新宿フェイスでのキックボクシング最終興行はKICK Insist.28

堀田春樹

メインイベンター勇成は激しく鬩ぎ合う展開はやや優勢もドロー!
政斗がカッコよく引退テンカウントゴングを聴く!
政斗が返上した王座は細見直生がKOで戴冠!
新宿フェイス支配人、小川愉可さん、リングに御登壇で御挨拶!

◎KICK Insist.28 / 9月20日(日)新宿フェイス17:30~20:13
主催:(株)VICTORY SPIRITS、ビクトリージム / 認定:ジャパンキックボクシング協会

◆第8試合 59.0kg契約3回戦

ジャパン・フェザー級チャンピオン.勇成(=冨岡勇成/Formed/福岡県出身21歳/ 59.0kg)
13戦10勝(7KO)2敗1分
        VS
ペレー・サンライズジム(タイ出身33歳/ 58.9kg)104戦72勝30敗2分
引分け 1-0
主審:椎名利一
副審:勝本29-29. 宮沢29-29. 竜矢29-28

初回、ローキック中心に上下の蹴りと時折のパンチの交錯する様子見は、勇成が圧力掛けて出る展開。第2ラウンドも同じ展開もペレーがヒジ打ち狙って来る。更に首相撲に移るとペレーのヒザ蹴りとムエタイリズムが活きだす。

積極果敢に攻めたのは勇成も結果に繋がらず
積極果敢に攻めたのは勇成も結果に繋がらず

ラストラウンドもより激しい攻防も勇成は前進。ペレーはしっかり蹴り返す。ヒジ打ちの交錯もあり、休まない攻防は勇成のローキックやボディーブローが優ったに見えたが、採点もジャッジ三者が揃うラウンドは無く、いずれも29-29でドローとなった。勇成の右ローキックと左ボディブローは、これで倒せるかという勢いもペレーは全く崩れなかった。

ペレーは要所要所で鋭い蹴りを返した
ペレーは要所要所で鋭い蹴りを返した

試合後の控室でペレー・サンライズジムは仲間内と記念撮影中、「タイ語解る人居ますか?」と尋ねても居なかったので、私の拙いタイ語でペレーに話しかけたところが、日本語で応えるペレー。拙い質問にはしっかり応えてくれました。

「勇成は気持ちが強くて前へ前へ出て攻めて来るので、上手かったし強かったです。でも僕の方が勝ってると思ったけど、勇成も勝っていると思っているだろうから、もう一回やりたいです。」と笑顔で語った。

◆第7試合 ジャパン・ウェルター級王座決定戦 5回戦

1位.細見直生(KICK BOX/1996.11.28京都府出身/ 65.8kg)6戦5勝(2KO)1敗
        VS
3位.正哉(誠真/神奈川県出身23歳/ 66.4kg)14戦7勝(3KO)7敗
勝者:細見直生 / KO 1ラウンド 1分41秒
主審:勝本剛司

両者は2024年3月24日に対戦し、細見直生が初回TKO勝利しているが、今回も初回で更に短い時間で正哉を仕留めた。

蹴りで牽制し合う両者はまず正哉の左フックが軽くヒットも、怯まない細見直生は蹴りで牽制し、右ストレート強烈ヒットでノックダウンを奪った。すでに効いた感はあるが、立ち上がった正哉を更に追い詰めて右ストレートヒットでノックダウンを奪うと正哉は何とか立ち上がるも意識朦朧としており、カウント中にレフェリーがストップした。

細見直生の右ストレートで意識が飛んだ正哉はゆっくりと倒れ込んだ
細見直生の右ストレートで意識が飛んだ正哉はゆっくりと倒れ込んだ

細見直生のチャンピオンとしてのマイクアピールは
「去年敗北して一年間練習して……」に続く“頑張って来ました”が涙で声にならないような語りの後、正哉選手と周囲への感謝を何度も述べて、「チャンピオンとして会場を沸かせて、皆の人生の希望の力になるような試合を見せたいと思います。」と語った。

認定証を笑顔で受取る細見直生。人生最高の瞬間もまだ上がある
認定証を笑顔で受取る細見直生。人生最高の瞬間もまだ上がある
昨年9月の新宿フェイスで政斗に敗れてから1年の努力が実った細見直生の感涙
昨年9月の新宿フェイスで政斗に敗れてから1年の努力が実った細見直生の感涙

リングを下りた細見直生は興行終了後まで応援者に挨拶回りしていた中、「メチャメチャ楽しかったです。」とロビーで喜びを分かち合う中での回答。狙ったパンチで倒し切った充実感が溢れていた。

細見陣営、鴇稔之会長は「細見は打ち合える度胸があるので、上手いというより強いタイプです。試合で“行け”と言ってもすぐ行ける選手は少ない中、細見は攻めて出る良いもの持ってますね。」と語る。

正哉の先輩、大地フォージャーは「作戦通りにやっていたところは凄く良かったです。ただ、パンチで打ち合う時間がほんのちょっと長くて、そこに合わせられましたね。正哉はダウン2回とも覚えていないようですね。」と語った。

