増殖」原型炉「もんじゅ」は、1995年に発生したナトリウム火災事故に起因し、計画が頓挫したまま震災後の2016年に廃炉が決定した。運転した期間はわずか4ヶ月たらずだった。掛かった費用は本体建設だけで1兆2000億円、今後も約4000億円かけて廃炉にする計画だ。

この高速炉、原子力基本計画上の位置づけは「次世代炉」であり、言い換えるならばプルトニウムを消費しながら生産することが目的の原子炉だ。軽水炉の燃料を再処理して取り出したプルトニウムを高速炉の炉心燃料として装荷し、 周囲に「ブランケット燃料」(毛布のように炉心を覆うことからついた名称)に中性子を照射してプルトニウムを生産する。このプルトニウムをまた高速炉の燃料として使用すれば、1種の「循環」ができることから、核燃料のリサイクルが出来るとしていた。

実際には高速炉燃料のうち、炉心燃料の再処理は極めて困難であり、現実にはブランケット燃料の再処理だけが実用化される見通しだった。そのためにリサイクル燃料試験施設(RETF)という再処理施設を東海村に建設中だ。

RETFは高速炉のブランケット燃料からプルトニウムを取り出す再処理の技術開発を目的に計画され、約817億円を投じて2000年に地上6階、地下2階の建物を造った。しかし「もんじゅ」が廃炉になった今、建物だけが存在し中身である再処理設備は取り付けられていない。

三菱重工業が米国から提供された技術で製造することになっているが、使うあてのないものをさらに巨額の費用を投じて造る理由がないため、がらんどうのまま建物だけが建っている異常な状況である。

もちろん、国は諦めていないから、こうした中途半端な中断状態でも設備建設を続行する計画だ。というのは、ブランケット燃料体は「もんじゅ」だけでなく、茨城県大洗町にある高速増殖実験炉「常陽」にも残されている。これらを再処理することが当面の目的とされている。

「核開発に反対する物理研究者の会」が旧動燃、現在の原子力研究開発機構から1994年に得た情報によると、「大洗にある常陽において同位体純度99.4%の兵器級プルトニウムを22㎏生産し『もんじゅ』において同位体純度97.5%の兵器級プルトニウムを62㎏生産し、合計84㎏の兵器級プルトニウムを動燃は所有している」。

これを再処理してプルトニウムを抽出すれば、ただちに30発以上の核兵器を作ることができる。そしてこれを抽出する施設がRETFである。(つづく)

本稿は『季節』2024年夏・秋合併号(2014年8月5日発売号)掲載の「核武装に執着する者たち」を本通信用に再編集した全3回の連載記事です。

◎山崎久隆 核武装に執着する者たち(全3回)
〈1〉核武装のために不可欠な「核燃料サイクル政策
〈2〉開き直ったかのような日本政府の「核武装オプション論

▼山崎久隆(やまざき・ひさたか)
たんぽぽ舎共同代表。1959年富山県生まれ。脱原発東電株主運動、東電株主代表訴訟に参加。反原発運動のひろば「たんぽぽ舎」設立時からのメンバー。湾岸戦争時、米英軍が使った劣化ウラン弾による健康被害や劣化ウラン廃絶の運動に参加。福島第一原発事故に対し、全原発の停止と廃炉、原子力からの撤退を求める活動に参加。著書に『隠して核武装する日本』(影書房 2007年/増補新版 2013年)、『福島原発多重人災 東電の責任を問う』(日本評論社 2012年)、『原発を再稼働させてはいけない4つの理由』(合同出版 2012年)、『核時代の神話と虚像 ―― 原子力の平和利用と軍事利用をめぐる戦後史』(共著/木村朗、高橋博子編/明石書店 2015年)等多数。

◎たんぽぽ舎 https://www.tanpoposya.com/
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〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌『季節』2024年夏・秋合併号《創刊10周年記念特集》どうすれば日本は原発を止められるのか


◎『季節』創刊10周年特別企画『脱(反)原発のための季節セレクション』(仮)
出版のためのクラウドファンディングご支援のお願い

https://readyfor.jp/projects/kisetu_nonukes

『季節』2024年夏・秋合併号(NO NUKES voice 改題)
A5判 148ページ(本文144ページ+巻頭カラー4ページ) 定価880円(税込み)
お陰様で10周年を迎えました!
《グラビア》
「幻の珠洲原発」建設予定地 岩盤隆起4メートルの驚愕(写真=北野 進
「さよなら!志賀原発」金沢集会(写真=Kouji Nakazawa

