原発は、自国に向けた核爆弾 ── 水戸喜世子さんに聞いたロシアのウクライナ原発攻撃とこれからの「戦争と平和」 尾崎美代子

3月7日、水戸喜世子さんのご自宅で、脱被ばく子ども裁判の控訴審と、被ばくで甲状腺がんを発症した若者6人が東電を訴えた裁判についてお話を伺った。居間に通されるなり、目についたのが水戸さん手作りのプラカードだった。ロシアのウクライナ侵攻から2週間以上経過し(3月7日現在)、世界中で反戦の声が高まっている。

とりわけロシアがウクライナの原発を攻撃したことで水戸さんの怒りが最高潮に達した。こうした事態を予測していたかのように、2017年7月、水戸さんは、日本の原発へのミサイル攻撃を懸念し、運転差し止めの仮処分を提訴した。裁判は敗訴。その苦い経験から、懸念したことが現実となった今、「心配していたことが現実になって寒気がする」と話される。 (聞き手・構成=尾崎美代子)

◆世界中が完全な平和を手にするまでは、原発は眠っていてもらいましょう

 
高槻駅で続けられるスタンディングに立つ水戸さん(写真提供・二木洋子さん)

水戸 去年から、ずっと眩暈がひどくて、家でも何かにつかまって歩いていたのですが、ロシアの武力攻撃を知って、いてもたってもいられなくて、キャリーを引きずってスタンディングに参加するようになりました。

2017年、今頃の季節でしたね。北朝鮮が弾道ミサイルを立て続けに発射したことがありました。その時、私はたった一人で、高浜3、4号機の運転差し止めの仮処分を大阪地裁に提訴したのです。あのときは内閣総理大臣が自衛隊法の「破壊措置命令」、つまりミサイルが飛んできたら撃ち落としていいという指示を発令していたのです。

新幹線を運休したり、東京では地下鉄も止めましたよね。子どもまで学校で真剣に避難訓練をさせられ、登下校時の注意書きまで、学校から家庭にお手紙が配られました。戦時中、警戒警報や空襲警報のたびに防空頭巾をかぶって、机の下にもぐった国民学校時代のドキドキした息の詰まるような記憶がよみがえって、言葉にならない怒りがこみあげてきました。国民学校3年の3月です。家の地下に掘った防空壕では危険だからと、商品取引所の地下室に逃げて、命だけは助かりましたが、家は焼けて、着の身着のまま、弟の手を引いて、逃げた時の記憶は消えないのです。 二度と子どもに、あんな思いはさせないぞと強く願って生きてきましたから。

 
高槻駅陸橋で行われているスタンディング。3月10日、働いている人たちにもアピールしようと、夕方から行われた(写真提供・二木洋子さん)

「原発は、自国に向けた核爆弾だ!」ということは世界の常識。国が知らない筈はないのに原発を動かしたまま、子どもまで動員して避難訓練させる安倍内閣の意図をマスコミも指摘しないという呆れ果てた世情に怒り絶頂だったのです。

そんな時、河合さんから電話があって「水戸さんはどう思う?」と言われたので「訴訟したい!」と二つ返事だったのです。同志に出会えた、と本当に嬉しかった。政府のいかさまを裁判長に見抜いてほしい、万一訴訟に負けても世間に「ミサイルと原発」を意識してもらうきっかけになるし、安倍政権の危険な世論操作に気づいてもらえる、そんな思いでしたね。

本当に危険であれば、真っ先に原発を止めるのが常識だってことを、今度のウクライナ侵略戦争が、世界に示したと思います。キエフの住民たちも、まさかこんな戦争になるとは思わなかったと語っているように戦争はいつの時代も突発的です。世界中が完全な平和を手にするまでは、原発は眠っていてもらいましょう。

◆プーチンも教科書でトルストイを読んでいるはず

 
水戸喜世子(みと・きよこ)さん 子ども脱被ばく裁判の会・共同代表。1935年名古屋市生まれ。お茶の水女子大学、東京理科大学で学ぶ。反原発運動の黎明期を切り開いた原子核物理学者・故水戸巌氏と1960年に結婚後、京大基礎物理研究所の文部教官助手就任。1969年「救援連絡センター」の設立に巌氏とともに尽力。2008年から2年間中国江蘇省建東学院の外籍日本語教授。2011年3月11日以降は積極的に脱原発・反原発運動にかかわる。

── プラカードに書いてある「トルストイが泣いている」に込めた思いは?

水戸 私はヤースナヤ・ポリャーナにあるトルストイの生家に行ったことがあるんです。植民地文学学会の西田勝先生(故人)が「トルストイの旅」という小さな企画をされて連れていって貰いました。

広大なお屋敷にはお孫さんの家族が住んでおられて、小さな女の子が真っ白の馬に乗っていました。私は高3の頃、教科書がきっかけでトルストイを読みふけるようになりました。弱者への目、深い洞察からの非暴力主義に、とても感銘を受けたような気がします。ロマン・ロランやマルタン・デュ・ガールなど長編小説にのめりこむきっかけでした。

彼は貴族の出身ですが、弱い人と共にありたいという思いが強く、晩年は家出をして、どこかで死んでしまったのだと記憶しています。『アンナ・カレーニナ』など時代を超えて、ロシアで一番愛され、読み継がれているのがトルストイです。ロシア人の心のふるさとであり、プーチンも間違いなく少なくとも教科書では読んでいるはずです。トルストイの非暴力主義の前で、トルストイを心のふるさととするロシアの民衆の前で、己の行為を恥じてほしいのです。

◆日本の原発のテロ対策

── ウクライナではザポリージャ原発を守ろうと周辺の住民がロシア軍に抵抗しましたが、日本の原発のテロ対策はどうでしょうか?

水戸 規制委員会が要求している原発のテロ対策工事は、テロなどで飛行機が落ちても大丈夫な程度の工事です。ミサイルで狙われたらどうなるか、3月9日の衆議院経済産業委員会で立憲・山崎誠議員の質問に対して、「放射能の拡散は避けようがない」と規制委員会の更田委員長が答えています。私が仮訴訟を起こした頃は、規制委員会は機密に属することなので、と明言しなかったのですが、はっきり言いきったのは今回が初めてですね。

関電側は耐えられると強弁していましたが。 めったに起きないテロ対策を電力会社に要求したのですから、ミサイル発射に対して、対策工事を規制委員会は電力会社に要求すべきです。無防備衛あることを認めたのですから。

◆福島の被ばくの闇の深さ

── まもなく11回目の3・11を迎えますが。(3月7日当時)

水戸 「子ども脱被ばく裁判」がいま控訴審の最中で、毎日が3・11ですから、特別の感慨はありません。福島を振り返るのはまだずっと先のことのような気がしています。

昨日(3月6日)FoE japan主催の国際集会があって、私はズーム参加しました。基調報告で武藤類子さんが福島の現状として被災者切り捨て、矛盾を地元に押し付けたままの見かけの復興、進まぬ廃炉作業、加害責任を果たさない姿などを具体的に話され、改めて、心が引き締まりました。早急に被害者への補償と原発の後始末をさせる、脱原発を実現すること。頑張らねば、と思います。

類子さんの話で私が衝撃を受けたのは、「この1年で友人が6人亡くなりました」と語っておられたことです。数年前にお会いした時も、「今年一年で5人の友人が亡くなったの」と顔をくもらせておられたことと重ねて、福島の被ばくの闇の深さに言葉を失う思いがしました。一体いつまで、国と御用学者は『被ばく者はいない』とごまかし続けるつもりなのか、闘いの本命です。広島・長崎の被ばく者から学ぶことがとても大事ですね。

少し先ですが、5月21日、地元高槻市の高槻現代劇場文化ホール2階で「黒い雨訴訟」の原告である高東征二さんをお呼びして「切り捨てられる被ばく 黒い雨から福島へ」と題した講演会を行っていただきます。ほかに「子ども脱被ばく裁判」主催の展示・学習会も致します。第一歩を踏みだしました。どうぞみなさまもお集まり下さい。

5月21日大阪・高槻市で開催される講演会「広島・長崎から福島へ続く核被害~内部被ばくの危険性を考える」&写真展「広島黒い雨から福島へ」

▼尾崎美代子(おざき みよこ)
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを「西成青い空カンパ」として主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
◎著者ツイッター(はなままさん)https://twitter.com/hanamama58

〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の脱原発季刊誌 『季節』2022年春号(『NO NUKES voice』改題 通巻31号)3月11日発売開始

〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の脱原発季刊誌
季節 2022年春号
『NO NUKES voice』改題 通巻31号
紙の爆弾2022年4月増刊

