ゲームというと、深夜、薄暗い部屋でパソコンやテレビ画面に向かってコントローラーを操作する印象がある。引きこもり、ニートなどと言う言葉を思い浮かべる方もいるだろう。

だが、そんな常識をくつがえすゲームが登場し、若者から中年にかけて、幅広く人気を獲得している。2013年にGoogle社が発表したスマートホン用ゲームIngress(イングレス)だ。

◆リアルな世界をスマホで遊ぶ

イングレスは基本的にはリアル陣取りゲームである。プレイヤーはゲーム内でエージェントと呼ばれ青(レジスタンス)と、緑(エンライテンド)のどちらかのグループに分かれて(登録時に選択できる)陣地を取りあうのである。

陣地はゲーム機上に設定されているわけではない。実在のリアルな世界だ。

ポータルそのものは駅前にあるモニュメントであるとか、神社仏閣であったりする。陣地を取るための基本動作はランドマーク(ポータル)まで出かけていって、そこを確保(ハック)する。三つのポータルを確保してリンクを張るとその内側が青なり緑のフィールドになる。ポータルの場所はプレイヤーのもつスマホ上に表示されている。ユーザーはその場所に行って具体的には画面をタップするだけだ。たとえば、ハチ公とモヤイと109をリンクすれば渋谷駅前はあなたのフィールドになる。

我々が街を歩く時、風景は道や、樹木、建物の並ぶリアルな世界である。しかし、イングレスプレイヤーにとっては、建物にはリンクすべきポータルがそびえ、道は青と緑が交錯する支配すべきダンジョンになる。

プレイヤーが個人で新しくポータルを作って欲しいと申請もできる。スマホで写真を撮って運営に送るだけだ。当初、設置されたポータルは全世界で5000しかなかったが、現在では数十万の数に昇り、まだ増え続けている。また、プレイヤー数の増大にともない、グーグル社の負担も増え現在ではポータル申請に三ヶ月かかる情況だという。

ポータル側の事情もある。つまり、自分の店舗や、観光名所がポータルになれば人が呼べるのだ。グーグル社が日本で目を付けたのがコンビニエンスストアのローソンで、ローソンの店舗はすべてポータルである。ポータルを求めて街を歩くプレイヤーは自然、ローソンに立ち寄る。

◆ゲームで遊びながら健康になれる

観光誘致に利用したのが岩手県だ。昨年、岩手県がイングレスのイベントを開催した。参加者は50名ほどだったが、プレイヤーが岩手県内で多数のポータルを申請し、グーグル社側でも岩手県の申請を優先し、300のポータルが新設された。岩手にダンジョンが新設されたのだ。次は別のプレイヤーがポータルを求めて岩手にやってくる。岩手県庁では海岸部のポータルにやってくると、震災前の写真を受け取るようなサービスを開始して復興にも役立てようとしている。

岩手に限らない。画面上に名所が浮かび上がる。グーグルが提供しているから、当然地図つきだ。観光名所を探してガイドブック見る必要もない。スマホからポータルの情報、由来来歴を読み取ることもできる。しかも、この情況は海外に行っても同じだ。海外旅行に行って労せずして名所を見いだせる。プレイヤーにとっても、ポータル側にしても便利なゲームとなっている。

全世界対応であるため、国を超えてリンクが張られる。日本全土を押さえようと、八丈島、根室、長崎でリンクを結ぼうとしたが、グアムから攻撃があったという壮大な話もきく。海外旅行の楽しみも増える。

しかし、イングレスの基本的な動作はポータル巡りであり、プレイヤーはまずは自宅近くから初めて、次第に遠くまでポータルを求めて歩き回る。自動車でポータルを訪れることもできるが、一旦駐車してスマホを操作する必要があるので、歩いた方が有利だ。また、電車の中からハックもできない。スマホの操作が間に合わないからだ。ポータルが公園内や、建物の敷地にあることもある。

やはり、歩く必要がある。イングレスを始めた結果、それまでのバス通勤を徒歩に変え、通勤途上でハックする。いつもと違う道を歩いてみる、休日には遠方のポータルまで出かけてみる、など非常に活発に出歩くようになる。一日に五キロ十キロ歩くようになり、メダボが解消したとか、ダイエットに効果があったという話しすらある。ゲームで遊びながら健康になれるのなら、言うことはない。

しかも、完全無料である。グーグル社側では営利企業が申請する際に料金を徴収しているようだが、ユーザーには無関係だ。

イングレスのダウンロード数は全世界で1000万。しかもまだまだ増え続けている。

▼青山智樹(作家、軍事評論家)
1960年生まれ。作家、軍事評論家。著書「原潜伊六〇二浮上せり」「ストライクファイター」等多数。航空機自家用単発免許、銃砲刀剣類所持許可、保有。
HP=小説家:青山智樹の仕事部屋 http://www.din.or.jp/~aoyama/

