「息子は殺していない」 鈴鹿殺人事件・冤罪被害者の母親に聞く【前編】

6月16日、大阪市大国町の社会福祉法人「ピースクラブ」で、まもなく再審が始まる滋賀県湖東記念病院事件の冤罪被害者・西山美香さんと、主任弁護士の井戸謙一さんをお招きし、講演会を開催した。井戸弁護士の解説、西山美香さんへのインタビュー、質疑応答ののち会場にかけつけた3組4名のかたにアピールしていただいた。

3月に結成された「冤罪犠牲者の会」の共同代表・青木恵子さん、予定を変更し急きょ駆けつけてくださった桜井昌司さん、そして鈴鹿殺人事件の冤罪被害者・加藤映次さんのご両親・加藤元博さん、由紀さんのお二人である。

冤罪・鈴鹿殺人事件を私は、青木さんから聞いて知った。当日講演会場でチラシなど配布するので送ってほしいとご両親に連絡したところ、「直接大阪のみなさんに支援をお願いしに行きたい」ということで、当日愛知県から車で駆けつけていただいた。講演会場とその後の親睦会で、涙ぐみながら支援を訴えていた映次さんの母・由紀さんに、翌日インタビューし、事件の全貌、再審に向けた決意などをうかがった。

6月16日「湖東記念病院事件の冤罪被害者・西山美香さんを囲んで」で発言する加藤元博さんと由紀さん

── 遠いところお疲れ様です。鈴鹿殺人事件の冤罪被害者・加藤映次さんのご両親にお話を伺います。2012年11月13日、鈴鹿市山本町で会社役員のTさん(当時38歳)さんが何者かに後頭部を殴打され殺害された事件で、加藤さんの息子さんの映次さんが殺人容疑で逮捕されました。事件の話をお伺いする前に、映次さんは一人息子さんということで、どんな息子さんですか?

加藤 優しい子です。自分の子供に対しても怒ったり、手をあげたりしたことは一度もないです。じっくりと相手の言う事を聞くタイプです。一見スキンヘッドで怖そうと言われますが、小さい頃から円形脱毛症なんです。免疫の異常で毛髪の組織が攻撃されて起こる“自己免疫疾患”だそうで、元プロ野球選手の森本稀哲(ひちょり)さんと同じです。ひちょりさんも小学1年の時に円形脱毛症になり、ほぼすべての毛髪を失ったそうです。悩んでいた子供時代から、プロ野球で人気を博した元気なキャラクターを確立したとあります。映次も同じようにポジティブな思考、明るい性格です。

現在、長野刑務所に収監されている加藤映次さん

── Tさんと映次さんは、会社の共同経営者と報じられていますが、どういう関係だったのでしょうか?

加藤 Tさんはもともとティールというインターネット通販会社を、映次はワンダーラインというネットワークサービス会社をそれぞれ別個に経営していました。当初はティールがワンダーラインの顧客としてつきあいが始まりました。後にTさんがワンダーラインに共同経営者として加わることになり、Tさんが会長、映次が社長に就任しました。ワンダーラインは名古屋駅前に本社事務所を、愛西市に事務所兼倉庫を持っていました。Tさんは山本町の実家の離れを改装して自宅兼事務所としていました。

── その離れが殺害現場となったのですね。事件当日、映次さんがTさん宅を訪ねたことで映次さんが疑われたのですね?

加藤 映次は、Tさんに高級時計を買うお金を400万円ほど用立てており、それを返してもらうためにです。朝、電話で返してもらえると確認していたそうですが、実際は返してもらえなかった。10時28分頃から10分間ほど滞在しています。流れとしては、Tさん宅へ着いて離れのチャイムを鳴らす、「ちょっと待って」と言われ、しばらく外で待つ、鍵をあけてもらい部屋に入る、Tさんに頼まれ2杯分のコーヒーを淹れる、金を返す返さないで揉める、といっても胸ぐらをつかまれたので映次が振り払った程度です。鈴鹿ICを11時5分に通っていますが、警察・検察が主張するように滞在時間を24分だとしても、果たしてその間に殺人をして、痕跡を消すなど後始末をして、2つのキーチェーンからTさんの離れの鍵を抜き取り、鍵を閉めて・・・とそれだけのことが出来るのか?離れには水設備はないので返り血などの始末が出来るのかと疑問が山ほど残ります。

── 離れには水回りがないので、Tさんはトイレ、シャワーを使う際には母屋に行っていたが、夕方5時過ぎ、トイレなどにきた形跡がないことから、両親が心配し、Tさんの部屋の鍵をあけて入ったら殺害されたTさんを発見したということですね? 離れにはいつも鍵をかけていたのですか?

加藤 Tさんは以前、ヤクザの人たちと関係していたようです。何があったかわかりませんが、非常に用心深く、いつも鍵をかけていたようです。

── 2日後、映次さんが容疑者として取り調べを受けていますが、ほかに取り調べを受けた人はいないのですか?

加藤 ほかに容疑者がいたかどうかは証拠が全面開示されていないのでわかりません。映次はその日深夜遅くに帰宅し、翌朝、鈴鹿署で任意の取り調べを受けています。知人が殺されたので、取り調べにはちゃんと応じようと警察署に行ったのに、最初から犯人扱いだったそうです。着ていた服、下着、持ち物などすべて着替えさせられ押収され、〇の中に官と書かれたトレーナーを着て帰宅しました。映次は、自分が犯人でないことは自分が一番よく知っているから、この状況はありえないと話していました。腹が減ったといい、冷凍のあんかけラーメンと味噌おでんを食べていました。殺人を犯していたら、そんなに風に平気で食べれるでしょうか?

逮捕の約1年前に新築した家の前で家族と写した写真

── Tさん宅を出てからの映次さんの行動を教えてください。

加藤 事件当日、映次はTさん宅を出てから、当時不倫関係にあったMさんと会い、買い物をしたりしたあと、夕方には名古屋本社で採用面接もしている。その後またMさんとドライブなどして過ごしています。そのままホテルに泊まり、帰宅しなかったことも疑われた理由の1つのようです。

── 突然逮捕され、ご両親、映次さんのご家族はどんな様子でしたか?

加藤 私たちは映次が犯人じゃないことは、警察から帰ってきたときの様子やその後の映次の話で確信していました。嫁は14日朝、「今警察が来て映次が連れていかれた!」と泣きながら電話してきましたが、「犯人じゃないから、大丈夫。子供の為にもしっかりしなさい!」と言うのが精一杯でした。私も足がガクガクしていました。

── 映次さんが犯人とされた決め手は何だったのですか?

加藤 いろいろ言われていますが、実際には物証は何も出ていません。殺害現場のTさんの離れに鍵がかけられていたとのことですが、その離れの鍵が映次の車から出てきたことが証拠の一つとされていますが、そもそも鍵がかかっていたのかどうかさえ、両親の証言以外に証明するものはありません。逮捕された日、警察が映次の自宅に来て、敷地内で車の外観や車内を撮影した写真があります。その車が押収されて中から鍵が発見されたそうですが、そのとき映次は鈴鹿署にいたのです。にもかかわらず、車の検証に本人の立ち合いをさせなかったことなど、鍵発見の経緯には腑に落ちないことがいくつもあります。映次は刑事から後で「Tの離れの鍵がお前の車から発見されたぞ」というような事を聞かされ、『ハメラレタ!』と思ったと言っていました。[つづく]

控訴審を闘った名古屋高裁の前で、支援者の皆さんと

《連絡先》〒496-0862 愛知県津島市城山町1-15
◎鈴鹿殺人事件・加藤映次さんを守る会 加藤元博 http://enzai.main.jp/
◎拘置所ブログ 加藤映次、冤罪と闘ってます、刑務所日記 NOW ! http://eiji-enzai.blog.jp/

▼尾崎美代子(おざき・みよこ)https://twitter.com/hanamama58
「西成青い空カンパ」主宰、「集い処はな」店主。

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創刊5周年!〈原発なき社会〉を目指す雑誌『NO NUKES voice』20号 尾崎美代子さん渾身の現地報告「原子力ムラに牛耳られた村・飯舘村の「復興」がめざすもの」掲載

半導体素材「禁輸措置」という国家的ヘイトクライムを強行した安倍政権こそが世界経済を混乱させ、国民経済を破壊させる!

◆危険な政策

日本政府は7月4日、韓国への輸出規制を発動した。半導体などの素材3品目を対象に輸出許可の手続きを厳密化し、事実上の禁輸措置を実行したのだ。スマートフォンやテレビなどの画面に使うフッ化ポリイミド、半導体基板に塗る感光材のレジスト、半導体洗浄に使うフッ化水素の三品目である。いずれも世界全体に占める日本の生産シェアが高い素材だ。

これによって、韓国のメーカーが材料不足で半導体などを作れなくなれば、韓国に部品をたよる家電メーカーのスマートフォンなどの製造も滞り、日本経済に深刻な影響が出るのは必至だ。IT機器を生産するサムソンなど、韓国の基幹産業ともいえる半導体事業が打撃を受けるのみならず、世界経済への影響も危惧されるところだ。あたかも、太平洋戦争におけるアメリカの対日石油禁輸のように、禁輸による経済的な打撃で、政治的に追い詰める。政治危機をつくることで「戦争か従属か?」という政治的な変化をあおる、危険な政策であるのは言うまでもない。

当初、韓国大統領府当局者は、日本政府の輸出規制についてこう語っていた。「(徴用工問題が原因だという見方は)メディアの解釈と理解している。あたかも日本政府の公式的立場のように仮定して話すのは適切ではない」と記者団に述べ、断定を避けていた(7月2日)。本当に実行するとは思っていなかった節がみられる。


◎[参考動画]【報ステ】韓国への輸出規制「世界的な産業に影響」(ANNnewsCH 2019/7/3公開)

いっぽう、成允模・産業通商資源相が7月1日の声明で、日本企業に元徴用工らへの賠償を命じた韓国最高裁判決を理由とした「経済的報復措置だ」と述べ、深い遺憾を表明していた。これに対して、大統領府は徴用工問題との関連付けに慎重な立場を示した格好で、事態の悪化を避けたい思惑があったようだ。

その後、日本政府の思惑が徴用工問題の報復にあることが明白となると、韓国政府も対応策を出さざるを得なくなった。すなわち、材料を国産化するための巨額投資を発表したのである。韓国大統領府と政府は、半導体素材・部品・装備の開発に、毎年1兆ウォン(およそ920億円)を集中投資する方針を明らかにしたのである(3日)。日本が輸出管理を強化した素材の国産化を進めることで、日本の圧力には屈しない姿勢を見せたかたちだ。

◆落胆と先行きへの懸念

以上は政府レベルでの反応だが、経済界はどうなのだろうか。経済同友会の桜田謙悟代表幹事は2日の定例会見で、日本政府が韓国に対し、半導体材料の輸出管理を強化する方針を発表したことについて「世界貿易機関(WTO)違反ではなく、政府のメッセージを韓国側が真摯(しんし)に受け止め、早期の2国間関係正常化につながることを期待している」と述べ、日本政府の対応に理解を示した。

