「原発いらない福島の女たち」黒田節子さんが綴る『ふくしまカレンダー』6年6作の軌跡〈2〉

 
2019年版『原発いらない ふくしまカレンダー』価格1000円(税込)連絡先 090-9424-7478(黒田)

福島第一原発事故で故郷を根こそぎ奪われた女性たちの有志グループ「原発いらない福島の女たち」は、3・11以後の脱原発運動で大きなうねりをつくってきた。その一人である黒田節子さんが中心となって2013年から毎年「ふくしまカレンダー」(梨の木舎)を制作発行している。最新の2019年版カレンダーの紹介と共に、これまでの6年6作の軌跡を黒田さんに4回に分けて回思回想していただいた。今回はその第2回。

◆2017年版の思い出 ── 未来をあきらめるわけにはいきません

~以下、2017年版チラシから一部コピーを紹介。

……2011年3月11日の震災と福島原発事故は、私たちの暮らし、人生を一瞬のうちに変えてしまいました。5年半がたち、被害はさらに広がっています。溶け落ちたままの核燃料、海へ流される汚染水。高線量被ばくのリスクを抱えながら働く作業員の方々。子どもの甲状腺がんなど増える健康被害。除染、強いられる帰還、焼却炉問題、核汚染物の中間貯蔵地…。これらの問題はますます深刻になっています。清明で豊かだった風土は変容し、農林業の原発賠償や避難者への支援は打ち切られようとしています。  

さらに、熊本大地震や各地の火山・地震活動活発化など自然界の警告も無視して、昨年の鹿児島県川内原発に引き続き、2016年1月福井県高浜原発、8月愛媛県伊方原発が再稼働されてしまいました。

しかし、未来をあきらめるわけにはいきません。真実を伝え続けるために、自分たちで撮った写真で今年もまたカレンダーを作りました。収益は「女たち」のさまざまな活動、フクシマを伝えに行くための交通費や集会・学習会費用などに役立てられています。さらに広めていただければ嬉しいです。どうぞこれからも福島に心を寄せ続けてくださいますように。                     

◆脱原発への思いを込めて、元気にカレンダーを作り続けたい

 
フレコンバック(2017年版カレンダーより)

手前味噌が続いたが、どうかご容赦を。確かに年毎に写真巧くなっているね、とほめ言葉もいただく。素直にうれしく思う。しかし、私たちが最も心に響くのは、支払い用紙(郵便振替伝票)のメモ欄に書いてあるこんなひとことだ。

「他には何もできないでいるけど、せめてこの1冊を買うことで福島を支援したいと思っているのです」「福島の女たちの笑顔にかえって励まされている」etc。全国の皆さんに感謝感謝です。

そもそものカレンダー作成の目的について振り返ってみたい。イギリス映画に触発されたのは、活動資金を得るというのが動機の1つだったことはあるが、何より目標に向かって動き出す女たちの「共同戦線」がすごく楽しそうだったことが大きい。私たちは、回を重ねる毎に、写真は人々に強く訴える力があることを学んでいった。私たちはフクシマの実情を、本当のフクシマを世界に知って欲しいのだ。

「行動の記録」という2ページを設けている。これは女たちと原発に関する様々な運動と出来事の記録である。目まぐるしく日々は過ぎ去って行く。運動のポイントをたとえ1行でも、記録に残しておく必要があると感じている。フクシマは、永い闘いの、その序の口に入ったところだ。フクシマの現状(を伝える)・記録(を残す)・活動資金(を稼ぐ)、この3点セットが女たちのカレンダーの目的となったことを自覚したい。どれも健全な市民運動に不可欠なことだ。

さて、先が見えない中でも忙しい毎日が続いている。全国の地に散って行った福島の女たちよ、疲れすぎてはいないだろうか。いつかのあのときの写真のように、時には大声で笑っているだろうか。どうか……休み休み行こうゼ。フクシマのようなことが2度とあってはならない、原発のない社会を作っていくんだ、という同じ決意をそれぞれの胸に秘めながら。(つづく)

牛たちの……(2017年版カレンダーより)

黒田節子さん(原発いらない福島の女たち)
『原発いらない ふくしまカレンダー』連絡先
ふくしまカレンダー制作チーム 
090-9424-7478(黒田) 070-5559-2512(青山)
梨の木舎 メール info@nashinoki-sha.com
FAX 03-6256-9518

2019年版『原発いらない ふくしまカレンダー』
価格1000円(税込)
『NO NUKES voice』Vol.18 特集 2019年 日本〈脱原発〉の条件

無罪判決を受けた被告人が勾留される理不尽 ―― 米子ラブホテル殺害事件

当欄で冤罪事件として繰り返し取り上げてきた米子ラブホテル支配人殺害事件。一貫して無実を訴える被告人の石田美実さん(61)は、裁判員裁判だった鳥取地裁の第一審で懲役18年の有罪判決を受けながら、広島高裁松江支部の控訴審で逆転無罪判決を勝ち取った。しかしその後、最高裁で控訴審の無罪判決が破棄され、審理を広島高裁に差し戻されるという憂き目に遭った。

と、ここまでは、すでに新聞などでも大きく報道されていることだが、石田さんは現在、さらに理不尽な目に遭っている。11月27日に広島高裁(多和田隆史裁判長)で差し戻し控訴審の初公判が行われ、即日結審したのだが、その翌日から広島拘置所に勾留されてしまったのだ。

一度は無罪判決を勝ち取った冤罪被害者が、その無罪判決を破棄されたばかりか、有罪判決を受けたわけでもないのに、獄中の身になってしまう……この理不尽な仕打ちを受けた石田さんを広島拘置所に訪ね、現在の心境などを聞いた。

石田さんが勾留されている広島拘置所

◆本人は案外落ち着いた様子

筆者が広島拘置所で石田さんと面会したのは、広島地方は小雨が降っていた12月17日のこと。面会室に現れた石田さんは案外落ち着いていて、「無罪判決が破棄されたので、いつかこういうことになるかもしれないとは思っていたんです」と言った。そして、ここに連れてこられた日のことをこう振り返った。

「初公判の次の日、朝8時頃に広島高検の人たちが私の米子の自宅にやってきたんです。そして、勾引状を見せられ、車で広島高裁まで連れて行かれました。そこで、裁判官たちが協議して、勾留されることになったんです」

石田さんは2014年2月に逮捕され、2017年3月に控訴審で無罪判決を受けて釈放されるまで3年余り身柄を拘束されていた。ようやく勝ち取った自由を奪われ、再び勾留されてしまった現在は精神的にも相当きついはずだ。

しかし、石田さんは淡々とした話しぶりで、自分の置かれた状況を冷静に受け止めているように見えた。

◆現在は手記の公表を検討中

もっとも、静かな口調の中にも怒りは混じる。

「差し戻し控訴審は初公判で即日結審し、あとは判決を待つばかりなので、私が証拠隠滅する恐れはありません。それでも、(検察官や裁判官は)私が逃亡する恐れがあるから勾留するというのですが、私は控訴審で逆転無罪判決を受けて釈放されてから、鳥取県を一歩も出ていません。それに、先日あった差し戻し控訴審の初公判では、私は出廷の義務はないのに、米子から広島までやってきて、出廷したのです。そんな私が逃亡などするはずはありません」

石田さんの差し戻し控訴審が行われている広島高裁

まったくその通りだ。判決公判が来年1月24日なので、石田さんは獄中で年を越すことが確実になったが、あまりに酷い話である。

ただ、石田さん本人は前向きだ。

「これまでマスコミから取材依頼があっても、私は受けないようにしていました。裁判が続く間は、波を立てないようにしようと考えていたためです。しかし、今後は事実に基づいて、検察に言いたいことは言ってやろう、おかしいことはおかしいと言っていこうと思っています」

石田さんは現在、獄中で手記を執筆し、公表することを検討しているという。来年1月24日に無罪判決が勝ち取れたら一番いいが、石田さんの勾留を認めた広島高裁の裁判官たちの態度を見ていると、楽観はできない。この事件の動向については、今後も適時報告したい。

《お断り》
当欄で繰り返し取り上げてきた事件のため、事件の詳細については、今回は説明を省略しました。事件の詳細を新たに知りたい方は、過去の記事をご覧ください。
◎2016年の冤罪判決──再審無罪も出た一方で裁判員裁判で新たに2件の冤罪判決
◎鳥取の「知られざる冤罪」──米子ラブホテル支配人殺害事件、控訴審も結審
◎逆転無罪が相次いで出た広島と米子の冤罪事件「知られざる共通点」
◎2017年冤罪事件回顧 逆転無罪2件、再審開始1件をはじめ空前の当たり年に

▼片岡健(かたおか けん)
1971年生まれ、広島市在住。全国各地で新旧様々な事件を取材している。

月刊『紙の爆弾』2019年1月号!玉城デニー沖縄県知事訪米取材ほか
「絶望の牢獄から無実を叫ぶ ―冤罪死刑囚八人の書画集―」(片岡健編/鹿砦社)

中川五郎さんの「二倍遠く離れたら」を聴いて考えた 〈部外者の私〉は福島に対して何ができるのか?

