ムエタイ興行、ルンピニージャパンタイトルマッチ3試合は1ラウンドKO決着!

ムエタイを掲げるセンチャイジム興行の年内最終興行として組まれた6つのタイトルマッチ、ムエタイオープンタイトル三つは判定決着ながら白熱した展開。

翔(しょうた)センチャイジムの最終試合は引分け。国内王座を5つ獲得の実績を残し、ここまで戦って来て獲れたチャンピオンベルトには、センチャイ会長から与えられたチャンスと育て上げて頂いた感謝を述べ、引退テンカウントゴングを聴いた。

引退テンカウントゴングに送られる翔(しょうた)
猛攻始まったUMAが喜入衆を追い回す

◎MuayThaiOpen.47 / 12月1日(日)新宿フェース 15:30~19:55
主催:センチャイジム / 認定:ルンピニージャパン(LBSJ)

◆12. ルンピニージャパン・ウェルター級タイトルマッチ 5回戦  
チャンピオン.喜入衆(NEXT LEVEL渋谷/66.5kg)
    vs
UMA(K&K BOXING CLUB/66.4kg)

勝者:UMA / TKO 1R 1:54 / カウント中のレフェリーストップ
主審:少白竜

初回早々のローキックから接近してUMAがすぐ打って出る圧力があった。

喜入の隙を突いて素早く左ヒジ打ちを打ち込むと、喜入はノックダウン。

そこからUMAの倒しに掛かる勢いは増し、休ませない猛攻。コーナーでパンチを打ち込み喜入をスリップダウンさせる。

そのまま追い続け左ハイキックから蹴りの連打で喜入を倒し、タオル投入によるものか、いずれもレフェリーが試合をストップする判断を下し、UMAが第2代チャンピオンとなる。

UMAの左ヒジ打ちが喜入衆にヒットし、ノックダウンを奪う
UMAの猛攻の末、倒されてしまった喜入衆

◆11. ルンピニージャパン&MuayThaiOpenバンタム級王座統一戦 5回戦

パンチの有効打と蹴りの反則でダメージ深くなってしまった壱世

ルンピニージャパンChamp.壱・センチャイジム(与那覇壱世/センチャイ/53.35kg)
    vs     
ムエタイオープンChamp.岩浪悠弥(橋本/53.45kg)
勝者:岩浪悠弥 / KO 1R 1:15 / 3ノックダウン / 主審:神谷友和

けん制のパンチからロープ際で岩浪のパンチ連打で壱世からノックダウンを奪うも倒れた壱世の顔面を蹴ってしまった岩浪。これが反則と判断したレフェリーがノックダウンは認めるが反則打として岩浪から1点減点を宣言。

更に壱世に1分間の回復インターバルを与える。その後の再開もダメージが残る壱世に岩浪がパンチの連打で続けて計3度のダウンとなった時点で岩浪のノックアウト勝利となった。

14連勝中の壱世に勝利した岩浪は「今後もっと上に行けるように頑張ります」と語った。岩浪悠弥は第4代ルンピニージャパン・バンタム級チャンピオン。ムエタイオープン・バンタム級王座初防衛成る。

岩浪悠弥の右ハイキックから壱世を追い込む突破口となった
壱世から2度目のノックダウンを奪う岩浪悠弥
「壱世を倒すのは俺しかいない」と豪語して臨んだ岩浪悠弥、左は橋本敏彦会長

◆10. ルンピニージャパン・スーパーウェルター級王座決定戦 5回戦

実方拓海の左ストレートが齊藤敬真にヒット、最初のノックダウンを奪う

LBSJスーパーライト級チャンピオン.実方拓海(TSK Japan/66.45kg)
    vs
齊藤敬真(インスパイヤードM/66.4kg)
勝者:実方拓海 / KO 1R 2:15 / 3ノックダウン
主審:シンカーオ・ギャットチャーンシン

スーパーライト級の実方拓海がスーパーウェルター級王座決定戦に出場。

実方は初回からローキックの様子見から距離を詰め、左フック、ストレート。

いずれもパンチの攻勢で3度のノックダウンを奪って危なげない快勝で2階級制覇。第2代チャンピオンとなる。

最後は左ストレートで齊藤敬真を倒した実方拓海、完勝だった
2階級制覇とはなったが、今後どのクラスで戦うか実方拓海

◆9. MuayThaiOpenスーパーフライ級王座決定戦 5回戦

橋本敏彦会長とともに白幡裕星勝利のツーショット

WMC日本スーパーフライ級5位.村井雄誠(エイワスポーツ/51.95kg)
    vs
MuayThaiOpenスーパーフライ級3位.白幡裕星(橋本/52.05kg)
勝者:白幡裕星 / 判定1-2 / 主審:和田良覚
副審:シンカーオ49-48. 神谷48-49. 少白竜48-49.

前半のローキック主体に蹴り合う中でも互角の立ち上がり、中盤から白幡が徐々に村井を追い気味の展開。

的確に打って出た白幡。迎え打った村井だが白幡に勢いがあった。

完全な優位に立ったとは言えないキツイ終盤もふんばる両者。僅差の判定勝利を掴んだのは白幡となり王座獲得。

白幡裕星が追い気味に進めたが村井雄誠も踏ん張った
白幡裕星が蹴る、わずかに攻勢を維持

◆8. MuayThaiOpenスーパーウェルター級タイトルマッチ 5回戦

チャンピオン.J(ジェイ/TSK Japan/69.6kg)vs 降籏健嗣(士道館ひばりケ丘/69.65kg)
勝者:J(ジェイ) / 判定:3-0 / 主審:河原聡一
副審:シンカーオ49-48. 神谷49-48. 少白竜50-48.

序盤はやや離れた間合い。レフェリーにファイトを命ぜられるほど見合いが続く後、徐々に打ち合いに移るがまだ激しさが無い中から中盤、ジェイがやや優勢に攻めだし、第4ラウンドは両者の苦しそうな表情からジェイのパンチのヒットが目立っていく。

最終ラウンドは降旗が鼻血を流し、鼻の上をカットし、左目尻もカットの血みどろになりながらの終了。ポイント的には僅差ではあったが、ジェイが押し切った勝利で防衛。

終盤の流血した降籏健嗣の顔面にパンチを打ち込むジェイ
我武者羅の打ち合いとなったラストラウンド、ジェイが追い続ける
キツイ試合を乗り切って防衛成功したジェイ

◆7. 翔(しょうた)・センチャイジム引退試合 ライト級3回戦

JKIライト級チャンピオン.翔・センチャイジム(=佐藤翔太/センチャイ/37歳/61.1kg)
    vs
大谷翔司(スクランブル渋谷/28歳/61.2kg)
引分け 0-0 / 主審:主審:谷本弘行
副審:シンカーオ29-29. 河原29-29. 和田30-30.

静かな立ち上がりから強い蹴りへ移っていく。接近すれば組み技ヒジ打ちを繰り出す両者。大谷は後ろ蹴りも見せる。

終盤には翔(しょうた)が鼻血を流すが最後まで両者、技を出し切り翔のラストファイトとなった。

引退セレモニーでは翔の長いコメントが続き、ジム仲間や応援してくれた仲間、センチャイ会長に「今迄育ててくれて有難うございました。」と感謝の言葉を述べてテンカウントゴングに送られた。

遠慮の無い打ち合いとなった大谷翔司vs翔太
戦い終えてセンチャイ会長を中央にスリーショット

◆6. MuayThaiOpenスーパーバンタム級王座決定戦 5回戦

稔之晟(じんのじょう/TSK Japan/53.2kg)vs 加藤洋介(チームドラゴン/53.25kg)
勝者:稔之晟 / 判定3-0 / 主審:少白竜
副審:谷本50-46. 河原50-47. 和田50-45.

初回から様子見ながら徐々に稔之晟が蹴りで自分の距離を作り、第2ラウンドにはヒジ打ちで加藤の額をカットし、組み合えばヒザ蹴りや崩し倒し、稔之晟がハイキックを多用し優位を保ったまま大差の判定勝利となって王座獲得。

19歳の稔之晟が41歳の加藤洋介を攻め続けた
稔之晟が大差判定で王座獲得

◆5. 58.0kg契約3回戦

佐藤政人(NEXT LEVEL渋谷/57.95kg)vs 森岡悠樹(北流会君津/57.8kg)
勝者:森岡悠樹 / 判定0-3 / 主審:神谷友和
副審:谷本29-30. 河原29-30. 和田29-30.

◆4. フェザー級3回戦

成澤龍(SRC/56.8kg)vs 浦林幹(クロスポイント吉祥寺/57.1kg)
勝者:浦林幹 / 判定0-3 / 主審:シンカーオ・ギャットチャーンシン
副審:谷本29-30. 少白竜29-30. 神谷29-30.

◆3. スーパーバンタム級3回戦

鈴木貫太(ONE’S GOAL/55.2kg)vs 森本直哉(グランディール池袋/55.05kg)
勝者:鈴木貫太 / 判定3-0 / 主審:和田良覚
副審:シンカーオ30-29. 少白竜30-28. 神谷30-29.

◆2. スーパーフライ級3回戦

バンサパーン・センチャイジム(タイ/51.95kg)vs 花岡竜(橋本/51.9kg)
勝者:花岡竜 / 判定0-3 / 主審:河原聡一
副審:シンカーオ28-29. 少白竜28-30. 神谷28-30.

◆1. スーパーバンタム級3回戦 

健・センチャイジム(センチャイ/55.1kg)vs 豪之晟(マイウェイスピリッツ/55.06kg)
勝者:豪之晟(ひでのじょう) / 判定0-3 / 主審:谷本弘行
副審:シンカーオ28-29. 和田28-30. 河原29-30.