◆第6試合 58.0kg契約3回戦

ジャパン・フェザー級1位.皆川裕哉(KICK BOX/1997.4.11東京都出身/ 57.8kg)
34戦17勝(4KO)15敗2分
        VS
同級3位.海士(ビクトリー/1988.10.14山形県出身/ 57.9kg)11戦6勝5敗
勝者:皆川裕哉 / 判定3-0
主審:竜矢
副審:椎名29-28. 勝本29-28. 宮沢29-28

皆川裕哉の前進するヒザ蹴りも加えた蹴りのタイミングが良い。第2ラウンドには海士もパンチと蹴りの勢いでジワジワ巻き返す。ラストラウンドも蹴りとパンチの攻防の中、パンチで出る皆川に海士とのヒジが掠めた相打ちは皆川が一瞬のスリップダウンするが、激しい攻防の中、今度は皆川の右ハイキックで海士がノックダウン。激しい攻防は僅差ながら皆川の勝利となった。

皆川裕哉がハイキックで海士からノックダウン奪って判定勝利
皆川裕哉がハイキックで海士からノックダウン奪って判定勝利

鴇稔之会長は技術を分析する語りが上手く、「皆川は攻撃はいいが、立ち位置の問題で攻められ易い点があったので、今回は修復されていて以前より良かったです。」と、細かい部分は省くが、何が出来るか、何がダメでそこをどう直していくかで出来ることが多くなるので、その修正が良かったという。

◆第5試合 ライト級3回戦

ジャパン・ライト級2位.菊地拓人(市原/千葉県市原市出身26歳/ 61.0kg)
12戦8勝(5KO)3敗1分
VS
同級4位.林瑞紀(治政館/1993.4.16鹿児島県出身/ 61.05kg)20戦11勝(4KO)8敗1分
勝者:菊地拓人 / TKO 3ラウンド 1分31秒
主審:宮沢誠

初回は林瑞紀のパンチと蹴りの勢いが優った。菊地拓人は鼻血を流す苦しい展開。第2ラウンドも林瑞紀のペースだったが、菊池が蹴りからパンチ連打で林瑞紀をコーナーに追い込むと流れが逆転。更にパンチで追い込んだ菊池がスタンディングノックダウンを奪った。ラストラウンドも菊地のパンチの勢いで林瑞紀を苦しめ、右ストレートでノックダウンを奪う。立ち上がった林を更にパンチで追い込みローキックから右ストレートフォローで倒し、カウント中のレフェリーストップとなった。

菊地拓人は劣勢を巻き返して林瑞紀を倒した
菊地拓人は劣勢を巻き返して林瑞紀を倒した

◆第4試合 ミドル級3回戦

白井大也(市原/千葉県市原市出身24歳/ 73.4→73.25kg/+680g計量失格)減点1
8戦3勝(1KO)3敗2分
        VS
バス・レンジャージム(タイ・ローイエット県出身36歳/ 72.3kg)100戦越
勝者:バス・レンジャージム / TKO 2ラウンド 2分51秒
主審:竜矢

計量失格した白井大也は減点が科せられる。初回、パワーあるバスの蹴りと追い込むパンチ。白井大也も返すパワーはあったが、バスの勢いに敵わない。

第2ラウンドにバスの首相撲で押さえられた白井がマットに膝を着くとバスのヒザ蹴りを顔面に受け、反則打として白井に回復のインターバルが与えられた。再開後もバスの猛攻で劣勢の白井。更にヒザ蹴りに掴まえると顔面にヒザ蹴り受けた白井はノックダウンし、カウント中のレフェリーストップが掛かった。

バス・レンジャージムは終始圧倒。白井大也を倒す
バス・レンジャージムは終始圧倒。白井大也を倒す

◆第3試合 ウェルター級3回戦

深谷恭介(ラジャサクレックムエタイ/東京都出身31歳/ 67.1→66.3kg)2戦2勝(1KO)
VS
LEO SHOBUKAI (尚武会久喜支部/東京都出身18歳/ 65.0kg)2戦1勝1敗
勝者:深谷恭介 / 判定3-0 (30-27. 29-27. 30-28)

深谷恭介のパワーある蹴りで圧倒し大差判定勝利。

◆第2試合 フェザー級3回戦

優太JSK(治政館/埼玉県出身20歳/ 56.8kg) 2戦1勝1敗
        VS
鹿志村巧(BURNING/千葉県出身19歳/ 57.6→57.15kg)2戦2勝
勝者:鹿志村巧 / 判定0-3 (27-30. 27-29. 27-30)

計量時はリミットまで減量に苦しんだ鹿志村巧だったが、その影響は無く蹴りと組み合ってのヒザ蹴りで終始圧倒し大差判定勝利。優太はコーナーに帰る際もフラフラでセコンド陣営に支えられてリングを下りた。