《創刊10周年記念特集》どうすれば日本は原発を止められるのか

《報告》小出裕章(元京都大学原子炉実験所助教)
 原子力からこの国が撤退できない理由

《報告》樋口英明(元福井地裁裁判長)
 なぜ日本は原発をやめなければならないのか

《報告》井戸謙一(元裁判官/弁護士)
 事実を知り、それを人々に伝える

《報告》山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)
 核武装に執着する者たち

《報告》後藤政志(元東芝・原子力プラント設計技術者)
 課題は放置されたまま

《報告》森松明希子(原発賠償関西訴訟原告団代表)
 原発被害の本質を知る

《インタビュー》北野 進(「志賀原発を廃炉に!訴訟」原告団団長)
 珠洲原発・建設阻止の闘いは、民主主義を勝ち取っていく闘いだった

《対談》鎌田 慧(ルポライター)×柳田 真(たんぽぽ舎共同代表)
 東京圏の反原発 ── これまでとこれから

《報告》今中哲二(京都大学複合原子力科学研究所研究員)
「核融合発電」蜃気楼に足が生え

※          ※          ※

《回想》松岡利康(鹿砦社代表)
 創刊から10周年を迎えるまでの想い出

《墓碑銘》松岡利康(鹿砦社代表)
 お世話になりながら途上で亡くなった方への追悼記

《季節創刊10周年応援メッセージ》

 菅 直人(衆議院議員・元内閣総理大臣)
 守りに入らず攻めの雑誌を

 中村敦夫(作家・俳優)
 混乱とチャンス  

 中嶌哲演(明通寺住職)
「立地地元」と「消費地元」の連帯で〈犠牲のシステム〉を終わらせる

 水戸喜世子(「子ども脱被ばく裁判の会」共同代表)
『季節』丸の漕ぎ手をふやして、一刻も早く脱原発社会を実現しよう

 山崎隆敏(元越前市議)
「核のゴミ」をこれ以上増やさないために

 今野寿美雄(「子ども脱被ばく裁判」原告代表)
 裁判も出版も「継続は力なり」

 あらかぶ(「福島原発被ばく労災損害賠償裁判」原告)
 隠された「被ばく労働」問題を追及し、報じてほしい

※          ※          ※

《報告》なすび(被ばく労働を考えるネットワーク)
《検証》あらかぶさん裁判 原発被ばく労働の本質的問題 

《報告》北村敏泰(ジャーナリスト)
 棄民の呻きを聞け 福島第一原発事故被害地から

《講演》和田央子(放射能ゴミ焼却を考えるふくしま連絡会)
「復興利権」のメガ拠点 「福島イノベーション・コースト構想」の内実〈前編〉

《報告》平宮康広(元技術者)
 水冷コンビナートの提案〈1〉

《報告》原田弘三(翻訳者)
 COP28・原発をめぐる二つの動き
「原発三倍化宣言」と「気候変動対策のための原発推進」合意

《報告》三上 治(「経産省前テントひろば」スタッフ)
 総裁選より、政権交代だ

《報告》板坂 剛(作家/舞踊家)
   タイガー・ジェット・シンに勲章! 問われる悪役の存在意義

《報告》山田悦子(甲山事件冤罪被害者)
   山田悦子の語る世界〈24〉
   甲山事件50年を迎えるにあたり
   誰にでも起こりうる予期せぬ災禍にどう立ち向かうか(下)

《報告》大今 歩(高校講師・農業)
   洋上風力発電を問う 秋本議員収賄事件を受けて

《報告》再稼働阻止全国ネットワーク
 時代遅れの「原発依存社会」から決別を!
 政府と電力各社が画策する再稼働推進の強行をくい止める

《老朽原発》木原壯林(老朽原発うごかすな!実行委員会)
 6・9大阪「とめよう!原発依存社会への暴走大集会」に1400人超が結集

《女川原発》舘脇章宏(みやぎ脱原発・風の会)
 女川原発の再稼働はあり得ない 福島事故を忘れたのか

《福島》黒田節子(請戸川河口テントひろば共同代表)
 浪江町「請戸川河口テントひろば・学ぶ会」で
 北茨城市大津漁協裁判で闘う永山さんと鈴木さんの話を聞く

《柏崎刈羽原発》小木曽茂子(さようなら柏崎刈羽原発プロジェクト)
 7号機再稼働で惨劇が起きる前に、すべての原発を止めよう!

《首都圏》けしば誠一(反原発自治体議員・市民連盟事務局長)
 福島原発事故の責任もとれない東京電力に
 柏崎刈羽原発を動かす資格はない!

《浜岡原発》沖基幸(浜岡原発を考える静岡ネットワーク)
 静岡県知事と御前崎市長が交代して
「一番危険な原発」はどうなるか

《島根原発》芦原康江(さよなら島根原発ネットワーク)
 政治に忖度し、島根原発2号機運転差止請求を却下
 それでも私たちは諦めない!

《玄海原発》石丸初美(玄海原発プルサーマルと全基をみんなで止める裁判の会)
 玄海町「高レベル放射性廃棄物・最終処分場に関する文献調査」受入!

《川内原発》向原祥隆(反原発・かごしまネット代表)
 私たちは歩み続ける

《規制委》木村雅英(再稼働阻止全国ネットワーク)
 原子力規制委員会を責め続けて11年
 原子力規制委員会は、再稼動推進委員会・被曝強要委員会

《反原発川柳》乱鬼龍

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◎鹿砦社 https://www.rokusaisha.com/kikan.php?bookid=000748

龍一郎揮毫
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飯塚事件の6・5「不当決定」を許さない!「声なき声」を汲み続ける徳田靖之弁護士の9・14大阪講演会報告 尾﨑美代子