2022年3月11日発売
A5判 132頁(巻頭カラー4頁+本文128頁)
定価 770円(本体700円+税)

事故はいまも続いている
福島第一原発・現場の真実

《グラビア》福島第一原発現地取材(写真・文=おしどりマコ&ケン)
《グラビア》希釈されない疑念の渦 それでも海に流すのか?(写真・文=鈴木博喜)

小出裕章(元京都大学原子炉実験所助教)
原子力は即刻廃絶すべきもの

樋口英明(元裁判官)
原発問題はエネルギー問題なのか

中村敦夫(俳優/作家)
表現者は歩き続ける

井戸謙一(弁護士)
被ばく問題の重要性

《インタビュー》片山夏子(東京新聞福島特別支局長)
人を追い続けたい、声を聞き続けたい
[聞き手・構成=尾崎美代子]

おしどりマコ(漫才師/記者)
事故はいまも続いている
福島第一原発・現場の真実

和田央子(放射能ゴミ焼却を考えるふくしま連絡会)
犠牲のシステム 数兆円の除染ビジネスと搾取される労働者

森松明希子(東日本大震災避難者の会 Thanks & Dream〈サンドリ〉代表)
「いつまで避難者といってるのか?」という人に問いかけたい
「あなたは避難者になれますか?」と

鈴木博喜(『民の声新聞』発行人)
沈黙と叫び 汚染水海洋放出と漁師たち

伊達信夫(原発事故広域避難者団体役員)
《徹底検証》「東電原発事故避難」これまでと現在〈最終回〉
語られなかったものは何か

《講演》広瀬 隆(作家)
地球温暖化説は根拠のないデマである〈前編〉

山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)
原発は「気候変動」の解決策にはならない

細谷修平(メディア研究者)
《新連載》シュウくんの反核・反戦映画日誌〈1〉
真の暴力を行使するとき――『人魚伝説』を観る

三上 治(「経産省前テントひろば」スタッフ)
機を見るに敏なんて美徳でも何でもない

板坂 剛(作家/舞踏家)
大村紀行──キリシタン弾圧・原爆の惨禍 そして原発への複雑な思い!
 
佐藤雅彦(ジャーナリスト/翻訳家)
“騙(かた)り”の国から“語り部(かたりべ)”の国へ
絶望を希望に転じるために いまこそ疑似「民主国」ニッポンの主客転換を!

山田悦子(甲山事件冤罪被害者)
山田悦子の語る世界〈15〉
森友学園国有地売却公文書 改ざん国賠・『認諾』への考察

再稼働阻止全国ネットワーク
国政選挙で原発を重要争点に押し上げよう
7月参議院選挙で「老朽原発阻止」を野党共通公約へ
《全国》柳田 真(とめよう!東海第二原発首都圏連絡会世話人)
《全国》石鍋 誠(再稼働阻止全国ネットワーク事務局)
《六ヶ所》中道雅史(「4・9反核燃の日」全国集会実行委員会)
《東海第二》野口 修(東海第二原発の再稼働を止める会)
《反原発自治体》反原発自治体議員・市民連盟
《東海第2》披田信一郎(東海第2原発の再稼働を止める会)
《東京》佐々木敏彦(東電本店合同抗議行動実行委員会)
《志賀原発》藤岡彰弘(「命のネットワーク」)
《関西電力》木原壯林(老朽原発うごかすな!実行委員会)
《島根原発》芦原康江(さよなら島根原発ネットワーク)
《伊方原発》秦 左子(伊方から原発をなくす会)
《規制委・経産省》木村雅英(再稼働阻止全国ネットワーク/経産省前テントひろば)
《読書案内》天野恵一(再稼動阻止全国ネットワーク事務局)

《反原発川柳》乱鬼龍 選

季節編集委員会
我々はなぜ『季節』へ誌名を変更したのか

私たちは唯一の脱原発情報誌『季節』を応援しています!

ロシアの軍事侵略を非難し、ウクライナの愛国主義に共鳴しつつ、「プーチンの盟友」安倍元首相の「核共有」に加勢する日本国内〈好戦派〉の支離滅裂 田所敏夫

◆直接情報が一番の頼り

ロシアがウクライナに軍事侵略を開始して20日以上が経過した。紛争発生時に、自称「国際学者」や「軍事評論家」が言いたいことを無責任に言い放つ様子にはもう飽きた。なぜならば、短・中期的な分析ですら未知の情報を提示してくれる識者は極めて稀だからだ。

そして、ゼレンスキーウクライナ大統領が大手メディアでは英雄扱いされ、日本からも「志願兵」に70名余りの応募があったと在日ウクライナ大使は明らかにした。ゼレンスキー大統領は日本時間の3月16日にはカナダ、米国の国会でリモート演説を行い、日本でも今週、同様のリモート演説の実施に向けて、自民党と立憲民主党が前向きに協議中だと報じられている。私はバイアスのかかったニュースではなく、なるべく情報源に近づき、自らの判断を下そうと試みる。例えばウクライナ政府機関の発信や、ロシア政府の発信などである。中間にメディアが介在すると、いらぬ解釈が加えられるのでそれらは参考程度にしか利用しない。

ゼレンスキー大統領はFacebookとTwitterを利用しながら、かなり頻繁に発信を続けている。そしてキエフやその他のウクライナ国内在住のかたがたも、かなりの数動画を発信している。それらを総合して私は今なにができるのか、なにを考えるべきなのかを模索する。

◆誰がプーチンを擁護して、育てたのか

理由はどうあれ「侵略戦争」には反射的に嫌悪を抱く私は、ロシアの軍事侵略をやはり許すことはできない。そして20年以上実質上独裁者の座にあるウラジーミル・プーチンを支援してきた日本外交や、政治家の名前をしっかりと思いだし、彼らの言動を注視することは無駄ではないだろう。

日本外交の対ロシア最大の課題は「北方領土返還」らしい。私は本気で北方領土返還を実現したいのであれば、ソ連崩壊後独立国家共同体と名乗っていた間隙に机の下で数兆円を渡せば4島返還の可能性はあったと考え、20年以上そのように発信してきた。だが、この期に及んで「北方領土」などにロシアが関心を払わないことは、誰の目にもあきらかであろう。

米国のベトナム、アフガニスタン、イラク侵略に匹敵する、このような惨事を招致するに至った独裁者に世界でも有数の待遇で接していた、この国のかつての最高権力者がいる。安倍晋三だ。安倍は首相在任中あるいは官房長官など在任中にいったい何回プーチンと面会したことであろうか。首相在任期間中には27回と言われているが、非公式な面会を含めた回数は公開されていない。ロシア訪問の際は必ず経済援助の土産を下げて出かけて行き、2016年プーチンが来日した際には安倍の地元、山口県の高級旅館にまで招いて厚遇した。

◆安倍晋三の犯罪性を注視せよ

そして日本は何を獲得したのか? いま安倍は何を発言しているのか。「プーチンと仲の良い安倍にロシアへ行かせて停戦のために働かせろ」との声は政府内外にある。しかし、安倍がそんな役割を担えるような人間ではないことを、首相岸田も外相岸も熟知している。なにより仲良しであるはずのプーチンが核兵器の使用可能性に言及したとたんに、日本の「非核三原則の見直し」と「核シェアリング」(核兵器の共有、あるいは共同利用)との暴論を平気で発言し、岸田を慌てさせた。要するに安倍晋三によって日本はプーチン独裁を確固とさせる栄養を与えてしまい、にもかかわらず安倍にはその認識がまったくないということに、あらためて注目すべきだろう。

◆核兵器は使えない、原発も「地元核兵器」だ

そして私同様に「侵略戦争反対」の立場の人が、ウクライナを支援する気持ちは理解できるものの、それが即「憲法9条改正論」や安倍が唱える程度の「核兵器容認論」にまで結びつくのは、短絡の極みである。

今次のロシアによるウクライナ侵略により明らかになったことは、「核兵器」は実際には使用できない兵器であることと(一度核兵器が使われれば、攻撃の応酬で人類はおそらく破滅近くのダメージを受ける)だ。国連事務総長までが「核戦争の可能性」を憂慮する事態は「何者かが意図的であろうと、ミスであろうと核兵器を使用してしまえば、人類はもうあらゆるコントロールを失い破滅に向かう」ことへの世界的な恐怖に依拠している。

原発の危険性も同様だ。ロシアが侵略直後にチェルノブイリ原発を支配し、その後も主要な原発に手を伸ばしているのは、電力の首根っこを押さえるのではなく「地元の核兵器」を支配下に置くことが目的である。

◆好戦派への警告ゼレンスキ―大統領の言葉

このような状況下、総論ロシアの暴挙は米国によるベトナム侵略戦、アフガニスタン侵略、イラク侵略同様に非難されるのが道理だ。だがここでちょっといきりたち過ぎた日本国内の「好戦派」には警告を発しておこう。私の見解ではなく、米国議会でリモート演説を行いスタンディングオベーションで称賛を受けた、ゼレンスキー大統領の言葉だ。

「真珠湾攻撃を思い出して下さい。9・11を思い出してください」

9・11の実行者はともかく、真珠湾攻撃の当事者は誰でも知っている。日本だ。第二次大戦後の世界の枠組みで東西冷戦構造は崩れても、敗戦国である日本へのまなざしには変化がないことを、ゼレンスキー大統領は明言した。この言葉の含意は重い。どう答えるのだ。安倍晋三とその支持者よ。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の脱原発季刊誌 『季節』2022年春号(『NO NUKES voice』改題 通巻31号)
タブーなきラディカルスキャンダルマガジン『紙の爆弾』2022年4月号!