二倍遠く離れたら 二倍強く思ってください
五倍遠く離れたら 五倍大きく動いてください
生まれ育ったこの町に とどまるしかない僕らのため
生まれ育ったこの町で 生き続けようときめた僕らのため
二倍強く思って 二倍深く考えてください
五倍大きく動いて 五倍この国を変えてください

二倍遠く離れても 離れずにすむとわかったら
五倍遠く離れても 戻ってもいいと気づいたら
故郷をまっさきに離れた 自分を恥ずかしく思ったり
騒ぎすぎてしまったのは 軽率だったと思わないで
離れたあなたの判断は正しく とどまった僕らの判断も正しい 
離れたあなたをとどまった僕らは 暖かく迎えてあげよう

どうなっているのか 真実はわからず 誰を信じればいいのかもわからない
だから離れたあなたの判断は正しく とどまった僕らの判断も正しい
「ほらみろ、やっぱりいったとおりだったじゃないか」と
どちらかが勝ち誇るのでなく
「よかったね、取り越し苦労でおわったね」と 
あとで一緒に笑いあえれば嬉しい

二倍遠く離れても 二倍強く思っています
五倍遠く離れても 五倍大きく動いています
二倍強く思って 二倍深く考えています
五倍大きく動いて 五倍この国を変えてみせます
五倍この国を 変えてみせます

中川五郎さんの「二倍遠く離れたら」という歌の歌詞だ。2017年3月20日代々木公園で開催された「さよなら原発全国集会」でこの歌を歌う前、五郎さんがなぜこの歌を作ったかを話している。


◎[参考動画]中川五郎「二倍遠く離れたら」2017.3.20 @代々木公園

「安倍首相が3・11のスピーチで『復興が確実に進んでいる』と話したが、現実はそうじゃないと思う。今まで戻るのが困難だった地域にどんどん人を返しているが、いかにも復興が進んでいるように誤魔化している気がしてしょうがない。その中で放射能が恐ろしくて故郷を離れた人たちと、政府のいうことを信じて戻る人たち、あるいは住み続ける人たちとの間でいがみあいとか批判をしあうことが起こっていて、そういうのってやっぱり一番政府の思うつぼじゃないかと思って。僕はそういう厳しい現実を前にしてこの歌を作りました」。

また、いわき市のライブでは、町にとどまろうか、避難しようかと真剣に悩んでいる「当事者」の前でこの歌を歌うことになり、「部外者」である五郎さんは「どう思われるだろうか?」と不安に感じたというエピソードもお聞きした。

私が支援する飯舘村も昨年3月末に避難指示が解除された。解除は「帰れ」との命令ではないというが、1年後月1人 10万円の精神的賠償金が打ち切られたため、経済的な理由で帰る人もいるだろう。故郷を荒廃させたくない思いで帰る人ももちろんいるだろう。

今年3月飯舘村を訪れた際、そうした様々な「当事者」の話をお聞きしたが、「部外者」の私は何も応えられずにいたことを思い出す。

一方、避難指示解除後も、移住や避難した先で生活を続け、闘う人たちもいる。

12月14日、大阪高裁で控訴審が始まった原発賠償・京都訴訟原告団の皆さんもそうだ。事故後、京都に避難した人たち57世帯、174人が提訴したこの訴訟の特徴は、原告の多くが茨城県、千葉県など国の避難指示区域外からの自主避難者であることだ。

裁判では、
〈1〉 国に法廷被ばく限度(年間1ミリシーベルト)を遵守させ、少なくともその法廷被ばく限度を超える放射能汚染地域の住民について「避難の権利」を認めさせること。
〈2〉 原発事故を引き起こした東電と国の加害責任を明らかにすること。
〈3〉 原発事故で元の生活を奪われたことに伴う損害を東電と国に賠償させること。
〈4〉 子供はもちろん、原発事故被災者全員に対する放射能検査、医療保障、住宅提供、雇用対策などの恒久的対策を国と東電に実施させることを求めてきた。

3月15日、京都地裁で下された判決は「各自がリスクを考慮して避難を決断しても社会通念上相当である場合はありうる」と判断し、また津波対策を怠った東電と規制権限を行使しなかった国の責任を認め、110人に総額1億1千万円の支払いを命じたが、その後原告側は、賠償額の低さや避難時から2年までに生じた被害のみを賠償対象としている点などを不服として控訴していた(国と東電も控訴)。

裁判には原告18名(大人17名、こども1名)のほか、多数の支援者らがかけつけたため、入りきれない支援者らは別会場での報告会に参加した。

そこに参加して改めて気づかされたのは、今現在も避難者らは損害賠償という金では解決できない様々な精神的な苦痛を抱えたままでいることだ。避難や帰還、あるいは避難継続など、一旦自身が下した決断について「それでよかったのか」、常に自問を繰り返し迫られている人もいる。

その「当事者」と「部外者」の難しい問題について五郎さんは、「ほんとうに難しくて微妙な問題ですが『当事者』と『部外者』の壁をいかにして乗り越え、突き崩せばいいか、最近よく考えています」と話していた。

そのことにも関連するが、 冒頭の「二倍遠く離れたら」の詩を途中で変えたというエピソードを、じつは最近になって知った。事故後の8月10日、東京の日比谷野外音楽堂で開かれた制服向上委員会プロデュースの集会「げんぱつじこ 夏期講習」で、飯舘村の元酪農家・長谷川健一さんにお話を聞いたのがきっかけだという。長谷川さんの当時の無念な気持ちや怒りでいっぱいになって語ってくれた話を聞き、五郎さんはその後歌う予定だった「二倍遠く離れたら」の3番の最後の部分を、直前に変えたのだという。

最初作った「二倍遠く離れたら 二倍強く思ってください/五倍遠く離れたら 五倍大きく動いてください/二倍遠く離れた 二倍深く考えてください/五倍遠く離れたら 五倍この国を変えてください」を、冒頭の詩に書き換えたのだが、それは「離れた人のポジティブな気持ちをもっとストレートに伝えるものにしようと思ったから」だという。

 
中川五郎さん(撮影=編集部)

国は今、2020東京五輪に向け、先の原発事故をなかったものにしようと必死だ。 じっしつ戻る者を優遇し、戻らない避難者を「自己責任論」で「棄民」のように切り捨て、原発事故の犠牲者などいなかったことにしようとしている。避難者と、故郷に戻る、とどまる者を様々なやり方で争わせ、分断させようとするのもそのためだ。

飯舘村には「丁寧に」「心を込めて」を意味する「までい」という方言があるが、今こそ、避難する者と、故郷に戻る者あるいは故郷にとどまる者が、までいに互いの立場を尊重し、までいに心を通わせあうことが必要なのではないか。そのすべての人たちに、国と東電に強いられる無用な被ばくを拒む権利、そして国と東電に事故の責任を追及する権利があるのだから。

3月、仙台空港から関西空港へ戻る飛行機の中で、飯舘村の人がポツリと呟いた言葉をふっと思い出したことがあった。「バタバタ死なないとわかってもらえないのだろうか…」。大阪に近づくにつれ、そのことばが重くのしかかってきた。 果たして私に何ができるのか?