◆1時間お話するのに、5時間かけて来て下さるつもりだった徳田靖之弁護士に感謝感激

9月14日の徳田弁護士講演会に参加された皆様、お疲れ様です。東京、広島、和歌山からの方々や差様々な活動をされている方々など多くの参加者に集まっていただきました。

徳田弁護士のお話の前に私が少し話させていただきました。講演会前にあるアクシデントが起きましたが、結果、それは徳田弁護士ら飯塚事件弁護団が飯塚事件をいかに多くの方々に伝えたいかがわかるエピソードとなったということについてです。

講演会開催のきっかけは、映画「正義の行方」を見て、飯塚事件をもっと知りたいと考えたからでした。


◎[参考動画]映画『正義の行方』本予告

6月5日、飯塚事件の第二次再審の結果が福岡地裁で下されました。青木恵子さんが現地に駆けつけるというので、徳田弁護士に講演依頼を頼んでおきました。徳田弁護士はすぐに快諾してくださり、日程は9月14日と決まりました。

その後、私が徳田弁護士にチラシを送るなど連絡をしておりました。チラシには夜6時半開演と記していたので、当然、徳田弁護士はその日大阪で泊まるだろうと考え、ホテルも予約しました。が、そのことを私は徳田弁護士には伝えていませんでした。青木さんから徳田弁護士には「交通費など経費はちゃんとお支払いします」と伝えて貰っていたので、そこには謝礼、ホテル代も含んでいますよと勝手に考えていました。いや、私たちはこれまでどんな集会、講演会をやるときも必ず交通費、謝礼、ホテル代を払ってきました。それは当然と考えてきました。

先週になって徳田弁護士に「講演のお時間はどのくらいとりましょうか」とメールをしますと、徳田弁護士から「8時41分の新幹線が最終となりますので、約1時間ですね」と返事がきました。「えっ?帰られるの?」。

嫌な予感がないことはなかった……。青木さんが徳田弁護士に「交通費など実行委で出します」と伝えた際、「交通費なんかいりません」といわれたそうです。そう、徳田弁護士は手弁当で来られるつもりだったのです。その場合、帰れるなら帰ろうと思われたのでしょうか? あとでお聞きすると翌日15日も地元で用事があるということで、14日中に帰っておきたかったのかもしれません。結果として「ではお言葉に甘えさせていただきます」と連絡があり、宿泊することになりほっとしたのですが。それにしても、約1時間お話するためだけに、4~5時間かけて九州から来ようとされていたとは……。(実際は5時間かかってました)。

私からは、そんないきさつがあったことと、お話にも質疑応答にもたっぷり時間をとれるため、参加者の皆さんもしっかりお話をお聞きし、飯塚事件をさらに広めていきましょうと訴えました。

当日の講演内容は、書き起こししてまたご紹介いたします。

◆冤罪「みどり荘事件」

徳田弁護士をお呼びするにあたって、徳田弁護士のこれまでのご活動などを調べました。そこに「正義の行方」に一緒に出ている岩田務弁護士とともに闘った冤罪「みどり荘事件」というのがありました。どんな事件かと読み進めていくと、「あっ、この事件だったのか?」とハタと気づくことがありました。

20年以上前ですが、冤罪事件の専門書みたいな本に、ある事件で、検察が提出した証拠の中に犯人のものとされる毛髪があり、それは「15・6センチのロン毛の金髪」だったが、逮捕された男性の毛髪はパンチパーマの短髪だったという事件がありました。私はそれを読み「おいおい、ロン毛の金髪とパンチパーマってどれだけ違うねん。」と突っ込んでいましたが、その後、それがどんな事件だったかは忘れていたのです。

改めてこの事件を調べると、男性には一審で無期懲役が下されましたが、控訴審では無罪となりました。たしか、パンチパーマの件では男性が通っていた理髪店の大将が証人で出廷し、「こんなバリカンでこう刈っている」と事細かに証言し、いかに絶対15・6センチになることはない」と証言し、いかに出鱈目な証拠であるかを明らかにしていました。

一審で無期懲役だった原因としてほかにも多々あるのですが、徳田弁護士ら弁護団は、接見を通じて男性ときちんと信頼関係を築くことができなかったこともあると猛省し、二審に必死で取り組むのです。

そして、最終弁論の日を迎えます。

「最終弁論で、弁論の結びとなる『結語』は徳田弁護士が行った。徳田弁護士は、第一審から弁護についた者として自ら担当を願い出て、誰にも相談することなくひとりで『結語』を書き上げていた。その内容は、自らの第一審での弁護活動を痛烈に自己批判するものであった」。

「徳田弁護士が弁論を終えると、2時間にわたる弁護側の最終弁論を静かに聞いていた傍聴席から大きな拍手が沸き起こった。永松裁判長は、『静かにしなさい』と拍手を制止した。そして、『こんな立派な弁論に対して失礼でしょう』と付け加えた」とあります。

その後、裁判長は男性に無罪を言い渡したのです。詳細は「みどり荘事件」で検索を!

◆12月1日には神戸で徳田弁護士による「菊池事件」の講演会が開催!