喜入衆から王座奪取したUMA

《取材戦記》

ルンピニースタジアムからソムキアット・タノムクム氏がスーパーバイザーとして来日。こういった母体団体からスーパーバイザーが来日することはタイトルマッチとして重要な部分でしょう。

ルンピニージャパン王座は第1ラウンド決着となったが、ムエタイオープン王座は5回戦をフルに戦い、我慢の闘いとなる、いずれも白熱した戦いとなった。

翔・センチャイジムは13年の現役生活に終止符。多くの団体興行と単体プロモーション興行に出場して5つのタイトルを獲得。2013年12月に第7代NJKFライト級王座獲得している。公式最終試合はこの日、大谷翔司戦を終えての引退セレモニーを行なった。この前の試合は11月1日、「KNOCK OUT」に於いて重森陽太に4ラウンドKO負けだった。

壱センチャイジムvs岩浪悠弥戦は最初のノックダウンの後に反則打が伴ない、壱センチャイにとっては力を出し切れぬ結末に繋がってしまっただろう。回復の為のインターバルを与えられての再開だったが、レフェリーの処置によってはいろいろなパターンの裁定が下される可能性があった。

神谷レフェリーは一旦カウントし、どういう対処をするか手の内を見せなかった。そして壱センチャイが立ち上がったことによってダメージ具合を量ることが出来た上で、岩波の反則打と宣言し、壱センチャイにインターバルを与えることにも繋がった。

最初のノックダウンと続いた反則打の時点で、レフェリーはどう対処するか分からないから、壱センチャイは立てるなら立たざるを得ないだろう。また本能的に立ってしまうものでもある。ルールの細かさとレフェリーの判断、選手の思惑が絡むと運命と結果はいろいろ変わってくるものである。

来年の興行は5月31日(日)にMuayThaiOpen.48が予定されています。年4回の興行予定が新宿フェースで行なわれるようです。

2016年のムエタイTOYOTA CUPのようなビッグイベントの予定は無いか、センチャイ会長の奥さんに聞いてみると、「今のところ、その予定はありません!」と言われ、ああいうイベントは睡眠時間も奪われる準備の忙しさ、運営の大変さが滲み出ていて今後も無さそうな回答。でもタイから全く話が来ない訳ではないらしい。各団体等で新しいイベントが生まれる興行戦争の時代、センチャイジム興行もいずれはまたタイへ衛星中継されるムエタイイベントもやらねばならないだろう。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]

フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

月刊『紙の爆弾』2020年1月号 はびこる「ベネッセ」「上智大学」人脈 “アベ友政治”の食い物にされる教育行政他
一水会代表 木村三浩 編著『スゴイぞ!プーチン 一日も早く日露平和条約の締結を!』
上條英男『BOSS 一匹狼マネージャー50年の闘い』。「伝説のマネージャー」だけが知る日本の「音楽」と「芸能界」!

「反社会勢力」という虚構〈5〉やはり虚構だったのか? 「反社会的勢力」を「定義困難」と閣議決定した安倍政権に唖然

安倍政権は12月10日の閣議において「反社会勢力」について「形態が多様であり、また、その時々の社会情勢に応じて変化しうるもの」立憲民主党の初鹿明博衆院議員の質問主意書に答えた。と閣議決定した。


◎[参考動画]「反社会的勢力」定義困難と閣議決定 “桜問題”で(ANNnewsCH 2019年12月10日)

「なっ、何だってぇ?」と、誰もが唖然としたのではないだろうか。暴力団や半グレ、えせ同和、総会屋など、反社会勢力と定義されてきたものが、まるで幻だったかのように政府が定義を変更。いや、社会情勢に応じて変化しうると、曖昧化したのである。

少なくとも、政府において、「暴力、威力と詐欺的手法を駆使して経済的利益を追求する集団又は個人である『反社会的勢力』をとらえるに際しては、暴力団、暴力団関係企業、総会屋、社会運動標ぼうゴロ、政治活動標ぼうゴロ、特殊知能暴力集団等といった属性要件に着目するとともに、暴力的な要求行為、法的な責任を超えた不当な要求といった行為要件にも着目することが重要である」という、第1次安倍政権が犯罪対策閣僚会議(2007年6月に)で決定した定義を撤回したのだ。

これによって、金融機関や公共機関、遊技場、賃貸契約など、社会のあらゆる領域で「反社会勢力ではありません」と一筆を入れなければならなかったルールが変更を余儀なくされるはずだ。公安委員会が指定する25の指定暴力団いがいは、もはや「反社会勢力」とは定義できないのだ。各都道府県警においては「反社」という言葉を安易に使えなくなった。声高に謳っていた「反社会勢力の排除」も使えないことになる。

◆政治家はもともとヤクザと同じ職種である

ではなぜ、安倍政権はこのような噴飯物の閣議決定をしなければならなかったのだろうか。

直接的には、立憲民主党の初鹿明博衆院議員の質問主意書に答えたもので、国会議員の質問には「閣議決定」をもって応じなければならないからだが、安倍総理および菅義偉官房長官の一連の答弁、および「桜を見る会」での反社勢力の参加を受けて、事態を糊塗するものにほかならない。

そして、もうひとつ。警察庁がいくら「暴力団排除」「反社勢力の排除」を力説しようとも、政治家および地元警察がヤクザとの蜜月をやめられないからだ。いや、そもそも政治家という職業、つまり政治(警察力によらない紛争の仲裁・利益の配分・地域の諸勢力の取りまとめ・威力をもってする統合)がヤクザの職域とほぼ同じだからである。

さらには、政治家が選挙による以外にその特権(議員職)を得られないかぎり、集票力のある組織に依拠せざるを得ないからなのだ。とくに自民党のように利権と利益配分を本質とする政党にとって、ヤクザとの関係は不可分なのである。地域の実力者、事業に参入する有力企業に、ヤクザが何らかの関係を持とうとするかぎり、絶対にヤクザは排除できないのだ。ここに問題の本質がある。

麻生太郎副総理、甘利明(労働大臣・経産大臣・自民税制調査会長などを歴任)、田中和徳復興大臣、武田涼太子国家安委員長、竹本直一科学技術担当大臣、下村博文元文部科学大臣。これらは直近で思い浮かぶ、ヤクザ系の人脈と親交のある(人的な交流や政治資金を受け取った)政治家たちだ。そしてわが安倍晋三は、工藤會系の準構成員と推定される土建会社の社長と選挙妨害を談合し、謝礼をケチって火炎瓶を自宅に投げられるチョンボを犯した疑惑がある。菅義偉官房直管はまさに、桜を見る会で全身刺青の半グレと記念撮影するありさまだ。

◆崩れ去った警察庁官僚の思惑

暴対法および暴排条例、そして反社会勢力という言葉は、警察庁のキャリア官僚たちの利権拡大の思惑から発したものだった。東西冷戦下での左右対立、暴力団の全国的抗争のなかで、28万人という巨大な組織に膨張した警察は、必要がなくなったこの時代に生き延びようとしている。予算の削減と戦い、退職者の天下り先・再就職先を確保するためにも、指定暴力団の存在は不可欠だった。左翼勢力が衰退する中でも、公安関連予算を確保するために微罪逮捕などの取り締まりを継続しているのも、巨大組織の延命のためにほかならない。

しかるに、ヤクザも左翼もみずから弾圧してきた結果、先細りで思ったようにならない。そこで「反社会勢力」なる新語を創って、警察の全国動員体制(応援派遣)を発動してきた(工藤會警備の小倉派遣・辺野古警備など)のだ。だがその思惑も、政治家の「反社は定義できない」なる閣議決定によって、宙に浮くことになってしまった。永田町と桜田門の水面下の抗争こそ、これからの見ものと言うべきである。

【横山茂彦の不定期連載】
「反社会勢力」という虚構

▼横山茂彦(よこやま しげひこ)
著述業、雑誌編集者。近著に『ガンになりにくい食生活』(鹿砦社ライブラリー)『男組の時代――番長たちが元気だった季節』(明月堂書店)など。

月刊『紙の爆弾』2020年1月号 はびこる「ベネッセ」「上智大学」人脈 “アベ友政治”の食い物にされる教育行政他
『NO NUKES voice』22号 新年総力特集 2020年〈原発なき社会〉を求めて
鹿砦社創業50周年記念出版『一九六九年 混沌と狂騒の時代』

M君リンチ事件の賠償金を払わない金良平(エル金)の悪質

《6月12日、リンチ被害者M君が5名を訴えた上告について、却下の連絡が代理人の大川伸郎弁護士へあった。賠償を命じられた李普鉉氏からは「賠償金を支払いたいので口座を教えてくれ」と代理人から連絡があった。一方金良平からは何の連絡もないので、大川弁護士は金良平の代理人に「賠償金の支払い」を求める旨と、大川弁護士の銀行口座明細を記載したFAXを送付したが、7月2日現在大川弁護士には、金良平の代理人から何の連絡もないという》

上記の文章は本通信に本年8月14日掲載した内容である。その後、「一部40万円余りを払う。残りは分割にしてほしい」と代理人姜永守弁護士を通じて金良平(狼藉が度を超えるので、敬称は用いない)が申し出てきた。身勝手極まりない内容にM君並びに弁護団、支援会は対応を検討したが、金良平の申し出を受け入れ、一部金の支払いを待った。

ところが判決確定から半年たっても、金良平は自身が申し出た「身勝手な」支払い方法すら反故にして、いまだに一円たりともM君に対して支払いを行っていない。この間の経緯についてM君代理人の大川伸郎弁護士に確認したところ、「姜永守弁護士に電話で『支払いはどうなっているのか』と尋ねたところ、申し訳なさそうに『すいません。本人に伝えておきます』と切れ味の悪い回答があっただけです」とのことである。

代理人を通じて「分割払い」を申し出てきたのは繰り返すが、金良平だ。最高裁判所で支払い命令が確定した判決を無視し続ければ、時間を経るにしたがって支払い命令金額に利息が加わり、ますます支払いは困難になろう。

ここへきて、取材班は重大な疑念を抱かざるを得ない。

金良平、ならびに周辺で彼と行動をともにしている関係者は「賠償金を支払う」(金良平に支払わせる)意図がまったくないのではないか。口先ではきれいごとを並べて「人権」だの「反差別」だのといきがっていても、最高裁で確定した判決で命じられた賠償金の支払いすら「無視」しようとしているのではないか。この申し出は姜永守弁護士を通じてM君側に伝えられたのであるから、姜永守弁護士にも責任はある。このような事態を予測して、M君、弁護団、支援会は「姜永守弁護士が連帯保証人に就任する」ことを条件として求めたが、姜永守弁護士はそれを受け入れなかった。

リンチ直後に出された金良平(エル金)[画像左]と李普鉉(凡)氏[画像右]による「謝罪文」(いずれも1ページ目のみ。全文は『カウンターと暴力の病理』に掲載)
 
辛淑玉氏による2015年1月27日付け文書「Mさんリンチ事件に関わった友人たちへ」(1ページ目のみ。全文は『カウンターと暴力の病理』に掲載)

無責任で済む問題であろうか。M君が被害回復を求めた裁判に際しては、「M君の裁判を支援する会」に多くのかたがたからの支援(カンパ)が寄せられ、M君は裁判を闘い抜くことができた。しかし金良平がこのまま110万円を超える賠償金を踏み倒せば、M君は李普鉉氏から受け取った2万円に満たないお金しか受け取ることができなくなる。

冗談ではない!