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機動戦士ガンダム THE ORIGIN Ⅰ 青い瞳のキャスバル」を映画館で見た。ガンダムシリーズを語るのに欠かせない重要なキャラクターである「シャア・アズナブル」(本名はキャスバル・レム・ダイクン)の生い立ちを描いた同作品について、語り部が少ない。とりわけ、ふだんはしたり顔でいわゆる「ガンダム」について語る芸人、つまり「ガンダム芸人たち」もしくは「にわかガンダム文化人」も圧倒的に少ない。

それもそのはずで、シャアを語るには、シャアについて描かれた小説、アニメ、そして「ガンダム」の生みの親である富野由悠季 (原案は矢立肇)の世界観を深いところまで掘り下げて理解しなくてはいけない。くわえて、シャアが背負っている、あるいは主張している「人類の革新について、人類の価値について、あるいは未来図について」深く考察しなくては、やけどをするようなキャラクターなのだ。かろうじて語っている芸人たちも、誰とは言わないがシャアの世界観についてわかっていない。シャアを論じるということは、しつこいようだが、己の哲学が問われるのだ。

人は、「ガンダム」について語りたがる。戦争について、人類の未来について、あるいは愛について、平和について語る。これは、「宇宙戦艦ヤマト」や「ドラえもん」にもなかったアニメの現象だ。したがって、この映画にも見た人は100通り解釈があると思う。

◆人間は人間を粛正できるか? ──シャア VS アムロの命題

「機動戦士ガンダム」の骨格をなしている世界観はこうだ。

地球の人口が増えすぎて、なおかつ汚染された。だから一部の人たちは、宇宙へと移民せざると得なくなった。スペースコロニーで暮らすこの移民を「スペースノイド」と呼ぶ。この、地球から追い出されたはずの「スペースノイド」たちは、しだいに地球圏からの支配を嫌い、自治区になる道を選択し、地球圏と戦争に突入する。

「腐った地球圏の人類を根絶やしにする」との目的に立つシャアは、人類の革新ともいうべき「ニュータイプ」(認識力と知覚力に優れたもの)であると自身を自覚した。同じく「ニュータイプ」である地球連邦軍のアムロ・レイは、「人間が人間を粛正できない」として、ことごとくシャアに敵対する。これが「機動戦士ガンダム」ファーストの物語の骨格だ。

「スペースノイド」の独立を訴える為政者、シャアの父が、ザビ家の陰謀によって暗殺されて、ジオン公国ができあがる。父の復讐に燃えるシャアは仮面をかぶり、本名を隠してザビ家に復讐していくのだ。「機動戦士ガンダム」を見た者は、なぜシャアがあれほどまでに、ストイックに自分しか信じぬ乾いた男になっていったのかわからなかっただろう。だが、ようやくこの映画を観て、シャアが幼少期に陰謀により翻弄されて、人のやさしさに対して懐疑的になっていったのかが納得できるだろう。

シャアを理解するのには、膨大な資料の読み込みが必要だが、やはり漫画を読むのが早い。ビギナーには『ガンダムエース』に連載された北爪宏幸の漫画『機動戦士ガンダム C.D.A. 若き彗星の肖像』をオススメする。だがアニメ作品ではないためサンライズにおける公式設定ではない。

さて、この映画は1時間を少しオーバーするほどの短い尺だが、冒頭の戦闘シーンは迫力満点だ。監督が、人物を描いた安彦良和(漫画も描いている)なので、当然、人物描写は細かい。幼いシャアが気高い復讐心を保つことができのはなぜかファンならずとも興味があるだろう。若いドズル・ザビやランバ・ラルなどもファンを喜ばせるだろう。

◆「ガンダム」を見た時からアニメを卒業できなくなった

この映画はガンダムの35周年企画だそうだが、僕自身は、この作品(機動戦士ガンダムのファースト)を見たときからアニメを卒業できなくなった。

なにしろ、美しいメカニックデザイン(デザイナーは大河原邦男)だけでなく、そこかしこに哲学や人類の欲求が業深く描かれているのだから。

僕自身は、シャアの声を演じている池田秀一にインタビューしたことがある。
「シャアのように男らしく生きてみたい」という点で僕と池田さんの意見は一致した。そして、シャアには独特の言い回しがあり、有名な台詞として「若さゆえの過ちか。認めたくないものだな」というのがあるが、「認めなくないもんだな」ではなくやはりかたくなに「認めたくないものだな」と語尾で言い切る気高さがあるという。

もともと、手塚治虫の弟子であった富野監督は、その世界観はものすごく奥深い。細かい台詞も後々、伏線となってくるから見逃せない。ガンダムの新シリーズとして、今は『ガンダム Gのレコンギスタ』を手がけている。これは、富野由悠季監督が手掛ける、『ガンダム』シリーズの最新作で人気を集めている。本作では、『機動戦士ガンダム』で描かれた宇宙世紀(U.C.)のつぎの世紀にあたる“リギルド・センチュリー”が舞台となる。宇宙エレベーターを守る組織“キャピタルガード”のパイロット候補生、ベルリ・ゼナムの冒険が描かれていくものだ。