今後、報復合戦になった場合の日本経済への影響については「仮定の話」と前置きした上で、「(半導体材料など)日本から韓国向けの輸出に対し、韓国からの輸出は少なく、日本企業への影響は大きな問題にはならない」と話し、軽微と分析していた。

日本商工会議所の三村明夫会頭も1日、「政府の措置は日韓関係を悪化させるためではなく、膠着状態を動かしたいという、ひとつの提案」と話した。その上で「課題解決に動こうとしない韓国側に大きな問題がある」とも指摘した。その背景に、徴用工問題・従軍慰安婦補償問題(謝罪問題)があり、日本政府のショック療法(禁輸措置)に理解をしめしたかたちだ。

しかし財界首脳の政府に配慮した発言はともかく、業界団体は深刻な声をあげている。大手の東京応化工業は「サプライチェーンへの影響を心配していたファーウェイ(中国通信機器最大手の)に対する制裁が今回緩和されただけに、落胆は大きい」(広報)と先行きに懸念を示した。

半導体基板上で回路形成に不要な部分を溶かすフッ化水素の大手、森田化学工業(大阪市)は「事前の書類提出などに手間がかかることが予想されるが、輸出を継続したい」(担当部署)との姿勢を示した。業界関係者は「オープンな自由貿易を求めてきただけに、規制の強化は残念だ」と一様に不安をのぞかせている。

◆韓国で懸念される国民レベルでの排日運動激化

経済評論家のあいだでは日本経済はもとより、世界経済にあたえる深刻な影響が危惧されている。すなわち、サムスン電子とSKハイニクス半導体メモリのトップシェアメーカーであることから、スマートフォン、PC、データセンター用のサーバー、各種のデジタル家電など、きわめて広範なエレクトロニクス機器の生産が打撃を受けるとしている。したがって、世界中のデジタル機器生産が部品供給の不足に陥り、世界経済におよぼす影響は計り知れないという。

いっぽう、韓国大統領府のウェブサイトには、自動車をはじめとする日本製品の不買や日本への旅行中止を国民に呼びかけ、さらに政府には、日本への関税報復を求める請願が寄せられた。すでに5,000人近くの賛同者が集まっていて、日本への反発が強まっている。ことは半導体にとどまらない、国民レベルでの排日運動も懸念される。

そもそも、徴用工問題は韓国の司法権の問題であり、日本政府が口出しをできるようなものではない。たとえば日本の裁判所が下した判断に、韓国政府が政治的な介入をもとめてきたら、日本政府は裁判所に「指揮権発動」でもするというのだろうか? 今回の措置はしたがって、あけすけにいえば日本には三権分立があるが、韓国にはないから素材の禁輸という経済制裁で「言うことをきかせる」というものなのだ。もはや国家のメンツを通りこした、国家的な「ヘイトクライム」にほかならない。

いずれにしても、自由貿易の原則をみずから掘り崩すことで、安倍政権は国民経済の破壊、ひいては世界経済の混乱をひきおこし始めたのである。経済が国際的な生産のつながりと流通で成り立っていることを理解できず、政治的なメンツを優先した結果、最悪の事態にむかって進もうとしている安倍政権を、これ以上のさばり続けさせるわけにはいかない。

▼横山茂彦(よこやま しげひこ)
著述業・雑誌編集者。主な著書に『軍師・黒田官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)、『真田一族のナゾ!』『山口組と戦国大名』(サイゾー)など。医療分野の著作も多く、近著は『ガンになりにくい食生活――食品とガンの相関係数プロファイル』(鹿砦社LIBRARY)

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惨憺たる大阪G20 ──「強気に傅き、弱気に威張る」で一貫した安倍政権の醜悪

◆習近平先導警察車両が阪神高速道路上で横転の体たらく

どうせ「ろくなものにはならない」ことが、わかりすぎていたので、言及することすら避けてきたが、大阪で行われたG20が、「波乱だらけ」で幕を閉じた。

2019年6月27日付NHK 関西NEWS WEB

まず驚いたのは、一般向けには閉鎖されていた阪神高速で6月27日、習近平を先導していた警察の車が、操作を誤り阪神高速道路上で横転したことだ。

阪神高速、とくに環状線はカーブが多く、走行車両も浪花流運転で、地方から来た運転者は戸惑うことも多い。なかなか難易度の高い高速道路ではある。しかし、事故当時は一般車両は走行しておらず、この警備車両は「運転者の技術」により勝手に横転したのだ。

あるいは大阪府警に潜り込んだ、どこかの反政府組織によるゲリラ攻撃か? といっときだけ、時代錯誤の想像を試みたが、そんなドラマはなかった。要人警備車両が勝手に横転しただけのことだ。このような低レベルの自損事故を要人警備車両が引き起こすのは、権力側からすれば「遺憾」ということになるのだろうが、ひたすら「恥ずかしい」行為である。

◆伊丹空港隣接ビルのトイレに拳銃を置き忘れた20代巡査

さらに28日には、G20サミット警備のため島根県警から派遣された20代の男性巡査が伊丹空港に隣接するビルで、トイレに拳銃を置き忘れた。直後に管理会社の従業員が見つけ、届け出を受けた同僚が回収しており、使用された形跡はなかったらしい。

警察官は誰もかれも当たり前のように、拳銃を携帯しているが、あれは効用よりも弊害のほうが大きいのではないだろうか。滋賀県で発生した巡査の上司銃撃事件や、警察官から拳銃が奪われて大騒ぎするニュースに接するたびに、「警察官が拳銃を持っていなければこんなことにはならないのに」との思いを強くする。

建前は「凶悪犯」に対する威嚇や、犯罪防止なのだろうが、もう何十年も「拳銃があって犯罪が防止された」とのニュースを頻繁に聞くことがない。前述したとおり、逆に拳銃を保持しているが故に、当の警察官に危害が及んだり、犯罪に利用されるケースのほうが多いのではないかとの印象がある。

古いところでは朴正煕暗殺を試みた文世光が使用した拳銃は大阪府警のものだった。警察学校を出れば19、20歳でも拳銃を保持できる制度は、本当に治安に安定に寄与するだろうか。「警察官の拳銃保持の是非」について、日弁連などは議論を提起すべきではないだろうか。


◎[参考動画]“過去最大”警備3万人 G20大阪で通行止めに検問(ANNnewsCH 2019/6/27公開)

◆これほど迷惑な「ショーもない」!

G20の中で何が話しあわれたのか、には正直興味がない。あれはセレモニーに過ぎないのだ。20か国の首脳がいる場所で個別の議題について、具体的な議論が進むと思っている人は、あまり世間をご存じない方だ。議論の素案は事務方が長時間かけて調整し、会議ではもっともらしい発言を、とくに安倍などはもっぱら用意されたペーパーを見ながら読み上げているだけだ。つまり「ショー」なのだ。

しかしこれほど迷惑な「ショー」もない(「しょーもない」に偶然似てしまった)。大阪では幹線道路がほぼすべて閉鎖され、関西地域の物流が不安定になった。大阪城は閉鎖され、せっかく外国や地方から「大阪城のエレベーターに乗ろう」と楽しみにやってきた観光客は追い返されることになってしまった。そのうえ安倍晋三は「大阪城にエレベーターを作ったのはミスだった」と、誰かが冗談で書いたとしか思えない原稿を読み上げてしまい、世界中から大顰蹙と「差別じゃろ」と指弾されてしまった。

◆安倍周辺のお付きの者たちの間抜けぶり

警察の体たらくも相当であるが、安倍周辺のお付きの者たちの間抜けぶりもかなり進行している。安倍は原稿を読まずに真っ当な内容の話を10分以上できない。だから国会でも国際会議でもオリンピック招致演説でも、安倍の読み上げた原稿は「誰か」が書いたものだ。

ちなみに演説以上に安倍は作文が苦手だと言われている。読書経験も極めて少ないので古典からの引用などはできない。今回安倍の「エレベーター設置間違い演説」も、必ず本番前に複数の人間が原稿を確認しているはずだ。しかしその連中も演説案を「問題なし」と見逃してしまった。

安倍の信者の方は、あれこれ弁明をなさるが、これは言い訳のできない「大差別」であることに間違いはない。自民党から出馬予定で、派手すぎる女性問題が暴露され、出馬取り消しとなった乙武洋匡から痛烈に批判されているのは象徴的だろう。「冗談のつもりだった」と鹿砦社を「炎上商法」と例えた、前田朗氏は坊主懺悔して逃亡したが、安倍のこの発言、むしろその原稿が問題なく安倍に手渡される安倍周辺の知的レベルの低さは、醜悪の域に入っている。

◆韓国蔑視(いじめ)と大国(中国・ロシア・米国)への過剰なへつらい

裏では早期から情報があったが、予定通りトランプは日本から韓国へ飛び、板門店で金正恩と会った。わたしごときにもさる情報筋から「板門店会談」の報はあったのに、日本のマスコミの多くはどうやら、まったくその情報をもっていなかったようだ。これには驚いた。そしてG20開催中から相も変らぬ韓国蔑視(いじめ)と大国(中国・ロシア・米国)への過剰なへつらいの態度は、本当に情けなく恥ずかしい。

わたしが本通信で何度も主張している通り「ロシアは北方領土を1つも返さない」ことがあらためて明言された。それでも「平和条約協定に向けて努力する」政府は言う。やめとけ。「平和条約締結に向けての努力」とは「経済協力」と名乗る「持参金」のさらなる無駄な出費だ。

そういえば、かつては韓国同様・中国に対する敵視も過剰だったが、いつのころからか、政府は中国敵視を変更したようだ。来年には習近平を国賓として招くという。この変化は政府の「一貫しない姿勢」を示しているのではない。「強気に傅き、弱気に威張る」一貫した姿勢の表れと理解すべきである。米国同様ついに中国も「かなわない相手」と政府は見解を変えたのだろう。もちろんロシアもである。

「もっとも幸いな場合でも『国家』とは災いである」

と言い放った賢人の至言が身に染みる。それにしてもはた迷惑で、不格好すぎたG20であった。


◎[参考動画]G20首脳らが夕食会(KyodoNews 2019/6/29公開)

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

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田所敏夫『大暗黒時代の大学──消える大学自治と学問の自由』(鹿砦社LIBRARY 007)

【カウンター大学院生リンチ事件、怒りの続報!!】回復されない被害 金良平氏いまだに損害賠償をリンチ被害者M君に支払わず! 鹿砦社特別取材班

6月12日、リンチ被害者M君が5名を訴えた上告について、却下の連絡が代理人の大川伸郎弁護士へあった。賠償を命じられた李普鉉氏からは「賠償金を支払いたいので口座を教えてくれ」と代理人から連絡があった。一方金良平氏からは何の連絡もないので、大川弁護士は金良平氏の代理人に「賠償金の支払い」を求める旨と、大川弁護士の銀行口座明細を記載したFAXを送付したが、7月2日現在大川弁護士には、金良平氏の代理人から何の連絡もないという。