そんな時、五郎さんの「二倍遠く離れたら」を聴き、「部外者」の私に何ができるか、考えるきっかけをもらった気がした。2019年は「部外者」の一人として、避難を続ける人、故郷に戻る人、故郷にとどまり続ける人、様々な立場の人たちの間をとりもつ、橋渡し的なことをしたいと考えている。

最後にもう一度、までい(「ゆっくり」「ていねいに」という福島県北部の方言)に呟いてみる。「五倍大きく動いて 五倍この国を変えてみせます」。

▼尾崎美代子(おざき・みよこ)https://twitter.com/hanamama58
「西成青い空カンパ」主宰、「集い処はな」店主。

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《お詫びと訂正》

『NO NUKES voice』18号(2018年12月11日刊)掲載の中川五郎さんインタビュー(43~52頁)に誤りのあることが判明いたしました。謹んでお詫び申し上げますとともに、下記の通り訂正させていただきます。(『NO NUKES voice』編集委員会)

◎44頁小見出し、45頁中段11行目、同20行目
[誤]「花が咲く」 [正]「花は咲く」
◎46頁中段22行目
[誤]古田豪さん [正]古川豪さん
◎49頁上段21行目
[誤]「二倍遠く離れて」 [正]「二倍遠く離れたら」
◎50頁下段2行目、同19行目
[誤]「sport for tomorrow」 [正]「sports for tomorrow」

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『NO NUKES voice』Vol.18 特集 2019年 日本〈脱原発〉の条件

ゴーン3度目の逮捕と「人質司法」 外で思うほどツライものではないが……


◎[参考動画]日産「事実関係を確認中」 ゴーン容疑者再逮捕(ANNnewsCH 2018/12/21公開)

◆やや痛快な検裁の異見分裂

 
カルロス・ゴーン『国境、組織、すべての枠を超える生き方 (私の履歴書) 』2018年日本経済新聞出版社

おおかたの予想を裏切って、ゴーンが3回目の逮捕となった。2度の逮捕の容疑(金融商品取引法違反)の態様が、ほぼ重なるので物証捜査も終わっているはずだ、という裁判所の保釈却下に異をとなえた。というのが検察の思いきった獄中逮捕劇である。

必要以上に身柄を拘束しない欧米の司法行政から考えると、日本の訴訟運用は一見して中世的な野蛮に見えるはずだ。国際的な批判はまぬがれがたいところだろう。罪状をみとめ、へへい、悪ぅございました、ありていに白状いたしやす。とでも言わなければシャバに出してもらえない、先取り刑ということになる。

わたしも三里塚闘争で一年の未決拘留を経験した。当時は200人ちかい逮捕者がいたものだから、訴訟準備に長い時間がかかったのが直接の原因だ。千葉地裁では能力を超えているということで、3分の2近くの被告が東京地裁に移送になったものだ。

それにしても、異例づくめである。裁判所が地検特捜部の案件で公判前の保釈を認めたのは、おそらく初めてのことだろう(テレビコメンテーター弁護士の証言)。ひとつにこれは、司法取り引きの実質として、もう事実関係は日産に提供してもらったから、出たければ出てもいいですよ。という新たな地平だというのだ。

それはともかく、3度や四度の逮捕は取り調べ時間の確保とともに、被告(被疑者)への精神的な圧迫としてふつうに行なわれている。鹿砦社への言論弾圧事件では、松岡社長が半年以上の拘留で事実上の禁固刑を受けている。最近では籠池夫妻への10ヶ月以上にもおよぶ拘留、周防郁雄と言論戦を展開した笠岡和雄元松浦組組長への獄死攻撃など、枚挙にいとまがない。ともあれ、取り調べ勾留時での保釈という異例の対応をした裁判所にたいして、これまで通りにやってくれという検察特捜部の反応であることは間違いない。

◆特別背任のほうが、わかりやすい

金融商品取引法違反については、日産も同罪であるところから、いわば別件逮捕の位置付けだった可能性が高い。今回の逮捕理由である自分の企業の含み損の付け替え、横領に近い出費の強要は特別背任。つまり会社を私物化することで、会社に損害を出した汚職である。泥棒じゃないかと言われても仕方がない。

今回のゴーン逮捕がルノーと日産、さらには3菱自動車の一体化を阻止し、国家の基幹産業である自動車を他国の思いどおりにはさせないという国策捜査であるならば、もはやゴーンは完全に人質司法の手の内に入ったことになる。

身から出た錆とはいえ、個人では国家には勝てないという見本である。フランス当局もまた、エリート主義という批判をかわすために静観のかまえだ。あちらはあちらで、燃料税から内乱状態が起きているのだから、フランス民衆の行動力によるものといえよう。

◆人質司法はそれほど怖いものではない

このかん、政治政策の第一人者といわれる犯罪学者と話す機会があった。いわゆる代用監獄の人質司法について、留置場(警察署)が代用監獄となることで、自白しないと出さない取り調べは実際に行なわれているが、それは拘置所(その多くが刑務所の付属)でも同じだとわたしは思う。

むしろ留置場はヤクザや不良少年、こんな人が罪を犯すのかと思うほど普通の人も散見され、気がまぎれて愉しいところでもあるのだ。これは入ってみなければわからないことで、いきなり拘置所で警察官よりも厳しい刑務官に規則づくめの生活を強要されるほうが、ふつうの人間にはよほどショックがあるのではないか。

そして懲役生活ならばともかく、未決拘留は時間があるという意味では「すばらしい」生活でもある。源氏物語を原典で読んでみたいとか、レーニン全集を読み返してみるとかの思いつきは、ふつうの生活をしているかぎり絶対にかなわないと、わたしは思うのだ。ここはもう、ゴーンさんも前時代的な日本の司法と闘うことはあきらめて、万巻の仏典など読まれてはどうか。


◎[参考動画]保釈の可能性も… 急転!? ゴーン容疑者を再逮捕(ANNnewsCH 2018/12/21公開)

▼横山茂彦(よこやま しげひこ)

著述業・雑誌編集者。主な著書に『軍師・黒田官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)、『真田一族のナゾ!』『山口組と戦国大名』(サイゾー)など。医療分野の著作も多く、近著は『ガンになりにくい食生活――食品とガンの相関係数プロファイル』(鹿砦社LIBRARY)

横山茂彦『ガンになりにくい食生活――食品とガンの相関係数プロファイル』(鹿砦社LIBRARY)
月刊『紙の爆弾』12月号 来夏参院選敗北で政権崩壊 安倍「全員地雷内閣」

滋賀医科大学 小線源治療患者会、集中行動を敢行!

治療継続を訴えるメッセージ

もし、あなたが、いずれかのがんと診断されていて、その部位の「がん治療に抜群の実績を上げている先生がいる」と聞いたら、どうなさるであろうか。「一度診てもらおう」と考えるのは、ごく自然だろう。だが、遠路はるばるその病院を訪ねたのに、肝心の担当医が、定年退職でもないのに「辞めさせられる」と聞かされたら、あなたはどう感じるであろうか。

そんな苦悩に直面している患者さんたちがいる。本通信で何度か紹介してきた「滋賀医大病院小線源治療講座」の閉鎖も問題である。患者会のメンバーは自主的に、あるいは患者会として全国各地でチラシ配り、署名活動を展開してきたが、12月23日(日)、24日(月)の両日は滋賀医大附属病院に近い、JR草津駅前で広報・署名活動が展開される。23日午前草津駅前に患者会のメンバー31名が集まり、11時から待機患者さんが窮状を訴えた。

待機患者の月原さん

◆待機患者・月原さんの訴え

「私は奈良県在住の月原と申します。私は今から16年前に父を亡くしました。前立腺がんが骨に転移ししたことが原因で約6年半の闘病生活を経ての死です。そのため私自身前立腺がんについては、常に意識して、早め早めの取り組みをすべく定期的なPSA検査を受けておりました。今年になりPSAの数値が上昇したので、8月に生検(細胞検査)を受けた結果、前立腺がんが見つかりました。その時のショックは今もよく記憶しております。すぐに治療方法について医師から説明がありましたが、いずれも再発に不安を覚えました。そこで家内と、再発のない治療方法をインターネットなどで探した結果、滋賀医大岡本圭生先生の小線源治療にたどり着きました。早速岡本先生にメールしたら、すぐに返事がきました。『紹介書や手術時のデータを揃えなさい』。すべてそろえた日に先生に連絡したら『10月11日に会いましょう』と、これまた即返信が来たのです。

とてもお忙しい方のはずなのに、このクイックアクション。なんと患者思いの温かい先生なのかと感動しました。無事岡本先生に会え次回は12月末に具体的な治療計画を相談することになっており、『よし、これで治療してもらえるぞ』と安堵していた矢先、『入院が来年7月以降になるので確約できない』という連絡が来ました。最初何を言われているのか、意味が分からなかったのですが、滋賀医大が来年12月で岡本先生の講座を閉鎖。それに先立ち7月以降の治療を停止する、ということを知らされ、『なぜ多くの待機患者が実在するのにどうして切り捨てるような措置ができるのか。国民の税金で経営されている、国立大学附属病院にそんな勝手が許されるのか。私は一気に奈落の底に突き落とされました。