◆第1試合 ライト級3回戦

木村大夢(KIX/千葉県出身28歳/ 61.2kg)2戦1勝1敗
        VS
光流(Team S.R.K/栃木県出身24歳/ 61.0kg)4戦1勝3敗
勝者:木村大夢 / 判定3-0 (30-28. 29-28. 30-27)

パンチと蹴りの攻防は互角に進んだが、ラストラウンド残り僅かで木村大夢が右ストレートヒットさせ光流がノックダウン。立ち上がるも残り時間は無く終了。木村が判定勝利。

《取材戦記》

第6試合後のセレモニーでは小泉猛代表御挨拶の後、新宿フェイス支配人の小川愉可氏がリングに御登壇。21年間の想いを語られました。

「21年2箇月、キックボクシングの試合も何千試合とここで開催して頂いて来たかと思います。選手に関しては、本当に悔しさと喜びを経験して成長されて来たんじゃないかと思います。試合で興奮したり感動したりというところを見ていると、この会場では格闘技界においても、大変必要な場所だったんじゃないかなと思います。ここは9月30日で終るんですけど、またリングのある会場で皆さんにお会い出来ればと思います。私も選手の試合をまた改めて観させて頂ければと思います。21年間本当に有難うございました。」と御挨拶されました。

新宿フェイス支配人の小川愉可氏より御挨拶
新宿フェイス支配人の小川愉可氏より御挨拶

続いて政斗(=黒澤政斗/治政館/1992.7.17東京都出身)の引退セレモニーに移り、政斗は御挨拶で周囲への感謝の他、
「リングを下りる時って不思議な感覚ですね。自分のリングの人生というのは。」「大学在学中にプロデビューして36戦もやって来ました。3回タイトルマッチやって3回ともダメでした。その度に何回も諦めそうになりました。だけどやっぱり、絶対にチャンピオンベルトを巻いてキックボクシング生活を終わりにしたいと思っていたので、ベルトを巻けて、その時は人生最高の瞬間でした。最後にちょっと、これからリングに上がる選手の方々にメッセージを残して終わりにしたいと思います。歌手の方々は歌を歌って人にインパクトを与えられると思います。画家の人は絵を描いてそれを人になにかを感じて貰いパワーを与えるとか出来ると思います。自分自身も勿論、勝ち負けを拘っていたのですが、やっぱり観ている人の心をどれだけ動かせるかということを拘って自分は試合を続けて来ました。勿論自分の試合の中でも情けない試合もあれば、凄い良い試合もあるし、だけどやっぱり人の心を動かすというところが僕のキックボクシングの中での目標でした。なのでこれからリングに上がる選手の方々、自分自身の生き様をこのリングで魅せて、人の心を動かせるような存在になって欲しいです。この後、このベルトを懸けて二人の選手がタイトルマッチを行ないます。その二人を皆さんの応援で一歩でも背中を押してあげて一歩でも足を前に進ませる応援をして頂ければと思います。本日は本当に有難うございました。今迄応援して頂いた皆様、そして一緒に汗を流して頂いた選手の皆様、応援、スポンサードして頂いた皆様、それを何よりも支えてくれた家族、自分を信じて支えてくれて有難う。今日でリングを下ります。素晴らしい格闘技人生でした。キックボクシング最高!」
と、4分20秒に渡るメッセージをメモ無しでカッコよく語り終えました。

前チャンピオンの政斗は完全燃焼して引退テンカウントを聴く
前チャンピオンの政斗は完全燃焼して引退テンカウントを聴く

政斗は2014年5月デビューし、2016年4月17日、日本ウェルター級タイトルマッチに於いて、チャンピオン渡辺健司(伊原稲城)に挑戦も判定負け。

2018年5月13日、リカルド・ブラボと王座決定戦にヒジで斬られて4ラウンドTKO負け。

ジャパンキックボクシング協会に移って2020年1月5日、モトヤスックと同門対決でジャパン王座を争い、ヒジで斬られて5ラウンドTKO負け。

2024年3月24日、チャンピオン大地フォージャーに2ラウンドで倒して王座初奪取。

2025年9月15日、細見直生の挑戦を判定勝利で初防衛も引退表明。

※  ※  ※  ※

新宿フェイスにおいてのキックボクシング最終興行での小川愉可さんの御挨拶と政斗の引退セレモニーは二つの引退式があったような感覚。どちらも熱い語り掛けがありました。

後楽園ホールも来年修復工事の為、春に2箇月程休館の予定があります。5月より再開されますが、老朽化の会場も多いようです。一方で新しい多目的ホール、格闘技向きの会場なども増えているので、キックボクシングの試合も少しずつ新しい会場が増えていくのでしょう。

次回のジャパンキックボクシング協会KICK Insist.29は11月22日(日)に後楽園ホールに於いて開催されます。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
昭和のキックボクシングから業界に潜入。フリーランス・カメラマンとして『スポーツライフ』、『ナイタイ』、『実話ナックルズ』などにキックレポートを寄稿展開。タイではムエタイジム生活も経験し、その縁からタイ仏門にも一時出家。最近のモットーは「悔いの無い完全燃焼の終活」