確定判決で約114万円(プラス利息)の支払いが命じられた金良平氏。大阪地裁の法廷でも尋問の際は、M君に向かい一応「謝罪」の態度をとっていたが、それは心からのものであるとは到底感じられなかった。まさか、ではあるが金良平氏がM君に対して賠償金の支払いを行わなければ、M君の被害は永遠にあがなわれないこととなる。金良平氏はエルネスト金 @erukimnenのハンドルネームで、最高裁却下が伝えられた6月12日の前日まで、実に多くの書き込みを行っていた。しかしそれ以降は意見の表明などは一切控えているようだ。

これほど頻繁にツイッターをする時間があったら、M君の弁済に充てるお金を準備するのに、どうして働かないのだろうか。相変わらず居丈高な発信が目立つが、金良平氏に「反省」の気持ちはあるのだろうか。そして、仮に自分で賠償金が準備できなくとも、知人(彼には少なくともM君リンチ現場に臨んだ4名の友人がいる)などに、用立てしてもらい、M君への賠償金を支払う気持ちと準備があるのだろうか。

もし、現在金良平氏がM君への賠償金支払いの算段で、忙殺され連絡が取れていないのであれば、取材班は上記懸念を取り消し、金良平氏にお詫びする。しかし、判決確定後「賠償金支払い」がM君の代理人から伝えられて約半月が経過する。「支払う気があるのか」、「すぐには支払えないのであれば、どのように弁済するのか」くらいは連絡があってよかろう。

「祝勝会」と称し浮かれる加害者と神原弁護士(2018年3月19日付け神原弁護士のツイッターより)

そのようなことは、断じてあり得ないと信じるが、まさか金良平氏は裁判所の判決を「踏み倒そう」と考えてはいまいか。そのことに「悪知恵」を貸している金良平氏の「悪友」はいまいか。金良平氏に告ぐ。あなたのそばで、もしそのような「友人」を装った人間がいれば、その人はあなたを永遠に「社会的存在」ではなくそうと企図する、あなたの本質的な敵である。金良平氏は裁判所の判決通りの金員をM君に支払えば、民事的な責任は果たしたことになる(道義的責任はともかく)。しかし、もし金良平氏が策を弄してM君への賠償金支払いを行わなければ、永遠に「裁判判決不履行者」の負い目をおわなればならない。

我々は知っている。しばき隊の連中は「用済み」になった、あるいは「お荷物」になった人間をいかに冷酷に切り捨てるか。その結果最悪の事態に陥った人間もいるではないか。

もし金良平氏にM君への賠償金支払いの財力がなければ、「人権」、「差別」を口にする「友達」のために、「M君リンチ現場」に居合わせた4名は、金良平氏の人生を縛る永遠の十字架から彼を解放するために、金良平氏に資金援助をすべきである。それこそが、冷酷な法によるものではなく、真に人間的な問題解決と金良平氏の人生を助ける道ではないのか。

取材班は被告諸君と、その代理人弁護士の方々へ金良平氏の将来を案じて、あえて提案するものである。

大学院生リンチ加害者と隠蔽に加担する懲りない面々(『カウンターと暴力の病理』グラビアより)


◎[参考音声]M君リンチ事件の音声記録(『カウンターと暴力の病理』特別付録CDより)

(鹿砦社特別取材班)

《関連過去記事カテゴリー》
 M君リンチ事件 http://www.rokusaisha.com/wp/?cat=62

M君リンチ事件の真相究明と被害者救済にご支援を!!

日本は多言語社会になりうるか?──言語とメディアリテラシー(後編)

◆前回のあらすじ

今日の日本における、英語教育に関する議論にはメディアリテラシーについての観点が欠けているように思われる。重要なのは英語をはじめとする他言語から情報を得て、多角的な観点を持つことである。多くの国の公用語である英語やスペイン語などとは異なり、日本語は日本一国でしか使用されない。日本語の情報の多くは日本から発信された情報であるため、日本的フィルタリングがかかってしまう。メディアリテラシーを高めるためにも、いくつも言語を理解できることは極めて重要である。 ※前回リンク

◆相対的に弱まる英語=西欧文明の覇権 諸文明の台頭と多言語化

さて、今後の状況を見ると外国語として英語だけ学ぶというのでは不十分かもしれない。近年、アメリカやヨーロッパの西欧文明が弱体化し中華文明・イスラーム文明・東方教会(ロシア)文明などが自身の論理を主張、「民主主義」「人権」といった西欧文明の理念を否定し、自分たちが望む体制の構築に取り組み始めた。西欧文明の英語だけではもはや不十分であり、中華文明の中国語やイスラーム文明のアラビア語といった各々の文明圏で有効な言語を学ぶことも重要になるのではないだろうか。

◆日本の学校のずさんな「英語教育」と外国人学校という選択肢

『平成28年度 英語教育実施状況調査(中学校)の結果』

しかし誠に残念ではあるが今の日本の教育現場で多言語教育を期待するのはほぼ不可能であろう。英語をまともに話せて教えられるような教員はほとんどおらず、ひどい例では自称「英語教師」が駅前の英会話学校に通っている様である。

さらに文科省の2016年の調査によると、英検準1級・TOEIC730点以上の英語力のある「英語教師」は、中学教員で全体のわずか33.6%、高校教員でも65.4%しかいないことが分かっている。もっとひどい例では、2016年に京都市を除く中学校の英語科教員でTOEICを受験した74人中、730点以上を獲得したのは16人で、約2割にすぎなかった。最低点は280点で、500点未満が14人もいたという。京都府教育委員会は「英語科教員の資質が問われかねない厳しい状況だ」としている。

※参考URL
『京都府 中学英語教員、TOEIC「合格」わずか 疑問も』
『平成28年度 英語教育実施状況調査(中学校)の結果』 

こんな状況で日本の学校(特に公立)で英語に加え、さらに第二言語として中国語や韓国朝鮮語などを学ぼうとするのは絶望的に不可能である。一部、まともな外国語教育をしている学校もあるがそれは例外である。私は日頃から「学校」という洗脳機関には、嫌悪感を抱かざるを得ない。教育委員会が生徒間のいじめ(という犯罪)による自殺事件の調査や事前防止をないがしろにしたこと、部活の顧問による生徒への体罰、そしてあまりにもずさんな「英語教育」の現状……。

本当に「センセー」方には生徒を教えようとする意志があるのだろうか。とりわけ公立学校の教員というのは公務員だから少しぐらい適当にしても、解雇されないと安心しているのではないだろうか。一体、これほど英語能力が低いのになぜ彼らはかつて英語教師を目指そうとし今は「英語教師」として私たちの税金で生活しているのか全く疑問である。

今のところ、一般的な日本人が多言語教育を期待できるのは外国人学校ぐらいしかないのかもしれない。日本の各地には台湾や韓国朝鮮、ブラジルやインドなどの様々な外国人学校がある。これらの学校なら、日本の学校よりもずっとまともな多言語教育が期待できるだろう。また一般的な日本人がこのような外国人学校に入ることで自らの社会における立ち位置を相対化できやすくなるのも長所と言える。

時代はまさに多言語化である。「日本語しかわからなくても生活できる」という意見は論外であるし、さらに「外国語は英語だけでよい」という意見も不十分である。私たちは様々な言語を身に付け、多角的な視野を養う必要がある。

▼Java-1QQ2
京都府出身。食品工場勤務の後、関西のIT企業に勤務。IoTやAI、ビッグデータなどのICT技術、カリフ制をめぐるイスラーム諸国の動向、大量絶滅や気候変動などの環境問題、在日外国人をめぐる情勢などに関心あり。※私にご意見やご感想がありましたら、rasta928@yahoo.ne.jpまでメールをお送りください。

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〈原発なき社会〉を目指して創刊5周年『NO NUKES voice』20号 6月11日発売【総力特集】福島原発訴訟 新たな闘いへ

戸田ひさよし前大阪門真市議からの「弾劾質問状」に回答します! また、私からの「ご質問」にもお答えください! 鹿砦社代表 松岡利康

6月9日に、なにかと過激な言動で有名な戸田ひさよし前大阪門真市議から私に対して「弾劾質問状」が届きました。6月7日に戸田さんらが催された、この間やり取りした前田朗教授を招いての「大学習会」について触れた5月23日付け「デジタル鹿砦社通信」(及び私のFacebook)の戸田さんについての部分に対するものです。期限が6月30日ということですので、期限の昨6月30日回答させていただきました。

「弾劾質問状」の全文は戸田さんのHP
http://www.hige-toda.com/x/c-board/c-board.cgi?cmd=one;no=11376;id=#11376
と、私の6月19日付けFacebook
https://www.facebook.com/toshiyasu.matsuoka.7
で公開されていますので、アクセスしてご覧ください。

戸田さんからの要望で公表・公開でやろうということですので、私の回答と、私から戸田さんへの「ご質問」を以下全文公開いたします。

「デマだ」「中傷だ」とお互い罵り合うのではなく、近未来的に有益になるように前向きな議論ができれば幸いです。

なお、戸田さんは5月23日付け「デジタル鹿砦社通信」の戸田さんに関する記述の部分について「撤回」と「謝罪」を要求されていますが、現時点においては「ご回答」に述べた通り相当な理由と根拠がありますので、その必要はないものと考えます。

◇      ◇      ◇      ◇      ◇      ◇

戸田ひさよし 様

ご 回 答

                           

2019年6月30日
                           株式会社鹿砦社
                           代表取締役  
                            松岡利康  

はじめに

ここ3年余り、私たちは「カウンター大学院生リンチ事件」の被害者支援と真相究明に関わってきましたが、私たちの取材や質問に多くの方々が真正面から向き合うことなく逃げ回っていることを見るにつけ、反面教師として、「そういう人間にはなりたくないな」と感じることも往々にしてありました。なので、私は戸田さんからの「弾劾質問状」に対して真正面から向き合い、私なりに真摯に回答したく思います。悪意を持った間違いはありませんが、無意識、無知による間違いは潔く訂正いたします。

また、戸田さんから途中経過も公表し公開でやりたい旨の要望もありました。すでに戸田さんのサイトでは「弾劾質問状」全文など公開されていましたが、こそこそやるのは私の性格ではなく、わざわざご連絡いただかなくても、公表・公開は望むところです。くだんの「リンチ事件」をめぐる議論も公表・公開でやりたかったのですが、関係者は逃げまくったり、単に「デマだ」「でっち上げだ」「リンチはなかった」「リンチではない」などと紋切り型の台詞を言うばかりで、きちんとした公開の議論は成立しませんでした。

この反省からも、今回、公表・公開したやり取りになり、問題点が明らかになればいいんじゃないでしょうか。

戸田さんもどこかで引用されていた記憶がありますが、「君の意見には反対だ。しかし、君が意見を言う権利は死守する」というヴォルテールの有名な言葉、議論の原点になる言葉があります。これを踏まえて、今回も前向きにしっかり議論いたしましょう!

