すき家を運営するゼンショーが追い込まれている。営業利益は前期比44%減、アルバイト不足のため営業できない店舗は、一時休業や改装中も含めると200店舗近くになる。そこにゼンショーHDの小川会長兼社長が「日本人は3Kの仕事やりたがらない」と述べたことを朝日新聞が報じたところ、猛反発を受ける事態になっている。

尤もゼンショー側はこの記事の発言を否定しているが、そうでなくても今すき家で働きたいという人はそうそう居ないだろう。かつては従業員の残業代を払わないことで悪名を上げ、訴えを起した労働組合には「アルバイトは組合員とは認めず、かつ業務委託扱いなので残業代も出さない」と述べた会社だ。それ以前には、残業代の支払いを求めた従業員を窃盗容疑で逆告訴したこともある。この窃盗容疑とは、従業員が廃棄予定のご飯をまかないとして無断で食べたというもので、後に不起訴処分となっている。

最近では深夜、強盗被害に遭う店舗としてすき家は断トツの数字をあげていた。それまで深夜時間帯に従業員1人体制を敷いており、大体の店舗でレジが入口に近いなど、強盗されやすい状態だった。これについては深夜従業員を2人体制にするなど改善に前向きだったが、前述のアルバイト不足により徹底されていない。

3Kどころの話ではない。残業代を払わず、強盗被害に遭いやすく、自社の従業員を報復で訴える会社に、誰が進んで働こうと思うだろうか。ブラック企業という言葉が定着し始めた頃には、ブラック企業筆頭に挙げられていた会社だ。ただでさえ労働環境が悪いと言われる飲食業なのだから、他よりも働くメリットがアピールできなければ、アルバイトだって集まらなくて当然だ。

それでも今までやってこれたのは、長い不況による就職難が若い世代を直撃したからで、給料が安かろうが労働環境が悪かろうが、食ってかなきゃならない人が若者を中心に多くいたからだ。それをいいことに、従業員を邪険に扱ったツケが今回ってきているということだ。元々若い世代の人口は少ないのだから、就職状況が好転すれば悪い噂のある職場は避けられて当然だ。

ゼンショーの社名は「全勝」「善商」「禅商」に由来するそうだが、「善」の心も「禅」の心も無くせば、ライバル店の吉野家や松屋に「全勝」を献上するかたちになりそうだ。あるいはそれは自らを犠牲にして他者を助けるという善の心だろうか。

(戸次義継)