徳田弁護士は別の記事で「誰にでも間違いはある」と話されています。昨日もそんなお話をしました。重要なのは、間違いについて、なぜそうなってしまったかをきっちり反省し、次につなげていくことではないでしょうか。

徳田弁護士は青木さんに「主催される方々は、冤罪事件に詳しく、いろんな活動を支援している」と聞いていたそうで、「ちょっと緊張して来ました」とおっしゃってました。それでも「本当に来てよかった」と、なんども言っておられました。

6月5日の不当決定以降、即時抗告の準備などもあり、こうした講演会は14日が初めてだったそうです。親睦会では美味しそうに芋焼酎をロックで飲まれ、周囲の方と楽しくおしゃべりをしておりました。

なお、12月1日、神戸市教育会館で徳田弁護士による「菊池事件」の講演会が開催されるそうです。私も駆けつける予定です。皆さん、会場でお会いしましょう!!

◎[関連記事]徳田靖之さん 弁護士/辺境の声なき声 酌み続け(川名壮志)(2024年1月配信日本記者クラブHP)

▼尾﨑美代子(おざき みよこ)
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを「西成青い空カンパ」として主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
◎著者ツイッター(はなままさん)https://twitter.com/hanamama58

尾﨑美代子著『日本の冤罪』

日本にも進出する情報統制機関 政府・企業・組織「検閲産業複合体」の脅威 青柳貞一郎 『紙の爆弾』10月号の注目記事

月刊『紙の爆弾』の最新号記事がnoteで一部公開・購読可能となりました。記事単位での購入も可能になりましたが、『紙の爆弾』はあくまで紙がメインのメディアです。興味を持っていただけましたら、ぜひ書店でお手にとっていただければ幸いです。定価700円(税込)、年間定期購読7700円(1号分お得です)。ここでは10月号(9月7日刊行)の注目記事を紹介します。

◆日本にも進出する情報統制機関 政府・企業・組織「検閲産業複合体」の脅威
 取材・文◎青柳貞一郎

 
 

 米国で明かされた「検閲産業複合体」の存在

国境なき記者団が毎年発表する国別「報道の自由度ランキング2024」で日本は70位。戦争中のウクライナ(61位)にも劣ります。

一方、米国は55位。米国は憲法修正第1条に「言論の自由」が保証されているはずですが、2017年にオバマ大統領は、国家授権法(NDAA)に従って、米国にとって都合の悪い情報を選択・排除する連邦機関を作り、「Global engagement center(GEC。Engagement=関与)」と無難な名称を付けて、主に自国民を対象にしたプロパガンダ戦争に利用するため稼働させました。

それ以降、CNNやワシントンポスト、NYタイムズといった米国大手メディアはGECの検閲通りの情報発信をするようになり、これらのニュースを「権威」として受け売りする日本のメディアも(情報の真偽と関係なく)そのまま垂れ流すことになります。

米国でX(旧ツイッター)の検閲状況について詳細に報告したジャーナリストのマット・タイビ氏は、このGECやFBI、国土安全保障省などと政府が援助するシンクタンク、スタンフォード・インターネット・オブザバトリーなどの中立に見える非政府組織、大学、民間ファクトチェッカー会社などが統合的にフェイスブック、X、グーグル、ユーチューブなどのソーシャルメディア・プラットフォームを提供する民間企業に対する検閲を行なっており、検閲される企業側も一般の投稿を削除する役割を持つため、それら全てを民衆(社会)の意見や見解をコントロールする機能を持っているとして、「検閲産業複合体」(Censorship industrial complex)という名称で紹介しました。

この複合体は、豊富な資金を元に政府や権力者側にとって都合が悪いとされる情報を検閲・削除するとともに、民衆が信ずるべき“情報”を作成・拡散させる機能も持つとされます。

2023年3月9日、米国下院「連邦政府の武器化に関する特別小委員会」で証言した環境活動家でジャーナリストのマイケル・シェレンバーガー氏は、政府機関、学術機関、非政府組織などの拡大ネットワークがCOVIDの起源、ワクチン、バイデン親子のビジネス取引に関するメール問題、気候変動、再生可能エネルギーなどに関する問題について2016年から2022年の間に米国市民を積極的に検閲していた実態を、56ページに及ぶレポートで報告しました。

その中で彼は、世界対テロ戦争中に米軍が開発した、確立された心理操作の方法と、人工知能を含むコンピュータサイエンスのツールを組み合わせて、政府が「ファクトチェック」を装い検閲を行なっていると指摘しています。

そして検閲産業複合体はジャーナリストやソーシャルメディアに対して「正確な情報は偽情報」であり、「有効な仮説は陰謀論」であり、「検閲を強化することで報道が正確になる」と信じ込ませてきました。

 日本にも導入される検閲産業複合体

※記事全文はhttps://note.com/famous_ruff900/n/n9c22237c5644

▼青柳貞一郎(あおやぎ・ていいちろう)
医師。医療・軍事ジャーナリスト。東京医科大学名誉教授。温暖化とコロナに流されない市民の会代表。ブログ https://blog.goo.ne.jp/rakitarou