署名に応じる方々

岡本先生と寄付講座の運営会社は7月以降の治療停止は、人道上・公益上反対されていると聞いています。岡本先生が病院におられ、治療希望患者がたくさんいるのにさせない。こんなこと国立大学附属病院としてありえないことではないでしょか。また病院側は不当かつ未経験の治療を行おうとした成田医師が「後任」と宣言しています。我々患者の命をどこまで軽視するのか、憤りを感じずにはおられません。

私は岡本先生の治療を受けたい。真の健康を取り戻したい。そして同じ病気で苦しむ方々に、同じ喜びを味わってほしいと強く思います。滋賀医大の関係者の方々、何が正しいのかを胸に手を当てて考えていただきたい。患者軽視の滋賀医大ではなく、患者ファーストの岡本先生が正しいことは誰の目にも明らかです。どうか私ども全国の待機患者に新たな希望を与えてください。切にお願い申し上げます」(待機患者の月原さん)

待機患者の横田さん

◆待機患者・横田さんの訴え

「彦根の横田と申しますよろしくお願いします。私の場合ことの発端は本年10月5日に大津の医療機関で前立腺肥大の状況がわかり、血液検査の腫瘍マーカー検査の結果98.0の異常値を通知されました。至急に総合病院泌尿器科で検査治療を行うことを指示されました。その後約1月にわたり彦根の医療機関で辛い検査の日々で、MRI、CT、骨シンチの検査と続き11月2日に担当医師から検査結果を通知されました。結果は悪性度も進行度も高い、高リスクの前立腺がんの確定診断であり、膀胱へ浸潤している可能性もあり、その場合は根治の期待はできない、というものでした。検査前から私の娘からの情報を得て、岡本医師の小線源療法を希望していましたが、私の症例からは、受けてもらえるかどうかは岡本医師の判断による、とのことで、祈る思いで滋賀医大を受診しました。

11月5日診察当日岡本医師からは治療に関しては正面から受けていただきました。しかし残念なことに現医療体制に期限が決められている掲示を見て驚き、岡本医師からは「掲示してあるとおりです」というようなことを言われたのみです。治療の方針はトリモダリティー。トリモダリティーとは高リスクの場合に行われている治療法で、ホルモン治療、放射線内照射、放射線外照射を併用するもの、の明言があり当日からホルモン治療を開始していただきました。その日前までは骨への転移の恐怖感から仕事中も含め、起きている間は「死への不安」で押し潰されそうな毎日を過ごしていましたが、その日からは転移の可能性が低減されたことや、何よりも先生から『私であれば治すことができる』と言っていただきましたので心の状態は病気発覚前の状態に戻り、10月は発熱などで仕事も休みがちでしたが、それも解消しました。岡本先生を信頼し、根治の希望を託し任せるしかないと思いました。次回受診日は2月ですがその後の治療計画は白紙ですし、確実なものは何もありません。こんな状況で、現治療体制の継続を切望し、自分にできることを開始しようと患者会の署名活動を行ってきています。職場や地域の方から200人ほどの賛同署名を頂いております。どのような状況になろうとも、岡本先生に最後まで治療を受けることを望んでいます」(待機患者の横田さん)

待機患者の訴えの後、メンバーは5グループに分かれ、チラシ配り、署名活動を開始した。午前中は穏やかな天候に恵まれ、総計1216枚のチラシを配布し、419筆の署名が集まった。この日の活動には東京、名古屋、四国などからも患者会のメンバー31人が参加した。

署名する親子

◆利他で貫かれた「患者会」の活動

一方、患者会メンバーの中には、街頭活動には参加できないが、裁判などに使われる情報の整理や加工、運動方針の議論、待機患者さんとの相談窓口など、個々人の個性を活かした活動が展開されている。患者会メンバーには医師、エンジニア、元官僚や現役の大学教員、自営業とバックボーンはそれぞれだ。

しかし、治療を受けて前立腺がんを克服した患者さんたちが、待機患者さんにも治療の機会を確保しよう、自分が享受した、前立腺がん完治の喜びを「知らない誰かとも」共有したい。まったく私利がなく、利他に貫かれているのが「患者会」の特徴だろう。無私の活動に頭の下がる思いだ。

◎患者会のURL https://siga-kanjakai.syousengen.net/
◎ネット署名へもご協力を! http://ur0.link/OngR

集合した患者会メンバー

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▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

月刊『紙の爆弾』2019年1月号!がん患者の“命綱”を断ち切る暴挙 滋賀医大病院 前立腺がん「小線源講座」廃止工作
『NO NUKES voice』Vol.18 特集 2019年 日本〈脱原発〉の条件

平成最後の目黒キックの祭典!

新年号時代に向けて、老舗の目黒ジム継承者達の戦い。
勝次は真空飛びヒザ蹴りでの勝利。
緑川創の「KNOCK OUT」出場を控える中でのヒジ打ち一発TKO勝利。
HIROOYUKIの元気いっぱいの、倒せずも大差の判定勝利。
内田雅之の2階級制覇を目指すパンチで圧倒のTKO勝利。
江幡塁(伊原)の来年こそ行くぞ、とラジャダムナン王座に懸ける執念のKO勝利。

◎SOUL IN THE RING.16
12月9日(日)後楽園ホール17:00~19:55
主催:藤本ジム / 認定:新日本キックボクシング協会

江幡塁がちょっとした被弾のタイミング、無傷で終われる訳ではない難しさ
徐々に追い詰める江幡塁の左ストレート

◆56.0㎏契約 5回戦

WKBA世界スーパーバンタム級チャンピオン.江幡塁(伊原/56.0kg)
   VS
サームエー・ペットムアンタラ-ト(元・タイ南部スーパーフライ級C/タイ/55.6kg)
勝者:江幡塁 / KO 3R 0:45 / カウント中のタオル投入
主審:椎名利一

江幡ツインズのムエタイ・ラジャダムナン王座挑戦に向けての長い前哨戦、攻略し難い相手が続く。勝利に導く技のひとつ、威力が増したローキックで出ると、サームエーもケロリとした表情で蹴り返してくる。

いろいろな技を試すが、そのリズムを壊すようにサームエーも前進。突破口が開き難いと見える中、第2ラウンド終了近くなったところで、江幡塁が右フックをヒットさせ連打に繋ぐ。

第3ラウンド、ややダメージ残るサームエーにパンチとローキックで顔面が空いたところへ左ハイキックを命中させ、前のめりに倒れるとカウント中にセコンドからタオルが投げられる棄権でノックアウト勝利を得た。

パンチ、ローキックから左ハイキックをKOへ結びつけた江幡塁
パンチ勝負で距離を詰める緑川創
緑川のカウンター右ヒジ打ちがヒット
左眉上を斬られたサリムの顔面から鮮血が滴り落ちる

◆70.0㎏契約 5回戦

緑川創(藤本/70.0kg)vs サリム・バントーン(カンボジア/69.5kg)
勝者:緑川創 / TKO 3R 0:27 / カウント中のレフェリーストップ
主審:宮沢誠

ドッシリ構えた体型のサリムが単発気味だがパンチとローキック中心に多彩に前進してくる。緑川も応戦して圧力掛ける互角の展開。第2ラウンドには手数が増え、距離が近なっていく。
第3ラウンドにはパンチを打って誘ってサリムが出てくるところへカウンターの右ヒジを額に打ち込むと、サリムは跪くようにマットに手を付き、ヒットした傷は深そうですぐレフェリーに止められた。

◆62.5㎏契約 5回戦

日本ライト級チャンピオン.勝次(=高橋勝治/藤本/62.5kg)
   VS
デンラグー・ペットパークブーム(元・南部スーパーバンタム級チャンピオン/タイ/62.0kg)
勝者:勝次 / KO 4R 1:25 / カウント中のタオル投入
主審:少白竜

第1ラウンド、ローキック、ミドルキックの蹴り合いから勝次の勢いに押され、デンラグーが下がり始める。第2ラウンドも下がりながらも蹴りは多彩に上下蹴ってくるデンラグーにパンチ打ち込む勝次。