彼らの悪質さはこれまでことあるごとに批判してきたが、あれだけの重傷を負わせた被害者に対して「賠償金を踏み倒す」?

これまで取材班は事実を紹介しながら、論評を行ってきたが、金良平と彼の取り巻きが取っている態度は、断じて許されるものではない。判決違反は不法行為と同義であるが「払う金がない」と金良平を逃げ切らせるつもりなのだろう。

こういった非道な行為を前田朗東京造形大学教授はどう評するであろうか?

彼はこの事件につきカメレオン的に、態度を変えた人物であるが、『救援』紙上で公式な見解を開陳した人物である。ことの成り行きについて今どう考えるのかを述べる道義的責任があろう。そして「リンチはなかった」、「あれは喧嘩だった」と散々嘘デタラメを吹聴した中沢けいや、本来関係ないのに横車を入れてきた香山リカ。終始加害者擁護にて徹した安田浩一らは、この事態をどう考えるのだ。

さらに許しがたいのは弁護士神原元の発信だ。この男はこれまで幾度も印象操作や、虚構の発信を続けてきたが、「しばき隊がリンチ事件を起こしたというのは虚偽の風説です」。この書き込みこそ「完全な虚偽の風説流布」ではないか。

神原弁護士のツイッターより

神原は「M君リンチ事件」の刑事記録を見ているだろうが! 罰金が課されたのは李普鉉と金良平の2名ではないか。そこに同席した李信恵に処分はくだらなかったが、上記3名はM君に謝罪文を書いているのはなぜだ? なにも問題がなかったらどうして謝罪文を書く必要があったのだ。

M君リンチ事件の賠償金を払わない金良平

さらに「現在、別途、名誉毀損訴訟が進行中です」との記載は鹿砦社が李信恵を提訴し、勝訴が確定した名誉毀損裁判に対する、反訴が認められず提訴に踏み切った李信恵原告、鹿砦社被告の裁判を示しているのかもしれないが、この係争では、鹿砦社が原告の訴訟で既に鹿砦社勝訴判決が確定していることを(神原がこのような印象操作をまだ続けているので)再度強く強調しておかなければならない。

取材を進める途中から取材班は、この事件の加害者及びその関係者の「悪質性」を認識していた。よって、このような異常事態も「連中」ならやりかねないだろうとも認識する。しかし、司法の判断も「無視」して被害者への賠償を「踏み倒す」連中を座視しているわけにはゆかない。このような行為が横行すれば「司法」の権威は失墜し、被害者は泣き寝入りするしかなくなってしまう。

そういった勢力をわれわれは、放置するつもりはない。


◎[参考動画]日本第一党 第七回神奈川県本部 川崎駅前東口街頭演説活動 2019年10月19日

(鹿砦社特別取材班)

《関連過去記事カテゴリー》
 M君リンチ事件 http://www.rokusaisha.com/wp/?cat=62

M君リンチ事件の真相究明と被害者救済にご支援を!!

ワイロよりハイロ!12.8関電包囲大集会報告 『NO NUKES voice』ルポ〈9〉

12月8日、大阪市内の関西電力本店で「老朽原発うごかすな!関電包囲大集会」が開催された。9月末、関電の原発マネー不正還流問題が発覚して以降、はじめての大集会に、16都道府県から1100人が結集、約30人が発言した。福井や女性の方の発言を要約して紹介する。

関西電力本店ビルを、全国から集まった1100人で包囲した

◆関電本店まで延べ150人が14市町を歩いてきた「サヨナラ原発福井ネットワーク」リレーデモ

 
「さよなら原発福井ネットワーク」の若泉さん

関西電力と政府は来年、運転開始から45年超え、44年超え、43年超えの老朽原発・高浜1、2号と美浜3号の再稼働を画策している。これに対して10月1日~11月22日「老朽原発うごかすなキャンペーン」と題して、関西、福井、名古屋などで様々な行動が行われてきた。キャンペーンが明けた11月23日に高浜原発前から始まった200キロに及ぶリレーデモが、12月8日14時前、関電前に到着し、集会が始まった。

福井県の「サヨナラ原発福井ネットワーク」の若泉政人さん。リレーデモのゴールに向け、県内の世論・関心を高めるため、14市町をつなぎながら延べ人数150人で歩いてきた。途中、各自治体に「老朽原発動かすな」などの申し入れを行ってきた。

関電は老朽原発について、新聞で「きちんと対策をとっている」と報告するが、脆化している原発をどう検査しているか全く書いていない。裏金問題では、かつての高浜町助役が関わっていた吉田開発の受注・発注の件で、特に土木部門では全体の半分以上が随意契約。随意契約は今、合理的な理由がなければ簡単には出せないはず。そうした不明な部分も追求しなくてはならない。このように問題だらけのなかで、原発を動かそうとしている関電を、原発から撤退させ、福井を違うやり方で模索する、そのために世論を盛り上げていきたい。

途中、リレーデモで200キロ歩き続けた橋田秀美さんからカンパ要請が行われた。リレーデモの道中、大勢の子どもたちがチラシを受け取ってくれた。こういう子どもを原発から守るのが、私たちの責任だ。この運動は今日が始まりだ!老朽原発を動かそうとする関電を追い詰めていこう。長い闘いが続くので、皆さんの熱い思いをカンパの形で、「私たちはワイロは受けとりませんが、カンパは受け取ります」。


◎[参考動画]2019-12-08関電包囲集会 若泉政人さん(越前市)

◆東海第二原発の社長は東電、副社長は関電から派遣

 
福島県から「原発いらない福島の女たち」さん

「老朽原発を動かすな!」の各地元から。茨城県の東海第二原発の地元の方から、敦賀、東海第二を所有する日本原電は、電力9社の子会社ということで、東海第二の社長は東電から、副社長の木村は関電から派遣されている。取締役だった岩根(関電社長)は、還流問題発覚で退任した。

東海第二は東電と日本原電の共同開発という理由で、発電しなくても東電から維持費が毎年出ている。原発マネーの利権構造の公然たる典型だ。利権は必ず腐敗を生む。今回の件もその一端でしかない。庶民から集めた金をクルクルと自分たちで回しあう、その構造を壊さないといけない。本丸(関電)への闘いも大変だが、私たちは茨城で、その子会社と闘っていく。

◆安全対策費に1兆200億円投入しても「安全とはいえない」高浜原発

 
福井県高浜町議の渡辺さん

福井県から、高浜町議の渡辺孝さん。関電の高浜、大飯の安全対策工事で人身事故が相次いで起きている。いずれも「特重施設」いわゆるテロ対策施設の工事現場。これは関電が安全対策工事や特重施設の完成に焦っている結果ではないか。関電は再稼働のために、安全対策工事、特重施設工事、定期検査と3本の工事を同時に手掛けている。ヒューマンエラーがいつおきても不思議ではない。そうまでして老朽原発を動かす必要はあるのか。高浜4号は、定期検査中に蒸気漏れが起きたが、原因がわからない。美浜の事故のこともあり、とても不気味だ。関電は高浜原発の安全対策費に1兆200億円投入しているが、前・規制委員長・田中俊一氏は「安全審査に合格しても安全とはいえない」と繰り返し言っていた。原発は欠陥商品であり、老朽原発はもちろんすべての原発を動かすのをやめるべきだ。

◆滋賀県からは「福井原発訴訟・滋賀」の井戸謙一弁護士がアピール

滋賀県から「福井原発訴訟・滋賀」の弁護団でもあり、「告発する会」の弁護団でもある井戸謙一弁護士。関電の原発の安全性に対する考え方の問題について、事故前、電力会社は、原発は絶対事故は起こさないと言ってきたが、その言い方が明らかにかわってきた。規制委は、原発に求められるのは絶対的安全性ではなく、相対的安全性で良いに変わり、裁判所もその言い方に乗っかってきている。典型的なのが、先日の東電幹部の刑事裁判の無罪判決だ。大津地裁の裁判でも、私たちの絶対的な安全性を求める主張に対して、関電は「それは失当」と反論した。若狭の原発で事故が起きてもしょうがない。そのときはごめんなさいねという姿勢だ。これを許すかどうかが問われている。許せないという声を広めよう。


◎[参考動画]2019-12-08関電包囲集会 井戸謙一さん(福井原発訴訟・滋賀)

◆「関電の不正還流を告発する会」の宮下正一さん

「関電の不正還流を告発する会」の宮下正一さん。9月27日の朝、朝刊を見てびっくりした。高浜の吉田開発に入った金が、森山助役に渡り、その後知事などに渡るならわかるが、なんと関電に還流された。1人で1億超の金を受け取った人が2人いて、うち1人が北新地で毎月500万使っていた。滅茶苦茶なことがおきた。絶対許せんと思い、河合弁護士に相談したら、告発運動で日本中から千人の告発人を集めようといわれた。千人は福井の運動からは、考えられない数だった。でも10月24日大阪市内で開催したキックオフ集会を、その後東京、福井でやり、ひと月半で47都道府県から3千人を超す告発人が集まった。13日、大阪地検に告発する(大阪地検前に12時半集合)。検察権力によって、関電の行った行為をきっちり調査し、起訴して処罰させよう。これからが本番です。

 
避難者を代表して「原発賠償関西訴訟」の森松明希子さん

◆避難者を代表して「原発賠償関西訴訟」の原告・森松明希子さん

次に避難者を代表して「原発賠償関西訴訟」の原告・森松明希子さん。今、原発安全神話から放射能安全神話にすりかえられ、「原発に絶対安全基準はいらないんだ」とされている。私たちが原発で手放そうとしているのは、命や健康、生きる権利そのものなのだ。関電はまだ原子力にしがみつこうとしているが、それは私たちの憲法で保障された権利を手ばなすことであり、それを認めるか認めないかの闘いだ。事故から9年経ち、私の0歳だった子どもももう9歳、話がわかる。全国の子どもたちを、私たち大人が責任もって、原発をこの世の中から廃絶させなくてはいけない。核との共存は核兵器だけではない、原発とも共存できない。命を守りましょう。


◎[参考動画]2019-12-08関電包囲集会 森松明希子さん(原発賠償関西訴訟)