最新刊! タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2024年10月号

『紙の爆弾』2024年 10月号

『さらば日大!』和田秀樹医師が暴く日本大学と「医学部」「医師界」の闇
旭川女子中学生凍死事件 再調査委員会が隠した社会の病巣 山田寿彦
安倍・岸田軍拡43兆円の無駄遣い 隠蔽主義の「カルト集団」防衛省・自衛隊 清谷信一
日本にも進出する情報統制機関 政府・企業・組織「検閲産業複合体」の脅威 青柳貞一郎
広島市の妨害を民衆が打破 平和記念式典「反戦集会」 浅野健一
“勝ち目”のあるうちに退いた 岸田文雄首相「退陣表明」の裏側 山田厚俊
僚支配・憲法無視・米国追従 「能動的サイバー防御」とは何か 足立昌勝
国民より先に米国に“退職報告”していた岸田首相 
ウクライナの侵攻を「越境攻撃」と呼ぶ欺瞞 木村三浩
兵庫県知事パワハラ疑惑は「維新的」政治家の成れの果て 吉富有治
大屋根リング・会場周辺で“実測” 灼熱の大阪・関西万博 横田一
米大統領選の隠れた争点 日本製鉄のUSスチール買収計画 浜田和幸
子宮頸がんワクチンを打ってはいけない理由 「ワクチン添加物」という“毒” 神山徹
IOCの体質こそ根本原因 パリ五輪ボクシング“染色体問題”の本質 片岡亮
“性加害”補償進まぬウラで 旧ジャニーズと離脱組「TOBE」の明暗
地獄の黙示録1984+40 佐藤雅彦
シリーズ日本の冤罪 52 プレサンス元社長事件 尾崎美代子

連載
あの人の家
NEWS レスQ
コイツらのゼニ儲け:西田健
「格差」を読む:中川淳一郎
シアワセのイイ気持ち道講座:東陽片岡
The NEWer WORLD ORDER:Kダブシャイン
SDGsという宗教:西本頑司
まけへんで!! 今月の西宮冷蔵

◎鹿砦社 https://www.kaminobakudan.com/
◎amazon https://www.amazon.co.jp/dp/B0DG578D28/

全日本キックボクシング協会 「原点回帰、参ノ陣」は初のタイトルマッチ開催! 堀田春樹

地道に着実に基礎固めの秋を迎えた令和の全日本キックボクシング協会。期待を背負った瀬川琉が王座獲得。全力で立ち向かった仁琉丸の闘志が試合を盛り上げた。

◎原点回帰、参ノ陣 / 9月6日(金)後楽園ホール17:30~20:58
主催:全日本キックボクシング協会
※戦績はプログラムより参照し、この日の結果を加えています。

 
瀬川琉の左ミドルキックが幾度も仁琉丸の脇腹にめり込んだ

◆第11試合 全日本スーパーフェザー級王座決定戦 5回戦

2位.瀬川琉(稲城/ 1998.6.6東京都出身/ 58.95kg)20戦13勝(4KO)6敗1分
      VS
3位.仁琉丸(ウルブズスクワッド/ 58.3kg)23戦12勝(8KO)11敗
勝者:瀬川琉 / TKO 5ラウンド 48秒 /
主審:和田良覚

仁琉丸は右ローキックからスタート。瀬川琉は受けても慌てる様子は無く、ローキックを返しながら左ミドルキックを蹴り込んでいく。

両者の蹴りパンチの攻防の中、瀬川琉の左ミドルキックのインパクトが強く主導権を支配していく。

後半、仁琉丸のストレートパンチで瀬川琉の顎が仰け反るシーンはあるが体幹は崩れず、より一層の左ミドルキックの徹底度が増していく。

最終ラウンドには瀬川琉の左ミドルキックが仁琉丸の脇腹にヒットするとダメージの限界に来たかノックダウンを喫し、呼吸を整えて立ち上がるも再び左ミドルキックを受けたところで堪らずノックダウンを喫するとレフェリーストップが掛かった。

勝負の決め手となった瀬川琉の左ミドルキック、今後も脅威の蹴りとなるか
瀬川琉の左ミドルキックでついに倒れ込んだ仁琉丸

瀬川琉、リング上では勝利のアピール。

「今回、団体立ち上がって、また団体増えたとか、またチャンピオン一人増えたとか、凄く悲観的な意見沢山あると思います。僕自身それが一番自覚しています。全日本キックボクシング協会の選手達、まだ新人の選手凄く多くて、これからの団体ですけど、僕自身がこのベルトと団体の価値を上げていけるように、これから前にどんどん進んでいって来年、他団体のトップどころと戦えるように精進していきますので、これからも応援宜しくお願いします。僕、デビュー戦からずっと後楽園ホールでしか試合してないんですよね。もっと次、デカイ舞台で試合していきたいので、他団体とも絡んでいきます(一部抜粋)」と抱負を語っていた。

新しい時代のチャンピオン誕生、更なる目標は他団体チャンピオン倒してRIZIN!?