第3ラウンドも下がる一方のデンラグーに攻め倦む中、更にパンチから飛びヒザ蹴りを当てるとノックダウンとなるが、ヒットは軽かったかデンラグーはすぐ立ち上がる。第4ラウンドもパンチで出る勝次がロープ際で右ストレートをヒットさせ、スタンディングダウンをとる。

更にパンチから再度の飛びヒザ蹴りをヒットさせダウンした後、デンラグーはまたも立ち上がるが、タオルが投入されると、それまで相当苦しかったか力尽きたように倒れ込んでしまった。勝次はKO勝利を掴んだ。

今回も出た勝次の真空飛びヒザ蹴り
勝次の右ストレートヒット、徐々にKOパターンに繋げる
コンビネーションで左ハイキックを狙ったHIROYUKI

◆54.0㎏契約3回戦

日本バンタム級チャンピオン.HIROYUKI(=茂木宏幸/藤本/54.0kg)
   VS
ピンポンパン・エスジム(タイ/54.0kg)
勝者:HIROYUKI / 判定3-0 / 主審:仲俊光
副審:椎名30-26. 宮沢30-26. 少白竜30-26

初回のローキック中心の攻めで様子見後、相手のリズムを読めたか、飛びヒザ蹴り2回目でダウンを奪う。更に飛びヒジ打ち落とし、飛び前蹴りと調子を上げていく。2ラウンド以降も終始先手を打って主導権を握ったHIROYUKIの当てるタイミング。怖いのは相手のヒジ打ちだが、何度か狙われつつも貰わない余裕の展開を見せた。

2度目の飛びヒザ蹴りでダウンを奪うHIROYUKI
調子付けば飛び蹴り多発させるHIROYUKI
クリスマスバージョンのラウンドガールとスリーショットに収まるHIROYUKI

◆65.0㎏契約3回戦

石井達也(藤本/64.5kg)vs リットアルン・エスジム(カンボジア/63.9kg)
勝者:リットアルン / 判定0-3 / 主審:桜井一秀
副審:仲28-30. 宮沢29-30. 少白竜29-30

序盤の蹴りの動きで石井達也の出方を読んだリットルアンは組み技中心に移る。離れると石井のパンチと蹴りが有利な展開になりそうだが、それを封じてしまうリットルアンの距離の詰め方は速くヒザ蹴りを加えた厄介なムエタイ技で石井を苦しめた。

◆62.0㎏契約3回戦

日本ライト級1位.内田雅之(藤本/61.65kg)
   VS
日本ライト級10位.千久(伊原/62.0kg)
勝者:内田雅之 / TKO 2R 0:29 / カウント中のレフェリーストップ
主審:椎名利一

序盤から蹴りの探り合いから第2ラウンド早々にはベテラン内田がパンチ連打に繋いで倒し、蹴りをフォローするTKO勝利。ライト級に上げ、次第に調子を上げている内田の2階級制覇は成るか。同門の勝次の存在が今後の方向を左右する。

内田雅之の前蹴りで千久を突き放す
パンチ連打でダウンするところへ蹴りをフォローする内田雅之

◆62.0㎏契約3回戦

高橋亨汰(伊原/62.0kg)vs ジョム・ポー・タワッチャイ(タイ)
勝者:高橋亨汰 / 判定3-0 / 主審:少白竜
副審:椎名29-28. 宮沢30-28. 桜井30-27

◆52.0㎏契約3回戦

日本フライ級2位.空龍(伊原/51.7kg)
   VS
日本バンタム級4位.古岡大八(藤本/51.7kg)
勝者:空龍 / TKO 1R 1:37 / ドクターの勧告を受入れレフェリーストップ
主審:仲俊光

◆ライト級3回戦

日本ライト級5位.ジョニー・オリベイラ(トーエル/61.0kg)
   VS
日本ライト級6位.大月慎也(治政館/61.0kg)
引分け1-0 / 主審:宮沢誠
副審:椎名29-29. 少白竜30-29. 仲29-29

◆ライト級2回戦

鈴木裕也(治政館/61.15kg)vs 金剛駿(Kick-Sty/60.6kg)
勝者:金剛駿 / TKO 1R 1:49 / カウント中のレフェリーストップ

◆60.5㎏契約2回戦

中田憲四朗(藤本/60.0kg)vs 井上昇吾(白山/60.15kg)
勝者:井上昇吾 / 判定0-3 (18-20. 17-20. 18-20)

《取材戦記》

平成期最後の老舗目黒ジム継承の藤本ジム興行となったこの日、昭和のキックはかなり昔の時代となってしまいました。

その昭和の時代にキック創始者、野口修氏によって発祥した老舗のWKBA世界タイトルを目指す勝次。千葉昌要、富山勝治、向山鉄也、飛鳥信也、武田幸三が獲れなかったWKBA世界タイトル。獲ったのは新妻聡、江幡睦、江幡塁の3名。更に勝次(=高橋勝治)が4人目なるか。といったマニアックな話は今の時代にはウケないが、次の新年号の時代へも注目されるように価値を上げて欲しいところです。

藤本ジムにはまだ上を狙う選手が犇めき合っている状態でもあります。緑川創も今年、現地でのラジャダムナン王座挑戦に敗れるも、再挑戦を目指し、石井達也も復活して他団体興行でWMC下部のエリアタイトル奪取し、更なる上位を目指しています。

「KNOCK OUT」に出場することも重要でしょうが、その先を見据えた戦いを2019年には見せて貰いたいところです。

新日本キックボクシング協会2019年新春興行は1月6日(日/17:00)後楽園ホールに於いて、治政館ジム主催WINNERS 2019.1stが開催。

こちらも主力選手が揃う、日本フェザー級チャンピオン.石原將伍(ビクトリー)をメインイベントに、日本バンタム級2位.馬渡亮太(治政館)、日本ミドル級1位.今野顕彰(市原)、日本ウェルター級1位.政斗(治政館)が出場予定となっています。日本王座と本場ムエタイ王座を目指す戦いに挑んでいきます。

伊原代表と並んで勝利ポーズの江幡塁、ラジャダムナンのベルトはいつか

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

月刊『紙の爆弾』2019年1月号!玉城デニー沖縄県知事訪米取材ほか
一水会代表 木村三浩=編著『スゴイぞ!プーチン 一日も早く日露平和条約の締結を!』

情報公開請求でわかった「オウム一斉処刑」舞台裏のドタバタぶり

今年7月、教祖の麻原彰晃(享年63)をはじめとするオウム死刑囚13人が一斉に死刑執行され、ようやく一区切りついた感のある一連のオウム真理教事件。筆者は、この歴史的な死刑執行に関し、法務省や全国各地の矯正管区に情報公開請求し、1000枚を超す関連文書を入手した。

それを見ると、オウム死刑囚13人の死刑が2度に分けて執行された舞台裏は、ずいぶんドタバタしていたことが窺えた。

法務省などから1000枚を超す文書が開示された

◆「執行相当」と決裁する押印もかすれていて……

このほど法務省や全国各地の矯正管区から、筆者に開示された文書は、「死刑執行上申書」「死刑執行上申書」「死刑執行について」「死刑事件審査結果」「死刑執行指揮書」「死亡帳」「死刑執行速報」「死刑執行報告書」など。いずれも死刑執行の決裁や死刑執行後の報告に関する重要文書だ。

それらの文書によると、7月6日に執行された麻原ら計7人の死刑は、法務省内部で「執行相当」と決裁されたのが7月3日だから、わずか3日で執行の全手続きが終了していたことになる。また、7月26日に執行された他の6人の死刑については、法務省内部で「執行相当」と決裁されたのが7月24日だから、さらに1日短く2日で執行の全手続きが終了していたわけである。

これほどスケジュールがタイトだったためか、やけに目立ったのが、書類作成上のミスだ。

たとえば、麻原に関する「死刑執行について」という文書。この文書は麻原が敢行した犯罪事実などが記載されており、法務省の矯正局と保護局の幹部職員6人が死刑執行にゴーサインを出す決裁の印を押している。しかし、そのうち保護局の畝本直美局長と磯村建恩赦管理官の印はかすれてほとんど見えず、朱肉を十分につけずに慌てて押印していたのではないかと想像させられた。

とくに畝本保護局長については、麻原のみならず、12人の信者たちに関する「死刑執行について」という文書への押印も多くがかすれており、仕事が雑であるような印象を否めなかった。