もう14年も前になりますが、私が「名誉毀損」容疑で神戸地検特別刑事部に逮捕された際、戸田さんには想定外のご支援を賜りました。勾留理由開示公判で傍聴席の一番前でこぶしを挙げながら大声で裁判官に抗議しておられた戸田さんの姿を思い出します。これについては今でも恩義に感じています。その節はお世話になりました。

また、同年しばらくしたら戸田さんも逮捕されました。ほぼ同時期(私は7月、戸田さんは12月)に権力の弾圧を受け逮捕されたということで親近感もあります。だからこそ、少々の“ヤンチャ”はいいとしても、5年前のことで旧聞に属するとはいえ今回問題とされた「凪論」主宰者・N氏に対する行き過ぎた攻撃は残念であり遺憾です。戸田さんは、そんなに弱い者いじめをするような人ではないと思っていたからです。

戸田さんは先の統一地方選挙で、私も含め大方の予想に反し落選されました。私の高校の先輩は、前回落ち、4年間艱難辛苦を舐め年金で糊口をしのぎながら今回返り咲きました。戸田さんも、これから4年間は収入がなくなるわけで大変だと思いますが、ぜひとも捲土重来を期していただきたいと思います。

私は、個人的には戸田さんのキャラクターは嫌いではありません。むしろ小市民的な議員が多い中で、このキャラクターは議会に喝を入れるためにも必要だと思っています。

神原元弁護士のツイートより

また、「リンチ事件」に私たちが関わっているのを、「私怨と妄想にとりつかれた極左の悪事」(加害者側の代理人にして「カウンター/しばき隊」の守護神・神原元弁護士のツイート)にあるように、「私怨」だと言う人たちがいますが、私が直接リンチを受けたわけでもありませんし、李信恵氏ら誰彼への「私怨」からやっているわけではありません。趙博氏には直接裏切られましたので「私怨」がないと言えば嘘になりますが、こと戸田さんについては裏切られたこともなく「私怨」などありません。「凪論」N氏への攻撃という行き過ぎたアクションは批判しますが、戸田さんの人格批判はいたしません。この前提で議論し、わだかまりが解ければ幸いです。

戸田さんが連携されている「連帯労組(連帯ユニオン関生支部)」に対し権力の弾圧が続いています。鹿砦社は連帯労組との関係は希薄ですが、主義・主張を問わず権力からの弾圧には一致して抵抗すべきだ(「救援連絡センター」の当初からの思想でもあります)と思い、ささやかながら私どもが発行している雑誌『紙の爆弾』2019年3月号でも「救援連絡センター」代表の足立昌勝教授に寄稿いただきました。献本送付しておきますのでぜひご一覧ください。

あと、私の思想的なポジションですが、間違っても「ネトウヨ」や「極右」「レイシスト」ではありません。また、逆に「極左」でもありません。「カウンター/しばき隊」界隈の方々は私や鹿砦社を「極左」呼ばわりしますが、不正確です。先に挙げましたが、「私怨と妄想にとりつかれた極左の悪事」、これはどういう意味か? 誰が「極左」か? 何が「私怨と妄想」か? 神原弁護士にはとくとご説明いただきたいものです。「ネトウヨ」とか「極右」とか「レイシスト」と呼ばれるよりはマシかもしれませんが、あまりにひどいレッテル貼りであり物言いです。

また私は「リベラル」でも「革新」でも、ましてや戸田さんのように勇ましい「革命的左翼」でもありません。学生時代から「差別・排外主義」と闘うことは私にとって当然のことで、このスタンスは変わりませんが、体質としては、反戦、反原発、反改憲(特に9条と21条)で、ちょっと左がかった頑固な「守旧派」だと自分では思っています。しかし、私も歳を重ね、若い頃と違い、他人の反対意見にも耳を傾け柔軟に対応する度量はあるつもりです。

上記を前置きとして以下思うところを申し述べます。

6・7集会案内

〈1〉本件「弾劾」の発端

戸田さんは、去る6月7日に、ミュージシャンの趙博氏、仲岡しゅん弁護士らと共にヘイトと連帯労組弾圧に抗議する学習会を開かれました。ここに畏敬してきた前田朗教授が講演されるということで、ご恵送いただいた著書へのお礼兼ねて留意されるよう手紙を出しました。手紙は、リンチ事件の被害者支援で、いったんは「共に頑張ろう!」と意志一致していたところ、突然掌を返された趙博氏を主に念頭に置いて書いたものでした。私たちにとって趙氏は突然裏切ったA級戦犯であり到底許せない人間だからです。私たちは直接裏切られたわけですから、実感として身に染みています。前田朗教授が李信恵氏に対し『救援』紙上で、「唾棄すべき低劣さ」と断罪されましたが、趙博氏こそまさに「唾棄すべき低劣」な人間です。

また次いで、被害者M君と昵懇の間柄であったのに、こちらも離反し、たびたびM君や私たちを誹謗してきた仲岡しゅん弁護士がいたことも、私たちには疑問でした。趙氏の裏切りについては『ヘイトと暴力の連鎖』P74~79「『浪速の歌う巨人』趙博の裏切り」、『カウンターと暴力の病理』第7項「われわれを裏切った“浪速の歌うユダ”趙博に気をつけろ!」を、また仲岡しゅん弁護士については『人権と暴力の深層』第8項「M君リンチ事件に、見て見ぬふりを続ける『売り出し中』の二人の偽善者」を参照してください。

『カウンターと暴力の病理』より
『人権と暴力の深層』より

その学習会の案内に戸田さんも共催者(共謀企画者)の一人として名がありました。戸田さん一人で主催されたのなら、私も前田教授に手紙を出すこともなかったと思いますし、前田教授に挨拶するために出向いたかもしれません。戸田さんの過去の“武勇伝”=「凪論」主宰者・N氏攻撃(特に勤務先訪問)を思い出し、いわば“付け足し”として、手紙にも「デジタル鹿砦社通信」にも記載しました。これが今回「弾劾」されているものです。戸田さんについて私が問題にしているのは「凪論」主宰者・N氏への行き過ぎた行為のみです。

先に申しましたが、私が意識したのは主に趙博氏であり、比率で言えばこれが5、次に仲岡しゅん弁護士で比率2、そして戸田さんで比率1、この3人が同席することで比率2という按配です。

趙博氏は、いろんな運動に首を突っ込み、いろいろ軋轢や齟齬を起こし顰蹙を買っているとの情報が少なからずあります。仲岡弁護士も、リンチ被害者M君に手を貸すのではなく、崖から谷底に落とすようなことをやっています。正義感溢れるダイレクトな性格の戸田さんは、こうした人たちと一緒にやらないほうがいいんじゃないか、とアドバイスしておきます。趙博氏から私たちが受けたようなことになるのを懸念します。一度人を裏切った人間はまた裏切ります。くだんの本の中のタイトルに因んで言えば、「趙博に気をつけろ!」です。

その「通信」の後、末尾に記した一覧のように前田教授と私とのやり取りが続きました。

〈2〉リンチ事件と前田教授の勇気ある論評

私たちはここ3年余り、被害者らからの要請を受けて「カウンター大学院生リンチ事件」に関わり、前田教授は2度「反差別運動における暴力」という論評を『救援』紙に発表されました。戸田さんもすでに読まれているものと察しますが、非常に勇気ある、また本質を衝いた論評で、私たちも感激しましたし、おそらく戸田さんもそうでしょう。良識派の人々の間では評価が高かったものです。

この間の前田教授と私とのやり取りで、最後は前田教授が、鹿砦社を「炎上商法」と言われたのが何かのメーリングリストで暴露されたことについては「謝罪」されました。ですが私が項目を設けお尋ねしたことには、答えず逃げられました。残念なことです。上記の2つの論評のあの明晰さは一体何だったのかと落胆いたしました(ここでは戸田さんの「弾劾質問状」とは直接関係がありませんので、これ以上述べません。詳しくは「デジタル鹿砦社通信」か私のFacebookをご覧ください。このやり取りは末尾にリストアップしておきます)。

〈3〉戸田さんによる「凪論」主宰者・N氏攻撃と勤務先訪問、これに関連する地裁判決

戸田さんは、2014年5月頃、「ネトウヨ・ヘイター」「札付きの権力弾圧促進分子」として「凪論」というサイトの主宰者・N氏を攻撃し、さらにこれがエスカレートして遂に勤務先の児童相談所を訪れます。申し入れ書を作成し児童相談所所長にこれを渡し面談しN氏の配置転換を求めるためです。突然のことに衝撃を受け恐れおののき、勤務先に迷惑がかかることを懸念したN氏はサイト閉鎖を決断し、その後再開されていません。戸田さんによれば、「公然非公然の情報戦、個別撃破の電撃戦、『戸田戦略』の勝利!」と意気揚々と述べておられます。「凪論」は、けっこう有名なサイトだったらしく、左右問わず再開を望む声があるようです。

正直なところ私は、戸田さんに指摘されるまでに、この程度の知識はありましたが、もっと深くは調べませんでした。戸田さんのこの行動についての情報を見た私が思ったのは「これはマズイだろう」ということでした。このたび、戸田さんからの「弾劾質問状」で出てきましたので、私なりに調べてみました。結論から先に申し上げれば、「ここまでやる必要はないだろう」ということです。

私が14年前の「名誉毀損」事件で保釈され『紙の爆弾』を復刊しました。ご支援のお礼の意味もあり、一定期間にわたり少なからずの方々に献本送付していましたが、かなり多数の方(500人ほど)に膨れ上がり経費節減のために基本的に全廃し送らなくなり、戸田さんとは活動分野も異なり徐々に疎遠になっていきました。そして、この件(「凪論」N氏の勤務先訪問)が疎遠への決定打となりました。

今回、「弾劾質問状」を受けましたので、私の性格上徹底的に調べてみました。

まず、やはり一般市民に近い下級公務員(戸田さんが指摘される「副主幹」とは幹部でも管理職でもなく、民間で言えば係長クラスだということです)の勤務先を訪れるのはマズイと思います。

戸田さんも繋がりがある「カウンター」界隈の方々は批判者に対し勤務先に一斉電話攻撃を仕掛けたり、内容証明を送ったりするのが常套手段のようです。ある自動車販売会社の経営者には、メーカーの本社や取引銀行などに誹謗中傷の電話したり、戸田さんも交流のある、ある国会議員の選挙カーが自宅近くまで行き(自宅に行き呼び鈴を鳴らし、幸いにも家人が不在だったとの情報もあります)、それを詳細にツイートしたりしています。

さらには、あろうことか、リンチ事件や、これを惹き起こした「カウンター/しばき隊」に批判的な在日コリアンの医者が勤める公立病院にまでやんややんやと電話攻撃したりしています。いくらなんでも、人の生命に関わる問題で、これは誰が見ても非難されるべきです。普通だったら「凪論」N氏のように参ると思いますが、上記の会社社長と医者の2人は図太い神経の持ち主のようで参ることはなく反撃していますが、これは例外でしょう。戸田さんの行動もこうした類いと思っていました。