◆グリーンアクションのアイリーン・美緒子・スミスさん

 
グリーンアクションのアイリーン・美緒子・スミスさん

グリーンアクションのアイリーン・美緒子・スミスさん。今、原発の再稼働はずっと押さえつけられている。私たちの闘いは半分勝っている。原発は日本の電気の8%しか作っていない小さな力なのに「エライ」と威張り続けている。2年間ゼロだったのに、「これがなければ日本が成り立たない」みたいなフリを未だにしている。温暖化問題が深刻化しており、世界の専門家は「原発は温暖化対策にはならないどころか、温暖化対策を妨害している」といっている。私たちの脱原発行動は、温暖化対策でもあり、日本を安全にするためでもある。そんななか、関電は金品授受問題を起こしたが、第三者委員会の調査結果が出る前に、高浜4号を動かそうとしていた。そんななか蒸気発生の深刻な問題が起こり、12月から2月に延びた。関電は当初「蒸気の原因はわからないが動かす」と言ったが、いつもは全然ダメな規制委員会が「あかん」と言った。たった1・3ミリの伝熱管が0・5ミリになっていた。それでも関電は動かそうとした。高浜4号機の再稼働には絶対NOといいましょう。

ほか、労働組合などからたくさんのアピールが続き、最後に関電に向けて力強いシュプレヒコールがあげられた。

「老朽原発動かすな!」「危険な原発、今すぐ廃炉!」「ワイロよりハイロ!」「原発なくても電気は足りる!」「原発政策すすめる政権はいらない!」


◎[参考動画]2019-12-08関電包囲集会 橋本あきさん(郡山市)

▼尾崎美代子(おざき みよこ)
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。最新刊の『NO NUKES voice』22号では高浜原発現地レポート「関西電力高浜原発マネー還流事件の本質」を寄稿

『NO NUKES voice』Vol.22 新年総力特集 2020年〈原発なき社会〉を求めて

『NO NUKES voice』Vol.22
紙の爆弾2020年1月号増刊
2019年12月11日発行
定価680円(本体618円+税)A5判/132ページ

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新年総力特集 2020年〈原発なき社会〉を求めて
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[グラビア]山本太郎「原発事故の収束の仕方も分からないのに滅茶苦茶だ」(鈴木博喜さん)ほか

[インタビュー]孫崎 享さん(元外務省国際情報局長/東アジア共同体研究所理事・所長)
2020年・世界の正体 何が日本を変えるか

[報告]尾崎美代子さん(西成「集い処はな」店主)+編集部
関西電力高浜原発マネー還流事件の本質

[資料]編集部
《全文公開》関西電力幹部を辞任に追い込んだ「告発文」

[インタビュー]井戸謙一さん(弁護士)
関電・東電・福島原発訴訟の核心

[インタビュー]水戸喜世子さん(子ども脱被ばく裁判共同代表)
刑事告発で関電から原発を取りあげる

[報告]本間 龍さん(著述家)
原発プロパガンダとは何か〈17〉
東京五輪・崩壊の始まり──IOC「マラソン・競歩札幌移転」の衝撃

[報告]小林蓮実さん(ジャーナリスト/アクティビスト)
山本太郎の脱原発政策は新党結成で変わったか?
「政権交代」が脱原発を可能にする唯一の選択肢

[報告]鈴木博喜さん(『民の声新聞』発行人)
福島〈水害〉被災地を歩く
懸念される放射性物質の再浮遊と内部被曝リスク

[報告]伊達信夫さん(原発事故広域避難者団体役員)
《徹底検証》「原発事故避難」これまでと現在〈6〉
本気で「防災・減災」に取り組まなければ、被災者は同じ苦痛を繰り返す

[報告]山崎久隆さん(たんぽぽ舎副代表)
原発潮流・二〇一九年の回顧と二〇二〇年の展望

[報告]平宮康広さん(元技術者)
経産省とNUMOが共催する説明会での質疑応答

[報告]三上 治さん(「経産省前テントひろば」スタッフ)
天皇の即位に伴う一連の儀式に思うこと

[報告]板坂 剛さん(作家・舞踊家)
悪書追放キャンペーン第五弾
ケント・ギルバート『天皇という「世界の奇跡」を持つ日本』

[報告]横山茂彦さん(編集者・著述業)
熟年層の活躍こそ、わたしたちの道しるべだ
かつての革命運動の闘士たちがたどった反原発運動

[報告]山田悦子さん(甲山事件冤罪被害者)
山田悦子の語る世界〈6〉記憶と忘却の功罪(中編)   

[報告]再稼働阻止全国ネットワーク(全12編)
関西電力「原発マネー」─東京電力「二二〇〇億円援助」─日本原電「東海第二原発」
三つを関連させ、くし刺しにして原発廃止を迫ろう!

《首都圏》柳田 真さん(たんぽぽ舎、再稼働阻止全国ネットワーク)
日本の原発はこのまま「消滅」へ 
日本の原子力政策は嘘だらけでここまでやってきたから
田中俊一(原子力規制委員会前委員長)語る(月刊『選択』11月号)

《東北電力》舘脇章宏さん(みやぎ脱原発・風の会)
女川2号機の審査「合格」が目前
東日本大震災でダメージをうけた「被災原発」を動かすな!

《日本原電》玉造順一さん(茨城県議会議員)
東海第二原発を巡って-当初から指摘されてきた日本原電の経理的基礎の無さを露呈
日本原電を含む電力業界 これまで反対運動に対峙してきたノウハウの蓄積もあり、決して侮れない

《東京電力》斉藤二郎さん(たんぽぽ舎)
東電による日本原電支援(二二〇〇億円)に反対する 
「巨額の支援」おかしい、反対意見多い、電気料金が上がる
東海第二原発は事故原発-再稼働はムリだ

《東海第二原発》たんぽぽ舎声明
東海第二原発再稼働への資金支援をするな 日本原子力発電に対する三五〇〇億円
日本原電は廃炉管理専業会社となるべき

《原発マネー》久保清隆さん(再稼働阻止全国ネットワーク)
関電も東電も原電も徹底追及するぞ! 
原発マネー、二二〇〇億円支援、東海第二原発再稼働を許さない

《市民立法》郷田みほさん(チェルノブイリ法日本版をつくる郡山の会=しゃがの会)
次の世代に責任を果たすために、やらなければならないこと

《関電高浜》木原壯林さん(若狭の原発を考える会)
関電不祥事を、原発全廃の好機にしよう!

《玄海原発》吉田恵子さん(原発と放射能を考える唐津会世話人)
水蒸気爆発を起こす過酷事故対策、トリチウムと使用済みMOXの危険性

《規制委》木村雅英さん(再稼働阻止全国ネットワーク)
規制委による新たな原発推進体制の構築を止めよう
~「原子力規制委員会設置法」の目的と国会付帯決議を守れ~

《本の紹介》天野恵一さん(再稼働阻止全国ネットワーク)
『原発のない女川へー地域循環型の町づくり』(篠原弘典・半田正樹編著 社会評論社)

《浜岡原発》鈴木卓馬さん(浜岡原発を考える静岡ネットワーク)
浜岡原発は世界で最も危険な原発-南海トラフの震源域の真上に建つ
JR東海のリニア新幹線を懸念-トンネルで地下水が流出か?

私たちは唯一の脱原発雑誌『NO NUKES voice』を応援しています!

2020年〈原発なき社会〉を求めて『NO NUKES voice』22号本日発売!

 
『NO NUKES voice』Vol.22 新年総力特集 2020年〈原発なき社会〉を求めて

本日12月11日、『NO NUKES voice』22号が発売される。国内唯一の反(脱)原発雑誌として、2019年も本誌の発行を続けられたことに、読者の皆さんをはじめ、寄稿者の皆さんや取材にご協力いただいた皆様へ御礼を申し上げる。

そして、皮肉を込めて最大の謝辞は、『NO NUKES voice』発行の根拠をやめようとはしない、電力会社各社、とりわけ福島第一原発事故を起こしながら、東海第二原発再稼働のために2,200億円もの支出を決めた東京電力に送らねばならないだろう。政府から20兆円(!)もの支援をうけて、実質国営化されながらも、まだ懲りずに原発の再稼働に借金から金を出す。

この厚顔無恥さ、無責任さを形容するに適切なことばを、われわれは持ち合わせない。犯罪集団であり、経済的には「税金の身勝手な流用」にもなんの痛痒も感じていない東電の許されざる行為は本日発売される『NO NUKES voice』のなかでももちろん取り上げられている。

◆高浜原発利益還流劇の中心はあくまで関西電力である

関西電力は高浜原発などで、今年もトラブルを起こしたが、なによりの激震は、金銭・物品の還流により、会長・社長以下多数の役員が辞任したことである。

報道ではこの事件の中心人物が、元高浜町助役であったかのように扱われているが、本誌はそうは見ない。利益還流劇の中心はあくまで電力会社である。そうでなければ、あのように億単位の現金を長年にわたり個人が準備できる道理がないからだ。

 
『NO NUKES voice』Vol.22より

であるとすれば、関電の幹部総辞職に追い込んだ「利益還流構造」は全国の原発立地に(形態の違いはあるとはいえ)生じている問題である可能性が高い。

今回の関電幹部総辞任には「怪文書」のような「告発文」の存在が、取りざたされていた。編集部では中嶌哲演住職のご厚意により、その全文の入手に成功したので、一文字残らず読者に公開することとした。中嶌住職がどのように「告発文」を入手されたのか。入手後どう対処されたのかは、本誌を手に取ってご確認いただきたい。

各電力会社に対する正面からの闘いや、法廷闘争、地道な街頭宣伝活動など様々な形で原発に反対する運動は展開されているが、「告発文」の送付先を確認すると、それらの運動が着実に受け皿の役割を果たしていることが判明する。

◆反原発と対峙する「東京五輪」

来年はいよいよ反原発と対峙する「東京五輪」開催が予定されている。しかし、既に政府は当初負担を予定していた開催費用7,000億円が3兆円に膨れ上がっていることを発表した。毎号本誌が指摘してきた通り、開催費用は最終的にはさらに膨張し、その負債は最終的に国民の税金で賄われることになる。そして多額の「使途不明金」が生ずるも「シュレッダーに明細はかけてしまい、復元ができない」と子どもの言い訳レベルの弁解で、誰も責任を追及されることはないだろう。

要りもしないのに建設された、新国立競技場の維持費は、旧来の国立競技場の比ではなく、破綻が確実視されている。

どこを向いて進んでいるのだ? どうして学ばない?なにを求めているのか?