また、「死刑事件審査結果」という文書では、法務副大臣の葉梨康弘氏の混乱ぶりが目についた。7月3日に決裁した麻原ら7人の同文書については、“押印”で決裁しているのに、7月24日に決裁した残り6人の同文書については、“サイン”で決裁しているのだ。

ちなみに、「死刑事件審査結果」については、法務大臣と副大臣は“押印”ではなく、“サイン”で決裁するのが慣例だ。葉梨氏は慣れない仕事のため、最初は誤って慣例と異なる“押印”で決裁してしまったのだろう。

麻原の「死刑執行について」。保護局の局長と恩赦管理官の印がかすれている

◆名前を間違われていた人も……

さらに各文書を見ていると、いくら死刑囚とはいえ、扱われ方が気の毒に思えた者もいる。「修行の天才」と言われた井上嘉浩(享年48)だ。

というのも、「嘉」という字が手書きになっていた文書があったばかりか、死刑執行後に作成された「死亡帳」という文書では、名前が「井上嘉弘」と誤って記載されていたのだ。「弘」に二重線が引かれ、「浩」と訂正されてはいたが、いかにもぞんざいな扱いがされている印象だ。

井上の「死亡帳」。名前の漢字を間違っている

死刑執行に関する文書は、情報公開請求に対して開示される際に多くの部分が黒塗りされるのが通例だが、それは今回も同様だった。黒塗りされなかった部分でミスが相次いでいるのを見ていると、黒塗りされた部分でも多くのミスがあったのではないかと思わざるを得なかった。

政治家や法務官僚たちにとって、オウム死刑囚の生命は綿毛より軽いものだったのだろう。

▼片岡健(かたおか けん)
1971年生まれ、広島市在住。全国各地で新旧様々な事件を取材している。

「絶望の牢獄から無実を叫ぶ ―冤罪死刑囚八人の書画集―」(片岡健編/鹿砦社)

「原発いらない福島の女たち」黒田節子さんが綴る『ふくしまカレンダー』6年6作の軌跡〈1〉

福島第一原発事故で故郷を根こそぎ奪われた女性たちの有志グループ「原発いらない福島の女たち」は、3・11以後の脱原発運動で大きなうねりをつくってきた。その一人である黒田節子さんが中心となって2013年から毎年「ふくしまカレンダー」(梨の木舎)を制作発行している。最新の2019年版カレンダーの紹介と共に、これまでの6年6作の軌跡を黒田さんに4回に分けて回思回想していただいた。今回はその第1回。

◆いつの間にか6年目 ── 映画「カレンダー・ガールズ」にヒントを得て

 
2019年版『原発いらない ふくしまカレンダー』価格1000円(税込)連絡先 090-9424-7478(黒田)

この秋、いつの間にか6年目のカレンダーを販売している。大変な冒険の旅立ちともいえる当初のカレンダー作りだったから、正直いって6冊目を作れるようになることは想像できなかった。3・11後の様々な動きと混乱、自分たちの生活そのものが明日をも知れない状況の中での、やったこともないカレンダー作り。多くの協力を得ながらなんとかやってきている。

そもそもカレンダー作りを思いついたのが、英米合作映画「カレンダー・ガールズ」を観たことから始まる。映画は、実話を元にしたヒューマン・コメディ。小さな町で女たちがある年の教会カレンダーを自分たちの女写真集にした。保守的な田舎のこと、夫たちの猛反対にもあうが、しかし、思いがけなく大ヒットして彼女たちの目論見は大成功を収める。女たちの友情や勇気、フェミ的視点もきっちりあって、抱腹絶倒の映画だった。

さて、この映画を見て「そうだ、福島の女たちのカレンダーを作ろう!」といったのが、友人Aさん。イイネッ! さらに、反原発運動などで昔から活動されていたKさんとは震災後に再会したが、いろいろなことを教えていただいた。Kさんが日本に紹介している、これまたイギリスのドキュメンタリー映画「グリーナムの女たち」を福島の女たちで観るなどしたこともあったな(2011年クリスマス)。これは何回見ても感動。女たちへパワーを与えてくれる秀作だ。

 
経産省前、白いタイベックス姿(簡易防護服)で歌う女たち(2015年版カレンダーより)

福島原発事故後、良かったことが1つだけある。それは人との出会い・再会である。梨の木舎・羽田ゆみ子さんを紹介してもらったこともあって、カレンダー作るならここと決めていた。梨の木舎は良い本を出しているところとして私でも知っていて、どんなに立派な出版社かと思いきや、神保町の片隅で社主が掃除から編集、荷造りまで全てをほぼ1人でやっているようなところで、初めて訪問したときには驚いたものだった。

「苦節35年」は、ゆみしゃんのおどけた時の口癖である。たくさんの作業をここでやらせてもらっていたが、2016年の夏、近くに引っ越されて、今度はオーガニックなコーヒーや手作りケーキも注文できる素敵な空間のブックカフェと様変わりした。もちろん本もたくさん並んでいる。

◆2014年版の思い出 ──「弾丸バスツアー」で行った大飯原発反対福井集会

 
行進する女たち(2015年版カレンダーより)

2014年版、最初のカレンダーを眺める。本当に懐かしい。刷り上がった1冊を手にした際には、ジ~ンと熱いものがこみ上げてきたのだった。当初、海のものとも山のものとも知れないカレンダー作りに女たちの中で積極的な賛成意見はなかったのだが(当然といえば当然か)、半ば押し切って赤字覚悟で始めた。女たちには規則や会則はなく、原則のようなものがあるのみ。代表も置かないいわばいい加減な、良くいえば人間を信頼(しようと)している自由なグループだ。やりたい人がやりたいところをやるというアメーバ的な運動体を私はイメージしている。(ただし、話合いと報告はダイジ)

カレンダーの表紙は、「弾丸バスツアー」で行った大飯原発反対福井集会で撮影した写真から、たかくあけみさんがイラストに変換して描いてくれた。このあけみさんのイラストは4作目に至るまで続いていて、写真集ではあっても柔らかい感じが素敵だと女たちも気に入っているし、全国の皆さんにも好評だ。

ページをめくる。買ってくれた人の1ヶ月の視線に耐えるような写真が足りなくて、かなり苦労したな。どうにかこうにか、デザイナーさんの手腕で乗り切った感じ。このカレンダーができあがってから、被写体に大きく登場して亡くなってしまった友人、福島から避難して行った仲間、様々な経過があり女たちと離れてしまった人たちもいる。特に遠方に避難した人たちにとって、この頃は超激動の日々だったと思う。新天地で頑張っている若い人たちは「私たちの誇りだ」と発言していた私だが、その思いは今も変わらない。生活するだけでも大変だろうに、脱原発の新しい世界に向けて、着実にあるいは目ざましい活躍を開始している女たちがいる。1年の年月は福島に生きる私たちにとっては、10年、20年の重みがあるのだ。

◆2015年版の思い出 ── 福井地裁・樋口裁判長の名判決と司法界への希望

2015年版。何となくカレンダー作りの流れというのが分かってきた。女たちの手作りバナーやノボリが写真に登場してくる。皆もカレンダーを意識して「ハイ、来年のカレンダー用!」とかいって、撮影時にポーズをとったりするのは楽しい一瞬だ。14年版の成功に気を良くして、それなりに写真も集まってくるようになった。

白いタイベックス姿(簡易防護服)や上野公園での女たちの堂々としたデモ行進が目を引く。「大飯原発稼働停止ばんざーい!」の1枚は、福井地裁・樋口裁判長の名判決のおかげで、司法界に希望がまだあることを確認できた喜びが女たちの満面に溢れている。イエ~ィ!