さらに、戸田さんの行動の前後、これに連繋するかのようにN氏の職場(児童相談所)には相当な数の電話があったそうです。本名や身元は明かさず、一方的に汚い言葉で暴言を吐きN氏を非難していたとのことです。児童相談所がただでさえ人出不足で忙しいことは、昨今の児童虐待に関係する報道でも想像できますが、N氏が勤務する児童相談所がてんやわんやであったことが察せられます。

戸田さんによるN氏の勤務先を訪れた行為は、思想・信条に関係なく、誰もが嫌がることです。相手が仮に「ネトウヨ」であったにしろ、逆に「極左」であっても、これは常識として慎むべきではないでしょうか。N氏は「嫌がらせ」と認識していますが、私もそう思います。

もうずいぶん前(1970年代後半)のことですが、私は大学を出て当時大阪心斎橋に在った小さな会社に勤めていましたが、在学中に学費値上げに反対し逮捕され有罪判決を受けていました。私の勤務先のビルの入口から公安の刑事が電話してきて、「出て来ないと会社に行くぞ」と脅され、やむなく出て行ったことがありました。もし刑事が会社に来て上司や経営者にいろいろ話したら、大変な騒ぎになっていたと思います。零細企業でしたので解雇になったでしょう。これと似ています。戸田さんは刑事ではありませんが、戸田さんが勤務先に来て動転したN氏の気持ちは分かります。

戸田さんは今回の選挙で、前回よりもかなり票を落とし落選となりましたが、選挙民は、見ていないようで見ています。しばらくは地元に足場を置いた運動に専念されたほうがいいのではないでしょうか。

ちょうど偶然にも、戸田さんによるN氏攻撃や勤務先訪問のネット記事を拡散したとして、N氏は「ぱよぱよちーん」こと久保田直己氏を提訴し、一審で勝訴しています(静岡地裁民事第1部平成30年(ワ)第212号。平成31年3月29日判決言渡。賠償金20万円。N氏は本人訴訟で、久保田氏の代理人は神原元弁護士)。N氏は戸田さんに恐怖を抱いているのか直接戸田さんを提訴していませんが、もし戸田さんが提訴されても同じような結果になると思います。直接でないにしろ戸田さんの行動を見る目安にはなるでしょうから、これを援用しつつ記述を進めます。

N氏は、上記久保田氏に対して提訴し勝訴したのみならず、しばき隊のトップ・野間易通氏に対しても提訴し、やはり静岡地裁で勝訴(賠償金20万円)しています。N氏に対する2つの訴訟資料を読むと、N氏への攻撃が凄まじかったこと、これにN氏がかなり参っていたことが判ります。野間氏、久保田氏、そして戸田さんの目論見は、おそらくそこにあったのではないかと推察いたします。

N氏について私はやはり「一般市民で下級公務員」と認識しています。公務員は、キャリアであるかないかで大きく「高級」か「下級」かに分けることができると思います。キャリアでなくとも、今回の児童相談所の所長や局長クラスならまだしも、N氏は「総務担当副主幹」だったそうですが、地位もさほど高くはありません。民間での「係長」クラスだそうで、やはり「下級公務員」で「一般市民」と見なしていいかと思います。公務員だからといって、すべて即公人、準公人というわけではありません。

N氏はなぜかM君の訴訟や鹿砦社が李信恵氏を訴えた訴訟にも数度傍聴に来られ、顔見知りになり簡単な会話をしました。付き合いと言えばそれだけのことで、一緒に飲食を共にしたことなどありません。N氏を、戸田さんは、「『反ザイトク側をもっぱら非難攻撃する』という『ザイトク別働隊・裁判オタク』、つまりは親ザイトク分子で、その上『札付きの権力弾圧促進分子』である凪」として、いわば「ヘイトの先頭に立っていた」人物、「ヘイトスピーチの被害者に思いを馳せたり気の毒に思ったりすることのない人物」「ネトウヨ・ヘイター」「札付きの権力弾圧促進分子」等々と詰(なじ)っておられます。事前にこのイメージがありましたので、もっと理知的でスマートな風貌を持つコワモテな方かと思っていましたが逆でした。彼はどこの組織にも属さず、サイトが閉鎖されるまでは身に付けていた法律知識を表現するブロガーにすぎず、独身で出世欲もなく、落語(傍聴の後に大阪・天満天神繁昌亭に行ってました)とサッカー(ある在日の選手のファンだとのこと)が趣味で、人の好い地方の下級公務員の中年オヤジという感じで、子どもが好きな児童相談所の職員というイメージがピッタリでした。とても「ザイトク別動隊」「ネトウヨ・ヘイター」などとは思えませんでしたし、そうした「ヘイトの先頭に立っていた」人物ということを静岡地裁も否定しています。

戸田さんがN氏の勤務先に来所された日、N氏が担当し面倒を見ていた子どもが相談所を出る日で、労いと激励の声をかけてやりたかったということでしたが、戸田さんが相談所を出られてから、上司に呼ばれ事情を聴かれたり大変だったようで、それができなかったことを悔やんでおられました。戸田さんが仰られる「子どもや社会的弱者に寄り添う気持ちが持てない者」(申し入れ書)とは逆のイメージです。

特段N氏を庇うわけではありませんが、戸田さんはN氏について牽強付会な物言いをされているのではないか、と感じました。

また、「凪論」は在特会などの「行動する保守」らに対しても批判記事を掲載していて、N氏なりにバランスを取っていたのではないか、と思います。

野間氏、久保田氏、そして戸田さんらによるネットでの非難や職場訪問が重なれば、私なら音(ね)を上げていたでしょう。私のみならず多くの方もそうだと思います。

さらに戸田さんは児童相談所を出てからN氏の自宅まで行き、自宅の写真を撮っておられます。このことはサイトでも書かれていますが、サイトに書かれていないことがありますよね? 戸田さんのサイトは複雑なので私が発見できないのかもしれませんが、その写真をN氏宛に配達証明郵便で送られましたよね? これは事実ですか? 事実であれば、これはどういう意図なのでしょうか? 常識的に見たら脅しとしか思えませんよ。実際にN氏は脅しだと感じたそうです。読者の皆様はどうお感じになるでしょうか?

ご存知のように鹿砦社は、14年前の「名誉毀損」逮捕事件で壊滅的打撃を受けました。しかし多くの皆様方のご支援で再興し、一時はヒット作が続き、かなりの利益が出て税務署に持って行かれそうになり、運動に還元することにしました。この一つに、野間氏らと繋がる「首都圏反原発連合」(反原連)に1年間で「広告代」名目で300万円余り拠出しました(が、反原連からは、感謝の言葉もなく一方的に「絶縁」されました)。反原連や、これに繋がるSEALDs-しばき隊-カウンターに疑問を持った最初のきっかけは、韓国からの京大研修員・鄭玹汀(チョン ヒョンジョン)さんへの凄まじいネットリンチでした(2015年)。母子で異国にやってきて、凄まじいネットリンチを受ければ、正義感の強い戸田さんがこれを見たら、「これはひどい!」と思われるでしょう。外国から来た人に対し、いろいろ親身に世話を焼くのではなく、逆に激しいバッシングをする――私は日本人として恥ずかしい気持ちでいっぱいでした。 

くだんの静岡地裁判決は、N氏に対する戸田さんの言動について、ほとんど「原告(注:N氏)の外部的名誉、すなわち社会的評価を低下させることが認められる」と判示しています。

特に、いまだに削除していないN氏の本名をフルネーム(最初は名字のみ、後にフルネーム)で表記し勤務先等も公開していることもまた同様の判示をされています。

さらには、「原告がヘイトスピーチを行っていたことやヘイトスピーチを先頭に立って主導していたことを被告が真実であると信じたことについて、相当な理由があるとは認められないというべきである」としています。

そうして、「本件戸田記述の記載内容について、違法性は阻却されず、原告に対する名誉毀損が成立する」と結んでいます。

ちなみに、くだんの箇所は戸田さんのサイトではいまだに掲載されています。久保田氏への訴訟で一審勝訴判決を得たN氏が今後どうするか分かりませんが、もしN氏が一審勝訴判決を基に戸田さんを提訴すれば戸田さんの敗訴は免れないと思われますので、老婆心ながら、今からでも削除されることをお勧めいたします。

〈4〉戸田さんからの具体的質問項目についてお答えします

これまでの記述で、私の回答の概略なり骨格はお分かりになるか、と思います。以下、戸田さんからの個々の具体的質問項目について申し述べます。

Q1.異論はありません。ただ、N氏が職場に居ずらくなるような、勤務先の児童相談所を訪れ、この所長宛に「申し入れ書」を渡し面談を要求する行為は賛成できません。また、戸田さんが仰られるような人に該当する者とは誰がどんな基準で判断するのでしょうか。

Q2.これも異論はありませんが、ここでも、誰がどんな基準で、戸田さんが否定される人物だと判断するのでしょうか。先の静岡地裁判決では、「原告(注:N氏)が人間らしい暖かい感情や人間としての良心を持ち合わせていない冷酷な人物であるという印象を閲覧者に与えるから、原告の外部的名誉、すなわち社会的評価を低下させることが認められる」と判示されていますが、この判示は戸田さんのサイトの文章の少なからずの箇所に及んでいます。

Q3.これには異論があります。当事者の静岡市の市議なら、申し入れたり改善を求めるのは理解できますが、戸田さんは大阪門真市の市議でいらしたのですから、他県他市の公務員の人事にまで口を出すのはいかがなものでしょうか。N氏の言動をすべて支持するわけではありませんが、遠隔地から勤務先にまで来られて抗議されるほど悪質であったとは思えません。仮に悪質であったにしろ筋違いでしょう。

Q4.戸田さんがN氏の勤務先を訪れ所長に面談したこと自体が迷惑行為ですし、N氏はおそらく数日仕事が手につかなかったんじゃないでしょうか。気が小さな方のようですし尚更です。戸田さんには、N氏が嫌がるということは分かった上での来所―所長面談だったのではないんですか? 立派な「業務妨害」です。

Q5.N氏とは市民や子どもらに「恐怖」を与えるような人物なのでしょうか。先の静岡地裁の判示で、「原告が人間らしい暖かい感情や人間としての良心を持ち合わせていない冷酷な人物であるという印象を閲覧者に与えるから、原告の外部的名誉、すなわち社会的評価を低下させることが認められる」とし、「本件各戸田記述の記載内容について、違法性は阻却されず、原告に対する名誉毀損が成立する」とされています。私はこの判決を支持します。

戸田さんの訪問や数多くの電凸攻撃などあれば、普通の企業なら解雇か、これに近い処分を受けるでしょう。N氏が、あれだけの攻撃を受けながらもいまだに勤務できているのは、「人間らしい暖かい感情や人間としての良心を持ち合わせて」いるからではないでしょうか。