第三次世界大戦の危機 プーチンは大丈夫か? 横山茂彦

第三次世界大戦の危機が迫っている。

ロシアに詳しい軍事評論家の小泉悠(東大先端科学技術研究センター講師)によると、ロシアには戦術核兵器の先制使用によるデモンストレーション戦略があるという。ようするに、紛争や外交交渉が停滞したときに、戦術核の先制使用で局面を打開するというものだ。

具体的には、戦術核ミサイルを人口の少ない場所に打ち込み、核の脅威を紛争相手・交渉相手に思い知らせることで、局面を打開する。バクチのような戦略である。
今回のウクライナ侵攻の停滞は、まさに戦術核使用の局面に至ろうとしているのではないかと、小泉は指摘している(報道番組での発言)。

そしてその戦術核の使用が、NATO諸国との偶発的な交戦に発展する可能性が指摘される。戦術核といっても、広島型の数百倍の威力を持っているのだ。

そうであれば、第三次世界大戦の偶発的な勃発が目前にせまっていることになる。世界大戦の戦場はヨーロッパである。

二次にわたる世界大戦ばかりではない。中世以来のバラ戦争、ナポレオン戦争と、世界的な戦争は、ヨーロッパの帰趨をかけたものとして行なわれてきた。ヨーロッパこそ人類の価値観と近代文明の源泉であるからだ。超大国アメリカといえども、近代的な民主主義の価値観と民族的な淵源をヨーロッパに持っているからこそ、NATOという軍事共同体の根っこをこの地に置いているのだ。

逆に中東やイスラム圏の紛争(ソ連のアフガン侵犯・アメリカのイラク戦争)は、それがいかに苛烈であっても世界的なものにはならなかった。そこにわれわれは、ヨーロッパ中心史観・イスラムに対する潜在的な蔑視。あるいは辺境観が、われわれの中にあるのを思い知るわけだが、それはまた別個の問題として、いまは世界大戦の危機に警鐘を鳴らさなければならない。

◆ヒトラーを思わせるプーチンの「嘘」

プーチンはロシア国内で、ロシア軍について誤った報道をした者に懲役15年の罰則をともなう治安法を成立させた。これによって、欧米諸国のロシア現地報道陣は取材活動を停止した。わずかに市民のSNSによって、ロシアの反戦運動が伝わるのみとなった。

ウクライナ現地の事実関係も、これによって「藪の中」になりそうな気配だ。原発施設への攻撃(ロシアはウクライナの謀略と主張)、ロシア兵の死者数、政府系機関による政権支持率70%、人道回廊の封鎖をめぐるウクライナとの見解の対立など、事実関係をめぐる虚偽の疑いが大きくなっている。

アドルフ・ヒトラーの『マイン・カンプ』における明言を想起しておこう。

「政府や指導者にとって、嘘は大きければ大きいほどいい」
「大衆の心は原始的なまでにシンプルなので、小さな嘘よりも大きな嘘の餌食になりやすい」
「大衆はドラマチックな嘘には簡単に乗せられてしまうものだ」

まさにプーチンは、ヒトラーの教訓を踏襲しようとしているかのようだ。そのプーチンはクレムリン宮殿の地下にある軍事作戦本部に入りびたり、将軍たちに「何が起きている?」と落ち着かない日々を送っているという(米ABC放送)。プーチンも事実確認に汲々としているのだ。ネットをふくめた事実関係の取材・報道こそわれわれの責務であろう。

◆NATOの偶発的な介入も

いっぽう、ウクライナのゼレンスキー大統領は、NATOに軍事支援を要求している。ウクライナ上空の「飛行禁止空域」化が実施されると、これまたロシア軍とNATO軍の交戦。第三次世界大戦の引き金となる。

いまのところNATOはウクライナの要求を拒否しているが、戦闘機をふくむ兵器・軍事物資の援助はスウェーデン・フィンランドなど、各国で積極的に検討されている。

この場合も、NATO諸国の軍事基地・飛行場から飛び立った戦闘機がウクライナ上空でロシア軍機と交戦する可能性が高い。これもNATO軍が偶発的に紛争に介入することになり、プーチンはすでに警告を口にしている。

プーチンもゼレンスキーも、すでにあとには引けなくなっている。プーチンが敗北すれば政治的失墜はまぬがれず、ゼレンスキーが白旗を上げるのはウクライナにロシアの傀儡政権をもたらすであろう。

戦争は発動されたら、もう引けないのである。かつてユーゴ内戦が、国土を廃墟にして、隣人の殺し合い(民族排除と浄化)のはてに終焉したことをわれわれは現認してきた。おそらくロシア兵の累々たる死体とウクライナの主要都市の壊滅後に、フランスや中国の仲介で和平会議が訪れるであろう。けれども、世界はそこから何を教訓としてみちびき、ふたたびの騒乱を回避しうるのか。

アメリカによるアフガン出兵とイラク侵攻は、テロとの戦いや大量殺戮兵器という大義名分によって、世界は戦争が発動されるのを傍観した。

しかし第三次世界大戦の危機に、われわれはアメリカが傍観するのを目撃することになった。これもまた、世界の警察官が無力だったことを証明することになったのである。


小泉悠・東京大学特任助教「プーチンのロシア」(2)(日本記者クラブ 2020年3月9日)

▼横山茂彦(よこやま・しげひこ)
編集者・著述業・歴史研究家。歴史関連の著書・共著に『合戦場の女たち』(情況新書)『軍師・官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)『闇の後醍醐銭』(叢文社)『真田丸のナゾ』(サイゾー)『日本史の新常識』(文春新書)『天皇125代全史』(スタンダーズ)『世にも奇妙な日本史』(宙出版)など。

タブーなきラディカルスキャンダルマガジン『紙の爆弾』2022年4月号!

『季節』2022年春号(『NO NUKES voice』改題 通巻31号)発行にあたって 原発の危険性を再認識させられたロシアによるウクライナ侵略 季節編集委員会

日本では2011年3月11日にまだ生まれていなかった子どもたちが既に小学校に通っています。同時に大地震の頻発、原発事故からCOVID-19(新型コロナウイルス)のパンデミック、そして20世紀に最大限懸念された「核」戦争の危機に、今日全人類は直面しています。

 
『季節』2022年春号(『NO NUKES voice』改題 通巻31号)3月11日発売開始

ロシアのウクライナ侵略へ、国際社会が強い非難を浴びせていますが、日本国内では「こんなことになるから核武装をしなければならない」、「憲法9条で国は守れない」、「米国と核兵器をシェアーしよう」などと、火事場泥棒的な猛烈に無茶苦茶極まる発言が元総理安倍晋三や維新の松井一郎代表などから聞かれます。

私たちはこれらの暴論を「ふざけるな」と踏みつぶします。今次のロシアによるウクライナ侵略は、細部にデリケートな要因があるにせよ、間違いなく暴挙です。そしてロシアが侵略後、いち早く「原子力発電危機の象徴」である「チェルノブイリ原発」を支配したのは、「原発」が持つ危険性と、国際紛争にあっては「兵器」として機能する危険な存在であることを示した、と理解すべきではないでしょうか。

このような侵略行為が始まれば「核による抑止力」などは一切通用せず、「原発」が核兵器同様に扱われることが、侵略者ロシアによって明確に示されました。これまで本誌を愛読していただいた皆さんも「まさか21世紀にこんな戦争が起こるなんて」と驚いている方が多くいらっしゃることでしょう。私たちも同様です。ロシアによるウクライナへの全面侵略などは、正直予想できませんでした。