控室にはなかなか戻れず、ロビーで応援団と記念写真に応えていた瀬川琉は閉館の時間も迫り、控室に戻る途中で話を聞かせて貰い、「もうちょっと早く倒すつもりではあったんですけど、練習の20パーセントぐらいしか出せなかったので。ただ今後のことを考えても5回戦はいい経験になりました。KOも出来たので良かったです。目標としては他団体のトップどころと戦いたいのと、どのルールでもいいのでRIZINに出たいですね。」と語り、防衛戦やRWS、ONEについて振ってみても、「取り敢えずRIZINで!」とまずRIZINへ出場したいアピールは強かった。

仁琉丸のウルブズスクワッドジム会長の能澤隆一会長は「仁琉丸はボディーでやられましたが、気持ち入っていて気持ちでは負けてないという感じがありましたね。いい部分もっと出して行ければ良かったですが、僕的には、よく頑張ってくれてあれでいいんじゃないかと思いますし、良い試合で最高でした。」と敗れたもののメインイベントで全力尽くした仁琉丸について語られました。

◆第10試合 フェザー級3回戦

WBCムエタイ日本スーパーバンタム級3位.前田大尊(マイウェイ/2005.8.6山梨県出身/ 57.1kg)
11戦8勝(2KO)3敗
      VS
祐輝(OB-BU/ 56.9kg)17戦7勝(2KO)7敗3分け
勝者:前田大尊 / KO 2ラウンド 2分31秒 / 3ノックダウン
主審:少白竜

初回は祐輝のアグレッシブなパンチヒットがあったが、前田大尊の蹴り中心にハイキックも効果的に圧力掛ける流れで主導権を奪う。

鋭く的確にヒットした前田大尊の右ミドルキック

第2ラウンドも蹴りで優った前田大尊が祐輝をコーナーに追い詰め、右ストレートでノックダウンを奪う。

立ち上がった後も更に左ボディーブローで二度目のノックダウンを奪う。

二度目のノックダウンを奪った左ボディブロー

心折れない祐輝は立ち上がるも前田大尊の右の蹴りで三度目のノックダウンを喫したところで終了となった。

更に祐輝を倒しKO勝利した前田大尊は雄叫びを上げた

前田大尊は勝利後マイクで、「10戦して7回勝ってるんですけど、KOが1回だけっていう、勝つことは出来ていても倒すことは1回しか出来なくて、自分の課題だと思って必死に練習してきました。本当に悔しくて、凄くくじけそうになったこともあるんですねど、応援してくれる皆が居てくれて強くなることが出来ました。」

また11月10日のニュージャパンキックボクシング連盟興行に於いてのトーナメント出場も決まっていることを告げ、「インスタでフォローして結果楽しみにしていてください」とアピールした。

◆第9試合 ライト級3回戦

山田旬(アウルスポーツ/ 60.65kg)3戦3勝(1KO)
      VS
鈴木孝則(無所属/リミットクリアー)6戦1勝5敗
勝者:山田旬 / 判定3-0
主審:椎名利一
副審:竜矢30-27. 和田30-28. 少白竜29-28

序盤は蹴り合う両者の主導権の奪い合いから、山田旬が思い切ったハイキックやバックヒジ打ちなどの技が攻勢を導き、鈴木孝則を追い詰めた。鈴木は顔を腫らしながら向かっていき、試合を盛り上げた。

技の多彩さで鈴木孝則を追い詰めていく山田旬

◆第8試合 ウェルター級3回戦

成瀬晴規(無所属/ 66.68kg)4戦1勝2敗1分
     VS
Katsuya Norasing famiry(=堀内克也/Norasing famiry/ 66.25kg)1戦1勝(1KO)
勝者:Katsuya / TKO 2ラウンド 49秒 /
主審:勝本剛司

蹴りとパンチのアグレッシブな攻防は激しく動き回った中、接近して打ち合う場面もあったが、突然試合はストップ。蹲る成瀬晴規のマットには夥しい鮮血が広がった。

有効打か偶然のバッティングか見極められなかった審判団。一旦は前半の偶発的アクシデントとして無効試合が宣せられたが、審判団の映像確認の上、全試合終了後にKatsuyaの有効打によるTKO勝利と訂正された。ヒジ打ちによる左眉尻のカット、ドクターの勧告を受入れレフェリーストップとなった。

これがヒジ打ちヒットとなったかは解らない。この後接近して成瀬晴規が蹲る

◆第7試合 ヘビー級3回戦

田馬場貴裕(impact/ 97.0kg)16戦6勝9敗1NC
      VS
ピクシー犬飼(府中ムエタイクラブ/ 108.0kg)2戦1敗1NC
無効試合 / 1ラウンド 1分59秒 /
主審:勝本竜矢

パンチラッシュする田馬場貴裕と凌いで蹴り返すピクシー犬飼のアグレッシブな攻防は突然の股間蹴りで試合は中断。

立ち上がれぬ田馬場は担架が用意されたが、担架だけは避けたい意思を示し、セコンドの手を借りなければ立ち上がれないほどダメージは深かった模様。ラウンド前半の偶然のアクシデントとして無効試合が宣せられた。

ピクシー犬飼のローキックが田馬場貴裕の股間に当たった瞬間

◆第6試合 バンタム級3回戦

広翔(稲城/ 53.3kg)3戦2勝1敗
    VS
風間祐哉(WSR三ノ輪/ 53.3kg)3戦1勝2敗
勝者:広翔 / 判定3-0
主審:和田良覚
副審:椎名30-27. 勝本剛司30-27. 竜矢30-27

3月16日の旗揚げ興行から出場している広翔はよりアグレッシブにスピーディーに攻める勢いが付いた中、先手の左ストレートでノックダウンを奪い、主導権を奪った流れは譲らず大差判定勝利を掴んだ。