Q6.2014年にはしばき隊/カウンター問題にはさほど関心がなく、「ああ、戸田さんがマズイことやったな」ぐらいにしか考えていませんでした。そして、「もうこういう人とは付き合わないでおこう」と思い、連絡などやめました。また、事実関係について戸田さんのサイトでの記述には間違いないだろうと思っていました。なので、戸田さんには特段確認する必要もないと考えていました。逆に事実関係を確認すべきなのはN氏に対してだと思います。

(2)静岡市児童相談所には取材していません。N氏の立場を顧みると、平穏に戻っているところで、再び「寝た子を起こす」ようなことはしたくありませんから。

(3)N氏本人には、取材班メンバーの協力を得て長時間取材し疑問点を幾つかたずねましたが、戸田さんの訪問や野間氏らによるネット攻撃には非常に迷惑し精神的に参ったということを繰り返しておられました。私がN氏の立場だったら同様だと思います。

(4)N氏は、戸田さんらによる攻撃には精神的も参り、戸田さんの勤務先来所を機にサイトを閉じたということです。「逃亡」でもなんでも構いませんが、人ひとりの言論を封じる結果になりました。N氏はたかが地方の一下級公務員ですよ、果たしてここまでやる必要があったのか疑問です。N氏には確かに右翼的言辞も散見されますし、逆に在特会やネトウヨに対する批判的コメントもあります。私は、平たく言って、N氏の言動をかなりの部分で評価できません。支持できる部分は、むしろ少ないです。組織をバックにしているわけでもありませんし、これぐらいは言うに任せたらいいんじゃないでしょうか。

戸田さんともあろう方が、こんな地方の下級公務員をイジメてどうするんですか。弱い者いじめとしか映りませんよ。せっかく直撃するのなら、もっと大きな相手、強者、権力になすべきでしょう。

今回、戸田さんによる「凪論」主宰者・N氏攻撃について、N氏本人への長時間の電話取材や前出の判決文の解読など徹底的に調べました。知らないことがずいぶんと判りました。「デマ中傷」どころではなく、戸田さんがサイトに記述されている以上に、凄まじい事実が出てきました。もうこんなことはやめるべきです。いくら「反差別」「反ヘイト」を旗印にしても、その頃から今に至るまで続く、暴言や電凸攻撃を一斉に行うようなネットリンチ(私刑)、ましてや職場訪問などはやめるべきだと思います。私の言っていることは間違っているでしょうか?

非礼を顧みず忌憚なく申し述べさせていただきましたので不快な点があれば何卒ご容赦ください。

以上、戸田さんの「弾劾質問状」への回答とさせていただきます。

《付 記》

【前田朗教授―鹿砦社・松岡利康の公開書簡】

◎松岡利康 前田朗教授の豹変(=コペルニクス的転換)に苦言を呈す!(2019年5月23日付けデジタル鹿砦社通信)http://www.rokusaisha.com/wp/?p=30689
◎前田朗氏 鹿砦社・松岡利康さんへの返信(2019年5月26日付け前田朗氏ブログ)http://maeda-akira.blogspot.com/2019/05/blog-post_56.html
◎松岡利康 前田朗教授の誤解に応え、再度私見を申し述べます(2019年5月28日付けデジタル鹿砦社通信)http://www.rokusaisha.com/wp/?m=20190528
◎前田朗氏 鹿砦社・松岡利康さんへの返信(2)(2019年6月1日付け前田朗氏ブログ) http://maeda-akira.blogspot.com/2019/06/blog-post.html
◎松岡利康 「唾棄すべき低劣」な人間がリーダーの運動はやがて社会的に「唾棄」される! 前田朗教授からの再「返信」について再反論とご質問(2019年6月4日付けデジタル鹿砦社通信)http://www.rokusaisha.com/wp/?p=30796
◎前田朗氏 鹿砦社・松岡利康さんへの返信(3)(2019年6月9日付け前田朗氏ブログ) https://maeda-akira.blogspot.com/2019/06/blog-post_22.html
◎松岡利康 前田朗先生、私の質問に真正面からお答えください!このリンチ事件をどう本質的に解決、止揚するかが社会運動の未来のために必須です(2019年6月13日付けデジタル鹿砦社通信) http://www.rokusaisha.com/wp/?m=20190613
◎前田朗氏 鹿砦社・松岡利康さんへのお詫び(2019年6月13日付け前田朗氏ブログ) https://maeda-akira.blogspot.com/2019/06/blog-post_13.html
◎松岡利康 前田朗教授が「お詫び」ブログを公開! 私との公開書簡も、私の質問に答えず一方的に「終了」宣言。はたしてこれでいいのでしょうか?(2019年6月17日付けデジタル鹿砦社通信)http://www.rokusaisha.com/wp/?p=31064

【その他の関連記事】

◎特別取材班 カウンター/しばき隊の理論的支柱・師岡康子弁護士による犯罪的言動を批判する! 前田朗教授に良心があるのなら、師岡のような輩と一緒に行動してはいけない!(2019年5月27日付けデジタル鹿砦社通信)http://www.rokusaisha.com/wp/?m=20190527
◎特別取材班 リンチ被害者M君勝訴! 加害者に約115万円の賠償金支払いが確定! 直ちに賠償金を支払え! 「M君敗訴」などという「誹謗中傷は許さない!」(神原弁護士の言)(2019年6月14日付けデジタル鹿砦社通信)http://www.rokusaisha.com/wp/?m=20190615
◎横山茂彦 しばき隊リンチ事件をめぐる松岡利康氏と前田朗氏の相論 ── 論点の整理、および事件の解決・和解のために (2019年6月18日付けデジタル鹿砦社通信)http://www.rokusaisha.com/wp/?p=31121

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戸田ひさよし様
             

ご 質 問

                           

2019年6月30日
                           株式会社鹿砦社
                           代表取締役  
                            松岡利康  

戸田さんからの「弾劾質問状」には、私なりに真っ正面から取り組み真摯にお答えいたしました。

このたびは、あらためて戸田さんに以下のご質問をさせていただきますので、来る7月21日(日)までにご回答お願い申し上げます。ご回答の期限は、戸田さんからの「弾劾質問状」のご回答期限と同じ3週間とさせてください。

ご質問1: 戸田さんは6月6日付けサイトにおいて、私を「こじれサヨ」と揶揄されていますが、この根拠を具体的に明らかにしてください。

私は、鹿砦社が発行している『NO NUKES voice』で原発反対を謳い、この関係の集会には時々参加することはあっても、こうした反原発運動以外には、社会運動の場にはほとんど登場していません。他に「カウンター大学院生リンチ事件」被害者支援と真相究明活動ぐらいですが、私がどこで何をどのように「こじらせてしまった」のか教えてください。

ご質問2: 先の「ご回答」でも連々申し述べさせていただきましたが、私が悪意を持って、具体的にはどのように戸田さんへ「酷いデマ中傷」(6月6日付け「ちょいマジ掲示板」)を行ったのか明らかにしてください。

「凪論」追及(児童相談所所長への「申し入れ書」、勤務先の児童相談所への訪問など)に対する事実関係については戸田さんのサイトの記事をほぼ100%信じていますので「デマ」ではなく、これに対する私の論評や意見は、静岡地裁の判決に沿ったもので根拠があり「中傷」にはあたらないと考えています。

私たちは、この3年余り、「カウンター大学院生リンチ」事件の被害者支援と真相究明に関わってきましたが、「カウンター/しばき隊」界隈の方々が真っ先に口にするのは「デマ」という言葉です。戸田さんのケースには戸田さんご自身のサイトでの記述を基にしていますので「デマ」ではありません。私の論評が「デマ」であれば、戸田さんの記述も「デマ」ということになってしまいます。

ご質問3: 6月1日の戸田さんのサイトで、「『松岡氏の旧ブント仲間OBからの借金踏み倒し事件』を戸田が信頼する複数の被害関係者から話を聞いて」「『借金事件』は裁判になったけれども、原告(貸した側)が(不当に?)負けた」云々とありますが、この原告の名前、裁判所、事件番号を明らかにしてください。これが明らかにできなければ提訴も可能ですが、戸田さんは間違いなく敗訴しますよ。

私にはここで戸田さんが指摘されるような経験の記憶が全くありません。借金関係でこれまで裁判になったことはありません。戸田さんは、おそらく人の噂や悪口が好きな連中の言葉を簡単に信じられているのではないでしょうか。逆に私は貸し付けて返済しない人に対して法的措置を執り差し押さえたことが最近でもありましたが。

お蔭様で現在の鹿砦社は再起を果たし健全経営で支払いなどの遅れもありません。むしろライターさんなど個人事業主には、支払い期日よりもなるべく早く支払うように努め感謝されています。

ちなみに、14年前の「名誉毀損」逮捕事件で、ひどい話ですが、銀行や公的機関などからの借り入れもできなくなりましたので、いきおい業績アップに頑張らざるをえなかったのですが。

ご質問4: 「財政厳しき左派メディア」の『救援』『人民新聞』に「大規模連続広告を出し続けて『重要な金主』になっている」、「松岡氏にしたら『オレが左翼を支えてやってるんだ』、という『驕り』が強まっているんじゃないでしょうか?」と書かれていますが、これは一体どういう意味でしょうか? ご説明いただけますか?

『救援』の広告は1回5万円、『人民新聞』は1万円です。これで「オレが左翼を支えてやってるんだ」もないでしょう。ご承知のように、私と鹿砦社は、14年前の「名誉毀損」逮捕事件で壊滅的打撃を蒙りました。運よく、多くの方々のご支援で再起できました。このお返しの意味も込めて、できるだけ運動に還元しようとしていて、私なりの恩返しのつもり以上の気持ちはありません。この行為のどこがいけないんですか? 人の厚意に対し、真っ直ぐに捉えず、「オレが左翼を~」というように曲解して仰るのはおやめください。

ご質問5: 私(たち)は、この3年余り「カウンター大学院生リンチ事件」の被害者支援と真相究明に関わってきました。この事件について戸田さんはどう思われますか? 正義感の強い戸田さんなら、きっと「許せない!」と思われるはずです。

私たちが心血を注いで作った本5冊を送りましたので、ご一読の上、ぜひともご意見をお寄せください。リンチの加害者らの周辺からは、「デマ」「でっち上げ」「リンチはなかった」「リンチではない」という言葉でしか、“反論にもならない「反論」”があるのみですが、戸田さんならもっと違う反応があるものと信じています。

ご質問6: 前田朗教授は『救援』紙に2度「反差別運動における暴力」という論評を発表されました。最近ではこの論評をみずから否定される言動に接し、私たちや、発表時に前田教授の勇気ある言動に感激し高く評価した多くの人たちは落胆いたしましたが、前田教授の2つの論評と、これをみずから否定されるような前田教授の言動について戸田さんのご意見、ご感想を述べてください。

『救援』(580号。2017年8月10日発行)
『救援』(589号。2018年5月10日発行)

ご質問7: このかんの前田教授と私とのやり取りについて戸田さんのご意見をお述べください。また、最後には私からの設問には答えず、逃げた印象がありますが、これについても戸田さんのご意見をお述べください。

ご質問8: 「リンチ事件」の被害者支援と真相究明の過程で、当初被害者の味方のように私たちの前に現われ、すぐに掌を返した、6月7日の学習会の共催者の趙博氏の行動をどう思われますか?