◆戦争がなくても「原発」は危険だ

ただし、私たちは平時においても「原発が核兵器同様に危険である」ことは創刊以来感じていましたし、これまで原稿を寄せていただいた、多くの皆さんに指摘していただいた通りです。福島第一原発の大事故により、290名を超える若者が甲状腺がんに罹患してしまいました。政府・福島県や無恥な政党(自民党・維新・国民民主党)はこの明確な健康被害に、「風評被害」とトンデモない言いがかりで応じていますが、僅か10年ほど前の事実すら理解できない、これらの人々に政治を任せるわけにはいきません。

◆なぜ『季節』と誌名を変えたのか

『季節』と誌名を変更した理由については、本日発売の誌面の中で詳述しております。是非手に取ってお読みください。そしてお知り合い、ご友人に広めてください。

少しだけ誌名変更のエッセンスをご紹介しましょう。世界の多くの国には「季節」が廻り、なかでも日本には四季があります。春夏秋冬、落葉樹はそのいでたちを変えながら次の年を迎えます。冬眠する動物もいます。私たち人間の生は長くとも100年程度ですが、私たちが生まれてくる遙か昔から、いま生をうけた私たち全員がこの世から消えた未来にも、過去と変わらずに春夏秋冬は廻ることでしょう。

このような長大な歴史の中で、人間が地球史的にはごく短時間に、犯してしまった間違いの象徴が「原発」だといえるのではないでしょうか。人間みずからの存続はもとより、生態系を破壊するほどの暴走を、原発(核)は持っている、このことを再度肝に銘じたいと思います。残念ながら原発(核)の廃絶には、その汚染物質の処理を考慮に入れれば、最も希望的な観測に基づいても、現在科学の力では数十万年を要します。

私たちは日本だけでなく、世界中の原発の即時停止、廃炉を求めるものですが、仮にその夢が叶ったとして汚染物質の処理には、気が遠くなるような時間が必要です。その間にも「季節」は幾たびも廻るでしょう。今次の侵略戦争での侵略者による「原発」の扱われ方は、そのことへの再度の警鐘です。

2014年の創刊から8年、『季節』は「原発」を絶えまなく凝視しながら、時代・文明の病・欺瞞を突く総合誌への発展を目指し、本日再出発します。ご支援をお願いいたします。

〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の脱原発季刊誌
季節 2022年春号
『NO NUKES voice』改題 通巻31号
紙の爆弾2022年4月増刊

2022年3月11日発売
A5判 132頁(巻頭カラー4頁+本文128頁)
定価 770円(本体700円+税)

事故はいまも続いている
福島第一原発・現場の真実

《グラビア》福島第一原発現地取材(写真・文=おしどりマコ&ケン)

《グラビア》希釈されない疑念の渦 それでも海に流すのか?(写真・文=鈴木博喜)

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原子力は即刻廃絶すべきもの

樋口英明(元裁判官)
原発問題はエネルギー問題なのか

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表現者は歩き続ける

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被ばく問題の重要性

《インタビュー》片山夏子(東京新聞福島特別支局長)
人を追い続けたい、声を聞き続けたい
[聞き手・構成=尾崎美代子]

おしどりマコ(漫才師/記者)
事故はいまも続いている
福島第一原発・現場の真実

和田央子(放射能ゴミ焼却を考えるふくしま連絡会)
犠牲のシステム 数兆円の除染ビジネスと搾取される労働者

森松明希子(東日本大震災避難者の会 Thanks & Dream〈サンドリ〉代表)
「いつまで避難者といってるのか?」という人に問いかけたい
「あなたは避難者になれますか?」と

鈴木博喜(『民の声新聞』発行人)
沈黙と叫び 汚染水海洋放出と漁師たち

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《徹底検証》「東電原発事故避難」これまでと現在〈最終回〉
語られなかったものは何か

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大村紀行──キリシタン弾圧・原爆の惨禍 そして原発への複雑な思い!
 
佐藤雅彦(ジャーナリスト/翻訳家)
“騙(かた)り”の国から“語り部(かたりべ)”の国へ
絶望を希望に転じるために いまこそ疑似「民主国」ニッポンの主客転換を!

山田悦子(甲山事件冤罪被害者)
山田悦子の語る世界〈15〉
森友学園国有地売却公文書 改ざん国賠・『認諾』への考察

再稼働阻止全国ネットワーク
国政選挙で原発を重要争点に押し上げよう
7月参議院選挙で「老朽原発阻止」を野党共通公約へ
《全国》柳田 真(とめよう!東海第二原発首都圏連絡会世話人)
《全国》石鍋 誠(再稼働阻止全国ネットワーク事務局)
《六ヶ所》中道雅史(「4・9反核燃の日」全国集会実行委員会)
《東海第二》野口 修(東海第二原発の再稼働を止める会)
《反原発自治体》反原発自治体議員・市民連盟
《東海第2》披田信一郎(東海第2原発の再稼働を止める会)
《東京》佐々木敏彦(東電本店合同抗議行動実行委員会)
《志賀原発》藤岡彰弘(「命のネットワーク」)
《関西電力》木原壯林(老朽原発うごかすな!実行委員会)
《島根原発》芦原康江(さよなら島根原発ネットワーク)
《伊方原発》秦 左子(伊方から原発をなくす会)
《規制委・経産省》木村雅英(再稼働阻止全国ネットワーク/経産省前テントひろば)
《読書案内》天野恵一(再稼動阻止全国ネットワーク事務局)

《反原発川柳》乱鬼龍 選

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祖国ウクライナに届け! 日本に暮らすウクライナ人やロシア人が訴える『戦争反対』〈下〉 民の声新聞 鈴木博喜

プーチン政権によるウクライナ侵攻に抗議の声をあげたのは、ウクライナの人々ばかりではなかった。日本で暮らすロシア人たちも渋谷駅前でマイクを握り「戦争反対」と訴えた。

「私はロシア人です。ロシア国民の1人として、戦争に反対していることを伝えに来ました。戦争を正当化できません。がんばりましょう」

ロシア人女性は泣いていた。〝加害国〟の国民が祖国の暴挙に異を唱えるのは勇気が要るだろう。ましてや、日曜日の午後で大勢の日本人が行き交う渋谷だ。それだけに女性たちの言葉は非常に重い。

10年以上前にロシアから来日した女性も「戦争反対の気持ちを伝えるためにここに来ました」と想いを語った。

「いまの戦争はいきなり起こったわけではなくて、長い歴史があります。ロシア政府だけでなくウクライナ政府、NATOなどいろいろな政府がうまくいかなかった結果だと思っています。でも、戦争は最悪の方法です。問題を解決したいのなら人間らしい努力。言語と知恵を使って交渉しながら解決するべきだと思います。ロシアにも戦争に反対している人は多いです。今日はウクライナ人の同僚と一緒にここに来ました。私たちに問題はないです。問題が起こることはあり得ないのです」

彼女の言葉はとても落ち着いていて知性的だった。なぜ日本で暮らすウクライナ人と仲良くしているのに、祖国はウクライナを武力で制圧しようとするのか。なぜ言語と知恵を総動員しないのか…。そして、戦争を終わらせるための制裁について、次のように語った。

「日本人の皆さんに覚えて欲しいです。一般の人たちになるべく影響しないような制裁にして欲しいと思います」

女性は、バルト海に面した港湾都市に生まれた。来日して数年後、東日本大震災が起きる。以来、東北でのボランティア活動を続けているという。

「両親の出身はベラルーシとウクライナの間にあった、チェルノブイリ地域です。私のルーツはそこなんですよね。ウクライナにいる親戚はまだ無事ですが心配しています」

私が「戦争も原発も反対です。犠牲になるのはどちらも、弱い市民だから」と言うと「その通りです」と答えた。

実は今月5日午後、この女性から「やっぱり名前と顔を伏せて欲しい」と連絡があった。「ロシアで暮らす母を守るためです。戦争に反対し、各国の制裁に賛成していることが知れると、最長15年の懲役、または多額の罰金を支払わなければならなくなる恐れが生じたのです」

ロシア人が日本で反戦を訴えるのも命がけなのだ。

10年以上前にロシアから来日した女性も「言語と知恵を使って交渉しながら解決するべき」と訴えた

反戦スピーチはまだまだ続いた。

ウクライナ人の母親と日本人の父親の間に生まれたエリカさんは、祖母の身を案じている。

「おばあちゃんなどがウクライナ郊外に住んでいます。ミサイルの爆音が聴こえるたびに地下の防空壕に隠れる毎日だそうです。そんな生活、私たち日本人には信じられないと思います。幼い子どもたちから未来を奪っている戦争を許してはいけません。早く平和になって欲しいと願っています。本当に戦争をやめましょう」