◆2016年版 ── 安達太良山の雪化粧は息を呑むほどに美しい

2016年版。正月、安達太良山の雪化粧は息を呑むほどに美しい。それだけに同時にまた悲しさにおそわれる。「放射能さえなければ」どんなにか心からこの大自然を堪能できるだろうかと。

正月、雪化粧の安達太良山(2016年版カレンダーより)

プロもタジタジの写真が存在感あるものとして登場する。鹿児島県川内原発再稼働前夜の久見崎海岸で、夕陽を浴びながら無邪気に遊ぶ子どものシルエット。抗議行動に一緒に参加したAさん(前述のアイディア・ウーマン)の絶妙なシャッターだった。

鹿児島・川内原発。再稼働前夜の久見崎海岸。夕陽を浴びながら無邪気に遊ぶ子どもたち(2016年版カレンダーより)

他にも、帰宅困難区域の「帰れない家」からショボショボ歩いて来るタイベック姿の3人と「柿」の写真。巨大な放射性ゴミ焼却炉等々、フクシマの現実をうまく表現している写真が集まった。

柿の木のある「帰れない家」(帰宅困難区域)(2016年版カレンダーより)

キング牧師の演説に乗せて創作した「私には夢がある」という絹江さんの詩は、読む人の心を動かした。ここには、絶望と希望、未来への意志と共生への願いが込められている。絹江ちゃん、ありがとう、今でも泣けるよ。(つづく)

黒田節子さん(原発いらない福島の女たち)
『原発いらない ふくしまカレンダー』連絡先
ふくしまカレンダー制作チーム 
090-9424-7478(黒田) 070-5559-2512(青山)
梨の木舎 メール info@nashinoki-sha.com
FAX 03-6256-9518

2019年版『原発いらない ふくしまカレンダー』
価格1000円(税込)
『NO NUKES voice』Vol.18 特集 2019年 日本〈脱原発〉の条件
月刊『紙の爆弾』2019年1月号!玉城デニー沖縄県知事訪米取材ほか

12・22李信恵氏を招いたシンポジウムについての「お尋ね」に対する大阪弁護士会・竹岡登美男会長からの事務処理的回答を批判する!!

2018年11月27日付けで下記の文章が、大阪弁護士会所属の弁護士に伝達された。

12月22日大阪弁護士会主催で開催されるパネルディスカッションの案内文書。李信恵氏がパネリストとして参加する

そのことを知った鹿砦社ならびに取材班は大いに疑問を感じたので、鹿砦社代表・松岡利康の名前で、12月6日、以下の「お尋ね」を大阪弁護士会・竹岡登美男会長宛てに送った。

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2018年12月6日
大阪弁護士会
会長 竹岡登美男 様

貴会主催《『反』差別 連続企画 第1回 今、問われる人種差別禁止法
―沖縄・部落・在日コリアンへの差別の実態を踏まえて―》
についてのお尋ね

兵庫県西宮市甲子園八番町2-1-301  
株式会社鹿砦社(ろくさいしゃ)  
代表取締役 松岡利康  
電話0798(49)5302  

               
謹啓 師走に入り何かと慌ただしくなってまいりましたが、貴会ますますご隆盛のことと心よりお慶び申し上げます。

 さて、貴会所属弁護士より標記のような勉強会(資料添付)が予定されていると聞きました。

 パネリストとして参加予定の方の中に、李信恵氏のお名前があります。小社は、李信恵氏にSNS上で執拗に誹謗中傷を受け発信が止まらなかったため、やむなく李信恵氏を被告として名誉毀損等による損害賠償請求訴訟を大阪地方裁判所(以下大阪地裁と略記します)に提訴し、争っている最中です(大阪地裁第13民事部 平成29年ワ第9470)。今月12日には原告代表者である私の尋問が行われ(李信恵氏は尋問を拒否しました)、この係争自体は、これで結審を迎え年度内の判決になるものと想像いたします。

 他方李信恵氏側は、本年3月頃、上記訴訟がほぼ結審直前になり「反訴したい」旨の意向を突如表明しましたが、裁判所は同一訴訟内での反訴は認めず、別訴を小社を被告として起こしてきており、こちらも大阪地裁で係争中です(大阪地裁第24民事部 平成30年ワ第4499号)。

 つまり、李信恵氏は、被告、原告(提訴の順番からこのように記します)として、現在大阪地裁において、2件の訴訟を係争中の身であり、その争いの内容は「名誉毀損」です。特に後者訴訟にあっては、損害賠償と共に出版物の販売差し止めを求めており、憲法21条に謳われる「表現の自由」「言論・出版の自由」の見地から極めて重大です。

 参考までに李信恵氏が関わったとされる大学院生リンチ事件(常識的に見て、リンチの現場に居て関わっていないとは言えないでしょう)についての出版物2点を同封させていただきますので、ぜひご一覧(特にリンチ直後の大学院生の顔写真を)、またリンチの最中の音声データ(CD)をご視聴になり、ご検討ください。くだんの勉強会のご案内に「人権」という言葉がありましたが、リンチ被害者の「人権」はどうなるのでしょうか? 会長のご意見をぜひお聞かせください。いや、一人の人間として──。

「人権」を大事にされる貴会、特に呼びかけ人に名がある会長におかれましては、李信恵氏がこのような状態であることをご存知でパネリストと決定なさったのでしょうか(あるいはご存知なかったのでしょうか)。ぜひお聞かせください。貴会の最高責任者である「会長」として──。

 足元大阪地裁で大阪弁護士会所属の弁護士も代理人に就任し(李信恵氏側の代理人は京都弁護士会、神奈川弁護士会所属)、係争中の民事訴訟が進行している中、大阪弁護士会が、係争中の片一方の当事者を、係争の内容と関係のある「表現」や「差別」や「人権」についての勉強会のパネリストに選ばれることは、李信恵氏から「クソ鹿砦社」「鹿砦社はクソ」などと再三再四誹謗中傷を受けた小社としては、公平な人選であるとは考えられません。

 もちろん、係争中であろうと、発言や発信は認められるべき基本的な権利であると小社も認識いたしますが、今回はまさに「表現」についての訴訟が、他ならぬ大阪地裁で係争中に、大阪弁護士会が主催して、係争の片一方の当事者を招くという、例外的なケースであると考えます。小社の代理人弁護士はじめ複数の弁護士や元裁判官の方々にお聞きしても首を傾げられましたので、私が申し上げていることは、決して特異な意見ではないと思いますがいかがでしょうか?

 大阪弁護士会が、李信恵氏の過去の訴訟について、評価の認識をされていることは分からないではありませんが、リンチや暴力事件に関与したという疑いや問題を現在李信恵氏は問われています。その訴訟が進行中に(それも2件も)大阪弁護士が(それも会長名で)李信恵氏を「差別や「人権」や「表現」が話題となる勉強会のバネラーにお招きになる行為は、原告である(別訴では被告)小社のみならず第三者が常識的、客観的に見ても「大阪弁護士会は李信恵氏を支持している」と映ります。

 上記申し上げた件をご賢察頂き12月14日(金)までに書面にてご回答いただきますようお願い申し上げます。
 
 まずは要件にて失礼いたします。 

敬白  

               

─────────────────────────────────────────────

「お尋ね」では14日までに文書での回答を依頼していた。回答期限直前になり大阪弁護士会からは「もう少し回答を待ってくれ」という趣旨の手紙が届いたので、様子を見ていたところ、以下の回答が大阪弁護士会会長の竹岡富美男氏から届いた。

竹岡富美男=大阪弁護士会会長から鹿砦社に届いた回答文書(2018年12月18日付)
 
リンチ事件についての李信恵氏の「謝罪文」。全7枚のうち最初のページ

この回答の中で、大阪弁護士会会長竹岡氏は、決定的な矛盾を露呈している。

「李信恵氏については、在日コリアンへの差別問題に関する幅広い知見と多くの経験を有する方として、パネリストにお招きしたところですが、当会は同氏が関与されるすべての訴訟を関知しているわけではありませんし、それぞれの訴訟における同氏の主張を支持、または不支持するものでもありません。」

まず、「李信恵氏については、在日コリアンへの差別問題に関する幅広い知見」を持っているかどうかはともかく「多くの経験を有する方」とある。「多くの経験」とは、何を指すのか。まったく不明確である。相応の年齢の人であれば李信恵氏でなくとも、それなりに「多くの経験」をしているであろう。ここではどのような分野で「多くの経験」があるのかが語られなければ、何の意味もなさない。このようにあいまいで、裁判であれば「却下」されることが確実な文言を竹岡氏は、自身が受任した事件で準備書面などに用いるのであろうか。

さらに、なぜ李信恵氏のプロフィールで、「元在特会会長及び保守速報に対する民事訴訟を提起して第一審・第二審で勝訴」と紹介しているくせに、「当会は同氏が関与されるすべての訴訟を関知しているわけではありませんし、それぞれの訴訟における同氏の主張を支持、または不支持するものでもありません」と逃げるのか。われわれは大阪弁護士会会長が李信恵氏の「M君リンチ事件」関与や、鹿砦社を誹謗中傷した事件を知らなかった可能性もあると考えたので、12月6日付けの「お尋ね」を送り、その中で事件番号まで示し、李信恵氏が現在被告・原告となっている事実を伝達した(CD付きの書籍を含めこれまで発刊した出版物のうち2冊を同封した)のだ。

