
◆リニアに触れない代表と幹事長を直撃
静岡県の島田市議選(5月25日投開票)が告示された5月18日、国民民主党の玉木雄一郎代表と7月の参院選で改選を迎える榛葉賀津也幹事長(参院静岡選挙区)が、5選を目指す清水ただし候補の応援演説でそろい踏みをした。
代表と幹事長がそろって市議選候補者の応援に入るのは異例だが、榛葉氏の参院選事前運動を兼ねていたとみると、不思議でも何でもない。早々に地元の票を固めて、大量擁立する新人候補の応援に回ろうとする狙いが透けて見えたのだ。
一帯は茶畑が広がる大井川流域。街宣では、静岡市から駆けつけた山田吉彦・東海大学海洋学部教授(参院選比例代表の公認候補)が県産のお茶の輸出が伸びていることを紹介すると、榛葉氏も大井川水系の重要性を強調したが、玉木代表を含めて誰一人として大井川流域の水枯れが懸念される「リニア中央新幹線問題」について触れることはなかった。
川勝平太・前静岡県知事は、南アルプスをぶち抜くトンネル工事で大井川の流量低下を招くおそれがあるリニア計画を問題視、JR東海や国交省と長年にわたって対峙してきた。それなのに国民民主党は同流域の存亡にも関わるリニア問題を、代表も幹事長も地元議員もスルーしたのだ。自公政権を補完して国策に迎合する国民民主党の実態(正体)が透けて見えた瞬間でもあった。
そこで街宣終了後、両幹部がそろい踏みをした囲み取材で、「リニアについて触れなかったのはなぜか」と聞いてみたが、玉木代表は「ほかの記者が質問中」「順番を守って」などと言って私の質問を遮り、スタッフも「時間です」と終了を宣言した。やむなく立ち去り始めた榛葉氏を追いかけて「リニアについて触れなかった理由は何か。水問題、深刻ではないか」と叫んだが、無言のまま。
しかも榛葉氏は私の会見参加不可(出禁)を決定した当事者でもあったので(紙の爆弾1月号参照)、支持者との記念撮影を始めた榛葉氏に向かって「嘘つき幹事長と呼ばれるのではないか。ルール違反をデッチ上げないで下さい」「(私の質問中に)不規則発言をしたのは(フリーの)堀田(喬)さんですよ」と声かけ質問をしたが、ここでも榛葉氏は「横ピン(私のこと)だよ」と発するだけで何も答えない。それで「質問に答えて下さい」と求めたが、一言も答えることなく黒塗りの車に乗り込んで走り去った。都合の悪い質問には全く答えない国民民主党の差別的報道対応(記者排除)を、ここでも目の当たりにすることになったのだ。
ただ、思わぬ収穫もあった。榛葉氏を直撃した後、その様子を見ていた中年女性が私に声をかけてきて、参院選比例代表の公認候補となった山尾志桜里・元衆院議員への怒りを爆発させてくれたのだ。
「山尾さん公認への反発で女性票が激減するのは間違いありません。私の周りにも『選挙区は国民民主党に入れても、山尾さんに当選してほしくないので比例は他の党に入れる』という支持者がたくさんいます」
こう切り出した国民民主党の支持者は、スマホを取り出して5月16日の榛葉幹事長会見の画面を指し示し、こう続けた。
「会見動画への書き込みが3千件を超えていますが、多くが山尾さんへの批判です。支持率が急落するのは間違いないでしょう」
この予測は数字として現れていた。自公過半数割れとなった昨年秋の総選挙以降、103万円の壁解消などでメデイア露出が急増、野党第1位の支持率を維持してきた国民民主党だが、共同通信が5月17日と18日に実施した世論調査によると、前回調査(4月12日と13日)の18.4%から5.2%も下落して、13.2%になってしまった。朝日新聞の同時期の世論調査も同じ傾向で、国民民主党の支持率は12%から8%へと急落。毎日新聞と読売新聞はともに2%下落と小幅だったが、全体として下落傾向に転じていたのだ。
5月20日付の朝日新聞が「国民民主勢いにブレーキ」「参院擁立巡りSNS上で批判」との見出しを打ったとおり、5月14日に山尾氏ら参院選比例代表に擁立した候補予定者4人が支持率下落の原因であることは明らかだった。
ほかの3人は、立憲民主党を離党した須藤元気・元参院議員、維新の党員資格停止処分を受け政界引退を表明していた足立康史・元衆院議員と、みんなの党や自民党を転々とした薬師寺道代・元参院議員。マイナスイメージの筆頭格は不倫スキャンダルが報じられた山尾氏だが、他の3人も突っ込みどころには事欠かない。
◆脱原発派を転向させた「確認書」
5月の連休前後から全国を飛び回り街頭演説を繰り返す玉木代表の定番ネタは「受かりたいから国民民主に来るとか、選挙を就職活動にしない」と強調することだった。しかし今回の比例代表候補予定者4人の発表で「元議員再就職の受け皿(駆け込み寺)政党なのか」「玉木代表は言行不一致」といった疑問が噴出し支持率急落につながったと見えるのだ。
そんな国民民主党の実態をズバリ指摘したのが、れいわ新選組の山本太郎代表だ。5月17日に大阪で開かれた「おしゃべり会」で、以前は脱原発派だったのに原発推進の国民民主党候補予定者となった須藤氏の“変節”について、次のように聞いた時のことだ。
「かつて山本代表と連携、ともに脱原発を訴えていた須藤元気さんが国民民主党の比例候補になり、原発推進の確認書にもサインをした。脱原発から原発推進に舵を切ろうとする危険性をはじめ、国民民主党の化けの皮をどう剥がして対抗していくのかについて伺いたい」
山本代表からはこんな答えが返って来た。