国旗を身にまとって抗議集会に参加したウクライナの女性たち

インド人の男性も流暢な日本語で反戦を訴えた。

「私にはウクライナ人の友達がたくさんいます。今日は、そのなかの1人と話した内容を伝えたいです。友達はこう言いました。『私たちは平和な国で生きたい』。平和な国で生きたいだけだと言っていました。ウクライナという小さな国を弟や妹のように守るべきなのに、ロシアという強大な国が市民を殺している。最悪のことです。私も皆さんと一緒にプーチン大統領の行動に反対します」

インド人の男性は「皆さんと一緒にプーチン大統領の行動に反対します」とマイクを握った

当初はロシア大使館前で抗議集会を開く予定だったが、参加者数が多くなったためハチ公前に場所を移して行われた。

そのロシア大使館周辺では、昼過ぎから右翼団体が街宣車を走らせ、大音量でロシアを罵っていた。大勢の警察官が駆り出され、ロシア大使館を警備していた。特に通行止めなどの措置は取られておらず所持品検査などもないが、カメラを手に歩くたびに警察官に声をかけられ「どこのメディアか」などと質問された。

その光景は、原発事故後の東電を護衛している警察と重なって見えた。筆者は「日本の警察は誰を守っているのか」と逆質問したが、答えるはずもなかった。

金髪の女性が日本人男性と一緒に坂道を上がって来た。「PROTECT UKRAINIAN SKY」と書かれた手づくりのプラカードを掲げていた。この日の東京の青空のように、ウクライナにも平和な春が早く訪れることを誰もが願っている。

ロシア大使館近くでも、ウクライナ出身の女性がプラカードを掲げて戦争の終結を求めた

▼鈴木博喜(すずき ひろき)
神奈川県横須賀市生まれ。地方紙記者を経て、2011年より「民の声新聞」発行人。高速バスで福島県中通りに通いながら、原発事故に伴う被曝問題を中心に避難者訴訟や避難者支援問題、〝復興五輪〟、台風19号水害などの取材を続けている。記事は http://taminokoeshimbun.blog.fc2.com/ で無料で読めます。氏名などの登録は不要。取材費の応援(カンパ)は大歓迎です。

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議論を尽くせなかったIPCの個人参加取り消し決定 オリンピック・パラリンピックの意義は? 横山茂彦

「平和の祭典」「障がい者の参加」を謳う、北京冬季パラリンピックが開幕した。いっぽうで、平和の祭典開催中にもかかわらず、ロシアのウクライナ侵攻は止まない。

この問題から、ロシアとベラルーシの選手が国の代表はもとより、個人参加も許されなくなった。IPC(国際パラリンピック委員会)は停戦決議に反したこと、抗議があったので安全な開催を選んだと、その理由に挙げている。

しかし、決定の前日(3月2日)には、いったん個人参加を認めていた。はたして議論を深めた結果なのだろうか。今回の問題の背景と課題を提起しておこう。

ロシアのウクライナ侵攻は、12月3日に国連総会で決議されたオリンピック停戦(開催前後7日間は紛争や戦争を停止する)に抵触する。これは明白な事実である。

この事実をもとに、IPCは国家の枠外での選手の個人参加を認める決定をしたが、一転して個人参加をも禁止したものである。


◎[参考動画]ロシアとベラルーシの選手団 北京パラリンピックへの出場一転不可に IPCが発表(TBS 2022年3月3日)

◆オリンピック休戦

オリンピックが、戦争を停戦(休戦)させる。戦争という究極の国権発動を左右するのだから、オリンピックの存在自体には、きわめて政治的な意味(意義)がある。

もともとオリンピックが古代ギリシャ諸国の、戦争に代わるイベントとして発祥したこと。パラリンピックが負傷兵たちのために、手術よりもスポーツによる回復(リハビリ)をめざしたものである。パラリンピックの起源は、第二次大戦後、イギリスのストーク・マンデビル病院で行われたストーク・マンデビル競技大会とされる。

そうであれば、平和の祭典そのものが戦争に対しては政治的なものと言える。それは同時に、国家の争闘をこえた、個人参加の祭典でもあったのだ。もともとオリンピック・ムーブメントは、個人およびチームによるものだったからだ。

その意味では、最初にIPCが決定した個人参加の承認は、パラリンピックの精神を体現したものだったと言えよう。国旗を掲げず、メダルの数も国別にカウントされない。

しかしそのいっぽうで、ウクライナの記者が会見の時に掲げた、戦禍に倒れた選手の写真は重かった。「もうこの選手はパラリンピックに、永遠に参加できないのです」という主張。いまも戦火のなかで、防空壕のなかに入っている選手がいる事実は、重い主張として突き付けられたのである。

ウクライナほかの選手団が「ロシアの選手と試合はできない」と訴えたことで、IPCは「安全な開催」を名目に、ロシア・ベラルーシの選手の個人参加を取り消したのである。もっともな主張であり、判断であるといえるかもしれない。

◆議論は尽くされたのか?

しかし、なのである。国家の枠をこえて、個人参加しようとした選手たちを、排除していいのだろうか。

オリンピック・パラリンピックの開催地をギリシャ(アテネ)に限定し、国連がIOCに代わって主催者になる、という主張が、このかんのオリンピック弊害にたいして主張されてきた。巨大利権にふくれ上がったIOCに引導を渡せば、次回からでも実現できそうなプランである。

金額的にも施設規模も超巨大化し、主催国の政治的な思惑に従属した開催形式に疑問が提起されてきたのである。もうひとつ、いまだ議論の俎上にのぼっていないが、国別の参加ではなく個人・チームでの参加によって、国家主義・ナショナリズムをも超えられるはずだ。

今回、戦争によって現状変更しようとしたロシアの前時代的なウクライナ侵攻。それを批判する国際的な世論を背景に、IPCは国家の枠をこえた選手の交流を禁じたのである。その意味では、心から同情せざるをえないとはいえ、ウクライナおよびウクライナを支持する人々は、パラリンピックを政治的に利用したのである。すくなくとも、IPCの「事なかれ主義」によって、選手をまじえた議論が尽くされなかったのは事実である。

政治的に利用するのならば、むしろロシアとベラルーシの選手たちを個人参加させ、かれら彼女らに「母国の戦争行為反対」を語らせるほうが、何倍も政治的な効果があったのではないか。今後のオリンピック・パラリンピックのあり方のために議論を提起したい。このことばかりを言いたいために、本稿を起こした。パラリンピック参加選手たちの健闘、ウクライナ情勢の平和的な解決を祈念したい。

▼横山茂彦(よこやま・しげひこ)
編集者・著述業・歴史研究家。歴史関連の著書・共著に『合戦場の女たち』(情況新書)『軍師・官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)『闇の後醍醐銭』(叢文社)『真田丸のナゾ』(サイゾー)『日本史の新常識』(文春新書)『天皇125代全史』(スタンダーズ)『世にも奇妙な日本史』(宙出版)など。

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祖国ウクライナに届け! 日本に暮らすウクライナ人やロシア人が訴える『戦争反対』〈上〉 民の声新聞 鈴木博喜

「家族がウクライナに住んでいます。兄の家族は避難しました。昨日、母と話しました。母はキエフの近くで独り暮らしをしていて、毎日地下鉄に避難しているそうです。すごく心配。町からも出られないし、とても心配です。避難している地下鉄では赤ちゃんが生まれたと聞きました。病院など、食糧が足りていない場所が今でもあります。大変な状況です。皆さんのサポートにすごく感謝しています。おかしい戦争を一緒に止められると信じています。力をください。サポート本当にありがとうございます。戦争反対!戦争反対!皆さん、応援ありがとうございます」

27日午後、若者でごった返す渋谷駅前にウクライナ人女性の言葉が響いた。法務省出入国在留管理庁の統計によると、8000km以上も離れた日本では2020年12月現在、1865人のウクライナ人が暮らしている。別のウクライナ人女性は、涙を流しながらマイクを握った。

「ウクライナにいる人々は私たちの家族です。一人一人が家族です。皆さん、なんとか守ってください。よろしくお願いします」

ウクライナ出身の女性はヒトラーになぞらえたプーチン大統領の写真を手に抗議集会に参加

無所属の自治体議員たちの呼びかけで行われた抗議行動。ハチ公前広場には400人を超える人々が集まり、ロシアによるウクライナ侵攻に抗議の声をあげた。近くではアイドルグループと思われる少女たちがイベント告知のチラシを配り、ファンの男性たちと談笑していた。ユーチューバーとおぼしき男性は、奇抜な格好で撮影をしていた。なかには、抗議集会をバックに自撮りをする若者も。笑顔があふれる〝平和な〟日曜日の渋谷にはしかし、家族の無事を祈り続けるウクライナ人女性たちの姿があった。