 
リンチ事件についての李信恵氏の「謝罪文」。全7枚のうち最後のページ

であるから「当会は同氏が関与されるすべての訴訟を関知しているわけではありません」にしても、李信恵氏が「M君リンチ事件」に関与している事実と、鹿砦社との係争について大阪弁護士会が「関知」していないとの言い訳は成立しない。また、言うまでもなく弁護士は法律の専門家であるから、裁判記録の調べ方を知らないはずはない。ここまで動かぬ事実を示しているのに、「それぞれの訴訟における同氏の主張を支持、または不支持するものでもありません」などと開き直るのか。

繰り返すが「元在特会会長及び保守速報に対する民事訴訟を提起して第一審・第二審で勝訴」との人物紹介は、事実の紹介にとどまらず大阪弁護士会が数ある李信恵氏関連の訴訟の中でも、あえて抽出して人物紹介に用いているのである。この事実も竹岡氏の言を借りれば「同氏の主張を支持、または不支持するものでもありません」の対象のはずであり、そうであれば、大阪弁護士会は李信恵氏勝訴にも「必ずしも同意するものではない」との解釈も成立する。それでいいのか? そうであればその前段で述べられている「李信恵氏については、在日コリアンへの差別問題に関する幅広い知見と多くの経験を有する方」との人物評は論理的に揺らぐはずだ。

つまり、この回答にならない回答は“鹿砦社からの質問をまともに取り合っていない”と理解するほかない。消息筋の情報によれば「M君リンチ事件」は「報告事件」(最高裁が暗黙裡に裁判の方向付けを行い、書記官などが最高裁に訴訟の過程を報告する)である、との噂も聞く。「報告事件」であるかどうかはともかく、一審判決、控訴審判決とも市民感覚からは大きく乖離する内容であった。裏で“何らかの力が働いている”──取材班だけではなく、複数の法律専門家やジャーナリストらも同様の見解を明らかにした。

そして今回、本来は国家権力から独立しているはずである大阪弁護士会の人選とそれについての言い訳である。“苦しい言い訳”の見本のような低レベルな理由であるが、見方を変えれば“そうまでして”李信恵氏を使わせる“力”が、ここでも働いていると感じざるを得ない。

リンチ直後の被害者大学院生M君。会長はこの写真を見てどう思うのか?

“一体あなたたちは、何をしたいのだ!?”──正直な感想である。司法試験を通り、裁判官、検事、弁護士になった人びとを市民は普通“人より頭が良く、人物も立派な人”と見る。ところが残念ながらここ数年われわれは、従来の常識をことごとく“裏切られる”経験を重ねてきた。いや、裁判所の前では、司法に救済を求めようとしても、血の通った人間としての判断を示さず裏切られた市民のうなだれた姿を見ることが少なくない。松岡が「お尋ね」で言っているように「一人の人間として」の回答を望んだが、届いたのは事務処理的な文面だった。もう驚きはしないが、大阪弁護士会長のあまりにも低レベルで、内容を伴わない回答に、こう進言したい。

「法曹人である前に、最低レベルの常識を備えた社会人たれ」と。

(鹿砦社特別取材班)

M君リンチ事件の真相究明と被害者救済にご支援を!!

官民ファンド・産業革新投資機構(JIC)の醜態 ──「年収1円で出来る」ならば、文句を言わずに出来高制にしろ!

 
産業革新投資機構 取締役の辞任表明について(2018年12月10日)

産業革新投資機構(JIC)の田中正明社長が辞表を提出し、9人の取締役全員が辞職したのは12月10日のことである。クールジャパン機構(海外需要開拓支援機構)との統合が背景にあったという。このクールジャパン機構は、日本アニメの海外配信事業の中止など、出資事業の失敗が相次いで赤字続きの問題プロジェクトである。

◆95%が税金である官民ファンド(JIC)で、億単位の報酬

事業運営の以前に、われわれ国民には、やや奇怪な感じのする事態だった。この騒動の発端は、経済産業省が提示した報酬1億数千万円が、マスコミ報道で国民の疑義を呈したことによるものだ。95%が税金である官民ファンド(JIC)で、億単位の報酬は「ちょっとおかしいだろう」と、誰しも思う。

 
2018年12月7日付け毎日新聞

JICの事業はビジネスへの投資という博打にも似た業務である。だとしたら、出来高報酬というのが正論ではないのか。最初から報酬を約束した側にも、それに乗ったほうにも責任がある。問題は税金を軽々しく使う、官僚と金融関係者たちの金銭感覚のなさである。

経産省の発想が甘いとか、ゾンビ事業の救済(クールジャパン機構など)で失政を糊塗しているとかの指摘よりも、いわばプロジェクトへの投資を主柱とするマネーゲームの機構(JIC)に、われわれはNOを突きつけたい気分だ。田中社長以下の面々にも言いたい。そもそも「取締役の誰一人として、お金のためにここに来ていない。報酬が1円でも、ここに来ていたと思う」のならば、辞表を出す前にみずから高額報酬を返上するのが筋ではないか。1500万円だと、家族が恥ずかしがるような高級取りだった方々なのだから、報酬1円に耐えられるだけの蓄財もあるはずだ。

◆しょせんは、税金の無駄づかい──官僚と金融屋のビジネス感覚のなさこそが根本原因

官民ファンドの失敗については、本欄でも「安倍政権のマネーゲームの失敗」として報じてきた。そもそも官民ファンドなるものは、アベノミクスの三つの矢のうち、決め手とされる成長戦略、つまり投資部門である。地域活性化や企業の海外展開の支援、ベンチャー企業の支援を官民の投資で行なう「第2の財布」とも呼ばれてきた。それが無駄遣いや損益の発生で、再編成しなければならなくなっていたのだ。辞表を出した田中社長の産業革新投資機構(JIC)が1兆2483億円の損益(ようするに赤字)、地域経済活性化支援機構が3433億円の損益。以下、14すべてのファンドが赤字なのである。

主な官民ファンド(Wikipediaより)

金融アナリストのなかには、構造的な無理があると指摘する人もいる。
「日本の官民ファンドを、中東諸国やロシアのような資源大国の政府系ファンド」と同列に論じる人もいますが、これこれは大きな間違いである」

要するに、商品が違うという指摘である。
「クウェートやサウジアラビアのように、石油や天然ガスで稼いだ莫大な資金を原資に国の将来に備えて大事に運用しようとす場合、資金の余剰が前提なのだ。ところが、日本の官民ファンドは公的資金、血税を運用資金しにている。産業革新投資機構(JIC)も出資金3000億円のほぼ100%が政府出資だ。さらに1兆8000億円は政府保証付きで民間から借金することができることになっている。つまり国民の血税に、さらに民間からの借金をつぎ込んでバクチをやっているのと同じだ。その存在自体が悪すぎる」

そう。そもそもみずからが起業するわけでもなく、単に金融業の経験から成長ベンチャーを見極める。いや、それ以前に政府ベンチャー(国策プロジェクト)の破綻を糊塗するために資金が振り当てられてきたのだ。

田中社長らの造反に理があるとすれば、経産省の方針に反発したものだが、事業それ自体が国策なのだから、そこから自由に。たとえば民間ベンチャーの有力株を見出すといった、ほんらい想定されていたところまでは展開できなかった。その理由は、原資が税金だからなのだ。政府の保証付きの資金調達からはじまり、政府の失政を糊塗する。さらには、天下り的な人事で税金をかっさらっていく。もうやめて欲しい。その予算を国民の社会福祉にまわして欲しい。損をこれ以上膨らませないうちに。

◎株式会社産業革新投資機構 取締役の辞任表明について(2018年12月10日 プレスリリースPDF)

◎株式会社産業革新投資機構 社長辞任会見(2018年12月10日 プレスリリースPDF)

▼横山茂彦(よこやま しげひこ)

著述業・雑誌編集者。主な著書に『軍師・黒田官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)、『真田一族のナゾ!』『山口組と戦国大名』(サイゾー)など。医療分野の著作も多く、近著は『ガンになりにくい食生活――食品とガンの相関係数プロファイル』(鹿砦社LIBRARY)

月刊『紙の爆弾』2019年1月号!玉城デニー沖縄県知事訪米取材ほか
横山茂彦『ガンになりにくい食生活――食品とガンの相関係数プロファイル』(鹿砦社LIBRARY)