目の前で展開される、現象にはめまいがするほどの倒錯を感じさせられる。どこにも理性や論理性が見当たらないからだ。

本号も孫崎享、尾崎美代子、井戸謙一、水戸喜世子、本間龍、小林蓮実、鈴木博喜、伊達信夫、山崎久隆、平宮康広、三上治、板坂剛、横山茂彦、山田悦子(敬称略、掲載順)の各氏や全国からの活動報告が、以下の内容で師走の日本列島に“檄”を入れる。

◆少なくともあと半世紀は『NO NUKES voice』を刊行し続けなければならない

先週東京で行われた鹿砦社創業50周年パーティーには、現場で地道に活動される方から元首相まで実に様々なかたがたにお集まりいただき、われわれは勇気を得た。

『NO NUKES voice』は正直に申し上げればいまだに赤字である。これは困る。なぜなら東京電力が表明している福島第一原発事故の廃炉工程ですら、50年以上を予定しているからだ。われわれは、少なくともあと半世紀は『NO NUKES voice』を刊行し続けなければならない。残念ながら目の前の事実がそう要請している。

読者の皆さん! 創業50年を迎えた鹿砦社は、原発の完全廃絶を目指して全力で今後も力の限り『NO NUKES voice』を発行し続けることを宣言する。しかし、そこには圧倒的な支持の広がり(読者増加)が不可欠である。ともに反原発を闘う皆さんの武器として、来る2020年は『NO NUKES voice』購読者の倍増を実現したい。われわれは営利を求めるものではない。収支の安定なしに雑誌の継続が困難であるから、そして本誌はさらに広範な皆さんに読まれるべき価値を有すると確信するからである。さらなる飛躍の年へ! みなさんの支持とご協力もお願いいたします。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

『NO NUKES voice』Vol.22 新年総力特集 2020年〈原発なき社会〉を求めて

『NO NUKES voice』Vol.22
紙の爆弾2020年1月号増刊
2019年12月11日発行
定価680円(本体618円+税)A5判/132ページ

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新年総力特集 2020年〈原発なき社会〉を求めて
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[グラビア]山本太郎「原発事故の収束の仕方も分からないのに滅茶苦茶だ」(鈴木博喜さん)ほか

[インタビュー]孫崎 享さん(元外務省国際情報局長/東アジア共同体研究所理事・所長)
2020年・世界の正体 何が日本を変えるか

[報告]尾崎美代子さん(西成「集い処はな」店主)+編集部
関西電力高浜原発マネー還流事件の本質

[資料]編集部
《全文公開》関西電力幹部を辞任に追い込んだ「告発文」

[インタビュー]井戸謙一さん(弁護士)
関電・東電・福島原発訴訟の核心

[インタビュー]水戸喜世子さん(子ども脱被ばく裁判共同代表)
刑事告発で関電から原発を取りあげる

[報告]本間 龍さん(著述家)
原発プロパガンダとは何か〈17〉
東京五輪・崩壊の始まり──IOC「マラソン・競歩札幌移転」の衝撃

[報告]小林蓮実さん(ジャーナリスト/アクティビスト)
山本太郎の脱原発政策は新党結成で変わったか?
「政権交代」が脱原発を可能にする唯一の選択肢

[報告]鈴木博喜さん(『民の声新聞』発行人)
福島〈水害〉被災地を歩く
懸念される放射性物質の再浮遊と内部被曝リスク

[報告]伊達信夫さん(原発事故広域避難者団体役員)
《徹底検証》「原発事故避難」これまでと現在〈6〉
本気で「防災・減災」に取り組まなければ、被災者は同じ苦痛を繰り返す

[報告]山崎久隆さん(たんぽぽ舎副代表)
原発潮流・二〇一九年の回顧と二〇二〇年の展望

[報告]平宮康広さん(元技術者)
経産省とNUMOが共催する説明会での質疑応答

[報告]三上 治さん(「経産省前テントひろば」スタッフ)
天皇の即位に伴う一連の儀式に思うこと

[報告]板坂 剛さん(作家・舞踊家)
悪書追放キャンペーン第五弾
ケント・ギルバート『天皇という「世界の奇跡」を持つ日本』

[報告]横山茂彦さん(編集者・著述業)
熟年層の活躍こそ、わたしたちの道しるべだ
かつての革命運動の闘士たちがたどった反原発運動

[報告]山田悦子さん(甲山事件冤罪被害者)
山田悦子の語る世界〈6〉記憶と忘却の功罪(中編)   

[報告]再稼働阻止全国ネットワーク(全12編)
関西電力「原発マネー」─東京電力「二二〇〇億円援助」─日本原電「東海第二原発」
三つを関連させ、くし刺しにして原発廃止を迫ろう!

《首都圏》柳田 真さん(たんぽぽ舎、再稼働阻止全国ネットワーク)
日本の原発はこのまま「消滅」へ 
日本の原子力政策は嘘だらけでここまでやってきたから
田中俊一(原子力規制委員会前委員長)語る(月刊『選択』11月号)

《東北電力》舘脇章宏さん(みやぎ脱原発・風の会)
女川2号機の審査「合格」が目前
東日本大震災でダメージをうけた「被災原発」を動かすな!

《日本原電》玉造順一さん(茨城県議会議員)
東海第二原発を巡って-当初から指摘されてきた日本原電の経理的基礎の無さを露呈
日本原電を含む電力業界 これまで反対運動に対峙してきたノウハウの蓄積もあり、決して侮れない

《東京電力》斉藤二郎さん(たんぽぽ舎)
東電による日本原電支援(二二〇〇億円)に反対する 
「巨額の支援」おかしい、反対意見多い、電気料金が上がる
東海第二原発は事故原発-再稼働はムリだ

《東海第二原発》たんぽぽ舎声明
東海第二原発再稼働への資金支援をするな 日本原子力発電に対する三五〇〇億円
日本原電は廃炉管理専業会社となるべき

《原発マネー》久保清隆さん(再稼働阻止全国ネットワーク)
関電も東電も原電も徹底追及するぞ! 
原発マネー、二二〇〇億円支援、東海第二原発再稼働を許さない

《市民立法》郷田みほさん(チェルノブイリ法日本版をつくる郡山の会=しゃがの会)
次の世代に責任を果たすために、やらなければならないこと

《関電高浜》木原壯林さん(若狭の原発を考える会)
関電不祥事を、原発全廃の好機にしよう!

《玄海原発》吉田恵子さん(原発と放射能を考える唐津会世話人)
水蒸気爆発を起こす過酷事故対策、トリチウムと使用済みMOXの危険性

《規制委》木村雅英さん(再稼働阻止全国ネットワーク)
規制委による新たな原発推進体制の構築を止めよう
~「原子力規制委員会設置法」の目的と国会付帯決議を守れ~

《本の紹介》天野恵一さん(再稼働阻止全国ネットワーク)
『原発のない女川へー地域循環型の町づくり』(篠原弘典・半田正樹編著 社会評論社)

《浜岡原発》鈴木卓馬さん(浜岡原発を考える静岡ネットワーク)
浜岡原発は世界で最も危険な原発-南海トラフの震源域の真上に建つ
JR東海のリニア新幹線を懸念-トンネルで地下水が流出か?

私たちは唯一の脱原発雑誌『NO NUKES voice』を応援しています!

「桜を見る会」悪質私物化の子供じみた首相国会答弁を問題視しない人たちが、この国に増えた理由──金魚鉢の中で育った金魚は大河の自由さを想像できない

「逃げ切れた」。ある与党議員が安倍政権の延命をそのように表現したそうだ。いわずもがな「桜を見る会」スキャンダルについてのコメントだ。菅原経済産業大臣、河井法務大臣の公職選挙法違反疑惑での辞任よりも数倍の衝撃だったはずの「公金による賄賂疑惑事件」でも、もう自民党政権下の首相は責任を取ることはありえない、とまた無残な史実が重ねられてしまった。森友学園問題、加計学園問題いずれも外形的な事件の構造は、一定以上明らかにされ、安倍の関与と責任が明確であるにもかかわらず、首相としての座を安倍は追われることはなかった。


◎[参考動画]【報ステ】『桜を見る会』今国会“最後”の直接対決(ANNnewsCH 2019年12月2日)

近現代国家は、根本思想の違いを除けば、「法律」によって国家が存立し、保たれることが共通理解とされてきた。しかしながら、どうやらこのような「国家」像に対する概念について、実体的な「ポストモダン」時代が到来したようである。少なくともこの国ではそうだろう。

簡略に述べれば以下の通りだ。法の運用は国家構造を維持する行政権力構造に対して、極めてあいまいに運用される反面、政治性の有無にかかわらず「個的な案件」については、神経質なほど微細に適用される。根本法(憲法)が想定していなかった社会情勢の変化(情報速度の超高速化)という背景はあるものの、原理原則とされた公的手続き(行政においては民主主義を前提とした、公文書の厳重確保と保管)の軽視、形骸化により行政権力は、構造的な違法行為を法的に追及されることがない、新たな規範を造り出すことに成功した。その構造は大臣、首相にまで及ぶ。菅原経済産業大臣、河井法務大臣の辞任も、注視してみればそれぞれが所管する業務についての瑕疵や違法行為ではなく、公職選挙法違反、つまり大臣以前に国会議員選挙での不正が問われているのだ。


◎[参考動画]12月2日参院本会議 田村智子議員の代表質問(日本共産党 2019年12月2日)

◆犯罪や違法行為は、規模が大きければ大きいほど免罪されやすくなる

犯罪や違法行為は、規模が大きければ大きいほど免罪されやすくなる。東京五輪招致で不正な支出疑惑を仏で告訴されたJOC会長を辞任した竹田恆和について、批判的な報道は皆無に等しいし、東京電力が福島第一原発2号機からデブリ(メルトダウンで溶け落ちた燃料)を取り出す発表をしても「取り出して、いったいどこにどのように保管するのだ?」という第一に発せられるべき質問が、大きく問われることもない。

真逆に個的な(象徴的には「家族」、「親族」、「知人」間での)いさかいが原因の殺人事件については裁判所から逮捕令状が出される、はるか前から報道機関は警察になり替わり、「取材」という名目で関係性があると思われるひとびとの生活に足を踏み入れる。怪我人がいなくとも夕刻の全国ニュース放映時間に東京の中心地で交通事故が発生すると「スクープ」(!)として全国に放送される。

あげく、家庭内での「体罰」について「子どもが不快と感じればすべて体罰だ」とまで真顔で審議員が議論し、なんの批判もなくそのバカげた家庭内への国家の侵入にも異論が大きく沸き起こることはない。こういった意見表明をすると、必ず「最近急増する家庭内の虐待を放置するのか」と「規制賛成派」から批判をされるが、わたしが指摘しているのは「家庭内に国家の指示が入ってくることをあなたはなんとも思わないのか」という点であり、児童虐待を是認しているわけではまったくない。