ウクライナ西部で生まれたという女性は「祈るしかない」と口にした。

「私は20年くらい日本に住んでいます。家族は今もウクライナで暮らしています。とても心が痛いです。すぐにウクライナに行きたいです。母国を守りたいですが、ここにいると何もできないのが悔しいです。とても悔しいです。祈るしかない。祈りましょう。昨日も大勢の人がここに集まりました。本当にありがとうございます。今日も大勢の人が集まってウクライナを応援してくれて、本当にありがとうございます。本当にありがとうございます」

スピーチのたびに拍手が起こる。この拍手はプーチン大統領の耳に届くだろうか。大寒波が去り、春の暖かさに包まれた渋谷の青空は、ウクライナとつながっている。地下鉄で逃げ込んだ家族に娘の切なる願いは届くだろうか。別の女性は弟の身を案じた。

「私は10年、日本に住んでいます。ウクライナ南部で生まれて両親が住んでいます。弟はキエフで暮らしていて2日間、バスルームで寝ています。本当に危ない状況です。私はどうすれば良いですか?困っています。『戦争反対』と言いたいです」

別のウクライナ人女性たちは「Stop Putin」「Stop War」と書かれたプラカードを掲げた

少しでも安全な場所を、とバスルームを選んだのだろう。しかし、建物自体を爆撃されてしまえば命を落としてしまう。仮に〝安全〟だとして、いつまでバスルームで眠れば平穏な日常が戻って来るのか。日本に居る姉はもちろん、爆音に怯えながら生活している弟にも分からない。

こんな女性の言葉もあった。

「ウクライナは大変なことになりました。姉の家族はバラバラになってしまいました。すごく心配で毎日眠れません。祈っています。早く戦争を止めたいです。早く世界が平和になるようにお願いします。早くやめて欲しいです」

渋谷・ハチ公前での抗議集会には、子どもたちの姿もあった

抗議集会開催を呼びかけた山本ひとみさん(東京・武蔵野市議)は「多くのウクライナ国民が殺されています。難民も数多くいます。武力で平和はつくれない。まずは侵略した軍隊が撤退するべきだ。戦争はどんな理由があっても許してはいけない。ウクライナに平和を回復するためには軍隊が撤退しなければならない」と語った。

「反貧困ネットワーク」事務局長の瀬戸大作さんは「戦争も貧困も人を殺す。誰も殺してはいけない。誰も殺すな!としっかりと声をあげていきたい」と呼びかけた。

東京のど真ん中で反戦・非戦を訴えたのはウクライナの人々だけではなかった。〝加害者〟側であるロシアの人々もマイクを握った(つづく)

ロシア大使館近くの交差点では、ウクライナ国旗をあしらった手作りマスク姿で反戦を訴える人も

▼鈴木博喜(すずき ひろき)

神奈川県横須賀市生まれ。地方紙記者を経て、2011年より「民の声新聞」発行人。高速バスで福島県中通りに通いながら、原発事故に伴う被曝問題を中心に避難者訴訟や避難者支援問題、〝復興五輪〟、台風19号水害などの取材を続けている。記事は http://taminokoeshimbun.blog.fc2.com/ で無料で読めます。氏名などの登録は不要。取材費の応援(カンパ)は大歓迎です。

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チェルノブイリ原発を奪取したプーチンのウクライナ侵攻と核による威嚇に対し、広島・長崎から同時に断固抗議! さとうしゅういち

2022年2月24日、ロシアのプーチン大統領は「平和維持活動」と称してウクライナへの侵攻を開始。ロシアが世界最大の核兵器保有国であることを強調しています。プーチン大統領の行動は、核兵器による威嚇という、核兵器禁止条約(ロシアは加入していないが、50ヶ国以上の批准で国際法としては発効している)で禁じられている行動でもあります。相手を切りつけまではいかなくとも、日本刀を抜いて見せびらかしているような話です。さらに、ロシア軍はチェルノブイリ原発を奪取。ウクライナには14の原発があり、万が一「原発戦災」になれば、それこそ地球滅亡にもつながりかねません。

これに対して被爆地の広島と長崎の市民有志がよびかけて、開戦3日目の2月26日、広島の原爆ドーム前と長崎の爆心地公園で同時に以下のプラカードを掲げ、プーチン大統領に侵攻をやめるとともに、威嚇を含めて核兵器を使わないよう求めました。

11時2分、60人の参加者は一斉にプラカードを掲げました。これは、長崎に原爆が投下された時間に合わせたもので、「核兵器使用は長崎で最後にしてほしい」(呼びかけ人のひとりの安彦恵里香さん、写真)との願いをこめてのものです。

2003年のイラク戦争のときは、2ヶ月前からアメリカがイラクを攻撃することが火を見より明らかでしたので、抗議デモも多くの人が参加しました。しかし、今回のロシアによるウクライナ侵攻は急なことです。それでも「どれだけ人が集まるか心配だっただがSNSなどを通じておもったより多くの人が参加」(安彦さん)しました。

今回の行動は「ロシアの人(一般市民)も巻き込まれただけだとおもう。市民同士でつながっていきたい」と、ロシアでもデモなどに参加して戦争に反対する人が少なくないことを念頭に、市民の連帯を重視したものです。

以下はステートメント《日本語》です。

私たちは、77年前に被爆した広島・長崎に暮らす市民です。

2月24日、ロシアはウクライナへの軍事攻撃を開始しました。プーチン大統領は、今回の軍事攻撃開始にあたって、核兵器使用の可能性を繰り返し述べています。また、ウクライナには15基の原発があり、ロシアはすでにチェルノブイリ原子力発電所を占拠したとの報道があります。私たちは、核兵器がもたらす破滅的な被害を知る被爆地の人間として、今回の争いが核による惨事を引き起こさないか憂慮しているとともに、核による脅威を振りかざすロシアに強く抗議します。

被爆から77年、未だ被爆者たちは原爆による健康被害とその不安に苦しみ続けています。被爆者たちはこうした自分達や家族が受けた苦しみから、核兵器を「人間として生きることも死ぬことも許さない」兵器であると訴えてきました。もう二度と、ヒロシマ・ナガサキをくり返してはなりません。

戦争で傷つくのはいつでも力のない市民です。私たちは、ロシアに国際法と国連憲章のもとに、市民の命や生活を脅かす全ての軍事行動を今すぐに停止することを求めます。そして、国際社会に軍事力ではなく、外交努力による平和を追求することを求めます。

NO MORE HIROSHIMA
NO MORE NAGASAKI
NO MORE WAR

2022年2月26日
広島・長崎の有志一同

広島:安彦恵里香、川崎梨乃、田中美穂、高垣慶太、高橋悠太
長崎:林田光弘

以上

◆ウクライナが核兵器を放棄しかったら偶発的核戦争の危険が増大するだけ

さて、今回のウクライナ侵攻をめぐって、日本でも「ウクライナは核兵器を放棄したから、ロシアに侵攻された」「だから、日本も核武装、憲法9条改正を」という意見が強まっています。このことについては、参加者の中からも危機感を感じました。

たしかに、ソビエト崩壊時にウクライナには世界第三位の核兵器が「放置」されました。しかし、中英仏を上回る核兵器を人口が4000万程度いわゆる中進国のウクライナが維持でできるかといえばそれはできないでしょう。核兵器をソビエトの後継国家であるロシアに返すしか、選択肢はなかったわけで「たら、れば」はナンセンスです。

よしんば、核兵器をウクライナが所持していればむしろ全面核戦争の危険はまします。キエフとモスクワはミサイルで数分の近さです。モスクワとワシントン、北京とワシントンの距離なら正体不明の飛翔体が確認された場合、相手国を問いただす時間があります。しかし、モスクワとキエフの距離だと時間はないです。正体不明の飛翔物体がうちあがった場合、「問答無用」で核ミサイルを相手にぶっ放すしか生き残る道はない、という判断を指導者がすることになります。誤解による偶発的核戦争の危険が非常に高まります。

また、そもそも、旧ソビエトが崩壊した時点ではNATOは無用の長物でした。解体するか、ロシアもふくむOSCEを主たる欧州の集団的安全保障の枠組みにするか?また、ウクライナなどについては、中露(つい最近まで国境が確定しないなどかなり緊張関係もあった)に挟まれたモンゴルのような非核兵器地帯にするなどの方策もあったはずです。それをせずに、ロシア抜きのNATOをロシアに接するところまで拡大した西側も調子にのりすぎた感はいなめません。反作用としての、ロシアのウクライナへの圧力を招いたのも否定できません。こうした外交プロセスがどうだったか?検証もせずに、核武装だ、憲法9条改正だ、というのはナンセンスです。