被害者が趙博氏に渡したリンチ事件関係の貴重な資料は戻って来ていません(結局、この資料の取得と被害者サイドの動きを探ることが目的だったという人もいます)。私から申し上げれば、はっきり言って、簡単に人を裏切り、先の「ご回答」でも述べましたように前田朗教授が李信恵氏に対して『救援』紙上で断罪された「唾棄すべき低劣」な類いの人間で、正義漢で少なくとも人を裏切ることをよしとしない戸田さんが付き合うような人物ではありません。実際に趙博氏に裏切られた私が言うのですから間違いありません。「朱に交われば赤くなる」という諺を想起してください。

ご質問9: その学習会の参加者の仲岡しゅん弁護士の、リンチ事件についての言動についても戸田さんはどう思われますか?

以上、よろしくお願いいたします。

なにが「デマ」だ! なにが「でっち上げ」だ! 徹底した調査・取材によって発行したリンチ関連本!

滋賀医科大学附属病院問題をめぐるMBSのTVドキュメンタリー「閉じた病棟~大学病院で何が起きたのか」今晩深夜0時50分より放送!

前立腺がんの放射線治療打ち切りを巡り、滋賀医科大学附属病院の医師や治療を望む患者らと、病院側との間で持ち上がった対立に、関係者の証言から迫るドキュメンタリー「映像’19 閉じた病棟~大学病院で何が起きたのか」が6月30日深夜(7月1日午前)0時50分、MBS(大阪市)で放送される。

◎MBSのドキュメンタリー「閉じた病棟~大学病院で何が起きたのか~」
https://www.mbs.jp/eizou/backno/190630.shtml

 
MBSのドキュメンタリー「映像'19 閉じた病棟~大学病院で何が起きたのか」6月30日深夜(7月1日午前)0時50分放送

滋賀医大病院をめぐる問題については、本通信でも継続的に取り上げてきたが、いよいよ在阪キー局であるMBSが1時間のドキュメンタリーを今夜放送する。

MBSはTBS系の大阪にある放送局だ。歴史的にTBSへの対抗心が強く、これまでも優れた報道番組を多数生み出してきている。滋賀医大病院問題とは関係ないが、わたしたちが子供のころから現在まで続く「仮面ライダー」シリーズをテレビ化したのも、MBSだった。

「映像’19 閉じた病棟~大学病院で何が起きたのか」のディレクター、橋本佐与子氏が、取材班とともに問題の現場へ登場されたのは、今年の早い時期だったと思う。滋賀医大病院問題については、わたしが関わる前から、朝日新聞が継続的に報じていたが、テレビメディアで継続的な取材・報道を続ける局はなかなか出てこなかった。患者会の皆さんは昨年の秋以降、短期間で2万8千筆の署名を集めた。「岡本医師の治療継続」を求める声は、厚労省、文科省、国会議員へ届けられた。その場面にも橋本ディレクターはじめ、MBS取材陣の姿があった。

しかし、まさか1時間もの長編ドキュメンタリーを放送することになろうとは、わたしも考えなかった。大手メディアとは異なり、小さな影響力しか持たないわたしのようなフリーライターにとっても、橋本ディレクターとMBSのアクションは、うれしい誤算だった。この問題を取材し、話すと「ああよくある医学界の話ね」と反応する方が少なくない。正直な感想なのであろうが、こういう問題が「よくある」ことであってはならない、とわたしは痛切に感じる。

たとえば、現在滋賀医大のHP「病院からのお知らせ」には、6月11日に「前立腺がん治療に関する情報提供」が掲載されているが、その内容は国立がん研究センター発表の報告を、明らかに改ざんしたものだ(この問題については6月28日、本通信で【[特別寄稿]滋賀医科大病院が国立がんセンターのプレスリリースを改ざん──岡本メソッドに対する印象操作か?】が黒藪哲哉氏により報告されている)。

こういう明らかな改ざんが、病院長の名前で堂々と行われて問題はないのか?
黒藪氏の報告の中に映像が紹介されている。この映像(https://youtu.be/w3rPzAk9G3E)をぜひご覧いただきたい。

質問をする女性に対して事務職員は、明確に「この資料は国立がん研究センターが作成したものです」と語っている(映像では質問者と回答者の名前も確認することができる。不審に思われる読者諸氏は滋賀医大病院の当該職員に直接確認されたい)。

 
滋賀医大小線源患者会HP

さらに、6月25日にも「病院からのお知らせ」に、一部明らかな虚偽が掲載された。

続発する問題の発生源、滋賀医大病院を橋本ディレクターはじめMBS取材陣はどのように描き出すのか? 視聴可能区域にお住まいの方は、是非ご覧いただきたい。拙宅にはテレビがないので、わたしは既に知人のお宅にお邪魔する準備を整えた。なお、滋賀医大病院にかかわる問題の総体は、以下のサイトに詳しく掲載されている。引き続き正当な「解決」を見届けるまで、この問題は追及したい。

◎滋賀医大小線源患者会HP https://siga-kanjakai.syousengen.net/

◎ネット署名へもご協力を! http://ur0.link/OngR

《関連過去記事カテゴリー》
滋賀医科大学附属病院問題 http://www.rokusaisha.com/wp/?cat=68

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

創業50周年!タブーなき言論を! 月刊『紙の爆弾』7月号
〈原発なき社会〉を目指して 創刊5周年『NO NUKES voice』20号 【総力特集】福島原発訴訟 新たな闘いへ
田所敏夫『大暗黒時代の大学──消える大学自治と学問の自由』(鹿砦社LIBRARY 007)

《殺人事件秘話19》死刑回避を求めた遺族 坂出3人殺害事件の知られざる後日談

発生当初に大々的に報道された事件について、のちにわかった重大な事実が十分に報じられず、世間に知られずじまいになっている例は多い。12年近く前に起きた坂出3人殺害事件もそういうことがあった事件の1つだ。

◆報道が過熱し、被害者の父親を犯人視したメディアも・・・

2007年11月15日の夜、香川県坂出市で両親と暮らす5歳と3歳の姉妹が、隣で暮らす58歳の祖母A子さん方に泊まりに行き、翌朝までに3人揃って失踪した。A子さん方では、寝室のカーペットがL字に切り取られ、その下の畳には血が染み込んでいた。

警察は3人が犯罪に巻き込まれたとみて、捜査を展開した。マスコミも現地で熾烈な取材合戦を繰り広げた。そんな中、姉妹の父親がマスコミから確たる根拠もなく犯人視される報道被害も発生。若手女優がブログで男性を犯人扱いするようなことを書き、芸能活動の休止に追い込まれたりもした。

そんな事件で、容疑者として検挙されたのは、川崎政則という61歳の男だった。川崎は、A子さんの妹B子さんの夫だったが、B子さんが川崎に内緒でA子さんに繰り返し多額の金を貸したため、川崎家も借金生活に陥り、家庭が崩壊。さらに事件の少し前、B子さんは肺がんで亡くなっていた。そんな事情から、A子さんを恨んでいた川崎は、事件の日の深夜、A子さん宅に侵入し、持参した包丁で就寝中のA子さんを刺殺。さらに泊りに来ていた小さな姉妹も刺し殺したのだ。

川崎は3人を殺害後、車で遺体を運び出し、坂出港近くの空き地の土中に埋めていた。

被害者3人の遺体が埋められていた空き地

◆娘と曽孫2人を殺害された男性が裁判で情状証人に

川崎はその後、2009年に高松高裁で死刑判決を受け、控訴、上告も棄却されて2012年に死刑判決が確定した。そして2014年に収容先の大阪拘置所で死刑を執行された。この間、発生当初は大きな注目を集めた事件も、いつしか人々の記憶から消え去っていった。

私がこの事件を調べ直し、ある特異な出来事が起きていたのに気づいたのは、2017年のことだった。川崎に対する高松高裁の判決によると、被害者のA子さんの父親が控訴審の公判に弁護側の情状証人として出廷し、「寛大な処罰」を求めていたというのだ。これはつまり、川崎の死刑が回避されることを求めたに他ならない。

A子さんの父親は、A子さんと共に川崎に殺害された小さな姉妹の曽祖父でもある。親族を3人も殺された犯罪被害者遺族が、犯人の裁判で死刑回避を求めるというのは、極めて異例の出来事であるのは間違いないだろう。

そこで私は、A子さんの父親本人に話を聞いてみたいと思い、川崎の弁護人を探し当て、取材の仲介を依頼した。だが、複数いた弁護人の中でA子さんの父親と連絡を取り合っていた者はすでに亡くなっており、弁護人もA子さんの父親と連絡を取れない状態になっているとのことだった。A子さんの父親は、2017年の時点で生きていれば相当高齢のはずだから、そもそも存命かどうかも微妙だったが、こうして結局、私はA子さんの父親と会えなかったわけだ。

◆異例の出来事に関する報道は一切見当たらず

判決に示された事実関係を見ていくと、A子さんの父親は事件前、A子さんのことを批判する川崎を逆にしかったこともあったという。また、A子さんの父親から見ると、川崎は娘や曽孫たちを殺した犯人である一方で、殺された娘とは別の娘(B子さん)の夫でもあり、孫たちの父親でもあった。そのような複数の事情が重なり合い、川崎の死刑回避を求めるに至ったのではないかと私は推測したが・・・今となっては、真相を追及するのは難しい。

私は、新聞社各社の過去記事のデータベースを調べたが、A子さんの父親が控訴審の公判で川崎の死刑回避を求めたことを報じた記事は一切見当たらなかった。新聞各社がこの事実を知りながら、あえて報道しなかったのか、裁判を取材しておらず、この事実に気づかなかったのかはわからない。いずれにせよ、マスコミの事件報道は必ずしも事件の全体象や核心を伝えたものではないことを示す顕著な例ではあるだろう。

殺人事件の現場となったA子さん方。奥は、殺された姉妹の家

▼片岡健(かたおか けん)
全国各地で新旧様々な事件を取材している。最新作は編著「さよならはいいません ―寝屋川中1男女殺害事件犯人 死刑確定に寄せて」(Kindle)。

創業50周年!タブーなき言論を! 月刊『紙の爆弾』7月号
「絶望の牢獄から無実を叫ぶ ―冤罪死刑囚八人の書画集―」(片岡健編/鹿砦社)