こんなにバカげたガイドラインだか何だか知らないけれども、「家庭内の教育(育児)のありかた」のようなものを発せずにはいられない児童虐待の増加は現象面だけをなぞってみても、なんの解決も導かない。従来の「親子関係」、「家族」、「子どもを持った親の未成熟」といった本質的な原因を直視して、その原因がどのようなものであるかを解析し、対応を検討するのが科学的手順ではないのか。

現象だけを「規制法」や「ガイドライン」で抑制しようとしても、その原因に社会的(あるいは政治的)背景があれば、有効な策が採れるだろうか。


◎[参考動画]【報ステ】『桜を見る会』残る疑問・新たな疑惑(ANNnewsCH 2019年12月3日)

◆日本社会の中心を形成する「期待される人物像」で育った世代

もっともそんな面倒くさい作業をしなくとも、分析は簡単である。この国の文科省を中心とする文教行政が目指してきた「期待される人物像」がいよいよ現実の集合体となって、社会の中心を形成するようになり、権力中枢はその「副作用」に驚いたふりをしているだけだとみるのは、うがちすぎであろうか。

文科省を中心とする文教行政は、一貫して「論理的に思考しない、非政治的人物の育成」(もちろんそんな文言は公文書のどこにも登場しはしまい)を目指して、公教育や、中等教育、高等教育への介入を続けてきた。そしてその目論見は見事に結実した。極めて乱暴に決めつければ、もう集合体としての若者には「論理性も政治性」はありはしない。その確認が終わったので在野のどこからも要請がないのに「選挙権の18歳引き下げ」がさっさと実行されたのだ。この乱暴ながら与党にとっては目先利益となりそうで、耳障りが悪くない「選挙権の18歳引き下げ」はしかしながら「民法」の成人に対する定義と大きな軋轢を生む。卑近なところでは、飲酒、喫煙年齢をどうするかである。

今日的な官僚の仕事の仕方の延長線上には「18歳で選挙権を有する成長は確認できるが、飲酒喫煙による健康影響は以前のままであるので、飲酒喫煙については従来通り20歳以上とする」という専門家の意見付きの結論が準備されているはずだ。大学や企業は新入生や新入社員の歓迎会で「えー本日は大変めでたい席ではございますが、法律の定めにより20歳未満のかたはくれぐれもお酒は召し上がらないようにお願いいたします」と、真顔で注意をするだろう。

しかし若者が「べつに構わない」と思うのであれば、わたしは余計な口を挟まない。金魚鉢の中で育った金魚が大河の自由さを想像できないのは、致し方のないことなのだから。


◎[参考動画]「桜を見る会」追及本部が郷原弁護士を招き公開ヒアリング(videonewscom 2019年11月29日)

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

月刊『紙の爆弾』2020年1月号 はびこる「ベネッセ」「上智大学」人脈 “アベ友政治”の食い物にされる教育行政他
鹿砦社創業50周年記念出版『一九六九年 混沌と狂騒の時代』

《書評》月刊『紙の爆弾』2020年1月号 教育利権の闇を穿つ!

見よ、このタイトルを。教育利権を暴く総力特集と言って、はばかりないものだ。

 
月刊『紙の爆弾』2020年1月号好評発売中!

①「アベ友政治の食い物にされる教育行政」(横田一)
②「『幸福の科学大学』に萩生田文科相と癒着の構造」(藤倉善郎)
③「萩生田光一文科相が利権化目論む民間資格検定試験の実態」(三川和成)

内容を解説していくと、①が記述式導入(安西祐一郎=元慶応塾長・中央教育審議会会長のメモ)、英語民間試験導入(吉田研作上智特任教授)、そしてベネッセ人脈(シンクタンクの所長と理事)、東進ハイスクールの安河内哲也講師、ベネッセ関連団体の鈴木寛代表(元経産官僚・元参院議員)らの下村博文元文科相の人脈だ。派手な見出しキャッチを付けるとすれば、「民間試験導入に動いた闇の人脈とその利権――教育利権のネタにされた入試改革」とでもなるだろうか。

今後の取材の方向性としては、やはり教育産業とベッタリの下村博文元文科相の言動およびその裏にある利権構造の深さであろう。極右政治家でありながら開明派を気取り、文科官僚に強引な利益誘導を強いる(東大に民間試験導入をさせよと指示)手法は、とうてい看過できるものではない。

政治資金の闇(事実上の政治団体・博文会への反社資金)や「マルクス・レーニン主義の公教育を変えたい」という安易で的外れな言動(文部行政への参画時)など、この男の政治生命を早急に断つことこそ、反権力ジャーナリズムのテーマといえよう。

 
大川隆法『下村博文守護霊インタビュー』

その下村博文をすら守護霊インタビューし、その罵詈雑言や国家主義的教育観、岡田光玉(崇教真光の教祖で故人)との関係(幸福の科学大学の認可妨害)を批判していた幸福の科学教団が、萩生田文科相と癒着関係にあると指摘するのが②である。そもそも幸福の科学大学は、大川隆法の「霊言」を全学部共通科目にするなど、普通に考えて認可が認められるはずがないものだった。

にもかかわらず、幸福の科学は千葉県長生村に「ハッピー・サイエンス・ユニバーシティ」(HSU)を開設しているのだ。教団傘下の高校のみならず、早稲田大学や慶応大学に合格していた受験生(信者)も、この無認可のHSUに「入学」させたという。そしてじつは、下村博文元文科相および萩生田現文科相が、HSUの学長人事をめぐって教団と交渉をしていた事実があったこと。「守護霊本」の刊行をめぐる取り引きやアドバイスをしていたことが、記事のなかで暴かれている。

それにしても、トンデモ教団のトンデモ大学である。教団の「幸福の科学大学シリーズ」89冊のうち、「霊言」というワードが1280件も検索ヒットするというのだ。あるいは「守護霊」「悪魔」「宇宙人」「UFO」なども多数ヒットする、およそ学問とは呼べない教育内容のどこに、文科省が指導する余地があるのか。この教団の大学認可策動から目を離すことはできない。

さらに、やはり萩-生田光一文科相の民間資格検定試験への関与を暴くのが③である。

「身の丈発言」で結果的に、英語民間入試の問題点を暴露した萩生田文科相だが、じつはそれを称賛する背後に、文教族のリーダーが森喜朗から萩生田に移りつつある反映ではないかと、記事は指摘する。すなわちベネッセと下村博文の抜き差しならぬ関係である。ところが、問題はベネッセだけではないと記事は暴いてゆく。

◆「桜を見る会」を刑事告発とある夫婦の悲哀

浅野健一の「安倍晋三『桜を見る会』買収疑獄」は、安倍晋三の税金私物化を容共地検に告発した実録である。浅野によれば、公金を使った飲食接待(随伴文化人や御用メディア相手)は「桜を見る会」だけではないという。これらの行為は「業務妨害罪」「贈収賄罪」にあたるとの見解(高山佳奈子京大教授・刑法)もある(記事中)。評者は思うのだが、数百人・数千人単位での集団民事訴訟を提起してもいいのではないだろうか。使われているのは、われわれの「血税」なのだから。

いっぽうで、安倍総理夫妻に切られた人々の悲哀は、読むに堪えないほどのものがある。「【森友事件】籠池刑事裁判 これは“首相反逆罪”か『夫婦共7年求刑』の無法」(青木泰)だ。たしかに補助金の不正受給があったのは事実で、籠池夫婦も認めているものだ。不正受給額の約2000万円は全額返済している。

にもかかわらず、詐欺罪で7年もの求刑が行われたのだ。あれほど肩入れしておきながら、不正受給や巨額の「不正」国有地払い下げがマスコミの餌食になるや、手のひらを返したように「わたしたち夫婦は無関係」(安倍総理)とばかりに切り捨てる。そして信義違反を告発するや、総理の意を汲んだ検察は、このレベルの事件では「極刑」に近い求刑を行なう。すでに文書改ざんで下級官僚が自死し、臭いものにはフタという流れの中でのスケープゴートである。

今回も自分の好み(政局・疑獄好き)で選んだ書評となったが、読んでお徳の600円(税込み)である。

▼横山茂彦(よこやま しげひこ)
著述業、雑誌編集者。近著に『ガンになりにくい食生活』(鹿砦社ライブラリー)『男組の時代――番長たちが元気だった季節』(明月堂書店)など。

月刊『紙の爆弾』2020年1月号 はびこる「ベネッセ」「上智大学」人脈 “アベ友政治”の食い物にされる教育行政他

設立24年目、三代目理事長のNJKFの年内最終戦、S-1トーナメント決勝!

アジアで勢力を伸ばしているONE Championship出場で海外試合が多い健太は6月以来の登場。9月22日、大阪で中野椋太に判定勝利しているチョ・ギョンジェ(韓国)にヒジで切られる苦戦も辛うじてドロー。

タイ国発祥の、名を馳せたソンチャイプロモーター主宰のS-1トーナメントの日本版“S-1ジャパン”2階級で決勝戦。この優勝者は次なるタイでのS-1やIBFムエタイ世界戦に繋がることになる。

◎NJKF 2019.4th / 11月30日(土)後楽園ホール 17:00~20:55
主催:ニュージャパンキックボクシング連盟 / 認定:NJKF、S-1

チョ・ギョンジェの威圧的に出た左ストレートが健太の出ばなをくじく

◆第10試合 メインイベント 63.5kg契約3回戦

WBCM日本ウェルター級チャンピオン.健太(E.S.G/63.1kg) 
    vs
チョ・ギョンジェ(韓国/63.5kg)
引分け0-1 / 主審:中山宏美
副審:竹村29-29. 少白竜28-29. 和田29-29. 