もちろん、だからといって、プーチンが一般市民も巻き添えにし、原発事故の危険すら顧みずにウクライナを攻撃したのは全く正当化できません。今の時点ではとにかく、戦争をやめさせるのが最優先です。ともかく、まるで、核兵器を放棄したのが悪いなどという議論は、一歩間違えれば、核保有国は非核国に対して何をしてもいい、ということになりかねません。あるいは、核戦力の増強に突き進む朝鮮の金正恩総書記を喜ばせるだけです。

◆戦闘停止と核不使用を迫ることが最優先 余計な核武装・改憲議論は核へのハードルを下げるだけ

核兵器の悲惨さは、核保有国も非核兵器国への核兵器の使用を躊躇する背景になってきました。

「こんなひどいものを使えば国際的な非難をあびて自分は失脚するかもしれない。」と思って核兵器の使用をためらった例は少なくありません。有名な例は、朝鮮戦争で当時は非核国だった中華人民共和国(国連的にはまだ中華民国が正統性を認められていた時代)への核兵器の使用をアメリカが検討したが断念した例はあります。あるいは、ブッシュ政権時代のアメリカはイラン、イラクやシリアなどについては「核兵器の使用をふくむ先制攻撃」を国家戦略としていました。イラクやシリアは攻撃しましたが核兵器は結局使いませんでした。核保有国に対してはとくに日本政府も広島・長崎の市民も先頭に立って、核兵器の非人道性をきちんと訴え、使用をあきらめさせる国際世論を維持・強化していくべきです。日本政府があまりやる気がない以上は市民がやるしかないでしょう。 

世界で最初の核兵器被害を受けた日本が、プーチンの土俵に乗って、核武装、憲法9条改正などと言い出せば、核保有国の核兵器使用や、非核国の核兵器開発へのハードルを下げることにもなりかねません。

もちろん、日本には石油などの値上がりの影響も及びます。それについて、たとえば、ガソリン税ゼロとか消費税ゼロなどで市民生活のこれ以上の困窮を防ぐのも大事な議論です。

ロシアでも26日現在でデモが60都市で行われ、1800人以上が拘束されたそうです。日本は事実上の一党独裁下とはいえ、言論の自由はロシアに比べればまだまだあります。しっかり行使をしていきましょう。ロシアの国内外の声でまず、核兵器の使用という最悪の自体を食い止めていきましょう。

◆長崎市民も参加してビキニ・デー講演会 「長年の核被害の軽視がプーチン暴走を後押し」

同じ26日は、午後には広島県原水協の主催で3.1ビキニ・デーの集会がオンライン併用で行われました。オンライン併用という特色を生かして、長崎の市民の方も参加しました。

1954年3月1日のビキニ環礁における水爆実験は、筆者の小学生時代には「第五福竜丸事件」と言われたものでした。しかし、実際には高知県など、多くの日本漁船、そして現地住民が被害を受けたことから、ビキニ・デーという呼称が定着しているようです。この事件を契機に原水爆禁止運動が高まったのは周知の事実です。

2022年ビキ二デーは、元広島平和研究所職員で今は奈良大学教授史学科の高橋博子さんが「封印された放射性降下物~黒い雨・ビキニ水爆被災」と題して講演されました。

40数年にわたる運動の結果、「黒い雨」訴訟は広島高裁でも“全面勝訴”しています。地裁判決をさらに踏み込み、11疾病に罹患していなくても当時その地域に居住し、放射性降下物にさらされた人全員を「被爆者」と認定することを命じています。しかし政府は、11疾病に罹患していることにこだわり、司法の判断を無視しようとしており、広島市もこれに屈しています。ビキニ水爆被災の真相をわずか7億2000万円の見舞金と引き換えに隠蔽・封印、福島原発事故の放射線被害の解明にも後ろ向きの日本政府の責任を厳しく批判する趣旨です。

高橋さんは、1950年に米軍が長崎の西山地区という場所で放射性降下物質を調査したにもかかわらず、全くそれが報告されていないこと、また、仁科博士が同じく1950年の遺稿で「西山地区の放射能は強い」「住民の白血球が高」と書き残していることを紹介。しかし、こうしたことが最近まで隠蔽されてきており、その隠蔽工作を2021年8月9日のNHKスペシャルがあばいたが、政府は現在でも「塩対応」だそうです。

そもそもが、ヒバクについての研究がアメリカ主導で、放射性兵器の開発のために行われてきたわけです。また、民間防衛のためにも行われてきたそうですが、その内容は「6000ミリシーベルトの放射能を浴びても何人か生き残る可能性がある」などというお粗末なものでした。

冷戦が終わったとき、核兵器がなくなるかも、という期待が広がりましたが、実際には「アメリカは力で冷戦に勝った」という神話がひろまってしまった、と高橋さんは、指摘。核の非人道性が十分問題とされないまま現在にきてしまった。日本政府も及び腰の中で、プーチンら旧東側も、バイデンら西側も核兵器の非人道性を十分認識しないまま、今に至っていることが、今回のウクライナの事態の背景にある、と厳しく批判しました。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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ゼレンスキー VS メドヴェドチュク ── 東西に挟撃されたウクライナ権力闘争の深層 横山茂彦

◆1年以上前から綿密に計画されてきた軍事征服・政権転覆

ロシアによるウクライナ侵攻は、ウクライナ軍およびウクライナ国民の反撃に遭い、現地は膠着状態だという(2月28日現在)。一説には、ロシア軍の安易な侵攻計画によるものだという。ロシア軍の装備はともかく、兵員に経験不足の新兵が多く、ベラルーシでの共同訓練で練度をかさねたものの、ウクライナ軍の士気の高い反撃に遭った。新兵たちがとまどっているのではないか、というものだ(軍事評論家)。

じっさいは、ロシアの作戦計画は政治的に安易だったとはいえ、計画そのものは1年ほどかけて練られてきたものだった。英王立防衛安保研究所のジャック・ワトリング(主任研究員)によると、ロシア軍の侵攻作戦は1年以上前から綿密に計画されてきたという。その計画には何段階もの軍事征服・政権転覆の計画があるという。

渋谷ハチ公前広場でのウクライナ支援集会(2022年2月26日筆者撮影)

◆ウクライナ騒乱の歴史的な流れ

ウクライナ騒乱の歴史的な流れを、ここで簡単に解説しておこう。

1991年 ソビエト連邦崩壊により、ウクライナ独立 
2004年 オレンジ革命でユシチェンコが大統領に
    ※ロシアとの対立が顕在化する
2010年 親ロ派のヴィクトル・ヤヌコーヴィチが大統領に
2014年 ウクライナ騒乱
    ※親ロ派のヤヌコーヴィチ大統領が失脚
    親ロシア派騒乱 (2月~ 5月)で、ロシアによるクリミア併合
2014年 9月5日、ミンスク議定書=ウクライナ・ロシア・ドネツク人民共和国・ルガンスク人民共和国(調印したが休戦に失敗)
    ※ドンバス戦争(=東部内戦は、現在まで継続)
2015年 2月11日、ミンスク2(ミンスク合意)調印
2022年 2月25日、ロシアがウクライナ危機に侵攻

ソ連邦崩壊後の東欧民主化では、ポーランドやバルト三国をはじめ、軒並みに旧ソ連邦諸国がNATOに加盟した。ウクライナでもオレンジ革命以降、親西ヨーロッパ派が政権主流を占めてきたのである。

2010年にヤヌコーヴィチが大統領になったものの、反政府運動で姿をくらますなど、親ロ派は東部でも少数派に転落する。

◆ウクライナ侵攻の引き金となったメドヴェドチュク自宅軟禁事件

さて、そのかんの政治舞台では脇役だったが、ロシアにとって重要なキーパーソンが、昨年の5月に自宅軟禁される事態が起きた。じつは、これが今回のロシアによるウクライナ侵攻の引き金となったのだ。そのキーパーソンとは、「プーチンの傀儡」と言われる大富豪政治家、ヴィクトル・メドヴェドチュク(Viktor Medvedchuk)ある。

メドヴェドチュクは、自宅軟禁に先立つ2月に、国家反逆罪・国家領土に対する侵害罪で公訴されている。野党プラットフォーム「人生のために」の集会で「ドンバス地区を自治区にしなければならない」と発言したことが根拠となったものだ。この公訴こそ、1年前から侵攻が計画されたことに符合するのだ。


◎[参考動画]Russia: Putin says Medvedchuk has ‘noble mission’ after Vladivostok meeting(Ruptly 2019年9月6日)