◆第5試合 56.0kgから変更58.0kg契約3回戦

吉田秀介(稲城/ 57.5kg)
     VS
嶋津悠介(RIKIX/ 56.0kg)2戦2勝(1KO)
勝者:嶋津悠介 / KO 1ラウンド 2分23秒 / 3ノックダウン

中村健甚、体調不良により欠場。吉田秀介代打出場。

◆第4試合 ミドル級3回戦

義斗(KickBoxing fplus/ 70.0kg)2戦1勝1敗
       VS
KENTA PUAKUTA SHONBIN(スポーツジム67‘S/リミットクリアー)2戦1勝1分
勝者:KENTA PUAKUTA SHONBIN / 判定0-3 (29-30. 28-30. 28-30)

◆第3試合 スーパーバンタム級3回戦

吉田鋭輝(team彩/ 54.9kg)2戦2勝(1KO)
      VS
二宮渉(アウルスポーツ/ 54.8kg)1戦1敗
勝者:吉田鋭輝 / TKO 3ラウンド2分16秒

◆第2試合 フライ級3回戦

横尾空(稲城/ 50.7kg)2戦2勝
     VS
内山朋紀(TEAM ONE STEP/ 50.3kg)1戦1敗
勝者:横尾空 / 判定2-1 (30-27. 30-28. 29-30)

◆第1試合 65.0kg契約3回戦

野竹生太郎(ウルブズスクワッド/ 64.35kg)1戦1勝
      VS
山下聖一郎(廣島ブルドッグ/ 64.8kg)6戦1勝4敗1分
勝者:野竹生太郎 / 判定3-0 (30-27. 30-27. 30-27)

《取材戦記》

設立以降、初のチャンピオン誕生となったスーパーフェザー級で王座争った瀬川琉と仁琉丸は、新日本キックボクシング協会で経験を積んできた選手で、瀬川琉は一昨年10月に瀬戸口勝也の王座へ挑戦経験を持つ。今後は全日本キックボクシング協会のエース格として看板を背負っていかねばならない。その自覚はマイクアピールに表れていた。

他の階級は今後、新人戦から這い上がって来た若い選手が王座を争っていくことになるでしょう。そんな一から始まった原点回帰の全日本キックボクシング協会の今の姿である。

無効試合がTKO裁定に訂正された成瀬晴規vsKatsuya Norasing famiry戦を客席から見ていた知人は「明らかにヒジ打ちが出されたのが見えましたよ!」と翌日話を聞くことが出来た。審判団が見落としたというより、近くで見るより離れたところから見た方が視線のブレが少なく見極め易かったかもしれない。それはケースバイケースで、立ち位置にもよるが、青コーナーに近いところで起きたことで死角が重なったかもしれないだろう。

ヘビー級の股間ローブローは重量感ある蹴りによるものか、そのまま試合続行不可能に陥ることは多い。巨漢であることがノーファールカップの締め具合が緩くズレ易くなる可能性もあり、改良の余地は無いか、難しい問題です。軽量級ではあまり起こらない現象でもあります。

栗芝貴代表はこの日の総括を「ウチの協会もだんだん白熱して来て、前田大尊選手にしてもウチの選手にしても本当に誇らしい試合をしてくれて、こういう試合がどんどん増えていくと思います。」

5回戦を上手く戦った瀬川琉について、「瀬川は5回戦制が性に合っているんじゃないかな。それが活かせたかもしれませんね。」と語った。

また「来年度も後楽園ホールスケジュール4回取れまして、日曜日開催も来年後半には行われて行きます。」と今後の後楽園ホール使用の機会も増えていきそうな見通しも語られました。

全日本キックボクシング協会年内最終興行は、12月28日(土)に後楽園ホールに於いて行われます。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
昭和のキックボクシングから業界に潜入。フリーランス・カメラマンとして『スポーツライフ』、『ナイタイ』、『実話ナックルズ』などにキックレポートを寄稿展開。タイではムエタイジム生活も経験し、その縁からタイ仏門にも一時出家。最近のモットーは「悔いの無い完全燃焼の終活」

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ある日、とつぜん殺人犯にされた人たち 「声なき声」を汲み続ける徳田靖之弁護士の講演会を本日9月14日(土)大阪ピースクラブで開催します!! 尾﨑美代子

ごく普通の日常生活を送っていた人が、ある日とつぜん殺人罪で逮捕されることがある。彼と彼の家族の人生は大きく狂わされてしまう。

8月28日 大阪地裁は、羽曳野路上殺人事件で逮捕・起訴された山本孝さんに懲役20年を求刑して結審した。6月に裁判員裁判がはじまった際、弁護団長の伊賀興一弁護士は、審理が長期に及ぶこと、証人が非常に多いことなど前代未聞の裁判だと述べていた。私は結局一回しか傍聴できなかったが、最終弁論要旨を読むと、これで山本さんに有罪判決が出せるのか? と驚くばかりだ。

被害者は山本さんの隣に住む女性と愛人関係にある男性Aさんだった。隣人女性と山本さんは垣根の塀の上に置いた植木鉢を巡り、ちょっとしたトラブルをおこしていた。しかし、その際、Aさんが間に入り上手く収めてくれたため、山本さんは当初Aさんに悪い印象は抱いてなかった。