離れた距離からローキック、接近すればヒジやヒザ蹴り狙うアグレッシブなチョ・ギョンジェに対し、健太は凌いで蹴りやパンチを返すもチョ・ギョンジェを圧倒するには至らない。第3ラウンド開始早々にはチョ・ギョンジェの強引なヒジ打ち連打で意外にも眉間を切られた健太。
打ち合い激しくなった最終ラウンド。チョ・ギョンジェの勢いを止められないドローとなった。

残り時間少ない中、健太がチョ・ギョンジェを追い詰めるがチョのパンチは厄介だった
チョ・ギョンジェのヒジ打ちで切られた健太、こんな姿は珍しい

◆第9試合 S-1ジャパントーナメント55kg級決勝戦 5回戦

大田拓真の蹴りが馬渡亮太の巻き返しを阻んだ

WBCM日本フェザー級チャンピオン.大田拓真(新興ムエタイ/54.9kg)
    vs
馬渡亮太(治政館/55.0kg)
勝者:大田拓真/ 判定2-0 / 主審:宮本和俊
副審:竹村49-47. 中山49-47. 和田48-48

序盤からけん制し合うパンチと蹴り。その突破口探る展開から第2ラウンドに大田拓真がいきなりの右ハイキックを馬渡がまともに貰うとあっけなくダウン。

柔軟なムエタイテクニックを持つ者同士、タイでの試合が上回る馬渡が徐々に盛り返すが、いつもの勢いがやや弱く、ノックダウンを奪い返すに至らず、大田拓真の判定勝利による優勝となった。

大田拓真がノックダウンを奪った右ハイキックが馬渡亮太にヒット
大田拓真と一航の兄弟チャンピオンが誕生、二人を密着取材するメディアも現れた

◆第8試合 S-1ジャパントーナメント65kg級決勝戦 5回戦

NJKFスーパーライト級チャンピオン.畠山隼人(E.S.G/64.55kg)
    vs
NJKFウェルター級チャンピオン.中野椋太(誠至会/64.9kg)
勝者:中野椋太 / TKO 2R 2:01 / 主審:少白竜

強打同士の対戦。第1ラウンドはパンチとローキックにハイキックも折り混ぜてけん制。

第2ラウンドに入ると距離が徐々に縮まり、パンチの交錯から中野椋太が勢いを強め、畠山隼人を左フックでノックダウンを奪い、更にロープに詰めて連打したところでレフェリーが止め、中野椋太がTKO勝利で優勝。

中野椋太が蹴られても怯まず徐々にパンチの攻略にかかる
中野椋太が畠山隼人からノックダウンを奪った左フック
最初のダウンでダメージがあった畠山、中野は勝利を確信したか
最終ゴング寸前までMOMOTAROが攻め続けた

◆第7試合 59.0kg契約3回戦

MOMOTARO(前・WBCM・INフェザー級C/OGUNI/58.8kg) 
    vs
琢磨(前・WBCM日本スーパーフェザー級C/東京町田金子/58.5kg)
勝者:MOMOTARO / 判定3-0 / 主審:和田良覚
副審:少白竜30-27. 中山30-28. 宮本30-27.

MOMOTAROは2013年に琢磨に2度判定負けしているが、多くの試練を経て王座も獲得し大きく成長。初回からヒジ打ちで琢磨の眉間をカット、先手を打つ蹴りで優り、組み合えば崩し転ばし、調子付くとバックハンドブロー、後ろ蹴り、飛び蹴りも見せる。

琢磨も必死にMOMOTAROの技をかわして意地を見せ、MOMOTAROは倒すに至らずも判定ながら雪辱を果たす。

MOMOTAROが主導権を奪い多彩に琢磨を攻め続ける

◆第6試合 第12代NJKFバンタム級王座決定戦 5回戦

1位.日下滉大(OGUNI/53.3kg)vs 3位.一航(=大田一航/新興ムエタイ/53.4kg)
勝者:一航 / 判定0-3 / 主審:竹村光一
副審:少白竜49-50. 和田47-49. 宮本47-49

序盤から一航のややタイミングずらして鋭く蹴る見映えがいい。日下は正攻法で立ち向かい互角に打ち合うが、一航のリズムを崩すには至らず。一航は第12代NJKFバンタム級チャンピオンとなる。

ロープ際に追い込むと飛びヒザ蹴りを試みた一航
一航の蹴りが日下洸大にヒット

◆第5試合 女子キック(ミネルヴァ)スーパーバンタム級タイトルマッチ3回戦

SAHOが接近戦で力を発揮、連打で攻め続けた

チャンピオン.SAHO(闘神塾/55.0kg)
    vs
1位.浅井春香(KICKBOX/55.2kg)
勝者:SAHO / 判定3-0 / 主審:中山宏美
副審:少白竜30-28. 竹村30-29. 和田29-28

序盤、浅井の右ストレート主体のパンチが冴えたが、接近戦で若いSAHOのスピード衰えぬパンチの的確差と手数が優って防衛成功。

◆第4試合 65.0kg契約3回戦

NJKFスーパーライト級4位.マリモー(キング/64.85kg)
    vs
NJKFスーパーライト級8位.野津良太(E.S.G/65.7kg)
勝者:野津良太 / 判定0-3 / 主審:宮本和俊
副審:中山27-30. 竹村27-30.和田27-30.

若さで優るSAHOが疲れを見せず浅井を攻め続けた

◆第3試合 61.0kg契約3回戦

NJKFスーパーフェザー級7位.吉田凛汰朗(VERTEX/60.8kg)
    vs
hayato(FOKAIJAPAN/60.9 kg)
引分け0-1 / 主審:少白竜
副審:中山29-30. 竹村29-29. 宮本29-29.

◆第2試合 58.0kg契約3回戦

向後宏昭(キング/57.8kg)vs 将栄(team lmmotal/57.65kg)
勝者:向後宏昭 / TKO 1R 1:56 / 股間ファールブローにより試合続行不可能となった将栄。
主審:和田良覚

◆第1試合 66.3kg契約3回戦

宗方888(キング/66.3kg)vs 謙(PIT/65.4kg)
勝者:宗方888 / KO 1R 2:43 / 3ノックダウン / 主審:竹村光一

エスコートキッズに選ばれたファンとツーショットの中野椋太

《取材戦記》

S-1ジャパン65kg級準決勝は、9月22日大阪と翌23日後楽園ホールで、1試合ずつ行なわれる予定だった。その9月22日、大阪での誠至会主催興行に於いて、中野椋太はチョ・ギョンジェ(韓国)に判定負け。その試合は準決勝ではなく、単なるノンタイトル戦だった。中野椋太は当初から決勝戦進出が決定していたらしく、この決勝進出の事実だけ知らされ、翌23日のNJKF興行で「中野椋太はチョ・ギョンジェに勝利した」という誤報が流れた。

畠山隼人は栄基(エイワS)に判定勝利で決勝進出を決め、もう一枠がなかなかリリースされず不可解ではあったが、結局65kg級は当初から3名の争奪戦だったことになる。

そしてこの11月30日の決勝戦では、中野椋太が強打で畠山隼人を圧倒して倒し、決勝戦のみ出場で優勝を果たした。

前座第2試合、故意ではない股間ファールブロー(ローブロー)を受けて悶絶TKO負けを喫した将栄。プロボクシングの場合、最大5分のインターバルを与えて続行できない場合はTKO負けとなる。

パンチで切られた外傷は目で確認できるが、股間の場合、リング上では確認できないことや、故意に反則勝ちを拾う為、痛いフリをして続行を拒否することも考えられ、防具として“ノーファール”となる防具を装着することからも続行できると判断される。その為、負傷判定や無効試合とはならない。

トリプルPの星紗弓さんとMOMOTAROの勝利のツーショット

今回のNJKFでも同様の裁定を迅速に下したことはすばらしい。また、ムエタイのノーファールカップは、一人で装着出来るものではなく、ベテランのトレーナーに紐をしっかり縛って貰わないと不安定になってしまう。初めて着けて貰う選手はその紐が尻や腰に食い込んで「痛テテテッ!」となるが、それぐらいしっかり縛らないと危険らしい。

そんな強いとは思えない蹴りで悶絶するような試合続行不可能となった場合、「ノーファールカップの紐の縛り方が悪いんだ!」と語るムエタイに詳しいトレーナーから聞いたことがあります。また「ムエタイ式ノーファールカップを越える安全なノーファールカップは他に無い」と言うあるトレーナーもいました。

それでも蹴られれば痛いだろうと思う毎度の股間のファールブロー。絶対安全で蹴られても痛くないノーファールカップは作れないものだろうか。“誰か作って特許とれば儲かるぞ”と思うが、試行錯誤繰り返し、何度股間蹴られなければならないか、やっぱり難しいものだ。

女子キックで勝利したSAHOは後援会や応援仲間の居る北側を向いて最後まで支援の御礼とマイクアピールをしていたが、映像を録っているカメラは南側とその近い方向のニュートラルコーナーにあった。後援会や応援仲間に感謝の気持ちを述べることに意識が働くのだろう。

現在は全国ネットでテレビ地上波放映されることは稀だが、インターネットではどこに居ても誰でも観れる時代。テレビカメラに向かって全国のキックボクシングファンへ挨拶する立派な姿を後援者、応援仲間に見て貰うことも大切なことと思う。

NJKF三代目・坂上顕二理事長率いる2020年の最初の興行は、2月16日(日)後楽園ホールで開催予定です。

以下、年間予定
3月15日(日) レンブラントホテル厚木(主催:新興ムエタイジム)
6月14日(日) 後楽園ホール
9月12日(土 )後楽園ホール
11月15日(日)後楽園ホール
他、加盟各ジムの主催興行が予定されています。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]

フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

一水会代表 木村三浩 編著『スゴイぞ!プーチン 一日も早く日露平和条約の締結を!』
上條英男『BOSS 一匹狼マネージャー50年の闘い』。「伝説のマネージャー」だけが知る日本の「音楽」と「芸能界」!