◆全住民による抵抗

ウクライナ軍の意外な抵抗は、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領がキエフにとどまり、軍と国民を激励しているからだという。大統領はコメディアン出身らしく、その立ち居振る舞いに訴求力がある。

若いカップルが戦闘現場に行く前に結婚式を挙げ、同僚の兵士たちがそれを祝福する。花嫁も「女性にも出来ることがある」と現地にとどまる姿は、思わず涙をさそう。全世界がプーチンを糾弾し、ウクライナに同情的なのはもう勧善懲悪主義のストーリーを観ているようだ。

いっぽうで、ウクライナ政府は火炎瓶の作り方を指導し、AK47(カラシニコフ)をかたどった木製銃で国民たちが訓練をする。18歳以上、60歳以下の男性には国外脱出が禁止された。このあたりはコミューン(ソビエト)原則、住民が武装して外敵と戦う、ヨーロッパの伝統が、われわれ平和に慣らされてきた日本人には「怖い」。

◆軍事的な決着か、それとも政治的な妥協はあるのか

さて、その侵攻作戦の収拾はどうなるのか。プーチンの前時代的な戦争発動が、ほかならぬプーチン政権の終わりの始まりになる、との観測がメディアの論調になっているが、きわめて楽観的なものというしかない。

20年以上も独裁者に政権をゆだねてきたロシア連邦という国家が、簡単に民主化できるとは思えないからだ。17年革命から数えれば100年以上も、かの国は独裁者を称賛、高度な管理国家機能に従属してきたのだ。いや、共産主義政権時代よりも、よりいっそう独裁的な国家になったと言えるかもしれない

すなわちロシア連邦は、ソビエト連邦時代のロシア共和国ではなく、85の連邦構成体(46の州・9の地方政府・3つの連邦市・22の共和国・5つの自治管区および自治州)からなる連邦国家なのだ。生産手段の国有化が独占資本の管理下に代わったものの、その国家と経済組織を牛耳るのは、ソ連時代と変わらないノーメンクラツーラ(技術官僚・国家官僚)なのである。共産主義の理念がなくなった分だけ、その搾取と強権は、資本主義的な剥き出しのものになっているといえよう。

ロシア軍がウクライナ全土を制圧するにしても、侵攻作戦の頓挫で和平交渉になった場合(ベラルーシで開催が決定)でも、メドヴェドチュクがキーパーソンになるのは間違いないであろう。メドヴェドチュクとプーチンの関係は極めて親密で、プーチンはメドヴェドチュクの娘の名付け親でもあるという。

◆スタグフレーションの危機

最後にもうひとつ。ウクライナ情勢による天然ガス・石油不足である。ロシアに対する経済制裁(とくに3大銀行の資産凍結)が、ロシア資本の決裁を困難にする結果、エネルギー不足が日本にも波及している。

エネルギー系物資不足による日用品の高騰が、インフレと不況(スタグフレーション)をもたらそうとしているのだ。昭和時代の不況の再来となる可能性が高まっている。ウクライナ情勢から目が離せない。


◎[参考動画]小泉悠=東京大学先端科学技術研究センター特任助教2021年7月16日講演「プーチン・ロシアの『2024年問題』独裁色強まる内政と板挟みの外交」(公益財団法人 日本証券経済研究所「資本市場を考える会」 2021年9月22日配信)

▼横山茂彦(よこやま・しげひこ)
編集者・著述業・歴史研究家。歴史関連の著書・共著に『合戦場の女たち』(情況新書)『軍師・官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)『闇の後醍醐銭』(叢文社)『真田丸のナゾ』(サイゾー)『日本史の新常識』(文春新書)『天皇125代全史』(スタンダーズ)『世にも奇妙な日本史』(宙出版)など。

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核兵器使用を明言した妄執の独裁者、ウラジーミル・プーチンとは何者なのか? ── 個人が世界史を変える可能性 横山茂彦

◆どういう人物なのか?

ウクライナのNATO加盟阻止。および東ウクライナの独立承認をもって、東西の緩衝地帯獲得をねらった侵略戦争の動機は、プーチンの個人的な体験にあるという。

ウラジーミル・プーチンはレニングラード国立大学を卒業後、KGBに就職して情報将校として16年間勤務している。そのかん対外情報アカデミー(赤旗大学)で諜報活動をまなび、東ドイツのドレスデンに派遣されている。

東ドイツでの勤務中は、情報機関・秘密警察である国家保安省(シュタージ)の身分証を持っていたことが、2018年になって明らかになっている。

ソ連邦共産党員でありKBG情報将校、同時に東ドイツの秘密警察だったのだ。この筋金入りの諜報員あがりの政治家は、ソ連邦時代を理想にしているという。

自身のトラウマになっているのは東ドイツの崩壊のとき、民衆が政権を崩壊させるために立ち上がった「壁の崩壊」だったというのだ。秘密警察の事務所で、勤務後にドイツビールを飲むのが楽しみだった男は、民衆の行動に驚愕し、恐怖したという。これがプーチンのトラウマとなった。

1991年8月の共産党解体までは共産党を離党せず、本人曰く党員証は今も持っているという(ロシアビヨンド)。


◎[参考動画]プーチン氏、ウクライナ2地域の独立を承認 軍派遣を命令(BBC News Japan 2022年2月22日)

共産党崩壊後はロシア大統領府総務局次長として、旧共産党資産の市場移行の管理を行ない、エリツイン政権の中枢に地位を築いてきた。そこから先は、チェチェン紛争(爆弾テロ)の鎮圧に辣腕をふるい、記者会見では「テロリストはどこまでも追跡する。便所にいてもぶち殺す」と発言して物議をかもした。いや、つよいロシアを待望する国民の拍手喝さいを浴びたのだった。エリツインによる禅譲後は、中央政権の権限の強化をはかりつつ大統領職を独占してきた。メドヴェージェフと大統領を交代しながらの、すでに20年にわたる長期専権となっている。

大統領権力の基盤が確立されたのは、エリツイン時代のオリガルヒ(新興財閥)との対決を通じてであった。

生産性の低下を小手先の国債乱発で乗り切ろうとしたエリツイン政権は、ハイパーインフレと軍の崩壊を招いていたが、プーチンはオリガルヒの脱税を取り締まることで、財閥の一部を取り込むことに成功したのである。もともとロシア経済の基幹産業は、豊富な天然資源と軍事産業である。警察と軍を再建することで、国家資本主義モデルともいうべき新体制を回復したのである。

◆民族主義と愛国主義

警察と軍、軍需産業を基軸にした国家である以上、民主主義は形がい化している。今回、ロシア国内ではウクライナ侵攻に反対する行動をした1700人が、治安当局によって拘束されたという。まさにKGB・シュタージの手法で民主主義を弾圧しているのだ。

プーチンが理想とするソ連邦の再来はしかし、共産主義ではなくロシアショービニズムともいうべき、民族主義的・愛国主義的な貌をしている。

20世紀がイデオロギーの時代だったと総括するならば、21世紀は宗教と民族主義・愛国主義(一国主義)の時代なのであろうか。民族主義と愛国主義には、じつはイデオロギーがない。誰もが民族の繁栄と国益を大義名分に、あるいは愛国者であることを誇る。プーチンにとってそれは、壁の崩壊というトラウマを払しょくし、共産主義に代わる大義名分となった。

ウクライナ侵攻を皮切りに東欧圏のロシア化を段階的にすすめ、西側ヨーロッパとアメリカ中心の世界を変える。その野望のためには、核兵器の使用すらいとわない。いやすでに、チェルノブイリ原発を制圧下におくことで、核を人質にしているのだ(実際に職員が拘留されているという)。

われわれは80年数年前を思い起こす。ヒトラーとその政権が、誰も思わなかった世界大戦を引き起こしたことを。そのとば口はオーストリア併合であり、ズデーデン地方の割譲によるチェコスロバキアの解体だった。アドルフ・ヒトラーもトラウマは、ウイーン時代の貧困とユダヤ人たちの裕福さへの羨望だった。個人のトラウマが歴史を動かす。われわれは、いまそれを現認しようとしているのかもしれない。
NATO諸国と交戦した場合は、ただちに第三次世界大戦に突入する危険があることだけは、今の段階で指摘しておかなければならないであろう。

▼横山茂彦(よこやま・しげひこ)
編集者・著述業・歴史研究家。歴史関連の著書・共著に『合戦場の女たち』(情況新書)『軍師・官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)『闇の後醍醐銭』(叢文社)『真田丸のナゾ』(サイゾー)『日本史の新常識』(文春新書)『天皇125代全史』(スタンダーズ)『世にも奇妙な日本史』(宙出版)など。

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