これこそ「新世紀の哲学」が問われる作品だが、この作品について語れる「自称ガンダム芸人」「自称ガンダム好き文化人」を見ないのは、ついに馬脚を現したと見ていいのだろうか。それともガンダムを「卒業」したのだろうか。

(ハイセーヤスダ)

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◎《格闘技“裏”通信01》意外にもギャル層が激増、キックボクシング大会

やっぱりカギは「原発」だった──安倍首相中東訪問の真相

 

2013年はボーカロイドが発表されてから10周年を迎えた年だった。ボーカロイドと言えば初音ミク、というのは今やバーチャルアイドルと知られ、知名度は一般にも浸透するほどになった。

元々ボーカロイドは単なる「音源」であり、人声を合成して歌っているかのように作成するデータでしかない。電車内で「次は~駅です。お出口は右側です」と機械的にアナウンスする声と原理的には同じものだ。シンセサイザーで疑似的に楽器の音を作り出すのと一緒で、ボーカロイドという技術にキャラクターもなければアイドル性もない。

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映画館にて「ベイビ~大丈夫かっ Beat Child」を観てきた。映画というよりはドキュメンタリーだ。1987年8月22日夜からの、オールナイトのロックフェスティバルの模様が収められている。観客は3万人の予定が7万人まで観客が膨れ上がり、当時の国内ロックフェスとしては最大級のものとなった。それもそのはず、出演メンバーはThe Blue Hearts、岡村靖幸、白井貴子、ハウンド・ドッグ、BOOWY、尾崎豊、渡辺美里、佐野元春等々80’sを代表する豪華極まる布陣だ。

熊本は阿蘇の麓にある野外特設ステージは、突然の豪雨が一晩中降り続き、イベント続行も厳しい状態にあった。そんな中、ミュージシャンも観客もズブ濡れになりながら一夜を明かす。客席には濁流が押し寄せ、急激な気温の低下から倒れる人が続出。ステージは水浸しになり漏電の恐れもある状態だ。

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ヒット作「静かなるドン」などを連載した老舗の漫画誌「漫画サンデー」(実業之日本社)が、2月19日発売の3月5日号で休刊するニュースが、業界者ならずとも関心を呼んでいる。
「昨年末に24年も続いた『静かなるドン』の連載が終わり、ほかに目玉となる物語がなかっただけにつらかったのだろう。今、漫画雑誌の読者は40、50代が中心で、青年層を取り込むのは難しいことも拍車をかけていた」(編集者)

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8月にフィンランドに行ったのは、エアギター世界選手権のファイナルステージを見るためだった。
計画を立て始めたのは、今年の春頃。なにしろ、世界選手権のファイナルステージなのであるから、まずはチケットを手に入れないことには話にならない、と思った。
日本でも手に入る、と最初聞いたので、チケットぴあを始め各種チケットセンターで検索したが、見つからない。
フィンランド大使館の観光局に電話するが、いつも留守電だ。
フィンランドのエアギター世界選手権事務局にメールするが、返事は来ない。
これが、フィンランド流なのだな、と思った。すでに旅は始まっていた。

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週末までだったので、奈良美智展を見に、横浜美術館に行った。
今後は、青森県立美術館、熊本市現代美術館を巡回する予定のようだ。

かわいらいしいけど芯があって、迷いながらもしっかり自分を持っている、ちょっと反抗心も見えるような女の子の絵が、奈良さんの絵の特徴だ。普段はなかなか見ることができない、大きなオブジェもあって楽しめる。

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8月7~9日にかけて大麻草検証委員会主催の『まつりの祭り』という大麻の産業利用普及を促すイベントが、山梨県の西湖で開催された。

大麻、ということで、不健康なジャンキー集団による怪しい集会をイメージしていたが、すぐに誤解は払拭された。参加者の多くはオーガニック(有機農法)やロハス(健康と持続性を意識した生活)を実践する20~40歳代で、食事や環境問題について真剣に考えて生きる人が大半だった。また子供連れも多く和やかな雰囲気でイベントは進行する。

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ダッチワイフと言えば、業田良家のマンガを映画化した、是枝裕和監督『空気人形』が心に残っている。ダッチワイフが心を持ってしまうという、切ない物語だった。
今、ダッチワイフは空気で膨らます廉価なものよりも、シリコン製の精巧なラブドールを思い浮かべる男性が多いだろう。
最近では、一貫して人形をテーマにしてきた、ニューヨークの写真家、ローリー・シモンズがラブドールをモデルにして、『The Love Doll』というタイトルで一連の写真を発表した。パリでの最初の展示会では、写真の中のラブドールが本物の人間だと、訪れた人々は思ったという。

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ちょっといなせなバーを発見した。JR西川口の西口から徒歩4分ほどの場所にたたずむのは「たまりばぁ~スペクター」だ。
自分は、めったに行きつけの店を作らないが、このところ居心地がよくなってしまった。
どうやら仕事が明けたら、ここに何度も寄りそうだ。

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