「反社会勢力」という虚構〈4〉やっぱり反社が参加していた「桜を見る会」── 自民党政治は反社との結託で成立している

国会が閉幕し、安倍総理の「桜を見る会」疑惑は逃げ切った感があるものの、本質的に「お友だち」「上級国民」「反社との結託」「官邸による官僚統制=忖度」という政権を成り立たせている構造があるかぎり、政権の腐敗はくり返し暴露されるであろう。

◆自らが出席した会議で決まった「反社会的勢力の定義」を「一義的に定まっているわけではない」と言い放った菅義偉官房長官の厚顔

本連載「『反社会勢力』という虚構」をお読みになっている方には、別に愕くようなことではないかもしれないが、じつに安倍政権らしさも明るみに出た。安倍政権が支援者や仲間うち(本来の目的は功績があった人たち)を招待した「桜を見る会」に、反社会勢力とおぼしき人々が参加していたという一件だ。

しかも、その疑惑を指摘された菅義偉官房長官は、しれっとした表情でこう言い放ったのだ。

いわく「『反社会的勢力』は様々な場面で使われ、定義は一義的に定まっているわけではないと承知しています」

「えっ……?」

この「反社会的勢力」の「定義」は、じつは安倍政権において定められたものなのだ。第1次安倍政権下の2007年6月、「犯罪対策閣僚会議」が決定した「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針について」のなかで「反社会的勢力」は、以下のように定義されている。

「暴力、威力と詐欺的手法を駆使して経済的利益を追求する集団又は個人である『反社会的勢力』をとらえるに際しては、暴力団、暴力団関係企業、総会屋、社会運動標ぼうゴロ、政治活動標ぼうゴロ、特殊知能暴力集団等といった属性要件に着目するとともに、暴力的な要求行為、法的な責任を超えた不当な要求といった行為要件にも着目することが重要である」

ちなみに菅義偉官房長官は、当時総務大臣としてこの閣僚会議に参加している。みずから出席した会議で「定義」した反社会的勢力が、「定義は一義的に定まっているわけではないと承知している」と言うのだ。もはやこの人の言葉はまともに聴いても仕方がないというべきであろう。


◎[参考動画]反社会的勢力入っていた/菅官房長官 定例会見 【2019年11月26日午後】(テレ東NEWS)

「やや日刊桜を見る会新聞」と題する怪文書
[写真A]

ではなぜ、こんな無定見きわまりない答弁に追い込まれたのであろうか。[写真A]「やや日刊桜を見る会新聞」など、ネットで流布しているものだ。「週刊新潮」(12月12日号)によると、有名な反グレAの企業舎弟と言われる人物だという。犯罪歴は住宅ローン名目で金融機関から4600万円の詐欺で逮捕、知人の頭をビール瓶で殴る暴行罪で逮捕、牛を殺して「畜場法違反」で逮捕と多彩である。代紋を持って一家を構えたヤクザではないものの、それゆえに組織的な歯止めがきかない「準暴力団」としての野放図で危険な人物というべきであろう。

菅官房長官が「出席は把握していなかったが、結果的には入ったのだろう」と定例会見で述べている以上、菅氏自身がその正体を知っているのは明らかだ。というよりも、見た目で危なさが分かったはずではないか。ヤクザも反グレも「わたしたちは危険です」と堅気に知らせるためにこそ、派手な服を着たり茶髪に染めたりするのだ。そういう人物とツーショットに納まるとは、いかにも警戒心がなさすぎる。いや、そもそも近づいてくる人間を排除しないのが自民党政治なのである。そして安倍総理だ。

◆自民党政治は反社との結託で成立している

[写真B]はテロップのとおり、奈良県高取町の新澤良文町会議員(52歳)である。そしてその新澤氏が[写真C]上段において、派手なジェスチュアでスリーショットを喜んでいるのは、言うまでもなくわが安倍総理だ。新澤氏は五代目山口組山健組系の臥龍会に所属していた、れっきとした元暴力団組員である。週刊誌の取材によると、新澤氏は率直にその事実をみとめ、こう語ったという

[写真B]
[写真C]

「入れ墨も入っており、逮捕歴があるのも間違いありません。抜けたのは30歳のころ。組が代替わりして、冷や飯を食わされるようになったのがきっかけです。これはキチンと言わせていただきたいんですが、いまはカタギとして真面目にやっています」

立派な態度ではないか。すでに組織を離脱してから20年近くが経っているばかりか、FBを見るかぎり地元での熱心な議員活動も感じられる。過去記事(日本タイムス)によれば、警察関係者は新澤氏のことを「今も山健組の幹部と交流があります。服役は3回あり、殺人未遂で7年、暴行では1年入っています。全身入れ墨、左小指が欠損しています」という。絶縁されたわけではないようなので、現役の組員と親交があることも想像に難くない。これをもって、安倍総理と新澤議員の親交をとがめだてようとは思わない。むしろ反社の「定義は一義的に定まっているわけではない」ことを安倍政権において、正々堂々と閣議決定して言動の一貫性を保つべきではないか。

われわれ国民は「行政文書たる参加者名簿は破棄し、サーバーに残っている電子データは一般職員が使えないから、行政文書ではない」などという子供じみた屁理屈と同様に、「反社は定義がない」などと、薄っぺらな言い訳に辟易しているのだ。そして安倍総理や菅官房長官に反社につけ入られる「スキ」があるのではない。理念や政策によらない、人脈(誰でもよい)と金脈(利権配分)で成り立っている自民党政治がそもそも、反社といわれる人々と分かちがたい関係にあるからだ。

何度でも確認しよう。自民党政治は本質的に反社勢力との結託で成立してきたし、これからもそれは変わらない。伝統的な代紋の代わりに、一般企業を装ったり業界団体名を名乗ったりと形を変えても、基本的に利権誘導党派であるかぎり反社的な人物と結びついてしまうのだ。

そして独自の権益で反社を追い落とし、みずからがその利権を独占しようとする警察庁官僚がその関係を排撃するにつれて、反社の資金と集票力に依拠する自民党政治は股裂きに遭うのだ。

◎【横山茂彦の不定期連載】「反社会勢力」という虚構 

▼横山茂彦(よこやま しげひこ)
著述業、雑誌編集者。近著に『ガンになりにくい食生活』(鹿砦社ライブラリー)『男組の時代――番長たちが元気だった季節』(明月堂書店)など。

本日発売!月刊『紙の爆弾』2020年1月号 はびこる「ベネッセ」「上智大学」人脈 “アベ友政治”の食い物にされる教育行政他
鹿砦社創業50周年記念出版『一九六九年 混沌と狂騒の時代』

死刑回避の大阪通り魔殺人「裁判官はむしろ遺族の思いに応えた」と言える理由

2012年6月に大阪・ミナミの路上で音楽プロデューサーの男性・南野信吾さん(当時42)とスナック経営者の女性・佐々木トシさん(同66)の2人を包丁でめった刺しにし、殺害した男・礒飛(いそひ)京三(44)が死刑を免れることになった。

礒飛は、裁判員裁判だった1審・大阪地裁で死刑判決を受けたが、2審・大阪高裁で破棄されて無期懲役判決を受けていた。そして今月12月2日、上告審・最高裁の小池裕裁判長が検察側、弁護側双方の上告を棄却する判決を出したため、2審の無期懲役判決が事実上、確定したのだ。

これをうけ、ネット上では、「裁判官は相変わらず浮世離れしている」「裁判官も被害者や遺族と同じ目に遭ってみろ」などと、案の定ともいうべき裁判官批判が繰り広げられている。その気持ちはわからないでもない。筆者も自分がこの事件の遺族であれば、礒飛が死刑にならないと納得できないだろうと思うからだ。

もっとも、礒飛が死刑を免れたことについて、裁判官を批判するのはお門違いだと言うほかない。なぜなら、この事件の裁判官たちはむしろ遺族の思いに応えているからだ。

◆裁判官が頑張らなければ、無罪もありえた

では、なぜ、この事件の裁判官が遺族の思いに応えていると言えるのか。法律を厳格に適用すれば、礒飛は死刑を免れるどころか、無罪になりうる被告人だったからである。そのことを説明するうえで、まず裁判で認定された事実関係を見てみよう。

礒飛は覚せい剤取締法違反で2度の服役歴があり、この事件を起こしたのは2度目の服役を終え、出所した翌月のことだった。生まれ育った栃木で仕事が見つからず、刑務所内で知り合った男から「仕事を紹介してやる」と言われて大阪に赴いた。しかし、紹介された仕事は詐欺や覚せい剤の密売人だったため、礒飛は失望した。そして翌朝、覚せい剤精神病による「刺せ。刺せ」という幻聴に促されるまま、上記のような犯行に及んだのである。ちなみに犯行に使った包丁は、10分ほど前に近くの大丸百貨店で購入したものだった。

事件があった大坂・ミナミの路上

このような事実関係を素直に見れば、刑法第39条が適用されるのが妥当な事案だと言える。刑法第39条では、責任能力(=物事の善悪を判断し、それに従って行動する力)が無い者の行為は罰せず、責任能力が著しく減退した者の行為はその刑を減軽すると定められている。この事件の裁判官たちが礒飛に対し、この法律を厳格に適用していれば、礒飛は無罪や有期刑になっていてもおかしくなかったろう。

しかし、1審・大阪地裁の死刑判決はもとより、2審・大阪高裁の無期懲役判決、その2審判決を是認した最高裁の判決のいずれにおいても、礒飛は完全責任能力を認められている。それもひとえに、裁判官たちが礒飛は犯行時に完全責任能力があったと認めるため、判決であれこれと強引な理屈を重ねて頑張ったからである。

1審・大阪地裁の裁判官たちは、一緒に審理した裁判員たちの後ろ盾があったため、かろうじて礒飛に死刑を言い渡すことができたが、2審・大阪高裁と上告審・最高裁の裁判官たちは裁判員の後ろ盾がなかったため、そこまでは叶わなかった。しかし、「死刑は無理でもせめて無期に」と彼らが頑張ったからこそ、礒飛は無期懲役になったのだ。

この話が信じられない人は、裁判所のホームページにアップされた大坂高裁の2審判決と最高裁の上告審判決を実際に見てみるといい(URLは後掲)。とりわけ大阪高裁の裁判官は、63枚に及ぶ長い判決文を書き連ね、責任能力の有無や程度を争った弁護側の主張を退けている。その文面からは、「遺族の思いに応えたい」という裁判官の切なる思いが読み取れる。

◆無期が納得できない人が批判すべき対象は法律

礒飛が勾留されている大阪拘置所

日常的に事件取材や裁判の傍聴をしていればわかるが、日本の刑事裁判では、重大事件の被告人が明らかに重篤な精神障害者であっても、刑法第39条が適用され、無罪になったり、刑が軽くなったりすることはなかなかない。礒飛が死刑を免れたことに関し、裁判官を批判している人たちもその現実を知れば、自分たちの批判がお門違いだとわかるだろう。

今回、礒飛の裁判の結果に納得がいかない人が批判すべき対象は裁判官ではなく、法律である。ヤフーニュースのコメント欄を見ていたら、「1人でも殺したら、自動的に死刑にすべき」という刑法の改正案を述べていた人がいたが、この意見は筋が通っている。筆者はこの意見に賛同しかねるが、この意見の主は少なくとも批判する対象を間違ってはいない。

【参考】
礒飛の2審判決 http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail4?id=86655

礒飛の上告審判決 http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=89071

▼片岡健(かたおか けん)
全国各地で新旧様々な事件を取材している。近著に『平成監獄面会記 重大殺人犯7人と1人のリアル』(笠倉出版社)。同書のコミカライズ版『マンガ「獄中面会物語」』(笠倉出版社)も発売中。

7日発売!月刊『紙の爆弾』2020年1月号 はびこる「ベネッセ」「上智大学」人脈 “アベ友政治”の食い物にされる教育行政他
「絶望の牢獄から無実を叫ぶ ―冤罪死刑囚八人の書画集―」(片岡健編/鹿砦社)