一方の女性も、その件が大きなトラブルとは考えていなかったようだ。事件後警察の事情聴取で、Aさんが抱えていたであろうトラブルについていくつか話していたが山本さんとの件は話していなかった。しかし警察に「ちょっとしたことでもいいから、他にないですか?」と聞かれたため、女性は山本さんとの件を話した。そして警察は山本さんを犯人と見立てていくが、山本さんを犯人と決めつけるあまり、ほかの者が犯人である可能性について捜査してこなかった。

しかし、捜査しても山本さんを犯人とする決定的な証拠はでてこない。それから3年……、新たに捜査主任になった森本氏のもと、山本さん以外に犯人となる者がいないか、いわゆる「つぶしの捜査」を行うこととなった。対象者が誰かは不明だが、事件から3年が経過していることもあり、対象者が協力的ではなく、警察は思うように事情聴取できなかったという。そして、事件から4年後、山本さんを犯人とする直接証拠がないまま、山本さんを逮捕した。

裁判では、Aさんが抱える様々なトラブルが明らかにされた。詳細は省くが、それは山本さんと女性が抱えていた「ちょっとしたトラブル」をはるかに超える深刻なトラブルだった。しかし、捜査側はそれらのトラブルについて、きちんと捜査せずに山本さんを起訴してしまったため、裁判では山本さんをむりやり犯人とするため多くの証人を作り法廷に出廷させてきた、ということだ。

証言者の中には、アバターの専門家までいる。「アバター? 映画『アバター』は面白かったけどな……」と思いながら最終弁論を読む進めるが、そもそもアバター云々はDNA型鑑定やルミノール反応などと違って、科学的捜査方法としての地位は確立されていない。それでもアバターの専門家に必死で証言させる検察……。

犯行現場近くの車のドライブレコーダーに残った映像からは、Aさんが背後から刃物で心臓を一突きされ殺害されていることがわかっている(検察は映像に映っている犯人の背恰好が山本さんと似ているとしている)。最終弁論によれば、「殺害方法は、Aさんと正面からすれ違って、本人確認したのち、隠し持っていた刃物を片手でスムーズに取り出し、被害者の背後から刃物を横向きに肋骨と平行になるようにして肋骨と肋骨の間から心臓を狙って約12センチの深さに達するほどの相当の力で心臓を一突きだけで殺害するというものであった」。

このとき、心臓を狙うけれども返り血がかからないような部位を素早く引き抜いて出血を抑えた刺し方をするなどの高度の医学的知識を、「スーパー勤務」の山本さんにはないだろう。さらに、そのような職業軍人なみの犯行を短時間で実行したのち、何食わぬ顔で家に戻り、出る前同様娘と居間でテレビを見て、いつも通り酒を飲んでいることなどできるだろうか。

ただ、残念なことだが、山本さんには犯人と疑われてしまう理由があった。それは警察の取り調べを受けた際、ちょっとした「うそ」をついてしまったことだ。事件の直前、自宅で娘とテレビを見ながら酒を飲んでいた山本さんは、Aさんの車が駐車場に着いた音を聞き、家から表に出た。駐車場から愛人宅に向かうAさんを監視するためだ。

というのも、Aさんも駐車場から愛人宅へ行く際、山本さんの家近くでタバコの吸い殻をポイ捨てすることなどがあり、そうさせないよう監視していたのだ。しかし、5分経ってもAさんが車から降りてこないために、山本さんは家に戻った。そして奥さんに「どうしたの?」と聞かれた山本さんは、散歩に行ってきたと「嘘」をついてしまった。これにも訳がある。山本さんの奥さんが、山本さんが隣人女性やAさんのふるまいをいちいち気にすることを嫌がっていたのだ。なので、山本さんは散歩と「うそ」をついてしまったのだった。

私は裁判を傍聴したのち、「日本の冤罪」を山本さんに送った。手紙を添えて……。返事はしばらくこなかった。拘置所に面会に通う青木恵子さんから、山本さんは手紙を書くのが苦手と言っていたと聞いた。(そうか、仕方ないか)と思っていたが、裁判が結審した数日後、返事が届いた。

裁判が終わりほっとしたのと、判決がどうなるか不安だという内容だった。そして……可愛い娘が2人います。名前は〇と〇です。早く会いたいですとも綴られていた。普通のお父さんの言葉だった。繰り返すが、そんな人が、職業軍人の訓練を受けたような殺害方法で人を殺せるだろうか?

ほかにも私が『日本の冤罪』で執筆しただけでも、「布川事件」「神戸質店殺人事件」「滋賀県バラバラ殺人事件」「東住吉事件」「湖東記念病院事件」「千葉県東金女児殺人事件」、そして本日9月14日(土)の講演会で徳田弁護士にお話ししていただく「飯塚事件」も……。多くの人たちが警察、検察、裁判所によって大きく人生を狂わされた。

◎[関連記事]徳田靖之さん 弁護士/辺境の声なき声 酌み続け(川名壮志)(2024年1月配信日本記者クラブHP)https://www.jnpc.or.jp/journal/interviews/35295

▼尾﨑美代子(おざき みよこ)
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを「西成青い空カンパ」として主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
◎著者ツイッター(はなままさん)https://twitter.com/hanamama58

尾﨑美代子著『日本の冤罪』