[特別寄稿]滋賀医科大病院が国立がんセンターのプレスリリースを改ざん ── 岡本メソッドに対する印象操作か? 黒薮哲哉

滋賀医科大学医学部附属病院が、国立がん研究センターが公表したプレスリリースを改ざんして、6月11日に、同病院のウェブサイトに掲載していたことが分かった。

この資料は、国立がん研究センターが公表した時点では、1ページに満たない短い資料だった。ところが滋賀医科大は、これに約2ページ分の情報を複数の資料から抜粋して再構成し、3ページに編集した。そして、これら全部が国立がん研究センターによるプレスリリースであるかのように装って掲載したのである。

何が目的でこのような大がかりな改ざん行為に及んだのだろうか。既報したように、滋賀医科大病院は、岡本圭生医師による高度な小線源治療(前立腺癌が対象)を年内で中止して、岡本医師を病院から追放しようとしている。それを正当化するためには岡本メソッドが、他の癌治療と比較して、継続するだけのメリットがないという世論を形成することが必要になる。そこで権威のある国立がん研究センターのロゴが入ったプレスリリースを改ざんして、自分たちの目的に沿った内容に改ざんしたである。

具体的な手口は、次のYouTubeで紹介している。滋賀医科大病院に問い合わせた際の音声も、そのまま収録した。


◎[参考動画]滋賀医科大学のフェイク(安江博 2019/6/26公開)
https://www.youtube.com/watch?v=w3rPzAk9G3E

◆がんセンターの資料は1ページ目だけ

フリーランス記者の田所敏夫さんらが、この改ざんについて、国立がん研究センターへ問い合わせたところ、YouTubeで示されている部分のみが同センターが発表した部分であることが判明した。

国立がん研究センターは、元々のプレスリリースと改ざん部分の区別について、田所さんに対し、次のように文書で回答している。

「お問い合わせにつきまして、担当部署に確認いたしました。
 当センターの情報は、1ページ目の当センターロゴから前立腺がんの表まで、そして、1ページ目の用語の説明のみでございます。以上、ご報告いたします。」

つまり約2ページ分を滋賀医科大病院が我田引水に「編集」して、元々のプレスリリースを含む3ページの資料に編集し、あたかもそれが国立がん研究センターが発表したものであるかのように装って、病院のウェブサイトに掲載したのである。

改ざんされた資料は次のURLでアクセスできる。オリジナル(国立がんセンターのプレスリリース)と比較してほしい。

◎[参考資料]改ざんされたプレスリリース
https://www.shiga-med.ac.jp/hospital/cms/file.php?action_disp&id=1156&fid=2013

 
改ざんされたプレスリリース

◆何が加筆・編集されたのか?
 
滋賀医科大学病院が改ざん・編集により印象操作を企てたのは、前立腺癌に対する4つの治療法における5年後の非再発率である。それによると次のような成績になっている。

・ロボット支援前立腺全摘除術(弘前大学):97.6%
・外照射放射線治療(群馬大):97.6%
・小線源治療(滋賀医大):95.2%
・重粒子線(放射線医学総合研究所病院):不明
・小線源治療(京都府立医大):94.9%

これらのデータを見る限りでは、滋賀医科大学の小線源治療(岡本メソッド)にはまったく優位性がないことになる。それどころかロボット支援前立腺全摘除術か外照射放射線治療を受けた方が、岡本メソッドを受けるよりも5年後の非再発率が高いことになる。当然、岡本メソッドの中止と岡本医師の追放はやむを得ないという世論が形成されかねない。おそらく滋賀医科大の塩田浩平学長は、それが目的でこのような誤解を与える記述の掲載を許可したのである。

◆データのトリック

これらのデータには、専門家でなければ見破れない巧なトリックが隠されている。端的に言えば、基準が異なるものを比較しているのだ。比較するのであれば、比較の基準が同じでなければならない。滋賀医科大病院は、その基本的な学術上のルールすらも無視しているのだ。

周知のように前立腺癌の検診は、血液を調べるPSA検査により行われる。PSAの数値が4.0 ng/mLを超えると前立腺癌の疑いがあり、精密検査で癌を発症しているかどうかを確定する。

意外に知られていないが、実はこのPSA検査は、前立腺癌の治療を受けた後の経過観察でも行われる。

施術方法のいかんを問わず、治療を受けた患者のPSA値は下降線をたどり、横ばいになるのだが、再発すると再上昇に転じる。この原理を応用して、医師は、PAS値の変化を観察することで、癌が再発したかたどうかを判断するのである。
 
この点を前提にしたうえで、データの改ざんについて説明する前に、前立腺癌の治療法についてもあらかじめ言及しておかなくてはならない。前立腺癌の治療では、ホルモン療法と呼ばれるホルモンを投与する療法により、施術前に癌を委縮させる方法が適用されることがままある。癌を小さくしたうえで、施術するのだ。

ホルモン治療が効力を発揮した場合、PSA値は下降する。そしてホルモン治療が終わった後も、1年から2年ぐらいの期間はその効用が維持されるので、PSAは上昇しない。

滋賀医科大が提示した他の医療機関のデータは、ホルモン治療の効用が持続している期間を含めた非再発率なのである。

とりわけ、弘前大学のデータにいたっては、論文の中でも、経過観察の期間が30カ月であることを明記している。それにもかかわらず都合のよいデータだけを提示して、あたかもロボット支援前立腺全摘除術と岡本メッソドでは、大きな違いがないような印象操作を行っているのである。

◎患者会のURL https://siga-kanjakai.syousengen.net/
◎ネット署名へもご協力を! http://ur0.link/OngR

◎[関連記事]黒薮哲哉[特別寄稿]小線源治療患者会が国会議員と厚生労働省へ嘆願、2万8,189筆の命の署名を提出(2019年3月15日付けデジタル鹿砦社通信)

▼黒薮哲哉(くろやぶ・てつや)
フリーランスライター。メディア黒書(MEDIA KOKUSYO)の主宰者。「押し紙」問題、電磁波問題などを取材している。

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安倍イラン訪問と国益の危機 ── タンカーが攻撃されて戦争が起きようとしていた時、この男は何も出来ずに晒しものになっていた!

◆単に「会った」というだけの外交

帰国した安倍総理が、イラン訪問の「成果」を誇っているという。銀座のステーキ屋で森喜朗元総理らと会食し、「西側の首脳の中で(最高指導者の)ハメネイ師に会えたのは自分だけだ」と「成果」を誇示したというのだ。

自分の訪問中に日本の企業の船舶が「攻撃」され、帰国後にはアメリカの無人機偵察機が撃墜されるという交戦事態が起きた。これが偶発的なことではない証拠に、アメリカは戦争を準備していたのだ。帰国と入れ替えにアメリカによる「戦争の危機」が迫っていたというのに、この男はそれを「成果」だと言っているのだ。

つまり、国際的な政治危機のなかで、なんら具体的な政策を持たずにイランを訪問してみたものの、アメリカの説によればその訪問国によって自国のタンカーが攻撃され、みずから「同盟国」としているアメリカはイランを攻撃しようとしていたのだ。悪くすれば、アメリカとイランが戦争を始めているなかで、安倍は出国できなくなる可能性すらあったのである。


◎[参考動画]“仲介役”の安倍総理 イラン最高指導者とも会談(ANNnewsCH 2019/6/13公開)

◆訪問が戦争への「最後通牒」になっていた可能性も

そもそも今回のイラン訪問の最大の目的は、アメリカとイランの「対話」を仲介することだった。そしてそれは、ハメネイ師によって明確に否定されたのだ。「アメリカは体制転覆を狙う意図を持っていない」というトランプ大統領のメッセージが、安倍首相を通じてイラン側に伝達された。これに対してハメネイ師は「アメリカは体制転覆の意図を持っていないのではなく、体制転覆を引き起こす能力を持っていないだけだ」と喝破したという。

「トランプはメッセージをやりとりするには、ふさわしい相手ではない」(ハメネイ師)と言うのを、黙って聞いているしかなかった安倍総理が「日本外交の成果」などと言えたものか。もしも20日のイラン攻撃が中止(10分前にトランプがビビった)されていなかったら、安倍総理は「西側の首脳の中で(最高指導者の)ハメネイ師に最後通牒を伝えたのは自分だ」ということになっていたはずだ。植民地国のかいらい政権よろしく、アメリカの「特使」のような立場でイラン訪問をしていたことになる。

アメリカは10年に一度は戦争をしないと成り立たない、軍産複合体(産業関係者は家族をふくめると3000万人で、人口の11.5%にあたる)を、その社会に抱えている国家だ。戦争が産業であり、戦争をやめてしまうと失業者が出る戦争国家なのだ。したがってその外交は平和を維持するためにものではなく、戦争を生じさせるために緊張感を高める役割をもっている。今回、安倍総理はアメリカの戦争のためにイランを訪問した。その本質をあますことなく暴露するものとなった。

◆歓迎されてあたりまえの日本とイランの関係

イランは親米だったパーレビ国王を倒したイスラム革命(「アメリカに祖国を売るシャーに死を!」)から40年である。反米思想は社会の隅々にまで浸透している。中東諸国では初等教育時から広島・長崎の原爆投下の残虐性が教育されているという。トルコやイランなど、中東諸国が日本に友好的なのは、ロシアの脅威を日露戦争が取り除いたことに始まり、イランにおいては日章丸事件での日本の原油輸入によるものだ。

すこし解説しておくと、1953年当時イギリスが支配権を継続していたイランの原油を、出光石油の日章丸が海上封鎖をくぐりぬけて日本にもたらしたもので、イギリスの植民地支配を最終的に終わらせる結果となった。いわばイラン独立を日本が支援したといえるのだ。

こうした両国の歴史から、安倍総理が歓待されるのは当たり前のことなのである。出光佐三および出光計助ら当時は中小企業にすぎなかった出光石油の功績によるものなのだ。イランをよく知るジャーナリストによると、1991年湾岸戦争直後に、イラン領内に逃れたクルド難民支援をしているNGOに携わるボランティアとしてであったが、「日本は、次はいつアメリカと戦うんだ、次回は事前にイランにも教えてくれよ」と事あるごとにイラン人に言われるのに閉口したという。

そんな反米思想をもっているイランに、こともあろうか安倍総理はアメリカの手先として訪問したのである。トランプが離脱した核合意など、もっぱらアメリカへのおもんぱかりで、日本のイランからの原油輸入はかつての30%近くから一桁にまで減っている。その分、サウジなど価格の高い国から買わざるをえない、国の損益を招いてきた。安倍外交は、まさに国益を損ずることにのみつながりそうだ。

日本の貿易会社がチャーターしたタンカーが攻撃をうけても、ソマリアに派遣されている自衛隊護衛艦あさぎりは動かなかった。アメリカが派遣している空母打撃団がイランに攻撃されたら、どう動くのだろうか?

▼横山茂彦(よこやま しげひこ)
著述業・雑誌編集者。主な著書に『軍師・黒田官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)、『真田一族のナゾ!』『山口組と戦国大名』(サイゾー)など。医療分野の著作も多く、近著は『ガンになりにくい食生活――食品とガンの相関係数プロファイル』(鹿砦社LIBRARY)

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